(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】膜堆積プロセスにおける通常のパルスプロファイルの修正
(51)【国際特許分類】
C23C 16/455 20060101AFI20230815BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20230815BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C23C16/455
H01L21/31 B
B01J19/00 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020178010
(22)【出願日】2020-10-23
【審査請求日】2022-09-02
(32)【優先日】2019-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チユ・ジュ
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-145412(JP,A)
【文献】特開2018-093150(JP,A)
【文献】国際公開第2017/221808(WO,A1)
【文献】特開平07-201761(JP,A)
【文献】特開2010-204937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 -16/56
H01L 21/205
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/469
H01L 21/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に薄膜を堆積させる方法であって、
前記基材上に前記薄膜を堆積させるために、前駆体の複数のパルスフローを反応器の反応空間内に向けることを含み、各パルスフローは、同じ前駆体の第一のパルスサブフローおよび第二のパルスサブフローの組み合わせを含み、前記第二のパルスサブフローのパルスプロファイルは、前記第一のパルスサブフローのパルスプロファイルの後半の少なくとも一部と重なり、不均一なパルスプロファイルを有する合わされたパルスフローを形成
し、
前記第一のパルスサブフローのパルスプロファイルにおける前駆体の量は前記第一のパルスサブフローの持続時間の少なくとも一部の間減少し、前記第二のパルスサブフローのパルスプロファイルにおける前駆体の量は、前記第一のパルスサブフローのパルスプロファイルにおける前駆体の量が減少する時間の少なくとも一部の間増加し、
前記第二のパルスサブフローのパルスプロファイルは、前記第一のパルスサブフローのパルスプロファイルの終了後に終了する、方法。
【請求項2】
前記向けることは、前記第二のパルスサブフローを前記第一のパルスサブフローの質量流量よりも大きな質量流量で前記反応空間に送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二のパルスサブフローは、前記第一のパルスサブフローと比較してより短い時間内に供給される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記向けることは、前記第一のパルスサブフローよりも前記第二のパルスサブフローにおいて、単位時間あたり、より多くの前駆体を送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記向けることは、第一の経路を通る前記第一のパルスサブフローおよび第二の経路を通る前記第二のパルスサブフローを前記反応空間に送達することによって行われ、前記第一の経路および前記第二の経路のコンダクタンスは異なる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記コンダクタンスの違いは、前記第一の経路と前記第二の経路との間の、経路長さ、フロー制限の程度、または断面長さの違いによって与えられる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第一の経路および前記第二の経路は、前記第一のパルスサブフローおよび前記第二のパルスサブフローの共通の反応物質源と流体連通し、前記第一の経路と前記第二の経路は、反応空間に入る前に交差して、各パルスフローを前記反応空間に送達する、請求項
5に記載の方法。
【請求項8】
前記第二のパルスサブフローの前記パルスプロファイルの最大値は、第一のパルスサブフローの前記パルスプロファイルの最大値よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第一のパルスサブフローの前記パルスプロファイルの最大値と前記第二のパルスサブフローの前記パルスプロファイルの最大値との時間差は、10ミリ秒~1000ミリ秒である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第二のパルスサブフローの前記パルスプロファイルにおける前記前駆体の最大値は、第一のパルスサブフローの前記パルスプロファイルにおける前記前駆体の前記最大値よりも少なくとも10%より大きい、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のパルスフローのうちの選択されたパルスフローの間に、前記反応空間にパージガスを送達することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第一のパルスサブフロー及び前記第二のパルスサブフローのそれぞれにおける前記前駆体の総量の50%以下が、それぞれ前記第一のパルスサブフローの持続時間及び前記第二のパルスサブフローの持続時間の前半に、前記反応空間に導入される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第二のパルスサブフローの前記パルスプロファイルの少なくとも一部は、前記第一のパルスサブフローの前記パルスプロファイルと重ならない、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上の材料の制御された成長、特に、膜堆積プロセス中の基材上の材料の均一で高速に制御された成長のための装置およびプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜は、基材上に材料を成長させることにより材料を構築するために使用される。得られた基材は、マイクロエレクトロニクスだけでなく、他の分野でも広く使用されている。二つの周知の薄膜堆積技術は、原子層堆積(ALD)および化学気相堆積(CVD)である。各技術において、一つまたは複数の反応物質(前駆体)は、典型的にはガスの形態で、反応器内に送達され、反応器は基材上に所望の膜または層を繰り返し成長させる。ALDの通常の動作中に、前駆体は反応器内にパルスされ、各前駆体パルスは利用可能な表面上の有限数の反応部位と反応する。全ての反応部位が消費されると、成長が停止する。反応器内の残りの前駆体分子はパージガスで洗い流され、そして次の前駆体が反応器に送達される。第一および第二の前駆体を交互に導入することにより、薄膜が基材上に堆積される。ALDプロセスを記載する場合、各前駆体のドーズ時間(表面が前駆体に曝される時間)とパージ時間(前駆体が反応器を排気するためのドーズ間に残った時間)の両方を指す。バイナリALDプロセスのドーズ-パージ-ドーズ-パージのシーケンスは、ALDサイクルを構成する。
【0003】
ALDプロセス内では、前駆体のパルスプロファイルが得られる層に影響を与えることが知られている。パルスプロファイルとは、パルスの継続時間中に単位時間あたりに送達される反応物質の量を指す。各パルス内に送達される反応物質の量は、流速または/および濃度の関数であることができ、すなわち、前駆体の量は、(キャリアガスが使用される場合)キャリアガス中の前駆体の体積流量および/または濃度に依存することができる。既知の方法では、前駆体の流量は一定であり、パルスプロファイルは通常、パルスの前縁で高濃度のスパイクを示し、その後、濃度は次第に減少する。これは、基材の膜に不均一性をもたらす。すなわち、各パルスによって生成される層は、その前縁でより厚く、後縁でより薄くなる傾向がある。したがって、薄膜プロセス、例えばALDおいてより均一な堆積膜厚を提供するプロセスが望まれる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、本発明者らは、基材上で薄膜の均一かつ高速に制御された成長のための装置およびプロセスを開発した。一態様では、基材上に薄膜を堆積させる方法が提供され、方法は、前駆体の複数のパルスフローを反応器の反応空間内に向けて基材上に薄膜を堆積させることを含み、各パルスフローは、第一のパルスサブフローと第二のパルスサブフローの組み合わせを含み、第二のパルスサブフローのパルスプロファイルは、第一のパルスサブフローのパルスプロファイルの後半の少なくとも一部と重なる。既知の方法と比較して、パルスプロファイル全体にわたってより均一な分布を提供し、パルスフローの終端に向かってより多くの前駆体を提供することにより、より均一な薄膜堆積物が提供される。
【0005】
別の態様によれば、基材上に薄膜を堆積させるためのシステムが提供され、システムは、
その中に反応空間を画定する反応器と、
反応器および反応空間と流体連通する第一の経路および第二の経路であって、第一の経路および第二の経路は、反応器に入る前に交差する、第一の経路および第二の経路と、
そこを通って前駆体を送達するための第一の経路および第二の経路と流体連通する少なくとも一つの前駆体源と、
前駆体の複数のパルスフローを反応空間に向けるために、第一および第二の経路のそれぞれを通る前駆体のフローを制御するように構成されるコントローラであって、各パルスフローは、それぞれ第一の経路および第二の経路を通って流れる第一のパルスサブフローおよび第二のパルスサブフローの組み合わせを備える、コントローラと、を備え、
第二のパルスサブフローのパルスプロファイルは、第一のパルスサブフローのパルスプロファイルの後半の少なくとも一部と重なる、方法。
【0006】
本明細書は、本発明の実施形態と見なされるものを具体的に指摘し、明確に特許請求する特許請求の範囲で結論付ける一方で、本開示の実施形態の利点は、添付の図面と併せて読むと、本開示の実施形態のある特定の実施例の説明から、より容易に解明されうる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一態様による基材上に薄膜を堆積させるためのシステムの構成要素の概略図である。
【
図2】薄膜堆積で利用される通常のパルスフローのパルスプロファイルである。
【
図3】本発明の一態様による薄膜堆積で利用されるパルスフローのパルスプロファイルである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
いくつかの実施形態および実施例が以下に開示されるが、本発明の態様は、本発明の具体的に開示される実施形態および/または用途、ならびにそれらの明白な修正および同等物を超えて拡張されることは、当業者により理解されるであろう。それ故に、開示された本発明の範囲は、以下に記載の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図される。薄膜技術の異なる用途により、それらの関連する材料の異なる品質と出力要件は異なる。特定の用途の特定のニーズにしたがって薄膜を成長させることができるシステムが望ましい。また、既存の部品を使用できるように、現在のシステムからの修正をできるだけ最小限にするようなシステムを作成することが望ましい。
【0009】
図1は、本発明の一態様による薄膜堆積プロセスを実行するためのシステム10を例示する。システム10は、前駆体源12、供給経路14、および反応空間18内に配置された基材(図示せず)上に薄膜を堆積させるための反応空間18をその中に画定する反応器16を備える。以下に説明するように、ある量の前駆体20が、最初に供給源12から供給経路14に送達され、最終的には反応空間18に送達される。一つまたは複数のコントローラ25もシステム10に設けられ、反応器16への前駆体20または任意の他のガスの送達を制御するための、システム10内の流路、例えば、経路14、32、34、50に関連する一つまたは複数のセンサー、バルブ等と電気的に通信している。
【0010】
さらに、いくつかの実施形態では、システム10は、必要に応じて反応空間18にパージガス24を送達するために、供給経路14と流体連通するパージガス源22を備えることができる。本明細書で使用の「流体連通」とは、流体、例えば、ガスが、他のいずれの構成要素と合わせることの有無にかかわらず、第一の場所から第二の場所に直接的または間接的に流れることを意味する。したがって、例えば、AがBと流体連通している場合、ガスのフローはAから流れてBに到達し、他のいずれのガスと合わされる場合と合わされない場合がある。いくつかの実施形態では、パージガス24はまた、前駆体20を反応器18に送達する前に、前駆体20のキャリアガスとして前駆体源12に送達させることができる。キャリア/パージガス24の送達の制御は、示すように、コントローラ25およびバルブ26、28を介して達成されることができる。前駆体源12から供給経路14への前駆体20の送達は、示すように、最初に、コントローラ25および一つまたは複数のバルブ、例えば、バルブ30を介して達成されることができる。
【0011】
さらに
図1を参照すると、前駆体源12からの前駆体20のフローは、二つ以上のサブフロー(第一のパルスサブフローおよび第二のパルスサブフロー)に分割され、そして、反応器16に入る前に合わされる。これを達成するために、供給経路14は、二つの経路に分割されて、第一の経路32および第二の経路34を画定し、それぞれが供給経路14の延長である。第一のパルスサブフロー36は第一の経路32を通って流れ、第二のパルスサブフロー38は第二の経路34を通って流れる。第一および第二のサブフロー36、38に関して「第一」および「第二」とは、第一のパルスサブフロー36が第二のパルスサブフロー38の前に反応器18に入るように、サブフロー36、38が反応器18に入る順序を意味する。言い換えると、以下で説明される(合わされた)パルスフロー48において、第一のパルスサブフロー36は、(合わされた)パルスフロー48の第一の部分を構成し、第二のパルスサブフロー38は、(合わされた)パルスフローの第二の(下流または後端部)を構成する。
【0012】
一つまたは複数のバルブ、例えば、示されるバルブ40、42は、供給経路14および/または第一の経路32に関連付けられて、第一の経路32を通る前駆体20のフローの開放、閉鎖、および/または制限を可能にすることができる。さらに、第二の経路34は、第二の経路34を通る前駆体20のフローの開放、閉鎖、および/または制限のための一つまたは複数のバルブ、例えば、バルブ44を備えることができる。一実施形態では、本明細書に記載の任意の一つまたは複数のバルブは、それぞれのバルブを収容し、それぞれの経路、例えば、経路14、32、34、および/または50に関連付けられるマスフローコントローラを備えることができる。
【0013】
前駆体源20から、第一の経路32および第二の経路34を通る前駆体20のフローは、交点46で合流し、経路50を介して反応器16の反応空間18に(合わされた)パルスフロー48を送達する。以下で説明するように、第一のパルスサブフロー36および第二のパルスサブフロー38のそれぞれは、パルスプロファイル(単位時間あたりの反応物質の量)を備え、したがって、合わされたパルスフロー48は、第一および第二のパルスサブフロー36、38のパルスプロファイルの合計である(合わされた)パルスプロファイル58を備える。
【0014】
図1は、単一の前駆体反応物質の複数のパルスフローのパルスプロファイルを制御するためのシステムの例示であることが理解される。しかし、二つ以上の前駆体がシステム10に提供されることができ、したがって、システム10は供給経路14内に供給することができる別の前駆体源12を備えることできることが理解される。さらに、第一および第二のパルスサブフロー36、38は、単一の前駆体源12から得られるものとして例示されているが、本明細書に記載のシステムおよびプロセスもそのようには限定されないことも理解される。特定の実施形態では、二つ以上の前駆体源、例えば第一のパルスサブフロー36に前駆体を供給する第一の前駆体源、および第二のパルスサブフロー38に前駆体を供給する第二の前駆体源(第一の前駆体源から独立して)が設けられてもよい。つまり、図示されるシステム10の任意の構成要素のいずれかは、反応器16に別の前駆体を提供するために必要に応じて複製が作られることができることが理解される。
【0015】
システム10で利用される前駆体20は、基材上に所望の薄膜を形成するための任意の一つまたは複数の好適な前駆体を含むことができる。いくつかの実施形態では、前駆体20は遷移金属を含む。利用されることができる例示的な遷移金属、具体的には遷移金属ハロゲン化物としては、TiCl4、WF6、TaCl5、TaF5、MoCl5、MoFx、ZrCl4、またはHfCl4が挙げられる。一実施形態では、前駆体20のうちの一つまたは複数は、ハロゲン化ケイ素、例えばSiCl4を含むことができるケイ素、またはアミノ配位子を含むことができる有機配位子を有するケイ素化合物、例えばビス(ジメチルアミノ)シラン、ビス(ジエチルアミノ)シラン、ビス(エチルメチルアミノ)シラン、ジイソプロピルアミノシラン、および/もしくはヘキサキス(エチルアミノ)ジシラン、も含むまたは代わりに含むことができる。
【0016】
別の実施形態では、前駆体20のうちの一つまたは複数は、有機金属種、例えば、シクロペンタジエニルまたはアルキル配位子、例えばメチル配位子を含む前駆体、も含む、または代わりに含むことができる。別の実施形態では、前駆体20のうちの一つまたは複数は、有機金属配位子、例えば、アルキルアミン配位子、例えばチタン、ハフニウム、またはジルコニウムアルキルアミド前駆体、も含む、または代わりに含むことができる。さらに、前記の遷移金属と共に利用されることができる他の前駆体20は、NH3、H2、H2O、H2O2、O2およびO3を含むことができる。さらに、プラズマ、原子種または励起種、および窒素種、酸素種、もしくは水素種を含有するラジカルも、例えば、上記のガスから生成される前駆体20として使用されることができる。記載された前駆体に加えて、プロセスで利用される別のガス、例えば、不活性ガス、例えばN2、HeまたはAlであってもよい。単なる一例として、特定の実施形態では、前駆体20は、アンモニアおよび塩化チタンを含むことができ、これらは、基材上に窒化チタンの堆積を形成するために反応器16に別々に提供される。別の実施形態では、トリメチルアルミニウム(TMA)は、基材上にアルミナを堆積するための他の好適な前駆体と合わせて使用されることができる。
【0017】
さらに、合わせたパルスフロー48のうちの選択されたものの間に、反応空間18内のあらゆる残留前駆体20は、パージガス源22から反応空間18内にパージガス24を導入することによってそこから除去されることが理解される。いくつかの実施形態では、パージガス24は、各々の合わされたパルスフロー48が反応空間18内に導入された後に、反応空間18内に導入される。パージ(サイクル)の長さは、反応空間18から対象の前駆体材料を効果的に除去する任意の時間としてもよい。一実施形態では、パージは、0.1秒を超えて約5.0秒未満、または0.1秒を超えて約3.0秒未満、またはさらに0.1秒を超えて約2.0秒未満の時間実行される。パージガス24は、任意の好適なガス、例えば窒素等を含んでもよい。
【0018】
本発明の態様によれば、各個々の(合わされた)パルスフロー48のパルスプロファイルは、既知の方法と比較して、薄膜堆積プロセス、例えば、ALDによる材料のより均一な堆積をもたらすように制御される。ここで
図2を参照すると、通常のパルスプロファイルが示される。示すように、通常のパルスプロファイル52では、前駆体の量は、プロファイル52の前縁(先端)54で最大値を含み、その後、前駆体の量は、その後縁56に向かって次第に減少する。
図2では、x軸はパルスフローの継続時間を表し、y軸はパルスフローの量、例えば分圧を表す。
【0019】
さらに説明するために、
図2に示すプロファイル形状は、室温でかなりの蒸気圧を持つ前駆体、例えばTMAやH
2Oを利用するALDプロセスで発生する可能性がある。また、パージ時間が比較的短いプロセスでは、
図2に示す分圧ピークは、多くの場合、前駆体を供給するバルブを開いた直後に現れる。
図2に示すようなこれらの高分圧の前駆体パルスは、望ましくない粒子形成および不均一な寄生膜成長を生じさせ、また基材上への不均一堆積を引き起こす可能性がある。記載のように、本明細書に記載の装置およびプロセスによって経時的に供給される前駆体の分圧の修正により、反応空間内の前駆体の分圧に対する改善された制御を達成し、より均一な薄膜堆積をもたらすことができる。
【0020】
図2に示すようなプロファイルを有するパルスフローを組み込むシステムおよびプロセスの欠陥を克服するために、本明細書に記載の装置およびプロセスは、第一のパルスサブフローおよび第二のパルスサブフローからの合わさせたパルスフローを提供し、それぞれは、本明細書に記載のパルスプロファイル(単位時間(x軸)あたりの前駆体の量(y軸))を有する。一実施形態では、各パルスプロファイル58、60、62の前駆体の量は、前駆体20の分圧として提供される。
図2のパルスフローのプロファイルとは対照的に、本発明の態様は、薄膜堆積プロセス、例えばALDプロセス中の材料の実質的により均一な分布をもたらすプロファイルを有するパルスフローを送達する。
【0021】
図3に示すように、例えば、(合わされた)パルスフロー48のパルスプロファイル58が提供され、これは、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60と第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62を合わせたものを含む。(合わされた)プロファイル58において、第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62は、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60の後半部64の少なくとも一部と重なる。このように、各(合わされた)パルスフロー48では、前駆体20の濃度は、
図2に示す通常のパルスプロファイル52と比較して、(合わされた)プロファイル58の後縁56に向かって増加する。これらのパラメータに適合するパルスプロファイル58について、複数のプロファイル形状が可能であることが理解される。したがって、パルスプロファイル58は、
図3に示される形状に限定されないことが理解される。
【0022】
特定の実施形態では、
図3にも示すように、第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62における最大値(最大量)、例えば、C
2maxは、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60における最大値(最大量)、例えば、C
1maxよりも大きい。しかし本発明はそのように限定されないことが理解される。一実施形態では、第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62における前駆体の最大値(C
2max)は、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60における最大値(C
1max)よりも少なくとも10%大きく、いくつかの実施形態では20%大きい。別の実施形態では、第一のパルスサブフロー36は、第二のパルスサブフロー38(C
2max)よりも大きい最大値(C
1max)を備えることができる。(第一のサブフローまたは第二のサブフローの最大値が大きい)いずれの場合でも、サブフロー36、38を合わせることにより、前駆体20の濃度は、
図2に示される典型的なパルスプロファイル52と比較して、(合わされた)プロファイル58の後縁56に向かって有利に増加する。
【0023】
一態様によれば、本明細書に記載のパルスプロファイル58は、所望のプロファイル形状を生成する任意の好適なプロセスによって形成されることができる。合わされたプロファイル58の所望の形状を達成するために、第二のパルスサブフロー38は、合わされたフロー48および合わされたプロファイル58を達成することができるように、第一のパルスサブフロー36と比較して後の時点で交点46に到達することが理解される。この目的を達成するために、一実施形態では、第一のパルスサブフロー36は第一の経路32を通って送達され、第二のパルスサブフロー38は第二の経路34を通って反応空間18に向かって送達され、第一の経路32と第二の経路34のコンダクタンスは異なる。このコンダクタンスの差は、コントローラ25、バルブ26、28、30、40、42、44等を介して、第一のパルスサブフロー34および/もしくは第二のパルスサブフロー36の(質量もしくは体積に基づく)流量を調整することにより、第一の経路32および第二の経路34に対して異なる経路長を提供することにより、第一の経路32と第二の経路34との間に異なる断面を提供することにより、ならびに/または他の好適な方法もしくは構造により、を含む任意の好適な構造またはプロセスにより達成することができるが、これらに限定されない。
【0024】
さらに、本明細書に記載の合わされたプロファイル58を達成するために、いくつかの実施形態では、第一のパルスサブフロー38と比較して、より多くの量の前駆体20が第二のパルスサブフロー38に存在する。この効果は、任意の好適な構造またはプロセスによっても達成されることができる。例えば、一実施形態では、第二のパルスサブフロー38は、第一のパルスサブフロー36の質量流量よりも大きい質量流量で反応空間18に送達される。別の実施形態では、質量流量は同一または実質的に類似している(5%以下の差)可能性があり、第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62は、第一のパルスサブフロー36と比較して、第二のパルスサブフロー38において単位時間あたりより多くの量の前駆体20を送達することによって提供される。
【0025】
一態様では、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60および第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62は、任意の好適な継続時間であることができる。一実施形態では、第二のパルスサブフロー38は、第一のパルスサブフロー36と比較して、より短い継続時間(より短い期間内)で提供され、したがって、第二のパルスサブフロー38のパルスプロファイル62は、第一のパルスサブフロー36のパルスプロファイル60よりも短くてもよい。特定の実施形態では、第一のプロファイル60は、10ミリ秒~10,000ミリ秒の継続時間を有することができ、パルスプロファイル62は、10ミリ秒~10,000ミリ秒の継続時間を有することができる。したがって、一実施形態では、合わされたパルスプロファイル58は、10ミリ秒~10,000ミリ秒の総継続時間を有することができる。上で参照した(濃度の)最大値c1maxおよびc2maxは、t2-t1として定義される時間間隔Δtによって分離される。一実施形態では、t2-t1のΔtは、10ミリ秒~1000ミリ秒、10ミリ秒~200ミリ秒、10ミリ秒~100ミリ秒、またはいくつかの実施形態では、10ミリ秒~50ミリ秒であることができる。
【0026】
別の態様では、いくつかの実施形態では、一つのパルスサブフロー36、38における前駆体20の総量(例えば、分圧)の50%以下が、パルスサブフロー継続時間の前半の間、反応空間18に導入されるように、各パルスサブフロー36、38はさらに制御されることができる。別の実施形態では、各パルスサブフロー36、38は、選択されたサブフロー36、38内の前駆体20の総量(例えば、分圧)の30%未満、25%未満、さらには20%未満が、パルスサブフロー持続時間の前半の間、反応空間18に導入されるように制御される。
【0027】
前駆体20のフローを制御するためのコントローラ25、または(合わされた)パルスプロファイル58に影響を与える他の任意のパラメータは、本明細書に記載のプロセスの任意の工程を実行するために特別にプログラムされた、少なくともマイクロプロセッサおよびメモリを備える任意の好適なコンピューティングデバイスを含むことができる。いくつかの実施形態では、二つ以上のコントローラ25が提供されることができることが理解される。コントローラ25は、前駆体20および/またはパージガス24の圧力および/またはフローを制御するために、システム10の構成要素のいずれか、例えば本明細書に記載の経路14、32、34、50のいずれかに設けられるバルブ26、28、40、40、42、44等と(有線または無線で)通信することができる。このようにして、コントローラ25は、反応空間12に送達される前駆体20のタイミングおよび量、ならびに(合わされた)パルスプロファイル58の形状を制御するために、本明細書に記載のバルブのいずれかを開閉または制限することができる。いくつかの実施形態では、また、上記の通り、本明細書に記載の経路上の任意のバルブは、関連する経路に関連付けられ、コントローラと有線または無線で通信し、コントローラ25が質量または体積流量を所望の方法で正確に制御するのを支援するマスフローコントローラ(MFC)を備えることができる。MFCは、所望のパルスプロファイルが達成され、プログラムされ、事前にプログラムされ、および/または制御されることができるように、コントローラ25によって制御されることができる。
【0028】
本明細書に記載のシステムおよびプロセスにおいて、供給ライン、バルブ、ならびに反応器18および前駆体源12以外の構成要素は限定されないことが理解される。一つまたは複数の入口、供給ライン(経路)、出口、ポンプ、バルブ、フローセンサー、圧力センサー、濃度センター、または(マイクロプロセッサ、入力、出力、およびメモリを含む)コンピューティングデバイス等は、材料、前駆体20および/またはパージガス24のうちのいずれかのその中へのフローの、導入、出力、タイミング、体積、選択、および方向付けを容易にするために、本明細書に記載の実施形態のいずれかに含まれることができることが理解される。
【0029】
開示される本発明の実施形態は、本明細書に開示される特定の構造にも、プロセス工程にも、材料にも限定されず、当業者によって認識されるであろうそれらの同等物に拡張されることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0030】
本明細書全体を通して「一実施形態」または「実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、または特性が、本発明の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体の様々な場所での句「一実施形態において」または「実施形態において」の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すとは限らない。
【0031】
本明細書で使用する場合、便宜上、複数の物品、構造要素、構成要素、材料などの品目が共通の表に示されている場合がある。しかし、これらのリストは、リストの各要素が独立しかつ固有の特性をもつ、個々に特定されるものとして解釈されるべきである。したがって、このようなリスト中にある個々の要素は、いずれも、同一グループとして示されかつ均等性について特段の記載がないことのみを理由にして他の要素の事実上の均等物であるという解釈をするべきではない。さらに、本発明の様々な実施形態および実施例は、その様々な構成要素の代替物と共に本明細書で参照されることができる。このような実施形態、実施例、および代替案は、互いに事実上同等物であると解釈されるべきではなく、本発明の別個の自主的な表現と見なされるべきであることが理解される。
【0032】
さらに、記載された特徴、構造、または特性は、一つまたは複数の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされることができる。以下の説明では、本発明の実施形態の完全な理解を提供するために、多数の特定の詳細、例えば長さ、幅、形状などの例が提供される。しかし、当業者は、本発明が、特定の詳細のうちの一つもしくは複数がなくても、または他の方法、構成要素、材料等を用いて実施されることができることを認識するであろう。別の例では、本発明の態様を曖昧にすることを避けるために、周知の構造、材料、または操作は詳細に示されていないか、または記載されていない。
【0033】
上に記載した本開示の例示的実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその法的等価物により定義される、本発明の実施形態の単なる例であるため、これらの実施形態によって本発明の範囲は限定されない。いかなる同等の実施形態も、本発明の範囲内にあることを意図している。実際に、記載した要素の代替の有用な組み合わせなど、本明細書に示し記載したものに加えて、本開示の様々な改変が、説明から当業者に明らかとなってもよい。このような改変及び実施形態もまた、添付の特許請求の範囲に入ると意図される。
【符号の説明】
【0034】
10 システム
12 前駆体源
14 供給ライン
16 反応器
18 反応空間
20 前駆体
22 パージガス源
24 パージガス
25 コントローラ
26 バルブ
28 バルブ
30 バルブ
32 第一の経路
34 第二の経路
36 第一のパルスサブフロー
38 第二のパルスサブフロー
40 バルブ
42 バルブ
44 バルブ
46 交点
48 合わされたフロー
50 合わされたパス
52 通常のパルスプロファイル
54 前縁
56 後縁
58 合わされたプロファイル
60 パルスプロファイル
62 パルスプロファイル
64 後半