(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】ゲルアクチュエータ
(51)【国際特許分類】
H02N 11/00 20060101AFI20230816BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
(21)【出願番号】P 2020041888
(22)【出願日】2020-03-11
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2019069089
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市原 誠
(72)【発明者】
【氏名】三谷 浩
【審査官】宮崎 賢司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009469(WO,A1)
【文献】特開2001-026000(JP,A)
【文献】特開2008-245428(JP,A)
【文献】特開2012-161221(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0235442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の支持体と、前記支持体間に挟持された誘電体を含有するゲル状物質と、を備え、かつ、前記一対の支持体のうち一方の支持体は、少なくとも陽極及び陰極を備え、他方の支持体は、前記ゲル状物質に追従して可動し得る、ゲルアクチュエータ。
【請求項2】
前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより、可動する前記支持体が、もう一方の支持体に対して略水平方向に移動する、請求項1に記載のゲルアクチュエータ。
【請求項3】
前記支持体が前記陽極と前記陰極との間に係止部を備える、請求項1又は2に記載のゲルアクチュエータ。
【請求項4】
前記陽極と前記陰極のうちの吸着側電極に第3の電極が隣接して備えられる、請求項1乃至3のいずれか1項に記載のゲルアクチュエータ。
【請求項5】
前記第3の電極の極性が、前記吸着側電極の極性と同じ極性となるように電圧を制御する電圧制御部を備える、請求項4に記載のゲルアクチュエータ。
【請求項6】
ゲル状物質が非吸着側電極と非接触となったところで、吸着側電極の極性を反転させ、かつ、第3の電極を吸着側電極と同じ極性に変化させるように電圧を制御する電圧制御部を備える、請求項4又は5に記載のゲルアクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲルアクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エネルギーや電気信号を物理的運動に変換する機械・電気回路を構成するアクチュエータの材料として、軽量性や柔軟性、加工性に優れる高分子材料が注目されている。特に、医療機器や産業用ロボット等の分野では、伸縮性に優れる高分子ゲルを用いたアクチュエータの開発が活発に行われてきた。例えば、当該アクチュエータは、その優れた伸縮性から人工筋肉の候補に挙げられ、人の動作を補助することを目的とする福祉機器や介護機器等の製品への応用が期待されている。
【0003】
従来のゲルアクチュエータは、陰極と陽極とが対向する構成を有しており、電圧印加により、両極に挟まれたゲルが、一方の電極側に移動することにより、アクチュエータの厚みを減らす方向に動きを発生させていた。
陰極と陽極とが対向する構成を有するゲルアクチュエータとして、例えば、特許文献1には、一方の電極を導電材からなるメッシュ体とし、当該メッシュ体を2つの高分子ゲルで挟み込んで作製され、電圧印加時にメッシュ体のメッシュ孔に高分子ゲルの一部が入り込むことにより厚さ方向に収縮し、電圧印加の解除時に元の厚さに復帰するゲルアクチュエータが開示されている。
また、特許文献2には、電極層を誘電性高分子材料からなるゲルシートで挟み込んだ積層体と、メッシュ体とを有し、当該メッシュ体を当該積層体で挟み込んで作製され、上記の特許文献1と同様の作用により伸縮及び復帰を行い、変位したゲルの移動先を確保するセンサ素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-23843号公報
【文献】特開2014-32162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、陰極と陽極とが対向する構成を有するゲルアクチュエータの場合、ゲルアクチュエータを厚み方向に対して変位させることは可能であるが、水平方向に対して変位させることは不可能である。
本発明は、電極の配置を工夫することにより、水平方向に対して変位させることができるゲルアクチュエータを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、支持体に挟持されたゲルに対して、一方の支持体側に陰極と陽極とを配置することにより、水平方向に対して変位させることができるゲルアクチュエータを提供できることを見出し、本発明を達成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1] 一対の支持体と、前記支持体間に挟持された誘電体を含有するゲル状物質と、を備え、かつ、前記一対の支持体のうち一方の支持体は、少なくとも陽極及び陰極を備え、他方の支持体は、前記ゲル状物質に追従して可動し得る、ゲルアクチュエータ。
[2] 前記陽極と前記陰極との間に電圧を印加することにより、可動する前記支持体が
、もう一方の支持体に対して略水平方向に移動する、[1]に記載のゲルアクチュエータ。
[3] 前記支持体が前記陽極と前記陰極との間に係止部を備える、[1]又は[2]に記載のゲルアクチュエータ。
[4] 前記陽極と前記陰極のうちの吸着側電極に第3の電極が隣接して備えられる、[1]乃至[3]のいずれかに記載のゲルアクチュエータ。
[5] 前記第3の電極の極性が、前記吸着側電極の極性と同じ極性となるように電圧を制御する電圧制御部を備える、[4]に記載のゲルアクチュエータ。
[6] ゲル状物質が非吸着側電極と非接触となったところで、吸着側電極の極性を反転させ、かつ、第3の電極を吸着側電極と同じ極性に変化させるように電圧を制御する電圧制御部を備える、[4]又は[5]に記載のゲルアクチュエータ。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、電極の配置を工夫することにより、水平方向に対して変位させることができるゲルアクチュエータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成と作用とを模式的に表す図である。
【
図2】ゲルアクチュエータの原理を模式的に表す図である。
【
図3】ゲルアクチュエータの原理を模式的に表す図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成を模式的に表す図である。
【
図5】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成と作用とを模式的に表す図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成と作用とを模式的に表す図である。
【
図7】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成を表す鳥瞰図である。
【
図8】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成を模式的に表す図である。
【
図9】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成を表す鳥瞰図である。
【
図10】本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータの構成を表す鳥瞰図である。
【
図11】電圧の印加における駆動電圧と解放電圧との繰り返しを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これら説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
また、本発明において、特段限定するような記載をしていない場合、「2つの電極」とは陽極と陰極の組み合わせであることを示す。また、「一方の電極」及び「もう一方の電極」の組み合わせを用いた場合、いずれか一方が陽極であり、もう一方が陰極であることを示す。
【0011】
本発明の一実施形態であるゲルアクチュエータ(単に「ゲルアクチュエータ」とも称する。)は、一対の支持体と、前記支持体間に挟持された誘電体を含有するゲル状物質と、を備え、前記一対の支持体のうち一方の支持体は、少なくとも陽極及び陰極を備え、他方の支持体は、前記ゲル状物質に追従して可動し得る、ゲルアクチュエータである。
上記実施形態のゲルアクチュエータの構成と作用とを例示した模式図の例を
図1に示す。
以下、従来の陽極と陰極とが対向する構成を有するゲルアクチュエータを「縦型ゲルアクチュエータ」と称し、また、上記実施形態であるゲルアクチュエータを「横型ゲルアクチュエータ」とも称する。
また、本明細書において、「ゲル状」とは、流動性のあるゾル状の分解生成物が固化して弾性を維持しつつ自発的な流動性を喪失した状態をいい、そのような状態の物質を「ゲル状物質」(または、単に「ゲル」)と称する。
また、一対の支持体と、該支持体間に挟持された誘電体を含有するゲル状物質とを備える構造を「単位構造」とも称する。
【0012】
<1.ゲルアクチュエータの原理>
従来の縦型ゲルアクチュエータを示した
図2を用いて、ゲルアクチュエータの変位の原理を説明する。
通常、高分子ゲルは、高分子と可塑剤との混合物を含んでいる。従来のゲルアクチュエータでは、
図2(A)に示すように、該高分子ゲル(以下、「ゲル状物質」と称する。)を陰極及び陽極で挟んだ構造が一般的に用いられている。該ゲルアクチュエータにおいて、電圧を印加すると、
図2(B)に示すように、陰極からゲル状物質に電荷が流入する。その後、電圧を印加し続けると、
図2(C)に示すように、電荷が陽極付近に偏在し、陽極の引力と電荷同士の反発力とから、陽極上に電荷が広がり、電極上を這うようにゲル物質が移動する吸着作用が生じる。そして、当該電荷の挙動に合わせて、ゲル状物質中の可塑剤が移動し、さらに、この可塑剤の移動に伴い高分子も移動し、ゲル状物質全体が陽極上に広がるため、ゲル状物質が厚さを減少させる方向に変位する。電圧の印加を解除すると、
図2(D)に示すように、電圧印加前の状態に戻る。
本発明では、上記ゲル状物質の吸着作用により裾状に広がった方向、つまり、ゲル状物質が吸着される側を「吸着側」と称する。つまり、
図2からも分かるように、陽極が「吸着側電極」となる。
【0013】
一方で、上記の実施形態において、一対の支持体から上側支持体を除いた構成、つまり、
図3(A)に示すように、陽極及び陰極を備える支持体上にゲル状物質を配置した構成で電圧を印加すると、上記
図2における説明と同様に電荷の移動が生じ、
図3(B)に示すように、陽極側にゲル状物質が移動する。
以下、本実施形態である横型ゲルアクチュエータの具体的な態様を示すが、本発明はこれらの態様に限定されない。
【0014】
<2.ゲルアクチュエータの構成>
図1を用いて、横型ゲルアクチュエータの構成及び作用を説明する。
図1(A)に示すゲルアクチュエータは、誘電体を含有するゲル状物質が、陽極及び陰極を備える支持体(「電極側支持体」とも称する)と、該ゲル状物質に追従して可動し得る支持体(「可動側支持体」とも称する)とで挟持された構成を有するゲルアクチュエータである。電圧を印加すると、
図1(B)に示すように、陰極から陽極へゲル状物質が移動し、これに合わせて可動側支持体が移動する。電圧の印加を解除すると、
図1(C)に示すように、ゲル状物質の移動が停止し、合わせて可動部支持体の移動も停止する。
上述した従来のゲルアクチュエータでは、電圧を印加する前と印加した電圧を解除した後で比較すると、アクチュエータを構成する各構成部の位置は変化していない。一方で、本実施例に係るゲルアクチュエータでは、印加した電圧を解除した後のゲル状物質及び可動側支持体の位置が、電圧を印加する前の位置よりも陽極側に移動する。
電圧を印加する時間を増加させたり、電圧を印加する回数を増加させたりすることにより、ゲル状物質及び可動側支持体の移動距離を増加させることができる。
陽極と陰極との間に電圧を印加することにより、可動側支持体が移動する方向は、電極側支持体に対して略水平方向であることが好ましい。
上記のような水平方向への移動を可能とするアクチュエータとして、電気流体力学(E
HD)現象を利用した流体駆動型アクチュエータ等が存在しているが、該アクチュエータの場合、流体を閉じ込める容器や、アクチュエータを駆動するためのポンプ、コンプレッサ、シリンダ等を用いる必要があり、アクチュエータの構造の複雑化や膨大化が生じてしまう。一方で、上記のゲルアクチュエータは、構造が簡易であり、各構成部の形状を複雑なものとする必要がないため、上記のような複雑化や膨大化を抑制することができる。
【0015】
ゲルアクチュエータは、電極側支持体が前記陽極と前記陰極との間に係止部を備えていてもよい。
係止部とは、可動するゲル状物質を係止できるもの、具体的には、電極側支持体の電極間の領域(「電極間領域」とも称する。)の厚さが、電極間領域を除く電極側支持体の領域(「電極外領域」とも称する。)の厚さよりも大きくなる構成部か、又は小さくなる構成部であれば特段制限されない。
電極間領域の厚さが電極外領域の厚さよりも大きくなる係止部としては、例えば、
図4(A)に示す狭隘状の係止部Xや、
図4(B)に示す段差状の係止部Xが挙げられる。一方で、電極間領域の厚さが電極外領域の厚さよりも小さくなる係止部としては、例えば、
図4(C)に示す陥凹状の係止部Xが挙げられる。
図4(B)に示すゲルアクチュエータの電圧印加時の作用を
図5に示す。電圧を印加すると、
図1と同様の挙動を示し、ゲル状物質及び可動側支持体が陽極側に移動するが、係止部Xがあるために、電圧の印加を解除した後のゲル状物質の戻り動作が低減し、最終的な可動側支持体の移動距離が大きくなる。
ゲル状物質の戻り動作の低減の観点から、係止部には、電極間領域の厚さが電極外領域の厚さよりも小さくなる係止部よりも、電極間領域の厚さが電極外領域の厚さよりも大きくなる係止部を用いることが好ましい。
なお、係止部は、電極側支持体自体の形状の一部として存在するものであってもよく、また、電極側支持体とは別の部材として該支持体に付加された存在であってもよいが、安定した推力(ゲル状物質を移動させるための力)や、電極側支持体からの係止部の剥離の抑制の観点から、電極側支持体の形状の一部として存在するものが好ましい。
また、係止部は、
図4に示すように、電極側支持体だけでなく、可動側支持体に設けることもできる。この場合には、係止部に相当する部分の可動側支持体の厚さが、係止部を除いた領域に相当する部分の可動側支持体の厚さがよりも大きくなる構成部か、又は小さくなる構成部であれば特段制限されない。
【0016】
ゲルアクチュエータの電極の数について、少なくとも陽極と陰極とからなる2つの電極を有していれば特段制限されず、3つ以上の電極を有していてもよい。この場合において、それぞれの電極の配置は特段制限されず、例えば、全ての電極が同一の電極側支持体に備えられていてもよく、それぞれの電極が異なる電極側支持体に備えられていてもよく、また、一部の電極のみが同一の電極側支持体に備えられていてもよい。
3つ以上の電極のうち2つの電極が、陽極と陰極とかるなる一対の電極であり、該一対の電極の吸着側電極に第3の電極が隣接して備えられるゲルアクチュエータの構成と作用を
図6に示す。
図6(A)から
図6(C)までは、上述したゲルアクチュエータの作用と同様の作用を示す。その後、ゲル状物質の移動により、ゲル状物質が一対の電極における陰極から離れ、かつ、第3の電極上に移動した状態となった際に、一対の電極に係る電圧印加を解除し、さらに、一対の電極における陽極が陰極となり、かつ、第3の電極が陽極となるような電圧を印加することにより、ゲル状物質を第3の電極上へさらに移動させることができる。
第3の電極を設けない場合、理論上の最大のゲル状物質の移動距離は、初期状態から、一対の電極の陽極側を中心として吸着した状態までの距離となる。一方で、第3の電極を設けた場合には、初期状態から第3の電極を中心として吸着した状態までの距離となる、つまり、第3の電極により、ゲル状物質及び可動側支持体の最大の移動距離を増加させることができる。
【0017】
ゲルアクチュエータの変形例として、
図7に示すように、可動側支持体を軸状(ひも状)にして、該可動側支持体の軸周りに、ゲル状物質及び電極側支持体が配置される構成を有するゲルアクチュエータとすることもできる。本態様は、可動側支持体の姿勢の安定性、また、可動側支持体の移動の際に生じる抵抗の抑止の点で特に優れる。また、電極側支持体や可動側支持体に可撓性のある材料を用いることにより、可撓性のあるゲルアクチュエータを製造することができる。なお、
図7に示すゲルアクチュエータの断面図は、後述する
図8(A)と同様の図となる。
【0018】
上記の種々の態様のゲルアクチュエータは、単位構造を単独で用いることができるが、複数で用いてもよい。例えば、
図8(A)に示すように、可動側支持体を挟持した両側で2つのゲルアクチュエータの単位構造が配置される構成とすることができ、また、
図8(B)に示すように、電極側支持体を挟持した両側で2つのゲルアクチュエータの単位構造が配置される構成とすることでき、さらに、これらを交互に積層させて組み合わせた3段以上の積層構成とすることもできる。積層数の増加に伴い、ゲルアクチュエータの推力を増加させることができる。
また、当該態様では、
図8(A)及び(B)に示すように、可動側支持体や電極側支持体を中線として線対称となるように配置してもよく、
図8(C)に示すように、
図8(A)(
図8(B)としてもよい)における線対称の配置から、可動側支持体を挟んだそれぞれの単位構造の位置をずらして配置してもよい。これらの態様によれば、可動側支持体の姿勢を安定させ、また、可動側支持体の移動の際に生じる抵抗を低減することができ、さらに、部品数の低減、単位容積当たりの出力の増加、可動側支持体の浪打変形の抑止、及び時間的平滑動作の実現を図ることができる。
特に、
図8(A)及び(B)の態様において、同一の電圧を印加した場合、ゲル状物質の電界強度が向上し、推力を増加させることができる。また、
図8(C)の態様では、構成単位の位置のずれに合わせて、電圧を印加するタイミングをずらすことにより、支持体の移動の時間的な均一化を図ることができる。
なお、本実施形態では、
図8(A)及び(B)のように、接地を利用した回路で利用することもできる。
【0019】
ゲルアクチュエータの単位構造を複数で用いた場合、積層させたり、直列に並べたり、また、並列に並べたりしてもよく、さらに、異なる態様を組合せて用いてもよい。例えば、以下に説明する
図9及び10の態様とることができる。
図9(A)及び(B)は、
図8に示すゲルアクチュエータが複数存在し、それらが直列に配置される構成を有するゲルアクチュエータである。具体的に、
図9(A)のゲルアクチュエータは、複数のゲルアクチュエータが、電極側支持体及び可動側支持体を共有して一体となったゲルアクチュエータを構成する態様であり、また、
図9(B)のゲルアクチュエータは、隣接するゲルアクチュエータの電極側支持体及び可動側支持体が、それぞれ隣接するゲルアクチュエータの可動側支持体及び電極側支持体に隣接される、つまり電極側支持体と可動側支持体とが交互に隣接するような構成を有するゲルアクチュエータである。
図9(C)は、
図8に示すゲルアクチュエータが複数存在し、それらが並列に配置される構成を有するゲルアクチュエータである。具体的に、
図9(C)のゲルアクチュエータは、複数のゲルアクチュエータが、可動側支持体を共有して一体となったゲルアクチュエータを構成する態様である。
図10は、
図7に示すゲルアクチュエータが複数存在し、それらが並列に配置される構成を有するゲルアクチュエータである。さらに、これらを上記の
図9(A)のゲルアクチュエータと同様に、直列に配置することもできる。
図9及び10のような構成とすることにより、電圧印加時のゲルアクチュエータの推力を増加させることができる。
【0020】
<3.構成部>
以下、ゲルアクチュエータを構成する各構成部の詳細を説明する。
<3-1.ゲル状物質>
(1)ゲル状物質の原料
誘電体を含有するゲル状物質(単に「ゲル状物質とも称する」)は、誘電性高分子材料を含有していれば、特段限定されず、以下に示す態様以外だけでなく、特開2012-23843号公報や特開2014-32162号公報等に開示されるゲルの原料を用いることができる。また、ゲル状物質が備える複数のゲル状物質の材料は、同じであっても、異なっていてもよいが、印加電圧による変化量を均一にできる観点から、同じであることが好ましい。
ゲル状物質は、電気刺激により屈曲変形やクリープ変形をなし、また、電位差をかけると収縮する材料であり、ゲル状物質に含まれる誘電性高分子材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、及びポリアクリロニトリル、シリコーンゴム等を用いることができる。これらの中でも、印加電圧による変位量や発生力がより大きく出力される物質の観点から、ポリ塩化ビニル及びポリビニルブチラールが好ましい。これらの誘電性高分子材料の製法は、特段限定されず、一般に市販されているものを用いることができる。
【0021】
ゲル状物質中の誘電性高分子材料の含有量は、特段制限されないが、ゲル状物質の変位長が十分得られる観点から、通常5重量%以上であり、好ましくは8重量%以上であり、より好ましくは10重量%以上であり、さらに好ましくは12重量%以上であり、特に好ましくは15重量%以上であり、また、好ましくは60重量%以下であり、より好ましくは50重量%以下であり、さらに好ましくは45重量%以下であり、特に好ましくは40重量%以下である。
【0022】
誘電性高分子材料として、ポリ塩化ビニルを用いる場合、その数平均分子量(Mn)は、特段制限されないが、電圧印加時の変位量の観点から、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算で、7万以上20万以下であるが、好ましくは7.5万以上であり、より好ましくは8万以上であり、さらに好ましくは8.5万以上であり、特に好ましくは9万以上であり、また、好ましくは18万以下であり、より好ましくは16万以下であり、さらに好ましくは14万以下であり、特に好ましくは12万以下である。ポリ塩化ビニルの数平均分子量(Mn)を7万以上とすることで得られたゲルが経時的に変化し電気的特性が安定しやすくなる。一方で、20万以下とすることにより、得られたゲルが固くなりすぎず、電圧をかけた時の変位長が十分に得られる。
【0023】
また、誘電性高分子材料として、ポリビニルブチラールを用いる場合、その数平均分子量(Mn)電圧印加時の変位量の観点から、6万以上15万以下であるが、好ましくは7万以上であり、より好ましくは8万以上であり、また、好ましくは14万以下であり、より好ましくは13万以下である。ポリビニルブチラールの数平均分子量を上述のそれぞれの数平均分子量以上とすることで、連続したシート化を容易にすることができ、取り扱いが容易になる。一方上述のそれぞれの数平均分子量以下とすることで、適度な硬度となり、電圧に対する変位長を十分に確保できる。
なお、ここでいう数平均分子量は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の値を用いる。また市販品を使用する場合には、使用する製品によっては数平均分子量ではなく、計算分子量が記載されていることがあるが、数平均分子量と計算分子量は実質的に同様の値になるため、計算分子量も同様の範囲で用いることができる。
【0024】
ゲル状物質は、本発明の効果が発揮される範囲において、上記の誘電性高分子材料以外
の材料を含んでいてもよく、例えば、可塑剤や電荷補足剤等が挙げられる。
【0025】
可塑剤の種類は、特段限定されないが、例えば、ジオールジエステル、ジカルボン酸ジエステル、ジメチルアセトアミド(DMA)、ジエタノールアミン(DEA)等が挙げられ、特にジカルボン酸ジエステルの好ましい例としては、セバシン酸ジエチル(DESuc)、アジピン酸ジブチル(DBA)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジオクチル(DOP)、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP)、コハク酸ジエチル(DESuc)、アジピン酸ジメチル(DMA)、セバシン酸ジエチル(DESeb)、セバシン酸ジブチル(DBSeb)、セバシン酸ジオクチル(DOSeb)等が挙げられる。これらの中でも、比較的取扱いやすく安定なゲル物質を得るための観点から、ジオールジエステル及びジカルボン酸ジエステルが好ましく、特に、誘電体としてポリ塩化ビニルを用いた場合にはジオールジエステルやジカルボン酸ジエステルを用いることが好ましく、また、誘電体としてポリビニルブチラールを用いた場合にはジカルボン酸ジエステルを用いることが好ましい。これらの誘電体の製法は、特段限定されず、一般に市販されているものを用いることができる。
可塑剤の含有により、ゲル状物質の移動時におけるゲル状物質と支持体との摩擦抵抗を低減することができる。
【0026】
ゲル状物質中の可塑剤の含有量は、特段制限されないが、摩擦抵抗の低減による良好な変位の発現とゲル表面のべたつき抑制の観点から、通常55重量%以上であり、好ましくは60重量%以上であり、より好ましくは65重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上であり、特に好ましくは75重量%以上であり、また、好ましくは98重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下であり、さらに好ましくは90重量%以下であり、特に好ましくは85重量%以下である。
【0027】
電荷補足剤の種類は、特段限定されないが、例えば、テトラシアノキノジメタン、2,4,7-トリニトロフルオレン-9-オンが挙げられる。
【0028】
ゲル状物質中の電荷補足剤の含有量は、特段制限されないが、良好な変位の発現の観点から、通常0.01重量%以上であり、好ましくは0.02重量%以上であり、より好ましくは0.03重量%以上であり、さらに好ましくは0.05重量%以上であり、特に好ましくは0.1重量%以上であり、また、好ましくは10重量%以下であり、より好ましくは5重量%以下であり、さらに好ましくは3重量%以下であり、特に好ましくは2重量%以下である。
【0029】
ゲル状物質の密度は、通常0.7~1.5g/cm3であり、0.8~1.4g/cm3であることが好ましく、0.85~1.35g/cm3であることがより好ましい。
ゲル状物質の密度が上記範囲内であると、厚みが薄くなっても荷重を支えることが可能であり、厚みが厚くなってもアクチュエータの重量の増加を抑えることが可能であるという利点がある。なお、測定方法については、一般的な密度の測定方法を適用できる。
【0030】
<(2)ゲル状物質の製造方法>
ゲル状物質の製造方法は、特段限定されず、特開2012-23843号公報や特開2014-32162号公報等に開示される一般的なゲルの製造方法により製造することができ、例えば、上述した各種原料に溶媒を加えた混合溶液を調製し、当該混合溶液をテフロン(登録商標)製シャーレ等の離型性のよい容器に移し、一定時間静置してゲル化させた後、容器から剥離することでゲル状物質を得ることができる。
【0031】
ゲル状物質を製造する際に用いられる溶媒の種類は、上記のポリビニルブチラール及び
ジカルボン酸ジエステル化合物を溶解させるものであれば特段制限されないが、例えば、メタノール、エタノール、n-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、及びメタノールが好ましく、特に、揮発性と臭気の観点から、テトラヒドロフランであることが好ましい。
【0032】
溶媒を揮発させる前の組成物中の溶媒の含有量は、溶解速度と揮発速度の観点から、通常40重量%以上であり、好ましくは45重量%以上であり、より好ましくは50重量%以上であり、さらに好ましくは55重量%以上であり、特に好ましくは60重量%以上であり、また、好ましくは98重量%以下であり、より好ましくは95重量%以下であり、さらに好ましくは90重量%以下であり、特に好ましくは85重量%以下である。
【0033】
<(3)ゲル状物質の構成>
ゲル状物質の形状は、特段限定されず、用途に応じて任意に設計でき、例えば、角柱状や円柱状、平板状、線状、ドーナツ状とすることができる。
図7に示す態様の場合には、これらの形状のゲル状物質を軸状の可動側支持体に巻きつけた形状とすることができる。
電圧印加前における、ゲル状物質の厚さは、特段限定されず、用途や電極の面積に応じて任意に設計し得るが、ゲルアクチュエータの変位量の確保及び可撓性の確保の観点から、通常1μm以上であり、一方で、通常10mm以下であり、好ましくは5mm以下であり、より好ましくは1mm以下であり、特に好ましくは0.6mm以下であり、最も好ましくは0.2mm以下である。なお、
図7に示す態様におけるゲル状物質の厚さとは、円柱状のゲル状物質の底面の半径から軸状の可動側支持体の底面の半径を減じた数値である。
【0034】
電圧印加前における、ゲル状物質と吸着側電極との接触面積は、電極の面積よりも小さければ特段限定されず、用途や電極の面積に応じて任意に設計し得るが、実装上および定適応する実務上の観点から、通常1mm2以上であり、好ましくは10mm2以上であり、より好ましくは100mm2以上であり、特に好ましくは400mm2以上であり、最も好ましくは900mm2以上であり、一方で、通常2500mm2以下であり、好ましくは1600mm2以下であり、より好ましくは900mm2以下であり、特に好ましくは400mm2以下であり、最も好ましくは100mm2以下である。
【0035】
<3-2.電極>
電極の材料の種類は、特段制限されず、例えば、白金、金、銀、アルミニウム、クロム、ニッケル、銅、チタン、マグネシウム、カルシウム、バリウム、ナトリウム等の金属あるいはそれらの合金(例えば、ステンレス鋼や黄銅);酸化インジウムや酸化錫等の金属酸化物、あるいはその合金(ITO等);ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン等の導電性高分子;前記導電性高分子に、塩酸、硫酸、スルホン酸等の酸、FeCl3等のルイス酸、ヨウ素等のハロゲン原子、ナトリウム、カリウム等の金属原子などのドーパントを含有させたもの;金属粒子、カーボンブラック、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性粒子をポリマーバインダー等のマトリクスに分散した導電性の複合材料などが挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、特に、電気特性や加工性、生産性の観点から、ステンレス鋼や黄銅が好ましい。
【0036】
電極の形状は、特段制限されず、例えば、平板状、多角形状、球状、ひも状とすること
ができるが、印加電圧の安定性や小型化容易の観点から、平板状であることが好ましい。
図7に示す態様においては、内部が空洞の円錐台状、角錐台状等とすることができ、ゲルの均一な移動を促進させる観点から、円錐台状が好ましい。
【0037】
ゲルアクチュエータに電圧を印加した場合、ゲル状物質を通して、陽極から陰極へ電気力線が生じる。電極の形状を平板状とした場合、陽極と陰極とがなす角度θは、0°より大きければ特段制限されないが、ゲル物質の変形動作上の観点から、90°以上180°以下であることが好ましく、120°以上であることがより好ましく、150℃以上であることが特に好ましく、また、170℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることが特に好ましい。
なお、電極形状が、平板が湾曲しているような形状の場合には、その変位量を最も小さくするような仮想面を考えて、その角度で考えればよい。
なお、角度θとは、一対の電極における陽極の電気力線が発生する側の面と陰極の電気力線が発生する側の面とのなす角度を示し、
図1の場合、陽極の電気力線が発生する側の面及び陰極の電気力線が発生する側の面とは、陽極及び陰極ともに、ゲル状物質と接する面を意味する。具体的には、
図2に示すような従来の縦型アクチュエータの場合には0°、
図1に示すような同一平面内に電極を有するゲルアクチュエータの場合には、180°、
図5に示すような係止部を有する場合には、
図5(D)に示すθとなる。
図7の場合、ゲルアクチュエータの断面を観察した場合、
図5のような形状が観察し得るため、
図5(D)と同様の方法で角度θを求める。
【0038】
電極の厚さは、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できるが、通常0.0010~1mmであり、0.0012~0.9mmであることが好ましく、0.0015~0.8mmであることがより好ましい。
電極の面積は、特段制限されず、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できるが、通常1~10mm
2以上であり、100~900mm
2以上であることが好ましく、1600~2500mm
2以上であることがより好ましい。
図7に示す態様の場合、電極面積とは、円錐台状や角錐台状の内部の空洞部の面積である。
【0039】
<3-3.支持体>
支持体の形状は、特段制限されず、例えば、平板形状とすることができる。
図7に示すような態様とする場合、電極側支持体を筒状とし、可動側支持体をひも状とすることができる。
可動側支持体の材料は、特段制限されず、例えば、樹脂、セラミックス、ガラス、金属などを用いることができるが、可動側支持体が金属の場合は、駆動回路には接続をしていないように実装する必要があるため、絶縁体を用いることが特に好ましい。
特に、電極側支持体は、正負の電極間で短絡を防ぐために絶縁体を用いることが好ましく、可動側支持体は、軽量な樹脂と用いることが好ましい。
【0040】
支持体の厚さは、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できるが、電極側支持体の場合、通常0.1~5mmであり、0.1~3mmであることが好ましく、0.1~1mmであることがより好ましく、可動側支持体の場合、通常0.01~1mmであり、0.01~0.2mmであることが好ましく、0.01~0.1mmであることがより好ましい。なお、上述した係止部を有する場合、電極側支持体の厚さとは、電極間に形成される係止部は考慮せず、係止部以外の電極側支持体の厚さを表すものとする。
支持体の面積は、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できる。
【0041】
<3-3.係止部>
上述したように、係止部は、電極側支持体自体の形状の一部として存在するものであってもよく、また、電極側支持体とは別の部材として該支持体に付加された存在であっても
よいが、安定した推力(ゲル状物質を移動させるための力)や、電極側支持体からの係止部の剥離の抑制の観点から、電極側支持体の形状の一部として存在するものが好ましい。
係止部を電極側支持体とは別の部材として付加する場合、短絡防止の観点から、材料として、絶縁体を用いることが好ましい。
係止部が、電極間領域の厚さが、電極外領域の厚さよりも大きくなる構成部である場合、一対の支持体間の空間の高さ(係止部が存在しない領域の高さ)に対する、係止部の高さ(電極間領域の厚さから電極外領域の厚さを引いた値)の割合は、ゲル状物質の移動の容易さとゲル状物質の戻りの抑制の観点から、5~95%であることが好ましく、5~50%であることがより好ましく、5~30%であることが特に好ましい。
【0042】
係止部が、電極間領域の厚さが、電極外領域の厚さよりも大きくなる構成部である場合、係止部の高さの最大値は、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できるが、ゲル物質が移動する際に分離、残留の恐れがないようするための観点から、通常0.1~10mmであり、0.1~2mmであることが好ましく、0.1~1mmであることがより好ましく、0.1~0.6mmであることが特に好ましい。
【0043】
電極側支持体に占める係止部の面積の割合は、ゲルアクチュエータの用途に応じて任意に選択できるが、ゲル物質が移動する際に分離、残留の恐れがないようするための観点から、通常1~25%であり、1~20%であることが好ましく、1~15%であることがより好ましく、1~10%であることが特に好ましい。
上記の狭隘部及び段差部がある場合、電圧の印加を解除した後のゲル状物質の戻り動作を低減させることができ、最終的な可動側支持体の移動距離を増加させることができる。
【0044】
<3-5.制御部>
ゲルアクチュエータは、印加電圧を制御する制御部を有していてもよい。制御部の態様は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。
特に、3つ以上の電極を備えるゲルアクチュエータにおいて特に有効である。
3つ以上の電極のうち2つの電極が、陽極と陰極とかるなる一対の電極であり、該一対の電極の吸着側電極に第3の電極が隣接して備えられるゲルアクチュエータにおいては、一対の電極及び前記第3の電極の極性が、前記吸着側電極の極性と同じ極性となるよう制御する可動側支持体を備えることが好ましい。該制御部により、
図6に示すようにゲル状物質及び可動側支持体を移動させることができる。
また、ゲル状物質が非吸着側電極と非接触となったところで、吸着側電極の極性を反転させ、かつ、第3の電極を吸着側電極と同じ極性に変化させるように電圧を制御する電圧制御部を備えることが好ましい。上述のように、吸着側の電極の極性を反転させることにより、第3の電極へのゲル状物質の移動の推力を増加させることができる。
【0045】
印加電圧の制御について、具体的には、例えば、
図11のグラフに示すように、電圧印加における駆動電圧と解放電圧とを繰り返すことにより、可動側支持体の移動を継続させて大きな移動量を発生させることができる。解放電圧は、0Vの電圧、駆動電圧とは正負逆転した電圧、又は駆動電圧と同じ正負方向であり可動側支持体の移動を妨げない程度の低電圧とすることにより上記の移動量の増大を実現でき、
図11は、駆動電圧とは正負逆転した電圧を印加した場合の態様である。
【0046】
<4.アクチュエータの用途>
アクチュエータは、自動車部品や電子部品、食品、医薬品、医療機器、製紙、検査機器等の種々の分野で用いられる機械部品において、入力されたエネルギー又はコンピュータが出力した電気信号を物理的運動に変換する機械・電気回路を構成する機械要素として用いることができる。特に、ゲルを用いたアクチュエータに特有の優れた伸縮性から、人工筋肉として応用することができ、人の動作を補助することを目的とする福祉機器や介護機
等に用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 ゲルアクチュエータ
10 支持体(可動側支持体)
11 ゲル状物質
12 支持体(電極側支持体)
13 電極
14 電極
15 第3の電極
X 係止部