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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】多孔体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20230816BHJP
   C08L 75/04 20060101ALI20230816BHJP
   C08L 71/02 20060101ALI20230816BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08J9/28 CFF
C08L75/04
C08L71/02
C08G18/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019093762
(22)【出願日】2019-05-17
(65)【公開番号】P2020186352
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177471
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 眞治
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】藤下 章恵
(72)【発明者】
【氏名】前田 亮
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-068498(JP,A)
【文献】特開2014-065980(JP,A)
【文献】特開2013-198969(JP,A)
【文献】特開2018-070850(JP,A)
【文献】国際公開第2017/164002(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00- 9/42
C08J 5/00- 5/12
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
D06N 1/00- 7/06
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタン樹脂(A)、溶剤(B)、及び、成膜助剤(C)を含有するウレタン樹脂組成物を湿式成膜して多孔体を製造する方法であって、
前記成膜助剤(C)が、ポリオキシプロピレン構造を有し、1分子あたりの平均水酸基数が2を超えて4以下のポリオール(c1)であり、
前記ポリオール(c1)が、グリセリンとプロピレンオキサイドとの付加物を含むものであることを特徴とする多孔体の製造方法。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂(A)が、ポリエステルポリオールを含むポリオール(a1)を必須原料とするものである請求項1記載の多孔体の製造方法。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂(A)が、さらに、数平均分子量500未満の鎖伸長剤(a1-1)を必須原料とするものであり、前記鎖伸長剤(a1-1)が、脂肪族ポリオール化合物を含むものである請求項1記載の多孔体の製造方法。
【請求項4】
前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量が、10,000~500,000の範囲である請求項1記載の多孔体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオール(c1)の数平均分子量が、450~10,000の範囲である請求項1記載の多孔体の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオール(c1)の含有量が、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲である請求項1~5の何れか1項記載の多孔体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式製膜法による多孔体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ガラス、ハードディスクガラス、シリコンウエハ、半導体などの高度な表面平坦性が要求される分野においては、ウレタン樹脂組成物を使用した研磨パッドが広く利用されている。中でも、最終の仕上げ研磨においては、DMF(ジメチルホルムアミド)等の溶剤で希釈したウレタン樹脂を水中で凝固させる湿式成膜法によって加工された軟質な多孔体が使用されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
この多孔体による研磨パッドに対して要求される特性としては、例えば、加工体表面の平坦性を保持するための高い体積弾性率を持つこと(=低圧縮率)、表面のスクラッチを抑制する材料としての柔軟性、及び、スラリー(研磨液)の保持と安定的な研磨を担う多孔セルの微細さと均一性(湿式成膜性)等が挙げられる。
【0004】
これらの要求特性を満たす要因の1つとしては、研磨パッドにおける多孔セルの均一性や細さが挙げられる。しかしながら、そのような研磨パッドを得ることは簡単なことではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-256738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、湿式成膜法により、細かく均一なセルを有する多孔体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、溶剤(B)、及び、成膜助剤(C)を含有するウレタン樹脂組成物を湿式成膜して多孔体を製造する方法であって、前記成膜助剤(C)が、ポリオキシプロピレン構造を有し、1分子あたりの平均水酸基数が2を超えて4以下のポリオール(c1)であることを特徴とする多孔体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の成膜助剤を用いることで、湿式成膜法により、細かく均一な多孔体を製造することができる。よって、本発明は、研磨パッド、人工皮革・合成皮革の製造に特に好適に使用することができる。
【0009】
なお、本発明において前記「多孔体」とは、ウレタン樹脂組成物を湿式成膜法により凝固させれば自ずと得られる程度の多数の孔を有するものであり、例えば、面の厚さ方向に長い紡錘形または涙滴形の多孔構造を形成しているものをいう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ウレタン樹脂(A)、溶剤(B)、及び、特定の成膜助剤(C)を含有するウレタン樹脂組成物を湿式成膜して多孔体を製造する方法である。
【0011】
本発明においては、成膜助剤(C)として、ポリオキシプロピレン構造を有し、1分子あたりの平均水酸基数が2を超えて4以下のポリオール(c1)を用いることが必須である。前記ポリオール(c1)は、疎水性が高いため、ウレタン樹脂の凝固速度がマイルドとなるため、多孔セルが細かく均一となる。前記ポリオール(c1)の平均水酸基数としては、より一層優れた多孔セル形成ができる点から、2.5~3.5の範囲であることが好ましい。
【0012】
前記ポリオール(c1)としては、例えば、グリセリンとプロピレンオキサイドとの付加物;グリセリンを開始剤として、プロピレンオキサイドを付加した後に、その末端にエチンオキサイドを更に付加したもの、グリセリンを開始剤として、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの混合物を付加したもの等のグリセリンとプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとの反応物;トリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドとの付加物;トリメチロールプロパンを開始剤として、プロピレンオキサイドを付加した後に、その末端にエチンオキサイドを更に付加したもの、トリメチロールプロパンを開始剤として、プロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドの混合物を付加したもの等のトリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとの反応物などを用いることができる。これらの中でも、より一層優れた多孔セル形成ができる点から、グリセリンとプロピレンオキサイドとの付加物、及び/又は、トリメチロールプロパンとプロピレンオキサイドとの付加物を用いることが好ましい。
【0013】
前記ポリオール(c1)の数平均分子量としては、より一層優れた多孔セル形成ができる点から、450~10,000の範囲であることが好ましく、1,000~7,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(c1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0014】
前記ポリオール(c1)の含有量としては、より一層優れた多孔セル形成ができる点から、前記ウレタン樹脂(A)100質量部に対して、0.1~30質量部の範囲であることが好ましく、0.5~20質量部の範囲がより好ましい。
【0015】
本発明で用いるウレタン樹脂(A)としては、例えば、ポリオール(a1)とポリイソシアネート(a2)との反応物を用いることができる。
【0016】
前記ポリオール(a1)としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等を用いることができる。これらのポリオールは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ポリオール(a1)の数平均分子量としては、多孔体の機械的特性、及び、柔軟性の点から、500~10,000の範囲であることが好ましく、700~8,000の範囲がより好ましい。なお、前記ポリオール(a1)の数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により測定した値を示す。
【0018】
前記ポリオール(a1)には、必要に応じて、数平均分子量が500未満の鎖伸長剤(a1-1)を併用してもよい。前記鎖伸長剤(a1-1)としては、例えば、水酸基を有する鎖伸長剤、アミノ基を有する鎖伸長剤等を用いることができる。これらの鎖伸長剤(a1-1)は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0019】
前記水酸基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレンリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、サッカロース、メチレングリコール、グリセリン、ソルビトール等の脂肪族ポリオール化合物;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、水素添加ビスフェノールA、ハイドロキノン等の芳香族ポリオール化合物;水などを用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記アミノ基を有する鎖伸長剤としては、例えば、エチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、イソホロンジアミン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、ヒドラジン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等を用いることができる。これらの鎖伸長剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記ポリイソシアネート(a2)としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、カルボジイミド変性ジフェニルメタンジイソシアネート、クルードジフェニルメタンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなどを用いることができる。これらのポリイソシアネートは単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ウレタン樹脂(A)の製造方法としては、例えば、前記ポリオール(a1)と前記ポリイソシアネート(a2)と必要に応じて前記鎖伸長剤(a1-1)とを仕込み、反応させることによって製造する方法が挙げられる。これらの反応は、50~100℃の温度で概ね3~10時間行うことが好ましい。また、前記反応は、後述する溶剤(B)中で行ってもよい。
【0023】
前記ポリオール(a1)が有する水酸基並びに前記鎖伸長剤(a1-1)が有する水酸基及びアミノ基の合計と、前記ポリイソシアネート(a2)が有するイソシアネート基とのモル比[(イソシアネート基)/(水酸基及びアミノ基)]としては、0.8~1.2の範囲であることが好ましく、0.9~1.1の範囲であることがより好ましい。
【0024】
以上の方法により得られるウレタン樹脂(A)の重量平均分子量としては、多孔体の機械的強度及び柔軟性の点から、5,000~1,000,000の範囲であることが好ましく、10,000~500,000の範囲がより好ましい。なお、前記ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量は、前記ポリオール(a1)の数平均分子量と同様に測定して得られた値を示す。
【0025】
前記ウレタン樹脂(A)の含有量としては、例えば、ウレタン樹脂組成物中10~90質量部の範囲が挙げられる。
【0026】
前記溶剤(B)としては、例えば、酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸ブチル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ヘプタン、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブタノール、sec-ブタノール、ターシャリーブタノール、N,N,2-トリメチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチルピロリドン、2-ピロリドン等を用いることができる。これらの有機溶媒は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記溶剤(B)の含有量としては、例えば、ウレタン樹脂組成物中10~90質量%の範囲が挙げられる。
【0028】
前記ウレタン樹脂組成物は、前記ウレタン樹脂(A)、前記溶剤(B)、及び、前記成膜助剤(C)を必須成分として含有するが、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
【0029】
前記その他の添加剤としては、例えば、前記(c1)以外の成膜助剤、顔料、難燃剤、可塑剤、軟化剤、安定剤、ワックス、消泡剤、分散剤、浸透剤、界面活性剤、フィラー、防黴剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、耐候安定剤、蛍光増白剤、老化防止剤、増粘剤等を用いることができる。これらの添加剤は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0030】
次に、前記ウレタン樹脂組成物を湿式成膜法により多孔体を製造する方法について説明する。
【0031】
前記湿式成膜法とは、前記ウレタン樹脂組成物を、基材表面に塗布または含浸し、次いで、該塗布面または含浸面に水や水蒸気等を接触させることによって前記ウレタン樹脂(A)を凝固させ多孔体を製造する方法である。
【0032】
前記ウレタン樹脂組成物を塗布する基材としては、例えば、不織布、織布、編み物からなる基材;樹脂フィルム等を用いることができる。前記基材を構成するものとしては、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリ乳酸繊維等の化学繊維;綿、麻、絹、羊毛、これらの混紡繊維などを用いることができる。
【0033】
前記基材の表面には、必要に応じて制電加工、離型処理加工、撥水加工、吸水加工、抗菌防臭加工、制菌加工、紫外線遮断加工等の処理が施されていてもよい。
【0034】
前記基材表面に前記ウレタン樹脂組成物を塗布または含浸する方法としては、例えば、グラビアコーター法、ナイフコーター法、パイプコーター法、コンマコーター法が挙げられる。その際、ウレタン樹脂組成物の粘度を調整し塗工作業性を向上するため、必要に応じて、有機溶剤(B)の使用量を調節して良い。
【0035】
前記方法により塗布または含浸された前記ウレタン樹脂組成物からなる塗膜の膜厚としては、0.5~5mmの範囲であることが好ましく、0.5~3mmの範囲がより好ましい。
【0036】
前記ウレタン樹脂組成物が塗布または含浸され形成した塗布面に水または水蒸気を接触させる方法としては、例えば、前記ウレタン樹脂組成物からなる塗布層や含浸層の設けられた基材を水浴中に浸漬する方法;前記塗布面上にスプレー等を用いて水を噴霧する方法などが挙げられる。前記浸漬は、例えば、5~60℃の水浴中に、2~20分間行うことが挙げられる。
【0037】
前記方法によって得られた多孔体は、常温の水や温水を用いてその表面を洗浄して溶剤(B)を抽出除去し、次いで乾燥することが好ましい。前記洗浄は、例えば、5~60℃の水で20~120分間行うことが挙げられ、洗浄に用いる水は1回以上入れ替えるか、あるいは、流水で連続して入れ替えるのが好ましい。前記乾燥は、例えば、80~120℃に調整した乾燥機等を使用して、10~60分間行うことが好ましい。
【0038】
以上、本発明によれば、特定の成膜助剤を用いることで、湿式成膜法により、細かく均一な多孔体を製造することができる。よって、本発明は、研磨パッド、人工皮革・合成皮革の製造に特に好適に使用することができる。
【実施例
【0039】
以下、実施例を用いて、本発明をより詳細に説明する。
【0040】
[合成例1]ウレタン樹脂(A-1)の合成
攪拌機、還流器、温度計を有する反応装置に、ポリエステルポリオール(エチレングリコール及びアジピン酸の反応物、数平均分子量;2,000)を100質量部、1,4-ブタンジオールを20質量部、N,N-ジメチルホルムアミドを564質量部、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートを68質量部投入し、撹拌下60℃で6時間反応させ、引き続き、イソプロピルアルコールを1質量部投入して、更に60℃で1時間撹拌することによって、ウレタン樹脂組成物を得た。
得られたウレタン樹脂組成物は、固形分;25質量%、粘度;600dPa・s、ウレタン樹脂の重量平均分子量は188,100であった。
【0041】
[数平均分子量・重量平均分子量の測定方法]
合成例で用いた原料ポリオールの数平均分子量、ポリオール(c1)の数平均分子量、ウレタン樹脂(A)の重量平均分子量 は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法により、下記の条件で測定した値を示す。
【0042】
測定装置:高速GPC装置(東ソー株式会社製「HLC-8220GPC」)
カラム:東ソー株式会社製の下記のカラムを直列に接続して使用した。
「TSKgel G5000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G4000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G3000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
「TSKgel G2000」(7.8mmI.D.×30cm)×1本
検出器:RI(示差屈折計)
カラム温度:40℃
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0mL/分
注入量:100μL(試料濃度0.4質量%のテトラヒドロフラン溶液)
標準試料:下記の標準ポリスチレンを用いて検量線を作成した。
【0043】
(標準ポリスチレン)
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-1000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-2500」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン A-5000」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-1」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-2」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-4」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-10」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-20」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-40」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-80」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-128」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-288」
東ソー株式会社製「TSKgel 標準ポリスチレン F-550」
【0044】
[実施例1]
合成例1で得られたウレタン樹脂組成物100質量部に対し、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、「DMF」と略記する。)を40質量部、ポリプロピレントリオール(AGC株式会社製「エクセノール3030」、官能基数;3、数平均分子量3,000、以下「c1-1」」と略記する。)を2質量部加えて配合液を作成し、厚さ(Wet)1mmとなるようにポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗布した。次いで、凝固浴(25℃の水)へ塗布基材を10分間浸漬させ、ウレタン樹脂を凝固させた。その後、この基材を50℃の水に60分間浸漬させて溶剤を洗浄した。洗浄後、基材を100℃で30分間熱風乾燥させ、多孔体を得た。
【0045】
[実施例2]
実施例1において、c1-1に代えて、ポリプロピレントリオール(旭硝子ウレタン株式会社製「エクセノール2030」、官能基数;3、数平均分子量2,000、以下「c1-2」」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
【0046】
[実施例3]
実施例1において、c1-1に代えて、ポリプロピレントリオール(旭硝子ウレタン株式会社製「エクセノール5030」、官能基数;3、数平均分子量5,000、以下「c1-3」」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
【0047】
[比較例1]
実施例1において、c1-1に代えて、ポリプロピレングリコール(旭硝子ウレタン株式会社製「エクセノール3020」、官能基数;2、数平均分子量3,200、以下「cR1-1」」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
【0048】
[比較例2]
実施例1において、c1-1に代えて、ドデシルベンゼンスルホン酸(以下「DBS」と略記する。)を用いた以外は、実施例1と同様にして多孔体を得た。
【0049】
[湿式成膜性の評価方法]
実施例で得られた多孔体の断面状態を、日本電子株式会社製走査型電子顕微鏡「JSM-IT500」(倍率:100倍)で観察し、セル形状(細さ、均一性)を確認し、最大横幅が70μm以下のセルが全体の60%を占めていれば「○」、それ以外は「×」と評価した。
【0050】
[圧縮率の評価方法]
実施例で得られた多孔体について、JISL-1021-6に準拠して圧縮率評価を行った。具体的には、初荷重2kPaを30秒間かけた後の「標準圧力下における厚さ:t0」を測定し、次に、最終荷重98kPaの荷重を30秒間かけた後の「一定圧力下における厚さ:t1」を測定し、これを下記の式に適用して圧縮率を算出した。
圧縮率(%)=100×(t0-t1)/t0
これによって求められた圧縮率が20%以下であれば「○」、それ以外は「×」と評価した。
【0051】
【表1】
【0052】
本発明の製造方法により得られた多孔体は、セルが細かく均一であり、低圧縮率性にも優れることが分かった。
【0053】
一方、比較例1は成膜助剤として、ポリオール(c1)の代わりに、平均水酸基数が2であるポリオールを用いた態様であるが、多孔セル形成が不良であり、低圧縮率性も不良であった。
【0054】
比較例2は成膜助剤として、ポリオール(c1)の代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸を用いた態様であるが、多孔セル形成が不良であり、低圧縮率性も不良であった。