(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ガラスの検査装置、ガラスの検査方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/958 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
G01N21/958
(21)【出願番号】P 2019192091
(22)【出願日】2019-10-21
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安川 実
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-111013(JP,A)
【文献】特開2014-038015(JP,A)
【文献】国際公開第2017/179453(WO,A1)
【文献】米国特許第05343288(US,A)
【文献】特開平02-059604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
G02B 27/00 - G02B 27/64
B60K 35/00 - B60K 37/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドアップディスプレイユニットと組み合わせて用いられるガラスの検査装置であって、
画像表示器と、
前記画像表示器に表示された検査用画像が前記ガラスに投影されて生成された虚像を撮像する撮像器と、
前記撮像器が撮像した前記虚像の画像データを処理する画像処理部と、
前記ヘッドアップディスプレイユニットの光学系の設計データを予め記憶している記憶部と、を有し、
重力方向をZ方向とし、前記Z方向と交差する平面内で互いに交差するX方向及びY方向を規定したときに、前記画像表示器は少なくとも第1位置及び前記第1位置とはZ方向の座標が異なる第2位置に移動可能に構成され、
前記画像処理部は、
前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第1XY座標を求める第1XY座標算出部と、
前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第2XY座標を求める第2XY座標算出部と、
前記虚像の同一の点を形成する際の元となる光線が出射される前記第1XY座標と前記第2XY座標を特定することで、前記虚像の表示領域全体の各点を形成するための元となる光線の光路を特定する光路特定部と、
前記光路特定部が特定した前記光路に基づいて、前記ガラスの品質に関連するデータを算出するデータ算出部と、を有
し、
前記虚像は、主像と二重像を含み、
前記第1XY座標算出部は、前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第1XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第1XY座標を求め、
前記第2XY座標算出部は、前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第2XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第2XY座標を求め、
前記光路特定部は、前記主像の同一の点を形成する際の元となる主像光線が出射される前記主像第1XY座標と前記主像第2XY座標を特定することで、前記主像の表示領域全体の各点を形成するための元となる主像光線の光路を特定すると共に、前記二重像の同一の点を形成する際の元となる二重像光線が出射される二重像第1XY座標と二重像第2XY座標を特定することで、前記二重像の表示領域全体の各点を形成するための元となる二重像光線の光路を特定し、さらに前記記憶部から読み出した前記設計データに基づいて、前記ヘッドアップディスプレイユニットの凹面鏡及び光源の位置を特定し、前記凹面鏡及び前記光源の位置と前記主像光線の光路とに基づいて、前記主像光線の光路に光を出射する前記光源の出射位置を特定するガラスの検査装置。
【請求項2】
前記記憶部は、前記ガラスの設計データを予め記憶しており、
前記データ算出部は、
前記光源の同じ出射位置から出射した前記主像光線が前記記憶部から読み出した前記ガラスの設計データを用いた場合に形成する主像の位置と、測定対象となる前記ガラスを用い場合に形成する主像の位置とを比較し、両者の差分に基づいて主像歪みを算出する請求項
1に記載のガラスの検査装置。
【請求項3】
前記光路特定部は、
前記凹面鏡及び前記光源の位置と前記二重像光線の光路とに基づいて、前記二重像光線の光路に光線を出射する前記光源の出射位置を特定する請求項
1又は
2に記載のガラスの検査装置。
【請求項4】
前記データ算出部は、
前記光源の同じ出射位置から出射した前記主像光線が生成する主像の位置と、前記光源の同じ出射位置から出射した前記二重像光線が生成する二重像の位置とを比較し、両者の差分に基づいて二重像歪みを算出する請求項
3に記載のガラスの検査装置。
【請求項5】
前記データ算出部は、前記主像光線の光路、及び前記二重像光線の光路に基づいて、前記ガラスの厚さのデータ、前記ガラスの楔角のデータ、前記ガラスの面形状のデータの何れか1つ以上を算出する請求項
1乃至
4の何れか一項に記載のガラスの検査装置。
【請求項6】
前記検査用画像は、光学系を介さずに前記ガラスに直接投影される請求項1乃至
5の何れか一項に記載のガラスの検査装置。
【請求項7】
前記ガラスは、車両用のウィンドシールドである請求項1乃至
6の何れか一項に記載のガラスの検査装置。
【請求項8】
ヘッドアップディスプレイユニットと組み合わせて用いられるガラスの検査方法であって、
画像表示器に表示された検査用画像が前記ガラスに投影されて生成された虚像を撮像する撮像ステップと、
前記撮像ステップで撮像した前記虚像の画像データを処理する画像処理ステップと、を有し、
重力方向をZ方向とし、前記Z方向と交差する平面内で互いに交差するX方向及びY方向を規定したときに、前記画像表示器は少なくとも第1位置及び前記第1位置とはZ方向の座標が異なる第2位置に移動可能に構成され、
前記画像処理ステップは、
前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第1XY座標を求める第1XY座標算出ステップと、
前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第2XY座標を求める第2XY座標算出ステップと、
前記虚像の同一の点を形成する際の元となる光線が出射される前記第1XY座標と前記第2XY座標を特定することで、前記虚像の表示領域全体の各点を形成するための元となる光線の光路を特定する光路特定ステップと、
前記光路特定ステップで特定した前記光路に基づいて、前記ガラスの品質に関連するデータを算出するデータ算出ステップと、を有
し、
前記虚像は、主像と二重像を含み、
前記第1XY座標算出ステップでは、前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第1XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第1XY座標を求め、
前記第2XY座標算出ステップでは、前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第2XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第2XY座標を求め、
前記光路特定ステップでは、前記主像の同一の点を形成する際の元となる主像光線が出射される前記主像第1XY座標と前記主像第2XY座標を特定することで、前記主像の表示領域全体の各点を形成するための元となる主像光線の光路を特定すると共に、前記二重像の同一の点を形成する際の元となる二重像光線が出射される二重像第1XY座標と二重像第2XY座標を特定することで、前記二重像の表示領域全体の各点を形成するための元となる二重像光線の光路を特定し、さらに前記ヘッドアップディスプレイユニットの光学系の設計データを予め記憶している記憶部から読み出した前記設計データに基づいて、前記ヘッドアップディスプレイユニットの凹面鏡及び光源の位置を特定し、前記凹面鏡及び前記光源の位置と前記主像光線の光路とに基づいて、前記主像光線の光路に光を出射する前記光源の出射位置を特定するガラスの検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスの検査装置、ガラスの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドアップディスプレイユニット(以下、HUDユニットとする)は、車両に搭載され、画像を凹面鏡で拡大して車両のガラスに投影し、画像の虚像を車両の内部から運転者に視認可能に表示させる装置である。運転者による虚像の視認性は、画像が投影されるガラスの品質に影響されるため、画像が投影されるガラスの品質を検査することは重要である。
【0003】
HUDユニットでは凹面鏡を介して画像を投影するため、画像が投影されるガラスの品質を検査する際は、凹面鏡を含むHUDユニットを用いて検査する方法が一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、HUDユニットは車種ごとに異なり、HUDユニットの生産準備中には入手が困難である。又、ガラスの検査の際にHUDユニットの凹面鏡を動かす場合があるが、凹面鏡を動かすための制御回路や制御プログラムが必要となり、準備に時間を要する。又、ガラスの検査の際にHUDユニットの凹面鏡を動かすと、HUDユニットの耐久性も問題となる。このように、ガラスの検査にHUDユニットを使用することは様々な問題を含んでいる。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、HUDユニットを用いずに、HUDユニットの画像が投影されるガラスの品質の検査が可能なガラスの検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本ガラスの検査装置は、ヘッドアップディスプレイユニットと組み合わせて用いられるガラスの検査装置であって、画像表示器と、前記画像表示器に表示された検査用画像が前記ガラスに投影されて生成された虚像を撮像する撮像器と、前記撮像器が撮像した前記虚像の画像データを処理する画像処理部と、前記ヘッドアップディスプレイユニットの光学系の設計データを予め記憶している記憶部と、を有し、重力方向をZ方向とし、前記Z方向と交差する平面内で互いに交差するX方向及びY方向を規定したときに、前記画像表示器は少なくとも第1位置及び前記第1位置とはZ方向の座標が異なる第2位置に移動可能に構成され、前記画像処理部は、前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第1XY座標を求める第1XY座標算出部と、前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される前記検査用画像の点の第2XY座標を求める第2XY座標算出部と、前記虚像の同一の点を形成する際の元となる光線が出射される前記第1XY座標と前記第2XY座標を特定することで、前記虚像の表示領域全体の各点を形成するための元となる光線の光路を特定する光路特定部と、前記光路特定部が特定した前記光路に基づいて、前記ガラスの品質に関連するデータを算出するデータ算出部と、を有し、前記虚像は、主像と二重像を含み、前記第1XY座標算出部は、前記画像表示器が前記第1位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第1XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第1XY座標を求め、前記第2XY座標算出部は、前記画像表示器が前記第2位置にあるときに、前記主像の任意の点を形成するための元となる主像光線が出射される前記検査用画像の点の主像第2XY座標を求めると共に、前記二重像の任意の点を形成するための元となる二重像光線が出射される前記検査用画像の点の二重像第2XY座標を求め、前記光路特定部は、前記主像の同一の点を形成する際の元となる主像光線が出射される前記主像第1XY座標と前記主像第2XY座標を特定することで、前記主像の表示領域全体の各点を形成するための元となる主像光線の光路を特定すると共に、前記二重像の同一の点を形成する際の元となる二重像光線が出射される二重像第1XY座標と二重像第2XY座標を特定することで、前記二重像の表示領域全体の各点を形成するための元となる二重像光線の光路を特定し、さらに前記記憶部から読み出した前記設計データに基づいて、前記ヘッドアップディスプレイユニットの凹面鏡及び光源の位置を特定し、前記凹面鏡及び前記光源の位置と前記主像光線の光路とに基づいて、前記主像光線の光路に光を出射する前記光源の出射位置を特定する。
【発明の効果】
【0008】
開示の一実施態様によれば、HUDユニットを用いずに、HUDユニットの画像が投影されるガラスの品質の検査が可能なガラスの検査装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る検査装置の一例を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る検査装置の制御部のハードウェアブロック図の一例である。
【
図3】本実施形態に係る検査装置の制御部の機能ブロック図の一例である。
【
図4】本実施形態に係る検査装置を用いた検査方法を示すフローチャートの一例である。
【
図5】
図4のステップS103の詳細を示すフローチャートの一例である。
【
図6】
図5のステップS201からS206までの処理を模式的に示す図である。
【
図7】第1位置においてX座標線画像の表示位置をX方向に移動させる様子を模式的に示す図である。
【
図8】
図5のステップS213からS216までの処理を模式的に示す図である。
【
図9】第1位置においてY座標線画像の表示位置をY方向に移動させる様子を模式的に示す図である。
【
図10】
図4のステップS104の詳細を示すフローチャートの一例である。
【
図11】
図10のステップS301からS306までの処理を模式的に示す図である。
【
図12】第2位置においてX座標線画像の表示位置をX方向に移動させる様子を模式的に示す図である。
【
図13】
図10のステップS313からS316までの処理を模式的に示す図である。
【
図14】第2位置においてY座標線画像の表示位置をY方向に移動させる様子を模式的に示す図である。
【
図15】
図4のステップS105の詳細を示すフローチャートの一例である。
【
図16】X座標線画像及びY座標線画像の虚像のデータの一例である。
【
図17】X座標線画像及びY座標線画像の主像のデータの一例である。
【
図18】主像を画素ごとにラベリングして座標を特定する例を示す図である。
【
図19】第1位置の主像投影行列の一例を示す図である。
【
図20】X座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その1)である。
【
図21】X座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その2)である。
【
図22】X座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その3)である。
【
図23】X座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その4)である。
【
図24】Y座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その1)である。
【
図25】Y座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その2)である。
【
図26】Y座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その3)である。
【
図27】Y座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図(その4)である。
【
図28】第1位置及び第2位置の主像投影行列の一例を示す図である。
【
図29】第2位置におけるXY座標の特定について説明する図である。
【
図30】主像光線の特定について説明する図である。
【
図31】HUDユニットの凹面鏡及び光源の位置の特定について説明する図である。
【
図32】光源の任意の出射位置に対する虚像表示領域内の主像の表示位置の特定について説明する図である。
【
図33】
図4のステップS106の詳細を示すフローチャートの一例である。
【
図34】本実施形態に係る検査装置を用いたガラスのパラメータの検査方法を示すフローチャートの一例である。
【
図35】本実施形態に係る検査装置を用いたガラスのパラメータの検査方法について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
[検査装置の概要]
図1は、本実施形態に係る検査装置の一例を示す模式図である。
図1を参照すると、検査装置1は、HUDユニットを用いずに、HUDユニットと組み合わせて用いられるガラスの検査が可能な検査装置であり、画像表示器10と、撮像器20と、制御部30と、検査結果出力部40とを有する。検査装置1は、HUDユニットと組み合わせて用いられるガラスの品質に関連するデータを算出可能である。
【0012】
ここで、ガラスの品質に関連するデータとは、例えば、HUDユニットからの光がガラスで反射されて生成される虚像における主像歪みや二重像歪み(主像と二重像との距離)、ガラスの厚さや面形状や楔角等である。
【0013】
以降の説明では、検査対象物であるガラスの一例として車両用のウィンドシールド(WS50)を例示するが、検査対象物であるガラスは車両のウィンドシールドには限定されない。
【0014】
図1において、WS50は、車両に取り付けた場合と同様の角度で取り付けられている。又、
図1において、60は、画像表示器10が表示する検査用画像がWS50で反射され、撮像器20で撮像される虚像を示している。つまり、60は、撮像器20の位置に車両の運転者が搭乗していたとしたら視認できる虚像である。以下、検査装置1について、詳しく説明する。
【0015】
画像表示器10は、制御部30の制御により検査用画像を生成して表示する。画像表示器10に表示された検査用画像は、ミラー等の光学素子を介さずにWS50に直接投影され、虚像60が生成される。画像表示器10としては、例えば、液晶表示装置等が用いられる。
【0016】
重力方向(WS50を車両に取り付けたときの垂直方向)をZ方向とし、Z方向と交差する平面内で互いに交差するX方向及びY方向を規定したときに、画像表示器10は、制御部30に制御されて、Z方向の座標が異なる少なくとも2つの位置(例えば、後述の第1位置及び第2位置)に移動可能に構成されている。
【0017】
以降の説明では、画像表示器10はZ方向に移動可能であるとし、Z方向と直交する平面内で互いに直交するX方向及びY方向を規定し、X方向はWS50を車両に取り付けたときの車両の前後方向、Y方向はWS50を車両に取り付けたときの車両の左右方向とする。但し、これには限定されず、例えば、画像表示器10はZ方向に対して斜めの方向に移動させてもよい。又、X方向とY方向とは互いに直交していなくてもよい。
【0018】
撮像器20は、画像表示器10に表示された検査用画像がWS50に投影されて生成された虚像60を撮像する。撮像器20は、虚像60を撮像可能とするため、撮像方向が水平面内及び垂直面内で任意の角度に調整可能に構成されている。又、撮像器20は、X方向、Y方向、及びZ方向に移動可能に構成されている。撮像器20は、例えば、制御部30に制御されて所定方向に移動する。なお、撮像方向は、実使用時における車両の運転者の視線方向と対応する。撮像器20としては、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)カメラやCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)カメラ等を用いることができる。
【0019】
制御部30は、画像表示器10、撮像器20、検査結果出力部40等を制御する部である。制御部30については、後述する。
【0020】
検査結果出力部40は、検査装置1の検査結果を出力する部である。検査結果出力部40として、例えば、液晶表示装置や有機EL表示装置等を用い、検査結果を画像や数値として視認可能に表示してもよい。或いは、検査結果出力部40は、検査結果をデータとして外部に出力する構成としてもよいし、検査結果を音として外部に出力する構成としてもよいし、その他の構成としてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る検査装置の制御部のハードウェアブロック図の一例である。
図2に示すように、制御部30は、主要な構成要素として、CPU31と、ROM32と、RAM33と、I/F34と、バスライン35とを有している。CPU31、ROM32、RAM33、及びI/F34は、バスライン35を介して相互に接続されている。制御部30は、必要に応じ、他のハードウェアブロックを有しても構わない。
【0022】
CPU31は、制御部30の各機能を制御する。記憶部であるROM32は、CPU31が制御部30の各機能を制御するために実行するプログラムや、各種情報を記憶している。記憶部であるRAM33は、CPU31のワークエリア等として使用される。又、RAM33は、所定の情報を一時的に記憶できる。I/F34は、他の機器等と接続するためのインターフェイスであり、例えば、外部ネットワーク等と接続される。
【0023】
制御部30は、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、所定の機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)、SOC(System on a chip)、又はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。又、制御部30は、回路モジュール等であってもよい。
【0024】
図3は、本実施形態に係る検査装置の制御部の機能ブロック図の一例である。
図3に示すように、制御部30は、主要な機能ブロックとして、表示器位置決め部310と、表示器制御部320と、撮像器制御部330と、画像処理部340とを有している。画像処理部340は、撮像器20が撮像した虚像の画像データを処理する部であり、第1XY座標算出部341と、第2XY座標算出部342と、光路特定部343と、データ算出部344とを有している。制御部30は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。又、画像処理部340は、必要に応じ、他の機能ブロックを有しても構わない。制御部30の各機能ブロックの機能については、後述のフローチャートの説明の中で述べる。
【0025】
[検査装置を用いた検査方法]
図4は、本実施形態に係る検査装置を用いた検査方法を示すフローチャートの一例である。まず、ステップS101では、WS50をセッティングする。実使用時のWS50とHUDユニットとの位置関係は車種ごとに設定されているので、ここでは、WS50と画像表示器10との位置関係が実使用時の設定に対応するように、WS50を所定位置にセッティングする。WS50は、例えば、ベルトコンベアーに搭載されて運ばれ、ロボットを用いて所定位置にセッティングできるが、これには限定されない。
【0026】
次に、ステップS102では、撮像器制御部330は、画像表示器10が表示した検査用画像の虚像60を撮像可能な所定位置に撮像器20を位置決めする。撮像器20は、例えば、車両の運転者の標準的なアイポイントの位置に来るように位置決めされる。
【0027】
次に、ステップS103では、画像表示器10を第1位置(Near)にして検査を開始する。
図4のステップS103の詳細を
図5のフローチャートに示す。
【0028】
まず、
図5のステップS201で、表示器位置決め部310は、画像表示器10の位置を第1位置(Near)に位置決めする。次に、ステップS202で、撮像器制御部330は、撮像器20の焦点を決定する。つまり、撮像器制御部330は、撮像器20の焦点を、第1位置に表示される検査用画像の虚像60が撮像できる最適な位置に調整する。
【0029】
次に、ステップS203で、表示器制御部320は、検査用画像としてX座標線画像を生成する。X座標線画像とは、例えば、Y方向に平行な複数の直線が所定間隔で並置された画像である。X座標線画像に含まれる各線のX座標は既知である。
【0030】
次に、ステップS204で、表示器制御部320は、画像表示器10の所定位置にX座標線画像を表示する。次に、ステップS205で、撮像器制御部330は、X座標線画像の虚像60を撮像器20で撮像する。次に、ステップS206で、撮像器制御部330は、ステップS205で撮像したX座標線画像の虚像を記憶する。X座標線画像の虚像は、例えば、記憶部であるRAM33に記憶される。
【0031】
図6は、
図5のステップS201からS206までの処理を模式的に示す図である。
図6では、画像表示器10はZ方向においてWS50に近い第1位置(Near)に位置決めされており、画像表示器10はX座標線画像10xを表示している。X座標線画像10xは、WS50で反射され、虚像表示領域600にX座標線画像10xの虚像60xが生成されている。
【0032】
虚像60xは、実線で示す主像と、破線で示す二重像とを含んでいる。但し、二重像は、便宜上破線で示しているが、実際には主像と同様に連続した1本の線であり、主像よりも低輝度で表示される。虚像60xは撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。
【0033】
ここでは、X座標線画像10xは、Y方向に平行な5本の線を所定間隔で配置した線画像としているが、これには限定されない。X座標線画像10xは、HUDユニットが虚像を表示する領域全体をカバーできる長さとし、所定間隔は主像と二重像との分離を妨げない範囲で狭い方が好ましい。
【0034】
図5の説明に戻り、次に、ステップS207で、撮像器制御部330は、予め決められた全ての位置でX座標線画像10xの撮像が終了したか否かを判定する。
図5のステップS204からS206までの処理は、X座標線画像10xの表示位置をX方向に移動させて、X方向の離散的な複数箇所において実行される。ステップS207では、ステップS204からS206までの処理が予め設定されたX方向の全ての箇所において実行されたか否かが判定される。
【0035】
ステップS207で全ての位置で撮像が終了していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS208に移行し、表示器制御部320は、X座標線画像10xを表示する所定位置をX方向にずらす。その後、ステップS204に移行し、同様の処理を繰り返す。
【0036】
図7は、第1位置においてX座標線画像の表示位置をX方向に移動させる様子を模式的に示す図である。実際には、X方向の数10か所の位置にX座標線画像10xを表示させて検査を行う。X座標線画像10xの表示位置が移動すると、それに伴って虚像60xにおける主像及び二重像の位置も移動する。全ての位置のX座標線画像10xの虚像60xが撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。なお、
図7において、画像表示器10の位置は移動しない。
【0037】
図5の説明に戻り、ステップS207で全ての位置で撮像が終了したと判定された場合(YESの場合)には、ステップS213に移行する。ステップS213からS218では、X座標線画像10xをY座標線画像10yに代えて、ステップS203からS208と同様の処理を実行する。これにより、
図5に示すフローチャートの処理は、全て終了する。なお、Y座標線画像とは、例えば、X方向に平行な複数の直線が所定間隔で並置された画像である。Y座標線画像に含まれる各線のY座標は既知である。
【0038】
図8は、
図5のステップS213からS216までの処理を模式的に示す図である。
図8では、画像表示器10はZ方向においてWS50に近い第1位置(Near)に位置決めされており、画像表示器10はY座標線画像10yを表示している。Y座標線画像10yは、WS50で反射され、虚像表示領域600にY座標線画像10yの虚像60yが生成されている。
【0039】
虚像60yは、実線で示す主像と、破線で示す二重像とを含んでいる。但し、二重像は、便宜上破線で示しているが、実際には主像と同様に連続した1本の線であり、主像よりも低輝度で表示される。虚像60yは撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。
【0040】
ここでは、Y座標線画像10yは、X方向に平行な5本の線を所定間隔で配置した線画像としているが、これには限定されない。Y座標線画像10yは、HUDユニットが虚像を表示する領域全体をカバーできる長さとし、所定間隔は主像と二重像との分離を妨げない範囲で狭い方がでが好ましい。
【0041】
図5の説明に戻り、次に、ステップS217で、撮像器制御部330は、予め決められた全ての位置でY座標線画像10yの撮像が終了したか否かを判定する。
図5のステップS214からS216までの処理は、Y座標線画像10yの表示位置をY方向に移動させて、Y方向の離散的な複数箇所において実行される。ステップS217では、ステップS214からS216までの処理が予め設定されたY方向の全ての箇所において実行されたか否かが判定される。
【0042】
ステップS217で全ての位置で撮像が終了していないと判定された場合(NOの場合)には、ステップS218に移行し、表示器制御部320は、Y座標線画像10yを表示する所定位置をY方向にずらす。その後、ステップS214に移行し、同様の処理を繰り返す。
【0043】
図9は、第1位置においてY座標線画像の表示位置をY方向に移動させる様子を模式的に示す図である。実際には、Y方向の数10か所の位置にY座標線画像10yを表示させて検査を行う。Y座標線画像10yの表示位置が移動すると、それに伴って虚像60yにおける主像及び二重像の位置も移動する。全ての位置のY座標線画像10yの虚像60yが撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。なお、
図9において、画像表示器10の位置は移動しない。
【0044】
図5の説明に戻り、ステップS217で全ての位置で撮像が終了したと判定された場合(YESの場合)には、
図5に示すフローチャートの処理は、全て終了する。
【0045】
図4の説明に戻り、次に、ステップS104では、画像表示器10を第2位置(Far)にして検査を開始する。
図4のステップS104の詳細を
図10のフローチャートに示す。
図10に示すステップS301~S318の処理は、画像表示器10をZ方向において第1位置(Near)よりもWS50から遠い第2位置(Far)に位置決めした以外は、
図5に示すステップS201~S218の処理と同様である。
【0046】
図11は、
図10のステップS301からS306までの処理を模式的に示す図である。
図11では、画像表示器10はZ方向においてWS50から遠い第2位置(Far)に位置決めされており、画像表示器10はX座標線画像10xを表示している。X座標線画像10xは、WS50で反射され、虚像表示領域600にX座標線画像10xの虚像60xが生成されている。
【0047】
虚像60xは、実線で示す主像と、破線で示す二重像とを含んでいる。但し、二重像は、便宜上破線で示しているが、実際には主像と同様に連続した1本の線であり、主像よりも低輝度で表示される。虚像60xは撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。
【0048】
図12は、第2位置においてX座標線画像の表示位置をX方向に移動させる様子を模式的に示す図である。実際には、X方向の数10か所の位置にX座標線画像10xを表示させて検査を行う。X座標線画像10xの表示位置が移動すると、それに伴って虚像60xにおける主像及び二重像の位置も移動する。全ての位置のX座標線画像10xの虚像60xが撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。なお、
図12において、画像表示器10の位置は移動しない。
【0049】
図13は、
図10のステップS313からS316までの処理を模式的に示す図である。
図13では、画像表示器10はZ方向においてWS50から遠い第2位置(Far)に位置決めされており、画像表示器10はY座標線画像10yを表示している。Y座標線画像10yは、WS50で反射され、虚像表示領域600にY座標線画像10yの虚像60yが生成されている。
【0050】
虚像60yは、実線で示す主像と、破線で示す二重像とを含んでいる。但し、二重像は、便宜上破線で示しているが、実際には主像と同様に連続した1本の線であり、主像よりも低輝度で表示される。虚像60yは撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。
【0051】
図14は、第2位置においてY座標線画像の表示位置をY方向に移動させる様子を模式的に示す図である。実際には、Y方向の数10か所の位置にY座標線画像10yを表示させて検査を行う。Y座標線画像10yの表示位置が移動すると、それに伴って虚像60yにおける主像及び二重像の位置も移動する。全ての位置のY座標線画像10yの虚像60yが撮像器20で撮像され、RAM33等に記憶される。なお、
図14において、画像表示器10の位置は移動しない。
【0052】
図4の説明に戻り、次に、ステップS105では、主像光源位置を算出する。
図4のステップS105の詳細を
図15のフローチャートに示す。
【0053】
まず、
図15のステップS401で、画像処理部340の第1XY座標算出部341は、第1位置(Near)の撮像データを読み出す。具体的には、第1XY座標算出部341は、
図5のステップS206で記憶した全てのX座標線画像10xの虚像60xのデータ、及びステップS216で記憶した全てのY座標線画像10yの虚像60yのデータを読み出す。例えば、
図16(a)に示す画像60x(1)~60x(n)、及び
図16(b)に示す画像60y(1)~60y(m)がデータとして読み出せる。なお、
図16(a)及び
図16(b)の1つの正方形は撮像器20の1つの画素を示している。
【0054】
図16(a)に示す画像60x(1)は、最初に撮像されたX座標線画像10xの虚像60x(白が主像、灰色が二重像)のデータである。又、画像60x(2)は、位置をずらして2回目に撮像されたX座標線画像10xの虚像60xのデータである。又、画像60x(n)は、位置をずらしてn回目に撮像されたX座標線画像10xの虚像60xのデータである。この場合は、位置をずらしてn枚のX座標線画像10xの虚像60xを撮像した例である。
【0055】
同様に、
図16(b)に示す画像60y(1)は、最初に撮像されたY座標線画像10yの虚像60y(白が主像、灰色が二重像)のデータである。又、画像60y(2)は、位置をずらして2回目に撮像されたY座標線画像10yの虚像のデータである。又、画像60y(m)は、位置をずらしてm回目に撮像されたY座標線画像10yの虚像のデータである。この場合、位置をずらしてm枚のY座標線画像10yの虚像60yを撮像した例である。
【0056】
次に、ステップS402で、第1XY座標算出部341は、ステップS401で読み出した画像60x(1)~60x(n)及び画像60y(1)~60y(m)から主像のみを取り出す。例えば、
図16(a)及び
図16(b)の各画像から、
図17(a)に示す画像60x(1)~60x(n)の主像、及び
図17(a)に示す画像60y(1)~60y(m)の主像が抽出される。なお、主像と二重像とは輝度が大きく異なるため、主像と二重像とは容易に区別できる。
【0057】
次に、ステップS403で、第1XY座標算出部341は、ステップS402で抽出した画像60x(1)~60x(n)の主像及び画像60y(1)~60y(m)の主像を画素ごとにラベリングして座標を特定する。例えば、
図18(a)及び
図18(b)に示すようにラべリングして座標を特定する。
【0058】
次に、ステップS404で、第1XY座標算出部341は、ステップS403で特定した座標に基づいて、第1位置の主像投影行列を作成する。例えば、
図19に示すように第1位置の主像投影行列が作成される。なお、
図19では、3つの座標のみを例示しているが、全ての画素に対して座標が特定される。
【0059】
ここで、第1XY座標算出部341が、読み出した撮像データから座標を特定する方法について、更に詳しく説明する。
【0060】
まず、第1XY座標算出部341は座標を特定すべき画素(G1とする)を選択する。次に、第1XY座標算出部341は、X座標線画像10xの虚像60xを撮像した全ての画像から主像のみを取り出した画像を生成し(例えば、
図17(a)の各画像)、生成した画像の中から画素G1と主像とが重なる画像を選択する。これについて、
図20~
図23を参照して説明する。
【0061】
図20~
図23は、X座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図であり、X座標線画像10xを移動させたときに虚像60xが移動する様子を模式的に示している。ここでは、理解を容易にするために、第1XY座標算出部341が読み出した画像の代わりに虚像60xを用いて説明する。
図20~
図23では主像及び虚像を示しているが、実際には第1XY座標算出部341は主像のみを取り出した画像を用いる。なお、
図20~
図23において、便宜上、画素G1に対応する虚像表示領域600内の位置に×印を付け、P1と表示している(つまり、×印は、表示された虚像ではない)。
【0062】
図20では、虚像60xに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
図21は、
図20の位置に対してX座標線画像10xの表示位置をX-方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60xを示している。
図21では、虚像60xに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
【0063】
図22は、
図21の位置に対してX座標線画像10xの表示位置をX-方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60xを示している。
図22では、虚像60xに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
【0064】
図23は、
図22の位置に対してX座標線画像10xの表示位置をX-方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60xを示している。
図23では、虚像60xに含まれる主像は位置P1と重なっている。
【0065】
以上の結果から、
図23に示すX1の線が位置P1を通る主像として表示されていることがわかる。つまり、X1のX座標をXa(既知)とすると、Xaを通る光線がWS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかる。
【0066】
次に、第1XY座標算出部341は、Y座標線画像10yの虚像60yを撮像した全ての画像から主像のみを取り出した画像を生成し(例えば、
図17(b)の各画像)、生成した画像の中から画素G1と主像とが重なる画像を選択する。これについて、
図24~
図27を参照して説明する。
【0067】
図24~
図27は、Y座標線画像の移動と虚像の移動を模式的に示す図であり、Y座標線画像10yを移動させたときに虚像60yが移動する様子を模式的に示している。ここでは、理解を容易にするために、第1XY座標算出部341が読み出した画像の代わりに虚像60yを用いて説明する。
図24~
図27では主像及び虚像を示しているが、実際には第1XY座標算出部341は主像のみを取り出した画像を用いる。なお、
図24~
図27において、便宜上、画素G1に対応する虚像表示領域600内の位置に×印を付け、P1と表示している(つまり、×印は、表示された虚像ではない)。又、便宜上、
図23で特定された線X1を画像表示器10上に図示している。
【0068】
図24では、虚像60yに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
図25は、
図24の位置に対してY座標線画像10yの表示位置をY+方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60yを示している。
図21では、虚像60yに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
【0069】
図26は、
図25の位置に対してY座標線画像10yの表示位置をY+方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60yを示している。
図26では、虚像60yに含まれる主像は位置P1と重なっていない。
【0070】
図27は、
図26の位置に対してY座標線画像10yの表示位置をY+方向に所定距離だけ移動させたときの虚像60yを示している。
図27では、虚像60yに含まれる主像は位置P1と重なっている。
【0071】
以上の結果から、
図27に示すY1の線が位置P1を通る主像として表示されていることがわかる。つまり、Y1のY座標をYa(既知)とすると、Yaを通る光線がWS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかる。
【0072】
図23において既にX座標がXaに特定されていることを合わせて考えると、XY座標が(Xa、Ya)である位置Pn1を通る光線が、WS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかる。
【0073】
つまり、画素G1に対応する第1位置のXY座標(第1XY座標と称する場合がある)は(Xa、Ya)となる。そこで、
図28(a)に示すように、第1位置の主像投影行列の画素G1の位置に(Xa、Ya)を格納する。以上の処理を撮像器20の全ての画素について行うことで、
図28(a)の全ての画素の位置のXY座標が特定され、第1位置の主像投影行列が完成する。第1位置の主像投影行列は、各画素に主像を形成するためには、光線が第1位置のどのXY座標を通るかを示すものである。
【0074】
図15の説明に戻り、次に、ステップS405~S408の処理を実行する。ステップS405~S408の処理は、画像処理部340の第2XY座標算出部342が第2位置(Far)の撮像データを読み出す以外は、ステップS401~S404の処理と同様である。結果として、第2位置の主像投影行列が作成される。
【0075】
第1位置の場合と同様にして、X座標線画像10xを移動させたときの虚像60xの画像のデータから、
図29に示すX2の線が位置P1を通る主像として表示されていることがわかったとする。つまり、X2のX座標をXb(既知)とすると、Xbを通る光線がWS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかったとする。
【0076】
又、Y座標線画像10yを移動させたときの虚像60yの画像のデータから、
図29に示すY2の線が位置P1を通る主像として表示されていることがわかったとする。つまり、Y2のY座標をYb(既知)とすると、Ybを通る光線がWS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかったとする。
【0077】
既にX座標がXbに特定されていることを合わせて考えると、XY座標が(Xb、Yb)である位置Pf1を通る光線が、WS50に反射されて位置P1に主像を生成していることがわかる。
【0078】
つまり、画素G1に対応する第2位置のXY座標(第2XY座標と称する場合がある)は(Xb、Yb)となる。そこで、
図28(b)に示すように、第2位置の主像投影行列の画素G1の位置に(Xb、Yb)を格納する。以上の処理を撮像器20の全ての画素について行うことで、
図28(b)の全ての画素の位置のXY座標が特定され、第2位置の主像投影行列が完成する。第2位置の主像投影行列は、各画素に主像を形成するためには、光線が第2位置のどのXY座標を通るかを示すものである。
【0079】
ステップS401~S404で得られた結果と、ステップS405~S408で得られた結果とを合わせて考えると、
図30に示すように、位置Pn1及びPf1を通る光線R1が、WS50に反射されて虚像表示領域600内の位置P1に主像を生成していることになる。なお、主像を生成する元となる光線を主像光線と称する場合がある。又、二重像を生成する元となる光線を二重像光線と称する場合がある。
【0080】
このようにして、虚像表示領域600内の任意の位置に表示される主像が、第1位置(Near)及び第2位置(Far)のどの位置を通過した光線により形成されたものであるかを特定できる。言い換えれば、第1位置の主像投影行列と第2位置の主像投影行列により、虚像表示領域600内の任意の位置に表示される主像が、第1位置(Near)及び第2位置(Far)のどの位置を通過した光線により形成されたものであるかを知ることができる。
【0081】
図15の説明に戻り、次に、ステップS409で、画像処理部340の光路特定部343は、主像光源位置行列を作成する。まず、光路特定部343は、記憶部であるRAM33等に予め記憶されているHUDユニットの光学系のCADデータを読み出し、読み出したCADデータに基づいてHUDユニットの凹面鏡及び光源の位置を特定する。なお、HUDユニットの光源とは、虚像の元になる画像が表示される液晶表示装置等である。
【0082】
次に、光路特定部343は、特定した凹面鏡及び光源の位置と主像光線の光路とに基づいて、主像光線の光路に光を出射する光源の出射位置を特定する。具体的には、光路特定部343は、
図30で求めた光線R1と凹面鏡との交点を求める。例えば、
図31に示すように、WS50の位置に対するHUDユニットの凹面鏡70及び光源80の位置が特定され、光線R1と凹面鏡70との交点I1が求められる。
【0083】
次に、光路特定部343は、凹面鏡70の交点I1の位置で反射する光線R2を求める。HUDユニットの光学系のCADデータから凹面鏡70の反射面の3次元形状や反射面の向き等が特定されているため、光線R2を求めることができる。
【0084】
次に、光路特定部343は、光線R2と光源80との交点I2を求める。HUDユニットのCADデータから光源80の位置が特定されているため、交点I2を求めることができる。つまり、第1位置の主像投影行列、第2位置の主像投影行列、及びHUDユニットの光学系のCADデータに基づいて、虚像60yの位置P1に主像を表示する場合の光源80の出射位置である交点I2を求めることができる。光路特定部343は、求めた交点I2の座標を、
図31に示すように主像光源位置行列の画素G1の位置に格納する。
【0085】
以上の処理を撮像器20の全ての画素について行うことで、全ての画素について光源80の出射位置のXY座標が特定され、主像光源位置行列が完成する。主像光源位置行列は、各画素に主像を形成するためには、光源80のどの位置から光線が出射されるかを示すものである。
【0086】
主像光源位置行列により、例えば、
図32に模式的に示すように、光源80の任意の出射位置に対する虚像表示領域600内の主像の表示位置を特定できる。なお、実際の光源80の出射位置は図示の数よりも遥かに多い。以上で、ステップS409の説明は終了である。
【0087】
図4の説明に戻り、次に、ステップS106では、光路特定部343は二重像光源位置を算出する。
図4のステップS106の詳細を
図33のフローチャートに示す。
【0088】
図33に示すステップS501~S509の処理は、光路特定部343が主像に代えて二重像を扱う以外は、
図15に示すステップS401~S409の処理と同様である。つまり、光路特定部343は、CADデータに基づいて特定したHUDユニットの凹面鏡及び光源の位置と二重像光線の光路とに基づいて、二重像光線の光路に光線を出射する光源の出射位置を特定する。結果として、
図31と同様の二重像光源位置行列が作成される。二重像光源位置行列により、光源80の任意の出射位置に対する二重像の表示位置を特定できる。
【0089】
次に、ステップS107では、画像処理部340のデータ算出部344は主像歪みを算出する。まず、画像処理部340は、記憶部であるRAM33等に予め記憶されているウィンドシールドのCADデータ(以降、ウィンドシールド(CAD)とする)を読み出す。そして、ウィンドシールド(CAD)を用いた場合に、光源80(
図32等参照)の各出射位置から出射した光線により虚像表示領域600のどの位置に主像が形成されるかを算出する。
【0090】
次に、データ算出部344は、光源80の同じ出射位置から出射した主像光線が記憶部から読み出したウィンドシールド(CAD)を用いた場合に形成する主像の位置と、測定対象となるWS50を用いた場合に形成する主像の位置とを比較し、両者の差分に基づいて主像歪みを算出する。データ算出部344は、光源80の全ての出射位置について、上記の差分に基づいて主像歪みを算出する。
【0091】
次に、ステップS108では、データ算出部344は二重像歪みを算出する。具体的には、データ算出部344は、光源80の同じ出射位置から出射した主像光線が生成する主像の位置と、光源80の同じ出射位置から出射した二重像光線が生成する二重像の位置とを比較し、両者の差分に基づいて二重像歪みを算出する。データ算出部344は、光源80の全ての出射位置について、上記の差分に基づいて二重像歪みを算出する。なお、光源80の同じ出射位置から出射した主像光線が生成する主像の位置と、二重像光線が生成する二重像の位置は、ステップS103からS106までの処理の中で既に得られている。
【0092】
次に、ステップS109では、データ算出部344は、ステップS107で算出した主像歪みとステップS108で算出した二重像歪みを所定の閾値と比較し、良否判定を行う。データ算出部344は、判定結果を検査結果出力部40に送信し、検査結果出力部40は検査結果を映像や音声、データ等で出力する。以上により、
図4に示す全ての処理が終了する。
【0093】
必要に応じ、検査装置1は、WS50を他のウィンドシールドに変えて検査を実行する。検査を実行する場合には、
図4のステップS101に移行して上記と同様の処理を繰り返す。なお、制御部30に測定条件を外部から入力する入力手段を設けておき、検査装置1の操作者が予め検査すべきウィンドシールドの個数を入力しておくようにしてもよい。この場合、制御部30が入力手段から入力された個数に到達したと判定するまで、ステップS101からS109までの処理が繰り返される。
【0094】
又、運転者の異なる視点位置に対応するため、同一のWS50に対して、撮像器20を順次異なる位置に変えて(移動させて)検査を行ってもよい。
【0095】
以上により、主像歪みと二重像歪みの測定についての説明は終了であるが、検査装置1は、主像歪みと二重像歪み以外に、ガラスのパラメータの検査も可能である。
【0096】
図34は、本実施形態に係る検査装置を用いたガラスのパラメータの検査方法を示すフローチャートの一例である。
【0097】
まず、ステップS601において、画像処理部340の光路特定部343は、WS50に入射する光線R1と主像視線E1との交点を求める。例えば、
図31に示した光線R1が特定できると、
図35(a)に示すように、光線R1に対する主像視線E1が特定できるので、光線R1と主像視線E1との交点を求めることができる。
【0098】
次に、ステップS602において、光路特定部343は、光線R1と主像視線E1の交点におけるWS50の車内側となる面である第4面M4の角度を算出する。主像はWS50の第4面M4で反射して生成されるので、入射角と反射角が等しいことを踏まえると、
図34(b)に示すように、光線R1と主像視線E1の交点におけるWS50の第4面M4の角度(水平面に対する角度)を算出できる。光線と主像視線の交点は全ての光線に対して求めることができるので、WS50の第4面M4全体の角度が求められる。
【0099】
次に、ステップS603において、画像処理部340のデータ算出部344は、WS50の車外側となる面である第1面M1の位置及び角度を算出する。
図34(c)に示すように、P5の位置に生成される二重像について考えると、この二重像は、第4面M4に入射する光線R5が第4面M4で屈折し、WS50の車外側の面となる第1面M1で反射し、再度第4面M4で屈折して生成される。第4面M4の角度は既に求めているため、第1面M1の位置及び角度を求めることができる。全ての二重像を考慮することで、WS50の第1面M1全体の位置及び角度が求められる。
【0100】
次に、ステップS604において、データ算出部344は、関連する項目を算出する。ここで、関連する項目とは、ステップS601~S603で得られた情報に基づいて算出される値であり、例えば、WS50の厚さや楔角の分布である。
【0101】
データ算出部344は、例えば、WS50の面の形状や楔角の分布を検査結果出力部40に送信し、検査結果出力部40は検査結果を映像や音声、データ等で出力する。或いは、データ算出部344は、WS50の面の形状や楔角の分布をウィンドシールドのCADデータと比較し、比較結果を検査結果出力部40に送信し、検査結果出力部40は比較結果を映像や音声、データ等で出力してもよい。
【0102】
このように、検査装置1において、第1XY座標算出部341は、画像表示器10が第1位置(Near)にあるときに、虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される検査用画像の点の第1XY座標を求める。又、第2XY座標算出部342は、画像表示器10が第2位置(Far)にあるときに、虚像の任意の点を形成するための元となる光線が出射される検査用画像の点の第2XY座標を求める。
【0103】
そして、光路特定部343は、虚像の同一の点を形成する際の元となる光線が出射される第1XY座標と第2XY座標を特定することで、虚像の表示領域全体の各点を形成するための元となる光線の光路を特定する。そして、データ算出部344は、光路特定部343が特定した光路やヘッドアップディスプレイユニットの光学系の設計データ(例えば、CADデータ)に基づいて、ガラスの品質に関連するデータとして、主像歪みのデータ、二重像歪みのデータ、ガラスの厚さのデータ、ガラスの楔角のデータ、ガラスの面形状のデータの何れか1つ以上を算出する。
【0104】
検査装置1によれば、HUDユニットを用いずに、HUDユニットの画像が投影されるガラスの品質の検査が可能となる。
【0105】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0106】
例えば、上記の実施形態では、第1位置(Near)と第2位置(Far)の2か所で取得したデータに基づいて、虚像の表示領域全体の各点を形成するための光が通過する光路を特定した。しかし、これには限定されず、Z方向の座標が異なる3か所以上で取得したデータに基づいて、虚像の表示領域全体の各点を形成するための光が通過する光路を特定してもよい。
【0107】
又、上記の実施形態では、座標が明らかなX座標線画像とY座標線画像とを移動させながら虚像の投影位置に対応する第1位置及び第2位置のXY座標を求める例を示した。しかし、これには限定されず、検査用画像として、例えば、X座標及びY座標の特定を同時に行える市松模様の画像や、色の違いで座標が判定できる模様の画像等を用いてもよい。これらの画像を用いた場合、撮像回数を減らせる点で好適である。
【符号の説明】
【0108】
1 検査装置
10 画像表示器
10x X座標線画像
10y Y座標線画像
20 撮像器
30 制御部
31 CPU
32 ROM
33 RAM
34 I/F
35 バスライン
40 検査結果出力部
50 ウィンドシールド(WS)
60、60x、60y 虚像
70 凹面鏡
80 光源
310 表示器位置決め部
320 表示器制御部
330 撮像器制御部
340 画像処理部
341 第1XY座標算出部
342 第2XY座標算出部
343 光路特定部
344 データ算出部
600 虚像表示領域