(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ノンハロゲン樹脂組成物、電線およびケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 3/44 20060101AFI20230816BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20230816BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230816BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230816BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230816BHJP
H01B 7/295 20060101ALI20230816BHJP
H01B 7/02 20060101ALI20230816BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20230816BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20230816BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
H01B3/44 F
C08L23/26
C08L23/08
C08K3/22
C08K3/04
H01B7/295
H01B7/02 Z
H01B7/18 H
H01B3/44 G
H01B3/44 M
H01B3/44 P
C08L23/04
C08L23/00
(21)【出願番号】P 2020002733
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2021-06-11
(31)【優先権主張番号】P 2019015675
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 周
(72)【発明者】
【氏名】木部 有
(72)【発明者】
【氏名】中村 孔亮
(72)【発明者】
【氏名】梶山 元治
(72)【発明者】
【氏名】橋本 充
【審査官】松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024910(JP,A)
【文献】特開2016-037515(JP,A)
【文献】特開2016-089005(JP,A)
【文献】特開2014-101455(JP,A)
【文献】特開2016-091666(JP,A)
【文献】特開2015-000913(JP,A)
【文献】特開2010-235771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 - 101/16
H01B 3/16 - 3/56
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、前記導体を被覆し、ノンハロゲン樹脂組成物から形成される絶縁層を備える電線において、
前記ノンハロゲン樹脂組成物は、ベースポリマと金属水酸化物とカーボンブラックとを含み、架橋されたノンハロゲン樹脂組成物であって、
前記ベースポリマは、ポリオレフィンを60~70質量部含有し、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを10~35質量部含有し、
MFRが10g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体を5~30質量部含有し、
前記金属水酸化物は、前記ベースポリマ100質量部に対して、150~250質量部の割合で含有し、
前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、1~30質量部の割合で含有し、
前記ポリオレフィンの融点は110℃以上であり、
前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸(CH
3COO-)の含有量が前記ベースポリマに対し6質量%以上であり、
ゲル分率が85%以上である、電線。
【請求項2】
請求項1記載の電線において、
前記ベースポリマの前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量は25~35質量部である、電線。
【請求項3】
請求項1記載の電線において、
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンである、電線。
【請求項4】
絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆し、ノンハロゲン樹脂組成物から形成される外被層を備えるケーブルにおいて、
前記ノンハロゲン樹脂組成物は、ベースポリマと金属水酸化物とカーボンブラックとを含み、架橋されたノンハロゲン樹脂組成物であって、
前記ベースポリマは、ポリオレフィンを60~70質量部含有し、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを10~35質量部含有し、
MFRが10g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体を5~30質量部含有し、
前記金属水酸化物は、前記ベースポリマ100質量部に対して、150~250質量部の割合で含有し、
前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、1~30質量部の割合で含有し、
前記ポリオレフィンの融点は110℃以上であり、
前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸(CH
3COO-)の含有量が前記ベースポリマに対し6質量%以上であり、
ゲル分率が85%以上である、ケーブル。
【請求項5】
請求項4記載のケーブルにおいて、
前記ベースポリマの前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量は25~35質量部である、ケーブル。
【請求項6】
請求項4記載のケーブルにおいて、
前記ポリオレフィンは、ポリエチレンである、ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンハロゲン樹脂組成物、電線およびケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両、自動車などに使用されるケーブルには難燃性、耐油性、低温性などの特性が要求される。高い難燃性を得るには、ポリオレフィンに、塩素系や臭素系といったハロゲン系難燃剤を添加した材料が用いられている。しかし、これらハロゲン系難燃剤を大量に含む物質は、燃焼時に、有毒、有害なガスを多量に発生し、焼却条件によっては猛毒のダイオキシンを発生させる。このことから、火災時の安全性や環境負荷低減の観点からハロゲン物質を含まないノンハロゲン材料(ハロゲンフリー材料)を被覆材料に使用したケーブルが普及してきている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002-42575号公報)には、エチレン・酢酸ビニル共重合体を含有するベース樹脂100質量部に対し金属水和物150~300質量部を含有させることで、絶縁電線の難燃性を向上させる技術が開示されている。
【0004】
しかしながら、ノンハロゲン材料は、従来のハロゲン含有の材料と比較し、ベースポリマの化学構造上の違いや難燃作用メカニズムの違いから、難燃性、耐油性、低温特性に劣る傾向がある。
【0005】
特に、鉄道車両に使用される絶縁電線及びケーブルは、その不具合により大事故につながる危険性があることから、EN規格(EN50264、50306等)で、高い難燃性の他、耐油性、低温特性が要求されている。
【0006】
例えば、特許文献2(特開2014-24910号公報)には、LLDPEを60~70質量%、メルトフローレイト(MFR)が100以上のEVAを10質量%以上、及びマレイン酸変性ポリオレフィンを10~20質量%含有するベースポリマと、前記ベースポリマ100質量部に対して、150~220質量部の割合で添加された金属水酸化物と、カーボンブラックとからなるハロゲンフリー難燃性樹脂組成物を用いることで、難燃性を有し、耐油性、低温特性、耐外傷性を向上させたケーブルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-42575号公報
【文献】特開2014-24910号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、ケーブルの外被層や絶縁電線の絶縁層のような被覆材の研究・開発に従事しており、被覆材であるポリマとして、ノンハロゲン材料を用い、難燃性の他、耐油性、低温特性が良好な樹脂組成物を検討している。例えば、上記特許文献2に記載の樹脂のように、粘度の大きく異なるポリマをブレンドする場合、ポリマの分散性が悪くなり、また、高い低温特性の要求される分野ではこのような樹脂の適用が難しくなることに直面し、被覆材としての樹脂の更なる特性の向上が望まれていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、難燃性、耐油性、低温特性が良好なノンハロゲン樹脂組成物およびこれを用いた絶縁電線やケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の一態様のノンハロゲン樹脂組成物は、ベースポリマと金属水酸化物とカーボンブラックとを含むノンハロゲン樹脂組成物であって、前記ベースポリマは、ポリオレフィンを60~70質量部含有し、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを10~35質量部含有し、エチレン酢酸ビニル共重合体を5~30質量部含有し、前記金属水酸化物は、前記ベースポリマ100質量部に対して、150~250質量部の割合で含有し、前記カーボンブラックは、前記ベースポリマ100質量部に対して、1~30質量部の割合で含有し、前記ポリオレフィンの融点は110℃以上であり、架橋後のゲル分率が85%以上である。
【0011】
(2)例えば、前記ベースポリマの前記無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量は25~35質量部である。
【0012】
(3)例えば、前記ポリオレフィンは、ポリエチレンである。
【0013】
(4)例えば、前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸(CH3COO-)の含有量が前記ベースポリマに対し2.3質量%以上である。
【0014】
(5)例えば、前記エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸(CH3COO-)の含有量が前記ベースポリマに対し6質量%以上である。
【0015】
(6)本発明の一態様の電線は、前記ノンハロゲン樹脂組成物から形成される絶縁層を備える。
【0016】
(7)本発明の一態様のケーブルは、前記ノンハロゲン樹脂組成物から形成される外被層を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様のノンハロゲン樹脂組成物を絶縁電線やケーブルの被覆材として用いることにより、難燃性、耐油性、低温特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施の形態)
ケーブルの外被層や絶縁電線の絶縁層のような被覆材は、ノンハロゲン樹脂組成物よりなる。よって、かかるノンハロゲン樹脂組成物は、ノンハロゲン絶縁電線またはノンハロゲンケーブルに好適に用いられる。
【0020】
[ノンハロゲン樹脂組成物]
ノンハロゲン樹脂組成物は、ベースポリマと、金属水酸化物と、カーボンブラックとを有する。
(ベースポリマ)
ベースポリマは、ポリオレフィン、無水マレイン酸変性ポリオレフィンおよびエチレン酢酸ビニル共重合体を有する。
【0021】
(1)ポリオレフィン
ポリオレフィンとして、110℃以上の融点を有する。融点は、示差走査熱量測定(DSC)法にて求めることができる。このような110℃以上の融点を有するポリオレフィンを用いることで、耐油性を向上させることができる。
【0022】
耐油試験としては、試験片を、100℃に加熱したIRM902試験油に72時間浸漬した後、引張特性を調べ、浸漬後の引張特性が浸漬前の引張特性に対してどの程度変化したかを確認する方法がある。例えば、融点が110℃を下回ると、耐油試験中に結晶が融解し油の拡散を防ぐことが難しくなり、引張特性の変化率が大きくなる。
【0023】
融点が110℃以上のポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ただし、高密度ポリエチレンは結晶化度が高すぎて、破断伸びが低く、ポリプロピレンは電子線照射などの架橋において崩壊し易い。特性のバランスを得るには低密度ポリエチレンを用いることが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがより好ましい。
【0024】
ポリオレフィンの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、60~70質量部とする。60質量部未満では耐油性が不十分であり、70質量部より多いと、破断伸びを十分に得ることができない。また、低分子量のポリエチレンを用いる場合、分子の絡み合いが無くなり、伸びが低下するためMFR(メルトフローレイトJIS K 7210 190℃ 2.16kg荷重)が10g/10min以下のものを用いることが好ましい。
【0025】
(2)無水マレイン酸変性ポリオレフィン
無水マレイン酸変性ポリオレフィンとは、ポリオレフィンを無水マレイン酸で変性したものである。
【0026】
変性する材料として用いることができるポリオレフィンとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体などのエチレン-α-オレフィンなどを用いることができる。中でも、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-ヘキセン-1共重合体、エチレン-オクテン-1共重合体は、結晶が少なく、ワイラー受容性に優れるので無水マレイン酸変性ポリオレフィンの材料として用いることが好ましい。
【0027】
ポリオレフィンを無水マレイン酸で変性する方法は限定されず、熱のみの反応でも得ることができる。また、無水マレイン酸変性ポリオレフィン中の無水マレイン酸はグラフト共重合していてもよく、また、ブロック共重合していてもよい。
【0028】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、10~35質量部とする。10質量部未満では必要な低温特性を満足することができず、35質量部より多いと、初期の破断伸びが不足する。
【0029】
より高い低温特性を得るためには、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量を、ベースポリマ100質量部に対し、25~35質量部とすることがより好ましい。
【0030】
(3)エチレン酢酸ビニル共重合体
ベースポリマとして、エチレン酢酸ビニル共重合体を用いることで、燃焼時において脱酢酸による吸熱反応が生じ、難燃性を向上させることができる。ベースポリマ100%中の酢酸量(CH3COO-の量)を2.3質量%以上とすることで高い難燃性を得ることができ、また、6質量%以上とすることで更に高い難燃性を得ることができる。また、ポリオレフィンとブレンドする際、粘度差が大きいと、分散性が悪くなり、低温特性が低下するため、MFR(メルトフローレイトJIS K 7210 190℃ 2.16kg荷重)が10g/10min以下のエチレン酢酸ビニル共重合体を用いることが好ましい。
【0031】
(金属水酸化物)
ベースポリマに、金属水酸化物を添加する。この金属水酸化物は難燃剤である。金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等を用いることができる。中でも、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。水酸化カルシウムの分解時の吸熱量は、約1000J/gであるのに対して、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムの吸熱量は、1500~1600J/gであり、吸熱量が高い。このため、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを添加することにより、難燃性が向上する。
【0032】
さらに、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。水酸化マグネシウムは水酸化アルミニウムより、分解温度が高いため、成形加工性が向上する。
【0033】
金属水酸化物は、分散性等を良好とするために、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、ステアリン酸等の脂肪酸等によって表面処理することができる。
【0034】
金属水酸化物は、ベースポリマ100質量部に対し、150~250質量部添加する。150質量部未満だと十分に難燃性を得ることができず、250質量部より多いと破断伸びが低下する。
【0035】
(カーボンブラック)
ベースポリマに、カーボンブラックを添加する。カーボンブラックは難燃助剤である。添加するカーボンブラックの種類に特に限定はないが、破断伸び等を考慮するとFT、MT級カーボンを用いることが好ましい。
【0036】
所定の難燃性を確保するためには難燃剤として大量の金属水酸化物を添加する必要がある。しかしながら、大量に難燃剤を添加すると組成物の機械特性を損ねる恐れがある。そこで、難燃助剤としてカーボンブラックを添加する。カーボンブラックの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、1~30質量部である。カーボンブラックの添加量は多いほうが難燃性を向上することが可能であるが、30質量部より多いと、カーボンブラックの凝集により粗粒が生じ、初期の破断伸びおよび低温特性が低下する。より好ましくは、カーボンブラックの添加量は、ベースポリマ100質量部に対し、2~30質量部である。
【0037】
(その他の添加剤)
上記材料の他、架橋剤、架橋助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、滑剤、着色剤、補強剤、界面活性剤、無機充填剤、酸化防止剤、可塑剤、金属キレート剤、発泡剤、相溶化剤、加工助剤、安定剤等を添加することができる。
【0038】
なお、難燃助剤として、上記カーボンブラック以外の難燃助剤を添加してもよい。難燃助剤としては、赤リンなどのリン系難燃助剤やメラミンシアヌレートなどのトリアジン系難燃助剤があるが、ホスフィンガスやシアンガスを発生する恐れがあり、取扱いに注意が必要となる。これら以外の難燃助剤であれば適用可能で、例えば、クレー、シリカ、スズ酸亜鉛、ホウ酸亜鉛、ホウ酸カルシウム、水酸化ドロマイド、シリコーンなどを用いることができる。
【0039】
(ゲル分率)
ゲル分率はポリマの架橋の程度を確認する手法である。ゲル分率の測定方法について説明する。まず、試料を秤量(W1)し、110℃に熱したキシレンに24h浸漬させる。浸漬後に20℃で3時間、大気圧下で放置し、80℃で4時間真空乾燥させる。この後の試料の重量(W2)と、キシレン浸漬前の重量(W1)との重量比((W2/W1)×100、単位[%])をゲル分率と定義する。ゲル分率が85%未満だと、耐油性が十分とは言えない。
【0040】
架橋処理は有機過酸化物または硫黄化合物あるいはシラン等を用いた化学架橋、電子線、放射線等による照射架橋、その他の化学反応を利用した化学架橋等があり、いずれの架橋方法も適用可能である。中でも電子線を用いた照射架橋は、他の照射架橋よりも汎用的で、化学架橋のように押出成形時のスコーチのリスクが無いため、本実施の形態の架橋処理として用いることが好ましい。
【0041】
[絶縁電線]
図1は、本実施の形態の絶縁電線の構成例を示す断面図である。
図1に示す絶縁電線11は、導体11aと、導体11aの外周に形成された絶縁内層11bと、絶縁内層11bの外周に形成された絶縁外層11cとを有する。このように、導体11aを被覆する絶縁層を絶縁内層11bと絶縁外層11cとの2層構造としてもよい。
【0042】
導体11aとしては、例えば、複数本の素線(金属線)が撚り合わされた撚線を用いることができる。素線としては、例えば、銅線、銅合金線の他、アルミニウム線、金線、銀線等を用いることができ、外周に錫やニッケル等の金属めっきを施したものを用いてもよい。
【0043】
絶縁内層11bとしては、例えば、ポリブチレンテレフタレート等を用いることができる。また、内層材料には、必要に応じて酸化防止剤、シリコーンガムを含むシランカップリング剤、難燃剤、難燃助剤、架橋剤、架橋助剤、架橋促進剤、加水分解防止剤(例えば、ポリカルボジイミド化合物)、滑剤(例えば脂肪酸金属塩、アマイド系滑剤)、軟化剤、可塑剤、無機充填剤、カーボンブラック、相溶化剤、安定剤、金属キレート剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤等の添加剤を添加してもよい。また、絶縁内層11bとしては、シラン水架橋又は電子線照射等によって架橋された組成物を用いてもよい。
【0044】
絶縁外層11cとしては、前述したノンハロゲン樹脂組成物を用いることができる。
【0045】
また、絶縁外層11cとして、ノンハロゲンの難燃剤を有する他の樹脂組成物を用いてもよい。ノンハロゲンの難燃剤でも赤リンなどのリン系難燃剤やメラミンシアヌレートなどのトリアジン系難燃剤を添加しない方が好ましい。絶縁外層11cに適用するポリマはノンハロゲンであれば特に限定しない。たとえば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、エチレン-アクリル酸エステル共重合体などのポリオレフィンが挙げられる。ゴム材料も適用可能であり、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体ゴム、アクリルゴム、エチレン-アクリル酸エステル共重合体ゴム、エチレンオクテン共重合体ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体ゴム、エチレン-ブテン-1共重合体ゴム、ブタジエン-スチレン共重合体ゴム、イソブチレン-イソプレン共重合体ゴム、ポリスチレンブロックを有するブロック共重合体ゴムなどが挙げられる。また、エンジニアリングプラスチックも適用することができ、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエーテルサルホンなどが挙げられ、これらの熱可塑性エラストマも使用することができる。ベースポリマは単独でも2種類以上のブレンドでもよい。
【0046】
絶縁外層11cにおいて上記材料で構成された樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤、架橋助剤、難燃助剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤、滑剤、着色剤、補強剤、界面活性剤、無機充填剤、可塑剤、金属キレート剤、発泡剤、相溶化剤、加工助剤、安定剤等を添加することができる。
【0047】
耐油性の点から架橋はしておくべきであり、架橋処理は、有機過酸化物又はシラン化合物等を用いた化学架橋、電子線、放射線等による照射架橋、その他の化学反応を利用した架橋等があるが、いずれの架橋方法も適用可能である。
【0048】
このように2層構造とすることにより、導体11a側の絶縁内層11bにより電気絶縁性を向上させ、最外層である絶縁外層11cにより難燃性等を向上させることができる。
【0049】
なお、
図1では、導体11aを被覆する絶縁層を絶縁内層11bと絶縁外層11cとの2層構造としたが、3層以上の構造としてもよく、また、単層としてもよい。いずれの場合においても、最外層として前述したノンハロゲン樹脂組成物を用いることで、ノンハロゲン絶縁電線の特性を向上させることができる。
【0050】
[ケーブル]
図2は、本実施の形態のケーブルの構成例を示す断面図である。
図2に示すケーブル12は、撚り合わせた2本の絶縁電線11(撚り合わせコア、
図1参照)と、撚り合わせコアの外側に設けられたセパレータ12bと、このセパレータを覆うように設けられたシールド編組12cと、シールド編組12cを覆う、シース(外被層、被覆層)12dとを有する。シース12dとしては、前述したノンハロゲン樹脂組成物を用いることで、ノンハロゲンケーブルの特性を向上させることができる。なお、絶縁電線11を1本としてもよく、また、3本以上としてもよい。セパレータの材質は特に限定されず、シールド編組の外側に設けてもよい。
【0051】
このような絶縁電線およびケーブルの用途に制限はないが、例えば、鉄道車両用の絶縁電線またはケーブルとして用いることができる。
【0052】
(実施例)
以下に、本実施の形態のノンハロゲン樹脂組成物、絶縁電線およびケーブルを、実施例を用いてさらに具体的に説明する。
【0053】
ノンハロゲン樹脂組成物を用いて、絶縁電線及びケーブルを以下のように作製した。
【0054】
(ノンハロゲン樹脂組成物)
実施例1~11においては、表1に示す配合で、また、比較例1~9においては、表2に示す配合で、ノンハロゲン樹脂組成物を製造した。表1乃至表3の配合量の単位は質量部である。すなわち、表1、表2に示された配合用材料を、加圧ニーダーによって混練し、ストランドで押出し、冷却後ペレット状にした。各実施例および各比較例のノンハロゲン樹脂組成物の配合割合については、追って詳細に説明する。なお、後述する他の添加剤(6質量部)の内訳を表3に示す。
【0055】
(絶縁電線およびケーブルの作製)
絶縁電線を作製した(
図1参照)。導体11aとしては、直径0.18mmのスズめっき銅導体を19本用いた。絶縁内層11bとしては、ポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス製、ノバデュラン5026)を用いた。絶縁外層11cとしては、ポリエチレン(プライムポリマ製、ハイゼックス5305E)30質量部、エチレン-アクリル酸エチル-無水マレイン酸3元共重合体(アルケマ製、ボンダインLX4110)30質量部、無水マレイン酸変性エチレン-αオレフィン(三井化学製、タフマMA7020)10質量部、エチレン-アクリル酸エチル共重合体(日本ポリエチレン製、レクスパールA1150)30質量部、水酸化マグネシウム(協和化学社製、商品名:キスマ5L)150質量部を、14インチオープンロールにて混練し、造粒機でペレット化したものを用いた。絶縁内層11bの厚さが、0.1mm、絶縁外層11cの厚さが、0.16mmになるように、40mm押出機にて導体11aの外側に2層押出しを行い、導体11aを絶縁内層11bおよび絶縁外層11cで被覆した。得られた絶縁電線11に電子線を照射し架橋を行った。
【0056】
次いで、上記絶縁電線11を用いてケーブルを作製した(
図2参照)。得られた絶縁電線11を2本撚り合わせて撚り合わせコアとし、その上に、32μmのポリエチレンテレフタレートのセパレータ12bをラップ巻きし、その上に、0.11mmのスズめっき銅導体を用いて編組密度80%のシールド編組12cを形成し、コアを形成した。
【0057】
上記コアに表1、表2に示す組成物を厚さ0.7mmになるように、40mm押出機にて押出し、シース12dを形成した。得られたケーブルのシース12dに表1、表2に示した照射量で電子線を照射し、シース12dを架橋させることにより、ケーブル12を作製した。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
(評価および判定)
引張試験を行った。ケーブルから撚り合わせコア等を引き抜き、チューブ状のシースを6号ダンベルにより打ち抜き、試験片を得た。室温(25℃)にて、試験片を250mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの荷重および伸び(Lb)を測定した。上記荷重から引張強さ(単位[MPa])を算出した。また、当初長さLaと伸びLbとから、破断伸び((Lb-La/La)×100[%])を算出した。破断伸びが、200%以上のものを◎(優)とし、150%以上200%未満のものを○(良)、150%未満のものを×(不可)とした。
【0062】
低温試験を行った。ケーブルから撚り合わせコア等を引き抜き、チューブ状のシースを6号ダンベルにより打ち抜き、試験片を得た。試験片を-40℃に保持し、-40℃の雰囲気下において試験片を25mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの伸び(L2)を測定した。当初長さL1と伸びL2とから、低温伸び((L2/L1)×100[%])を算出した。低温伸びが、50%以上のものを◎(優)とし、30%以上50%未満のものを○(良)、30%未満のものを×(不可)とした。
【0063】
耐油試験を行った。ケーブルから撚り合わせコア等を引き抜き、チューブ状のシースを6号ダンベルにより打ち抜き、試験片を得た。試験片を、70℃に熱したIRM902試験油に168時間浸漬した後、試験片を250mm/minの変位速度で引張り、破断するまでの荷重および伸びを測定した。試験油に浸漬する前の試験片の引張強さ(A1)、破断伸び(B1)と、試験油に浸漬した後の試験片の引張強さ(A2)、破断伸び(B2)と、から耐油引張強さ変化率((A2/A1)×100[%])、耐油破断伸び変化率((B2/B1)×100[%])を算出した。浸漬後において、「引張強さ」または「破断伸び」が低下したものは、"-(マイナス)"とした。耐油引張強さ変化率(引張強さ残率)が-30%以上であれば○(良)、-30%未満であれば×(不可)とした。耐油破断伸び変化率(引張伸び残率)が-30%以上であれば○(良)、-30%未満であれば×(不可)とした。
【0064】
燃焼試験(難燃性試験)を行った。長さ600mmのケーブルを試験片として切り出し、試験片を垂直にて保ち、炎を60秒あてた後、炎を取り去った場合に、自己消化したものを◎(優)とした。自己消化しなかったものについて、試験片を変えて、同じ試験を続けて2回行い、3回の試験のうち、ひとつでも自己消化したものを○(良)とした。3回とも自己消化しなかったものについて、60°傾斜をかけて、試験片を保持し炎を60秒あてた後、炎を取り去った場合に、自己消化したものを△(可)とした。この60°傾斜の燃焼試験でも自己消化しないものを×(不可)とした。
【0065】
ゲル分率を測定した。ケーブルのシースをナイフで切削分離し、試験片を得た。試験片を秤量(W1)し、110℃に熱したキシレンに24時間浸漬させた後、20℃で3時間、大気圧下で放置し、80℃で4時間真空乾燥させた。この後の試験片の重量(W2)と、キシレン浸漬前の試験片の重量(W1)との重量比((W2/W1)×100[%])からゲル分率を求めた。ゲル分率が85%以上のものを◎(優)とした。
【0066】
総合評価としては、上記すべての評価(引張試験(破断伸び)、低温試験(低温伸び)、耐油試験(耐油引張強さ変化率、耐油破断伸び変化率)、燃焼試験、ゲル分率)において◎または○のものを◎(優)とし、△が含まれるものを○(良)、×が含まれるものを×(不可)とした。
【0067】
(実施例1~3)
以下の説明において、PEは、ポリエチレンを、EVAは、エチレン酢酸ビニル共重合体を、示す。また、表において、無水マレイン酸変性ポリオレフィンを、単に"変性ポリオレフィン"と示した。また、エチレン酢酸ビニル共重合体の酢酸(CH3COO-)のベースポリマに対する含有量を"VA量[質量%]"として示した。これは、ベースポリマ100gに含まれる酢酸(CH3COO-)の量(g)に対応する。
【0068】
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)150~250質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部(表3参照)を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。なお、表3に示すペンタエスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](ノックス1010)および(1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ハイドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン)(AO-18)は、酸化防止剤であり、ステアリン酸亜鉛(SZ-P)は、滑剤であり、トリメチロールプロパントリアクリレート)(TMPT)は、架橋助剤である。
【0069】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0070】
試験結果を表1に示す。実施例1~3においては、すべての試験において◎または○であったため総合評価は◎となった。
【0071】
(実施例4~6)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(三井デュポンケミカル製、エバフレックス45LX、MFR2.5g/10min、酢酸量46質量%)5~30質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)10~35質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0072】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0073】
試験結果を表1に示す。実施例4~6においては、すべての評価において◎または○であったため総合評価は◎となった。但し、実施例5においては、他の実施例より低温特性が劣る結果となった。
【0074】
(実施例7)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(三井デュポンケミカル製、エバフレックス45X、MFR100g/10min、酢酸量46質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0075】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0076】
試験結果を表1に示す。実施例7においては、実施例6より、わずかに低温特性が劣るが、すべての評価において◎または○であったため総合評価は◎となった。
【0077】
(実施例8~10)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60~70質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)5~10質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25~30質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)1~30質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0078】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0079】
試験結果を表1に示す。実施例8、10においては、すべての評価において◎または○であったため総合評価は◎となった。実施例9においては、燃焼試験が△であるため、総合評価は○となった。
【0080】
(実施例11)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(三井デュポンケミカル製、エバフレックス45X、MFR100g/10min、酢酸量46質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)2質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0081】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0082】
試験結果を表1に示す。実施例11においては、実施例7より、わずかに難燃性が劣るが、すべての評価において◎または○であったため総合評価は◎となった。
【0083】
(比較例1)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)40質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0084】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0085】
試験結果を表2に示す。比較例1においては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量が多く、初期の破断伸びが150%を下回り、×となったため、総合評価は×となった。
【0086】
(比較例2)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)55質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)5質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)40質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0087】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0088】
試験結果を表2に示す。比較例2においては、ポリエチレンの量が少なく、耐油引張強さ変化率が-30%を下回り、×となったため、総合評価は×となった。
【0089】
(比較例3)
被覆層において、PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)75質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)5質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)20質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0090】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0091】
試験結果を表2に示す。比較例3においては、ポリエチレンの量が多く、初期の破断伸びが150%を下回り、×となったため、総合評価は×となった。
【0092】
(比較例4)
PE(日本ポリエチレン、ノバテックZF33Tml08℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0093】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0094】
試験結果を表2に示す。比較例4においては、PEの融点が110℃を下回っており、また、耐油引張強さ残率が-30%を下回り×となったため、総合評価は×となった。
【0095】
(比較例5)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)35質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)5質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0096】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0097】
試験結果を表2に示す。比較例5においては、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの量が少なく、低温試験において伸びが30%を下回り、×となったため、総合評価は×となった。
【0098】
(比較例6)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)260質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0099】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0100】
試験結果を表2に示す。比較例6においては、難燃剤の量が多く、初期の破断伸びおよび低温試験において伸びが×となったため、総合評価は×となった。
【0101】
(比較例7)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)140質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0102】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0103】
試験結果を表2に示す。比較例7においては、難燃剤の量が少なく、燃焼試験が×となったため、総合評価は×となった。
【0104】
(比較例8)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)35質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0105】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、5Mrad電子線照射で架橋した。
【0106】
試験結果を表2に示す。比較例8においては、カーボンブラックの量が多く、初期の破断伸びおよび低温試験において伸びが×となったため、総合評価は×となった。
【0107】
(比較例9)
PE(プライムポリマ製、SP1510、融点117℃)60質量部、EVA(ランクセス製、レバプレン600、酢酸量60質量%)15質量部、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(三井化学製、タフマMH5040)25質量部、難燃剤として水酸化マグネシウム(神島化学工業、マグシーズS4)180質量部、カーボンブラックとして(旭カーボン、アサヒサーマル)10質量部、他の添加剤として6質量部を混練した、ノンハロゲン樹脂組成物をシースの材料として用いた。
【0108】
前述のとおり、ケーブルを作製し、上記試験を行った。なお、シースは、3Mrad電子線照射で架橋した。
【0109】
試験結果を表2に示す。比較例9においては、ゲル分率の測定結果は80%であり、85%を下回った。また、耐油の引張強さ変化率は-30%を下回っていたため×となったため、総合評価は×となった。
【0110】
(考察)
上記実施例および比較例から以下の事項が考察される。
【0111】
ベースポリマとしては、ポリエチレンのようなポリオレフィンと、無水マレイン酸変性ポリオレフィンと、エチレン酢酸ビニル共重合体とを用いることが好ましく、これらの含有量は、それぞれ、60~70質量部、10~35質量部、5~30質量部とすることが好ましい。
【0112】
ポリオレフィン(ポリエチレン)が、60質量部未満では耐油特性が不十分であり(比較例2参照)、70質量部より多いと、破断伸びを十分に得ることができない(比較例3参照)。また、ポリオレフィン(ポリエチレン)の融点が110℃未満であると、耐油性を十分に得ることができない(比較例4参照)。
【0113】
無水マレイン酸変性ポリオレフィンが、10質量部未満では必要な低温特性を満足することができず(比較例5参照)、35質量部より多いと、初期の破断伸びが不足する(比較例1参照)。
【0114】
また、より高い低温特性を得るためには、無水マレイン酸変性ポリオレフィンの添加量を、ベースポリマ100質量部に対し、25~35質量部とすることがより好ましい(実施例5参照)。
【0115】
また、エチレン酢酸ビニル共重合体は、5~30質量部とすることが好ましい(比較例1、比較例5参照)。ベースポリマ100%中の酢酸量(CH3COO-の量)は2.3質量%以上とすることで高い難燃性を得ることができる(実施例4等参照)、また、6質量%以上とすることで更に高い難燃性を得ることができる。
【0116】
さらに、ベースポリマ100質量部に対して、150~250質量部の割合で金属水酸化物を添加することが好ましい。150質量部未満だと十分に難燃性を得ることができず(比較例7参照)、250質量部より多いと破断伸び等が低下する(比較例6参照)。
【0117】
また、ベースポリマ100質量部に対して、1~30質量部の割合でカーボンブラックを添加することが好ましい。30質量部より多いと、カーボンブラックの凝集により粗粒が生じ、初期の破断伸びおよび低温特性が低下する(比較例8参照)。
【0118】
また、ノンハロゲン樹脂組成物の架橋後のゲル分率が85%以上であることが好ましい。ゲル分率が85%未満だと、耐油性が十分とは言えない(比較例9参照)。
【0119】
本発明は上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、上記実施例ではシースを例に説明したが、絶縁電線の最外層に上記実施例の組成物を使用してもよい。
【符号の説明】
【0120】
11 絶縁電線
11a 導体
11b 絶縁内層
11c 絶縁外層
12 ケーブル
12b セパレータ
12c シールド編組
12d シース