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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ジエステル系化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 67/08 20060101AFI20230816BHJP
   C07C 69/82 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C07C67/08
C07C69/82 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022515111
(86)(22)【出願日】2021-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 KR2021011080
(87)【国際公開番号】W WO2022108048
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2022-03-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0153990
(32)【優先日】2020-11-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジェオン、ジャエ フン
(72)【発明者】
【氏名】リー、スン キュ
(72)【発明者】
【氏名】チョー、ヨン ウク
(72)【発明者】
【氏名】リー、ソン フーン
(72)【発明者】
【氏名】ジュン、ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ユン ゴン
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2162204(KR,B1)
【文献】仏国特許発明第01491074(FR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2162203(KR,B1)
【文献】特表2012-512229(JP,A)
【文献】特開昭55-015424(JP,A)
【文献】特開昭60-072845(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式工程で行われ、
それぞれの前記反応ユニットはそれぞれの反応器を含み、
前記第1反応ユニットの反応器である第1反応器にジカルボン酸およびアルコールを含むフィードストリームを供給し、エステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に供給するステップを含み、
前記第1反応器でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御し、
前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸からなる群から選択された1種以上であり、
前記アルコールが、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、第2級ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、iso-オクチルアルコール、iso-ノニルアルコール、n-ノニルアルコール、iso-デシルアルコール、n-デシルアルコール、ウンデシルアルコールから選択された1種類以上であり、
前記転換率の50~80%への制御は、
前記第1反応器に供給される前記フィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記第1反応器の体積を後続のn-1個の反応器に比べて増大させて行われる、
ジエステル系化合物の製造方法。
【請求項2】
第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式工程で行われ、
それぞれの前記反応ユニットはそれぞれの反応器を含み、
前記第1反応ユニットの反応器である第1反応器にジカルボン酸およびアルコールを含むフィードストリームを供給し、エステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に供給するステップを含み、
前記第1反応器でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御し、
前記ジカルボン酸が、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸からなる群から選択された1種以上であり、
前記アルコールが、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、第2級ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、iso-オクチルアルコール、iso-ノニルアルコール、n-ノニルアルコール、iso-デシルアルコール、n-デシルアルコール、ウンデシルアルコールから選択された1種類以上であり、
前記転換率の50~80%への制御は、
前記第1反応器をm個の反応器で並列連結して運転し、この際、前記第1反応器に供給される前記フィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記m個の反応器にそれぞれ1/mに分割供給して行われる、
ジエステル系化合物の製造方法。
【請求項3】
前記第1反応器の運転温度は130~250℃である、請求項1又は2に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項4】
前記第1反応器の体積は、後続のn-1個の反応器それぞれの体積と対比して110~500体積%である、請求項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項5】
前記mは2~3である、請求項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項6】
前記反応生成物を含む下部排出ストリームはスラリー状である、請求項1からのいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項7】
前記フィードストリーム中のジカルボン酸およびアルコールのモル比は1:2~1:10である、請求項1からのいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項8】
前記第1反応器の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量は8.5体積%以下ある、請求項1からのいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項9】
前記反応ユニットは、前記反応器から前記アルコールおよび水を含む反応器の上部排出ストリームの供給を受けて気液分離を行い、気相は上部排出ストリームとして凝縮器を通過させて層分離器に供給し、液相は下部排出ストリームとして反応器に供給するカラムと、
水層とアルコール層を分離させ、前記アルコールのみを前記カラムに還流させ、前記水は除去する層分離器とをさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項10】
前記nは2~8である、請求項1からのいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【請求項11】
前記ジカルボン酸はテレフタル酸を含み、前記アルコールは2-エチルヘキサノールを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のジエステル系化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年11月17日付けの韓国特許出願第10-2020-0153990号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ジエステル系化合物の製造方法に関し、より詳しくは、連続式工程によりジエステル系化合物を製造する際、反応生成物を含む反応器の下部排出ストリーム中に未反応物が累積して配管およびポンプなどが詰まるのを防止することができる、ジエステル系化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
フタレート系可塑剤は、20世紀まで世界の可塑剤市場の92%を占めており、主にポリ塩化ビニル(PVC)に柔軟性、耐久性、耐寒性などを付与し、溶融粘度を下げて加工性を改善するために用いられる添加物であって、PVCに多様な含量で投入され、硬いパイプのような硬質製品から、柔らかくてよく伸長する食品包装材、血液バッグ、および床材などに使用可能な軟質製品に至るまで、その如何なる材料よりも実生活と密接な関わりを有しており、人体との直接的な接触が不可避な用途として広く用いられている。
【0004】
しかしながら、フタレート系可塑剤のPVCとの相溶性および優れた軟質付与性にもかかわらず、最近、フタレート系可塑剤が含有されたPVC製品の実生活での使用時、製品の外部に少しずつ流出され、内分泌系障害(環境ホルモン)推定物質および重金属水準の発癌物質として作用し得るという有害性の論難が提起されている。特に、1960年代、米国で、フタレート系可塑剤のうちその使用量が最も多いジ(2-エチルヘキシル)フタレート(di-(2-ethylhexyl)phthalate、DEHP)が、PVC製品の外部に流出されるという報告が発表されて以来、1990年代に入ってからは環境ホルモンに対する関心がさらに増し、フタレート系可塑剤の人体有害性に対する多様な研究が行われ始めた。
【0005】
そこで、多くの研究者らは、ジエステルベースのフタレート系可塑剤、特に、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートの流出による環境ホルモン問題および環境規制に対応するために、ジ(2-エチルヘキシル)フタレートから代替可能な、環境に優しい可塑剤の開発および工程を改善するために研究を進行しつつある。
【0006】
一方、前記ジエステルベースの可塑剤を製造する工程は、大部分の産業現場では回分式工程が適用されており、回分式工程として、反応器内の未反応物の還流および副反応物の効率的な除去のためのシステムが開発された。しかし、前記回分式工程によりジエステルベースの可塑剤を製造することは、還流量やスチーム量の改善に限界があり、生産性が非常に低く、問題を改善するために適用可能な技術的限界がある状態である。
【0007】
また、上述した問題を有する回分式工程の問題を解決するために、ジエステルベースの可塑剤の製造時、2器以上の反応器を直列に連結して反応部を構成している工程が開発された。しかし、反応の完了後に生成物だけが移送されていた回分式工程とは異なり、連続式工程は、複数の反応器を直列または並列に連結して行うことで、反応生成物を後段反応器に移送する際、目的とする生成物だけでなく、未反応物もともに混合されたスラリー状で移送されるため、1番目の反応器での反応生成物中には未反応物の含量が高い。これにより、1番目の反応器から排出される反応生成物を移送する配管およびポンプに、スラリー流れ中に固体の未反応物が累積して後段の反応器に移送するのに流れ性が低下し、このため、配管およびポンプが詰まりやすくて運転周期が短くなるという問題が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、前記発明の背景となる技術において言及した問題を解決するために、環境に優しい可塑剤としてジエステル系化合物を連続式工程により製造するが、第1反応ユニットの反応器から排出される反応生成物を後段の反応器に移送するのに流れ性を改善させ、これにより、配管およびポンプのメンテナンス期間を延長させることができる、ジエステル系化合物の製造方法を提供しようとするのである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、第1反応ユニットから第n反応ユニットまでの総n個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含む連続式工程で行われ、それぞれの前記反応ユニットはそれぞれの反応器を含み、前記第1反応ユニットの反応器である第1反応器にジカルボン酸およびアルコールを含むフィードストリームを供給し、エステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に供給するステップを含み、前記第1反応器でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御する、ジエステル系化合物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、ジエステル系化合物を連続式工程により製造する際、第1反応ユニットの反応器での転換率を制御することで、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの線速度を限界速度以上に増加させて流れ性を改善することができる。
【0011】
すなわち、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームに含まれた未反応物が累積して配管およびポンプなどが詰まるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係るジエステル系化合物の製造方法に対する工程フローチャートである。
図2】本発明の一実施形態に係るジエステル系化合物の製造方法に対する工程フローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係るジエステル系化合物の製造方法に対する工程フローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係るジエステル系化合物の製造方法に対する工程フローチャートである。
図5】比較例に係るジエステル系化合物の製造方法に対する工程フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の説明および特許請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0014】
本発明において、用語「上部」は、容器内の装置の全体高さから50%以上の高さに該当する部分を意味し、「下部」は、容器内の装置の全体高さから50%未満の高さに該当する部分を意味し得る。
【0015】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程中の流体(fluid)の流れを意味し得るし、また、配管内に流れる流体自体を意味し得る。具体的に、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内に流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)または液体(liquid)を意味し得る。前記流体に固体成分(solid)が含まれている場合に対して排除するものではない。
【0016】
本発明において、用語「スラリー(slurry)」は、固体と液体の混合物または微細な固体粒子が水中に懸濁された懸濁液を意味し得るし、具体的な例として、重合反応に用いられた固相または液相の反応物、および前記重合反応により生成された固相または液相の重合体の混合物を意味し得る。
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるために、本発明について図1図4を参照してより詳細に説明する。
本発明によると、ジエステル(Diester)系化合物の製造方法が提供される。前記製造方法は、図1を参照すると、第1反応ユニット10から第n反応ユニットn0までの総n個の反応ユニット10、20、n0が直列に連結された反応部を含む連続式工程で行われ、前記各反応ユニット10、20、n0は第1反応器11から第n反応器n1までのそれぞれの反応器11、21、n1、および第1層分離器14から第n層分離器n4までのそれぞれの層分離器14、24、n4を含み、前記第1反応器11にジカルボン酸およびアルコールを含むフィードストリームを供給し、エステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に供給するステップを含み、前記第1反応器でのエステル化反応の転換率は50~80%に制御することができる。
【0018】
本発明の一実施形態によると、前記ジエステル系化合物の製造は、第1反応ユニット10から第n反応ユニットn0までの総n個の反応ユニット10、20、n0が直列に連結された反応部を含む連続式工程で行われることができる。
【0019】
具体的に、従来は、ジエステル系化合物を製造するにおいて、回分式製造工程が適用された。しかし、前記回分式工程によりジエステル系化合物を製造することは、還流量やスチーム量の改善に限界があり、生産性が非常に低く、問題を改善するために適用可能な技術的限界がある。
【0020】
また、上述した回分式工程の問題を解決するために、ジエステル系化合物の製造時、2器以上の反応器を直列に連結して反応部を構成している連続式製造工程が開発された。しかし、反応の完了後に生成物だけが移送されていた回分式工程とは異なり、連続式工程は、複数の反応器を直列または並列に連結して行うことで、反応生成物を後段反応器に移送する際、目的とする生成物だけでなく、未反応物もともに混合されたスラリー状で移送されるため、1番目の反応器での反応生成物中には未反応物の含量が高い。これにより、1番目の反応器から排出される反応生成物を移送する配管およびポンプに、スラリー流れ中に固体の未反応物が累積して後段の反応器に移送するのに流れ性が低下し、このため、配管が詰まりやすくて運転周期が短くなるという問題が発生した。
【0021】
これに対し、本発明においては、前記ジエステル系化合物を連続式工程により製造する際、第1反応ユニットの反応器での転換率を制御することで、第1反応ユニットの反応器の下部排出ストリームの線速度を限界速度以上に増加させて流れ性を改善して、前記第1反応ユニットの反応器の下部排出ラインの配管およびポンプなどが詰まるのを防止して配管およびポンプのメンテナンス期間を延長させることができる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記反応ユニットは、第1反応器から第n反応器までの総n個の反応器を含むことができる。具体的な例として、前記反応器は、ジカルボン酸およびアルコールをエステル化反応させる反応器であってもよい。
【0023】
前記エステル化反応は、ジカルボン酸およびアルコールを反応器に供給し、触媒の存在下でジカルボン酸とアルコールが直接エステル化反応することができる。このように、ジカルボン酸とアルコールのエステル化反応により、ジエステル系化合物および副産物として水が生成されることができる。前記直接エステル化反応を行うことができる運転温度、運転圧力、時間、触媒の種類、および含量は、当業界に適用される一般的な条件をそのまま適用するか、または、場合によっては、工程の運営に適切に調節して適用することができる。
【0024】
前記ジカルボン酸およびアルコールは、反応器に供給する前にプレミキサーを介して混合して混合物として一括投入するか、またはそれぞれの別の供給ラインを備えて反応器に一括投入することができる。
【0025】
前記ジカルボン酸は、例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸などの芳香族多価カルボン酸;およびアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸などの飽和または不飽和の脂肪族多価カルボン酸からなる群から選択された1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記ジカルボン酸は、固体であってもよく、より具体的な例として、テレフタル酸であってもよい。
【0026】
前記アルコールは、例えば、炭素数4~13、5~12、または6~10の1価アルコールであってもよい。例えば、前記1価アルコールは、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコール、第2級ブチルアルコール、n-ペンチルアルコール、n-ヘキシルアルコール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキサノール、iso-オクチルアルコール、iso-ノニルアルコール、n-ノニルアルコール、iso-デシルアルコール、n-デシルアルコール、ウンデシルアルコール、トリデシルアルコールなどの直鎖または分岐鎖アルコールを含むことができる。具体的な例として、前記アルコールは、2-エチルヘキサノールであってもよい。
【0027】
前記アルコールは、前記ジカルボン酸と反応するのに必要な化学量論量と対比して過剰量で反応器に供給されることができる。例えば、前記エステル化反応において、前記ジカルボン酸とアルコールのモル比は、1:2~1:10、1:2~1:5、または1:2~1:4.5であってもよい。すなわち、前記反応器に供給されるフィードストリーム中のジカルボン酸およびアルコールのモル比は、1:2~1:10、1:2~1:5、または1:2~1:4.5であってもよい。前記反応器に反応物としてジカルボン酸とアルコールを前記範囲のモル比で供給することで、スチーム使用量を最小化しつつエステル化反応の正反応速度を制御し、目的とする転換率に容易に達することができる。
【0028】
前記触媒は、例えば、硫酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸などの酸触媒;テトライソプロピルチタン酸塩、テトラブチルチタン酸塩、テトラ-2-エチルヘキシルチタネートなどのアルキルチタネート触媒;およびジブチル酸化スズ、ブチルスズマレートなどの有機金属触媒からなる群から選択された1種以上を含むことができる。具体的な例として、前記触媒としては、アルキルチタネートに代表される有機チタン化合物を用いることができ、これにより、エステル化反応速度を増加させ、反応時間を短縮させることができる。
【0029】
前記反応器の運転温度は、例えば、130~250℃、160~250℃、または190~230℃であってもよい。この際、前記反応器の運転温度は、第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器を個別的に意味し得る。より具体的に、前記第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器は、前記温度範囲内で同一にまたは個別的に制御することができる。
【0030】
前記反応器の運転圧力は、0~5.5kg/cmG、0~3kg/cmG、または0~2kg/cmGであってもよい。この際、前記反応器の運転圧力は、第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器を個別的に意味し得る。より具体的に、前記第1反応ユニット~第n反応ユニットそれぞれの反応器は、前記圧力範囲内で同一にまたは個別的に制御することができる。
【0031】
本発明の一実施形態によると、前記ジカルボン酸はテレフタル酸であり、前記アルコールは2-エチルヘキサノールであってもよい。このように、テレフタル酸と2-エチルヘキサノールを触媒の存在下で反応器に投入してエステル化反応させる場合、ジエステル系物質としてジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)が製造されることができる。前記ジオクチルテレフタレートは、無毒性の環境に優しい可塑剤として広く用いられている物質であって、PVCなどの高分子材料との相溶性に優れ、低揮発性および電気特性に優れた特徴を有することができる。
【0032】
本発明の一実施形態によると、前記反応部は、総n個の反応ユニットが直列に連結されて構成されたものであって、反応の転換率の制御および各反応ユニットでの滞留時間などを考慮し、達成しようとする製品の組成を考慮して設計されることができる。例えば、前記nは、2~8、3~7、または4~6であってもよい。すなわち、前記反応部は、2~8個、3~7個、または4~6個の反応ユニットを含むことができる。
【0033】
本発明の一実施形態によると、前記反応ユニット10、20、30、40、n0は、前記反応器11、21、31、41、n1から、エステル化反応中に気化したアルコールおよび水を含む反応器の上部排出ストリームの供給を受けて気液分離を行い、気相は上部排出ストリームとして凝縮器13、23、33、43、n3を通過させて層分離器14、24、34、44、n4に供給し、液相は下部排出ストリームとして反応器11、21、31、41、n1に供給するカラム12、22、32、42、n2と、水層とアルコール層を分離させ、アルコールのみをカラムに還流させ、水は除去する層分離器14、24、34、44、n4とをさらに含むことができる。
【0034】
前記反応器においては、ジカルボン酸とアルコールのエステル化反応により、反応生成物であるジエステル系化合物と、エステル化反応に伴う副産物として水が生成されることができる。例えば、前記エステル化反応の反応生成物は、ジエステル系化合物、水、および未反応物を含むことができる。
【0035】
前記エステル化反応の正反応速度を増加させるためには、副産物である水を効果的に除去させ、水による逆反応および触媒の不活性化を防止しなければならない。これに対し、前記副産物である水を除去させる方法として、水を気化させて排出する方法がある。前記水の気化時、高い反応温度のため、水よりも沸点が高いアルコールもともに気化することになるが、気化するアルコールは回収して再び反応器に還流させて反応器内の反応物の濃度を高く維持し、水は除去することができる。
【0036】
具体的に、前記反応器においては、エステル化反応が行われるにつれ、アルコールの沸点以上にエステル化反応が起こることにより、反応に参加せずに気化するアルコールが必然的に存在し得るとともに、反応生成物であるジエステル系化合物の他に副産物として水が発生し、水はアルコールとともに気化して反応器の上部排出ストリームとして排出されることができる。前記気化した水およびアルコールは、反応器の上部排出ストリームとして排出され、カラムに供給することができる。
【0037】
前記カラムにおいては、反応器から流入された気相のアルコールおよび水が層分離器からカラムの上部に供給される低温の液相アルコールにより液化することができ、大部分の気相アルコールが選択的に液化してカラムの下部排出ストリームとして排出され、前記液相アルコールを含むカラムの下部排出ストリームは再び反応器の上部に投入され、前記液相アルコールはエステル化反応に再び参加することができる。
【0038】
このように、前記反応器の上部排出ストリームをカラムに通過させることにより、反応器の上部排出ストリームに含まれた水が凝縮された後に再び反応器に投入されるのを防止することで、正反応速度を向上させることができる。
【0039】
また、前記反応器から気化していたアルコールは反応器に再び還流させることで、反応器内でジカルボン酸と対比してアルコールの過量率を維持することができ、エステル化反応の副産物である水を反応システムの外部に排出させて除去することで、反応器内に水が還流されるのを防止し、反応器内での反応速度の低下および触媒の性能低下を防止することができる。
【0040】
本発明において、用語「過量率」は、反応器内で、化学量論的に必要なジカルボン酸とアルコールのモル比と対比して、反応性を保障するためにアルコールが過量に存在する比率を意味し得る。
【0041】
一方、前記カラムにおいて気相の水および液化していない気相のアルコールは、カラムの上部排出ストリームとして排出され、前記カラムの上部排出ストリームは、凝縮器を通過して層分離器に供給されることができる。具体的に、前記層分離器においてまたは層分離器に投入前に、気相のアルコールおよび水は液化する必要がある。これにより、前記カラムの上部排出ストリームが層分離器に移送されるラインの任意の領域に凝縮器が備えられ、気相のアルコールおよび水の熱を凝縮器を介して除去することで、層分離器に投入前に液化させることができる。
【0042】
前記層分離器内の層分離は、アルコールおよび水の密度差により行われることができる。具体的な例として、前記アルコールの密度は水よりも低いため、層分離器の上部にはアルコール層が形成され、下部には水層が形成されることができる。このように、前記層分離器において水層とアルコール層を分離した後、前記アルコール層からカラムの上部に連結されたラインを介してアルコールのみを選択的に分離し、前記カラムに還流させることができる。また、水層から外部に排出される排出ラインを介して水を除去するか、または多様なルートで再活用することができる。
【0043】
前記カラムにおいて凝縮されて温度が下がったアルコールが反応器に還流されることで、反応器の内部温度が減少するため、反応器の内部温度を維持するために、高圧スチームまたは高温スチームなどのエネルギー供給により反応器内に熱量を別に供給しなければならない。前記高圧スチームは、高い圧力による平衡温度(高温)を有するため、高圧スチームの供給により前記反応器内に熱量を供給することができる。
【0044】
前記反応器での反応生成物は反応器の下部排出ストリームを介して分離され、前記第1反応ユニット~第n-1反応ユニットの反応器それぞれの下部排出ストリームはそれぞれの反応ユニットの後段反応ユニットの反応器に供給することができ、最後段反応ユニットである第n反応ユニットの反応器の下部排出ストリームは分離精製して製品化することができる。具体的に、前記第1反応ユニットの反応器である第1反応器~第n-1反応ユニットの反応器である第n-1反応器それぞれの下部排出ストリームをそれぞれの反応ユニットの後段反応ユニットの反応器に供給することができ、最後段反応ユニット(第n反応ユニット)の反応器である第n反応器の下部排出ストリームは分離精製して製品化することができる。
【0045】
例えば、4個の反応ユニットが直列に連結された反応部を含んでジエステル系化合物を製造する際、第1反応ユニット10の反応器である第1反応器11の下部排出ストリームは第2反応ユニット20の反応器である第2反応器21に、第2反応器21の下部排出ストリームは第3反応ユニット30の反応器である第3反応器31に、第3反応器31の下部排出ストリームは第4反応ユニット40の反応器である第4反応器41に供給し、第4反応ユニット40の反応器である第4反応器41の下部排出ストリームは分離精製して製品化することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記反応ユニット10、20、30、40、n0それぞれの反応器の下部排出ストリームを後段反応ユニットの反応器に移送するか、または後続の分離精製工程に移送するために、それぞれの反応器の下部に下部排出ライン11a、21a、31a、41a、n1aが備えられることができ、さらに、前記それぞれの下部排出ラインには、ポンプ15、25、35、45、n5が備えられることができる。
【0047】
前記最後段反応ユニットの反応器である第n反応器の下部排出ストリームに含まれたジエステル系化合物は、公知の方法により精製することができる。例えば、有機チタン化合物を触媒としてエステル化反応を行った場合には、得られたジエステル系化合物に水を加えて触媒を不活性化させた後に水蒸気で蒸留し、残留している未反応アルコールを蒸発除去することができる。また、アルカリ性物質で処理して残留ジカルボン酸を中和することができる。また、濾過により固形物を除去することで、高純度のジエステル系化合物を得ることができる。
【0048】
本発明の一実施形態によると、前記ジエステル系化合物の製造方法は、前記第1反応器11にジカルボン酸およびアルコールを含むフィードストリームを供給し、エステル化反応させて反応生成物を製造し、前記反応生成物を含む下部排出ストリームは後段反応ユニットの反応器に供給することができ、この際、前記第1反応器11でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御することができる。
【0049】
前記第1反応器11の下部排出ストリームは、固相の未反応ジカルボン酸、液相の未反応アルコール、および液相のジエステル系化合物を含むスラリー状であってもよく、このように、前記第1反応器11の下部排出ストリーム中の未反応ジカルボン酸の含量が高い場合、第1反応器の下部排出ストリームが移送される配管およびポンプに未反応ジカルボン酸が累積し得るし、累積した未反応ジカルボン酸による流れ性の低下により後段反応器への移送問題が生じ、配管(移送ライン)内での停滞時間が長くなることによって配管およびポンプなどが詰まりやすいという問題があった。前記配管およびポンプが詰まる場合には、運転を停止(シャットダウン、Shut down)して配管およびポンプを洗浄しなければならない。この場合、洗浄のための時間が長くかかり、臨時のポンプおよび配管の使用が難しいときには、運転が停止する時間が増加することになり、経済的損失および生成される製品に対する単価上昇の問題につながることになる。
【0050】
これに対し、本発明においては、前記第1反応器11でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御することで、第1反応器11の下部排出ストリームの線速度をスラリー状の反応生成物が配管およびポンプに累積可能な限界速度以上に増加させて流れ性を改善し、前記第1反応器11の下部排出ラインの配管およびポンプなどが詰まるのを防止して配管およびポンプのメンテナンス期間を延長させることができる。
【0051】
この際、前記限界速度は、流体中の固体成分が累積し始める速度であって、スラリー限界速度と関わる経験式により決定することができる。具体的に、前記限界速度は、Durand式を用いることができ、Rheologyベースの経験式を参照して計算することができる。この際、前記固体成分の平均粒子大きさおよび密度、体積分率、流体の温度などを変数として適用して計算することができる。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記転換率の50~80%への制御は、図1に示されたように、前記第1反応器11に供給されるフィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記第1反応器11の体積を後続のn-1個の反応器21、31、41、n1に比べて増大させて行われることができる。上述したように、第1反応器11に供給されるフィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記第1反応器11の大きさを増大させる場合、増大前に比べて第1反応器11に供給されたフィードストリームの滞留時間が増加することができ、これにより、第1反応器11内でフィードストリーム中の反応物の反応転換率が向上することができる。
【0053】
前記第1反応器11での転換率の制御のための第1反応器11の体積の増大は、第1反応器11の運転温度および圧力などの反応条件に応じて調節することができる。非限定的な一例として、前記第1反応器11の体積は、後続のn-1個の反応器それぞれの体積と対比して110~500%、130~450%、または160~400%であってもよい。具体的な例として、前記第1反応器11の体積範囲は、第1反応器11の運転温度が130~250℃、160~250℃、または190~230℃であり、運転圧力が0~5.5kg/cmG、0~3kg/cmG、または0~2kg/cmGである場合に適用することができ、これに限定されるものではない。
【0054】
より具体的な例として、前記運転温度および運転圧力の条件で、前記第1反応器11の体積範囲が110%以上である場合には、第1反応器11の転換率を50%以上に制御することが容易であるため、第1反応器11の下部排出ストリームの流れ性の改善効果に優れることができ、前記第1反応器11の体積範囲が500%以下である場合には、第1反応器11の転換率を80%以下に制御することが容易であるため、第1反応器11に用いられるスチーム使用量が過量増加して運転費用およびエネルギー費用が非効率的に上昇するのを防止することができる。
【0055】
本発明の一実施形態によると、前記転換率の50~80%への制御は、図3に示されたように、前記第1反応器11をm個の反応器で並列連結して運転するが、前記第1反応器に供給されるフィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記m個の反応器にそれぞれ1/mに分割供給して行われることができる。この際、前記第1反応器11をm個の反応器で並列連結するとは、前記第1反応ユニット10をm個の反応ユニットで並列連結することを意味し得る。
【0056】
上述したように、第1反応器11に供給されるフィードストリームの流量は同一に維持した状態で、前記第1反応器11をm個の反応器で並列連結し、各m個の反応器に1/mに分割供給する場合、並列連結して運転する前に比べて、各m個の反応器に供給されたフィードストリームの滞留時間が増加することができ、これにより、各m個の反応器内でフィードストリーム中の反応物の反応転換率が向上することができる。
【0057】
前記第1反応器11での転換率の制御のための第1反応器11の並列個数は、第1反応器11の運転温度および圧力などの反応条件に応じて調節することができる。非限定的な一例として、前記mは、2~8、2~5、または2~3であってもよく、前記範囲内に第1反応ユニット10内の第1反応器11が並列連結されて運転される場合、前記第1反応器11での転換率の制御が容易であるという効果がある。具体的な例として、前記第1反応器11の並列個数であるmの範囲は、第1反応器11の運転温度が130~250℃、160~250℃、または190~230℃であり、運転圧力が0~5.5kg/cmG、0~3kg/cmG、または0~2kg/cmGである場合に適用することができ、これに限定されるものではない。
【0058】
より具体的な例として、前記運転温度および運転圧力の条件で、前記mが2以上である場合には、第1反応器11の転換率を50%以上に制御することが容易であるため、第1反応器11の下部排出ストリームの流れ性の改善効果に優れることができ、前記mが8以下である場合には、第1反応器11の転換率を80%以下に制御することが容易であるため、第1反応器11に用いられるスチーム使用量が過量増加して運転費用およびエネルギー費用が非効率的に上昇するのを防止することができる。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記第1反応器11の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量は、8.5体積%以下、0.1~8.5体積%、または3.0~8.1体積%であってもよい。具体的に、前記第1反応器11でのエステル化反応の転換率を50~80%に制御することで、第1反応器11の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量を前記範囲まで下げることができる。
【0060】
一方、例えば、前記第1反応器11でのエステル化反応の転換率が50%未満を示す場合、反応生成物を含む第1反応器11の下部排出ストリーム中の未反応ジカルボン酸の含量は、後段反応ユニットの反応器と比べて高くなり得るし、前記第1反応器11の下部排出ストリーム中のジカルボン酸の含量は、転換率に応じて異なり得るが、例えば、10体積%を超過し得る。
【0061】
このように、前記第1反応器11の転換率を50~80%に制御し、第1反応器11の下部排出ストリーム中の未反応ジカルボン酸の含量を前記範囲まで下げることで、後段反応ユニットの反応器への流れ性を改善し、配管およびポンプが詰まるのを防止して配管およびポンプのメンテナンス期間を延長させることができる。
【0062】
本発明の一実施形態によると、ジエステル系化合物の製造方法においては、必要な場合、蒸留カラム、コンデンサ、リボイラ、バルブ、ポンプ、分離器、および混合器などの装置を追加的にさらに設けることができる。
【0063】
以上、本発明に係るジエステル系化合物の製造方法を記載および図面に図示したが、上記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置の他に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明に係るジエステル系化合物の製造方法を実施するために適切に応用して利用することができる。
【0064】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明しようとする。但し、下記の実施例は、本発明を例示するためのものであって、本発明の範囲および技術思想の範囲内で多様な変更および修正が可能であることは通常の技術者にとって明らかであり、これらのみに本発明の範囲が限定されるものではない。
【0065】
<実施例>
実施例1-1~1-3
図2に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0066】
具体的に、テレフタル酸(TPA)と2-エチルヘキサノール(2-EH)を1:2~4.5のモル比で含むフィードストリームを第1反応ユニット10の反応器である第1反応器11に供給し、触媒の存在下で反応させ、前記第1反応器11において気化する上部排出ストリームは、カラム12、凝縮器13、および層分離器14を用い、アルコールは反応器11に還流させ、水は除去した。また、前記第1反応器11において下部排出ライン11aを介して排出される反応生成物は、ポンプ15を通過し、第2反応ユニット20の反応器である第2反応器21に供給した。
【0067】
前記第1反応ユニット10において運転される流れのように、第2反応ユニット20、第3反応ユニット30、および第4反応ユニット40を経て連続式(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)で運転し、最後段の第4反応ユニット40の反応器である第4反応器41の下部排出ストリームを分離精製してジオクチルテレフタレートを得た。
【0068】
この際、前記第1反応器11~第4反応器41は全て直列に連結し、第1反応器11の運転温度は195℃、運転圧力は0.5kg/cmGで運転し、前記第1反応器11での転換率が50~60%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応器11の体積を後続の3個の反応器と対比して増大させることで行った。
【0069】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表1に示した。
【0070】
実施例2-1~2-3
前記実施例1において、前記第1反応器11の運転温度を195℃の代わりに200℃で運転し、前記第1反応器11での転換率が50~60%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応器11の体積を後続の3個の反応器と対比して増大させることで行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0071】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表2に示した。
【0072】
実施例3-1~3-3
図3に示された工程フローチャートに従い、ジオクチルテレフタレート(Dioctyl terephthalate、DOTP)を製造した。
【0073】
具体的に、テレフタル酸(TPA)と2-エチルヘキサノール(2-EH)を1:2~4.5のモル比で含むフィードストリームを第1反応ユニット10の反応器である第1反応器11に供給し、触媒の存在下で反応させ、前記第1反応器11において気化する上部排出ストリームは、カラム12、凝縮器13、および層分離器14を用い、アルコールは反応器11に還流させ、水は除去した。また、前記第1反応器11において下部排出ライン11aを介して排出される反応生成物は、ポンプ15を通過し、第2反応ユニット20の反応器である第2反応器21に供給した。
【0074】
前記第1反応ユニット10において運転される流れのように、第2反応ユニット20、第3反応ユニット30、および第4反応ユニット40を経て連続式(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)で運転し、最後段の第4反応ユニット40の反応器である第4反応器41の下部排出ストリームを分離精製してジオクチルテレフタレートを得た。
【0075】
この際、第1反応器11の運転温度は195℃、運転圧力は0.5kg/cmGで運転し、前記第1反応器11での転換率が50~60%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応ユニットを2個の反応ユニットで並列連結して運転することで行った。
【0076】
具体的に、前記第1反応ユニットを2個の反応ユニットで並列連結して運転するが、第1反応器11および第2反応器21の体積を同一に設定した。この際、第1反応器11に供給されるフィードストリームは、前記実施例1と同一の流量で供給するが、前記並列連結された2個の第1反応器11に1/2ずつ分割して供給した。
【0077】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表3に示した。
【0078】
実施例4-1~4-6
前記実施例1において、前記第1反応器11の運転温度を195℃の代わりに215℃で運転し、前記第1反応器11での転換率が50~80%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応器11の体積を後続の3個の反応器と対比して増大させることで行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0079】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表4に示した。
【0080】
比較例1-1~1-3
前記実施例1において、前記第1反応器11での転換率が33~45%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応器11の体積を後続の3個の反応器と対比して増大させることで行ったことを除いては、前記実施例1と同様の方法で行った。
【0081】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表1に示した。
【0082】
比較例2-1~2-3
前記実施例2において、前記第1反応器11での転換率が38.5~45%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応器11の体積を後続の3個の反応器と対比して増大させることで行ったことを除いては、前記実施例2と同様の方法で行った。
【0083】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表2に示した。
【0084】
比較例3-1~3-3
前記実施例3において、前記第1反応器11での転換率が33~45%となるように第1反応器11内での滞留時間を調節し、前記滞留時間の調節は第1反応ユニットを2個の反応ユニットで並列連結して運転することで行ったことを除いては、前記実施例3と同様の方法で行った。
【0085】
また、商用プロセスシミュレーションプログラムであるアスペン社製のアスペンプラス(ASPEN PLUS)を用いて測定したシミュレーション結果を下記表3に示した。
【0086】
【表1】
【0087】
【表2】
【0088】
【表3】
【0089】
【表4】
【0090】
前記表1~4において、前記第1反応器での滞留時間(hr/hr)は、後段反応器(第2、第3、または第4反応器)での滞留時間に対する、第1反応ユニット10での第1反応器11での滞留時間の比率を意味する。
【0091】
また、転換率(%)は、第1反応ユニット10の第1反応器11において達した転換率を意味する。
また、TPAの含量は、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリーム中のテレフタル酸の体積分率を意味する。
【0092】
また、限界速度は、前記第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリーム中にテレフタル酸が累積し始める速度であって、Durand式を用い、変数として、テレフタル酸の平均粒子大きさは100μmに、密度は1520kg/mに設定し、第1反応ユニット10の第1反応器11の運転温度およびTPAの含量を代入して計算した。
また、前記線速度は、第1反応ユニット10の反応器11の下部排出ストリームの実際の線速度を意味する。
【0093】
また、前記固体の累積有無は、第1反応器の下部排出ストリームが排出されて後段反応器(第2反応器)に移送される配管およびポンプ内でのテレフタル酸の累積有無を示したものであって、線速度と限界速度を比較し、線速度が限界速度以下である場合には○、線速度が限界速度を超過する場合には×で示した。
また、前記スチーム使用量は、比較例2-3で測定されたスチーム使用量(100.0%)と対比して相対的な量で示した。
【0094】
また、前記各反応器の最大体積は100mとなるように設定し、第1反応器の体積が最大体積を超過する際、第1反応器を並列に連結して運転した。具体的に、第1反応器での滞留時間(hr/hr)が2.00である場合を例に挙げると、後段反応器(第2、3、および4反応器)の体積が40mである場合に第1反応器の体積を80mに設定し、後段反応器(第2、3、および4反応器)の体積が80mである場合に第1反応器の体積が160mとなるため、80mの2器を並列連結してシミュレーションした。
【0095】
また、第1反応器を並列連結して運転した、表3における、第1反応器での滞留時間(hr/hr)、転換率、TPAの含量、限界速度、線速度、固体の累積有無、および第1反応器でのスチーム使用量は、並列連結された2器の反応器それぞれに対する結果値の平均で示した。
【0096】
前記表1、2、および4には、第1反応器の運転温度条件がそれぞれ195℃、200℃、および215℃である場合、後段反応器(第2、3、および4反応器)と対比した第1反応器の体積の増大に応じた、後段反応器(第2、3、および4反応器)と対比した第1反応器での滞留時間の比率と、それに応じた第1反応器での転換率を示し、前記転換率に応じた配管およびポンプ内の固体(テレフタル酸)の累積有無を示した。
【0097】
前記表1、2、および4を参照すると、第1反応器の体積を後段反応器(第2、3、および4反応器)と同一の体積に維持した比較例1-1および2-1は、第1反応器での転換率が50%未満を示し、その結果、第1反応器11の下部排出ストリームの線速度が限界速度以下を示しており、配管およびポンプ内にテレフタル酸が累積したことを確認することができる。
【0098】
また、第1反応器の体積を後段反応器(第2、3、および4反応器)と対比して増大させたが、転換率が50%未満の比較例1-2、1-3、2-2、および2-3も、第1反応器11の下部排出ストリームの線速度が限界速度以下を示しており、配管およびポンプ内にテレフタル酸が累積したことを確認することができる。
【0099】
一方、第1反応器での転換率を50~80%に制御した実施例1-1~1-3、実施例2-1~2-3、および実施例4-1~4-6は、第1反応器の下部排出ストリーム中のテレフタル酸の含量が比較例と対比して減少し、その結果、第1反応器11の下部排出ストリームの線速度を限界速度超過に増加させ、配管およびポンプ内のテレフタル酸の累積を防止したことを確認することができる。
【0100】
特に、第1反応器の体積を後段反応器(第2、3、および4反応器)と対比して増大させて転換率を50~80%に制御した実施例4-3~4-6は、第1反応器の体積を後段反応器(第2、3、および4反応器)と対比して減少させた状態で転換率を50~80%に制御した実施例4-1~4-2と対比して、第1反応器でのスチーム使用量が顕著に減少したことを確認することができる。
【0101】
これにより、本発明においては、第1反応器での転換率を50~80%に制御することで、第1反応器11の下部排出ストリームの線速度を、スラリー状の生成物が配管およびポンプに累積可能な限界速度を超過するように増加させて流れ性を改善し、前記第1反応器11の下部排出ラインの配管およびポンプなどが詰まるのを防止して配管およびポンプのメンテナンス期間を延長可能であることを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5