(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-14
(45)【発行日】2023-08-22
(54)【発明の名称】単結晶シリコンで構成された半導体ウェハ
(51)【国際特許分類】
C30B 29/06 20060101AFI20230815BHJP
H01L 21/20 20060101ALI20230815BHJP
H01L 21/322 20060101ALN20230815BHJP
【FI】
C30B29/06 502Z
H01L21/20
H01L21/322 Y
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022085990
(22)【出願日】2022-05-26
(62)【分割の表示】P 2020523018の分割
【原出願日】2018-10-09
【審査請求日】2022-06-22
(31)【優先権主張番号】102017219255.0
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
【住所又は居所原語表記】Einsteinstrasse 172,81677 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボーイ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ゲームリヒ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,ティモ
(72)【発明者】
【氏名】ザットラー,アンドレアス
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開平8-45802(JP,A)
【文献】特開平11-26469(JP,A)
【文献】特開2004-63685(JP,A)
【文献】特開2006-261632(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B
H01L 21/00
C23C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンからなる半導体ウェハの製造方法であって、
単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けるステップと、
前記基板ウェハを両面研磨するステップと、
化学機械研磨により前記基板ウェハの表面を研磨するステップと、
前記基板ウェハの表面上に単結晶シリコンからなる少なくとも1つのエピタキシャル層を堆積するステップと、
RTA反応器に被覆された前記基板ウェハを装填するステップと、
1275℃以上1295℃以下の温度範囲内の温度で、15秒以上30秒以下の期間にわたって、アルゴンと、0.5体積%以上2体積%以下の割合の酸素とで構成される雰囲気内で、前記被覆された基板ウェハの第1のRTA処理を行うステップと、
前記第1のRTA処理後に800℃以下の温度に前記被覆された基板ウェハを冷却するステップとを備え、
前記半導体ウェハへのガスの供給により100体積%のアルゴンにリセットされ、
1280℃以上1300℃以下の温度範囲内の温度で、20秒以上35秒以下の期間にわたって、アルゴンで構成される雰囲気内で、前記被覆された基板ウェハの第2のRTA処理を行うステップと、
前記被覆された基板ウェハの表面から酸化物層を除去するステップと、
前記被覆された基板ウェハの表面を化学機械研磨によって研磨するステップとをさらに備える方法。
【請求項2】
前記酸化物層は、前記被覆された基板ウェハをHF水溶液で処理することによって除去される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のRTA処理の前に前記RTA反応器に100体積%の酸素を通過させる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面と裏面とを有する単結晶シリコンからなる半導体ウェハに関し、この半導体ウェハは、表面から裏面の方向に特定の深さまで延在する無欠陥領域と、無欠陥領域に隣接し、BMD核を含む領域とを備える。
【背景技術】
【0002】
無欠陥領域は、表面から裏面の方向に特定の深さにわたって延在し、BMD(バルク微細欠陥)として知られている酸素析出物が形成されない半導体ウェハの領域である。無欠陥領域は、一般に、電子部品を収容するための場所として意図されている。
【0003】
半導体ウェハの内部(バルク)の中にさらに延在し、かつ、BMD核を含む領域が、無欠陥領域に隣接している。BMD核は、熱処理によってBMDに成長する。BMDは、特に金属性不純物を結合することができるいわゆる内部ゲッターとしての役割を果たす。BMD核のBMDへの成長は、無欠陥領域に電子部品を構築するのに主に使用される熱処理の最中にも可能である。
【0004】
単結晶内の空孔の存在は、比較的高密度のBMDが要求される場合に有利であることが知られている。US2002/0170631 A1には、深い無欠陥領域を有する、単結晶シリコンからなる半導体ウェハを製造するプロセスが記載されている。このプロセスは、半導体ウェハの短期間高速加熱および冷却を含む半導体ウェハの熱処理(RTA(高速熱アニール)処理)を備える。RTA処理は、100ppma以上10,000ppma以下の濃度の酸素を含む雰囲気内で行われる。さらに、上記のプロセスは、半導体ウェハの表面と裏面との間の中間部において、または中間部付近で空孔のピーク密度が達成される空孔の濃度プロファイルを形成するように考えられている。空孔、BMD核およびBMDの濃度プロファイルは相互に関連があるので、BMDのピーク密度も同様に中間部に、または中間部付近に見られる。
【0005】
三次元構造を有する現代の集積回路の製造には、半導体ウェハの中に比較的深く延在する無欠陥領域と、BMDに成長し得るBMD核を備える隣接領域とを設けることが必要であり、BMDと無欠陥領域との間の距離は、できるだけ小さくするべきである。1つの公知の手順は、シリコン貫通電極(TSV)の作製と、半導体ウェハの中間部をはるかに超えるまでの裏面からの半導体ウェハの研削とを備える(M.本良、IEEEの会報、第97巻、No.1、2009年1月)。BMDが無欠陥領域に近接していることにより、特に電子部品の構造の構築中でさえ、研削された半導体ウェハ内にも十分な密度のゲッターセンタがあることが確実になると言われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、上記の要件をよりよく満たす単結晶シリコンからなる半導体ウェハを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、研磨された表面と裏面とを備える、単結晶シリコンからなる半導体ウェハであって、
研磨された表面から裏面に向かって30μm以上の深さまで延在する無欠陥領域と、
無欠陥領域に隣接し、BMDに成長し得るBMD核を備える領域とを備え、表面から120μmの距離におけるBMDの密度は、2×108cm-3以上である、半導体ウェハ
によって達成される。
【0008】
単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、被覆されていない半導体ウェハ、または少なくとも1つのエピタキシャル層で被覆された半導体ウェハである。単結晶シリコンからなる半導体ウェハがエピタキシャル層で被覆される場合、エピタキシャル層の上面は、半導体ウェハの表面を形成する。少なくとも1つのエピタキシャル層は、好ましくは1μm以上5μm以下の厚みを有する。
【0009】
本発明の第1の好ましい実施形態では、単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、単結晶シリコンからなる被覆されていない基板ウェハであり、その無欠陥領域は、研磨された表面から45μm以上の深さまで延在し、半導体ウェハは、無欠陥領域に隣接する領域に、BMDに成長するBMD核を備え、表面から120μmの距離におけるBMDの密度は、3×109cm-3以上である。
【0010】
本発明の第2の好ましい実施形態では、単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、単結晶シリコンからなる少なくとも1つのエピタキシャル層で被覆された単結晶の基板ウェハであり、その無欠陥領域は、被覆された基板ウェハの研磨された表面から45μm以上の深さまで延在し、半導体ウェハは、無欠陥領域に隣接する領域に、BMDに成長するBMD核を備え、表面から120μmの距離におけるBMDの密度は、3×109cm-3以上である。
【0011】
少なくとも1つのエピタキシャル層は、好ましくは1μm以上5μm以下の厚みを有する。本発明の第2の好ましい実施形態の半導体ウェハは、好ましくはn/n-ドーピングまたはp/p-ドーピングを有するエピタキシャル被覆された基板ウェハである。n型のドーパントは、好ましくはリンであり、p型のドーパントは、好ましくはホウ素である。
【0012】
本発明の第3の好ましい実施形態では、単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、単結晶シリコンからなる被覆されていない基板ウェハであり、その無欠陥領域は、研磨された表面から30μm以上の深さまで延在し、半導体ウェハは、無欠陥領域に隣接する領域に、BMDに成長するBMD核を備え、表面から120μmの距離におけるBMDの密度は、2×108cm-3以上である。本発明の第3の実施形態の半導体ウェハの製造に必要なプロセスステップの数は、比較的少ない。
【0013】
本発明の単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、無欠陥領域より下方の領域に、BMDに成長し得るBMD核を備える。これは、生じたBMDの密度がピーク密度から中心面の方向に減少していく場合に好ましい。単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、好ましくはBMDのピーク密度が生じ得る領域を保持しながら、裏面から残存厚まで研削されてもよい。
【0014】
無欠陥領域では、少数電荷キャリアの寿命は、好ましくは、平均して1000μsよりも長い。
【0015】
本発明の単結晶シリコンからなる半導体ウェハの裏面は、好ましくは、100個以下の欠陥を抱える。
【0016】
本発明の第1の好ましい実施形態の半導体ウェハの製造は、
単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けるプロセスステップと、
基板ウェハをDSPによって研磨するプロセスステップと、
RTA反応器に基板ウェハを装填するプロセスステップと、
1275℃以上1295℃以下の温度範囲内の温度で、15秒以上30秒以下の期間に
わたって、アルゴンおよび0.5体積%以上2体積%以下の酸素割合を有する酸素で構成される雰囲気内で、基板ウェハの第1のRTA処理を行うプロセスステップと、
第1のRTA処理後に800℃以下の温度に基板ウェハを冷却するプロセスステップとを備え、半導体ウェハへのガス供給は、100体積%アルゴンにリセットされ、上記製造はさらに、
1280℃以上1300℃以下の温度範囲内の温度で、20秒以上35秒以下の期間にわたって、アルゴンで構成される雰囲気内で、基板ウェハの第2のRTA処理を行うプロセスステップと、
半導体ウェハの表面から酸化物層を除去するプロセスステップと、
基板ウェハの表面をCMPによって研磨するプロセスステップとを備える。
【0017】
DSP(両面研磨)は、基板ウェハの表面および裏面を同時に研磨する研磨手順である。
【0018】
CMP(化学機械研磨)は、基板ウェハの表面または裏面を研磨する研磨手順である。
第1のRTA処理後に基板ウェハ上に存在する酸化物層は、好ましくは基板ウェハをHF水溶液で処理することによって、基板ウェハの表面から除去される。HF水溶液は、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下のHFを含み、処理時間は、好ましくは150秒以上350秒以下である。
【0019】
本発明の第2の好ましい実施形態の半導体ウェハの製造は、
単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けるプロセスステップと、
基板ウェハをDSPによって研磨するプロセスステップと、
基板ウェハの表面をCMPによって研磨するプロセスステップと、
基板ウェハの表面の上に単結晶シリコンからなる少なくとも1つのエピタキシャル層を堆積させるプロセスステップと、
RTA反応器に被覆された基板ウェハを装填するプロセスステップと、
1275℃以上1295℃以下の温度範囲内の温度で、15秒以上30秒以下の期間にわたって、アルゴンおよび0.5体積%以上2体積%以下の酸素割合を有する酸素で構成される雰囲気内で、被覆された基板ウェハの第1のRTA処理を行うプロセスステップと、
第1のRTA処理後に800℃以下の温度に被覆された基板ウェハを冷却するプロセスステップとを備え、半導体ウェハへのガス供給は、100体積%アルゴンにリセットされ、上記製造はさらに、
1280℃以上1300℃以下の温度範囲内の温度で、20秒以上35秒以下の期間にわたって、アルゴンで構成される雰囲気内で、被覆された基板ウェハの第2のRTA処理を行うプロセスステップと、
被覆された基板ウェハの表面から酸化物層を除去するプロセスステップと、
被覆された基板ウェハの表面をCMPによって研磨するプロセスステップとを備える。
【0020】
第1のRTA処理後に被覆された基板ウェハ上に存在する酸化物層は、好ましくは被覆された基板ウェハをHF水溶液で処理することによって、被覆された基板ウェハの表面から除去される。HF水溶液は、好ましくは0.5重量%以上2重量%以下のHFを含み、処理時間は、好ましくは150秒以上350秒以下である。
【0021】
基板ウェハの上に少なくとも1つのエピタキシャル層を堆積させるプロセスステップは、好ましくはたとえばUS2010/0213168 A1に記載されているような単一のウェハ反応器内で、好ましくはCVD(化学気相成長)によって行われる。好ましい堆積ガスは、シリコン供給源としてトリクロロシランを含む。そして、堆積温度は、好ましくは1110℃以上1180℃以下、特に好ましくは1130℃である。さらに、堆積ガ
スは、好ましくはn型またはp型のドーパントを含む。
【0022】
本発明の第3の好ましい実施形態の半導体ウェハの製造は、
単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けるプロセスステップと、
RTA反応器に基板ウェハを装填するプロセスステップと、
1250℃以上1310℃以下の温度範囲内の温度で、5秒以上40秒以下の期間にわたって、窒素および0.5体積%以上3.0体積%以下の酸素割合を有する酸素で構成される雰囲気内で、基板ウェハの第1のRTA処理を行うプロセスステップと、
第1のRTA処理後に800℃以下の温度に基板ウェハを冷却するプロセスステップとを備え、基板ウェハへのガス供給は、100体積%アルゴンにリセットされ、上記製造はさらに、
1280℃以上1300℃以下の温度範囲内の温度で、20秒以上35秒以下の期間にわたって、アルゴンで構成される雰囲気内で、基板ウェハの第2のRTA処理を行うプロセスステップと、
基板ウェハをDSPによって研磨するプロセスステップと、
基板ウェハの表面をCMPによって研磨するプロセスステップとを備える。
【0023】
第1のRTA処理後に基板ウェハ上に存在する酸化物層は、基板ウェハをDSPによって研磨することによって基板ウェハの表面から除去される。このようにして実現される基板ウェハの表面および裏面からの材料除去は、好ましくはいずれの場合にも8μm以上である。
【0024】
単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けるステップは、記載されている製造プロセスの開始時におけるステップである。基板ウェハは、好ましくは、CZ法によって引き上げられた単結晶シリコンの単結晶から切り取られ、さらなる処理を施される。CZ法では、石英からなるるつぼの中でシリコンが溶融され、結果として生じる溶融物に浸漬されて引き上げられる種結晶の端部において単結晶が成長する。るつぼ材料は、溶融物と接触することによって部分的に溶解され、このようにして酸素を提供し、この酸素は、後にBMDを生じさせるのに必要になる。
【0025】
単結晶シリコンの単結晶は、好ましくは300mm以上の直径を有する。単結晶から切り取られる基板ウェハは、好ましくはn領域に由来する。n領域は、空孔の塊もシリコン格子間原子の塊もOSF欠陥(酸化誘起積層欠陥)も含まない単結晶シリコンを表す。このような材料は、たとえば単結晶がCZ法に従って引き上げられるときに形成され、結晶化境界における引き上げ速度Vと軸方向温度勾配GとのV/G比は、許容限界内にとどまるように制御される。
【0026】
設けられる単結晶シリコンからなる基板ウェハが切り取られる単結晶は、好ましくは意図的に窒素または炭素をドープされることはない。したがって、設けられた単結晶シリコンからなる基板ウェハは、好ましくは3×1012atoms/cm3以下の濃度の窒素と、好ましくは2.5×1015atoms/cm3以下の濃度の炭素とを含む。設けられた基板ウェハにおける酸素の濃度は、好ましくは、新たなASTM当たりの校正係数を考慮に入れて、4.5×1017atoms/cm3以上5.5×1017atoms/cm3以下である。
【0027】
単結晶から切り取られた基板ウェハは、研削およびエッチングなどの機械的および化学的処理ステップを使用するさらなる処理を施されてもよい。少なくとも1回の材料除去処理動作を施された単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けることが好ましく、基板ウェハを設ける前に行われる最後の材料除去処理は、好ましくはエッチングによる処理である。
【0028】
設けられて任意にエピタキシャル被覆された単結晶シリコンからなる基板層は、RTA反応器に装填され、第1のRTA処理の最中に、好ましくは50℃/秒以上の速度で目標温度に加熱される。
【0029】
第1のRTA処理後、設けられて任意にエピタキシャル被覆された基板層は、RTA反応器内にとどまって、好ましくは800℃以下の温度に冷却される。冷却速度は、好ましくは30℃/秒以上である。RTA反応器へのガス供給は、同時に100%アルゴンに切り替えられる。
【0030】
設けられて任意にエピタキシャル被覆された単結晶シリコンからなる基板層は、第2のRTA処理の最中に、好ましくは50℃/秒以上の速度で目標温度に加熱される。
【0031】
第1のRTA処理の終了と第2のRTA処理の開始との間の期間は、好ましくは25秒以上50秒以下である。
【0032】
好ましくは、本発明に係る(第1、第2および第3の実施形態に係る)半導体ウェハの欠陥抱え込みは、好ましくは8slm(標準リットル毎分)以上18slm以下の流量で第1のRTA処理の前にRTA反応器に酸素(100体積%)を通過させることによって削減される。半導体ウェハの欠陥抱え込みは、たとえば高分解能レーザ散乱システムを使用して分析されてもよい。この中に含まれる分析結果は、一部には裏面の粒子、傷、表面欠陥および濁りなどの欠陥の判断を可能にするルドルフ・テクノロジーズ社からの端縁および裏面検査モジュール(EBI)を使用して得られ、一部には表面のLLS(局所光散乱)欠陥を検出するKLAテンコールサーフスキャンSP3検査システムを使用して得られた。
【0033】
本発明の単結晶シリコンからなる半導体ウェハは、無欠陥領域より下方に位置し、無欠陥領域に隣接している、BMD核を有する領域を備える。BMD核は、析出熱処理後にBMDが生じ得る空孔を備えるセンタである。析出熱処理は、本発明に係る半導体ウェハの製造プロセスの構成要素ではなく、所要の密度でBMDが生じ得るか否かをテストするのに必要であり、またはゲッターセンタとしての機能を示すBMDを生じさせるのに必要である。したがって、析出熱処理は、テストとして、または好ましくは単結晶シリコンからなる半導体ウェハを電子部品にさらに処理している最中に、行われる。
【0034】
テストの目的での典型的な析出熱処理は、本発明に係る半導体ウェハの二段階析出熱処理、すなわち酸素下で780℃の温度で3時間の期間にわたって行われる処理(段階1、安定化ステップ)と1000℃の温度で16時間の期間にわたって行われる処理(段階2、成長ステップ)とで構成される。
【0035】
生じたBMDの密度は、たとえばレイテックス・コーポレーション・ジャパンからのMO-441検出器を使用した分析方法としてのIRレーザ散乱断層撮影法によって、半導体ウェハの破損した端縁に沿って求められてもよい。測定結果の評価は、一般に、たとえば互いに等距離の少なくとも25個の径方向測定位置PにおけるBMDの平均密度(DBMD)(各径方向測定位置において7~300μmの深さにわたって平均化され、BMD欠陥密度は、深さ軸において5μmごとに測定される)を半導体ウェハの半径に沿って図中にプロットすることによって行われる。径方向測定位置Pでは、初めて遭遇するBMDから表面までの距離DZ1も求められ、この距離は、半導体ウェハの半径に沿って図中にプロットされる。距離DZ1の算術平均は、無欠陥領域が研磨された表面から半導体ウェハの内部に延在する深さを表す。径方向測定位置Pの関数としてのBMDの平均サイズsav(各径方向測定位置において7~300μmの深さにわたって測定され、BMD欠陥
サイズは、深さ軸において5μmごとに測定される)も図中にプロットすることができ、特定の径方向測定位置Pに基づいて、深さ方向における、すなわち半導体ウェハの表面までの距離dに沿ったBMDの密度(DBMD)のプロファイルも図中にプロットすることができる。
【0036】
実施例の助けを借りながら、図面を参照して本発明について以下でさらに説明する。
300mmの直径を有する単結晶シリコンからなる基板ウェハを設けた。これらの基板ウェハは、n領域で構成され、エッチングされた状態の表面を有していた。基板ウェハの第1の部分に、第1の好ましい実施形態に係る半導体ウェハを製造するための本発明に係るプロセスを施した。
【0037】
第1のRTA処理の前に、10slmの流量で酸素(100体積%)をRTA反応器に通過させた。次いで、1290℃の温度で、アルゴンおよび酸素(酸素割合:1体積%)の雰囲気内で第1のRTA処理を行った。この温度での第1のRTA処理の期間は、20秒であった。その後、基板ウェハを600℃の温度に冷却し、半導体ウェハへのガス供給を100%アルゴンに切り替えながら40秒の期間にわたって基板ウェハをこの温度に保持した。これに続いて、1295℃の温度で、アルゴン雰囲気内で、30秒の期間にわたって第2のRTA処理を行った。
【0038】
次いで、形成された酸化物層を基板ウェハから除去し、基板ウェハの表面をCMPによって研磨した。結果として生じた本発明の第1の実施形態に係る半導体ウェハに、テストの目的で提供される二段階析出熱処理を施した。
【0039】
基板ウェハの第2の部分に、第3の好ましい実施形態に係る半導体ウェハを製造するための本発明に係るプロセスを施した。
【0040】
第1のRTA処理の前に、10slmの流量で酸素(100体積%)をRTA反応器に通過させた。次いで、1290℃の温度で、窒素および酸素(酸素割合:1体積%)で構成される雰囲気内で第1のRTA処理を行った。この温度での第1のRTA処理の期間は、20秒であった。その後、基板ウェハを600℃の温度に冷却し、半導体ウェハへのガス供給を100%アルゴンに切り替えながら40秒の期間にわたって基板ウェハをこの温度に保持した。
【0041】
これに続いて、1295℃の温度で、アルゴン雰囲気内で、30秒の期間にわたって第2のRTA処理を行った。
【0042】
その後、最初にDSPによって、次いでCMPによって基板ウェハを研磨し、結果として生じた本発明の第3の実施形態に係る半導体ウェハに、テストの目的で提供される二段階析出熱処理を同様に施した。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの平均密度D
BMDの径方向プロファイルを示す図である。
【
図2】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの平均密度D
BMDの径方向プロファイルを示す図である。
【
図3】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用した距離DZ1の径方向プロファイルを示す図である。
【
図4】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用した距離DZ1の径方向プロファイルを示す図である。
【
図5】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用した、径方向位置の関数としてのBMDの平均サイズs
avを示す図である。
【
図6】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用した、径方向位置の関数としてのBMDの平均サイズs
avを示す図である。
【
図7】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図8】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図9】第1の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図10】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図11】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図12】第3の実施形態の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示す図である。
【
図13】端縁および裏面検査モジュール(EBI)による半導体ウェハの代表例の裏面の分析後に得られる分析結果を示す図である。
【
図14】端縁および裏面検査モジュール(EBI)による半導体ウェハの代表例の裏面の分析後に得られる分析結果を示す図である。
【
図15】LLS欠陥の個数と酸素の流量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1および
図2は、それぞれ、第1の実施形態(
図1)および第3の実施形態(
図2)の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの平均密度D
BMDの径方向プロファイルを示す。
【0045】
図3および
図4は、それぞれ、第1の実施形態(
図3)および第3の実施形態(
図4)の半導体ウェハの代表例を使用した距離DZ1の径方向プロファイルを示し、無欠陥領域の対応する深さは、45μm以上であり(
図3)、30μm以上である(
図4)。
【0046】
図5および
図6は、それぞれ、第1の実施形態(
図5)および第3の実施形態(
図6)の半導体ウェハの代表例を使用した、径方向位置の関数としてのBMDの平均サイズs
avを示す。
【0047】
図7~
図12は、それぞれ、第1の実施形態(
図7、
図8および
図9)および第3の実施形態(
図10、
図11および
図12)の半導体ウェハの代表例を使用したBMDの密度D
BMDの深さプロファイルを示し、中心部における深さプロファイル(P=0mm、
図7および
図10)、半径の半分における深さプロファイル(P=75mm、
図8および
図11)、および径方向距離P=140mmにおける深さプロファイル(
図9および
図12)を求めた。
【0048】
図13および
図14は、上記の端縁および裏面検査モジュール(EBI)による半導体ウェハの代表例の裏面の分析後に得られる分析結果を示す。
図13は、本発明の半導体ウェハの裏面の典型的な欠陥抱え込みを示し、0.2μmよりも大きな欠陥が8個であり、欠陥が100個未満であり、半導体ウェハの製造中は、第1のRTA処理の前に10slmの流量で純酸素をRTA反応器に通過させることを確実にするように注意した。酸素を反応器に通過させることにより欠陥が生じる場合、裏面の抱え込みが著しく大きくなり、欠陥密度が高い環状欠陥領域が検出可能である(
図14)(その結果、0.2μmよりも大きな欠陥は全て測定され、示された)。一方、第1のRTA処理の前に酸素の流量をたとえば25slmの値に設定することは有利ではない。この場合、≧0.13μmに相当
するラテックス球を有するLLS欠陥の個数が、容認できないほどに高くなる。これは、酸素の流量が8slm以上18slm以下の範囲内であるように選択される場合には当てはまらない。
図15は、箱ひげ図を参照してこの差を示しており、LLS欠陥の個数Nは正規化されている。ウェハダミーが存在する状態で実施することによって一定時間ごとにRTA反応器の酸化状態を再調整することが一般に有利である。これは、好ましくは、75~100%のO
2体積%割合および20~25slmの流量を有するAr/O
2環境内で行われる。