(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】偏光板およびこれを含む画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20230815BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230815BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20230815BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230815BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20230815BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
B32B27/30 A
G02B1/14
G02B1/18
G02F1/1335 510
(21)【出願番号】P 2020519739
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(86)【国際出願番号】 KR2019002606
(87)【国際公開番号】W WO2019172651
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2020-04-06
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-01
(31)【優先権主張番号】10-2018-0026390
(32)【優先日】2018-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0025662
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】キョンキ・ホン
(72)【発明者】
【氏名】ヨンレ・チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ヨン・パク
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】河原 正
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0099470(KR,A)
【文献】特開2018-22060(JP,A)
【文献】特開2014-157231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02BG 5/30
G02B 1/10-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子;
前記偏光子上に位置し、(メタ)アクリレート系(共)重合体を含むバインダー樹脂を含有する第1ハードコーティング層;
前記第1ハードコーティング層上に位置し、3000nm以上8000nm未満のリタデーション(Retardation)を有し、面内に複屈折率を有する光透過性基材;および
前記光透過性基材上に位置し、バインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子;を含む第2ハードコーティング層を含み、前記光透過性基材の遅相軸と、前記偏光子の吸収軸とが成す鋭角の角度が5~85°であり、
前記偏光子の他の一面に1/4波長板(Quarter Wave Plate)および粘着層を順次に積層した偏光板であって、
前記偏光板を4cm×4cm大きさに切断し、前記粘着層にブラックテープを付けた後、Shimadzu社のUV-VIS分光器を使用して5°反射モード、スリット幅2nm、分析波長範囲380~780nmで反射率を測定して導出された450~650nmの間での反射率から反射率平均および最大反射率と最小反射率を下記数式1に代入することによって計算された、前記偏光板に対す
るレインボー変動比(ΔRb)が3.1%以下である、偏光板:
[数式1]
ΔRb=(450~650nmでの最大反射率-450~650nmでの最小反射率)÷(450~650nmでの反射率平均)×100
【請求項2】
前記光透過性基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである、請求項
1に記載の偏光板。
【請求項3】
前記光透過性基材は、遅相軸方向の屈折率(n
x)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(n
y)の差(n
x-n
y)が0.05以上である、請求項1
または2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記光透過性基材は、厚さが10~500μmである、請求項1から
3のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項5】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層は、厚さ比が1:0.5~1:1.5である、請求項1から
4のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項6】
前記光透過性基材および第2ハードコーティング層は、厚さ比が1:0.1~1:1である、請求項1から
5のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項7】
前記第1ハードコーティング層の(メタ)アクリレート系(共)重合体は、単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系繰り返し単位およびウレタン(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項8】
前記第2ハードコーティング層のバインダー樹脂は、光硬化性樹脂および重量平均分子量が10,000g/mol以上である(共)重合体を含む、請求項1から
7のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項9】
前記第2ハードコーティング層上に位置し、バインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した無機ナノ粒子;を含む低反射層;または
前記第2ハードコーティング層上に位置し、バインダー樹脂;前記バインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子;およびフッ素系化合物;を含む耐汚染層をさらに含む、請求項1から
8のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項10】
前記偏光板は、500g荷重で鉛筆硬度が6H以上である、請求項1から
9のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項11】
前記第1ハードコーティング層、光透過性基材および第2ハードコーティング層を含む積層体は、1kg荷重で鉛筆硬度が6H以上である、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の偏光板。
【請求項12】
請求項1から1
1のいずれか一項の偏光板を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年3月6日付韓国特許出願第10-2018-0026390号及び2019年3月6日付韓国特許出願第10-2019-0025662号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、画像表示装置を構成する偏光板およびこれを含む画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展と共にディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板の素材としては、強度および引張などの機械的特性が優れていて外部衝撃に対する衝撃吸収に優れたガラスまたは強化ガラスが一般に使用されている。しかし、ガラスは、反射率が高くてディスプレイの視認性が低下し、ガラス自体の重量によってモバイル装置が高重量化され、外部衝撃による破損の問題がある。
【0004】
よって、ガラスを代替できる素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂フィルムは、軽量でありながらも壊れる恐れが少なくて、より軽いモバイル機器を追求する傾向に適する。特に、高硬度および耐摩耗性の特性を有するフィルムを達成するために支持基材にハードコーティング層がコーティングされたフィルムが提案されている。
【0005】
このようなハードコーティング層がコーティングされた支持基材としてはディスプレイの画像表示面側に配置された偏光子を保護する偏光子保護フィルムを用いる方法が知られている。偏光子保護フィルムは一般に光透過性基材フィルムからなっており、このような光透過性基材フィルムとしてはトリアセチルセルロース(TAC)に代表されるセルロースエステル系フィルムが最も広く使用されている。このようなセルロースエステル系フィルムは、透明性および光学等方性に優れ、面内に位相差をほとんど示さなくて干渉縞を発生させず、表示装置の表示品質に悪影響を及ぼす点が殆どないなどの長所を有している。
【0006】
しかし、前記セルロースエステル系フィルムは、費用的に不利な点がある素材であるだけでなく、透湿度が高くて耐水性が劣悪であるとの短所がある。このような高い透湿度と劣悪な耐水性によって、使用中に継続して相当量の水分透過が発生し偏光子から浮き現象が発生することがあり、そのため光漏れ現象を引き起こすことがある。
【0007】
このようなセルロースエステル系フィルムの短所によって、最近は前記偏光子保護フィルムの基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート系(PET)フィルムなどポリエステル系フィルムを代替適用しようとする試みが行われている。このようなポリエステル系フィルムは低価であり、耐水性に優れて光漏れ現象を誘発する可能性が殆どなく、機械的物性に優れている長所がある。
【0008】
しかし、このようなポリエステル系フィルムは、構造中に高い屈折率を有する芳香族環を含み、フィルム製膜過程でMD/TD方向の延伸率差などによる屈折率差(面内複屈折)および面内位相差を発生させる短所がある。その結果、前記ポリエステル系フィルムを偏光子保護フィルムの基材フィルムとして適用する場合、光の透過/反射によってレインボー現象が発生して画像表示装置の視認性が低下される問題点が発生するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、ポリエステル系基材フィルムに由来するレインボー現象の発生を効果的に抑制し、視認性および機械的物性に優れて画像表示装置のウィンドウまたは前面板に適切に適用できる偏光板およびこれを含む画像表示装置を提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、偏光子;
前記偏光子上に位置し、(メタ)アクリレート系(共)重合体を含むバインダー樹脂を含有する第1ハードコーティング層;
前記第1ハードコーティング層上に位置し、3000nm以上のリタデーション(Retardation)を有し、面内に複屈折率を有する光透過性基材;および前記光透過性基材上に位置し、バインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子;を含む第2ハードコーティング層を含み、前記光透過性基材の遅相軸と、前記偏光子の吸収軸とが成す角度が5~85°である、偏光板を提供することができる。
【0011】
本発明の他の実施形態によれば、前記偏光板を含む画像表示装置を提供することができる。
【0012】
以下、発明の具体的な実施形態による偏光板および画像表示装置についてより詳細に説明する。
【0013】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0014】
また、(メタ)アクリル[(meth)acryl]は、アクリル(acryl)およびメタクリル(methacryl)を両方とも含む意味である。
【0015】
また、中空構造の無機ナノ粒子とは、無機ナノ粒子の表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。
【0016】
また、(共)重合体は、共重合体(co-polymer)および単独重合体(homo-polymer)を両方とも含む意味である。
【0017】
本発明者らは、支持基材として面内に複屈折率を有する光透過性基材を使用し、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材において屈折率が最も大きい方向である遅相軸と、前記偏光子の吸収軸とが成す鋭角の角度が5~85°、10~80°、20~80°、20~70°、30~70°、35~65°または35~50°になるように、前記偏光子に対する前記光透過性基材の配列方向を制御することによって偏光板のレインボー現象が抑制され輝度が高まって視認性が向上し、強度などの機械的特性が向上するという点を実験を通じて確認して発明を完成した。
【0018】
また、これと共に、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材のリタデーションを3,000nm以上、4,000~10,000nm、または5,000~8,000nmに制御することによって相殺干渉によるレインボー現象が抑制され、セルロースエステル系フィルムに準ずるように画像表示装置の視認性を向上させることができるのが確認された。
【0019】
万一、前記光透過性基材の遅相軸と偏光子の吸収軸とが成す角度と、前記光透過性基材のリタデーションのうちのいずれか一つでも適切な範囲に制御されない場合、機械的特性が低下し、光透過性基材の複屈折性によってレインボー現象が発生し画像表示装置の視認性が低下することがある。
【0020】
また、前記光透過性基材の両面にそれぞれ第1および第2ハードコーティング層を形成した積層体を偏光子の一面に接合することによって、外部環境にぜい弱な偏光子を保護することができると同時に、偏光板全体の機械的物性を向上させることができるのが確認された。したがって、偏光子と前記偏光子上に形成された積層体を含む偏光板は、視認性および機械的物性が全て優れていることによって画像表示装置のウィンドウまたは前面板に適切に適用できる。
【0021】
以下、一実施形態の偏光板を各要素別に具体的に説明する。
【0022】
前記一実施形態の偏光板は偏光子を含む。前記偏光子は当該技術分野によく知られた偏光子、例えばヨウ素または二色性染料を含むポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムを使用することができる。この時、前記偏光子はポリビニルアルコールフィルムにヨウ素または二色性染料を染着させ延伸して製造できるが、その製造方法は特に限定されない。
【0023】
一方、前記偏光子がポリビニルアルコールフィルムである場合、ポリビニルアルコールフィルムは、ポリビニルアルコール樹脂またはその誘導体を含むものであれば特別な制限なく使用が可能である。この時、前記ポリビニルアルコール樹脂の誘導体としては、これに限定されるのではないが、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂などが挙げられる。または、前記ポリビニルアルコールフィルムは、当該技術分野において偏光子製造に一般に使用される市販されるポリビニルアルコールフィルム、例えば、クラレ社のP30、PE30、PE60、日本合成社のM3000、M6000などを使用することができる。
【0024】
一方、前記ポリビニルアルコールフィルムは、これによって限定されるのではないが、重合度が1000~10000または1500~5000であってもよい。重合度が前記範囲を満足する時、分子の動きが自由であり、ヨウ素または二色性染料などと柔軟に混合できる。また、前記偏光子は厚さが30μm以下、20μm以下、1~20μm、または1μm~10μmであってもよい。この場合、前記偏光子を含む偏光板や画像表示装置などのデバイスの薄形軽量化が可能である。
【0025】
前記一実施形態による偏光板は、前記偏光子の一面に第1ハードコーティング層、面内に複屈折率を有する光透過性基材、および第2ハードコーティング層が順次に積層された積層体が接合されてもよい。この時、前記光透過性基材としては、耐水性に優れて光漏れ現象を誘発する可能性が殆どなく、機械的物性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することができる。また、前記光透過性基材の両面に第1および第2ハードコーティング層がそれぞれ形成されることによってガラス素材を代替することができる機械的物性を有するようになり、これによって、前記積層体が形成された偏光板は画像表示装置のウィンドウまたは前面板に適切に適用できる。
【0026】
一方、前記第1ハードコーティング層と対向する偏光子の他の一面に1/4波長板(Quarter Wave Plate)が接合されてもよい。前記1/4波長板は光の偏光方向を45°変化させる波長板(Wave Plate)であって、線偏光の入射偏光を円偏光に変える役割を果たすことができる。例えば、線偏光と光軸との角度が45°である場合、出射偏光は右円偏光(right handed circular polarization)になり得る。
【0027】
前記偏光子の両面にそれぞれ前記1/4波長板および積層体を位置させ、前記偏光子の吸収軸と前記光透過性基材の遅相軸とが成す角度が5~85°に制御されることによって、本発明の一実施形態による偏光板のレインボー現象が抑制され輝度が高まって視認性が向上できる。
【0028】
前記偏光子の一面に前記第1ハードコーティング層を含む積層体を接合し、他の一面に1/4波長板を接合する方法は、例えば、ロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーターまたはキャピラリーコーターなどを使用して偏光子、第1ハードコーティング層または1/4波長板表面に接着剤をコーティングした後、これらを貼り合わせロールで加熱貼り合わせするか、常温圧着して貼り合わせる方法または貼り合わせた後にUV照射する方法などによって行うことができる。一方、前記接着剤としては当該技術分野で使用される多様な偏光板用接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、陽イオン系またはラジカル系接着剤などが制限なく使用できる。
【0029】
前記一実施形態の偏光板は、前記偏光子および面内に複屈折率を有する光透過性基材の間に位置する第1ハードコーティング層を含む。
【0030】
前記第1ハードコーティング層は、(メタ)アクリレート系(共)重合体を含むバインダー樹脂を含むことができる。
【0031】
また、前記バインダー樹脂に含まれている(メタ)アクリレート系(共)重合体は、単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系繰り返し単位およびウレタン(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含んで、第1ハードコーティング層に高硬度、柔軟性および耐衝撃性を付与することができる。
【0032】
前記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系繰り返し単位は単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系化合物に由来したものであり、前記ウレタン(メタ)アクリレート系繰り返し単位はウレタン(メタ)アクリレート系化合物に由来したものである。したがって、前記(メタ)アクリレート系(共)重合体は、前記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系化合物およびウレタン(メタ)アクリレート系化合物が架橋重合されて形成できる。
【0033】
前記単官能あるいは多官能(メタ)アクリレート系化合物は、紫外線、赤外線、電子線(E-beam)、熱によって架橋反応が行われて塗膜を硬化させることができる(メタ)アクリレート構造が分子内に1つ以上含む化合物であって、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)、またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などであってもよい。
【0034】
一方、前記ウレタン(メタ)アクリレート系化合物は、ウレタン結合を媒介にして(メタ)アクリレート系化合物が結合されたものであって、モノマー形態あるいはオリゴマー形態であってもよい。前記ウレタン(メタ)アクリレート系モノマーあるいはオリゴマーの平均分子量は、500~200,000、700~150,000、1,000~120,000、または2,000~100,000であってもよい。
【0035】
前記一実施形態による偏光板は、前記第1ハードコーティング層上に位置する面内に複屈折率を有する光透過性基材を含む。先に言及したように、前記光透過性基材は、リタデーション(Retardation)が3,000nm以上、4,000~10,000nm、または5,000~8,000nmであり、光透過性基材の遅相軸と偏光子の吸収軸とが成す鋭角の角度が5~85°になるように、前記第1ハードコーティング層上に配列することによってレインボー現象が現れず視認性に優れた効果および機械的物性に優れた効果を示すことができる。
【0036】
前記リタデーションは、光透過性基材の面内で最も屈折率が大きい方向である遅相軸方向の屈折率(nx)、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)、および前記光透過性基材の厚さd(単位:nm)を、下記数式1に代入して計算したものであってもよい。
【0037】
[数式1]
Re=(nx-ny)×d
【0038】
また、このようなリタデーションは、例えば、自動複屈折計(KOBRA-WR、測定角:0°、測定波長:548.2nm)を用いて測定された値であってもよい。または、前記リタデーションは、次の方法でも求めることができる。まず、2枚の偏光板を用いて前記光透過性基材の配向軸方向に備え、配向軸方向に対して直交する二つの軸屈折率(nx、ny)をAbbe式屈折率計(NAR-4T)によって求める。この時、より大きい屈折率を示す軸を遅相軸と定義する。また、前記光透過性基材の厚さを例えば電気マイクロメータを用いて測定し、先に得られた屈折率を用いて屈折率差(nx-ny)(以下、nx-nyをΔnという)を算出し、この屈折率差Δnと光透過性基材の厚さd(nm)との積によってリタデーションを求めることができる。
【0039】
前記光透過性基材のリタデーションが3000nm以上であるので、屈折率差(Δn)、即ち、遅相軸方向の屈折率(nx)と、前記遅相軸方向と直交する方向である進相軸方向の屈折率(ny)との差(Δn=nx-ny)は0.05以上、0.05~0.20、または0.08~0.13であってもよい。前記屈折率差(Δn)が0.05未満であれば、前述のリタデーション値を得るために必要な前記光透過性基材の厚さが厚くなることがある。一方、屈折率差Δnが0.20を超過すれば、延伸倍率を過度に高める必要が発生するので、前記光透過性基材が破れ破壊されやすくて工業材料としての実用性が顕著に低下されることがあり、耐湿熱性が低下されることがある。
【0040】
前記光透過性基材の遅相軸方向での屈折率(nx)は、1.60~1.80または1.65~1.75であってもよい。一方、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の進相軸方向での屈折率(ny)は、1.50~1.70、または1.55~1.65であってもよい。
【0041】
前記面内に複屈折率を有する光透過性基材の厚さは、これによって制限されるわけではないが、10~500μm、30~400μm、または50~350μmであってもよい。前記光透過性基材の厚さが10μm未満であればハードコーティング層の厚さより過度に薄くて撓みが発生し、光透過性基材の柔軟性が落ちて工程を制御しにくいことがあり、500μm超過すれば光透過性基材の透過率が減少して光学物性が下落することがあり、これを含む画像表示装置を薄膜化しにくいという問題点がある。
【0042】
一方、前記光透過性基材としては、耐水性に優れて光漏れ現象を誘発する可能性が殆どなく、機械的物性に優れたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを使用することができる。
【0043】
前記一実施形態の偏光板は、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材上に位置する第2ハードコーティング層を含む。前記第2ハードコーティング層はバインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子を含んで、第2ハードコーティング層に高硬度、柔軟性および耐衝撃性を付与することができる。
【0044】
前記第2ハードコーティング層のバインダー樹脂は、光硬化性樹脂および重量平均分子量が10,000g/mol以上である(共)重合体(以下、高分子量(共)重合体という)を含むことができる。
【0045】
前記光硬化性樹脂は、紫外線などの光が照射されれば重合反応を起こすことができる光重合性化合物の重合体であって、例えば、ウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシドアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートおよびポリエーテルアクリレートからなる反応性アクリレートオリゴマー群;およびジペンタエリトリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、グリセリンプロポキシレートトリアクリレート、トリメチルプロパンエトキシレートトリアクリレート、トリメチルプロピルトリアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレートおよびエチレングリコールジアクリレートからなる多官能性アクリレート単量体からなる群より選択される1種以上が使用できる。
【0046】
前記高分子量(共)重合体は、例えば、セルロース系ポリマー、アクリル系ポリマー、スチレン系ポリマー、エポキシド系ポリマー、ナイロン系ポリマー、ウレタン系ポリマーおよびポリオレフィン系ポリマーからなる群より選択される1種以上のポリマーを含むことができる。
【0047】
前記第2ハードコーティング層のバインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子は、100nm未満の最大直径を有し、その内部に空の空間が存在しない形態の粒子を意味する。前記ソリッド型無機ナノ粒子は、0.5~100nm、または1~30nmの直径を有することができる。また、前記ソリッド型無機ナノ粒子は、2.00g/cm3~5.00g/cm3の密度を有することができる。
【0048】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選択された1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記ソリッド型無機ナノ粒子表面に前述の反応性官能基を含有することによって、より高い架橋度を有することができて第2ハードコーティング層に高硬度、柔軟性および耐衝撃性を付与することができる。
【0049】
前記第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層の厚さ比は、1:0.5~1:1.5、1:0.6~1.4、または1:0.8~1.3であってもよい。前記第1ハードコーティング層と第2ハードコーティング層の厚さ比が1:0.5未満であるか1:1.5超過すれば、フィルムの撓みが発生して扁平なフィルム形態を維持しにくく光学フィルムとして活用できなくなる。
【0050】
前記光透過性基材および第2ハードコーティング層の厚さ比は、1:0.1~1:1、1:0.2~0.9、または1:0.3~0.8であってもよい。前記光透過性基材および第2ハードコーティング層は厚さ比が1:0.1未満であればフィルムの硬度と耐スクラッチ性が低下して外部衝撃から偏光板を保護することができず、1:1超過すればフィルムの硬度が過度に高まって偏光子との接合工程と第1ハードコーティング層コーティング工程時にフィルムが撓わなく折れることがある。
【0051】
前記光透過性基材の両面にそれぞれ第1ハードコーティング層および第2ハードコーティング層を形成する方法は、例えば、前記光透過性基材の両面にそれぞれ第1および第2ハードコーティング層形成用組成物をロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーターまたはキャピラリーコーターなどの方法でコーティングし、溶媒を揮発させた後に熱/光硬化して前記第1および第2ハードコーティング層を含む積層体を製造することができる。
【0052】
その後、前記偏光子または積層体にロールコーター、グラビアコーター、バーコーター、ナイフコーターまたはキャピラリーコーターなどを使用して接着剤をコーティングした後、これらを張り合わせロールで加熱張り合わせするか、常温圧着して張り合わせる方法または張り合わせた後にUV照射する方法などによって行うことができる。一方、前記接着剤としては、当該技術分野で使用される多様な偏光板用接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、陽イオン系またはラジカル系接着剤などを制限なく使用することができる。
【0053】
または、偏光子に第1ハードコーティング層形成用組成物をコーティングおよび熱/光硬化して第1ハードコーティング層を形成し、前記第1ハードコーティング層に対向するように前記偏光子の他の一面に位置する1/4波長板を接合し、前記第1ハードコーティング層上に前記光透過性基材を接合した後、前記光透過性基材上に第2ハードコーティング層形成用組成物をコーティングおよび熱/光硬化して第2ハードコーティング層を形成する方法で、前記偏光板を製造することができる。
【0054】
前記一実施形態の偏光板は、前記第2ハードコーティング層上に位置する低反射層をさらに含むことができる。このような低反射層は、バインダー樹脂;および前記バインダー樹脂に分散した無機ナノ粒子を含むことができる。この時、前記無機ナノ粒子は、中空型無機ナノ粒子、ソリッド型無機ナノ粒子、またはこれらの混合物であってもよい。
【0055】
前記バインダー樹脂は、多官能(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含む(共)重合体を含み、このような繰り返し単位は例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などの多官能(メタ)アクリレート系化合物に由来したものであってもよい。
【0056】
前記低反射層は、光反応性官能基を有する含フッ素化合物および/または光反応性官能基を有するケイ素系化合物をさらに含むことができる。前記含フッ素化合物またはケイ素系化合物に含まれる光反応性官能基は、(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選択された1種以上の官能基を含むことができる。
【0057】
前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物は、i)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つの炭素に1以上のフッ素が置換された脂肪族化合物または脂肪族環化合物;ii)1以上の光反応性官能基で置換され、少なくとも一つの水素がフッ素で置換され、一つ以上の炭素がケイ素で置換されたヘテロ(hetero)脂肪族化合物またはヘテロ(hetero)脂肪族環化合物;iii)一つ以上の光反応性官能基が置換され、少なくとも一つのケイ素に1以上のフッ素が置換されたポリジアルキルシロキサン系高分子;およびiv)1以上の光反応性官能基で置換され少なくとも一つの水素がフッ素で置換されたポリエーテル化合物;からなる群より選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0058】
前記中空型無機ナノ粒子は、200nm未満の最大直径を有しその表面および/または内部に空の空間が存在する形態の粒子を意味する。前記中空型無機ナノ粒子は、1~200nm、または10~100nmの数平均粒径を有するソリッド型無機微細粒子からなる群より選択された1種以上を含むことができる。また、前記中空型無機ナノ粒子は、1.50g/cm3~3.50g/cm3の密度を有することができる。
【0059】
前記中空型無機ナノ粒子は、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選択された1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記中空型無機ナノ粒子表面に前述の反応性官能基を含有することによって、より高い架橋度を有することができる。
【0060】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は、0.5~100nmの数平均粒径を有するソリッド型無機微細粒子からなる群より選択された1種以上を含むことができる。
【0061】
前記低反射層は、前記(共)重合体100重量部に対して前記無機ナノ粒子10~400重量部;および前記光反応性官能基を含む含フッ素化合物および/またはケイ素系化合物20~300重量部を含むことができる。
【0062】
前記偏光板は、このような低反射層を含むことによって、前記第1ハードコーティング層上に位置する光透過性基材での反射自体が減ることになり、その結果、一実施形態の偏光板でレインボー現象の発生を効果的に抑制することができる。また、前記低反射層を含む画像表示装置の表示面での乱反射を減らして解像度および視認性をより向上させることができる。
【0063】
このような低反射層は、前記面内に複屈折率を有する光透過性基材での反射や、画像表示装置の表示面での乱反射などを効果的に抑制するために、例えば、1.3~1.5、1.35~1.45、あるいは1.38~1.43の屈折率を有し、1~300nm、5~200nm、あるいは50~150nmの厚さを有することができる。
【0064】
前記一実施形態の偏光板は、前記第2ハードコーティング層上に位置する耐汚染層をさらに含むことができる。前記耐汚染層は、バインダー樹脂;前記バインダー樹脂に分散したソリッド型無機ナノ粒子;およびフッ素系化合物を含むことができる。
【0065】
前記耐汚染層のバインダー樹脂は、(メタ)アクリレート系繰り返し単位を含有した共重合体を含むことができる。前記(メタ)アクリレート系繰り返し単位は例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)、またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などの多官能(メタ)アクリレート系化合物に由来したものであってもよい。前記耐汚染層のバインダー樹脂は、ソリッド型無機ナノ粒子と混合して使用時、適切な分散性と架橋度を維持するために2種以上混合して使用することができる。
【0066】
前記ソリッド型無機ナノ粒子は、0.5~100nm、または1~30nmの直径を有することができる。また、前記ソリッド型無機ナノ粒子は、2.00g/cm3~5.00g/cm3の密度を有することができる。また、前記ソリッド型無機ナノ粒子は、表面に(メタ)アクリレート基、エポキシド基、ビニル基(Vinyl)およびチオール基(Thiol)からなる群より選択された1種以上の反応性官能基を含有することができる。前記ソリッド型無機ナノ粒子表面に前述の反応性官能基を含有することによって、より高い架橋度を有することができ、これによってより向上した防汚性を確保することができる。
【0067】
前記フッ素系化合物は化合物中に少なくとも1つ以上のフッ素元素が含まれている化合物を意味するものであって、前記耐汚染層にはフッ素系化合物が含まれるか、前記フッ素系化合物間の架橋(共)重合体を含むことができる。
【0068】
前記フッ素系化合物は、2,000~200,000、または5,000~100,000の重量平均分子量(GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量)を有することができる。前記フッ素系化合物の重量平均分子量が2,000未満であればフッ素系化合物が均一且つ効果的に配列されなくて耐汚染層の防汚性が低下することがあり、200,000超過すれば他の成分との相溶性が低まることがある。
【0069】
前記偏光板は、前記偏光子に対向するように前記1/4波長板の他の一面に形成された粘着層をさらに含むことができる。前記1/4波長板の一面には偏光子が位置し、前記偏光子が位置する1/4波長板の一面の反対面には前記粘着層が配置されてもよい。
【0070】
前記粘着層は、前記一実施形態の偏光板と画像表示装置の画像パネルの付着が可能なようにすることができる。前記粘着層は当該技術分野によく知られている多様な粘着剤を使用して形成することができ、その種類が特に制限されるわけではない。例えば、前記粘着層は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリビニルアルコール系粘着剤、ポリビニルピロリドン系粘着剤、ポリアクリールアミド系粘着剤、セルロース系粘着剤、ビニルアルキルエーテル系粘着剤などを用いて形成することができる。
【0071】
前記粘着層は、1/4波長板の上部に粘着剤を塗布する方法で形成することもでき、離型シート上に粘着剤を塗布した後に乾燥させて製造される粘着シートを1/4波長板上部に付着する方法で形成することもできる。
【0072】
前記一実施形態による偏光板の偏光子の一面には、面内に複屈折率を有する光透過性基材と前記光透過性基材の両面に形成された第1および第2ハードコーティング層を含む積層体が接合されていることによって、硬度などの機械的物性が非常に優れた長所がある。具体的に、前記偏光板は、500g荷重で鉛筆硬度が6H以上、7H~9H、または8H~9Hであってもよい。
【0073】
また、前記偏光板において偏光子を除いた構造、即ち、前記第1ハードコーティング層、光透過性基材および第2ハードコーティング層を含む積層体は、1kg荷重で鉛筆硬度が6H以上、7H~9H、または8H~9Hであってもよい。
【0074】
さらに、前記積層体、および前記積層体上に形成された低反射層(または耐汚染層)を含む反射防止フィルムは、1kg荷重で鉛筆硬度が6H以上、7H~9H、または8H~9Hであってもよい。
【0075】
一方、前記偏光板に含まれている面内に複屈折率を有する光透過性基材は、前記光透過性基材の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とが成す鋭角の角度が5~85°になるように配列されることによって、レインボー現象が抑制される長所がある。
【0076】
前記偏光板のレインボー現象を定量的に測定するために、まず、偏光板の反射率を測定し、測定された反射率データから反射率の平均および最大反射率と最小反射率の差を計算した後、これを下記数式1に代入してレインボーの変動比を定量的に確認することができる。
【0077】
具体的に、偏光板の反射率測定は、Shimadzu社のUV-VIS分光器(UV-VIS spectrometer、モデル名:UV2550)を使用し、5°反射モード、スリット幅(slit width)2nm、および分析波長範囲380~780nmの条件で反射率を測定し、450~650nmの間での反射率データを導出した後、450~650nmでの反射率平均および最大反射率と最小反射率の差を計算し、これを下記数式1に代入してレインボーの変動比(ΔRb)を計算することができる。この時、前記レインボー変動比は、10%以下、または1%~10%であってもよい。
【0078】
[数式1]
ΔRb=(450~650nmでの最大反射率-450~650nmでの最小反射率)÷(450~650nmでの反射率平均)×100
【0079】
本発明の他の実施形態によれば、前記偏光板を含む画像表示装置を提供する。具体的に、前記画像表示装置は、表示パネル;および前記表示パネルの少なくとも一面に位置する前記偏光板を含むことができる。
【0080】
前記表示パネルは液晶パネル、プラズマパネルおよび有機発光パネルであってもよく、これにより、前記画像表示装置は液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP)および有機電界発光表示装置(OLED)であってもよい。
【0081】
より具体的に、前記画像表示装置は液晶パネルおよび前記液晶パネルの両面にそれぞれ備えられた光学積層体を含む液晶表示装置であってもよく、この時、前記偏光板のうちの少なくとも一つが前述の本明細書の一実施状態による偏光子を含む偏光板であってもよい。この時、前記液晶表示装置に含まれる液晶パネルの種類は特に限定されないが、例えば、TN(twisted nematic)型、STN(super twisted nematic)型、F(ferroelectic)型またはPD(polymer dispersed)型のような手動行列方式のパネル;2端子型(two terminal)または3端子型(three terminal)のような能動行列方式のパネル;横電界型(IPS;In Plane Switching)パネルおよび垂直配向型(VA;Vertical Alignment)パネルなどの公知のパネルが全て適用可能である。
【発明の効果】
【0082】
本発明によれば、ポリエステル系基材フィルムを含みながらも、レインボー現象が現れず、視認性および機械的物性が優れていることによって、画像表示装置のウィンドウまたは前面板に好ましく適用できる偏光板およびこれを含む画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0083】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例】
【0084】
合成例1:ポリ変性ウレタンアクリレート合成
3官能以上の多価イソシアネート系化合物としてHDI系トリマーである愛敬化学のDN980Sを使用し、ポリエチレングリコール変性(メタ)アクリレート系化合物として、互いに異なる繰り返し数のポリエチレングリコール繰り返し単位を含んで互いに異なる数平均分子量を有するポリエチレングリコールモノアクリレート(Mn=300)と、ポリエチレングリコールモノアクリレート(Mn=500)をそれぞれ使用した。
【0085】
前記多価イソシアネート系化合物40g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(Mn=300)30g、ポリエチレングリコールモノアクリレート(Mn=500)30gをDBTDL(Dibutyl tin dilaurate)0.1gおよびメチルエチルケトン(methyl ethyl ketone)200gと共に混合し、60℃で約5時間攪拌してウレタン反応を行った。このようなウレタン反応の終了によって、ポリエチレングリコール変性多官能ウレタン(メタ)アクリレート系バインダーを製造した。
【0086】
前記ウレタン反応の進行有無およびバインダーの生成は、FT-IRを通じて確認した。FT-IR分析時、約2268.5cm-1の位置で現れるイソシアネート基(-NCO)由来ピークがウレタン反応前後に無くなることを通じて前記ウレタン反応の進行有無およびバインダーの生成を確認した。
【0087】
合成例2:高分子量共重合体合成
ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリブチルアクリレート(PBA)をRAFT重合(Reversible addition fragment chain transfer polymerization)反応して高分子量共重合体(PMMA-PBAブロック共重合体)を製造した。この時、PMMAとPBAの体積比は約1:1であり、数平均分子量は約30,000g/molであった。また、PMMA-PBAブロック共重合体の自己組織化によって形成されたミセル構造の平均粒径は約15nmであった。
【0088】
製造例1:第1ハードコーティング層形成用コーティング液(A)製造
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)38.74g、前記合成例1で製造したポリ変性ウレタンアクリレート30.99g、前記合成例2で製造した高分子量共重合体7.75g、TPO(Ciba社光硬化用開始剤)2.31g、T270(Tego社レべリング剤)0.21g、溶媒であるメチルエチルケトン(MEK)13.33gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)6.67gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液(A)を製造した。
【0089】
製造例2:第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-1)製造
ペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)12.48g、C165(平均直径12nmのソリッド型シリカナノ粒子とペンタエリトリトールトリアクリレートが1:1重量比で混合された製品。NanoResin社製品)49.90g、前記合成例2で製造した高分子量共重合体4.80g、TPO(Ciba社光硬化用開始剤)2.69g、T270(Tego社レべリング剤)0.13g、溶媒であるエチルメチルケトン(MEK)20gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)10gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-1)を製造した。
【0090】
製造例3:第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-2)製造
ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)4.12g、C165(平均大きさ12nmの中空型ナノ粒子とペンタエリトリトールトリアクリレートが1:1重量比で混合された製品。NanoResin社製品)51.49g、前記合成例2で製造した高分子量共重合体6.18g、TPO(Ciba社光硬化用開始剤)3.09g、T270(Tego社レべリング剤)0.12g、溶媒であるエチルメチルケトン(MEK)23.33gおよびメチルイソブチルケトン(MIBK)11.67gを混合して第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-2)を製造した。
【0091】
製造例4:低反射層形成用コーティング液(C)の製造
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)100g、中空型シリカナノ粒子(直径範囲:約42nm~66nm、JSC catalyst and chemicals社製品)283g、ソリッド型シリカナノ粒子(直径範囲:約12nm~19nm)59g、第1含フッ素化合物(X-71-1203M、ShinEtsu社)115g、第2含フッ素化合物(RS-537、DIC社)15.5gおよび開始剤(Irgacure 127、Ciba社)10gを、MIBK(methyl isobutyl ketone)溶媒に固形分濃度3重量%になるように希釈して低反射層形成用コーティング液(C)を製造した。
【0092】
製造例5:耐汚染層形成用コーティング液(D)製造
多官能アクリレートとしてペンタエリトリトールトリアクリレート(PETA)28g、ウレタンアクリレートとしてトルエンジイソシアネートとペンタエリトリトールトリアクリレートの反応物(UA-306T、Kyoeisha製品)4.5g、平均粒径が12nmであるソリッド型シリカナノ粒子がメチルイソブチルケトンに分散した分散液(MEK-AC-2202、固形分40%、溶媒:メチルエチルケトン(MEK)、Nissan Chemical製品)10g、開始剤としてイルガキュア184およびイルガキュア127それぞれ1.6gを溶媒であるメチルエチルケトン35.2gおよびイソプロピルアルコール17.6gと混合した。その後、フッ素系化合物であるOptool DAC(固形分20%、溶媒:メチルエチルケトン:メチルイソブチルケトン=3:1、Shinetsu製品)1.5gを添加して耐汚染層形成用コーティング液(D)を製造した。
【0093】
実施例1
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
250μmの厚さと3000nmリタデーションを有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に前記製造例1で製造された第1ハードコーティング層形成用コーティング液(A)を#85 mayer barでコーティングした後、80℃で2分乾燥し、UV硬化して第1ハードコーティング層を形成した。UVランプはD bulbを使用し、窒素雰囲気下で硬化反応を行った。硬化時照射されたUV光量は1000mJ/cm2である。厚さ測定器で第1ハードコーティング層の厚さを測定した結果、コーティング厚さは71μmである。
【0094】
前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの前記第1ハードコーティング層と反対面側に前記製造例2で製造された第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-1)を#60 mayer barでコーティングした後、80℃で2分乾燥し、UV硬化して第2ハードコーティング層を形成した。第2ハードコーティングのUV硬化はD bulbランプで、窒素雰囲気下で硬化した。硬化時照射されたUV光量は180mJ/cm2である。厚さ測定器で第2ハードコーティング層の厚さを測定した結果、コーティング厚さは45μmである。
【0095】
(2)低反射層形成
前記第2ハードコーティング層上に、前記製造例4で製造した低反射層形成用コーティング液(C)を#10 mayer barで厚さが約100nmになるようにコーティングし、90℃オーブンで1分間乾燥後、硬化して低反射層を形成した。前記硬化時には窒素パージ下で乾燥されたコーティング物に252mJ/cm2の紫外線を照射した。
【0096】
その後、透過電子顕微鏡(TEM)を用いて前記低屈折層に含まれている中空型シリカナノ粒子およびソリッド型シリカナノ粒子それぞれ100~170個の最長直径を測定し、これを10回繰り返して前記中空型シリカナノ粒子およびソリッド型シリカナノ粒子の平均粒径を求めた。その結果、中空型シリカナノ粒子の平均直径は54.9nmであり、ソリッド型シリカナノ粒子の平均直径は14.5nmであるのを確認した。
【0097】
(3)偏光板製造
ポリビニルアルコール偏光子の一側面にUV硬化型接着剤を用いて1/4波長板をラミネーションして接着した。1/4波長板フィルムが接着されていないポリビニルアルコール偏光子の他側面に前記積層体の第1ハードコーティング層の面をUV硬化型接着剤で接着した。この時、ポリビニルアルコール偏光子の吸収軸と前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸とが成す角度を45°に制御した。その後、粘着剤フィルムを前記1/4波長板面に接着して粘着層を形成した。
【0098】
実施例2
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
第1ハードコーティング層の厚さが75μmであり、第2ハードコーティング層の厚さが42μmであるという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0099】
(2)耐汚染層形成
前記第2ハードコーティング層上に、前記製造例5で製造された耐汚染層形成用コーティング液(D)を#10 mayer barで厚さが約3μmになるようにコーティングし、90℃オーブンで2分間乾燥後、硬化して耐汚染層を形成した。前記硬化時には窒素パージ下で前記乾燥されたコーティング物に252mJ/cm2の紫外線を照射した。
【0100】
(3)偏光板製造
ポリビニルアルコール偏光子の吸収軸と前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸とが成す角度を50°に制御したという点を除いて、実施例1と同様な方法で偏光板を製造した。
【0101】
実施例3
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-1)の代わりに第2ハードコーティング層形成用コーティング液(B-2)を使用して第2ハードコーティング層を形成し、第1ハードコーティング層の厚さを100μmに制御し、第2ハードコーティング層の厚さを70μmに制御したという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0102】
(2)耐汚染層形成
実施例2の耐汚染層形成方法と同様な方法で前記第2ハードコーティング層上に耐汚染層を形成した。
【0103】
(3)偏光板製造
ポリビニルアルコール偏光子の吸収軸と前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸とが成す角度を50°に制御したという点を除いて、実施例1と同様な方法で偏光板を製造した。
【0104】
実施例4
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
ポリエチレンテレフタレートフィルムの厚さが80μmであり、第1ハードコーティング層の厚さが22μmであり、第2ハードコーティング層の厚さが21μmであるという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0105】
(2)耐汚染層形成
耐汚染層の厚さが2.8μmであるという点を除いて、実施例2の耐汚染層形成方法と同様な方法で第2ハードコーティング層上に耐汚染層を形成した。
【0106】
(3)偏光板製造
実施例1と同様な方法で偏光板を製造した。
【0107】
比較例1
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
ポリエチレンテレフタレートフィルムの代わりに厚さが80μmであるトリアセチルセルロースフィルムを使用し、第1ハードコーティング層の厚さが24μmであり、第2ハードコーティング層の厚さが21μmであるという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0108】
(2)耐汚染層形成
実施例2の耐汚染層形成方法と同様な方法で第2ハードコーティング層上に耐汚染層を形成した。
【0109】
(3)偏光板製造
実施例1と同様な方法で偏光板を製造したが、トリアセチルセルロースフィルムは無延伸フィルムなので遅相軸と進相軸の区別が曖昧であるため、方向に関係なく接着した。
【0110】
比較例2
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
第1ハードコーティング層の厚さが73μmであり、第2ハードコーティング層の厚さが42μmであるという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0111】
(2)耐汚染層形成
耐汚染層の厚さが2.7μmであるという点を除いて、実施例2の耐汚染層形成方法と同様な方法で第2ハードコーティング層上に耐汚染層を形成した。
【0112】
(3)偏光板製造
ポリビニルアルコール偏光子の吸収軸と前記ポリエチレンテレフタレートフィルムの遅相軸とが成す角度を0°に制御したという点を除いて、実施例1と同様な方法で偏光板を製造した。
【0113】
比較例3
(1)第1ハードコーティング層、基材、および第2ハードコーティング層を含む積層体製造
第1ハードコーティング層を形成しなかったという点を除いて、実施例1と同様な方法で積層体を製造した。
【0114】
(2)耐汚染層形成
耐汚染層の厚さが2.8μmであるという点を除いて、実施例2の耐汚染層形成方法と同様な方法で第2ハードコーティング層上に耐汚染層を形成した。
【0115】
(3)偏光板製造
1/4波長板が接着されていないポリビニルアルコール偏光子の他側面に前記積層体のポリエチレンテレフタレートフィルムをUV硬化型接着剤で接着したという点を除いて、実施例1と同様な方法で偏光板を製造した。
【0116】
[評価]
1.鉛筆硬度測定
実施例および比較例で製造された偏光板に対して、鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400によって500gの荷重、45°の角度で5回かいた後、肉眼で判別して傷がない最大硬度を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0117】
また、実施例および比較例の偏光板で偏光子が張り合わせられていない構造、即ち、前記(1)第1ハードコーティング層、光透過性基材および第2ハードコーティング層を含む積層体、および(2)耐汚染層(または低反射層)を含むハードコーティングフィルムに対して、鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400によって1.0kgの荷重、45°の角度で5回かいた後、肉眼で判別して傷がない最大硬度を評価し、その結果を下記表1に示した。
【0118】
2.サングラスレインボー現象有無
実施例および比較例で製造されたフィルムの粘着層面にブラックテープ(Vinyl tape 472 Black、3M社製造)を付けた後、耐汚染層あるいは低反射層がある面を三波長ランプに照らして肉眼でレインボーが発生するかどうかを確認し、その結果を下記表1に示した。肉眼評価時、暗室で三波長ランプ下で評価した。
【0119】
<測定基準>
X:レインボー染みが存在しない。
○:レインボー染み存在。
【0120】
3.レインボー変動比測定
前記レインボーの程度を定量的に比較するために、実施例および比較例の偏光板の反射率を次の方法で測定し、レインボー変動比を計算した。
【0121】
実施例および比較例で偏光板を4cm×4cm大きさに切断し、第2ハードコーティング層にブラックテープ(Vinyl tape 472 Black、3M社製造)を付けた後、Shimadzu社のUV-VIS分光器(UV-VIS spectrometer、モデル名:UV2550)を使用して5°反射モード、スリット幅(slit width)2nm、分析波長範囲380~780nmで反射率を測定し、450~650nmの間での反射率をデータを導出した。導出された450~650nmの間での反射率をデータから反射率平均および最大反射率と最小反射率の差を計算し、これを下記式に代入してレインボーの変動比(ΔRb)を計算し、その結果を下記表1に示した。
【0122】
ΔRb=(450~650nmでの最大反射率-450~650nmでの最小反射率)÷(450~650nmでの反射率平均)×100
【0123】
4.撓み(Curl)測定
10cm×10cm大きさに裁断された実施例および比較例の偏光板の耐汚染層または低反射層が上にくるようにし、真ん中部分が底に当たるように直径1cm以下の棒で偏光板の真ん中部分を押した。この時、四つの頂点が底面から浮く高さを測定した後、高さの平均を計算して撓み値を求めた。このように求められた撓み値は正数で表現した。もしフィルムが第1ハードコーティング層方向に撓んでいれば、偏光板をひっくり返して耐汚染層または低反射層が底にくるようにし、同様な方法で撓み値を求め、この時のベンディングの値を負数で表現した。
【0124】
【0125】
上記表1によれば、実施例1~4は鉛筆硬度に優れ、レインボー現象が現れなく、レインボー変動比および撓み値が低くて光学特性および機械的物性に優れているという点を確認した。
【0126】
反面、面内に複屈折率を有する光透過性基材を使用していない比較例1は鉛筆硬度が低くて機械的物性が低く、光透過性基材の遅相軸と偏光子の吸収軸とが成す角度が0°である比較例2はレインボー現象が現れ、レインボー変動比が高くて光学特性が低く、第1ハードコーティング層を含まない比較例3は撓み値が非常に高いのを確認した。