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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】光ファイバ及びその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/012 20060101AFI20230815BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20230815BHJP
   G02B 6/032 20060101ALI20230815BHJP
【FI】
C03B37/012 Z
G02B6/02 356A
G02B6/02 451
G02B6/032 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021520974
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-14
(86)【国際出願番号】 EP2019076832
(87)【国際公開番号】W WO2020083624
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-06-01
(31)【優先権主張番号】18202368.9
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18204375.2
(32)【優先日】2018-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リーウェン,ロベルト,エドガー
(72)【発明者】
【氏名】アブドルヴァンド,アミール
【審査官】和瀬田 芳正
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032454(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/127266(WO,A1)
【文献】特表2010-541011(JP,A)
【文献】国際公開第2009/010317(WO,A1)
【文献】特表2010-523456(JP,A)
【文献】特開2007-010666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/012
G03F 7/20
G02B 6/02
G02B 6/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバを形成する方法であって、
細長本体を有し外管と複数の内管とを備える製造用中間体であって、前記複数の内管は前記外管の中に配置され、前記複数の内管は前記細長本体の軸方向寸法に沿って前記細長本体を貫通して延伸するアパーチャの周囲に1つ以上のリング構造で配置されると共に前記アパーチャを少なくとも部分的に定義し、前記アパーチャの境界は前記製造用中間体の内部表面を定義する、製造用中間体を提供することと、
エッチング物質を用いて前記製造用中間体の前記内部表面を構成する前記複数の内管の外面及び前記外管の内面をエッチングすることと、
前記内管から形成された複数の反共振素子を備える中空コア反共振反射ファイバである前記光ファイバを形成するように前記軸方向寸法に沿って前記製造用中間体を引き延ばすことと、
を備え、
前記複数の内管は、前記内管の各々が他の前記内管のいずれとも接触しないように前記中空コアの周囲に単一リング構造で配置される、
方法。
【請求項2】
軸方向寸法に沿って前記製造用中間体を引き延ばすことによって、前記製造用中間体の前記軸方向寸法に垂直な寸法はある率で縮小され、前記率は少なくとも10分の1である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記製造用中間体の前記内部表面の前記エッチングはウェット化学エッチングプロセスを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記製造用中間体の前記内部表面のエッチングは、液体浸漬、キャピラリ充填、加圧充填、又はスプレーエッチングのうち1つを備える、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチング物質は、HF、HFとHNOとの混合物、又はKOHのうち1つを備える、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記エッチングは室温で実施される、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記製造用中間体の前記内部表面の前記エッチングはドライ化学エッチングを備える、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記エッチング物質を用いて前記製造用中間体の前記内管のうち1つ以上の内部表面をエッチングすることを更に備える、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
エッチング物質を用いて前記製造用中間体の前記内部表面を前記エッチングすることは前記製造用中間体の前記内部表面の1つ以上の部分を優先的にエッチングすることを備え、前記1つ以上の部分は使用時に前記光ファイバを伝播する光と主に接触又は相互作用する前記光ファイバの1つ以上の部分に対応する、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は2018年10月24日に提出された欧州出願第18202368.9号及び2018年11月5日に提出された欧州出願第18204375.2号の優先権を主張するものであり、これらの出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、光ファイバと、光ファイバを形成するための製造用中間体と、光ファイバを形成するための方法とに関する。特に、本発明は、貫通して延伸する少なくとも1つの開口を有する光ファイバに係り得る(その少なくとも1つの開口は、光ファイバの中空コア又はクラッディングの一部を形成し得る)。とりわけ、本発明は、1つ以上の反共振素子のリングを有する中空コアフォトニック結晶光ファイバ(中空コア反共振反射ファイバとも称される)及びその生産方法に関する。本発明によって形成された光ファイバは、メトロロジ装置において、例えばリソグラフィ装置において使用され得る。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)におけるパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射線を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置の古典的な解像限界よりも寸法の小さいフィーチャを処理するためには、低kリソグラフィが用いられ得る。そのようなプロセスにおいては、解像公式をCD=k×λ/NAと表すことができる。ここで、λは使用される放射の波長、NAはリソグラフィ装置の投影光学部品の開口数、CDは「クリティカルディメンジョン」(一般的にはプリントされる最小のフィーチャサイズであるが、この場合はハーフピッチ)、kは経験的な解像係数である。概して、kが小さいほど、特定の電気的機能及び性能を実現するために回路設計者によって計画された形状及び寸法に似たパターンを基板上に再現することは困難になる。こうした困難を克服するために、リソグラフィ投影装置及び/又は設計レイアウトには精巧な微調整ステップが適用され得る。これらのステップは、例えば、NAの最適化、カスタマイズされた照明体系、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光近接効果補正(OPC、「光学及びプロセス補正」と称されることもある)のような設計レイアウトの様々な最適化、又は一般に「解像度向上技術」(RET)として定義される他の方法を含むが、これらに限定されない。代替的には、低k1でのパターンの再現を改善するべく、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳格な制御ループが用いられてもよい。
【0006】
[0006] リソグラフィの分野においては、多くの測定システムが、リソグラフィ装置の内部及びリソグラフィ装置の外部の両方で用いられ得る。概して、そのような測定システムは、ターゲットに放射を照射するための放射源と、ターゲットから散乱する入射放射の一部の少なくとも1つの特性を測定するように動作可能な検出システムとを使用し得る。リソグラフィ装置の外部の測定システムの一例が検査装置(メトロロジ装置とも称される)であり、これは、リソグラフィ装置によって先に基板上に投影されたパターンの特性を判定するために用いられ得る。そのような外部検査装置は、例えば、スキャトロメータを備えていてもよい。リソグラフィ装置の内部に提供され得る測定システムの例は、トポグラフィ測定システム(レベルセンサともいう)、レチクル又はウェーハステージの位置を判定するための位置測定システム(例えば干渉デバイス)、及びアライメントマークの位置を判定するためのアライメントセンサを含む。これらの測定デバイスは、測定を実施するために電磁放射を用い得る。そのような測定システムは、電磁放射の伝達又は電磁放射の生成のために、光ファイバも使用し得る。光ファイバを生産するための代替的な方法(及びそのような方法によって生産される光ファイバ)を提供するのが望ましいであろう。そのような代替的な方法及び光ファイバは、本明細書において確認されるか否かに関わらず、従来技術の構成と関連する1つ以上の課題に少なくとも部分的に対処するのが望ましいであろう。
【発明の概要】
【0007】
[0007] 発明の第1の態様によれば、光ファイバを形成する方法が提供され、その方法は、細長本体を有し外管と複数の内管とを備える製造用中間体であって、複数の内管は外管の中に配置され、複数の内管は細長本体の軸方向寸法に沿って細長本体を貫通して延伸するアパーチャの周囲に1つ以上のリング構造で配置されると共にアパーチャを少なくとも部分的に定義し、アパーチャの境界は製造用中間体の内部表面を定義する、製造用中間体を提供することと、エッチング物質(etching substance)を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることと、内管から形成された複数の反共振素子を備える中空コア反共振反射ファイバである光ファイバを形成するように軸方向寸法に沿って製造用中間体を引き延ばすことと、を備える。
【0008】
[0008] 発明の第1の態様による方法は、本体を有し、アパーチャがその本体を貫通して延伸している、光ファイバの製造に関する。有利なことには、エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることは、製造用中間体の内部表面から汚染物を除去するように作用し、内部表面の品質及び滑らかさを高める。そしてこれは、使用時に光ファイバに沿って伝播する放射の吸収及び/又は散乱を低減させる。そしてこれは、そのような放射の吸収及び/又は散乱によって引き起こされるおそれのあるファイバの損傷の量を低減させる。製造用中間体の内部表面をエッチングすることは、更に、先の表面の処理によって(例えば製造用中間体の製造ステップの際に)生じたであろう材料の表面に存在する応力を低減させるように作用する。表面のうち応力の影響を受けた最上部を除去することで、バルク材料の特性によりよく似た特性を備える表面がもたらされ、得られるファイバの損傷閾値が更に高められると共に、例えば微小亀裂を除去することによって、より良好な機械的性能ももたらされ得る。
【0009】
[0009] 細長本体は1つの寸法が他の2つの寸法よりも長い本体であることは理解されるであろう。また、本明細書において用いられる場合、細長本体の最も長い寸法がその本体の軸方向寸法と称され得ることも理解されるであろう。同様に、細長本体の、軸方向寸法に垂直な寸法は、径方向寸法と称され得る。
【0010】
[00010] 製造用中間体のアパーチャは中空コアと称されてもよく、これは、ひとたび製造用中間体が引き延ばされて光ファイバを形成すると、ファイバの中空コアを提供する。中空コアを包囲する内管はクラッディング部を提供するものと考えられてもよい。クラッディング部は複数の内管を備え、これらは、ひとたび製造用中間体が引き延ばされて光ファイバを形成すると、その光ファイバの中空コアを通じて放射をガイドする反共振素子を提供する。外管は、クラッディング部を包囲及び支持する支持部と称されてもよい。
【0011】
[00011] エッチング面の滑らかさはエッチング深さに応じて決まる(そしてこれは、エッチング物質のタイプ及び濃度、並びにエッチングプロセスの持続時間を含め、エッチング方法に依存し得る)ことは理解されるであろう。製造用中間体に対してエッチングステップを実施することの利点は、製造用中間体の径方向寸法がファイバ自体の径方向寸法よりも大きいことである。したがって、製造用中間体の内部表面は、そのような製造用中間体から形成された光ファイバがエッチングされ得るよりも深くエッチングすることが可能であり、より滑らかな表面が得られる及び/又は化学的な汚染物の濃度が比較的小さい深さに到達する。
【0012】
[00012] まずエッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングし、その後に続いて製造用中間体を引き延ばして光ファイバを形成することの別の利点は、内部表面上に残っている(化学的及び物理的な)汚染がプロセスの引き延ばしステップの際に広げられ、したがって光ファイバのアパーチャの表面の品質が更に高められるということである。
【0013】
[00013] 製造用中間体に対してエッチングステップを実施することの別の利点は、製造用中間体の軸方向寸法が光ファイバの軸方向寸法よりも小さいことである。その結果、エッチング物質は、ファイバの内部表面とよりも製造用中間体の内部表面と、より容易に及び/又はより均等に接触し得る。エッチング面積がより小規模であることから、これによって、プロセスに対する制御を向上させた、より容易なエッチングプロセスが提供される。
【0014】
[00014] 製造用中間体は、ファイバを生産するプロセスの際に得られる中間形態である。製造用中間体は、ファイバのプリフォームから形成されてもよく、ファイバへと引き延ばされてもよい。製造用中間体はケーンとも称され得る。
【0015】
[00015] 製造用中間体の軸方向寸法に沿ったアパーチャは、光ファイバの中空コアを提供するものと考えることができる(そして例えば、実質的に細長本体の中央部に位置していてもよい)。代替的には、製造用中間体の軸方向寸法に沿ったアパーチャは、細長本体の外側部分に位置していてもよく、光ファイバのクラッディング部内の構造を提供するものと考えられ得る。
【0016】
[00016] エッチングは製造用中間体の内部表面から(及びひいては結果として得られる光ファイバから)化学的及び物理的な汚染物を除去し得る。物理的な不純物の例は、スクラッチ、欠陥、及び微小亀裂を含む。化学的な汚染物の例は、不純物、埃及び有機物、指紋、オイルなどを含む。不純物又はスクラッチなどの化学的及び物理的な汚染物を表面から除去することにより、表面の下の更なる化学的及び/又は物理的な汚染物が現れるかもしれない。その例には、表面の下にある新たな化学的な汚染物又は深い亀裂及びスクラッチが含まれる。更なるエッチングがそのような化学的及び/又は物理的な不純物も除去するであろう。
【0017】
[00017] 製造用中間体に対してエッチングステップを実施することの別の利点は、結果として得られる光ファイバの反共振素子の壁をより小さくできるということである。これはひいては、結果として得られる光ファイバの案内を向上させる。
【0018】
[00018] 複数の内管は、内管の各々が他の内管のいずれとも接触しないように中空コアの周囲に単一リング構造で配置され得る。発明の第1の態様による光ファイバの製造方法は、そのような各内管が他の内管のいずれとも接触しないように配置された(使用時に反共振素子を形成する)複数の内管を備える配置にとって、特に有益である。これは、反共振素子を形成する壁が隣接する反共振素子の壁とは接触せず、したがって壁がエッチング液によって均一にエッチング可能であるためである。対照的に、隣接する反共振素子が接触しているフォトニック結晶ファイバジオメトリは、反共振素子の壁が互いに接触する、厚さが増した区域(ノードと称され得る)を有し、更に、そのようなノードは概して、ノード間を接続する壁部と異なってエッチングされるであろう。極端な一例として、カゴメファイバは、ノード間に延伸する相互接続された壁の網を備えている。そのような構成がエッチングされると、たとえ壁部が均一にエッチングされても、ノードの存在によって、エッチングされているアパーチャの内部形状は歪むであろう。この歪みは、製造用中間体から形成される光ファイバの中空コア内での放射のガイダンスを劣化させる。また、この歪みの程度は、エッチングの深さと共に増大するであろう。対照的に、各反共振素子が他の反共振素子のいずれとも接触しないように反共振素子が配置される構成は、そのような歪みを経験しないであろう。その結果、そのような実施形態については、結果として得られる光ファイバの光学特性に悪影響を及ぼすことなく(特に、光閉じ込め又は光ファイバを通じた放射のガイダンスに悪影響を及ぼすことなく)より深いエッチング深さが実現できる。既に述べたように、エッチングの深さを増大させると、結果として得られる光ファイバの光学特性も向上する。したがって、(i)各反共振素子が他の反共振素子のいずれとも接触しないように反共振素子が配置された構成があることと、(ii)まずエッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングし、その後続いて製造用中間体を引き延ばして光ファイバを形成することとの間には、相乗作用があるものと考えることができる。そのような構成は特に有利である。
【0019】
[00019] 軸方向寸法に沿って製造用中間体を引き延ばすことによって、製造用中間体の軸方向寸法に垂直な寸法は、少なくとも10分の1に縮小され得る。いくつかの実施形態においては、製造用中間体の軸方向寸法に垂直な寸法は、少なくとも20分の1に縮小され得る。いくつかの実施形態においては、製造用中間体の軸方向寸法に垂直な寸法は、少なくとも50分の1に縮小され得る。
【0020】
[00020] 製造用中間体が軸方向寸法に沿って引き延ばされ、その長さが軸方向に沿って増大するにつれて、細長本体の壁の厚さは減少する。引き延ばしプロセスの結果が通常又は単純スケーリングであるときには、軸方向寸法に垂直な寸法の全てが同じ因数で縮小される。軸方向寸法に垂直な寸法がf分の1に縮小される場合、軸方向寸法は(材料が保存されるので)f倍になるであろう。したがって、細長本体の壁の厚さは光ファイバの壁の厚さよりもf倍大きい。そして、有利なことには、まず製造用中間体をエッチングし、次にそれを引き延ばして光ファイバを形成することは、エッチングプロセスが、(まず引き延ばしそれからエッチングすることを選択した場合に)同等の品質の光ファイバを得るために光ファイバがエッチングされなければならないであろうよりもf倍大きい深さまでエッチングすることを可能にする。
【0021】
[00021] いくつかの実施形態においては、エッチングはディープエッチングプロセスを備えていてもよい。
【0022】
[00022] 当業者には、結果として得られる光ファイバの特徴に改善が見られ得るエッチングの最適な深さは製造用中間体毎に異なり得ると共に概していくつかの要因に依存するであろうことが理解されるであろう。そのような要因は、例えば、細長本体を形成する材料(例えばガラス)のタイプ及び純度(これは汚染物の分布を深さの関数として定義し得る)、製造用中間体又はその部分を形成する最初のガラス管の表面ラフネス、及び/又は製造用中間体の取り扱い及び製造の方法のうち、いずれかを含む。一方では、より多くの汚染物を除去するためにはより深くまでエッチングするのが望ましいであろう。他方では、最適なエッチング深さはエッチングされる部分の機械的安定性によって限定されるであろう。例えば、エッチングは、結果として得られる製造用中間体が光ファイバへと引き延ばされるのに十分な機械的安定性を欠くほどには深くないことを保証するのが望ましいであろう。
【0023】
[00023] 当業者には、ディープエッチングプロセスとは、エッチング深さが十分に深く、更なる材料の除去が製造用中間体から得られる光ファイバの特徴に何ら有意な改善を生じないエッチングプロセスを意味することを意図したものであることが理解されるであろう。化学的な汚染の場合には、これは、それを超えると深さの関数としての汚染物の濃度が水平域に達する最適な深さに対応し得る。スクラッチや微小亀裂のような物理的な汚染物の場合には、これは、それを超えると表面ラフネスが水平域に達する最適な深さ、及び/又はスクラッチの更なる拡張が結果として得られるファイバの光学特性、例えばその光損傷閾値の更なる向上をもたらさない最適な深さに対応し得る。
【0024】
[00024] 例えばファイバの代わりに製造用中間体をエッチングすることの利点は、より多くの材料が利用可能であるため、より深いエッチングを実施できるということである。したがって、エッチングプロセスは、例えば汚染物の近傍の領域で発生する汚染物の影響をエッチング除去することによって、汚染物をより徹底的に除去することができる。ディープエッチングプロセスによって除去され得る欠陥の例は、表面欠陥の周辺に存在する非架橋酸素正孔中心(NBOHC)や酸素欠損中心(ODC)などを含む。
【0025】
[00025] 製造用中間体の内部表面のエッチングは、ウェット化学エッチングプロセスを備え得る。
【0026】
[00026] ウェット化学エッチングを用いることの利点は、エッチング物質を形成する溶液の濃度の制御を通じてエッチングプロセスを制御する能力である。もう1つの利点は、気体のエッチング物質に比べ液体のエッチング物質は制御が比較的容易であるということであろう。製造用中間体に対してウェットエッチングを用いることの利点は、製造用中間体の寸法は十分に小型であるからエッチングのためのエッチング物質を備える容器内に設置可能であるということである。ウェット化学エッチングを用いることの他の利点は、ウェット化学エッチングは簡単な設備、例えば簡単なエッチング槽を使用すること、高いエッチング速度を実現できること、及び高い選択性を提供することを含む。
【0027】
[00027] 製造用中間体の内部表面のエッチングは、液体浸漬、キャピラリ充填、加圧充填、又はスプレーエッチングのうち1つを備え得る。そのような挿入方法は、ファイバに比べ製造用中間体のアパーチャは比較的長さが短く直径が大きいことから、ファイバよりも製造用中間体に適用する方が容易である。
【0028】
[00028] エッチング物質は、例えば、HF、HFとHNOとの混合物、又はKOHのうち1つを備え得る。これらの物質はSiOをエッチングすることがわかっており、したがって製造用中間体の内部表面をエッチングするのに有用である。
【0029】
[00029] 方法は室温で実施され得る。方法を実施するために温度を上げる必要がないことは、方法の実施をより容易且つ安価なものにする。
【0030】
[00030] 代替的には、方法は、制御環境において、例えば制御された温度条件下、制御された圧力条件下、及び/又は環境のガス組成が制御された状態で実施され得る。これはエッチングプロセスに対する制御の増大を提供し得る。
【0031】
[00031] 製造用中間体の内部表面のエッチングは、ドライ化学エッチングを備え得る。
【0032】
[00032] ドライ化学エッチングはガス状のエッチング物質を用い得る。例えば、エッチング物質はフッ化水素(HF)ガスを備えていてもよい。HFガスを用いてエッチングを実施することはウェットエッチングの代替案を提供し、したがって、方法は、ウェットエッチングが望ましくない場合に実施される。製造用中間体の内部表面の材料をエッチングすることのできる他のガスも用いられ得る。
【0033】
[00033] 方法は更に、エッチング物質及び/又はエッチングプロセスの何らかの生成物をアパーチャ内から少なくとも部分的に除去するように製造用中間体を洗浄することを備え得る。
【0034】
[00034] エッチング物質をアパーチャ内から少なくとも部分的に除去するように製造用中間体を洗浄するステップがエッチングステップの後で起こると共に例えば引き延ばすステップの前に起こり得ることは理解されるであろう。製造用中間体を洗浄するステップは、液体を用いてアパーチャを洗い流すこと、真空チャンバ内で製造用中間体を乾燥させること、及び/又は炉内で製造用中間体をベークすることのうちいずれかを備え得る。
【0035】
[00035] 方法は更に、エッチング物質を用いて製造用中間体の内管のうち1つ以上の内部表面をエッチングすることを備え得る。
【0036】
[00036] 方法は更に、内管の内部表面がエッチング物質によってエッチングされないように内管のうち1つ以上の端部を塞ぐことを備え得る。
【0037】
[00037] そのような実施形態においては、製造用中間体の中空コアを定義する表面のみがエッチングされる。こうした製造用中間体の中空コアの選択的エッチングは有益である。なぜなら、内管によって定義されるキャピラリ空洞は比較的小さいであろうから、内管の壁部が均一な厚さを有することを保証するのに十分な精度で内管内のエッチングプロセスを制御することは困難であり得るためである。そして、これらの壁部の厚さが均一であると、製造用中間体から引き延ばされた光ファイバの中空空洞内におけるガイドされた放射の閉じ込めの悪化がもたらされ得る。
【0038】
[00038] エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることは、複数のアパーチャのうち全てではなくいくつかの内部表面を選択的にエッチングすることを備え得る。
【0039】
[00039] 代替的には、エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることは、複数のアパーチャの1つ1つの内部表面をエッチングすることを備え得る。
【0040】
[00040] 光ファイバは中空コア反共振反射ファイバである。例えば、光ファイバは、単一リング中空コアファイバ又は入れ子式管中空コアファイバのいずれかを備え得る。
【0041】
[00041] エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることは、製造用中間体の内部表面の1つ以上の部分を優先的にエッチングすることを備えていてもよく、その1つ以上の部分は使用時に光ファイバを伝播する光と主に接触又は相互作用する光ファイバの1つ以上の部分に対応する。
【0042】
[00042] 方法は更に、製造用中間体の外部表面をエッチングすることを備え得る。
【0043】
[00043] 発明の第2の態様によれば、発明の第1の態様の方法によって形成される光ファイバが提供される。
【0044】
[00044] 光ファイバはガス充填ファイバであってもよい。ガスは原子ガス、分子ガス、又は両者の混合物であってもよい。
【0045】
[00045] (発明の第1の態様によって形成される)発明の第2の態様による光ファイバは、次に述べるように、従来技術の光ファイバに対して区別することが可能であることは理解されるであろう。例えば、発明の第2の態様による光ファイバを従来技術の光ファイバと区別する1つの手法は、光ファイバに沿って伝播する放射の側方散乱を監視することである。従来技術の(エッチングされていない製造用中間体からなる)光ファイバにおいては、表面ラフネス及びスクラッチが、光がファイバに沿って伝播する際にその光を散乱させた散乱点として現れ得る。これらの散乱点は、適当なディテクタにとって、又は光の波長が可視範囲にあれば人間の眼にとってさえ、可視であろう。対照的に、発明の第2の態様による(すなわちエッチングされた製造用中間体から引き延ばされた)光ファイバは、より少ない数のこうした散乱点を有するであろう。したがって、光ファイバから外に散乱される放射の量を監視することによって、発明の第2の態様による光ファイバを従来技術の光ファイバと区別することが可能である。
【0046】
[00046] 発明の第3の態様によれば、光ファイバを形成するための製造用中間体が提供され、製造用中間体は、製造用中間体が光ファイバを形成するように軸方向寸法に沿って引き延ばされる前に、発明の第1の態様の方法によって中間体として形成される。
【0047】
[00047] 発明の第4の態様によれば、放射ビームを生成するように動作可能な放射源と、発明の第1の態様の方法によって形成される光ファイバと、を備えるスーパーコンティニウム放射源が提供され、光ファイバは、放射ビームを受光するように、及びスーパーコンティニウム放射ビームを生成するべくそのパルス放射ビームのスペクトルを拡大するように構成されている。
【0048】
[00048] 放射ビームは、パルス放射ビーム又は連続波放射ビーム、例えばレーザビームであってもよい。光ファイバはガス充填ファイバであってもよい。
【0049】
[00049] 発明の第5の態様によれば、発明の第1の態様の方法によって形成される光ファイバを備えるリソグラフィ装置が提供される。
【0050】
[00050] 発明の第6の態様によれば、発明の第1の態様の方法によって形成される光ファイバを備えるメトロロジ装置が提供される。
【0051】
[00051] 発明の上記の態様のいずれもが、所望により、発明の他の態様のうち1つ以上の、1つ以上の特徴を備え得る。
【図面の簡単な説明】
【0052】
[00052] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0053】
図1】リソグラフィ装置の図式的概観を図示する。
図2】リソグラフィックセルの図式的概観を図示する。
図3】ホリスティックリソグラフィ(holistic lithography)の図式表現を図示しており、半導体製造を最適化するための3つの鍵となる技術間の協働を表す。
図4】メトロロジ装置の図式表現を図示する。
図5】トポグラフィ測定システムの図式表現を図示する。
図6】アライメントセンサの図式表現を図示する。
図7】光ファイバを形成する方法のステップを表すフロー図を図示する。
図8】製造用中間体の図式表現を図示する。
図9】(a),(b),(c)は、プリフォームの形成に関わる光ファイバを形成するプロセスのステップの図式表現を図示する。
図10】光ファイバのプリフォームから製造用中間体を形成することの図式表現を図示する。
図11】(a),(b),(c)は、製造用中間体の構成例の図式表現を図示する。
図12】中空コア製造用中間体の横平面の(すなわち製造用中間体の軸に対して垂直な)概略断面図である。
図13】広帯域放射源の図式表現を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[00053] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5nm~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0055】
[00054] 図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)Tと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0056】
[00055] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0057】
[00056] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折型、反射型、反射屈折型、アナモルフィック、磁気型、電磁型、及び/又は静電型光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0058】
[00057] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に含まれる米国特許6952253号に与えられている。
【0059】
[00058] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。こうした「マルチステージ」機械において、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0060】
[00059] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又は洗浄デバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するよう配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。洗浄デバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部を洗浄するよう配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0061】
[00060] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。マスクMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の合焦し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0062】
[00061] 図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、リソセル又は(リソ)クラスタと称されることもあるリソグラフィックセルLCの一部を形成し得るものであり、リソグラフィックセルは基板Wに対する露光前プロセス及び露光後プロセスを実施する装置も含むことが多い。慣例的には、これらの装置は、レジスト層を堆積するためのスピンコータSCと、露光されたレジストを現像するためのデベロッパDEと、例えばレジスト層内の溶媒を調整するために例えば基板Wの温度を調整するための冷却プレートCH及びベークプレートBKとを含む。基板ハンドラ又はロボットROが、基板Wを入力/出力ポートI/O1,I/O2からピックアップし、異なるプロセス装置間で移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを受け渡す。集合的にトラックと称されることも多いリソセル内のデバイスは一般的にはトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、トラック制御ユニットTCU自体は、例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAも制御し得る監視制御システムSCSによって制御され得る。
【0063】
[00062] リソグラフィ装置LAによって露光される基板Wが正確に且つ安定的に露光されるためには、基板を検査して後続の層の間のオーバーレイエラー、線幅、クリティカルディメンジョン(CD)など、パターニングされた構造の特性を測定するのが望ましい。このために、リソセルLCには検査ツール(図示しない)が含まれていてもよい。エラーが検出される場合には、特に同じバッチ又はロットの他の基板が露光又は処理される前に検査が行われるのであれば、後続の基板の露光に対して又は基板Wについて実施される他の処理ステップに対して調節がなされ得る。
【0064】
[00063] メトロロジ装置とも称され得る検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性がどのように異なっているのか又は同じ基板Wの異なる層に関連する特性が層毎にどのように異なっているのかを判定するために用いられる。検査装置は、代替的には、基板W上の欠陥を識別するように構築されていてもよく、例えばリソセルLCの一部であってもよく、又はリソグラフィ装置LAに統合されていてもよく、又は独立型のデバイスでさえあってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層の像)について、又は半潜像的な像(露光後ベークステップPEBの後のレジスト層の像)について、又は(レジストの露光部又は未露光部が除去された)現像済みのレジスト像について、又は(エッチングなどのパターン転写ステップの後の)エッチングされた像についてさえ、特性を測定することができる。
【0065】
[00064] 一般に、リソグラフィ装置LAにおけるパターニングプロセスは、基板W上の構造の寸法決め及び設置の高い精度を必要とする処理において最も重要なステップの1つである。この高い精度を保証するために、3つのシステムが、図3に概略的に図示されるような所謂「ホリスティックな」制御環境において組み合わされ得る。これらのシステムの1つが、メトロロジツールMT(第2のシステム)とコンピュータシステムCL(第3のシステム)とに(仮想的に)接続されたリソグラフィ装置LAである。そのような「ホリスティックな」環境の鍵となるのは、これらの3つのシステム間の協調を最適化して、リソグラフィ装置LAによって実施されるパターニングが確実にプロセスウィンドウ内に留まることを保証するように、プロセスウィンドウ全体を向上させると共に厳格な制御ループを提供することである。プロセスウィンドウはある範囲のプロセスパラメータ(例えばドーズ、焦点、オーバーレイ)を定義し、その範囲内では特定の製造プロセスは定義された結果(例えば機能的な半導体デバイス)となる。一般には、その範囲内では、リソグラフィプロセス又はパターニングプロセスのプロセスパラメータは変動することが許される。
【0066】
[00065] コンピュータシステムCLは、パターニングされる設計レイアウト(の一部)を使用して、どの解像度向上技術を用いるかを予測し得ると共に、計算機リソグラフィシミュレーション及び演算を実施してどのマスクレイアウト及びリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスのプロセスウィンドウ全体を最大にするのかを判定し得る(図3に第1のスケールの両方向矢印によって図示されている)。一般には、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニング可能性に合わせて準備される。コンピュータシステムCLは、例えば準最適な処理に起因する欠陥が存在し得るか否かを予測するべく、(例えばメトロロジツールMTからの入力を使用して)リソグラフィ装置LAがプロセスウィンドウ内のどこで現在動作しているのかを検出するためにも用いられ得る(図3に第2のスケールSC2の「0」を指す矢印によって図示されている)。
【0067】
[00066] メトロロジツールMTは、コンピュータシステムCLに入力を提供して正確なシミュレーション及び予測を可能にし得ると共に、リソグラフィ装置LAにフィードバックを提供して、例えばリソグラフィ装置LAのキャリブレーションステータスにおいて発生する可能性のあるドリフトを識別し得る(図3に第3のスケールSC3の複数の矢印によって図示されている)。
【0068】
[00067] リソグラフィプロセスにおいては、例えばプロセス制御及び検証のために、作成される構造の測定を頻繁に行うのが望ましい。そのような測定を行うためのツールが一般にメトロロジツールMTと呼ばれる。走査電子顕微鏡又は種々の形態のスキャトロメータメトロロジツールMTを含め、そのような測定を行うための様々なタイプのメトロロジツールが知られている。スキャトロメータは汎用性のある器具であり、スキャトロメータの対物系の瞳又は瞳と共役な面にセンサを有することによって、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にする。測定とは、通常は瞳ベースの測定のことをいう。あるいは、像面又は像面と共役な面にセンサを有することによって、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にし、その場合、測定とは、通常は画像又は視野ベースの測定のことをいう。そのようなスキャトロメータ及び関連する測定技術は、米国特許出願第20100328655号、第2011102753A1号、第20120044470A号、第20110249244号、第20110026032号、又は欧州特許出願第1,628,164A号に更に記載されている。これらの出願はその全体が参照によって本明細書に組み込まれる。前述のスキャトロメータは、軟X線及び可視から近赤外までの波長範囲の光を用いて格子を測定することができる。
【0069】
[00068] 既知のスキャトロメータの例は、アンダーフィルされたターゲット(単純な格子又は異なる層の重なり合った格子の形態をとるターゲットであって、測定ビームが格子よりも小さいスポットを生成する程度に十分に大きい)又はオーバーフィルされたターゲット(照明スポットがそのターゲットを部分的に又は完全に包含する)など、専用のメトロロジターゲットの提供に依存することが多い。また、メトロロジツール、例えば格子などのアンダーフィルされたターゲットを照明する角度分解スキャトロメータの使用は、所謂再構築方法の使用を可能にし、その場合、格子の特性は、散乱線とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレートすること及びシミュレーション結果を測定の結果と比較することによって算出できる。モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が現実のターゲットから観察されるものに類似の回折パターンを生成するまで、調節される。
【0070】
[00069] 第1の実施形態においては、スキャトロメータMTは角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、格子の特性を再構築又は算出するために、測定された信号に再構築方法が適用され得る。そのような再構築は、例えば、散乱線とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレートすること及びシミュレーション結果を測定の結果と比較することによってもたらされ得る。数学的モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が現実のターゲットから観察されるものに類似の回折パターンを生成するまで、調節される。
【0071】
[00070] 第2の実施形態においては、スキャトロメータMTは分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射源によって発せられた放射はターゲット上に向けられ、ターゲットから反射又は散乱した放射はスペクトロメータ検出器に向けられ、スペクトロメータ検出器が正反射された放射のスペクトル(即ち波長の関数としての強度の測定)を測定する。このデータから、検出されたスペクトルを生じるターゲットの構造又はプロファイルが、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって、又はシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、再構築され得る。
【0072】
[00071] 第3の実施形態においては、スキャトロメータMTはエリプソメトリックスキャトロメータ(ellipsometric scatterometer)である。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態について散乱線を測定することにより、リソグラフィプロセスのパラメータを判定することを可能にする。そのようなメトロロジ装置は、例えばメトロロジ装置の照明部において適切な偏光フィルタを用いることによって、(直線、円、又は楕円などの)偏光光を発する。メトロロジ装置に適した放射源が偏光放射を提供してもよい。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの様々な実施形態が、米国特許出願第11/451,599号、第11/708,678号、第12/256,780号、第12/486,449号、第12/920,968号、第12/922,587号、第13/000,229号、第13/033,135号、第13/533,110号、及び第13/891,410号に記載されている。これらの出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
[00072] スキャトロメータMTの一実施形態においては、スキャトロメータMTは、反射スペクトル及び/又は検出構成の非対称を測定することによって、アライメントがずれた2つの格子又は周期構造のオーバーレイを測定するように適合される。非対称はオーバーレイの程度に関係する。2つの(典型的には重なり合った)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続した層ではない)に適用され得ると共に実質的にはウェーハ上の同じ位置に形成され得る。スキャトロメータは、どんな非対称も明確に区別可能であるように、例えば共有欧州特許出願第1,628,164A号に記載の対称の検出構成を有していてもよい。これにより、格子のミスアライメントを測定する簡単な手法が提供される。ターゲットが周期構造の非対称を通じて測定される際に周期構造を含む2層間のオーバーレイエラーを測定する更なる例は、PCT特許出願国際公開第2011/012624号明細書又は米国特許出願第20160161863号において確認することができる。これらの出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
[00073] 他の関心パラメータは、焦点及びドーズであろう。焦点及びドーズは、米国特許出願第2011-0249244号に記載のスキャトロメトリによって(又は代替的には走査電子顕微鏡によって)同時に決定されてもよい。同出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。焦点エネルギーマトリクス(FEM、焦点露光マトリクスとも称される)の各点についてクリティカルディメンジョンと側壁角度の測定値との一意の組み合わせを有する単一の構造が用いられてもよい。クリティカルディメンジョンと側壁角度とのこうした一意の組み合わせが利用可能であれば、焦点及びドーズ値はこれらの測定値から一意に決定することができる。
【0075】
[00074] メトロロジターゲットは、リソグラフィプロセスによって主にレジスト内に形成されるが例えばエッチングプロセスの後にも形成される、複合格子の集合であってもよい。一般に、格子内の構造のピッチ及び線幅は、メトロロジターゲットから到来する回折次数を捕捉することができるように、測定光学部品(特に光学部品のNA)に強く依存する。先に示したように、回折信号は、2層間のシフト(「オーバーレイ」とも称される)を判定するために用いられてもよく、又はリソグラフィプロセスによって生成された元の格子の少なくとも一部を再構築するために用いられてもよい。この再構築は、リソグラフィプロセスの品質のガイダンスを提供するために用いられ得ると共に、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために用いられ得る。ターゲットは、ターゲットにおける設計レイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成された、より小さな小区分を有していてもよい。この小区分によって、ターゲットは設計レイアウトの機能部分によりよく似た振る舞いをするようになり、したがって、プロセスパラメータの測定全体が、より設計レイアウトの機能的な部分に似る。ターゲットは、アンダーフィルドモード(underfilled mode)でも又はオーバーフィルドモード(overfilled mode)でも測定され得る。アンダーフィルドモードでは、測定ビームはターゲット全体よりも小さいスポットを生成する。オーバーフィルドモードでは、測定ビームはターゲット全体よりも大きいスポットを生成する。そのようなオーバーフィルドモードでは、異なるターゲットを同時に測定し、ひいては異なるプロセスパラメータを同時に決定することも可能であろう。
【0076】
[00075] 特定のターゲットを用いたリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、少なくとも部分的には、このリソグラフィパラメータを測定するために用いられる測定レシピによって決定される。「基板測定レシピ」という用語は、測定自体の1つ以上のパラメータ、測定される1つ以上のパターンの1つ以上のパラメータ、又はその両方を含み得る。例えば、基板測定レシピにおいて用いられる測定が回折ベースの光学的測定である場合には、測定のパラメータのうち1つ以上は、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の配向等を含み得る。測定レシピを選定するための基準の1つは、例えば、測定パラメータのうちの1つの、処理の変動に対する感度である。米国特許出願第2016-0161863号及び米国特許出願公開第2016/0370717A1号明細書には更なる例が記載されている。これらの出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
[00076] スキャトロメータのようなメトロロジ装置が図4に図示されている。メトロロジ装置は、放射を基板6上に投影する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射又は散乱された放射はスペクトロメータ検出器4に渡され、スペクトロメータ検出器が鏡面反射された放射のスペクトル10(すなわち波長の関数としての強度の測定値)を測定する。このデータから、検出されたスペクトルを生じる構造又はプロファイルが、処理ユニットPUによって、例えば厳密結合波分析及び非線形回帰によって又は図4の下部に示されるシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、再構築され得る。概して、再構築については、構造の概形が既知であり、その構造が作られたプロセスの知見からいくつかのパラメータが推定されるので、スキャトロメトリデータから決定されるのは構造のほんのいくつかのパラメータのみである。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータ又は斜め入射スキャトロメータとして構成され得る。
【0078】
[00077] 基板(又はウェーハ)の上面のトポグラフィを測定するために、リソグラフィ装置内に集積され得るトポグラフィ測定システム、レベルセンサ又は高さセンサが配置される。基板の高さを基板上の位置の関数として示すこれらの測定値から、高さマップとも称される、基板のトポグラフィのマップが生成され得る。この高さマップはその後、基板上の適正合焦位置にパターニングデバイスの空中像を提供するべく、基板へのパターンの転写の際に基板の位置を補正するために用いられ得る。この文脈において、「高さ」とは、基板に対して広く面外の寸法(Z軸とも称される。図1を参照)を指すことは理解されるであろう。一般には、レベル又は高さセンサは(自身の光学系に対して)固定された場所で測定を実施し、基板とレベル又は高さセンサの光学系との間の相対移動が基板全体の各場所で高さ測定をもたらす。
【0079】
[00078] 当該技術分野において既知のレベル又は高さセンサLSの一例が図5に概略的に示されている。同図は動作の原理のみを図示している。この例において、レベルセンサは、投影ユニットLSP及び検出ユニットLSDを含む光学系を備えている。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRに入射する放射ビームLSBを提供する放射源LSOを備えている。放射源LSOは、例えば、スーパーコンティニウム光源のような狭帯域又は広帯域放射源であってもよく、偏光又は非偏光レーザビームのように偏光化又は非偏光化、パルス化又は連続していてもよい。放射源LSOは、複数のLEDのように、異なる色又は波長範囲を有する複数の放射源を含んでいてもよい。レベルセンサLSの放射源LSOは、可視放射に限定されず、追加的又は代替的にはUV及び/又は赤外放射並びに基板の表面から反射するのに適した任意の範囲の波長を包含し得る。
【0080】
[00079] 投影格子PGRは、強度が周期的に変動する放射ビームBE1をもたらす周期構造を備える周期格子である。強度が周期的に変動する放射ビームBE1は、入射基板表面に垂直な軸(Z軸)に対して0度から90度、典型的には70度から80度の入射角ANGをもって、基板W上の測定場所MLOに向けられる。測定場所MLOでは、パターン形成された放射ビームBE1が、基板Wによって反射され(矢印BE2によって示されている)、検出ユニットLSDに向けられる。
【0081】
[00080] 測定場所MLOにおける高さレベルを判定するために、レベルセンサは更に、検出格子DGRと、検出器DETと、検出器DETの出力信号を処理する処理ユニット(図示しない)とを備える検出システムを備えている。検出格子DGRは投影格子PGRと同一であってもよい。検出器DETは、受けた光を示す、例えば、光検出器のように受けた光の強度を示す、又はカメラのように受けた強度の空間的分布を表す、検出器出力信号を生成する。検出器DETは1つ以上の検出器タイプの任意の組み合わせを備えていてもよい。
【0082】
[00081] 三角測量技術によって、測定場所MLOにおける高さレベルを判定することができる。検出された高さレベルは、一般には検出器DETによって測定された信号強度に関係しており、その信号強度は、要因の中でも特に投影格子PGRの設計及び(斜め)入射角ANGに依存する周期性を有する。投影ユニットLSP及び/又は検出ユニットLSDは、投影格子PGRと検出格子DGRとの間のパターン形成された放射ビームの経路に沿って、レンズ及び/又はミラーなど、更なる光学素子を含んでいてもよい(図示しない)。一実施形態においては、検出格子DGRは省略されてもよく、検出格子DGRがある位置に検出器DETが設置されてもよい。そのような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。基板Wの表面を効果的にカバーするために、レベルセンサLSは、測定ビームBE1のアレイを基板Wの表面上に投影し、それによってより大きな測定範囲をカバーする測定領域MLO又はスポットのアレイを生成するように構成されていてもよい。
【0083】
[00082] 一般的なタイプの様々な高さセンサが、例えば、いずれも参照により組み込まれる米国特許第7265364号明細書及び米国特許第7646471号明細書に開示されている。可視又は赤外放射の代わりにUV放射を用いる高さセンサが、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2010233600A1号明細書に開示されている。参照により組み込まれる国際公開第2016102127A1号明細書には、多素子検出器を用いて検出格子を必要とせずに格子像の位置を検出及び認識する小型の高さセンサが記載されている。
【0084】
[00083] 位置測定システムは、基板サポートWTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを備えていてもよい。位置測定システムは、マスクサポートTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを備えていてもよい。センサは、干渉計又はエンコーダなどの光センサであってもよい。位置測定システムは、干渉計とエンコーダとの複合システムを備えていてもよい。センサは、磁性センサ、静電容量センサ、又は誘導センサなど、別のタイプのセンサであってもよい。位置測定システムは、基準、例えばメトロロジフレーム又は投影システムPSに対する位置を判定し得る。位置測定システムは、位置を測定することによって又は速度もしくは加速など位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWT及び/又はマスクサポートTの位置を判定してもよい。
【0085】
[00084] 複雑なデバイスの製造においては、一般に、多くのリソグラフィパターニングステップが実施され、それによって基板上の連続する層に機能的フィーチャが形成される。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な一態様は、適用されたパターンを、(同じ装置又は異なるリソグラフィ装置によって)前の層に定められたフィーチャに対して、正確に且つ精度よく設置する能力である。このために、基板には、1組以上のマークが設けられる。各マークは、位置センサ、一般には光学位置センサを用いて、後から位置を測定することのできる構造である。位置センサは「アライメントセンサ」と称されてもよく、マークは「アライメントマーク」と称されてもよい。
【0086】
[00085] リソグラフィ装置は1つ以上の(例えば複数の)アライメントセンサを含み、そのアライメントセンサによって基板上に設けられたマークの位置を精度よく測定することができる。アライメント(又は位置)センサは、光の回折及び干渉などの光学現象を用いて、基板上に形成されたアライメントマークから位置情報を取得する。現在のリソグラフィ装置において使用されているアライメントセンサの一例は、米国特許第6961116号明細書に記載の自己参照干渉計に基づいている。例えば米国特許出願公開第2015261097A1号明細書に開示されているように、位置センサの様々な向上及び変更が開発されている。これらの全ての公開物の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
[00086] マーク又はアライメントマークは、基板上に提供された又は基板内に(直接)形成された層の上又は中に形成された一連のバーを備えていてもよい。バーは一定間隔であり得ると共に格子線として作用し得るので、マークは、周知の空間的周期(ピッチ)を有する回折格子と見なすことができる。これらの格子線の配向に応じて、マークは、X軸に沿った、又は(X軸に実質的に垂直に配向された)Y軸に沿った位置の測定を可能にするように設計され得る。X軸及びY軸の両方に対して+45度及び/又は-45度で配置されたバーを備えるマークは、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2009/195768A号明細書に記載の技術を用いたX及びYの組み合わせ測定を可能にする。
【0088】
[00087] アライメントセンサは、各マークを放射のスポットで光学的にスキャンして、正弦波のような周期的に変動する信号を得る。この信号の位相は、アライメントセンサに対するマークの位置、したがって基板の位置を判定するべく分析され、アライメントセンサはリソグラフィ装置の基準フレームに対して固定されている。アライメントセンサが周期信号の異なるサイクル並びに1サイクル内での正確な位置(位相)を区別することができるように、所謂粗いマーク及び微細なマーク(coarse and fine marks)が、異なる(粗い及び微細な)マーク寸法に関連して設けられてもよい。この目的で異なるピッチのマークが用いられてもよい。
【0089】
[00088] マークの位置を測定することは、例えばウェーハグリッドの形でマークが設けられている基板の変形についての情報も提供し得る。基板の変形は、例えば、基板テーブルへの基板の静電クランプ及び/又は基板が放射に曝されるときの基板の加熱によって生じ得る。
【0090】
[00089] 図6は、例えば参照により組み込まれる米国特許第6961116号明細書に記載されているような、既知のアライメントセンサASの一実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは1つ以上の波長の放射のビームRBを提供し、このビームは変向光学部品(diverting optics)によって、照明スポットSPとして、基板W上に位置するマークAMなどのマーク上へと変向される。この例においては、変向光学部品はスポットミラーSM及び対物レンズOLを備えている。マークAMを照明する照明スポットSPは、直径がマーク自体の幅よりも僅かに小さくてもよい。
【0091】
[00090] マークAMによって回折された放射は、(この例においては対物レンズOLを介して)情報伝達ビームIBへとコリメートされる。「回折される」という用語は、マークからのゼロ次回折(反射とも称され得る)を含むことが意図されている。例えば上記で言及した米国特許第6961116号明細書に開示されるタイプの自己参照干渉計SRIは、それ自体ビームIBに干渉し、その後ビームは光検出器PDによって受光される。放射源RSOによって1つよりも多くの波長が作成される場合には、別々のビームを提供するために追加的な光学部品(図示しない)が含まれてもよい。光検出器は、単一の素子であってもよいし、又は所望の場合には多数の画素を備えていてもよい。光検出器はセンサアレイを備えていてもよい。
【0092】
[00091] この例においてはスポットミラーSMを備える変向光学部品は、マークから反射されるゼロ次回折を遮蔽する役割を果たしてもよく、したがって、情報伝達ビームIBはマークAMからの高次回折放射しか備えない(これは測定に不可欠ではないが、信号対雑音比を改善する)。強度信号SIが処理ユニットAPUに供給される。ブロックSRIにおける光学処理とユニットAPUにおける演算処理との組み合わせによって、基準フレームに対する基板上のX位置及びY位置の値が出力される。
【0093】
[00092] 図示されるタイプの単一測定は、マークの1ピッチに対応する特定の範囲内のマークの位置を固定するのみである。正弦波のどの周期がマークされた位置を含む周期であるのかを特定するためには、これと関連して、より粗い測定技術が用いられる。マークが作製される材料や上及び/又は下にマークが提供される材料とは無関係な精度の向上のため及び/又はマークのロバストな検出のために、より粗い及び/又はより微細なレベルでの同じ処理が異なる波長で繰り返されてもよい。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化及び逆多重化(de-multiplexed)されてもよく、及び/又は時間分割又は周波数分割によって多重化されてもよい。
【0094】
[00093] この例においては、アライメントセンサ及びスポットSPは静止したままであり、その一方で、移動するのは基板Wである。したがって、アライメントセンサは基準フレームに強固に且つ精度よく取り付けることができ、その一方で、基準フレームに対してマークAMを効果的にスキャンする。基板Wは、この移動時に、基板サポート(例えばウェーハテーブルWT、図1を参照)と、基板サポートの移動を制御する基板位置決めシステム(例えば第2のポジショナPW、図1を参照)とによって制御される。基板サポート位置センサ(例えば干渉計IFなどの干渉計、図1を参照)が基板サポートの位置を測定する(図示しない)。一実施形態においては、基板サポート上には1つ以上の(アライメント)マークが設けられる。基板サポート上に設けられたマークの位置の測定は、位置センサによって判定された基板サポートの位置が(例えばアライメントシステムが接続されたフレームに対して)較正されることを可能にする。基板上に設けられたアライメントマークの位置の測定は、基板サポートに対する基板の位置が判定されることを可能にする。
【0095】
[00094] 上述した様々なタイプの装置は、放射源に由来する放射を使用する。放射は、広帯域放射、例えば白色光放射であってもよい。広帯域放射は、例えばアライメントマーク測定システム、レベルセンサ、スキャトロメトリツール、位置測定システムIF、検査ツール、又は他のセンサにおいて特に有用であろう。広帯域放射を提供する放射源は、スーパーコンティニウム光源であってもよい。スーパーコンティニウムは、高強度放射が適当な非線形光学媒質を伝播するにつれて発生する種々の非線形光学効果の結果として形成され得る。光学媒質はポンプ放射をガイドするように構成されていてもよい。ポンプ放射は電磁波であってもよい。非線形効果が実現される光学媒質は、ファイバ、例えばフォトニック結晶ファイバであってもよく、又はガスが充填された容器、例えばガス充填中空光ファイバであってもよい。ファイバは導波路効果を提供してもよく、放射を制御された状態でガイドする。非線形効果を実現するために、高強度ポンプ放射が提供されてもよい。スーパーコンティニウムは、放射、例えばポンプ源からの放射がファイバのコア領域に閉じ込められたファイバにおいて実現され得る。特にフォトニック結晶ファイバがファイバ内部への放射の強い閉じ込めに適しており、その結果、局所的に高い放射強度を実現するために用いられ得る。
【0096】
[00095] 放射がファイバに沿って伝播するにつれ、放射のうちいくらかは、ファイバを形成する材料によって吸収及び/又は散乱され得る。これはファイバを損傷させるおそれがあり、吸収及び/又は散乱されるエネルギーの量(これは放射の強度に依存する)が大きいほど、損傷が発生する可能性は大きくなる。概して、ファイバは、放射の強度(すなわち単位面積当たりのパワー)がそのファイバの閾値を下回るのであれば、及び/又は光のスペクトル成分がファイバの材料が放射によって誘起される損傷を被る区域内にない場合には、放射をサポートすることができるであろう。例えば、紫外線へのガラスの曝露は、高エネルギー光子(短波長放射)によるガラスの光損傷及びソラリゼーションを引き起こし得る。閾値を上回る強度及び/又はファイバの材料を損傷させるのに十分なほど短い波長の放射がファイバに結合されると、結果としてファイバは損傷し得る。ファイバの損傷閾値は、例えばファイバの材料及び/又はファイバの品質など、ファイバの特性によって決定され得る。ファイバの、光が主に閉じ込められる又はガイドされる領域においては、ファイバの材料及び製造の品質が特に重要である。これは、吸収及び/又は散乱される放射の量がこれらの領域のファイバの品質に依存するからである。小さな領域への光の強い閉じ込めを実現するファイバ(これは放射の強度及び/又は放射のファイバ材料との重なり合いを増大させるであろう)では、損傷閾値を高めることは、ファイバの性能及び耐用期間を向上させるのに特に重要であろう。一構成例においては、ファイバは、1つの中空コア又は複数の中空コアを備えるフォトニック結晶ファイバであってもよい。ファイバの品質及び損傷閾値に影響を及ぼす1つの要素は、ファイバ内に存在する汚染物及び/又は光に直接接触する表面のラフネスである。これらは物理的な汚染物(例えば欠陥、スクラッチ、表面ラフネス)及び/又は化学的な汚染物(例えば不純物、埃、油、フィンガープリント)であり得る。汚染物は、材料の表面又はその付近に高濃度で出現し得る。中空コアの境界を形成するファイバの内部表面又はその付近に光が閉じ込められ得る中空コアファイバにおいては、これらの汚染物の除去は、性能及び耐用期間を向上させるのに特に重要であろう。
【0097】
[00096] 本発明の実施形態は、光ファイバを形成する方法及びそのような方法によって形成される光ファイバに関する。これらの光ファイバは、高強度放射ビームをガイドすることに特に適用され得る。例えば、これらの光ファイバは、スーパーコンティニウム放射源の一部を形成し得る。本発明のいくつかの実施形態は、そのようなスーパーコンティニウム放射源に関し得る。これらの(広帯域放射を出力し得る)スーパーコンティニウム放射源は、測定システムに特に適用され得る。例えば、そのようなスーパーコンティニウム放射源は検査装置(メトロロジ装置とも称される)の一部であってもよく、この検査装置は、リソグラフィ装置の外部にあってもよいし、リソグラフィ装置によって基板上に投影されたパターンの特性を判定するために用いられてもよい。そのような外部検査装置は、例えば、スキャトロメータを備えていてもよい。追加的又は代替的には、スーパーコンティニウム放射源は、リソグラフィ装置内に設けられ得る測定システムの一部を形成してもよい。そのような内部測定システムは、トポグラフィ測定システム(レベルセンサともいう)、レチクル又はウェーハステージの位置を判定するための位置測定システム(例えば干渉デバイス)、又はアライメントマークの位置を判定するためのアライメントセンサのうちいずれかを含み得る。本発明のいくつかの実施形態は、そのような測定システムに関し得る。
【0098】
[00097] 例えば中空コアフォトニック結晶ファイバのような、1つ以上のアパーチャを備える光ファイバは、放射のための導波素子として用いられてもよく、追加的又は代替的には放射生成のために用いられてもよい。光ファイバを形成するプロセスは、いくつかのステップ及び中間形態を備え得る。ファイバは製造用中間体212から形成されてもよく、これが後に引き延ばされてファイバを形成し得る。
【0099】
[00098] 発明の第1の実施形態による方法100は、本体を有し、その本体を貫通してアパーチャが延伸している光ファイバの製造に関するもので、図7を参照して次に説明される。
【0100】
[00099] ステップ102は、製造用中間体を提供することを備える。製造用中間体212の一例が図8に示されている。製造用中間体212は、細長本体218と、細長本体218を貫通し細長本体218の軸220によって定義される軸方向寸法に沿って延伸する複数のアパーチャとを有している。アパーチャ217の各々の境界は製造用中間体212の内部表面216を定義する。
【0101】
[000100] ステップ104は、製造用中間体212の内部表面の少なくとも一部をエッチングすること、例えばアパーチャ217のうち少なくとも1つによって定義される内部表面の部分をエッチングすることを備える。これは、エッチング物質を用いて行われ得る。
【0102】
[000101] ステップ106においては、製造用中間体212を細長本体218の軸方向寸法に沿って引き延ばすことによって、光ファイバが引き延ばされる。
【0103】
[000102] エッチング物質を用いて製造用中間体212の内部表面216をエッチングすることの利点は、これには製造用中間体212の内部表面216から汚染物を除去する効果があり、内部表面216の品質及び滑らかさが高められるということである。そしてこれは、使用時に光ファイバに沿って伝播する放射の吸収及び/又は散乱を低減させる。そしてこれは、吸収及び/又は散乱された放射によって引き起こされる損傷の量を減らすことによってファイバの損傷閾値を高める。製造用中間体212の内部表面216をエッチングすることは、更に、製造用中間体212の材料の表面に存在する応力を低減させるように作用する。この応力は、表面の掘削又は摩砕など表面の機械的処理によって、又は(以下に更に述べるような)製造用中間体212を形成するためのプリフォームの引き延ばしの際に引き起こされたものであろう。応力の影響を受けた表面を除去することで、バルク材料の特性によりよく似た特性を備える表面がもたらされる。製造用中間体212の内部表面216とバルク材料との類似度を高めることで、使用時にファイバを伝播する放射によって与えられる損傷が低減され、それによって、結果として得られるファイバの損傷閾値が高められる。
【0104】
[000103] 細長本体218は本体の1つの寸法が他の2つの寸法よりも長い本体であることは理解されるであろう。また、本明細書において用いられる場合、細長本体218の最も長い寸法がその本体の軸方向寸法と称され得ることも理解されるであろう。同様に、細長本体218の、軸方向寸法に垂直で軸220を通過する寸法は、径方向寸法と称され得る。軸方向及び径方向寸法のこの定義は製造用中間体212に関してここに記載されるものであるが、同様の定義が(例えばプリフォームと称され得る)製造用中間体212を形成する物体及び製造用中間体212から形成されるファイバに当てはまることは理解されるであろう。
【0105】
[000104] 製造用中間体212及び製造用中間体212から形成される光ファイバはある程度の可撓性を有し得るものであり、したがって、軸の方向は、概して、製造用中間体212又は光ファイバの長さに沿って一様にはならないことは理解されるであろう。光軸、軸方向及び径方向寸法、短手方向断面等の用語は、局所的な光軸、局所的な軸方向及び径方向寸法、局所的な短手方向断面などを意味するものと解される。また、構成要素が円筒形又は管状であると記載される場合、これらの用語は、構成要素(例えば製造用中間体又は光ファイバ)が撓むにつれて歪められたかもしれない形状を包含するものと解される。
【0106】
[000105] 製造用中間体212は、以下で詳述するファイバを生産するプロセスの際に得られる中間形態である。製造用中間体212は任意の材料、一般にはガラス材料から形成され得る。例えば、製造用中間体212は、高純度石英(SiO)(例えば、ドイツのHaraeus Holding GmbHによって販売されているF300材料)、例えば鉛ケイ酸塩ガラスのような軟質ガラス(例えば、ドイツのSchott AGによって販売されているSF6ガラス)、又は例えばカルコゲナイドガラスもしくは重金属フッ化物ガラス(ZBLANガラスとも称される)のような他の特殊ガラスのうちいずれかから成るか又はいずれかを備えていてもよい。製造用中間体212を提供するステップ102は以下のステップ又はプロセスのいずれか又は全てを備え得ることは理解されるであろう。
【0107】
[000106] 製造用中間体212は、ファイバのプリフォーム208から形成されてもよく、ファイバへと引き延ばされ得る。製造用中間体212はケーンとも称され得る。これは専門用語である。製造用中間体212の軸方向寸法に沿ったアパーチャ217のうち1つは、細長本体218の実質的に中央部に位置し得る。そのような構成の場合、このアパーチャ217は光ファイバのコアを提供するものと考えることができる。ファイバのコアは、放射パワーの主要部分をガイドするファイバの任意の部分として定義され得る。代替的及び/又は追加的には、アパーチャ217のうち1つ以上は、コアを包囲する細長本体の外側部分に位置していてもよく、例えばこれらのアパーチャ217が製造用中間体212の中心を備えないように位置していてもよく、又は例えば製造用中間体212の中心よりも製造用中間体212の外面に近接して位置していてもよい。そのような構成の場合、これらのアパーチャ217は、製造用中間体212のクラッディング部内の構造及び結果として得られる光ファイバを提供するものと考えることができる。
【0108】
[000107] 次に、製造用中間体212を形成する方法を、図9及び図10を参照して説明する。
【0109】
[000108] 図9は、1つ以上のアパーチャを備えるファイバを形成するためのプリフォーム208を形成する方法のステップを図示している。図9(a)にはプリフォームスタッキング200が図示されており、キャピラリ202がスタッキング基部204に設置される。キャピラリ202は、石英(SiO)キャピラリであってもよい。キャピラリ202は、実質的に円形の径方向断面と軸方向寸法の細長本体とを備える、実質的に円筒形の形状であってもよい。キャピラリ202は、円筒の軸に沿った長さよりも実質的に小さい直径を有していてもよい。代替的な実施形態においては、キャピラリ202は実質的に非円形の径方向断面、例えば楕円形の径方向断面、三角形の径方向断面、正方形の径方向断面、又は六角形の径方向断面を有していてもよい。キャピラリ202は中空であってもよい。すなわち、キャピラリは管、例えば石英管であってもよく、その管は中空の中央部を有する。キャピラリ202の長さは、キャピラリ202を生産するために用いられるハードウェアの収容能力によって限定され得る。キャピラリの長さは、結果として得られるファイバに必要な長さに基づいて選定/選択されてもよい。例えば、キャピラリ202の長さは、キャピラリ202の軸に沿って1cm以上から数メートル程度であってもよい。キャピラリ202の直径は1mm程度であってもよい。キャピラリ202は、手動でスタッキング基部204内に設置されてもよい。キャピラリ202の所望の構成及び分布を作り出すための手動でのプリフォームスタッキングは、クリーンルーム環境において実施され得る。しかしながら、プリフォームスタッキング200の際には、例えばキャピラリの損傷及び/又は不純物によるプリフォームの汚染という形で、汚染物が導入されるかもしれない。図9(b)は、スタッキング基部204にスタックされたキャピラリの構成を示す。スタッキング基部は複数のキャピラリ202を備えていてもよく、キャピラリは全てが実質的に同じ径方向断面を有していてもよいし、又は代替的には、キャピラリは一連の異なる形状及び/又はサイズを有する。スタッキング基部204から、キャピラリ202は、図9(c)に示されるようにジャケット206によって封止されてもよい。ジャケット206は石英から形成された中空円筒であってもよく、スタックされたキャピラリを包囲するとともにそのスタックされた構成の形状を支持する。ジャケットの内側のキャピラリとジャケットとがプリフォーム208を形成する。プリフォーム208は1cmから数十cm程度の直径を有していてもよい。プリフォームの長さは1cmから数メートル程度であってもよい。
【0110】
[000109] プリフォーム208は、ひとたび形成されると、プリフォーム208の材料を軟化させるように、しかし溶融はしないように、火炉において加熱され得る。具体的には、プリフォーム208は、後続の引き延ばしプロセスに適当になるようにプリフォーム208の材料を十分に粘性にするべく、加熱される。プリフォーム208が溶融する温度は概してプリフォームを形成する材料に応じて決まることは理解されるであろう。プリフォームの材料は、ガラス、例えば融解石英であってもよい。石英をプリフォームの材料として用いることの利点は、ファイバ製造プロセスの際にファイバ構造を良好に制御することを可能にする、材料の大きな光透過性窓及びその機械的特性である。火炉の温度は、融解石英の場合、例えば摂氏1850~2100度の範囲に設定され得る。火炉が設定される温度は、軟化されるプリフォーム208の材料の特性に基づいて決定される。図10は、ファイバの製造プロセスの第1の引き延ばしプロセス214の概略図を示す。プリフォーム208は火炉210を通して引き延ばされて製造用中間体212を形成する。製造用中間体の長さ及び直径はプリフォームの長さ及び直径に応じて決まり、プリフォームの長さ及び直径は生産されるべきファイバの要件に応じて決まるであろう。製造用中間体の長さは、製造ハードウェアの仕様によって限定され得る。例えば、火炉内における加熱要素の利用可能な直径が、収容可能なプリフォーム208又は製造用中間体212のサイズを限定するであろう。製造用中間体212は、1mmから10mm程度の直径、例えば1mm~2mmの範囲の直径を有し得る。製造用中間体212の長さは1m程度であってもよい。材料の軟化はジャケット206及び/又はキャピラリ202の材料の融解をもたらし得るので、結果として得られる製造用中間体212はプリフォーム208のキャピラリ202によって形成された1つ以上のアパーチャを備える単一の一体化した本体を形成するものと考えることができる。
【0111】
[000110] プリフォームの内部でのキャピラリのスタッキングは、制御された手法で実施され得る。キャピラリスタッキングは、手で実施されてもよいし、自動化されてもよいし、又は両者の組み合わせであってもよい。キャピラリ202の設置と、それによってもたらされる製造用中間体212におけるアパーチャの設置とは、様々な中空コア設計に対応する。図11(a),図11(b),及び図11(c)は、複数のアパーチャを備える製造用中間体212の径方向断面の非限定的な設計の例を図示している。製造用中間体212は、対応するアパーチャの分布を径方向断面に有する光ファイバへと引き延ばされ得る。ファイバ引き延ばしプロセスは、製造用中間体212をガラス、例えば融解石英の、ジャケットとして機能する管に挿入すること、及びそのジャケットと製造用中間体との組み合わせをファイバへと引き延ばすことを備え得る。代替的には、製造用中間体212は、直接的にファイバへと引き延ばされてもよい。ファイバは、ジャケット内に挿入され得る製造用中間体212を火炉内で材料を軟化させるべく加熱すること、及び軟化された材料からファイバを引き延ばすことによって形成され得る。火炉はファイバ引き延ばしタワーに位置していてもよい。製造用中間体212からファイバを伸長させると共に引き延ばすために、1つ以上のローラが用いられてもよい。製造用中間体212から引き延ばされた光ファイバは、1mm未満の外径を有し得る。ファイバの外径は100μm程度であってもよく、50μm~500μmの範囲内、例えば150μmであってもよい。結果として得られるファイバの長さは10mから1000m程度であってもよい。ファイバ引き延ばしプロセスのサイズ及び条件に応じて、他の長さも得られ得る。
【0112】
[000111] 中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)は、一般には、物理的なガイダンス機構に応じて2種類に分類される。すなわち、中空コアフォトニックバンドギャップファイバ(HC-PBF)、及び中空コア反共振反射ファイバ(HC-AF)である。本発明の好適な実施形態は、中空コア反共振反射ファイバ(HC-AF)の形成に関する。
【0113】
[000112] 図11(a),図11(b),及び図11(c)には製造用中間体212の3つの異なる設計例が(短手方向平面で)示されているが、本発明の特に好適な実施形態においては、製造用中間体212は概して、図11(b)に示される形をとる。そのような製造用中間体212の一般的な形を、図12を参照して次に説明する。同図は製造用中間体300の短手方向平面での概略断面図である。
【0114】
[000113] 製造用中間体300は、外管308と複数の内管304とを備える細長本体を備える。複数の内管304は外管308内に配置される。特に、複数の内管304は、細長本体の軸方向寸法に沿って細長本体を貫通して延伸するアパーチャ302の周囲に1つ以上のリング構造で配置されると共にそのアパーチャを少なくとも部分的に定義している。アパーチャ302の境界は製造用中間体300の内部表面を定義する。
【0115】
[000114] 製造用中間体300の本体は、1つの寸法が製造用中間体300の他の2つの寸法に比べて長い。この長い寸法は、軸方向と称され得ると共に製造用中間体300の軸を定義し得る。2つの他の寸法は平面を定義し、これは短手方向平面と称され得る。図12は製造用中間体300のこの短手方向平面での(すなわち軸に垂直な)断面を示し、この平面はx-y平面と標識されている。製造用中間体300の短手方向断面は、ファイバ軸に沿って実質的に一定であり得る。
【0116】
[000115] 製造用中間体300はある程度の可撓性を有し得るものであり、したがって、軸の方向は、概して、製造用中間体300の長さに沿って一様にはならないことは理解されるであろう。光軸、短手方向断面等の用語は、局所的な光軸、局所的な短手方向断面などを意味するものと解される。また、構成要素が円筒形又は管状であると記載される場合、これらの用語は、製造用中間体300が撓むにつれて歪められたかもしれない形状を包含するものと解される。
【0117】
[000116] 製造用中間体300は任意の長さを有し得るものであり、製造用中間体300の長さは用途に応じて決まり得ることは理解されるであろう。
【0118】
[000117] 製造用中間体300のアパーチャ302は中空コア302と称されてもよい(これは、ひとたび製造用中間体300が引き延ばされて光ファイバを形成すると、ファイバの中空コアを提供する)。外管308は、クラッディング部を包囲及び支持する支持部308と称されてもよい。中空コア302を包囲する内管304はクラッディング部を提供するものと考えられてもよい。クラッディング部は複数の内管304を備え、これらは、ひとたび製造用中間体300が引き延ばされて光ファイバを形成すると、その光ファイバの中空コア302を通じて放射をガイドする反共振素子を提供する。特に、複数の反共振素子は、製造用中間体300を伝播する放射を主に中空コア302の内部に閉じ込めるように及び製造用中間体300に沿って放射をガイドするように配置される。製造用中間体300は、中空コア302を有する本体(クラッディング部と支持部308とを備える)を備えるものと考えられてもよい。製造用中間体300の中空コア302は、製造用中間体300の軸が製造用中間体300の中空コア302の軸も定義し得るように、実質的に製造用中間体300の中央区域に配設されてもよい。
【0119】
[000118] クラッディング部は複数の管304を備えており、これらは、製造用中間体300から形成された光ファイバにおいては、その光ファイバを伝播する放射をガイドする反共振素子を提供する。特に、本実施形態においては、クラッディング部は、管状キャピラリ304と称され得る6つの内管304からなる単一のリングを備えている。
【0120】
[000119] キャピラリ304は断面が円形であってもよく、又は別の形状を有していてもよい。各キャピラリ304は、製造用中間体300の中空コア302を少なくとも部分的に定義すると共に中空コア302をキャピラリ空洞306から分離する、概ね円筒状の壁部305を備えている。使用時(ひとたび製造用中間体300が光ファイバへと形成されると)、壁部305は、中空コア302を伝播する(と共に斜入射角度で壁部305に入射し得る)放射の反射防止ファブリペロー共振器(anti-reflecting Fabry-Perot resonator)として作用し得る。壁部305の厚さは、中空コア302に戻る反射が概して強化される一方でキャピラリ空洞306内への伝達は概して抑制されることを保証するのに適したものであり得る。いくつかの実施形態においては、キャピラリ壁部305は、ひとたび引き延ばされて光ファイバを形成したときに、0.01~10.0μmの厚さを有し得る。
【0121】
[000120] 本明細書において用いられる場合、クラッディング部という用語は、製造用中間体300の一部であって使用時に(ひとたび製造用中間体が光ファイバへと引き延ばされると)光ファイバを伝播する放射をガイドするための部分(すなわち中空コア302内に放射を閉じ込めるキャピラリ304)を意味することを意図したものであることは理解されるであろう。放射は、ファイバ軸に沿って伝播する横モードの形で閉じ込められ得る。
【0122】
[000121] 支持部308は概して管状であり、クラッディング部の6つのキャピラリ304を支持する。6つのキャピラリ304は、支持部108の内面周りに均等に分布している。6つのキャピラリ304は、概ね六角形の編成で配設されているともいえる。
【0123】
[000122] キャピラリ304は、各キャピラリが他のキャピラリ304のいずれとも接触しないように配置されている。キャピラリ304の各々は、支持部308とは接触し、リング構造内の隣接するキャピラリ304とは離隔している。そのような配置は、(例えばキャピラリが互いに接触している配置と比べて)製造用中間体300の伝達帯域幅を増大させ得るので、有益であろう。また、以下で更に述べるように、そのような配置は、製造用中間体300から形成される光ファイバの光学特性を依然として維持しつつ製造用中間体300がより深くエッチングされることを可能にする。代替的に、いくつかの実施形態においては、キャピラリ304の各々は、リング構造内の隣接するキャピラリ304と接触していてもよい。
【0124】
[000123] クラッディング部の6つのキャピラリ304は、リング構造で中空コア302の周囲に配設されている。キャピラリ304からなるリング構造の内面は製造用中間体300の中空コア302を少なくとも部分的に定義する。中空コア302の直径(対向するキャピラリ間の最小寸法と定義されてもよく、矢印314によって示される)は、中空コア製造用中間体300から形成される光ファイバのモードフィールド径、衝撃損失、分散性、モーダル複数性(modal plurality property)、及び非線形性に影響を及ぼし得る。中空コア302の直径は、ひとたび光ファイバへと引き延ばされると、10から1000μmであり得る。
【0125】
[000124] 本実施形態において、クラッディング部は(使用時に反共振素子として作用する)キャピラリ304の単一のリング配置を備える。したがって、中空コア302の中心から製造用中間体300の外部への任意の径方向の1本の線は1つのキャピラリ304しか通過しない。
【0126】
[000125] 他の実施形態は反共振素子の異なる配置を備え得ることは理解されるであろう。これは、反共振素子の複数のリングを有する配置及び入れ子式の反共振素子を有する配置を含み得る。また、図12に示される実施形態は6つのキャピラリからなるリングを備えているが、他の実施形態においては、任意の数の反共振素子(例えば4,5,6,7,8,9,10,11又は12個のキャピラリ)を備える1つ以上のリングがクラッディング部に設けられてもよい。任意選択的には、支持部308は、クラッディング部を外部応力から少なくとも部分的に隔離するための変形可能部を備えていてもよい。反共振素子はいずれも同じ直径を有していてもよく、又は代替的には、反共振素子は異なる直径を有していてもよい。製造用中間体300及び製造用中間体から形成される光ファイバのジオメトリは、国際公開第2017/032454A1号明細書に開示されるジオメトリのうちいずれかの形態であってもよい。同明細書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。特に、製造用中間体300及び製造用中間体から形成される光ファイバのジオメトリは、国際公開第2017/032454A1号明細書の図1Aから図1Eに示される配置及び付随する説明に記載されたそれらの代替案のうちいずれかのものであってもよい。図12に示される上述の例においては、キャピラリ304は概して(短手方向平面での)断面が円形である。代替的な実施形態においては、キャピラリ304は(短手方向平面で)実質的に非円形の断面、例えば楕円形の断面、三角形の断面、正方形の断面、又は六角形の断面を有し得ることは理解されるであろう。
【0127】
[000126] エッチング面の滑らかさはエッチング深さに応じて決まり、ひいてはエッチング方法の詳細、例えばエッチング物質のタイプ、温度、及び濃度、並びにエッチングプロセスの持続時間に依存するであろう。製造用中間体212に対してエッチングステップ104を実施することの利点は、製造用中間体212の径方向寸法が製造用中間体212から引き延ばされるファイバの径方向寸法よりも大きいことである。したがって、製造用中間体212の内部表面216は、そのような製造用中間体212から形成される光ファイバがエッチングされ得るよりも深くエッチングすることが可能であり、その結果、より滑らかな内部表面216(及びひいては結果として得られるファイバのより滑らかな内部表面)が得られる。
【0128】
[000127] まずエッチング物質を用いて製造用中間体212の内部表面216をエッチングし、その後に続いて製造用中間体212を引き延ばして(すなわちステップ106)光ファイバを形成することの別の利点は、内部表面216上に残っている化学的及び物理的な汚染がプロセスの引き延ばしステップの際に広げられるということである。したがって、引き延ばしステップの前、汚染物がファイバ全体に広げられ得る前に汚染の量を低減させることは、光ファイバのアパーチャの内部表面216の品質を更に高める。
【0129】
[000128] 製造用中間体212に対してエッチングステップを実施することの別の利点は、製造用中間体212の軸方向寸法220が製造用中間体から引き延ばされる光ファイバの軸方向寸法よりも小さいことである。その結果、エッチング物質は、ファイバ自体の内部表面とよりも製造用中間体212の内部表面216との方が、より容易に及び/又はより均等に接触させることができる。エッチング面積がより小規模であることから、これによって、プロセスに対する制御を向上させた、より容易なエッチングプロセスが提供される。
【0130】
[000129] 製造用中間体212に対してエッチングステップを実施することの別の利点は、製造用中間体212の軸方向寸法220が製造用中間体から引き延ばされる光ファイバの軸方向寸法よりも小さいことである。その結果、エッチングされた1つの製造用中間体を用いて、特性の改良された、長さのより長いファイバを得ることができるので、ファイバ自体をエッチングする場合と比べて歩留まりが向上する。
【0131】
[000130] 製造用中間体212に対してエッチングステップを実施することの別の利点は、反共振素子のより小さな壁(例えばより小さな壁部305)が実現できるということである。そしてこれは、結果として得られる光ファイバのガイダンスを向上させる。
【0132】
[000131] また、上述の(まず製造用中間体の内部表面をエッチングし、次に製造用中間体を引き延ばすことによる)光ファイバの製造方法は、各内管が他の内管のいずれとも接触しないように配置された(使用時に反共振素子を形成する)複数の内管を備える配置にとって特に有益である。そのようなジオメトリの一例が、図12に示される製造用中間体300である。これは、反共振素子を形成する壁(例えば壁部305)が隣接する反共振素子の壁とは接触せず、エッチング液によって均一にエッチング可能であるためである。対照的に、隣接する反共振素子が接触しているフォトニック結晶ファイバジオメトリは、反共振素子の壁が互いに接触する、厚さが増した区域(ノードと称され得る)を有するであろうし、また、そのようなノードは概して、ノード間を接続する壁部と異なってエッチングするであろう。極端な一例として、カゴメファイバは、ノード間に延伸する相互接続された壁の網を備えている。そのような構成がエッチングされると、たとえ壁部が均一にエッチングされても、ノードの存在によって、エッチングされているアパーチャの内部形状は歪むであろう。この歪みは、製造用中間体から形成される光ファイバの中空コア内での放射のガイダンスを劣化させる。また、この歪みの程度は、エッチングの深さと共に増大するであろう。対照的に、各反共振素子が他の反共振素子のいずれとも接触しないように反共振素子が配置される構成は、そのような歪みを経験しないであろう。そのため、そのような実施形態の場合、結果として得られる光ファイバの光学特性に悪影響を及ぼすことなく(特に、光ファイバを通じた放射の光閉じ込め又はガイダンスに悪影響を及ぼすことなく)より深いエッチング深さが実現できる。既に述べたように、エッチングの深さを増大させると、結果として得られる光ファイバの光学特性も向上する。したがって、(i)各反共振素子が他の反共振素子のいずれとも接触しないように反共振素子が配置された構成があることと、(ii)まずエッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングし、その後続いて製造用中間体を引き延ばすこととの間には、相乗作用があるものと考えることができる。そのような構成は特に有利である。
【0133】
[0132] エッチング物質を用いたエッチングは製造用中間体212の内部表面216から化学的及び物理的な汚染物を除去し得る。汚染物は、材料内に存在し得る、及び/又は製造用中間体212の製造プロセス中に導入され得る。物理的な汚染物の例は、スクラッチ、欠陥、及び微小亀裂を含む。化学的な汚染物の例は、材料内に存在する不純物を含む。不純物などの化学的な汚染物を表面から除去することにより、化学的な汚染物によって引き起こされた表面又はその付近の更なる物理的な汚染物が現れるかもしれない。更なるエッチングがこれらの更なる物理的な汚染物を除去するであろう。
【0134】
[000133] エッチングはディープエッチングプロセスを備えていてもよい。本明細書において用いられる場合、ディープエッチングプロセスは、それを超えると材料の更なる除去が製造用中間体212からもたらされるファイバの特徴に目立った改善を生じないであろう深さのエッチングとして定義され得る。化学的な汚染の場合には、ディープとは、それを超えると深さの関数としての汚染物の濃度が水平域に達する/減少を止めるエッチング深さに対応し得る。スクラッチや微小亀裂のような物理的な汚染物の場合には、ディープとは、それを超えると表面ラフネスが水平域に達する及び/又はスクラッチの更なる拡張が結果として得られるファイバの光学特性、例えばその光損傷閾値の更なる向上をもたらさないエッチング深さに対応し得る。結果として得られるファイバの特徴に改善が見られ得るエッチングの最適な深さは、製造用中間体212毎に異なり得る。最適な深さは、例えば製造用中間体212を形成する材料(例えば融解石英)のタイプ及び/又は純度を含むいくつかの要因に依存し得る。なぜなら、これは例えば、深さの関数としての材料内の汚染物の分布に影響を及ぼし得るからである。最適なエッチング深さは、更に、当初の材料(例えばプリフォーム208,キャピラリ202など)の表面ラフネス及び/又は製造用中間体の製造方法に依存し得る。光エッチング深さ値は、例えば試行錯誤を通じて、経験的に決定されてもよい。エッチング深さは、製造用中間体212の寸法及びエッチングされた部分の機械的安定性によって限定され得る。例えば、エッチングプロセスが深くエッチングし過ぎると、エッチングされた材料はファイバへと引き延ばされるための機械的安定性を欠くであろう。
【0135】
[000134] エッチングされた製造用中間体212から生産されたファイバ及びエッチングされていない製造用中間体212から生産されたファイバは、いくつかの際立った要因、例えば散乱特性を有し得る。エッチングされた製造用中間体212から形成されたファイバとエッチングされていない製造用中間体212から形成されたファイバとを区別する方法の一例は、ファイバに沿って伝播する電磁放射の側方散乱の量を観察することである。エッチングされていない製造用中間体212から形成されたファイバでは、内部表面に沿って存在する表面ラフネス及びスクラッチが散乱点として現れ、電磁放射がファイバに沿って伝播する際にその電磁放射を散乱させ得る。そのような散乱点は、適当なディテクタを用いて観察され得る。電磁放射が可視光を備えていれば、散乱点は、場合によって、人間の裸眼にさえ視認できるであろう。エッチングされていない製造用中間体212から形成されたファイバと比べ、エッチングされた製造用中間体212から形成されたファイバは、上述した放射散乱点をより少なく有し得る。
【0136】
[000135] 製造用中間体212を、例えば製造用中間体から引き延ばされるファイバの代わりにエッチングすることの利点は、製造用中間体212の径方向寸法はファイバの径方向寸法よりも大きく、したがってより多くの材料がエッチングに利用可能であるから、より深いエッチングを実施可能であるということである。ファイバを形成するために製造用中間体212をその軸方向寸法に沿って引き延ばすと、製造用中間体及び/又はファイバの長さと言うこともできる軸方向寸法は増大され、その軸方向寸法に垂直な製造用中間体212の寸法は縮小される。引き延ばしプロセスの結果が通常又は単純スケーリングであるときには、軸方向寸法に垂直な寸法の全てが同じ因数で縮小される。軸方向寸法に垂直な寸法がf分の1に縮小される場合、軸方向寸法は(材料が保存されるので)f倍になるであろう。したがって、製造用中間体212の細長本体の壁の厚さは光ファイバの壁の厚さよりもf倍大きい。そして、有利なことには、まず製造用中間体212をエッチングし、次にそれを引き延ばして光ファイバを形成することは、エッチングプロセスが、(まず引き延ばしそれからエッチングすることを選択した場合に)同等の品質の光ファイバを得るために光ファイバがエッチングされなければならないであろうよりもf倍大きい深さまでエッチングすることを可能にする。したがって、製造用中間体212をエッチングする場合、可能なエッチング深さは、引き延ばされたファイバをエッチングする場合と比べて、おおよそf倍大きいであろう。いくつかの実施形態においては、製造用中間体212を引き延ばして光ファイバを形成するプロセスにおいて、軸方向寸法に垂直な寸法は、少なくとも10分の1、例えば20分の1程度又は50分の1程度に縮小される。
【0137】
[000136] 製造用中間体212に対して実施されるエッチングプロセスは、より深くエッチングすることができ、したがって、例えば汚染物の近傍で発生する汚染物の影響をエッチング除去することによって、汚染物をより徹底的に除去することができる。ディープエッチングプロセスによって除去され得る欠陥の例は、表面欠陥の周囲に存在する非架橋酸素正孔中心(NBOHC)及び/又は酸素欠損中心(ODC)を含む。
【0138】
[000137] エッチングは、ウェット化学エッチングプロセスを備え得る。ウェット化学エッチングを用いることの利点は、エッチング物質を形成する溶液の濃度の制御を通じてエッチングプロセスを制御する能力である。別の利点は、ウェットエッチングプロセスの等方性エッチング特性であろう。もう1つの利点は、気体のエッチング物質に比べ液体のエッチング物質は制御が比較的容易であるということであろう。ウェット化学エッチングプロセスを用いることの他の利点は、以下でより詳細に説明されるように、簡単で単純な機器、例えばエッチング槽の使用、迅速なエッチングプロセスのための高いエッチング速度、エッチングプロセスの高選択性の可能性を含む。製造用中間体212に対してウェットエッチングを用いることの利点は、製造用中間体212の寸法は十分に小型であるからエッチングのための物質を備える容器(すなわちエッチング槽)内に設置可能であるということである。製造用中間体の内部表面216のエッチングは、液体浸漬、キャピラリ充填、又は加圧充填のうち1つ以上を備え得る。アパーチャ217のうち1つ以上にエッチング物質を挿入するためのこれらの方法は、ファイバよりも製造用中間体212の軸方向寸法が比較的短く径方向寸法が大きいことから、ファイバよりも製造用中間体212に適用する方が容易である。エッチング物質の例は、フッ化水素酸HF、硝酸HNOとフッ化水素酸HFとの混合物、又は水酸化カリウムKOHを備え得る。これらの物質は、製造用中間体212の材料の一例である二酸化珪素SiOをエッチングすることができ、したがって製造用中間体212の内部表面216をエッチングするのに有用である。製造用中間体212のエッチングは室温で実施され得る。温度を上げることを必要とせずにエッチングプロセスを実施する能力は、方法を安価且つ実施容易なものにするので、有益である。しかしながら、場合によっては、例えば特定の最終結果を得るために、エッチングプロセスを高温で実施するのが望ましいであろう。
【0139】
[000138] エッチング物質はガスを備えていてもよい。例えば、エッチング物質はフッ化水素(HF)ガスを備えていてもよい。HFガスを用いてエッチングを実施することはウェットエッチングの代替案を提供し、したがって、この方法は、ウェットエッチングが望ましくない場合に実施され得る。例えば、場合によっては、ウェットエッチングプロセスはそれ自体が製造用中間体212の望ましくない汚染物をもたらし得る。追加的又は代替的には、製造用中間体212の内部表面216の材料をエッチングすることのできる他のガスが用いられてもよい。
【0140】
[000139] 図8に示される製造用中間体212の例は、細長本体218の軸方向寸法に沿って細長本体218を貫通して延伸する複数のアパーチャ217を備えている。この場合、複数のアパーチャ217の各々の境界は製造用中間体212の内部表面216の一部を定義する。光ファイバ及び引き延ばしてそのファイバにされる製造用中間体212は、複数のアパーチャ217を備え得る。代替的には、これらは1つのアパーチャ217しか備えていなくてもよい。ファイバの複数のアパーチャは、光をガイドするための複合構造を協働して形成し得る。具体的には、結果として得られるファイバは中空コア反共振反射ファイバ、例えば単一リング反共振中空コアファイバ、又は入れ子式管反共振ファイバである。アパーチャ217の各々は、例えば、空気、分子ガス、原子ガス、又は分子ガスと原子ガスとの両方の混合物、又は真空などのガスを充填され得る。
【0141】
[000140] エッチングプロセスは、複数のアパーチャ217のうち少なくとも1つの内部表面216をエッチングすることを備える。エッチングは、複数のアパーチャ217のうちの全てではなくいくつかの内部表面216の選択的エッチングを備え得る。数ある方法の中で、製造用中間体212の選択的エッチングは、エッチングを意図されていないアパーチャをエッチング剤への耐性を有する物質によって塞ぐことにより実現されてもよい。例えばこれは、エッチングを意図されていない1つ以上のアパーチャに糊又はポリマを注入することによって実現可能である。例えば空気中での又は特定の放射への曝露を通じた糊の硬化後、又は強力な放射下のポリマにおける二光子吸収を用いることによるポリマの硬化後、エッチング剤は、エッチングを意図された1つ以上のアパーチャには自由に進入することができ、その一方で硬化した糊又はポリマによって塞がれた1つ以上のアパーチャには進入しない。別の方法においては、塞ぐための糊又はポリマは毛細管作用を介して全てのアパーチャに進入し得る。この場合、アパーチャを充填する速度は、異なるサイズのアパーチャ毎に異なり得る。硬化の後、異なるサイズのアパーチャ内の柱(columns)の長さは異なる。製造用中間体を適切な位置で割断/切断することによって、より遅い速度で充填されるアパーチャは空いた状態で維持することができる一方で、他のアパーチャは塞がれたままである。一実施形態においては、製造用中間体212の中空コアを定義する表面のみがエッチングされる。例えば、図12に示される製造用中間体300の場合、中空コア302を定義する表面(すなわち壁部305の外面及び支持部308の内面)はエッチングされ得るが、キャピラリ空洞306の内面(すなわち壁部305の内面)はエッチングされない。これは、上述の方法のうちの1つを用いてキャピラリ304を塞ぐことによって実現され得る。こうした製造用中間体212,300の中空コアの選択的エッチングは有益である。なぜなら、キャピラリ304によって定義されるキャピラリ空洞306は比較的小さいであろうから、キャピラリ304の壁部305が均一な厚さを有することを保証するのに十分な精度でエッチングプロセスを制御することは困難であり得るためである。そして、壁部305の厚さが均一であると、製造用中間体300から引き延ばされた光ファイバの中空空洞内におけるガイドされた放射の閉じ込めの悪化がもたらされ得る。
【0142】
[000141] エッチングは、製造用中間体212の複数のアパーチャのうち全ての内部表面216をエッチングすることを備え得る。エッチングは更に、製造用中間体212の外部表面のエッチングを備え得る。エッチングは、製造用中間体212の内部表面216及び外部表面を含む全表面のエッチングを備え得る。エッチング対象の1つ以上のアパーチャ217の選定は、例えば、毛細管作用を用いてエッチング物質を1つ以上の選定されたアパーチャ内へと引き込むことによって実現され得る。エッチング物質は、気体及び液体のうち1つ以上を備える流体エッチング物質であり得る。エッチング物質は毛細管作用又はエッチング剤の注入を用いてアパーチャを通って輸送されてもよく、エッチング物質は内部表面216に接触すると表面216をエッチングする。
【0143】
[000142] エッチング物質を用いて製造用中間体212の内部表面216をエッチングすることは、製造用中間体212の内部表面216の1つ以上の部分を優先的にエッチングすることを備えていてもよく、その1つ以上の部分は使用時に光ファイバを伝播する光と主に接触又は相互作用する光ファイバの1つ以上の部分に対応する。光ファイバの1つ以上のアパーチャの設計及び径方向分布は、伝播する放射と主に接触又は相互作用するファイバの領域を決定し得る。伝播する放射の特性、例えば放射の1つ又は複数の波長が、ファイバ内部の放射の分布を更に決定し得る。ファイバを伝播する放射が(短手方向で)1つ以上のアパーチャ217の境界を越えて広がり得ること、及びアパーチャ217を包囲するファイバの材料内に入り込み得ることは理解されるであろう。
【0144】
[000143] 一実装例においては、上述した方法によって製造された光ファイバは、図13に図示されるスーパーコンティニウム放射源600の一部を形成する。パルス放射源610はパルス放射ビーム611を生成するように動作可能である。パルス放射ビーム611は、例えば1kHz~80MHzの範囲内の繰り返し数を有し得る。パルス放射源610は、レーザ、例えば、受動又は能動モード同期であり得るモード同期レーザを備えていてもよい。放射源は1つ以上の増幅ユニットを備えていてもよい。パルス長は、10フェムト秒から100ピコ秒の範囲内であってもよい。パルス放射611は波長の帯域を備えていてもよい。パルス放射ビーム611は、利得媒質612及びポンプ放射源614を用いて増幅されてもよい。増幅されたパルス放射であり得るパルス放射は、光ファイバ616に連結されてもよい。光ファイバ616は、例えば中空コアファイバにガスを充填することによって、非線形光学媒質として作用してもよく、受光したパルス放射ビームのスペクトルを拡大してファイバの出力でスーパーコンティニウム放射ビーム618を生成するように構成されていてもよい。スーパーコンティニウム放射の生成は、様々な非線形効果の結果としてであってもよく、光ファイバによって実現される強い閉じ込めは非線形効果の発生に寄与する。
【0145】
[000144] 更なる実施形態を、以下の番号を付した条項に述べる。
1.光ファイバを形成する方法であって、
細長本体を有し外管と複数の内管とを備える製造用中間体であって、複数の内管は外管の中に配置され、複数の内管は細長本体の軸方向寸法に沿って細長本体を貫通して延伸するアパーチャの周囲に1つ以上のリング構造で配置されると共にアパーチャを少なくとも部分的に定義し、アパーチャの境界は製造用中間体の内部表面を定義する、製造用中間体を提供することと、
エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることと、
内管から形成された複数の反共振素子を備える中空コア反共振反射ファイバである光ファイバを形成するように軸方向寸法に沿って製造用中間体を引き延ばすことと、
を備える、方法。
2.複数の内管は、内管の各々が他の内管のいずれとも接触しないように中空コアの周囲に単一リング構造で配置される、条項1に記載の方法。
3.軸方向寸法に沿って製造用中間体を引き延ばすことによって、製造用中間体の軸方向寸法に垂直な寸法はある率で縮小され、率は少なくとも10分の1である、条項1又は条項2に記載の方法。
4.製造用中間体の内部表面のエッチングはウェット化学エッチングプロセスを備える、条項1から3のいずれかに記載の方法。
5.製造用中間体の内部表面のエッチングは、液体浸漬、キャピラリ充填、加圧充填、又はスプレーエッチングのうち1つを備える、条項4に記載の方法。
6.エッチング物質は、HF、HFとHNOとの混合物、又はKOHのうち1つを備える、条項1から5のいずれかに記載の方法。
7.方法は室温で実施される、条項1から6のいずれかに記載の方法。
8.製造用中間体の内部表面のエッチングはドライ化学エッチングを備える、条項1から3又は5から7のいずれかに記載の方法。
9.エッチング物質及び/又はエッチングプロセスの何らかの生成物をアパーチャ内から少なくとも部分的に除去するように製造用中間体を洗浄することを更に備える、条項1から8のいずれかに記載の方法。
10.エッチング物質を用いて製造用中間体の内管のうち1つ以上の内部表面をエッチングすることを更に備える、条項1から9のいずれかに記載の方法。
11. 内管の内部表面がエッチング物質によってエッチングされないように内管のうち1つ以上の端部を塞ぐことを更に備える、条項1から10のいずれかに記載の方法。
12.エッチング物質を用いて製造用中間体の内部表面をエッチングすることは製造用中間体の内部表面の1つ以上の部分を優先的にエッチングすることを備え、1つ以上の部分は使用時に光ファイバを伝播する光と主に接触又は相互作用する光ファイバの1つ以上の部分に対応する、条項1から11のいずれかに記載の方法。
13. 製造用中間体の外部表面をエッチングすることを更に備える、条項1から12のいずれかに記載の方法。
14.条項1から13の方法によって形成される光ファイバ。
15.光ファイバを形成するための製造用中間体であって、製造用中間体が光ファイバを形成するように軸方向寸法に沿って引き延ばされる前に、条項1から13のいずれかの方法によって中間体として形成される、製造用中間体。
16.スーパーコンティニウム放射源であって、
放射ビームを生成するように動作可能な放射源と、
条項1から13の方法によって形成される光ファイバであって、放射ビームを受光するように、及びスーパーコンティニウム放射ビームを生成するべくそのパルス放射ビームのスペクトルを拡大するように構成されている光ファイバと、
を備える、スーパーコンティニウム放射源。
17.条項1から13の方法によって形成される光ファイバを備えるリソグラフィ装置。
18.条項1から13の方法によって形成される光ファイバを備えるメトロロジ装置。
【0146】
[000145] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。考えられる他の用途は、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用のガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0147】
[000146] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)もしくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0148】
[000147] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0149】
[000148] 「メトロロジ装置/ツール/システム」又は「検査装置/ツール/システム」について具体的な言及がなされたかもしれないが、これらの用語は同じ又は類似のタイプのツール、装置又はシステムを参照し得る。例えば、本発明の一実施形態を備える検査又はメトロロジ装置は、基板上又はウェーハ上の構造の特徴を判定するために用いられてもよい。例えば、本発明の一実施形態を備える検査装置又はメトロロジ装置は、基板の欠陥又は基板上もしくはウェーハ上の構造の欠陥を検出するために用いられてもよい。そのような一実施形態においては、基板上の構造の重要な特徴は、構造における欠陥、構造の特定の部品の欠如、又は基板上もしくはウェーハ上の不必要な構造の存在に関係し得る。
【0150】
[000149] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9(a)】
図9(b)】
図9(c)】
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図12
図13