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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】スクラバー
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/78 20060101AFI20230816BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20230816BHJP
   B01D 53/46 20060101ALI20230816BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20230816BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20230816BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
B01D53/78
H01L21/205
B01D53/46 ZAB
B01D53/68 120
B01D53/14 200
C23C16/44 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019231315
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021098168
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100137017
【弁理士】
【氏名又は名称】眞島 竜一郎
(72)【発明者】
【氏名】石橋 直人
(72)【発明者】
【氏名】児玉 友弘
(72)【発明者】
【氏名】坂東 章
(72)【発明者】
【氏名】金田一 麟平
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-134419(JP,A)
【文献】特開2001-126988(JP,A)
【文献】特開2001-126990(JP,A)
【文献】特開2012-077924(JP,A)
【文献】特開2013-091026(JP,A)
【文献】特開2000-070662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/78
H01L 21/205
B01D 53/46
B01D 53/68
B01D 53/14
C23C 16/44
B01D 47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部でSiC薄膜の気相成長を行うことが可能な反応炉から、排気配管を流れ、排出される第1ガスを除害することが可能なスクラバーであって、
複数のガスが集合するガス収容部に、前記第1ガスを流す第1配管と、
前記第1配管の径方向外側に配置され、前記第1配管と二重配管構造を形成する第2配管と、
前記スクラバーの側壁に配置される第3配管と、を有し、
前記第2配管は、前記ガス収容部に前記第1ガスよりも高温の第2ガスを流す配管であり、
前記第3配管は、前記第1ガスの流れ方向に対して交差する向きに配置され、
前記第3配管は、前記ガス収容部に大気を流す配管である、スクラバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクラバーに関する。
【背景技術】
【0002】
化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)装置は、様々な層の成膜手段として広く用いられている。例えば、炭化ケイ素(SiC)のエピタキシャル膜の成長にも、化学気相成長装置が利用されている。
【0003】
CVD装置を用いた成膜では、反応炉内に原料ガスを供給し、基板表面に結晶を成長させる。反応炉内に供給されたガスのうち、反応炉内で反応しなかったプロセスガスは排気配管から排気される。排気配管を流れるプロセスガスの中には、例えば水素化物系ガスとしてシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシラン等のシラン系ガスが含まれる場合がある。これらのシラン系ガスは空気中に放出すると、自然発火する恐れがある。また、ジクロロシラン、トリクロロシラン、テトラクロロシランは大気と反応すると、塩化水素を発生する恐れがある。そのため、これらのシラン系ガスを含むプロセスガスは、空気中に放出される前に無害化処理をされる必要がある。
【0004】
特許文献1には、プロセスガスをアルカリ水溶液と接触させて、無害化処理するスクラバーのガスインレット部について開示されている。特許文献1に記載の発明は、水素化物系ガスと高濃度のアルカリ水溶液が急速に接触すると、析出物が生じるという事情を鑑みてなされた。特許文献1は、水素化物系ガスをアルカリ水溶液と直に接触するのではなく、濃度が低下した混合液の状態で接触するので、析出物の発生が抑制されると記載されている。
【0005】
プロセスガスの無害化処理は、スクラバーで行われる。特許文献2には、燃焼室を備えるスクラバーが開示されている。特許文献2のスクラバーは、燃焼室にプロセスガスと大気と燃料ガスとを導入し、燃焼させることでプロセスガスを無害化処理することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2013-91026号公報
【文献】特開2012-77924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載のように水素化物系ガスとアルカリ水溶液とが直に接触しない場合であっても、副生成物が発生する場合があった。例えば、特許文献2の方法では、燃焼室にプロセスガスを導入する管状のノズルの先端でプロセスガスによる副生成物が堆積し、さらにはノズルが閉塞してしまう。ノズルに堆積した副生成物を除去するためには、スクラバーの稼働を停止する必要があり、スループットが低減する。
【0008】
本発明は上記問題を鑑みてなされたものであり、副生成物が発生することを抑制することができるスクラバーの排ガス導入管を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の手段を提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様にかかるスクラバーの排ガス導入管は、内部でSiC薄膜の気相成長を行うことが可能な反応炉から、排気配管を流れ、排出される第1ガスを除害することが可能なスクラバーの排ガス導入管であって、前記スクラバーのガス収容部に前記第1ガスを流す第1配管と、前記第1配管の径方向外側に配置され、前記第1配管と二重配管構造を形成する第2配管と、を有し、前記第2配管は、前記ガス収容部に前記第1ガスよりも高温の第2ガスを流す配管である。
【0011】
(2)上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管において、前記第2配管は、前記ガス収容部に60℃以上400℃以下の第2ガスを流す配管であってもよい。
【0012】
(3)上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管において、前記第2配管の、前記第1ガスの流れ方向における下流側の第2先端の内径は、前記第1配管の、前記第1ガスの流れ方向における下流側の第1先端の外径よりも大きく、前記第2先端の内径と前記第1先端の外径との差が2mm以上10mm以下であってもよい。
【0013】
(4)上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管において、前記第2配管は、前記第2先端へ近づくに従い内径が小さくなる形状をしたテーパー部を有していてもよい。
【0014】
(5)上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管は、前記第1ガスの流れ方向において、前記第2配管の前記第2先端は、前記第1配管の前記第1先端よりも下流側に位置していてもよい。
【0015】
(6)上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管において、前記第2配管は、窒素、アルゴンから選ばれる少なくとも1つ以上のガスを流す配管であってもよい。
【0016】
(7)本発明の第2の態様に係るスクラバーは、内部でSiC薄膜の気相成長を行うことが可能な反応炉から、排気配管を流れ、排出される第1ガスを除害することが可能なスクラバーであって、複数のガスが集合するガス収容部に、前記第1ガスを流す第1配管と、前記第1配管の径方向外側に配置され、前記第1配管と二重配管構造を形成する第2配管と、前記スクラバーの側壁に配置される第3配管と、を有し、前記第2配管は、前記ガス収容部に前記第1ガスよりも高温の第2ガスを流す配管であり、前記第3配管は、前記第1ガスの流れ方向に対して交差する向きに配置され、前記第3配管は、前記ガス収容部に大気を流す配管である。
【発明の効果】
【0017】
上記態様に係るスクラバーの排ガス導入管によれば、副生成物が発生することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一態様に係る化学気相成長装置の模式図である。
図2】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図3】本発明の効果を説明するための比較例に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図4】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図5】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図6】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図7】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
図8】本発明の一態様に係るスクラバーの一部を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材料、数、配置、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、本発明の効果を奏する範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0020】
[化学気相成長装置]
図1は、第1実施形態にかかる化学気相成長装置100の構成を概略的に示す模式図である。化学気相成長装置100は、反応炉10と、排気配管20と、フィルタ30と、排気ポンプ40と、スクラバー50と、を備えている。反応炉10と、排気配管20と、フィルタ30と、排気ポンプ40と、は、公知のものを用いることができる。
【0021】
図1は、便宜上、反応炉10に供給されたプロセスガスGpの流れる向きが示されている。プロセスガスGpは、図1に示される通り、排気配管20、フィルタ30、排気ポンプ40、スクラバー50を流れる。プロセスガスGpとは、反応炉10に供給されるガスのことをいう。
【0022】
化学気相成長装置100において、プロセスガスGpが反応炉10に流入すると、反応炉10の内部ではSiC薄膜の気相成長が行われる。SiC薄膜とは、例えばSiCエピタキシャルウェハである。以下、SiCエピタキシャルウェハを成長する場合を例に本実施形態を説明する。プロセスガスGpは、反応炉10、排気配管20、フィルタ30等で消費される。消費されなかったプロセスガスGpは、スクラバー50の排ガス導入管1を通りスクラバー50内に流れ、スクラバー50で無害化処理され、大気に放出される。
【0023】
まず、方向について定義する。スクラバーの排ガス導入管1において、プロセスガス(第1ガス)Gpが流れる方向をz方向とする。以下、本明細書では説明の便宜上スクラバー50内へ導入されるプロセスガスを第1ガスG1という。z方向は、第1方向の一例である。また、z方向に対して垂直で、スクラバー50の中心から広がる方向を径方向とする。図2は、スクラバー50の中心軸に沿う任意の断面で切断した断面図である。
【0024】
<第1実施形態>
図2は、本実施形態にかかるスクラバー50の断面の一部を示す断面模式図である。図2では、説明の便宜上、排ガス導入管1の中心線と、排ガス導入管1からスクラバー50内へ導入される第1ガスG1および第2ガスG2をあわせて図示した。図2に示す例ではスクラバー50の中心軸と排ガス導入管1の中心軸とが一致している。以下、説明の便宜上、スクラバー50内へ導入されるプロセスガスを第1ガスGpという。
【0025】
スクラバー50は、第1ガスG1を無害化処理する装置である。スクラバー50は、排ガス導入管1を有する。第1ガスG1は、排ガス導入管1を流れて、スクラバー50内に導入される。また、スクラバー50のプロセスガスの流れ方向において、反応炉10に近い端を上端51と、上端51と接する側壁52と、を有する。
【0026】
排ガス導入管1は、径方向内側から第1配管1Aと、第2配管1Bと、で形成される二重配管構造を有する。第1配管1Aおよび第2配管1Bは、配管として用いられる任意の材料を用いることができる。第1配管1Aおよび第2配管1Bは、例えばSUS304やSUS316等のステンレス製の配管である。尚、可燃性ガスがプロセスガスGpに含まれない場合、第1配管1Aおよび第2配管1Bは上述した例に加え、塩化ビニル等を用いてもよい。第1配管1Aおよび第2配管1Bは、基本的にはSUS304で問題ないが、特にプロセスガスGpに腐食性のあるガスが含まれる場合は、SUS316等の耐食性に優れた材料が用いられることが好ましい。第2配管1Bは、第1配管1Aよりも熱伝導率が高い配管を用いてもよい。
【0027】
第2配管1Bの径方向外側に断熱材をさらに備えていてもよい。断熱材は、第2配管1Bの径方向外側に、第1方向の全域に亘って配置されていてもよいが、部分的に配置されていてもよい。例えば、第1ガスG1の流れ方向において、上端51よりも下流側のみに配置されていてもよい。
【0028】
第1配管1Aは、排気配管20を介して反応炉10とつながっている。第1配管1Aは、第1ガスG1を流す配管である。第1配管1Aの第1ガスG1の流れ方向における上流側の先端を第1根本11Aといい、下流側の先端を第1先端12Aという。第2配管1Bは、反応炉10とつながっていない。そのため、第2配管1Bと第1配管1Aとの間にはプロセスガスが流れない。第2配管1Bは、第1ガスG1よりも高温の第2ガスG2を流す配管である。第2配管1Bの第2ガスG2の流れ方向における上流側の先端を第2根本11Bといい、下流側の先端を第2先端12Bという。
【0029】
本明細書では、説明の便宜上、第1根本11Aと第2根本11Bをあわせて根本11という場合がある。また、第1先端12Aと第2先端12Bをあわせて先端12という場合がある。
【0030】
第1配管1Aの内径Rは、例えば30mm以上60mm以下であり、40mm以上50mm以下であることが好ましい。また、第2配管1Bの内径Rは、例えば40m以上75mm以下であり、45mm以上65mm以下であり、50mm以上60mm以下であることが好ましい。尚、ここでいう第1配管1Aの内径RAおよび、第2配管1Bの内径RBは、それぞれ、第1配管1Aおよび第2配管1Bの第1ガスG1の流れ方向における下流側の先端の内径のことをいう。すなわち第1配管1Aの内径Rとは、第1先端12Aの内径のことをいい、第2配管1Bの内径Rとは第2先端12Bの内径のことをいう。
【0031】
第1配管1Aの外径(R+W)は、例えば40mm以上65mm以下であり、45mm以上55mm以下であることが好ましい。また、第2配管1Bの外径(R+W)は、例えば45mm以上80mm以下であり、55mm以上65mm以下であることが好ましい。尚、ここでいう第1配管1Aの外径および、第2配管1Bの外径は、それぞれ、第1配管1Aおよび第2配管1Bの第1ガスG1の流れ方向における下流側の先端の外径のことをいう。すなわち第1配管1Aの外径(RA+WA)とは、第1先端12Aの外径のことをいい、第2配管1Bの外径(RB+WB)とは、第2先端12Bの外径のことをいう。
【0032】
また、第2配管1Bの内径Rと第1配管1Aの外径(R+W)との差は、例えば、2mm以上10mm以下であり、3mm以上7mm以下であることが好ましく、3mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0033】
第1配管1Aの厚さ(肉厚)WAおよび第2配管1Bの厚さ(肉厚)WBは、例えば2mm以上3mm以下にすることができる。厚さWAは、第1ガスG1を第2ガスG2であたためる観点から、薄い方が好ましい。一方、厚さWAが薄すぎると、第1ガスG1および第2ガスG2が混ざる恐れや強度が脆くなってしまう恐れがあるため、適度に厚いことが好ましい。厚さWBについても、強度が脆くならないよう、薄すぎない方が良い。
【0034】
第2配管1Bの厚さ(肉厚)は、第1配管1Aよりも厚くてもよい、薄くてもよい。しかしながら、第2配管1Bの厚さ(肉厚)WBは、第2ガスG2を断熱する観点から、第1配管1Aよりも厚い方が好ましい。
【0035】
第2ガスG2として流すことのできるガスは、第1ガスG1よりも高温のガスである。第2ガスG2は、第1ガスG1との反応性が低いガスであることが好ましい。第2ガスG2としては、例えば、窒素、希ガスから選ばれる1種以上のガスであることが好ましい。希ガスとしては、コストの観点からアルゴンが好ましく用いられる。
【0036】
第1ガスG1は、第2ガスG2により加熱される。第1ガスG1および第2ガスG2は、スクラバー50内部のガス収容部Rに流れる。ガス収容部Rとは、第1先端12Aおよび第2先端12Bよりも下流側の領域のことをいう。ガス収容部Rには、第1配管1Aから流れたガスおよび第2配管1Bを流れたガスが集合する。
【0037】
本実施形態にかかるスクラバーの排ガス導入管1は、第1先端12A周辺でも第1ガスG1の温度を高温にすることができる。また、第1ガスG1の外側に第2ガスG2を流すことで、先端11周辺でシランガスとスクラバー雰囲気中の水分が反応することを抑制することができる。従って、先端12周辺に第1ガスG1による副生成物の堆積を抑制することができる。例えば、第1配管1Aの内側や、第1配管1Aと第2配管1Bとの間に副生成物が堆積することを抑制することができる。すなわち、第1配管1Aの閉塞や第1配管1Aと第2配管1Bとの間の領域の閉塞を抑制することができる。以下、その理由について比較例を用いて説明する。
【0038】
<比較例>
図3は、比較例に係るスクラバー50Hの一部を示す断面模式図である。スクラバー50Hは、本発明に含まれない。スクラバー50Hの上端を上端51Hという。スクラバー50Hは、排ガス導入管1Hを有する。排ガス導入管1Hは、排気配管を介して反応炉に接続している。比較例1に係るスクラバー50Hは、排ガス導入管1Hが一重構造である点がスクラバー50と異なる。
【0039】
排ガス導入管1Hは、プロセスガス(第1ガス)G1をスクラバー50H内部へ導入する。排ガス導入管1Hの両端のうち、第1ガスの流れ方向における上流側の端を根本11Hといい、下流側の端を先端12Hという。
【0040】
第1ガスG1は、根本11Hから先端12Hへ近づくに従い、温度が低下する。温度が低下すると副生成物が生成されやすくなる。スクラバー50Hを用いると、温度が低下し、先端12Hの周辺に副生成物が堆積し、閉塞してしまう。この副生成物は、例えばプロセスガス中のSi系ガスが、スクラバー1内雰囲気中の水分により加水分解反応等を起こして生成する。
【0041】
第1ガスG1を加熱する方法としては、第1ガスG1の流れ方向において、排ガス導入管1Hのうち、スクラバー50Hの上端51Hより上流側の部分をヒータで加熱する手段がある。ヒータとしては、例えば、リボンヒータなどが用いられる。しかしながら、用いるヒータの種類や設定温度にもよるが、この方法では、先端12H周辺での、第1ガスG1による副生成物の堆積を抑制することができず、排ガス導入管1Hが閉塞する場合もあった。
【0042】
また、第1ガスG1を加熱する方法としては、第1ガスG1に高温の窒素を混ぜ、同じ管から流す手段もある。窒素は、特開2013-235945号公報に記載のような公知の流体の加熱装置などを用いて加熱し、流すことができる。排ガス導入管1Hの径の大きさには限りがある。反応炉から排出されるプロセスガスの流量は、SiCエピタキシャルウェハの成長に最適化されたものである。排ガス導入管1Hから流すことのできるガスの総流量は、配管により限界がある。プロセスガスの流量が多い場合、高温の窒素を流すことのできる量は少なくなる。すなわち、排ガス導入管1Hを流れるガスの総流量のうち、プロセスガスの比率が高まる。排ガス導入管1Hの中では、大量のプロセスガスと高温の窒素とが混ざる。高温の窒素は、プロセスガスと混ざると冷やされてしまう。この現象は、大量のプロセスガスが流される場合に顕著であり、高温の窒素は急激に冷やされてしまう。そのため、この方法では、先端12H周辺での副生成物の堆積を抑制することができなかった。第1ガスG1をより高温に温める方法としては、排ガス導入管1Hの径を大きくし高温の窒素の流量を増やし、高温の窒素の比率を増やす方法もあるが、効率が悪く、コストも多くかかってしまう。
【0043】
これに対し、第1実施形態にかかるスクラバー50の排ガス導入管1は、排ガス導入管1が二重配管構造をしている。そのため、第1ガスG1の流路と第2ガスG2の流路とを分けることができる。第1ガスG1は第1配管1Aの内側を流れ、第2ガスG2は第1配管1Aの外側かつ第2配管1Bの外側を流れる。上端51からの第2配管1Bの長さは、上端51からの第1配管1Aの長さと同じ長さであり、先端12周辺でも第1ガスG1を加熱することができる。第1ガスG1は、第1配管1Aを介して第2ガスG2にあたためられる。第2ガスG2は、第1ガスG1と直接触れないため、第2ガスG2は冷やされづらい。従って、効率的に第1ガスG1をあたためることができる。また第2ガスG2が第1ガスG1の径方向外側を流れることで、第1ガスとスクラバー雰囲気中の水分が反応することを抑制できる。そのため、先端12周辺で副生成物が発生することおよび排ガス導入管1Hが閉塞することを抑制できる。
【0044】
尚、図2では排ガス導入管1が1つの場合を示したが、本実施形態にかかるスクラバー50はこの例に限定されない。排ガス導入管1の数は用途に応じて、適宜選択することができる。例えば、スクラバー50において、排ガス導入管1は、例えば2つ以上設けられてもよいし、4つ以上設けられてもよい。複数の排ガス導入管1を有する場合、例えば、複数のチャンバーから排気される排ガスをスクラバー内に導入することができる。
【0045】
尚、図2では、第1ガスG1の流れ方向における第1先端12Aと第2先端12Bとの位置が同じ場合を示した。しかしながら、本実施形態にかかるスクラバーの排ガス導入管1は、この例に限定されない。具体的には、第1ガスG1の流れ方向において、第2先端12Bが、第1先端12Aよりも下流側に位置していてもよい。
【0046】
すなわち、上端51から第1先端12Aまでの長さと第2先端12Bまでの長さをそれぞれ長さLA、長さLBとすると、長さLBが長さLAよりも長くてもよい。
【0047】
尚、排ガス導入管1は、スクラバー50の一部である。本実施形態では、ガスは、排ガス導入管1を流れて、スクラバー50内に導入される等の記載をしているが、ここでいうスクラバー50内とは、第1ガスG1の流れ方向において、スクラバー50のうち先端12よりも下流側の領域のことをいう。第2ガスG2についての同様な表現についても同様である。
【0048】
<変形例1>
図4は、変形例1にかかるスクラバー50Xの一部を示す断面模式図である。スクラバー50Xは、排ガス導入管1Xの第2配管1BXが、テーパー部13を有する点がスクラバー50と異なる。テーパー部13は、第2先端12BXへ近づくに従い、内径が小さくなる形状をしている。すなわち、テーパー部13は、第2ガスG2の流れ方向において下流側ほど窄んでいる。スクラバー50と同一の構成は、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0049】
第2配管1BXにおけるテーパー部13の配置は、任意に選択することができる。すなわち、テーパー部13の角度θやテーパー部13の長さは、任意に選択することができる。尚、第2配管1BXの内径RBとは、本変形例においても、第2先端12Bの内径のことをいう。第2配管1BXの内径と第1配管1Aの外径との差とは、径方向における第2先端1BXと第1配管1Aとの距離である。
【0050】
変形例1に係るスクラバー50Xを用いた場合であっても、第1実施形態に係るスクラバー50を用いた場合と同様な効果を得ることができる。また、変形例1に係るスクラバー50Xを用いた場合、第2ガスG2を第1先端12Aの近傍に集束することができる。そのため、第1ガスG1が第1先端12Aの近傍で低温になることを効果的に抑制することができる。従って、第1先端12A近傍における副生成物の堆積を効果的に抑制することができる。
【0051】
<変形例3>
図5は、変形例3にかかるスクラバー50´の一部を示す断面模式図である。スクラバー50´は、排ガス導入管1´の第1配管1A´および第2配管1B´の配置が、スクラバー50と異なる。第1配管1Aの第1先端12A´および第2配管1Bの第2先端12B´は、上端51に位置する。すなわち、長さLおよびLは、0である。スクラバー50と同一の構成は、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0052】
変形例3に係るスクラバー50´を用いた場合であっても、第1実施形態に係るスクラバー50を用いた場合と同様な効果を得ることができる。先端12を上端51と同じ高さに配置し、かつ第2配管1B´の外側に断熱材を巻いた場合、先端12周辺における保温効果が一層高まり、以下で詳述する第3ガスのような保安排気などで冷却される影響を低減することができる。
【0053】
<第2実施形態>
図6は、第2の実施形態に係るスクラバー50Yの一部を示す断面模式図である。スクラバー50Yは、第3配管6を有する点が第1実施形態に係るスクラバー50と異なる。スクラバー50と同一の構成は、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0054】
第3配管6は、スクラバー50Yの側壁52に、第1ガスG1の流れ方向に対して交差する向きに配置される。ここでいう、第1ガスG1の流れ方向に対して交差する向きに配置されるとは、スクラバー50Yと角度αで接続される。第3配管6とスクラバー50Yと角度αで配置されることをいう。角度αは、例えば30°以上90°以下であり、45°以上90°以下であることが好ましく、60°以上90°以下であることがより好ましい。
【0055】
第3配管6は、スクラバー50Yのガス収容部Rに第3ガスG3を流す配管である。第3ガスG3は、第3排気口60からスクラバー50Yへ導入される。第3排気口60は、スクラバー50Yの側壁52に設けられる。第3排気口60は、上端51に近い第1端60Tと、上端51から離れた第2端60Bと、を有する。第3排気口60は、z方向において任意の位置に設けることができる。また、第3排気口60と第2先端12Bとは、第1ガスG1の流れ方向において、同じ位置に配置されること好ましい。すなわち、第1ガスG1の流れ方向において、上端51から第2先端12Bの長さは、上端51から第1端60Tの長さより大きいことが好ましく、上端51から第2端60Bの長さより小さいことが好ましい。第1端60Tと第2端60Bとの中点と、先端12と、の上端51からの距離が等しくなるように配置されていることがより好ましい。
【0056】
第3ガスG3は、保安排気ガスである。第3ガスG3は、例えば、大気、窒素およびその他不活性ガスから選択される少なくとも一種以上のガスである。本実施形態においてガス収容部Rとは、第1先端12Aおよび第2先端12Bよりも、第1ガスG1の流れ方向において下流側の領域であり、ことをいう。ガス収容部Rには、排ガス導入管1を流れたガスが集合する。すなわち、第1ガスG1と、第2ガスG2と、第3ガスG3と、が集合する。
【0057】
本実施形態に係るスクラバー50Yは、第1実施形態に係るスクラバー50を用いた場合と同様な効果を得ることができる。スクラバー50Yは、第3ガスG3として、例えば大気を用いた場合であっても、第2ガスG2が第1ガスG1の径方向外側に流れるため、大気中の水分と第1ガスG1とが反応することを抑制できる効果が大きい。また、第2実施形態にかかるスクラバー50Yを用いた場合、第3配管から導入する第3ガスG3により、第1ガスG1の流路を制御し、乱流を抑制することができる。
【0058】
<変形例3>
図7は、変形例3に係るスクラバー50Zの一部を示す断面模式図である。スクラバー50Zは、排ガス導入管1Zの構造がスクラバー50Yと異なる。スクラバー50Yと同一の構成は、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0059】
排ガス導入管1Zの第1配管1AZの第1先端12AZおよび第2配管1BZの第2先端12BZは、径方向に対して傾斜している。具体的には、第1ガスG1の流れ方向における上端51からの長さが第1先端12AZよりも第2先端12BZの方が長くなるように傾斜している。図7において排ガス導入管1Zは、先端12Zが一直線上になるように、配置されている。しかしながら、変形例3にかかるスクラバー50Zは、この例に限定されず、例えば、第1先端12AZの形成する直線の方が、第2先端12BZの形成する直線よりも上端51側に位置していてもよい。
【0060】
径方向と排ガス導入管1Zの先端12Zとの角度βは、任意に選択することができる。角度βは、任意に選択できるが、例えば0°以上60°以下や、0°以上45°以下等である。
【0061】
スクラバー50Zでも、スクラバー50Yと同様の効果を得ることができる。また、排ガス導入管1Zは、先端12Zが径方向に対して傾斜しており、かつ、第3排気口60から第3ガスG3を導入することで、第1ガスG1の流速を効果的に高めることができる。
【0062】
なお、第3排気口60がスクラバー1Zの断面53と平行になるようにスクラバー50Zの形状が制御されていてもよい。すなわち、第3排気口60から第3ガスG3がスクラバー50Z内部に直線的に流れるように配置されていてもよい。
【0063】
<SiCエピタキシャルウェハの製造方法>
本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、上記実施形態にかかる化学気相成長装置100を用いて、SiCエピタキシャルウェハを製造する。本実施形態にかかるSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、排ガス導入管1を介してスクラバー50内へ第1ガスG1および第2ガスG2を導入する工程と、スクラバー50で第1ガスG1を無害化処理する工程と、を有する。
【0064】
本実施形態に係るSiCエピタキシャルウェハの製造方法は、上記実施形態に係るスクラバーを用い、スクラバー50の排ガス導入管1の第2配管1Bに第2ガスG2を流す点以外は、公知の方法でSiCエピタキシャルウェハを製造することができる。
【0065】
第1ガスG1は、排ガス導入管1の第1配管1Aを通り、スクラバー50内へ導入される。また、第2ガスG2は、排ガス導入管1の第2配管1Bを通り、スクラバー50内へ導入される。尚、第2ガスG2の流路は、第1配管1Aと第2配管1Bとの間の隙間である。
【0066】
第1ガスG1は、例えば、排ガス導入管1の内部や先端12等で反応し、副生成物を形成する場合がある。第1ガスは、例えば、「Si系ガス」、「C系ガス」、「Cl系ガス」、「ドーパントガス」、「その他のガス」に区分される5種類のガスが用いられる。
【0067】
「Si系ガス」は、ガスを構成する分子の構成元素としてSiが含まれるガスである。例えばシラン(SiH)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)等が該当する。本実施形態では、これらのSiとClとのいずれも含むガスをシラン系ガスという。Si系ガスは、原料ガスの一つとして用いられる。
【0068】
「C系ガス」は、ガスを構成する分子の構成元素としてCが含まれるガスである。例えば、プロパン(C)等が該当する。C系ガスは、原料ガスの一つとして用いられる。
【0069】
「Cl系ガス」は、ガスを構成する分子の構成元素としてClが含まれるガスである。例えば、塩化水素(HCl)、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)等が該当する。ここで、ジクロロシラン(SiHCl)、トリクロロシラン(SiHCl)、テトラクロロシラン(SiCl)は、上記のSi系ガスでもある。これらのガスのように、「Cl系ガス」であり、「Si系ガス」であるという場合もある。Cl系ガスは、原料ガス又はエッチングガスとして用いられる。
【0070】
「ドーパントガス」は、ドナー又はアクセプター(キャリア)となる元素を含むガスである。N型を成長するための窒素、P型を成長させるためのトリメチルアルミニウム(TMA)やトリエチルアルミニウム(TEA)などがドーパントガスとして用いられる。
【0071】
「その他のガス」は、上記の4つの区分のガスに該当しないガスである。例えば、Ar、He、H等が該当する。これらのガスは、SiCエピタキシャルウェハの製造のサポートをするガスである。例えばこれらのガスは、原料ガスがSiCウェハまで効率的に供給するためにガスの流れをサポートする。
【0072】
Siガスは、加水分解すると副生成物を生み出す場合がある。この副生成物は堆積物となる。尚、この副生成物の粘性は、Siガスがシラン系ガスであると、高くなる。
【0073】
第1ガスG1の流量は、任意に選択することができる。例えば、30(L/min)以上300(L/min)以下であり、100(L/min)以上200(L/min)以下であることが好ましい。第1ガスG1の流速は、第1ガスG1流量、第1配管1Aの大きさに応じて決定される。
【0074】
第2ガスG2は、第1ガスG1より高温のガスが用いられる。そのため、第2ガスG2により第1ガスG1を加熱することができる。第2ガスG2は、例えば、窒素、希ガスなどが好ましく用いられる。第2ガスG2は、第1ガスG1の先端12周辺における温度が、排気配管20の設定温度と同じになるように第1ガスG1を加熱することが好ましい。
【0075】
第2ガスG2の流量は、任意に選択することができる。例えば、10(L/min)以上150(L/min)以下であり、20(L/min)以上50(L/min)以下であることが好ましい。第2ガスG2の流速は、第2ガスG2流量、第2配管1Bと第1配管1Aとの隙間の大きさに応じて決定される。第2ガスG2の流速は、例えば、0.5(M/S)以上3(M/S)以下であり、1(M/S)以上2(M/S)以下であることが好ましい。第2ガスG2の流速を当該範囲に設定することで、副生成物が形成されることをより効果的に抑制できる。
【0076】
第2ガスG2は、公知の方法で加熱される。例えば、図示しないヒートビームシリンダ等を用いて加熱される。第2ガスG2の温度は、例えば、先端12周辺での第1ガスG1の温度が、排気配管20の設定温度と同じになるように設定される。第2ガスG2の温度は、第1ガスG1より高温であり、例えば、60(℃)以上400(℃)以下であることが好ましく、100(℃)以上350(℃)以下であることがより好ましく、200(℃)以上300(℃)以下であることがさらに好ましい。当該範囲にすることで、プロセスガスが液化しない程度に温めることができ、効果的に堆積を抑制できる。高温すぎると、配管を設置するために用いられるシール部材が劣化してしまう恐れがある。
【0077】
スクラバー50内へ導入された第1ガスG1は、公知の方法で無害化処理される。この例に限定されるものではないが、例えば、水との気液接触により無害化処理される。また、気液接触をした後、さら燃焼除害等を行ってもよい。尚、気液接触する具体的な構成については図示を省略しているが、公知の手法をとることができる。
【0078】
上述のように、本実施形態にかかる化学気相成長装置100によれば、第1ガスG1を加熱することができ、副生成物が堆積することを抑制できる。また、排ガス導入管1が閉塞してしまうことを抑制できる。その結果、化学気相成長装置100の稼働時間が長くなり、化学気相成長装置100のスループットが高まる。
【実施例
【0079】
<実施例1>
排ガス導入管1Zを4本備えたスクラバー50Jを用いてシミュレーションを行った。説明の便宜上、4本の排ガス導入管1Zをそれぞれ、1Z1、1Z2、1Z3、1Z4とする。4本の排ガス導入管1Zは、スクラバー50Jの中心軸に対して点対称に配置されている。また、排ガス導入管1Z1と排ガス導入管1Z4および排ガス導入管1Z2と排ガス導入管1Z3は、それぞれ排ガス導入管6に対して対称に配置されている。4本の排ガス導入管1Z1、1Z2、1Z3及び1Z4は、何れも同じ規格の第1配管および第2配管を用いた。図8は、シミュレーションを行ったスクラバー50Jの要部を示す断面模式図である。
【0080】
このシミュレーションは、ANSYS社製の流体解析ソフト「FLUENT」を用いて行った。当該シミュレーションは、実際の実験結果と高い相関を有することが確認されている。シミュレーションは、以下の条件で行った。尚、以下の条件における符号は、図示した構成との対応の理解をわかりやすくするために便宜上記載されたものであり、上記実施形態は以下の数値に限定されるものではない。排ガス導入管1Z1、1Z2、1Z3及び1Z4からは、いずれも同じ条件で第1ガスG1および第2ガスG2が流れていることを想定している。第2ガスG2としてはNを想定している。対称性の観点から、排ガス導入管1Z1および排ガス導入管1Z4、排ガス導入管1Z2および排ガス導入管1Z3は、それぞれ同じ結果が得られる。そのため、以下では排ガス導入管1Z3と排ガス導入管1Z4とについての結果についての記載を省略する。
【0081】
排ガス導入管1Zの第1配管の内径:43.0(mm)
排ガス導入管1Zの第1配管の外径:48.6(mm)
排ガス導入管1Zの第2配管の内径:54.9(mm)
排ガス導入管1Zの第2配管の外径:60.5(mm)
第1根本11AZ1および第1根本11AZ2近傍における第1ガスG1の温度:60(℃)
第1ガスG1の内訳:H=92200(sccm)、Ar=31550(sccm)、SiHCl=471(sccm)、C=180.6(sccm)、
HCl=1884(sccm)、N=34300(sccm)
第2根本11BZ1および第2根本11BZ2近傍における第2ガスG2の温度:60(℃)
第2ガスの流速:2.1(m/s)
第3ガスG3の流量:41.5(m/min)
【0082】
上記シミュレーションを行ったところ、排ガス導入管1Z1の第1配管における先端12Z1近傍における温度T1は56.0(℃)で、排ガス導入管1Z2の第1配管における先端12Z2近傍における温度T2は57.0(℃)であった。実施例1では、第1配管1Aとして40(A)の配管を用い、第2配管1Bとして50(A)の配管を用いた。
【0083】
<実施例2~実施例6>
実施例2~実施例6は、第2ガスの流量を実施例1から変更した。それぞれの実施例で第2ガスの流量の変更にともない、第2ガスの流速が変化したので併せて記載しておく。その他の条件は、実施例1と同様とした。排ガス導入管1Z1の第1配管における先端12Z1近傍における温度T1、および、排ガス導入管1Z2の第1配管における先端12Z2近傍における温度T2の結果を表1に示す。便宜上、表1には、実施例1の条件および結果も併せて記載する。
【0084】
【表1】
【0085】
<比較例1~比較例9>
比較例1は、排ガス導入管を第1配管のみからなる構成に変更した。すなわち、実施例1の排ガス導入管1Z1および1Z2の第2配管を取り除いた。第1配管としては、実施例1と同じ配管を用いた。また、第1配管からは、実施例1で流した第1ガスG1に加えて、高温のNを流した。比較例2~比較例9も同様にして行った。比較例1~比較例9における、高温のNの温度および流量と、その結果を表2および表3に示す。尚、表中に示すNの温度とは、根本11H近傍における温度である。
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
実施例1~6は、比較例1~9と比べて、第1ガスG1を温めるために導入するガスの温度が低いにも関わらず、第1ガスG1をより高温にすることができる。例えば、実施例4の第2ガスの流量と比較例2、5、8のNの流量とは、同じであり、比較例2、5、8の方が高温のNを流したが、実施例4の方が第1ガスを高温に加熱することができた。また、実施例5の第2ガスの流量と比較例1、4、7のNの流量とは同じであり、比較例1,4,7の方が高温のNを流したが、実施例5の方が第1ガスを高温に加熱することができた。そのため、実施例1~6の方が、比較例1~9よりも配管に副生成物が発生することを抑制できる。
【0089】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1:排ガス導入管
1A:第1配管
1B:第2配管
10:反応炉
11:根本
11A:第1根本
11B:第2根本
12:先端
12A:第1先端
12B:第2先端
20:排気配管
30:フィルタ
40:排気ポンプ
50:スクラバー
6:第3配管
60:第3排気口
100:化学気相成長装置
R:ガス収容部
Gp:プロセスガス
G1:第1ガス
G2:第2ガス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8