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特許7330592ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 297/04 20060101AFI20230815BHJP
   C08F 297/06 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C08F297/04
C08F297/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021551944
(86)(22)【出願日】2020-05-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2020006455
(87)【国際公開番号】W WO2020235892
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】10-2019-0058295
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121191
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ヒョン・モ・イ
(72)【発明者】
【氏名】ソク・ピル・サ
(72)【発明者】
【氏名】スル・キ・イム
(72)【発明者】
【氏名】ジ・ヒュン・パク
(72)【発明者】
【氏名】ユン・コン・キム
(72)【発明者】
【氏名】キ・ス・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウン・ジ・シン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/182174(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)及び(b)の条件を満たし、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ブテン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ペンテン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ヘプテン)-ポリスチレンブロック共重合体及びポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-オクテン)-ポリスチレンブロック共重合体よりなる群から選択された1種以上である、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体であって、
(a)温度160℃、周波数(frequency、ω)0.5rad/秒における複素粘度(complex viscosity、η*):40,000から350,000Pa・s
(b)温度160℃、周波数125rad/秒における複素粘度:900から3,500Pa・s
前記ポリオレフィンブロックは、下記化学式1a又は1bで表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、下記化学式4で表される有機亜鉛化合物を連鎖移動剤としてオレフィン系単量体を重合して形成される、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体:
【化1】
前記化学式1a及び化学式1bにおいて、
11は水素;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアリールアルコキシ基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数7から20のアリールアルキル基であり、
及びXは、それぞれ独立して水素;ハロゲン;ヒドロキシ基;アミノ基;チオ基;シリル基;シアノ基;ニトロ基;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数7から20のアリールアルキル基;炭素数5から20のヘテロアリール基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数6から20のアリールオキシ基;炭素数1から20のアルキルアミノ基;炭素数6から20のアリールアミノ基;炭素数1から20のアルキルチオ基;炭素数6から20のアリールチオ基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数6から20のアリールシリル基であり:
【化2】
前記化学式4において、
Aは、炭素数1から20のアルキレン;炭素数6から20のアリーレン;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリーレンであり、
Bは、炭素数2から12のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールである。
【請求項2】
前記周波数0.5rad/秒における複素粘度は45,000から300,000Pa・sであり、前記周波数125rad/秒における複素粘度は1,000から3,300Pa・sである、請求項1に記載のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体。
【請求項3】
前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の重量平均分子量は50,000から150,000g/molである、請求項1又は2に記載のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体。
【請求項4】
前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の分子量分布は1.5から3.0である、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体。
【請求項5】
前記R11は水素;又は炭素数1から20のアルキル基であり、
前記X及びXは、それぞれ独立して水素;ハロゲン;又は炭素数1から20のアルキル基である、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体。
【請求項6】
前記Aは、炭素数1から20のアルキレンであり、
前記Bは、炭素数2から8のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールである、請求項1~のいずれか一項に記載のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2019年5月17日付韓国特許出願第2019-0058295号及び2019年9月30日付韓国特許出願第2019-0121191号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、ポリオレフィン鎖の両末端にポリスチレン鎖が付着された構造のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ブロック共重合体は、日常的なプラスチックだけでなく先端機器にまで広く用いられる素材として研究と開発が活発に行われている。特に、ポリオレフィン系(POs)ブロックとポリスチレン系(PSs)ブロックを全て含むスチレン-オレフィン共重合樹脂は、耐熱性、耐光性、弾性力等に優れるという特徴があるため、非常に多様な技術分野で有用に用いられている。
【0004】
ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体、例えば、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン(Styrene-Ethylene-Butylene-Styrene;SEBS)又はスチレン-エチレン-プロピレン-スチレン(Styrene-Ethylene-Propylene-Styrene;SEPS)は、現在全世界的に数十万トン規模の市場が形成されている。代表的な例には、スチレン-オレフィン共重合樹脂の一つとして、ポリスチレン-ブロック(block)-ポリ(エチレン-co-1-ブテン)-ブロック-ポリスチレン(SEBS)三重ブロック共重合体が挙げられる。SEBS三重ブロック共重合体は、構造中の硬質ポリスチレンドメインが軟質ポリ(エチレン-co-1-ブテン)マトリックスから分離され物理的架橋サイトとして作用するため、熱可塑性エラストマーの特性を示す。このような特性により、SEBSは、ゴム及びプラスチック等を必要とする製品群においてより広く用いられており、その利用範囲が徐々に拡大するにつれて需要が大きく増加している。
【0005】
一方、共重合体の溶融粘度と弾性率等の物性は、フィルムのような押出加工条件の設定に大きな影響を及ぼす。共重合体の物性の分析のためには、溶融状態での複素粘度、貯蔵弾性率、損失弾性率等を測定して活用している。
【0006】
前記のような背景下で、物性と加工性との間のバランスが取れたより優れた製品の製造が要求され続け、特に、加工性に優れたポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の必要性がさらに要求される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第1657925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリオレフィン鎖の両末端にポリスチレン鎖が付着された構造のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を提供することにあって、具体的に、加工領域において低い複素粘度を示すため加工性に優れ、多様な用途に容易に適用できるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は、下記(a)及び(b)の条件を満たすポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を提供する。
(a)温度160℃、周波数(frequency、ω)0.5rad/秒における複素粘度(complex viscosity、η*):40,000から350,000Pa・s
(b)温度160℃、周波数125rad/秒における複素粘度:900から3,500Pa・s
【発明の効果】
【0010】
本発明で提供するポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、加工性に優れるため多様な産業的用途に有用に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態によるリガンド化合物のH NMR及び13C NMRスペクトルを示した図である。
図2】本発明の一実施形態による遷移金属化合物のH NMR及び13C NMRスペクトルを示した図である。
図3】本発明の一実施形態によるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の周波数による複素粘度を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に対する理解を深めるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0013】
本発明の説明及び特許請求の範囲において用いられた用語や単語は、通常的又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最善の方法によって説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即し、本発明の技術的思想に適合する意味と概念として解釈されなければならない。
【0014】
ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体
本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、下記(a)及び(b)の条件を満たすことを特徴とする。
(a)温度160℃、周波数(frequency、ω)0.5rad/秒における複素粘度(complex viscosity、η*):40,000から350,000Pa・s
(b)温度160℃、周波数125rad/秒における複素粘度:900から3,500Pa・s
【0015】
本発明者は、加工性に優れたポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造するために研究し、新規の遷移金属化合物を触媒として用いることで特定の範囲の複素粘度を有し、所望の加工性を具現するポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造できることを確認した。
【0016】
すなわち、本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、後述する通り、新規構造の特定の遷移金属化合物を触媒にして製造されたものであって、加工領域、例えば、周波数が高い領域での複素粘度が低いため優れた加工性を示すという特徴を有する。
【0017】
周波数による複素粘度のグラフは、例えば、ARES(Advanced Rheometric Expansion System)を用いて測定できる。前記周波数は、複合溶液に加えられる角速度を意味するもので、単位はrad/秒である。前記周波数が高いほど複合溶液の粘度が減少する現象が発生し、これを剪断流動化(shear thinning)と称する。すなわち、x-軸の周波数(frequency、rad/秒)によるy-軸の複素粘度(complex viscosity、Poise)のグラフは流動性と係わるものであって、周波数に対する複素粘度の勾配が低いほど流動性が小さく、勾配が高いほど流動性が高いと表現する。
【0018】
本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、従来のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体に比べ周波数が高い領域、特に、120から500rad/秒における複素粘度が低いため剪断流動化の現象が大きく現れ、よって優れた流動性加工性を示す。
【0019】
具体的に、本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、温度160℃で測定した複素粘度であって、具体的には周波数0.5rad/秒における複素粘度は40,000から350,000Pa・sであり、これと同時に周波数125rad/秒における複素粘度は900から3,500Pa・sである。具体的に、前記周波数0.5rad/秒における複素粘度は45,000から300,000Pa・sであり、前記周波数125rad/秒における複素粘度は1,000から3,300Pa・sであってよく、より具体的に、前記周波数0.5rad/秒における複素粘度は46,000から290,000Pa・sであり、前記周波数125rad/秒における複素粘度は1,000から3,200Pa・sであってよい。
【0020】
周波数(frequency、rad/秒)に対する複素粘度(complex viscosity、poise)は、共重合体の流動性と大きい関連を有する。各周波数に対する複素粘度の勾配が高いほど流動性が大きく、これは共重合体の加工性が良好であることを意味する。周波数に対する複素粘度と共重合体の流動性との関連性は、MI 5(@230℃)等のパラメータを介して説明することができる。
【0021】
前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の重量平均分子量は50,000から150,000g/molであり、具体的には60,000から150,000g/mol、又は70,000から120,000g/mol、又は70,000から110,000g/molであってよい。
【0022】
また、前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の分子量分布は1.5から3.0であり、具体的には1.6から2.5、1.6から2.0、1.5から2.5、又は1.5から2.0、1.6から1.9であってよい。
【0023】
前記重量平均分子量と数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC;gel permeation chromatography)で分析されるポリスチレン換算分子量であり、前記分子量分布は(重量平均分子量)/(数平均分子量)の比から計算されたものである。
【0024】
前記ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-プロピレン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ブテン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ペンテン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ヘキセン)-ポリスチレンブロック共重合体、ポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-ヘプテン)-ポリスチレンブロック共重合体及びポリスチレン-ポリ(エチレン-co-1-オクテン)-ポリスチレンブロック共重合体よりなる群から選択された1種以上であってよい。
【0025】
また、本発明の共重合体のポリオレフィンブロックは、下記化学式aで表される繰り返し単位を1種以上含んでよい。
【化1】
前記化学式aにおいて、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;又はシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
nは1から10,000の整数であってよい。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、前記Rは水素;炭素数3から20のアルキルであってよい。
【0027】
また、本発明の一実施形態によれば、前記Rは水素;又は炭素数3から12のアルキルであってよく、具体的に前記Rは水素又は炭素数4から12のアルキルであってよい。
【0028】
また、前記nは10から10,000の整数であってよく、具体的に500から7,000の整数であってよい。
【0029】
一方、本発明の明細書で示した化学式において、「*」は繰り返し単位の末端部位であって連結部位を示す。
【0030】
前記ポリオレフィンブロックが前記化学式aで表される繰り返し単位を2種以上含む場合、前記ポリオレフィンブロックは、下記化学式bで表される繰り返し単位を含んでよい。
【化2】
前記化学式bにおいて、
’及びR’’は、それぞれ独立して水素、炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;又はシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり;前記R’及びR’’は互いに異なるものであり、
0<p<1であり、
n’は1から10,000の整数であってよい。
【0031】
また、本発明の一実施形態によれば、前記R’及びR’’は、それぞれ独立して水素又は炭素数3から20のアルキルであってよく、具体的にそれぞれ独立して水素又は炭素数3から12のアルキルであってよく、より具体的にそれぞれ独立して水素又は炭素数4から12のアルキルであってよい。
【0032】
また、具体的にn’は10から10,000の整数であってよく、より具体的に500から7,000の整数であってよい。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記化学式bにおいて、R’及びR’’のうち何れか一つは水素であり、他の一つは前述した置換基のうち水素以外の置換基であってよい。
【0034】
すなわち、前記ポリオレフィンブロックが前記化学式aで表される繰り返し単位を2種以上含む場合、Rが水素である構造と、Rが水素以外の炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;又はシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルである構造とが、ランダム(random)に連結されているものであってよく、具体的にRが水素である構造と、Rが水素以外の炭素数3から20のアルキルである構造とがランダムに連結されているものであってよい。
【0035】
また、より具体的に前記ポリオレフィンブロックは、前記化学式aにおいて、Rが水素である構造と、Rが炭素数3から12のアルキルである構造とが、ランダムに連結されているものであってよく、より具体的に前記ポリオレフィンブロックは、前記化学式aにおいて、Rが水素である構造と、Rが炭素数4から12のアルキルである構造とが、ランダムに連結されているものであってよい。
【0036】
前記ポリオレフィンブロックが前記化学式aで表される繰り返し単位を2種以上含む場合、前記ポリオレフィンブロックは、前記化学式aにおいて、Rが水素である構造とRが水素以外の置換基を有する構造とを30:90から70:10の重量比で含んでよく、具体的に40:60から60:40の重量比で含んでよく、より具体的に45:75から55:25の重量比で含んでよい。
【0037】
前記ポリオレフィンブロックが前記化学式aにおいて、Rが水素である構造とRが水素以外の置換基を有する構造とを前記範囲で含む場合、製造されるブロック共重合体が構造内に適切な程度のブランチ(branch)を含むため、300%の高いモジュラス(modulus)値と破断伸び率(elongation at break)値を有し優れた弾性特性を発揮でき、また、高い分子量とともに広い分子量分布を示し優れた加工性を有し得る。
【0038】
また、本発明の共重合体の第1ポリスチレンブロックは、下記化学式cで表される繰り返し単位を1種以上含んでよい。
【化3】
前記化学式cにおいて、
は、炭素数6から20のアリール;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
lは独立して10から1,000の整数である。
【0039】
前記Rは、フェニル;又はハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ又は炭素数6から12のアリールで置換されるか非置換されたフェニルであってよく、また、前記Rはフェニルであってよい。
【0040】
前記lは10から1,000の整数であり、具体的に50から700の整数であってよく、前記lが前記範囲の場合、本発明の製造方法により製造されるポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体の粘度が適切な水準を有し得る。
【0041】
特に、本発明の共重合体は、前記化学式aで表される繰り返し単位を含むポリオレフィンブロック、及び前記化学式cで表される繰り返し単位を含む第1ポリスチレンブロックが結合して形成された下記化学式dで表される複合ブロックを形成してよい。
【化4】
前記化学式dにおいて、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;又はシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
は、炭素数6から20のアリール;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
lは10から1,000の整数であり,
nは1から10,000の整数である。
【0042】
また、前記化学式dにおいて、R、R、l及びnは、それぞれ前記化学式a及び化学式cで定義した通りである。
【0043】
また、前記ポリオレフィンブロックが前記化学式aで表される繰り返し単位を含む時、前記化学式cで表される繰り返し単位を含む第1ポリスチレンブロックが結合して形成された複合ブロックは、下記化学式eで表されてよい。
【化5】
前記化学式eにおいて、前記R’、R’’、p、l及びn’は、それぞれ前記化学式a又はcで定義した通りである。
【0044】
また、本発明の共重合体の製造時にスチレン系単量体がポリオレフィンブロックを形成するのと同時に、有機亜鉛化合物に前記スチレン系単量体が結合して重合されて別途のスチレン系重合体ブロックを形成することができる。本明細書では、前記別途のスチレン系重合体ブロックを第2ポリスチレンブロックと示す。前記第2ポリスチレンブロックは、下記化学式fで表される繰り返し単位を含んでよい。
【化6】
前記化学式fにおいて、
は、炭素数6から20のアリール;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
mは独立して10から1,000の整数である。
【0045】
また、本発明の一実施形態によれば、前記Rはフェニル;又はハロゲン、炭素数1から8のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換されるか非置換されたフェニルであってよく、また、前記Rはフェニルであってよい。
【0046】
前記mは10から1,000の整数であり、具体的に50から700の整数であってよい。
【0047】
すなわち、本発明の共重合体は、前記化学式cで表される繰り返し単位を含む第1ポリスチレンブロック、及び前記化学式fで表される第2ポリスチレンブロックをそれぞれ含んでよい。
【0048】
したがって、前記ブロック共重合体組成物は、下記化学式aで表される繰り返し単位を1種以上含むポリオレフィンブロックと、下記化学式cで表される繰り返し単位を含む第1ポリスチレンブロックと、下記化学式fで表される繰り返し単位を含む第2ポリスチレンブロックとを含むトリブロック共重合体を含んでよい。
【化7】
【化8】
【化9】
前記化学式において、
は、水素;炭素数1から20のアルキル;シリルで置換された炭素数1から20のアルキル;炭素数7から20のアリールアルキル;又はシリルで置換された炭素数7から20のアリールアルキルであり、
及びRは、炭素数6から20のアリール;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリールであり、
nは10から10,000の整数であり,
l及びmは、それぞれ独立して10から1,000の整数である。
【0049】
また、前記化学式において、R、R、R、n、l及びmは、それぞれ前記化学式a、c及びfで定義した通りである。
【0050】
ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法
本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造方法は、(S1)下記化学式1で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、有機亜鉛化合物を連鎖移動剤としてオレフィン系単量体を重合しポリオレフィンブロックを形成する段階と、(S2)ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物及びトリアミン化合物の存在下で、前記ポリオレフィンブロックとスチレン系単量体を陰イオン重合しポリスチレンブロックを形成する段階と、を含むことを特徴とする。
【0051】
本発明の製造方法は、後述する通り、オレフィン系単量体の重合に効率的に活用される、化学式1で表される遷移金属化合物を触媒にしてポリオレフィン鎖を形成した後、連続してスチレン陰イオン重合を行ってポリオレフィン-ポリスチレンブロックを形成することにより、特定のtanδピークの高さ及びtanδピークの半値幅を示すポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を形成できるようにする。
【0052】
段階(S1)
段階(S1)は、下記化学式1で表される遷移金属化合物を含む触媒組成物の存在下で、有機亜鉛化合物を連鎖移動剤としてオレフィン系単量体を重合しポリオレフィンブロックを形成する段階である。
【化10】
前記化学式1において、
からR11は、それぞれ独立して水素;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアリールアルコキシ基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数7から20のアリールアルキル基であり、
前記RからR11のうち隣接する2つ以上は互いに連結され、炭素数3から20の脂肪族環又は炭素数6から20の芳香族環を形成してよく、
及びXは、それぞれ独立して水素;ハロゲン;ヒドロキシ基;アミノ基;チオ基;シリル基;シアノ基;ニトロ基;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数7から20のアリールアルキル基;炭素数5から20のヘテロアリール基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数6から20のアリールオキシ基;炭素数1から20のアルキルアミノ基;炭素数6から20のアリールアミノ基;炭素数1から20のアルキルチオ基;炭素数6から20のアリールチオ基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数6から20のアリールシリル基である。
【0053】
触媒対比過量の連鎖移動剤(例えば(Et)Zn)の存在下で重合反応を行うと、オレフィン重合体鎖は亜鉛(Zn)とハフニウム(Hf)との間で速やかなアルキル交換を起こし、ジアルキル亜鉛から均一に成長してリビング重合を具現でき、これをCCTP(coordinative chain transfer polymerization)と称する。従来用いられていたメタロセン触媒は、β-脱離(β-elimination)過程でリビング重合することが不可能であり、CCTPに適用可能であると知られていた少数の触媒も、エチレンの単一重合のみが可能なだけで、エチレンとアルファ-オレフィンの共重合をCCTPで行うのは非常に難しかった。よって、一般的な遷移金属化合物を触媒として用い、CCTPを介してリビング重合を行い、ブロック共重合体を製造するのは非常に困難であった。
【0054】
一方、前記化学式1で表されるハフニウム化合物は、1,2,3,4-テトラヒドロ-1,10-フェナントロリン(1,2,3,4-tetrahydro-1,10-phenanthroline)骨格とHf-C(aryl) 結合を含む[Namido、N、Caryl]HfMe-型複合体であって、これは、エチレン及びアルファ-オレフィンの重合反応において優れたアルファ-オレフィン混合能を示し、特に、連鎖移動剤の含量によってオレフィン重合体の分子量やアルファ-オレフィンの含量が変わるところ、これは、前記化合物がCCTPに成功的に用いられ、β-脱離反応が無視できるほど殆ど発生していないことを示すものである。すなわち、前記化学式1で表されるハフニウム化合物を用いて、エチレン及びアルファ-オレフィン単量体の共重合をCCTPによるリビング重合で行うことが可能であり、多様なブロック組成を有するブロック共重合体を成功的に製造できる。
【0055】
また、本発明のハフニウム化合物を用いたCCTPを陰イオン性スチレン重合反応に転換させて行うことで、ポリオレフィン-ポリスチレンブロック共重合体を合成することが可能である。このように、本発明のハフニウム化合物は、オレフィン重合体の製造のための触媒として有用に用いられてよく、これは、前記化学式1で表されるハフニウム化合物の新規構造により達成できる固有の特徴である。
【0056】
具体的に、前記化学式1において、前記RからR11は、それぞれ独立して水素;炭素数1から20のアルキル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;又は炭素数6から20のアリール基であってよく、好ましくはRからR10は水素であり、同時にR11は水素;炭素数1から20のアルキル基;又は炭素数6から20のアリール基であってよく、より好ましくはRからR10は水素であり、同時にR11は水素;又は炭素数1から20のアルキル基であってよい。
【0057】
または、前記化学式1において、前記RからR11は、それぞれ独立して水素;炭素数1から20のアルキル基;又は炭素数6から20のアリール基であってよく、このとき、R及びRは互いに連結され、炭素数5から20の芳香族環、例えばベンゼン環を形成してよく、好ましくは、R及びRは互いに連結されてベンゼン環を形成しながら、同時にR11は炭素数1から20のアルキル基;又は炭素数6から20のアリール基であってよい。
【0058】
または、前記化学式1において、前記R、R、及びRからR10は水素であり、前記R、R及びR11は、それぞれ独立して水素;又は炭素数1から20のアルキル基であり、前記R及びRは互いに連結され、炭素数5から20の芳香族環、例えばベンゼン環を形成してよい。
【0059】
一方、前記X及びXは、それぞれ独立して水素;炭素数1から20のアルキル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;又は炭素数6から20のアリール基であってよく、好ましくは、それぞれ独立して炭素数1から20のアルキル基であってよく、前記X及びXは互いに同一であってよい。
【0060】
本発明において、「アルキル」は、直鎖又は分枝鎖の炭化水素残基を意味する。
【0061】
本発明において、「アルケニル」は、直鎖又は分枝鎖のアルケニル基を意味する。
【0062】
本発明において、「アリール」は、炭素数6から20のものが好ましく、具体的にフェニル、ナフチル、アントラセニル、ピリジル、ジメチルアニリニル、アニソリル等があるが、これらに制限されない。
【0063】
本発明において、「アルキルアリール」は、前記アルキル基により置換されたアリール基を意味する。
【0064】
本発明において、「アリールアルキル」は、前記アリール基により置換されたアルキル基を意味する。
【0065】
本発明において、「アルキルシリル」は、炭素数1から20のアルキルで置換されたシリルであってよく、例えば、トリメチルシリル又はトリエチルシリルであってよい。
【0066】
本発明において、「アルキルアミノ」は、前記アルキル基により置換されたアミノ基を意味し、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等があるが、これらの例だけに限定されるものではない。
【0067】
本発明において、「ヒドロカルビル」は、他の言及がなければ、アルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アルキルアリール又はアリールアルキル等、その構造に係わりなく炭素及び水素のみでなる炭素数1から20の1価の炭化水素基を意味する。
【0068】
より具体的に、前記化学式1で表されるハフニウム化合物は、下記化学式1a又は1bで表されるハフニウム化合物であってよい:
【化11】
【化12】
前記化学式1a及び化学式1bにおいて、
11は水素;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアリールアルコキシ基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数7から20のアリールアルキル基であり、
及びXは、それぞれ独立して水素;ハロゲン;ヒドロキシ基;アミノ基;チオ基;シリル基;シアノ基;ニトロ基;炭素数1から20のアルキル基;炭素数2から20のアルケニル基;炭素数2から20のアルキニル基;炭素数3から20のシクロアルキル基;炭素数6から20のアリール基;炭素数7から20のアルキルアリール基;炭素数7から20のアリールアルキル基;炭素数5から20のヘテロアリール基;炭素数1から20のアルコキシ基;炭素数6から20のアリールオキシ基;炭素数1から20のアルキルアミノ基;炭素数6から20のアリールアミノ基;炭素数1から20のアルキルチオ基;炭素数6から20のアリールチオ基;炭素数1から20のアルキルシリル基;又は炭素数6から20のアリールシリル基である。
【0069】
前記ハフニウム化合物は、具体的に下記化学式1-1から化学式1-5のうち何れか一つで表されるものであってよいが、これに制限されず、化学式1に該当する全てのハフニウム化合物が本発明に含まれる。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0070】
本発明のハフニウム化合物は、下記化学式2で表される化合物及び化学式3で表される化合物を反応させる段階;を含んで製造されてよい。
【化18】
[化学式3]
Hf(X
前記化学式において、
からR11、X及びXの定義は、前述したものと同一である。
【0071】
一方、前記化学式1で表されるハフニウム化合物を製造する時、最終的に製造されたハフニウム化合物の構造によってリガンド化合物を製造する段階を以下の通り異なるように行うことができる。
【0072】
例えば、リガンド化合物においてR及びRが互いに環を形成せず、R11が水素原子の場合、以下のようにルテニウム触媒下で水素化してリガンド化合物を製造した後、ハフニウム前駆体である、化学式3で表される化合物と反応させてハフニウム化合物を製造することができる。
【化19】
【0073】
また、リガンド化合物の構造においてR及びRが互いに環を形成せず、R11が水素原子でない置換基の場合、下記反応式2のように、有機リチウム化合物を用いてR11を先ず導入した後、ルテニウム触媒下で水素化してリガンド化合物を製造する。
【化20】
【0074】
また、リガンド化合物の構造においてR及びRが互いに連結され炭素数5から20の芳香族環を形成し、R11が水素原子でない置換基の場合、以下のように有機リチウム化合物を用いてR11を先ず導入した後、ナフチル基のような芳香族環の水素化を防止するために、Pd/C触媒下で水素化してリガンド化合物を製造することができる。
【化21】
【0075】
すなわち、前記ハフニウム化合物は、リガンド化合物の前駆体である化合物に適切な試薬及び反応条件下でアルキル化及び水素化を介してリガンド化合物を製造した後、これにハフニウムを導入して製造されたものであってよく、具体的なアルキル化試薬の種類、反応温度及び圧力等は、通常の技術者が最終化合物の構造及び実験条件等を考慮し適宜変更することができる。
【0076】
本発明において、前記有機亜鉛化合物は、連鎖移動剤(chain transfer agent)として用いられ、重合反応において製造時に鎖の移動が行われるようにして共重合体が製造されるように誘導する物質であって、具体的に下記化学式4で表される化合物であってよい。
【化22】
前記化学式4において、
Aは、炭素数1から20のアルキレン;炭素数6から20のアリーレン;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から20のアリーレンであり、
Bは、炭素数2から12のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールである。
【0077】
また、前記Aは、炭素数1から12のアルキレン;炭素数6から12のアリーレン;又はハロゲン、炭素数1から12のアルキル、炭素数3から12のシクロアルキル、炭素数1から8のアルコキシ、又は炭素数6から12のアリールで置換された炭素数6から12のアリーレンであってよく、
前記Bは、炭素数2から8のアルケニルで置換された炭素数6から12のアリールであってよい。
【0078】
前記化学式4は、化学式の両末端が二重結合である構造を有してよく、例えば、前記Bがアルケニルで置換されたアリールである時、前記アリーレンが前記Aと連結され、前記アリールに置換されたアルケニルの二重結合が前記化学式4において最外部に位置してよい。
【0079】
前記有機亜鉛化合物を触媒組成物の存在下でオレフィン系単量体1種以上と反応させる場合、前記有機亜鉛化合物の亜鉛(Zn)と有機基(A)との間に前記オレフィン系単量体が挿入されながら重合が行われるようになり得る。
【0080】
前記有機亜鉛化合物は、前記化学式1の遷移金属化合物1当量に対し1から200当量の量で混合されてよく、具体的に前記化学式1の遷移金属化合物1当量に対し10から100当量の量で混合されてよい。
【0081】
前記有機亜鉛化合物は、THF及び多量のマグネシウム塩等の不純物を含んでいないため高純度で提供するのが可能であり、これによって連鎖移動剤として用いられてよく、オレフィン重合に用いるのが有利である。
【0082】
前記触媒組成物は助触媒化合物をさらに含んでよい。このとき、前記助触媒化合物は、化学式1で表される遷移金属化合物を活性化させる役割を担い、助触媒は、当該技術分野に公知のものを用いてよく、例えば、助触媒として下記化学式5から7の中から選択される一つ以上を用いることができる。
[化学式5]
-[Al(R)-O]
[化学式6]
D(R
[化学式7]
[L-H][Z(A)又は[L][Z(A)
【0083】
前記式において、
は、それぞれ独立してハロゲン基;炭素数1から20のヒドロカルビル基;又はハロゲンで置換された炭素数1から20のヒドロカルビル基であり、
mは2以上の整数であり、
Dはアルミニウム又はホウ素であり、
Lは中性又は陽イオン性ルイス酸であり、
Zは13族元素であり、
Aは、それぞれ独立して1以上の水素原子が置換基で置換され得る炭素数6から20のアリール;又は炭素数1から20のアルキルであり、
前記Aの置換基は、ハロゲン;炭素数1から20のヒドロカルビル;炭素数1から20のアルコキシ;又は炭素数6から20のアリールオキシである。
【0084】
前記化学式5で表される化合物は、アルキルアルミノキサンであれば特に限定されない。好ましい例としては、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン等があり、特に好ましい化合物はメチルアルミノキサンである。
【0085】
前記化学式6で表される化合物は特に限定されないが、好ましい例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリブチルアルミニウム、ジメチルクロロアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-s-ブチルアルミニウム、トリシクロペンチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリイソペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、エチルジメチルアルミニウム、メチルジエチルアルミニウム、トリフェニルアルミニウム、トリ-p-トリルアルミニウム、ジメチルアルミニウムメトキシド、ジメチルアルミニウムエトキシド、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、トリイソブチルホウ素、トリプロピルホウ素、トリブチルホウ素等が含まれ、特に好ましい化合物は、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムの中から選択される。
【0086】
前記化学式7で表される化合物の例としては、Zがホウ素の場合、例えば、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C1837N(H)Me][B(C、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(フェニル)ボレート、ジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリブチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルボレート、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリメチルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラペンタフルオロフェニルボレート、又はこれらの組み合わせであってよく、Zがアルミニウムの場合、例えば、トリエチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリプロピルアンモニウムテトラ(p-トリル)アルミニウム、トリエチルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)アルミニウム、トリブチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラフェニルアルミニウム、N,N-ジエチルアニリニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、ジエチルアンモニウムテトラペンタフルオロフェニルアルミニウム、トリフェニルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、トリメチルホスホニウムテトラフェニルアルミニウム、又はこれらの組み合わせであってよいが、これらに制限されない。
【0087】
特に、本発明で用いられる助触媒は、前記化学式7で表される化合物であってよく、具体的にジオクタデシルメチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートであってよい。
【0088】
また、本発明で用いられる助触媒は、無水炭化水素溶媒中で製造されたものであってよい。例えば、前記炭化水素溶媒は、ブタン、ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン及びエチルベンゼンよりなる群から選択された1種以上が用いられてよいが、これらに制限されず、当該技術分野で使用可能な全ての炭化水素溶媒が無水(anhydrous)形態として用いられてよい。
【0089】
本発明で前記助触媒が無水炭化水素溶媒下で製造される場合、H NMRスペクトルでは、1.75ppmから1.90ppmの範囲及び1.90ppmから2.00ppmの範囲でそれぞれ少なくとも1つのピークが現れる。これは、Lに含まれた窒素、硫黄又はリンに隣接したα-炭素に付着された陽子がそれぞれ異なるピークを示すものである。例えば、化学式1で表される化合物が[(C1837N(H)Me][B(Cの場合、そのH NMRスペクトルにおいて、NCHに存在する陽子2つは、それぞれ異なる信号を示し得る。
【0090】
また、前記化学式1で表されるハフニウム化合物と助触媒は、担体に担持された形態でも利用することができる。担体としては、シリカやアルミナが用いられてよいが、これらに制限されない。
【0091】
前記段階(S1)において、反応物質として投入するオレフィン単量体は、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン及び1-エイコセン又はこれらの混合物で形成された単量体等を例示できる。前記オレフィン単量体は、1種を単独で用いてよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
前記段階(S1)は、例えば、均一溶液状態で行われてよい。このとき、溶媒としては炭化水素溶媒又はオレフィン単量体そのものを媒質として用いてもよい。前記炭化水素溶媒としては、炭素数4から20の脂肪族炭化水素溶媒、具体的にイソブタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を例示できる。前記溶媒は、1種を単独で用いてよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0093】
段階(S1)の重合の温度は、反応物質、反応条件等によって変わり得るが、具体的に70から170℃、具体的に80から150℃、又は90から120℃で行われてよい。前記範囲内で、高分子の溶解度を上げながらも、触媒を熱的に安定させることができる。
【0094】
段階(S1)の重合は、バッチ式、半連続式又は連続式で行われてよく、また異なる反応条件を有する二つ以上の段階で行われてもよい。
【0095】
前述した段階(S1)により製造された化合物は、後述する段階(S2)の陰イオン重合反応により、本発明のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造するための前駆体の役割を担うことができる。
【0096】
段階(S2)
前記段階(S2)は、段階(S1)に連続してケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物及びトリアミン化合物の存在下で、前記ポリオレフィンブロックとスチレン系単量体を陰イオン重合してポリスチレンブロックを形成し、ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造する段階である。
【0097】
前記段階(S2)では、前述した段階(S1)によって形成された化合物が含んでいる(ポリオレフィンイル)Znの亜鉛-炭素結合の間にスチレン系単量体を連続的に挿入でき、また同時に段階(S1)によって形成された化合物の末端基に存在するスチレン基がスチレン系単量体との共重合部位として参加してポリスチレン鎖に連結されてよい。また、前記工程を介して生成された多重ブロック共重合体は、末端基が水、酸素又は有機酸と反応し容易にクエンチングされ得、これを介して産業的に有用なポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体に転換される。
【0098】
前記スチレン系単量体は、炭素数6から20のスチレン系単量体であってよい。より具体的に、炭素数6から20のアリール基が置換されたエチレン、フェニル基が置換されたエチレン等を含むスチレン系単量体、例えばスチレンであってよい。
【0099】
前記ケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、下記化学式8で表される化合物であってよい。
[化学式8]
(CHSi(CH)Li
【0100】
このようなケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物は、陰イオン重合の開始剤として広く用いられる物質として入手しやすいため、本発明において容易に活用できる。
【0101】
前記トリアミン化合物は、下記化学式9で表される化合物であってよい。
【化23】
【0102】
前記トリアミン化合物は、リチウムに容易に配位するため、前記アルキルリチウム化合物の塩基としての反応性又は求核剤としての反応性を向上させる目的で用いられる化合物として入手しやすく、単価が低廉である。
【0103】
本発明は、前記化学式8及び9の化合物(例えば、MeSiCHLi・(PMDETA))を段階(S2)の開始剤として新しく用いることで、ポリスチレンホモポリマー、ポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィン-ポリスチレン二重ブロック共重合体の生成量を抑制しながら、本発明の目的であるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の生成を最大化できる。
【0104】
前記化学式8で表されるケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式9で表されるトリアミン化合物は、脂肪族炭化水素溶媒で混合し投入してもよく、または化学式8で表されるケイ素原子を含むアルキルリチウム化合物と化学式9で表されるトリアミン化合物を反応器に順次投入してもよい。
【0105】
前記段階(S2)の陰イオン重合の温度は、反応物質、反応条件等によって変わり得るが、具体的に40から170℃、60から150℃、又は90から100℃で行われてよい。
【0106】
前記段階(S2)の陰イオン重合は、バッチ式、半連続式又は連続式で行われてよく、また異なる反応条件を有する二つ以上の段階で行われてもよい。
【0107】
前記段階(S2)の陰イオン重合の時間は、反応物質、反応条件等によって変わり得るが、具体的に0.5から10時間、1から8時間、2から7時間、又は4時間から6時間であってよい。前記範囲内において、投入されるスチレン系単量体を全量多重ブロック共重合体に転換するのが有利である。
【0108】
このように、本発明の製造方法では、前述した化学式4で表される有機亜鉛化合物を用いて、オレフィン重合を介してポリオレフィン鎖を成長させた後、連続してスチレン陰イオン重合を行う方法によりポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を製造し、これを介して従来より向上された物理的特性を有し、産業上容易に活用できるポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を効率的に製造できる。
【0109】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらだけに本発明の範囲が限定されるのではない。
【実施例
【0110】
<遷移金属化合物の製造>
製造例1
(i)リガンド化合物の製造
-10℃でトルエン(8mL)中の2-ナフチル-1,10-フェナントロリン(0.789g、2.58mmol)にイソプロピルリチウム(0.45mL、0.36mmol、ペンタン中の0.79M)を徐々に添加した。室温で3時間撹拌した後、ガスを除去したHO(3mL)を添加した。水性層をN下で注射器で除去した。真空ラインを用いて溶媒を除去し、ガスを除去したエタノール(15mL)及びTHF(5mL)中に残留物を溶解させた。溶液をN下でPd/C(0.242mmol、10mol%)を含有するボム反応器(bomb reactor)に移した。H気体を5barで充填した後、室温で12時間撹拌した。H気体を放出し触媒残留物をセライト上で濾過させて除去した。溶媒を除去し、酢酸エチル/ヘキサン(1/3、v/v)を用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーで残留物を精製した。淡黄色の粘着性固体を収得した(0.085g、73%)。H NMR及び13C NMRスペクトルを図1に示した。
【0111】
H NMR(C):δ8.58(d,J=7.8Hz,H),7.75(d,J=9.0Hz,H),7.70(d,J=9.6Hz,H),7.66(d,J=7.2Hz,H),7.63(d,J=6.6Hz,H),7.32(m,4H),7.18(d,J=8.4Hz,H),6.99(d,J=7.8Hz,H),6.39(s,H,NH),2.93(m,H),2.79(m,H),2.70(dt,J=4.8Hz,H),1.70(m,H),1.63(m,H),1.47(m,H),0.81(d,J=7.2Hz,3H,CH(CH),0.76(d,J=7.2Hz,3H,CH(CH)ppm.
-13C{H}NMR(C):δ18.34,18.77,24.43,26.78,32.52,56.73,112.78,116.67,122.62,125.59,126.10,126.51,126.61,126.86,128.14,128.69,129.03,129.28,132.20,134.71,136.41,137.64,139.79,141.75,155.92ppm.
-m/z 計算値([M]C2524)352.4800.実測値:352.1942.
【0112】
(ii)遷移金属化合物の製造
【化24】
-78℃でトルエン(8mL)中のHfClの撹拌された懸濁液(0.300g、0.938mmol)にMeMgBr(1.24mL、ジエチルエーテル中の3.11M)を滴下した。-40℃及び-35℃の温度範囲で1時間撹拌した後、溶液を再び-78℃に冷却した。トルエン(4mL)中のリガンド化合物(0.366g、1.00mmol)の溶液(0.24g、0.94mmol)を滴下した。生成された溶液を-40℃及び-35℃の範囲内の調節された温度で2時間撹拌し;次いで、室温で一晩中撹拌した。真空ラインを用いて溶媒を除去し、残留物をトルエン(50mL)で抽出した。ヘキサンで粉砕して暗い茶色の粉末を収得した(0.226g、47%)。H NMR及び13C NMRスペクトルを図2に示した。
【0113】
H NMR(C):δ8.66(d,J=7.8Hz,H),8.50(d,J=7.8Hz,H),7.92(d,J=9.0Hz,H),7.83(d,J=7.2Hz,H),7.76(d,J=8.4Hz,H),7.62(d,J=7.8Hz,H),7.40(td,J=7.2Hz,H),7.32(m,H),7.14(d,J=7.8Hz,H),6.77(d,J=7.2Hz,H),4.02(m,H),2.80(m,H),2.62(dt,J=6.0Hz,H),2.55(m,H),1.88(m,H),1.72(m,H),1.09 and 1.04(d,J=6.6Hz,6H,CH(CH),0.82(s,3H,HfCH),0.81(s,3H,HfCH)ppm.
13C{H}NMR(C):δ18.55,21.28,23.07,25.44,32.58,60.98,63.06,66.88,112.37,119.64,120.21,124.55,125.48,126.81,126.97,129.31,129.97,130.26,131.25,133.82,135.51,140.97,141.44,143.94,150.14,164.58,209.13ppm.
-分析計算値(C2728HfN):C,58.01;H,5.05;N,5.01%.
-実測値:C,57.91;H,5.01;N,5.11%.
【0114】
<助触媒の製造>
室温で過量のK[B(C(0.633g、0.881mmol、純粋なものと仮定)とトルエン(無水、10mL)中の[(C1837N(H)Me][Cl](0.404g、0.705mmol)溶液を1時間グローブボックス内で反応させた。セライト上で濾過した後、真空ラインを用いて溶媒を除去した。残留物をメチルシクロヘキサン(4mL)に溶解しセライト上で再び濾過した。溶媒を除去して黄色の油性化合物を生成し、これをさらに精製することなく用いた(0.797g、93%)。
【0115】
H NMR(C):δ 3.15(br,H,NH),1.97(m,2H,NCH),1.80(m,H,NCH),1.51(d,J=6.0Hz,3H,NCH),1.45-1.29(m,48H),1.26(五重線(quintet),J=7.2Hz,4H),1.13(五重線(quintet),J=7.2Hz,4H),0.94(t,J=7.8Hz,6H),0.88(五重線(quintet),J=7.8Hz,4H),0.81(m,4H)ppm.
19F NMR(C):δ-132.09,-161.75,-165.98.
【0116】
<有機亜鉛化合物の製造>
【化25】
ボランジメチルスルフィド(1.6mL、3.2mmol)を撹拌中のトリエチルホウ素(0.6g)に徐々に投入した後、90分間反応させた。-20℃に冷却されている無水ジエチルエーテル(10mL)に溶解したジビニルベンゼン(3.8g)に徐々に投入した後、一晩中撹拌した。真空ポンプで溶媒を除去した後、ジエチル亜鉛(0.8g)を添加した。5時間の間0℃で減圧蒸留を介して生成されるトリエチルホウ素を除去しながら反応させた。40℃で余分のジビニルベンゼン及びジエチル亜鉛を減圧蒸留で除去した。メチルシクロヘキサン(150mL)を添加して産物を再び溶解した後、副産物として生成された固体化合物をセライトを用いて濾過してから除去し、前記化学式で表される有機亜鉛化合物を製造した。
【0117】
<ポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体の製造>
実施例1
Parr反応器(Parr reactor、600mL)を120℃で2時間真空乾燥した。メチルシクロヘキサン(200g)中のOcAl(349.0mg、238μmol-Al)溶液を反応器に添加した。マントルを用いて混合物を120℃で1時間撹拌し、次いでカニューレを用いて溶液を除去した。
【0118】
反応器を捕捉剤(スカベンジャー)としてOcAl(349.0mg、238μmol-Al/25wt% inヘキサン)を含有するメチルシクロヘキサン(200g)で満たし、温度は90℃に設定した。1-ヘキサンを60mL注入した。連鎖移動剤としてメチルシクロヘキサン(1.58g)中の前記有機亜鉛化合物(624μmol)溶液を満たし、次いでメチルシクロヘキサン中の[(C1837N(H)Me][B(C(1.0eq)で活性化した前記製造例1の遷移金属化合物(10.0μmol-Hf)を含有するメチルシクロヘキサン溶液(2.33g)を注入した。エチレンタンクの弁を開けて反応器内の圧力が20barとなるように維持しながら重合を40分間行った。温度は90~120℃の範囲内で調節し、残りのエチレンガスを排出した。
【0119】
温度が90℃に到達すると、MeSiCHLi(64.6mg、0.686mmol)及びPMDETA(130.7mg、0.755mmol)をメチルシクロヘキサン(3.85g)に混合して製造したMeSiCHLi(PMDETA)溶液を添加した。撹拌しながら温度を90℃で30分間維持した後、スチレン(12.5g)を注入した。温度は加熱ジャケットを用いて90~100℃の範囲で調節した。
【0120】
粘度は漸次的に増加し、5時間以内にほぼ非可視の状態に到達した。分取物のH NMR分析からスチレンの完全な転換を確認した。スチレンの完全な転換後、2-エチルヘキサン酸(2-ethylhexanoic acid)及びエタノールを連続的に注入した。収得した重合体の固まり(29g)を80℃の真空オーブンで一晩中乾燥した。
【0121】
実施例2から8
反応条件を下記表1のように変更したことを除いては、前記実施例1と同一の方法で製造した。
【0122】
比較例1及び2
商業的に入手したSEBSとして、それぞれKraton社製のG1650、G1652を用いた。
【0123】
比較例3
【化26】
【0124】
遷移金属化合物として前記化学式で表される化合物を用い、次のような方法で製造した。
【0125】
ボム反応器(bomb reactor、125mL)を60℃で1時間空にした。常圧のエチレンガスで充填した後、メチルシクロヘキサン(15.5g)中のMeAl(28.8mg、200μmol-Al)溶液を反応器に添加した。マントルを用いて混合物を100℃で1時間撹拌し、次いでカニューレを用いて溶液を除去した。反応器を再び空にして残留溶媒を除去し、大気圧でエチレンガスで再充填した。この手続きを介して触媒の毒性を浄化した。
【0126】
反応器を捕捉剤(スカベンジャー)としてMMAO(AkzoNobel、ヘプタン中の6.7wt%-Al、20mg、50μmol-Al)を含有するメチルシクロヘキサン(15.5g)で満たし、温度は80℃に設定した。連鎖移動剤としてメチルシクロヘキサン(10.0g)中の(オクチル)Zn(100μmol)溶液を満たし、次いでベンゼン中[(C1837N(H)Me][B(C(1.0eq)で活性化した前記遷移金属化合物(2.0μmol-Hf)を含有するメチルシクロヘキサン溶液(0.30g)を注入した。エチレン/プロピレン混合ガス(10bar/10bar、総20bar)をタンクから反応器まで20barで充填し、重合を50分間行った。温度は80~90℃の範囲内で調節し、残りのエチレン/プロピレン混合ガスを排出した。
【0127】
温度が90℃に到達すると、MeSiCHLi(11.3mg、0.120mmol)及びPMDETA(20.8mg、0.120mmol)をメチルシクロヘキサン(1.0g)に混合して製造したMeSiCHLi・(PMDETA)溶液を添加した。撹拌しながら温度を90℃で30分間維持した後、スチレン(7.8g、750mmol)を注入した。マントルを用いて温度を100~110℃の範囲で調節した。粘度は漸次的に増加し、5時間以内にほぼ非可視の状態に到達した。分取物のH NMR分析からスチレンの完全な転換を確認した。スチレンの完全な転換後、酢酸及びエタノールを連続的に注入した。収得した重合体の固まり(24.7g)を160℃の真空オーブンで一晩中乾燥した。60℃でクロロホルム(30.0g)に重合体(3.0g)を溶解した後、アセトン(60.0g)を添加してブロック共重合体を沈殿させた。
【0128】
【表1】
【0129】
実験例1
前記実施例及び比較例のポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体を対象に、下記条件及び方法によって各共重合体の物性を測定し、その結果を表2に示した。
(1)エチレン、アルファ-オレフィン及びスチレンの含量の測定
NMRを介して測定した。Bruker 600MHz AVANCE III HD NMR装備を用いてH NMRをns=16、d1=3s、solvent=TCE-d2、373Kの条件で測定した後、TCE-d2溶媒ピークを6.0ppmに補正し、1ppmで1-プロピレンのCHを、0.96ppmの近くで1-ヘキセンによるブチルブランチのCH関連ピーク(三重線(triplet))を確認してから含量を計算した。また、スチレンの含量は6.5から7.5ppmの近くで芳香族ピークにより計算した。
(2)重量平均分子量(Mw、g/mol)及び分子量分布(polydispersity index、PDI)
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)を用いて重量平均分子量(Mw、g/mol)及び数平均分子量(Mn、g/mol)をそれぞれ測定し、重量平均分子量を数平均分子量で割って分子量分布(polydispersity index、PDI)を計算した。
-カラム:PL Olexis
-溶媒:TCB(トリクロロベンゼン(trichlorobenzene))
-流速:1.0ml/min
-試料濃度:1.0mg/ml
-注入量:200μl
-カラム温度:160℃
-検出器(Detector):Agilent High Temperature RI detector
-標準(Standard):ポリスチレン(Polystyrene)
-Mark-Houwink式を用いて(K=40.8×10-5、α=0.7057)、Universal Calibrationで分子量計算
(3)複素粘度
TA instrumentsのARES(Advanced Rheometric Expansion System)で複素粘度を測定した。サンプルは、160℃で直径25.0mmの平行平板(parallel plates)を用いてギャップ(gap)が2.0mmとなるようにした。測定は、ダイナミックストレイン周波数掃引(dynamic strain frequency sweep)モードでストレイン(strain)は5%、周波数(frequency)は0.05rad/秒から500rad/秒まで、各ディケード(decade)に10ポイントずつ総41ポイントを測定した。
【0130】
周波数0.5rad/秒、125rad/秒における複素粘度を下記表2にまとめて示した。
【0131】
【表2】
【0132】
本発明で製造した共重合体は、商業的に入手した比較例1及び2の共重合体、化学式1に該当しない従来の遷移金属化合物を触媒にして製造した比較例3の共重合体に比べ、周波数の高い領域、特に周波数125rad/秒において低い複素粘度を示すことが分かった。
【0133】
これを介し、本発明により(a)及び(b)の条件を満たすポリオレフィン-ポリスチレン系多重ブロック共重合体は、優れた加工性を示すという点を確認した。
図1
図2
図3