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特許7331828重合体、樹脂組成物、成形体および重合体の製造方法
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  • 特許-重合体、樹脂組成物、成形体および重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】重合体、樹脂組成物、成形体および重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/18 20060101AFI20230816BHJP
   C08F 210/02 20060101ALI20230816BHJP
   C08F 220/22 20060101ALI20230816BHJP
   C08L 33/16 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08F8/18
C08F210/02
C08F220/22
C08L33/16
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020500469
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 JP2019004784
(87)【国際公開番号】W WO2019159863
(87)【国際公開日】2019-08-22
【審査請求日】2021-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2018022837
(32)【優先日】2018-02-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨
(74)【代理人】
【識別番号】100151909
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 徹
(72)【発明者】
【氏名】石渡 康司
(72)【発明者】
【氏名】櫻田 健太
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-519174(JP,A)
【文献】特表2006-504825(JP,A)
【文献】特開2016-222911(JP,A)
【文献】国際公開第2015/182702(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第101798395(CN,A)
【文献】特開2017-227329(JP,A)
【文献】Thomas Runzi, Stefan Mecking,Saturated Polar-Substituted Polyethylene Elastomers From Insertion Polymerization,ADVANCED FUNCTIONAL MATERIALS,2014年,vol. 24,387-395
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00-246/00
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(1)で示される構成単位(B)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下であり、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(B)の数が1%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の数が1%以上99%以下であり、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計量を100重量%として、前記構成単位(B)の含有量が50重量%以上である、
重合体。
(式(1)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合、―CH ―、―CH―CH―、―CH―CH―CH―、―CH―CH(OH)―CH ―または―CH―CH(CHOH)―を表し、
は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―または―N(CH)―を表し、
は、―(CH―(Rf2O)―Rf1を表し、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。
なお、L、LおよびLで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側に対応し、その右側が式(1)の下側に対応する。)
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)
【請求項2】
前記式(1)で示される構成単位(B)におけるLを構成するRf1が、CF(CF―(ここで、aは3以上9以下の整数を表す)である、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
架橋されている、請求項1または2に記載の重合体。
【請求項4】
ゲル分率が20%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項5】
前記重合体に含まれる全ての構成単位の合計数を100%として、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が90%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体を含む成形体。
【請求項7】
請求項1に記載の重合体である重合体(1)と、
示差走査熱量測定によって観測される融解ピーク温度またはガラス転移温度が50℃以上180℃以下である重合体(但し、以下に定義される除外重合体を除く)である重合体(2)とを含有し、
前記重合体(1)と前記重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(1)の含有量が1重量%以上99重量%以下であり、重合体(2)の含有量が1重量%以上99重量%以下である樹脂組成物。
除外重合体:
エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(1)で示される構成単位(B)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下であり、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(B)の数が1%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の数が1%以上99%以下である重合体。
(式(1)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合、―CH―、―CH―CH―、―CH―CH―CH―、―CH―CH(OH)―CH―または―CH―CH(CHOH)―を表し、
は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―または―N(CH)―を表し、
は、―(CH―(Rf2O)―Rf1を表し、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。
なお、L、LおよびLで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側に対応し、その右側が式(1)の下側に対応する。)
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)
【請求項8】
エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下である重合体と、
下記式(11)で示される化合物、下記式(12)で示される化合物、下記式(13)で示される化合物、下記式(14)で示される化合物、下記式(15)で示される化合物、下記式(16)で示される化合物、下記式(17)で示される化合物および下記式(18)で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物(α)とを反応させる工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の重合体の製造方法。
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)
f1―(ORf2―(CH―OH 式(11)
f1―(ORf2―(CH―NH 式(12)
f1―(ORf2―(CH―X 式(13)
f1―(ORf2―(CH―COOH 式(14)
f1―(ORf2―(CH―CONH 式(15)
f1―(ORf2―(CH―COX 式(16)
f1―(ORf2―(CH―NHCONH 式(17)
f1―(ORf2―(CH―NCO 式(18)
(式(11)~(18)中、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表し、
Xはハロゲン原子を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体、樹脂組成物、成形体および重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ポリテトラフルオロエチレンが撥水性および撥油性を示すことが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-25609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、撥水性および撥油性の更なる改良が求められている。
そこで、本発明は、撥水性および撥油性に優れる重合体であり、他の樹脂へ少量添加した場合であっても、撥水性および撥油性に優れる樹脂組成物を与えることができる重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の[1]~[11]を提供する。
【0006】
[1]エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(1)で示される構成単位(B)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下であり、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(B)の数が1%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の数が1%以上99%以下である重合体。
(式(1)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合、―CH―、―CH―CH―、―CH―CH―CH―、―CH―CH(OH)―CH―または―CH―CH(CHOH)―を表し、
は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―または―N(CH)―を表し、
は、―(CH―(Rf2O)―Rf1を表し、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。
なお、L、LおよびLで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側に対応し、その右側が式(1)の下側に対応する。)
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)
[2]前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計量を100重量%として、前記構成単位(B)の含有量が30重量%以上である、[1]に記載の重合体。
[3]前記式(1)で示される構成単位(B)におけるLを構成するRf1が、CF(CF―(ここで、aは3以上9以下の整数を表す)である、[1]または[2]に記載の重合体。
[4]架橋されている、[1]~[3]のいずれかに記載の重合体。
[5]ゲル分率が20%以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の重合体。
[6]前記重合体に含まれる全ての構成単位の合計数を100%として、前記構成単位(A)と前構成記単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が90%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の重合体。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の重合体を含む成形体。
[8][1]に記載の重合体である重合体(1)と、
示差走査熱量測定によって観測される融解ピーク温度またはガラス転移温度が50℃以上180℃以下である重合体(但し、以下に定義される除外重合体を除く)である重合体(2)とを含有し、
前記重合体(1)と前記重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(1)の含有量が1重量%以上99重量%以下であり、重合体(2)の含有量が1重量%以上99重量%以下である樹脂組成物。

除外重合体:
エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(1)で示される構成単位(B)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下であり、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(B)の数が1%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の数が1%以上99%以下である重合体。
(式(1)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合、―CH―、―CH―CH―、―CH―CH―CH―、―CH―CH(OH)―CH―または―CH―CH(CHOH)―を表し、
は、単結合、―CO―O―、―O―CO―、―O―、―CO―NH―、―NH―CO―、―CO―NH―CO―、―NH―CO―NH―、―NH―または―N(CH)―を表し、
は、―(CH―(Rf2O)―Rf1を表し、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。
なお、L、LおよびLで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(1)の上側に対応し、その右側が式(1)の下側に対応する。)
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)
[9]エチレンに由来する構成単位(A)と、下記式(2)で示される構成単位および下記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下である重合体と、
下記式(11)で示される化合物、下記式(12)で示される化合物、下記式(13)で示される化合物、下記式(14)で示される化合物、下記式(15)で示される化合物、下記式(16)で示される化合物、下記式(17)で示される化合物および下記式(18)で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物(α)と
を反応させる工程を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の重合体の製造方法。
(式(2)中、
Rは、水素原子またはメチル基を表し、
は、―CO―O―、―O―CO―または―O―を表し、
は、単結合または炭素原子数1以上8以下のアルキレン基を表し、
は、水素原子、エポキシ基、―CH(OH)―CHOH、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミノ基または炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基を表す。
なお、Lで表される横書きの化学式の各々は、その左側が式(2)の上側に対応し、その右側が式(2)の下側に対応する。)

f1―(ORf2―(CH―OH 式(11)
f1―(ORf2―(CH―NH 式(12)
f1―(ORf2―(CH―X 式(13)
f1―(ORf2―(CH―COOH 式(14)
f1―(ORf2―(CH―CONH 式(15)
f1―(ORf2―(CH―COX 式(16)
f1―(ORf2―(CH―NHCONH 式(17)
f1―(ORf2―(CH―NCO 式(18)
(式(11)~(18)中、
f1は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキル基を表し、
f2は、1個以上の水素原子が1個以上のフッ素原子で置換された炭素原子数1以上15以下のアルキレン基を表し、
nは0以上10以下の整数を表し、pは0以上15以下の整数を表し、
Xはハロゲン原子を表す。
pが2以上の整数である場合、複数の―(Rf2O)―は、同一でも異なっていてもよい。)
[10]フッ素原子を有するオレフィン重合体と、フッ素原子を有さない熱可塑性樹脂とを含有する成形体であって、
前記成形体の断面に、フッ素原子を有するオレフィン重合体からなる分散相が10個/1000μm以上存在し、該分散相の円相当径のうち、
0.5μm以上2.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raと、2.0μm以上3.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raと、3.0μm以上の円相当径を有する分散相の比率:Raとが、下記式(11)を満たす、成形体。

Ra>Ra>Ra (11)
[11]表面自由エネルギーの分散力成分γが25mN/m以下である、[10]に記載の成形体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撥水性および撥油性に優れる重合体であり、他の樹脂へ少量添加した場合であっても、撥水性および撥油性に優れる樹脂組成物を与えることができる重合体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例7で得られた成形体(シート)の断面に係る走査型電子顕微鏡の反射電子像である。
図2】比較例4で得られた成形体(シート)の断面に係る走査型電子顕微鏡の反射電子像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<重合体(1)>
【0010】
本発明に係る重合体は、
エチレンに由来する構成単位(A)と、上記式(1)で示される構成単位(B)と、上記式(2)で示される構成単位および上記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)とを含み、
前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下であり、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が1%以上30%以下であり、
前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(B)の数が1%以上99%以下であり、前記構成単位(C)の数が1%以上99%以下である重合体(以下、「重合体(1)」と記載することがある)である。
【0011】
本発明に係る重合体(1)は、エチレンに由来する構成単位(A)を有する。前記構成単位(A)は、エチレンを重合することにより得られる構成単位であり、前記構成単位(A)は、重合体中で分岐構造を形成していてもよい。
【0012】
・式(1)で示される構成単位(B)
【0013】
Rは、好ましくは、水素原子である。
【0014】
は、好ましくは、―CO―O―または―O―CO―であり、より好ましくは、―CO―O―である。
【0015】
は、好ましくは、単結合、―CH―、―CH―CH―または―CH―CH―CH―であり、より好ましくは、単結合である。
【0016】
は、好ましくは、単結合、―O―CO―、―O―、―NH―または―N(CH)―であり、より好ましくは、単結合である。
【0017】
を構成するRf1としては、例えば、CF(CF―(ここで、aは0以上14以下の整数を表す)、CFH(CHF)(CF―(ここで、bおよびcはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、かつ、bおよびcの合計は0以上14以下の整数である)が挙げられる。
【0018】
を構成するRf1は、好ましくは、CF(CF―(ここで、aは0以上14以下の整数を表す)であり、より好ましくは、CF(CF―(ここで、aは3以上9以下の整数を表す)であり、さらに好ましくは、CF(CF―(ここで、aは5以上7以下の整数を表す)である。
【0019】
を構成するpが1以上15以下の整数である場合、―(Rf2O)―Rf1としては、例えば-、―(CO)(CO)(CFO)CF(ここで、d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、かつ、d、eおよびfの合計は1以上15以下の整数である)、-(CO)(CO)(CHFO)CHF(ここで、g、hおよびiはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、かつ、g、hおよびiの合計は1以上15以下の整数である)が挙げられる。
【0020】
を構成するpが1以上15以下の整数である場合、―(Rf2O)―Rf1は、好ましくは、-(CO)(CO)(CFO)CF(ここで、d、eおよびfはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、かつ、d、eおよびfの合計は1以上15以下の整数である)であり、より好ましくは、-(CO)(CFO)CF(ここで、dおよびeはそれぞれ独立に0以上の整数を表し、かつ、dおよびeの合計は1以上15以下の整数である)である。
【0021】
を構成するpは、好ましくは、0以上10以下の整数であり、より好ましくは、0以上5以下の整数であり、さらに好ましくは、0である。
【0022】
を構成するnは、好ましくは、0以上4以下の整数であり、より好ましくは、1または2であり、さらに好ましくは、2である。
【0023】
式(1)で示される構成単位(B)としては、例えば、以下の構成単位が挙げられる。
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
式(1)で示される構成単位(B)は、好ましくは以下のいずれかで示される構成単位である。
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
式(1)で示される構成単位(B)は、より好ましくは以下のいずれかで示される構成単位である。
【0039】
【0040】
式(1)で示される構成単位(B)は、さらに好ましくは以下で示される構成単位である。
【0041】
【0042】
前記構成単位(B)は、
好ましくは、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルアクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルメタクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタン酸ビニルに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカン酸ビニルに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルビニルエーテルに由来する構成単位、または、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルビニルエーテルに由来する構成単位であり、
より好ましくは、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルアクリレートに由来する構成単位、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレートに由来する構成単位、または、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルメタクリレートに由来する構成単位であり、
さらに好ましくは、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレートに由来する構成単位、または、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルアクリレートに由来する構成単位である。
【0043】
本発明に係る重合体(1)は、2種類以上の構成単位(B)を含んでいてもよく、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレートに由来する構成単位と、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルアクリレートに由来する構成単位とを含む重合体であってもよい。
【0044】
本発明に係る重合体(1)は、上記式(2)で示される構成単位および上記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)を含む。
【0045】
・式(2)で示される構成単位
【0046】
Rは、好ましくは、水素原子である。
【0047】
は、好ましくは、―CO―O―、―O―CO―または―O―であり、より好ましくは―CO―O―または―O―CO―であり、さらに好ましくは、―CO―O―である。
【0048】
で表される炭素原子数1以上8以下のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、1-メチルエチレン基、n-ブチレン基、1,2-ジメチルエチレン基、1,1-ジメチルエチレン基、2,2-ジメチルエチレン基、n-ペンチレン基、n-へキシレン基、n-ヘプタレン基、n-オクチレン基および2-エチル-n-へキシレン基が挙げられる。
【0049】
は、好ましくは、単結合、メチレン基、エチレン基またはn-プロピレン基であり、より好ましくは、メチレン基である。
【0050】
で表される炭素原子数1以上4以下のアルキルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基およびジエチルアミノ基が挙げられる。
【0051】
は、好ましくは、水素原子、エポキシ基または―CH(OH)―CHOHであり、より好ましくは、水素原子である。
【0052】
式(2)で示される構成単位としては、例えば、以下の構成単位が挙げられる。
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
式(2)で示される構成単位は、好ましくは以下のいずれかで示される構成単位である。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
式(2)で示される構成単位は、より好ましくは以下のいずれかで示される構成単位である。
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
式(2)で示される構成単位は、さらに好ましくは以下で示される構成単位である。
【0066】
【0067】
式(2)で示される構成単位としては、例えば、アクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸に由来する構成単位、ビニルアルコールに由来する構成単位、メチルアクリレートに由来する構成単位、エチルアクリレートに由来する構成単位、n-プロピルアクリレートに由来する構成単位、イソプロピルアクリレートに由来する構成単位、n-ブチルアクリレートに由来する構成単位、イソブチルアクリレートに由来する構成単位、sec-ブチルアクリレートに由来する構成単位、tert-ブチルアクリレートに由来する構成単位、メチルメタクリレートに由来する構成単位、エチルメタクリレートに由来する構成単位、n-プロピルメタクリレートに由来する構成単位、イソプロピルメタクリレートに由来する構成単位、n-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、イソブチルメタクリレートに由来する構成単位、sec-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、tert-ブチルメタクリレートに由来する構成単位、ビニルホルメートに由来する構成単位、ビニルアセテートに由来する構成単位、ビニルプロピオネートに由来する構成単位、ビニル(n-ブチレート)に由来する構成単位、ビニル(イソブチレート)に由来する構成単位、メチルビニルエーテルに由来する構成単位、エチルビニルエーテルに由来する構成単位、n-プロピルビニルエーテルに由来する構成単位、イソプロピルビニルエーテルに由来する構成単位、n-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、イソブチルビニルエーテルに由来する構成単位、sec-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、tert-ブチルビニルエーテルに由来する構成単位、グリシジルアクリレートに由来する構成単位、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートに由来する構成単位、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートに由来する構成単位、および、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートに由来する構成単位が挙げられ、
好ましくは、アクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸に由来する構成単位、ビニルアルコールに由来する構成単位、メチルアクリレートに由来する構成単位、エチルアクリレートに由来する構成単位、イソプロピルアクリレートに由来する構成単位、メチルメタクリレートに由来する構成単位、エチルメタクリレートに由来する構成単位、イソプロピルメタクリレートに由来する構成単位、ビニルホルメートに由来する構成単位、ビニルアセテートに由来する構成単位、グリシジルアクリレートに由来する構成単位、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルアクリレートに由来する構成単位、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートに由来する構成単位、3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレートに由来する構成単位、または、3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレートに由来する構成単位であり、
より好ましくは、アクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸に由来する構成単位、メチルアクリレートに由来する構成単位、エチルアクリレートに由来する構成単位、メチルメタクリレートに由来する構成単位、ビニルアセテートに由来する構成単位、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位、または、2,3-ジヒドロキシプロピルメタクリレートに由来する構成単位であり、
さらに好ましくは、メチルアクリレートに由来する構成単位である。
【0068】
・式(3)で示される構成単位
【0069】
式(3)で示される構成単位は、無水マレイン酸に由来する構成単位である。
【0070】
本発明に係る重合体(1)は、2種類以上の構成単位(C)を含んでいてもよく、例えば、メチルアクリレートに由来する構成単位と、エチルアクリレートに由来する構成単位と、グリシジルメタクリレートに由来する構成単位とを含む重合体であってもよい。
【0071】
本発明に係る重合体(1)としては、
構成単位(A)と、
Rが水素原子またはメチル基であり、Lが-CO-O-であり、LおよびLが単結合であり、Lが―(CH―Rf1である式(1)で示される構成単位(B)と、
Rが水素原子またはメチル基であり、Lが-CO-O-であり、Lが炭素原子数1のアルキレン基であり、Lが水素原子である式(2)で示される構成単位(C)とを含む重合体であって、
該重合体に含まれる全ての構成単位の合計数を100%として、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が90%以上である重合体
が挙げられる。
【0072】
本発明に係る重合体(1)における前記構成単位(A)の数は、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、70%以上99%以下であり、該重合体(1)を含む成形体の成形加工性が良好となるので、好ましくは75%以上99%以下であり、より好ましくは80%以上99%以下である。
【0073】
本発明に係る重合体(1)における前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数は、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、1%以上30%以下であり、該重合体(1)を含む成形体の撥水性と撥油性がより良好となるので、好ましくは5%以上30%以下であり、より好ましくは10%以上30%以下である。
【0074】
本発明に係る重合体(1)における前記構成単位(B)の数は、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、1%以上99%以下であり、該重合体(1)を含む成形体の撥水性と撥油性がより良好となるので、好ましくは10%以上99%以下であり、より好ましくは20%以上99%以下であり、さらに好ましくは50%以上99%以下である。
【0075】
本発明に係る重合体(1)における前記構成単位(C)の数は、前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、1%以上99%以下であり、該重合体(1)を含む成形体の成形加工性が良好となるので、好ましくは5%以上99%以下であり、より好ましくは10%以上99%以下であり、さらに好ましくは20%以上99%以下である。
【0076】
本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)の数、前記構成単位(B)の数、および、前記構成単位(C)の数は、例えば、13C核磁気共鳴スペクトル(以下、13C-NMRスペクトル)またはH核磁気共鳴スペクトル(以下、H-NMRスペクトル)において各構成単位に帰属されるシグナルの積分値から求めることができる。
【0077】
本発明に係る重合体(1)が、エチレンに由来する構成単位(A)と、上記式(2)で示される構成単位および上記式(3)で示される構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位(C)を含み、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、前記構成単位(A)の数が70%以上99%以下である重合体(以下、前駆重合体(1)と記載することがある)と、上記化合物(α)とを反応させる工程を含む製造方法により製造された重合体である場合、
前記構成単位(A)の数、前記構成単位(B)の数、および、前記構成単位(C)の数は、例えば、以下の方法により求めることができる。
【0078】
まず、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)および前記構成単位(C)の数を求める。これらを13C-NMRスペクトルから求める場合、該スペクトルから前記構成単位(A)および前記構成単位(C)のダイアッド(AA、AC、CC)の分率を求め、下記式に代入することにより、前記構成単位(A)および前記構成単位(C)の数を求める。なお、AAは、構成単位(A)-構成単位(A)ダイアッド、ACは、構成単位(A)-構成単位(C)ダイアッド、CCは、構成単位(C)-構成単位(C)ダイアッドである。

構成単位(A)の数=100-構成単位(C)の数
構成単位(C)の数=100×(AC/2+CC)/(AA+AC+CC)
【0079】
次に、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と、化合物(α)とが反応することにより、本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(B)が形成されるので、該反応による前記構成単位(C)の転化率を、以下の方法により求める。
【0080】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)の側鎖に含まれる特定の炭素原子(例えば、カルボニル炭素原子)に帰属されるシグナルの積分値(以下、積分値Y)と、本発明に係る重合体(1)に含まれる構成単位(B)の側鎖に含まれる特定の炭素原子(例えば、カルボニル炭素原子)に帰属されるシグナルの積分値(以下、積分値Z)とを、下記式に代入することにより、転化率を求める。

転化率=Z/(Y+Z)
【0081】
前駆重合体(1)と化合物(α)との反応では、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)は変化しない。そのため、重合体(1)に含まれる構成単位(A)の数と前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)の数は同じとする。
本発明に係る重合体(1)に含まれる構成単位(B)の数は、前駆重合体(1)に含まれる構成単位(C)の数と前記転化率の積として求められる。そのため、本発明に係る重合体(1)に含まれる構成単位(C)の数は、前駆重合体(1)に含まれる構成単位(C)の数と重合体(1)に含まれる構成単位(B)の数の差として求められる。
【0082】
本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計量は、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計量を100重量%として、該重合体(1)を含む成形体の成形加工性が良好となるので、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは20重量%以上であり、さらに好ましくは30重量%以上である。
【0083】
本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(B)の含有量は、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計量を100重量%として、該重合体(1)を含む成形体の撥水性と撥油性がより良好となるので、好ましくは10重量%以上であり、より好ましくは30重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0084】
本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)、前記構成単位(B)および前記構成単位(C)の含有量(重量%)は、それぞれ、以下の式より算出することができる。
【0085】
構成単位(A)の重量%=(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0086】
構成単位(B)の重量%=(構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0087】
構成単位(C)の重量%=(構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0088】
本発明の重合体(1)の製造方法としては、例えば、
上記前駆重合体(1)と、
上記式(11)で示される化合物、上記式(12)で示される化合物、上記式(13)で示される化合物、上記式(14)で示される化合物、上記式(15)で示される化合物、上記式(16)で示される化合物、上記式(17)で示される化合物および上記式(18)で示される化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物(α)と
を反応させる工程を含む、重合体の製造方法;および
エチレンと、前記構成単位(B)の原料となるモノマーと、前記構成単位(C)の原料となるモノマーとを共重合する方法;が挙げられる。
【0089】
前駆重合体(1)は、本発明に係る重合体(1)を製造するための原料であり、式(1)で示される構成単位(B)を含まない。前駆重合体(1)は、前記構成単位(A)、前記構成単位(B)および前記構成単位(C)とは異なる構成単位を含んでもよい。
【0090】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(A)の数は、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、70%以上99%以下であり、製造された本発明に係る重合体(1)を含む成形体の成形加工性が良好となるので、好ましくは75%以上99%以下であり、より好ましくは80%以上99%以下である。
【0091】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)の数は、前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の合計数を100%として、1%以上30%以下であり、製造された本発明に係る重合体(1)を含む成形体の撥水性と撥油性がより良好となるので、好ましくは5%以上30%以下であり、より好ましくは10%以上30%以下である。
【0092】
本発明に係る重合体(1)に含まれる前記構成単位(B)の形成方法としては、例えば前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と上記化合物(α)とを反応させる方法、および、前記構成単位(B)の原料となるモノマーを重合させる方法が挙げられる。
【0093】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と、上記化合物(α)とを反応させる方法としては、
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエステル基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)または前記式(14)で示される化合物と反応させる方法が挙げられ、
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてカルボキシ基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)、前記式(13)、前記式(15)、前記式(16)、前記式(17)または前記式(18)で示される化合物と反応させる方法が挙げられ、
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基として水酸基を有する場合、前記式(13)、前記式(14)、前記式(16)または前記式(18)で示される化合物と反応させる方法が挙げられ、
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてアミノ基を有する場合、前記式(13)、前記式(14)、前記式(15)、前記式(16)、前記式(17)または前記式(18)で示される化合物と反応させる方法が挙げられ、
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエポキシ基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)、前記式(14)、前記式(15)または前記式(17)で示される化合物と反応させる方法が挙げられる。
【0094】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と、上記化合物(α)とを反応させる方法としては、好ましくは、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエステル基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)または前記式(14)で示される化合物との反応、または、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエポキシ基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)、前記式(14)、前記式(15)または前記式(17)で示される化合物と反応させる方法である。
【0095】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と、上記化合物(α)とを反応させる方法としては、より好ましくは、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエステル基を有する場合、前記式(11)、前記式(12)または前記式(14)で示される化合物と反応させる方法である。
【0096】
前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)と、上記化合物(α)とを反応させる方法としては、さらに好ましくは、前駆重合体(1)に含まれる前記構成単位(C)が官能基としてエステル基を有する場合、前記式(11)で示される化合物と反応させる方法である。
【0097】
エチレンと前記構成単位(B)の原料となるモノマーを重合する方法としては、例えば、
エチレンと、
1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレート、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルメタクリレート、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタン酸ビニル、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカン酸ビニル、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルビニルエーテル、1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルビニルエーテル等の前記構成単位(B)の原料となるモノマーとを、
tert-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物、または、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を重合開始剤に用いて重合する方法が挙げられる。
【0098】
前駆重合体(1)として、例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メチルアクリレート共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-n-プロピルアクリレート共重合体、エチレン-n-ブチルアクリレート共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-エチルメタクリレート共重合体、エチレン-n-プロピルメタクリレート共重合体、エチレン-n-ブチルメタクリレート共重合体、エチレン-ビニルホルメート共重合体、エチレン-ビニルアセテート共重合体、エチレン-ビニルプロピオネート共重合体、エチレン-ビニル(n-ブチレート)共重合体、エチレン-メチルビニルエーテル共重合体、エチレン-エチルビニルエーテル共重合体、エチレン-n-プロピルビニルエーテル共重合体、エチレン-n-ブチルビニルエーテル共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-グリシジルアクリレート共重合体、エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体、エチレン-3-(ジメチルアミノ)プロピルアクリレート共重合体、および、エチレン-3-(ジメチルアミノ)プロピルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0099】
本発明に係る重合体(1)を、前駆重合体(1)と化合物(α)とを反応させる工程を含む製造方法により製造する場合、化合物(α)として、目的とする重合体(1)に含まれる構成単位(B)を構成するL(すなわち、Rf1―(ORf2―(CH―)に対応する化合物(α)を使用する。
【0100】
式(11)~式(18)中、Rf1、Rf2、nおよびpの例および好ましい範囲は、式(1)中のRf1、Rf2、nおよびpの例および好ましい範囲と同様である。
【0101】
式(11)~式(18)中、Xで表されるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子が挙げられる。
【0102】
式(11)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタノールおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカノールが挙げられる。
【0103】
式(12)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-アミノオクタンおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-アミノデカンが挙げられる。
【0104】
式(13)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-クロロオクタンおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-クロロデカンが挙げられる。
【0105】
式(14)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタン酸および1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカン酸が挙げられる。
【0106】
式(15)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタンアミドおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカンアミドが挙げられる。
【0107】
式(16)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタン酸クロライドおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デカン酸クロライドが挙げられる。
【0108】
式(17)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチル尿素および1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシル尿素が挙げられる。
【0109】
式(18)で示される化合物としては、例えば、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルイソシアネートおよび1H,1H,2H,2H-へプタデカフルオロ-1-デシルイソシアネートが挙げられる。
【0110】
前駆重合体(1)の製造時に原料として用いるエチレンの反応性比をr1、前記構成単位(C)を形成するモノマーの反応性比をr2とした場合、反応性比の積r1×r2は、製造された本発明に係る重合体(1)を含む成形体の形状保持性が良好となるので、好ましくは0.5以上5.0以下であり、より好ましくは0.5以上3.0以下である。
【0111】
エチレンの反応性比r1は、エチレンと前記構成単位(C)を形成するモノマーとの共重合時に、末端が構成単位(A)である重合体にエチレンが結合する反応速度をk11、末端が構成単位(A)である重合体に構成単位(C)を形成するモノマーが結合する反応速度をk12として、r1=k11/k12で定義される値である。この反応性比r1は、エチレンと前記構成単位(C)を形成するモノマーとの共重合時に、末端が構成単位(A)である重合体が、エチレンまたは構成単位(C)を形成するモノマーのどちらとより反応しやすいかを表す指標である。r1が大きいほど、末端が構成単位(A)である重合体はエチレンとより反応しやすいため、構成単位(A)の連鎖が生成しやすい。
【0112】
構成単位(C)を形成するモノマーの反応性比r2は、エチレンと前記構成単位(C)を形成するモノマーとの共重合時に、末端が構成単位(C)である重合体にエチレンが結合する反応速度をk21、末端が構成単位(C)である重合体に構成単位(C)を形成するモノマーが結合する反応速度をk22として、r2=k22/k21で定義される値である。この反応性比r2は、エチレンと前記構成単位(C)を形成するモノマーとの共重合時に、末端が構成単位(C)である重合体がエチレンまたは構成単位(C)を形成するモノマーのどちらとより反応しやすいかを表す指標である。r2が大きいほど、末端が構成単位(C)である重合体は構成単位(C)を形成するモノマーとより反応しやすいため、構成単位(C)の連鎖が生成しやすい。
【0113】
反応性比の積r1r2は、文献「Kakugo,M.;Naito,Y.;Mizunuma,K.;Miyatake, T. Macromolecules,1982,15,1150」に記載された方法により算出される。本発明においては、反応性比の積r1r2は、前駆重合体(1)の13C核磁気共鳴スペクトルから算出される前記構成単位(A)と前記構成単位(C)の各ダイアッドAA、AC、CCの分率を、下記式に代入することにより得られる。

r1r2=AA[CC/(AC/2)]
【0114】
反応性比の積r1r2は、共重合体のモノマー連鎖分布を表す指標である。反応性比の積r1r2が1に近いほど、共重合体のモノマー連鎖分布はランダム性が高く、反応性比の積r1r2が0に近いほど、共重合体のモノマー連鎖分布は交互共重合体性が高く、反応性比の積r1r2が1より大きいほど、共重合体のモノマー連鎖分布はブロック共重合体性が高い。
【0115】
JIS K7210に準拠して温度190℃、荷重21Nで測定される前駆重合体(1)のメルトフローレート(MFR)は、好ましくは、0.1g/10分以上500g/10分以下であり、より好ましくは、1g/10分以上100g/10分以下であり、さらに好ましくは、5g/10分以上50g/10分以下である。
【0116】
前駆重合体(1)の製造方法としては、例えば、配位重合法、カチオン重合法、アニオン重合法、ラジカル重合法が挙げられ、好ましくは、ラジカル重合法であり、より好ましくは、高圧下でのラジカル重合法である。
【0117】
前駆重合体(1)と、化合物(α)とを反応させる温度は、通常40℃以上250℃以下である。この反応は、溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエンおよびキシレンが挙げられる。また、この反応において副生成物が生じる場合、反応を促進させるため、副生成物を減圧留去しながら反応を行ってもよく、副生成物を溶媒とともに共沸させ、気化された副生成物と溶媒とを冷却し、副生成物と溶媒とを含む留出液を副生成物層と溶媒層とに分液し、回収された溶媒層のみを還流液として反応系内に戻しながら反応を行ってもよい。
【0118】
前駆重合体(1)と、少なくとも二種の化合物(α)との反応は、前駆重合体(1)と、少なくとも二種の化合物(α)とを溶融混練しながら行ってもよい。溶融混練しながら前駆重合体(1)と、少なくとも二種の化合物(α)とを反応させた際に副生成物が生じる場合は、反応を促進させるために、副生成物を減圧留去しながら反応を行ってもよい。溶融混練に用いられる溶融混練装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサーが挙げられる。溶融混練の温度は、好ましくは100℃以上250℃以下である。
【0119】
前駆重合体(1)と、化合物(α)とを反応させる際、反応を促進させるために触媒を添加してもよい。触媒としては、例えば、アルカリ金属塩や4族金属錯体が挙げられる。アルカリ金属塩としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物、および、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド等のアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。4族金属錯体としては、例えば、オルトチタン酸テトラ(イソプロピル)、オルトチタン酸テトラ(n-ブチル)およびオルトチタン酸テトラオクタデシルが挙げられる。触媒の添加量は、反応に用いられる前駆重合体(1)と化合物(α)との合計量100重量部に対して、好ましくは、0.01重量部以上50重量部以下であり、より好ましくは、0.01重量部以上5重量部以下である。
【0120】
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により測定される本発明に係る重合体(1)のポリスチレン換算重量平均分子量Mwは、好ましくは、10,000~5,000,000であり、より好ましくは、50,000~1,000,000、さらに好ましくは、100,000~500,000である。
【0121】
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより本発明に係る重合体(1)のポリスチレン換算重量平均分子量Mwを測定する際、通常、移動相はオルトジクロロベンゼンであり、測定温度は140℃である。
【0122】
本発明に係る重合体(1)は、該重合体(1)の成形加工性が良好となるので、エチレンに由来する構成単位(A)を含む。本発明に係る重合体(1)のブロー成形性または発泡成形性が良好となるので、エチレンに由来する構成単位(A)が重合体中で分岐構造を形成していることが好ましく、該分岐構造は、高分子鎖の絡み合いが可能な程度に長い長鎖分岐構造であることがより好ましい。
【0123】
本発明に係る重合体(1)に関して、下記式(I)で定義される比Aは、好ましくは0.95以下であり、より好ましくは0.90以下であり、さらに好ましくは0.80以下である。

A=α/α (I)
[式(I)中、
αは、光散乱検出器と粘度検出器とを備えた装置を用いるゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより、重合体の絶対分子量と固有粘度とを測定し、
絶対分子量の対数を横軸とし、固有粘度の対数を縦軸として、測定したデータをプロットし、絶対分子量の対数と固有粘度の対数とを、横軸が前記重合体の重量平均分子量の対数以上でありz平均分子量の対数以下である範囲において、式(I-I)で最小二乗法近似し、式(I-I)で表される直線の傾き:αを求めることで得られる値である。

log[η]=αlogM+logK (I-I)
(式(I-I)中、[η]は重合体の固有粘度(単位:dl/g)を表し、Mは重合体の絶対分子量を表し、Kは定数である。)

αは、光散乱検出器と粘度検出器とを備えた装置を用いるゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーにより、ポリエチレン標準物質1475a(米国国立標準技術研究所製)の絶対分子量と固有粘度とを測定し、
絶対分子量の対数を横軸とし、固有粘度の対数を縦軸として、測定したデータをプロットし、絶対分子量の対数と固有粘度の対数とを、横軸が前記ポリエチレン標準物質1475aの重量平均分子量の対数以上でありz平均分子量の対数以下である範囲において、式(I-II)で最小二乗法近似し、式(I-II)で表される直線の傾き:αを求めることで得られる値である。

log[η]=αlogM+logK (I-II)
(式(I-II)中、[η]はポリエチレン標準物質1475aの固有粘度(単位:dl/g)を表し、Mはポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量を表し、Kは定数である。)]
【0124】
なお、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィーによる重合体およびポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量と固有粘度との測定において、通常、移動相はオルトジクロロベンゼンであり、測定温度は155℃である。
【0125】
光散乱検出器により得られたデータから絶対分子量を求め、粘度検出器により固有粘度([η])を求めるにあたっては、Malvern社のデータ処理ソフトOmniSEC(version4.7)を利用し、文献「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」に基づいて計算を行う。
【0126】
前記ポリエチレン標準物質1475a(米国国立標準技術研究所製)は、分岐を含まない高密度ポリエチレンである。
【0127】
前記式(I-I)および式(I-II)は、重合体の固有粘度と分子量との相関を表すMark-Hauwink-Sakuradaの式と称されており、αが小さいほど、分岐構造による高分子鎖の絡み合いの数が多い。前記ポリエチレン標準物質1475aは、分岐構造を形成していないため、分岐構造による高分子鎖の絡み合いは生じない。前記ポリエチレン標準物質1475aのαに対するαの比であるAが小さいほど、重合体中で前記構成単位(A)が形成している長鎖分岐構造の量が多い。
【0128】
本発明に係る重合体(1)は、未反応の化合物(α)、または、反応を促進させるために添加した触媒と混合物を形成していてもよい。該混合物に含まれる未反応の化合物(α)の含有量は、重合体100重量部に対して3重量部未満であることが好ましい。
【0129】
本発明に係る重合体(1)は、架橋されている重合体でもよく、架橋されていない重合体でもよい。
【0130】
本発明に係る一つの態様において、重合体(1)は、架橋されていない重合体(以下、「重合体(α)」と記載することがある)である。
【0131】
重合体(α)は、後述する重合体のゲル分率が20重量%未満である。
【0132】
重合体(α)は、重合体に含まれる全ての構成単位の合計数を100%として、前記構成単位(A)と前記構成単位(B)と前記構成単位(C)の合計数が90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、100%であることがさらに好ましい。
【0133】
<架橋されている重合体>
本発明に係る一つの態様において、重合体(1)は架橋されている。すなわち、重合体(1)の分子の少なくとも一部が分子間で共有結合により連結されている。
【0134】
重合体(α)を架橋する方法としては、例えば、電離性放射線を照射して架橋する方法、有機過酸化物を用いて架橋する方法が挙げられる。
【0135】
重合体(α)に電離性放射線を照射して架橋を行う場合、通常、あらかじめ所望の形状に成形された重合体(α)に電離性放射線を照射する。成形には、公知の方法が用いられるが、押出成形、射出成形またはプレス成形が好ましい。電離性放射線を照射する成形体は、重合体(α)のみを含む成形体であってもよく、重合体(α)と、重合体(α)とは異なる重合体とを含む成形体でもよい。重合体(α)とは異なる重合体としては、後述の重合体(2)が挙げられる。成形体が重合体(α)と重合体(2)とを含有する場合、重合体(α)と重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(α)の含有量が1重量%以上99重量%以下であることが好ましい。
【0136】
電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線、中性子線およびX線が挙げられ、コバルト-60のγ線、または、電子線が好ましい。重合体を含む成形体がシート状である場合、電離性放射線を該シート状成形体の少なくとも一面へ照射すればよい。
【0137】
電離性放射線の照射は、公知の電離性放射線照射装置を用いて行われる。照射量は、通常5~300kGyであり、好ましくは10~150kGyである。本発明に係る重合体は、低い照射量で高い架橋度の重合体を得ることができる。
【0138】
電離性放射線の照射によって架橋されている重合体(1)を得る場合、電離性放射線を照射する成形体が架橋助剤を含むことにより、より架橋度の高い架橋されている重合体(1)を得ることができる。架橋助剤は、重合体(1)の架橋度を高めることにより機械的特性を向上させるためのものであり、分子内に二重結合を複数持つ化合物が好ましく用いられる。架橋助剤としては、例えば、N,N’-m-フェニレンビスマレイミド、トルイレンビスマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、p-キノンジオキシム、ニトロベンゼン、ジフェニルグアニジン、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびアリルメタクリレートを挙げることができる。架橋助剤は、単独で使用してもよく、複数を組み合せて使用してもよい。
【0139】
架橋助剤の添加量は、電離性放射線を照射する成形体に含まれる重合体(α)と、該重合体(α)とは異なる重合体の合計重量を100重量部として、0.01~4.0重量部であることが好ましく、0.05~2.0重量部であることがより好ましい。
【0140】
有機過酸化物を用いて架橋する方法としては、例えば、重合体(α)と有機過酸化物を含む組成物を、加熱を伴う公知の成形方法により、重合体(α)を架橋する方法が挙げられる。加熱を伴う公知の成形方法としては、例えば、押出成形、射出成形およびプレス成形が挙げられる。重合体(α)と有機過酸化物を含む組成物は、重合体成分として、本発明に係る重合体のみを含んでもよく、本発明に係る重合体と、該重合体とは異なる重合体とを含んでもよい。
【0141】
重合体(α)と有機過酸化物を含む組成物が、重合体(α)とは異なる重合体を含有する場合、該重合体としては、後述の重合体(2)が挙げられ、重合体(α)と重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(α)の含有量が1重量%以上99重量%以下であることが好ましい。
【0142】
重合体(α)を有機過酸化物によって架橋する場合、重合体(α)と有機過酸化物とを含む組成物に含まれる重合体成分の流動開始温度以上の分解温度を有する有機過酸化物が好ましい。好ましい有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-tert-ブチルパーオキシヘキシン、α,α-ジ-tert-ブチルパーオキシイソプロピルベンゼン、tert-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルカーボネートを挙げることができる。
【0143】
架橋されている重合体(1)は、必要に応じて、公知の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、難燃剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、抗ブロッキング剤、帯電防止剤、防曇剤、無滴剤、顔料およびフィラーが挙げられる。これらの添加剤は、重合体(α)を架橋する前に、重合体(α)と混練することにより添加することができる。
【0144】
架橋されている重合体(1)は、好ましくはゲル分率が20重量%以上であり、より好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは60重量%以上であり、最も好ましくは70重量%以上である。ゲル分率は、架橋されている重合体の架橋度を示すものであり、重合体のゲル分率が高いことは、重合体がより多くの架橋構造を有し、より強固なネットワーク構造が形成されていることを意味する。重合体のゲル分率が高いと、重合体は形状保持性が高く、変形しにくい。
【0145】
ゲル分率は、以下に記す方法で求められる。
【0146】
重合体約500mgと、金網(目開き:400メッシュ)で作製した空の網篭とを秤量する。重合体を封入した網篭とキシレン(関東化学株式会社製 鹿特級またはその同等品:o-キシレン、m-キシレン、p-キシレンおよびエチルベンゼンの混合物であり、o-キシレン、m-キシレンおよびp-キシレンの合計重量が85重量%以上である)50mLを、100mL試験管に導入し、110℃で6時間加熱抽出を行う。抽出後、抽出残渣入り網篭を試験管から取り出し、真空乾燥機にて80℃で8時間減圧乾燥を行い、乾燥後の抽出残渣入り網篭を秤量する。ゲル重量は、乾燥後の抽出残渣入り網篭と空の網篭の重量差から算出する。ゲル分率(重量%)は、下記式で算出される。

ゲル分率=(ゲル重量/測定試料重量)×100
【0147】
<樹脂組成物>
本発明に係る樹脂組成物は、前記重合体(1)と、
示差走査熱量測定によって観測される融解ピーク温度またはガラス転移温度が50℃以上180℃以下である重合体(但し、上記の除外重合体を除く)である重合体(2)とを含有し、
前記重合体(1)と前記重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(1)の含有量が1重量%以上99重量%以下であり、重合体(2)の含有量が1重量%以上99重量%以下である樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(1)」と記載することがある)であり、
好ましくは、重合体(1)の含有量が1重量%以上50重量%以下であり、重合体(2)の含有量が50重量%以上99重量%以下であり、
より好ましくは、重合体(1)の含有量が1重量%以上30重量%以下であり、重合体(2)の含有量が70重量%以上99重量%以下であり、
さらに好ましくは、重合体(1)の含有量が1重量%以上10重量%以下であり、重合体(2)の含有量が90重量%以上99重量%以下である。
【0148】
本発明に係る樹脂組成物(1)は、2種以上の重合体(1)を含有していてもよく、2種以上の重合体(2)を含有していてもよい。
【0149】
示差走査熱量測定(DSC)によって観測される重合体(2)の融解ピーク温度またはガラス転移温度は、50℃以上180℃以下の範囲内にある。
【0150】
重合体(2)の融解ピーク温度は、以下の示差走査熱量測定により測定される融解曲線を、JIS K7121-1987に準拠した方法により解析して得られる融解ピークの極値における温度であり、融解吸熱量が最大となる温度である。
【0151】
重合体(2)のガラス転移温度は、以下の示差走査熱量測定により測定される融解曲線を、JIS K7121-1987に準拠した方法により解析して得られる中間点ガラス転移温度である。
【0152】
[示差走査熱量測定方法]
示差走査熱量計を用いて、窒素雰囲気下で、約5mgの試料を封入したアルミニウムパンを、工程(1)200℃で5分間保持し、工程(2)5℃/分の速度で200℃から-80℃まで降温し、工程(3)-80℃で5分間保持し、工程(4)5℃/分の速度で-80℃から200℃まで昇温する。工程(4)における熱量測定により得られた示差走査熱量測定曲線を融解曲線とする。
【0153】
融解ピーク温度が50℃以上180℃以下の範囲内にある重合体(2)としては、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)およびポリプロピレン(PP)が挙げられる。
【0154】
ガラス転移温度が50℃以上180℃以下の範囲内にある重合体(2)としては、例えば、環状オレフィン重合体(COP)、環状オレフィン共重合体(COC)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル-スチレン共重合体(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリアミド6(PA6)、ポリアミド66(PA66)、ポリカーボネート(PC)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)およびポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が挙げられる。
【0155】
重合体(2)であるエチレン-α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位とα-オレフィンに由来する構成単位とを有する共重合体である。該α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン挙げられ、単独であってもよく、2種以上であってもよい。α-オレフィンは、好ましくは、炭素原子数4~8のα-オレフィンであり、より好ましくは、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンである。
【0156】
重合体(2)である高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンおよびエチレン-α-オレフィン共重合体の密度は、通常、860kg/m以上960kg/m以下である。
【0157】
重合体(2)であるポリプロピレンは、プロピレン単独重合体、下記プロピレンランダム共重合体、および、下記プロピレン重合材料が挙げられる。ポリプロピレンに含まれるプロピレンに由来する構成単位の含有量は、通常、50重量%を超え100重量%以下である(但し、ポリプロピレンを構成する構成単位の総量を100重量%とする)。
重合体(2)であるポリプロピレンは、融解ピーク温度が100℃以上であることが好ましい。
【0158】
重合体(2)であるポリプロピレンは、好ましくは、プロピレン単独重合体である。
【0159】
プロピレンランダム共重合体:
プロピレンに由来する構成単位と、エチレンに由来する構成単位およびα-オレフィンに由来する構成単位からなる群より選ばれる少なくとも一種の構成単位とを含むランダム共重合体である。プロピレンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレン-α-オレフィンランダム共重合体、および、プロピレン-α-オレフィンランダム共重合体が挙げられる。該α-オレフィンとしては、炭素原子数4~10のα-オレフィンが好ましい。このようなα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン等の直鎖状α-オレフィン、および、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン等の分岐状α-オレフィンが挙げられる。プロピレンランダム共重合体に含まれるα-オレフィンに由来する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0160】
プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体の製造方法としては、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた、または、メタロセン系錯体、非メタロセン系錯体等の錯体系触媒を用いた、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等の重合法が挙げられる。
【0161】
前記プロピレン重合材料:
プロピレン単独重合体成分(I)と、
プロピレンに由来する構成単位および炭素原子数4以上のα-オレフィンに由来する構成単位からなる群から選ばれる少なくとも一種の構成単位と、エチレンに由来する構成単位とを含むエチレン共重合体成分(II)と
を含有する重合材料である。
【0162】
エチレン共重合体成分(II)に関する炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、例えば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセンおよび2,2,4-トリメチル-1-ペンテンが挙げられる。炭素原子数4以上のα-オレフィンとしては、炭素原子数4以上20以下のα-オレフィンが好ましく、炭素原子数4以上10以下のα-オレフィンがより好ましく、1-ブテン、1-ヘキセンまたは1-オクテンがさらに好ましい。
エチレン共重合体成分(II)に含まれる炭素原子数4以上のα-オレフィンに由来する構成単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0163】
エチレン共重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン-エチレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ブテン共重合体、プロピレン-エチレン-1-ヘキセン共重合体およびプロピレン-エチレン-1-オクテン共重合体が挙げられる。
エチレン共重合体成分(II)は、ランダム共重合体であってもよく、ブロック共重合体であってもよい。
【0164】
プロピレン重合材料は、重合触媒を用いて、多段重合により製造することができる。例えば、前段の重合工程でプロピレン単独重合体成分(I)を製造し、後段の重合工程でエチレン共重合体成分(II)を製造することにより、プロピレン重合材料を製造することができる。
【0165】
プロピレン重合材料の製造に使用する重合触媒としては、プロピレン単独重合体およびプロピレンランダム共重合体の製造に使用される触媒が挙げられる。
【0166】
プロピレン重合材料を製造する際の各重合工程における重合方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法および気相重合法が挙げられる。溶液重合法およびスラリー重合法で用いる不活性炭化水素溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンが挙げられる。これらの重合方法は、2つ以上組み合わせてもよく、バッチ式または連続式のいずれであってもよい。プロピレン重合材料を製造する際の重合方法は、連続式の気相重合、または、バルク重合と気相重合を連続的に行うバルク-気相重合が好ましい。
【0167】
本発明に係る樹脂組成物を、押出成形、射出成形、真空成形、ブロー成形または圧延成形する場合、成形加工性の観点から、230℃、2.16kgf荷重下で、JIS K7210に準拠して測定される樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が、0.1g/10分以上100g/10分以下であることが好ましい。
【0168】
本発明に係る樹脂組成物を、後述の通り、紡糸して繊維とする場合、230℃、2.16kgf荷重下で、JIS K7210に準拠して測定される樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が、1g/10分以上1000g/10分以下であることが好ましい。
【0169】
<組成物>
本発明に係る組成物は、本発明に係る重合体と、無機フィラー、有機フィラー、酸化防止剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、結晶造核剤、顔料、吸着剤、金属塩化物、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩、滑剤、シリコーン化合物等から選ばれる添加剤とを含む。本発明に係る組成物は、本発明に係る樹脂組成物であってもよい。
【0170】
本発明に係る組成物は、本発明に係る重合体を製造する際に使用する原料に添加剤を予め配合して調製してもよく、本発明に係る重合体を製造した後に添加剤を配合して調製してもよい。本発明に係る重合体を製造した後に添加剤を配合する場合、本発明に係る重合体を溶融混練しながら添加剤を配合してもよい。
【0171】
これらの添加剤の配合量は、
本発明に係る重合体100重量部、または、前記重合体(1)および前記重合体(2)の合計100重量部に対して、
0.001重量部以上10重量部以下であることが好ましく、0.005重量部以上5重量部以下であることがより好ましく、0.01重量部以上1重量部以下であることがさらに好ましい。
【0172】
無機フィラーとしては、例えば、タルク、炭酸カルシウムおよび焼成カオリンが挙げられる。
【0173】
有機フィラーとしては、例えば、繊維、木粉およびセルロースパウダーが挙げられる。
【0174】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、燐系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤およびビタミン系酸化防止剤が挙げられる。
【0175】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリジアミン系紫外線吸収剤、アニリド系紫外線吸収剤およびベンゾフェノン系紫外線吸収剤が挙げられる。
【0176】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤およびベンゾエート系光安定剤が挙げられる。
【0177】
顔料としては、例えば、二酸化チタンおよびカーボンブラックが挙げられる。
【0178】
吸着剤としては、例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム等の金属酸化物が挙げられる。
【0179】
金属塩化物としては、例えば、塩化鉄および塩化カルシウムが挙げられる。
【0180】
滑剤としては、例えば、脂肪酸、高級アルコール、脂肪族アミドおよび脂肪族エステルが挙げられる。
【0181】
本発明に係る重合体および組成物、並びに、これらの成形体は、摺動材、難燃材、離型材、防汚材として用いることができる。
【0182】
本発明に係る重合体および組成物、並びに、これらの成形体は、成形加工性に優れるため、その形状は任意であるが、例えば、球状、角状(キューブ状)、数珠玉状(ビーズ状)、円柱状(ペレット状)、粉末状、棒状(スティック状)、針状、繊維状(ファイバー状)、ストランド状、糸状、紐状、縄状、綱状、板状、シート状、膜状(フィルム状)、織布状、不織布状、箱状(カプセル状)発泡体状および任意の立体形状が挙げられ、使用目的に応じて形状を適宜選択することができる。
【0183】
球状、角状(キューブ状)、数珠玉状(ビーズ状)、円柱状(ペレット状)または粉末状である成形体は、本発明に係る重合体が、本発明に係る重合体とは異なる材料で覆われたコア-シェル構造を形成していてもよく、本発明に係る重合体とは異なる材料が、本発明に係る重合体で覆われたコア-シェル構造を形成していてもよい。本発明に係る重合体とは異なる材料としては、例えば、本発明に係る重合体とは異なる重合体、金属、および、金属以外の無機物が挙げられる。
【0184】
棒状(スティック状)、針状、繊維状(ファイバー状)、ストランド状、糸状、紐状、縄状または綱状である成形体は、本発明のに係る合体が、本発明に係る重合体とは異なる材料で覆われた芯-鞘構造を形成していてもよく、本発明に係る重合体とは異なる材料が、本発明に係る重合体で覆われた芯-鞘構造を形成していてもよい。
【0185】
板状、シート状、膜状(フィルム状)、織布状、不織布状、箱状またはカプセル状である成形体は、本発明に係る重合体が、本発明に係る重合体とは異なる材料で両面または片面を覆われた積層構造を形成していてもよく、本発明に係る重合体とは異なる材料が、本発明に係る重合体で両面または片面を覆われた積層構造を形成していてもよい。
【0186】
発泡体状である成形体と、
発泡体状とは異なる形状の成形体、または、本発明に係る重合体とは異なる材料とは、
コア-シェル構造、芯-鞘構造または積層構造を形成していてもよい。
【0187】
成形体は、例えば、押出成形、射出成形、真空成型、ブロー成形または圧延成形により任意の立体形状に成形可能であり、それぞれ、本発明の重合体とは異なる材料との多層成形を行うこともできる。
【0188】
<重合体を含む繊維>
本発明に係る重合体を含む繊維は、前記重合体(1)を含む樹脂組成物(以下、「樹脂組成物(A)」と記載することがある)を紡糸することにより得ることができる。
【0189】
樹脂組成物(A)は、重合体成分として重合体(1)のみを含んでいてもよく、重合体(1)と重合体(1)とは異なる重合体とを含んでもよい。樹脂組成物(A)が、重合体(1)とは異なる重合体を含有する場合、該重合体としては、前記重合体(2)が挙げられる。樹脂組成物(A)が重合体(1)と重合体(2)を含有する場合、重合体(1)と重合体(2)の合計量を100重量%として、重合体(1)の含有量が1重量%以上99重量%以下であり、重合体(2)の含有量が1重量%以上99重量%以下であることが好ましい。
【0190】
樹脂組成物(A)が、重合体(1)と重合体(1)とは異なる重合体とを含有し、重合体(1)とは異なる重合体が重合体(1)に対して非相容である場合、重合体(1)からなる相と、重合体(1)とは異なる重合体からなる相とは、通常、海島構造、シリンダー構造、ラメラ構造、共連続構造等のモルフォロジーを形成する。
【0191】
樹脂組成物(A)を含む繊維の断面形状は、円形断面、多角形、多葉形等の異形断面であってもよく、中空断面であってもよい。
【0192】
樹脂組成物(A)を含む繊維の単糸繊度は特に限定されないが、繊維化の容易さの観点から、1dtex以上が好ましく、繊維の柔軟性の観点から20dtex以下が好ましい。
【0193】
樹脂組成物(A)を含む繊維の製造方法としては、例えば、乾式紡糸法、湿式紡糸法および溶融紡糸法が挙げられ、溶融紡糸法が好ましい。一般紡糸法は、樹脂組成物を含むチップを原料として、紡糸工程および延伸工程の2工程からなる。一方、樹脂組成物(A)を含む繊維の製造方法に好適に用いられる紡糸法としては、例えば、樹脂組成物をチップ化せず樹脂組成物製造工程から連続的に紡糸する連続重合紡糸法、紡糸工程および延伸工程を1工程で実施する直接紡糸延伸法(スピンドロー法)、延伸工程の必要の無い高速紡糸法、半延伸糸(POY)を経て仮撚工程にて延伸糸(DTY)を得るPOY-DTY法、および、スパンボンド法が挙げられる。これらの方法は、前記一般紡糸法に対して、より合理化された方法である。
【0194】
樹脂組成物(A)を含む繊維は、複合繊維であってもよい。複合繊維とは、互いに異なる成分からなる2種以上の繊維が単糸内で接合されてなる繊維を指す。複合繊維としては、例えば、芯鞘型複合繊維、貼り合わせ型複合繊維、分割型複合繊維および海島型複合繊維が挙げられる。
【0195】
樹脂組成物(A)を含む複合繊維の単糸繊度は特に限定されないが、繊維化の容易さの観点から1dtex以上が好ましく、繊維の柔軟性の観点から20dtex以下が好ましい。
【0196】
芯鞘型複合繊維の構造としては、例えば、樹脂組成物(A)とは異なる材料が樹脂組成物(A)で覆われた芯-鞘構造、および、樹脂組成物(A)が樹脂組成物(A)とは異なる材料で覆われた芯-鞘構造が挙げられ、好ましくは、樹脂組成物(A)とは異なる材料が樹脂組成物(A)で覆われた芯-鞘構造である。樹脂組成物(A)とは異なる材料は、好ましくは、前記重合体(2)であり、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアミド6(PA6)またはポリアミド66(PA66)である。
【0197】
樹脂組成物(A)とは異なる材料が樹脂組成物(A)で覆われた芯-鞘構造である芯鞘型複合繊維としては、繊維径方向断面の鞘部の面積割合が10%~90%である芯鞘型複合繊維が好ましい。
【0198】
貼り合わせ型複合繊維は、樹脂組成物(A)を含む繊維の収縮率の差等により捲縮するが、該複合繊維が螺旋状に捲縮する場合、樹脂組成物(A)が螺旋の外側であってもよく、樹脂組成物(A)とは異なる材料が螺旋の外側であってもよく、好ましくは、樹脂組成物(A)が螺旋の外側となる貼り合わせ型複合繊維である。樹脂組成物(A)とは異なる材料としては、好ましくは、前記重合体(2)であり、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアミド6(PA6)またはポリアミド66(PA66)である。
【0199】
分割型複合繊維は、樹脂組成物(A)を含む繊維を化学処理することにより分割・開繊され、極細繊維が得られる。分割型複合繊維が中心の放射状繊維と周囲の複数のくさび状繊維からなる場合、樹脂組成物(A)が周囲の複数のくさび状繊維であってもよく、樹脂組成物(A)とは異なる材料が周囲の複数のくさび状繊維であってもよく、好ましくは、樹脂組成物(A)が周囲の複数のくさび状繊維である分割型複合繊維である。樹脂組成物(A)とは異なる材料としては、好ましくは、前記重合体(2)であり、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアミド6(PA6)またはポリアミド66(PA66)である。
【0200】
海島型複合繊維は、樹脂組成物(A)を含む繊維を化学処理することにより海部繊維を除去し、複数の島部繊維からなる極細繊維が得られる。樹脂組成物(A)が島部繊維であってもよく、樹脂組成物(A)とは異なる材料が島部繊維であってもよく、好ましくは、樹脂組成物(A)が島部繊維である海島型複合繊維である。樹脂組成物(A)とは異なる材料としては、好ましくは、前記重合体(2)であり、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアミド6(PA6)またはポリアミド66(PA66)である。
【0201】
樹脂組成物(A)を含む繊維の形態としては、例えば、長繊維(マルチフィラメント、モノフィラメント)および短繊維(ステープル)が挙げられる。長繊維(マルチフィラメント、モノフィラメント)は、そのまま用いてもよく、仮撚加工により仮撚加工糸としてもよく、エアー混繊等により混繊糸としてもよい。短繊維(ステープル)はそのまま用いてもよく、紡績により紡績糸としてもよく、混紡により混紡糸としてもよい。樹脂組成物(A)を含む繊維の形態は、長繊維に短繊維を複合したコアスパンヤーンであってもよく、樹脂組成物(A)を含む繊維を撚糸加工することにより、合撚糸、交撚糸、カバーリング糸としてもよい。
【0202】
樹脂組成物(A)を含む繊維は、酸化防止剤、顔料、染料、抗菌剤、消臭剤、制電剤、難燃剤、不活性微粒子、光吸収発熱材、吸湿発熱材、遠赤外線発熱材等の添加剤を含有してもよい。添加剤は、樹脂組成物(A)の紡糸時または紡糸後に添加することができる。
【0203】
樹脂組成物(A)と吸光発熱材とを含む吸光発熱繊維は、太陽光の特定波長を吸収し、熱エネルギーに高効率で変換する炭化ジルコニウム等の吸光発熱材を、繊維の内部および表面に固着させた繊維である。吸光発熱繊維からなる布は、吸光発熱材を含まない繊維からなる布と比較して、太陽に当たっている布面の温度を高くすることができる。
【0204】
樹脂組成物(A)と吸湿発熱材を含む吸湿発熱繊維は、吸湿時に吸着熱を発生させる繊維であり、低湿度環境では水分を放出し、衣服内の温度と湿度を制御する効果を有する繊維である。
【0205】
樹脂組成物(A)と遠赤外線放射材とを含む遠赤外線加工繊維は、遠赤外線放射の高いセラミックス等を繊維の内部および表面に固着させた繊維で、遠赤外線による保温の効果を有する繊維である。
【0206】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる布地・生地は、織物、編物および不織布のいずれでもよい。織組織としては、例えば、平織(プレーン)、綾織(ツィル)、朱子織(サテン)およびそれらの変化組織、ドビー、並びに、ジャカードが挙げられる。編組織としては、例えば、緯編、経編およびそれらの変化組織が挙げられる。
【0207】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる布地・生地の目付けおよびゲージは特に限定されない。
【0208】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる布地・生地は、樹脂組成物(A)を含む繊維のみからなっていてもよく、他の繊維と交織、交編して用いてもよい。他の繊維としては、例えば、炭素繊維、無機繊維、金属繊維等の無機繊維、リヨセル等の精製繊維;レーヨン、キュプラ、ポリノジック等の再生繊維;アセテート、トリアセテート、プロミックス等の半合成繊維;アクリル、アクリル系繊維、ビニロン、ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリクラール、アラミド、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリアミド66(PA66)、ウレタン等の合成繊維;コットン、セルロース系繊維、麻(亜麻、苧麻、大麻、黄麻等)等の植物繊維またはウール;羊毛、獣毛(アンゴラ、カシミア、モヘヤ、アルパカ、キャメル等)、絹等の動物繊維である天然繊維;ダウン、フェザー等の羽毛;が挙げられる。樹脂組成物(A)を含む繊維の使用割合は、特に限定されないが、20重量%~100重量%が好ましい。
【0209】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる不織布は、熱融着バインダー繊維を含有させてもよい。熱融着バインダー繊維は、樹脂組成物(A)および樹脂組成物(A)とは融点の異なる材料からなる芯鞘型、貼り合わせ型等の複合繊維が好ましい。樹脂組成物(A)とは融点の異なる材料としては、好ましくは、前記重合体(2)であり、より好ましくは、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)、ポリアミド6(PA6)またはポリアミド66(PA66)である。
【0210】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる不織布が熱融着バインダー繊維を含む場合、その含有量は、不織布の繊維全体中、5~20重量%であることが好ましい。
【0211】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる不織布は、軽さ、柔らかい肌触り、衣類のファッション性等の観点から、目付が100g/m以下であり、厚みが5mm以下であることが好ましく、目付が60g/m以下であり、厚みが5mm以下であることがより好ましい。
【0212】
樹脂組成物(A)を含む繊維からなる不織布の製造方法は、通常、ウェブの形成工程とウェブの結合工程とを含む。ウェブの形成工程としては、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法およびエアレイド法が挙げられ、ウェブの結合工程としては、例えば、ケミカルボンド法、サーマルボンド法、ニードルパンチ法および水流交絡法が挙げられる。
【0213】
<成形体>
本発明に係る成形体は、本発明に係る重合体または組成物を成形して得られる成形体(
以下、「成形体(A)」と記載することがある)であるか、または、下記の成形体(以下、成形体(B)と記載することがある)である。成形体(B)は、本発明に係る重合体または組成物を用いて好適に成形することができる。
【0214】
成形体(B):
フッ素原子を有するオレフィン重合体と、フッ素原子を有さない熱可塑性樹脂とを含有する成形体であって、
前記成形体の断面に、フッ素原子を有するオレフィン重合体からなる分散相が10個/1000μm以上存在し、該分散相の円相当径のうち、
0.5μm以上2.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raと、2.0μm以上3.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raと、3.0μm以上の円相当径を有する分散相の比率:Raとが、下記式(11)を満たす、成形体。

Ra>Ra>Ra (11)
【0215】
フッ素原子を有するオレフィン重合体としては、例えば、本発明に係る重合体(1)、が挙げられ、本発明に係る重合体(1)が好ましい。
【0216】
成形体の断面のフッ素原子を有するオレフィン重合体からなる分散相の円相当径は、走査型電子顕微鏡により反射電子像を撮影し、撮影された反射電子像を画像解析ソフトを用いて粒子解析を行うことで算出することができる。
【0217】
成形体(B)は、さらにフッ素原子を含有しない熱可塑性樹脂を含有していることが好ましい。
【0218】
フッ素原子を含有しない熱可塑性樹脂としては、例えば、
ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン;
メチル(メタ)アクリレート重合体、エチル(メタ)アクリレート重合体、オクタデシル(メタ)アクリレート重合体、ヘキサデシル(メタ)アクリレート重合体、テトラデシル(メタ)アクリレート重合体、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸メチル等のアクリル系・メタクリル系樹脂;
ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン樹脂、アクリロニトリル-エチレンゴム-スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレン樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等のスチレン系樹脂;
ナイロン等のポリアミド;
ポリカーボネート;
飽和ポリエステル;
ポリフェニレンオキサイド;
ポリアセタール;
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩素樹脂;
ポリ酢酸ビニル、エチレン-酢酸ビニル樹脂などの酢酸ビニル樹脂;
エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-オクタデシル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-ヘキサデシル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-テトラデシル(メタ)アクリレート共重合体、エチレン-オクタデシル(メタ)アクリレート-メチル(メタ)アクリレート共重合体等のエチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体およびそれらのアイオノマー樹脂;
エチレン-(メタ)アクリル酸樹脂およびそのアイオノマー樹脂;
ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール樹脂等のビニルアルコール樹脂;
セルロース樹脂;
塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー等の熱可塑性エラストマー;
ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル等のエンジニアリングプラスチック;
ポリエーテル-ポリプロピレンブロック共重合体;
ポリエーテルエステルアミド;
前記重合体(2);
が挙げられる。
【0219】
成形体(B)の表面自由エネルギーの分散力成分γは、25mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以下であることがより好ましく、16mN/m以下であることがさらに好ましい。また、成形体(B)の表面自由エネルギーの分散力成分γは、通常、0mN/m以上である。
【0220】
成形体の表面自由エネルギーは、分散項(γ)、水素結合項(γ)および双極子項(γ)に分けられる。
【0221】
成形体の表面自由エネルギーを算出する方法としては、北崎・畑の方法を用いる。
北崎・畑の方法では、表面自由エネルギーγが、分散力成分γ、双極子力成分γ、水素結合成分γから成ると仮定し、表面自由エネルギーγを
γ=γ+γ+γ (1)
と表す。
この時、液体の表面エネルギーγと、固体の表面エネルギーγと、接触角θの関係は、


と表される。
γの各成分が既知の液体を用いて接触角θを測定し、


関する連立方程式を解くことで、成形体の表面自由エネルギーの各成分を求めることができる。
【0222】
本発明に係る成形体は、優れた撥水性と撥油性を備えると共に、防汚性、摺動性、耐熱性、耐薬品性、耐溶剤性、薬品低透過性、難燃性、電気特性および耐久性にも優れる。そのため、上記特性が要求される種々の用途に使用することができる。
【0223】
本発明に係る成形体は、防汚性に優れるため、例えば、繊維用品、台所用品およびその部材、浴室・洗面・トイレ用品およびその部材、貯水設備の部材、家電製品およびその部材、医療用品およびその部材、農業資材およびその部材、漁業用品およびその部材、土木資材およびその部材、道路交通設備の部材、並びに、発電設備および港湾・湾岸設備の部材の用途に好適に使用することができる。
【0224】
繊維用品としては、例えば、一般衣料、作業用ユニフォーム、寝装寝具、医療用衣類、インテリア用繊維および産業資材用繊維が挙げられる。
【0225】
台所用品およびその部材としては、例えば、食器、調理器具、浄水器、シンク、排水口、三角コーナー、レンジフードおよび換気扇が挙げられる。
【0226】
浴室・洗面・トイレ用品およびその部材としては、例えば、浴槽、風呂蓋、浴室床、浴室壁、浴室天井、浴室用椅子、洗面台、洗面器、止水栓、ヘアキャッチャー、排水トラップ、洗濯機用防水パン、トイレ床材、便座、便座のフタ、配管およびパッキンが挙げられる。
【0227】
家電製品およびその部材としては、例えば、空調設備の熱交換器、フィルター、ドレンパン、ホース、加湿装置、乾燥器、冷蔵庫、食器洗浄機、食器乾燥機、洗濯機、掃除機、ドリンクサーバー、コーヒーサーバー、電子レンジ、アイロン、スチーマー、アロマディフューザー、ホームクリーニング機、高圧洗浄機、ポット、ウェアラブルデバイス、テレビ、スマートフォン、タブレットPC、パソコンおよびタッチパネルディスプレイが挙げられる。
【0228】
貯水設備の部材としては、例えば、貯水槽、太陽熱温水器、水槽およびプールが挙げられる。
【0229】
医療用品およびその部材としては、例えば、気管内チューブ、鼻腔栄養チューブ、創傷接触層、カテーテル、チューブステント、ペースメーカーシェル、心臓弁、整形外科用インプラント、歯周インプラント、歯列矯正器、他の歯列矯正器具、入れ歯、歯冠、フェイスマスク、コンタクトレンズ、眼内レンズ、軟組織インプラント、外科用器具、縫合糸、蝸牛インプラント、鼓室形成チューブ、シャント、術後廃液チューブ、廃液デバイス、絆創膏、創傷包帯、他のインプラント可能デバイス、他の留置デバイス、人工皮膚および人工筋肉が挙げられる。
【0230】
農業資材およびその部材としては、例えば、植物ポッド、土壌、灌水チューブ、配管およびビニールハウスが挙げられる。
【0231】
漁業用品およびその部材としては、例えば、船舶、ロープ、漁網、漁具、浮き子およびブイが挙げられる。
【0232】
土木資材およびその部材としては、例えば、運河・水路等の各種海洋土木工事の汚泥拡散防止膜が挙げられる。
【0233】
道路交通設備の部材としては、例えば、交通標識、道路鏡、表示装置、ガードレール、防音壁、看板、広告塔、橋梁およびトンネルが挙げられる。
【0234】
発電設備および港湾・湾岸設備の部材としては、例えば、火力・原子力発電所の給排水口等の水中構造物、海水ポンプ等の海水利用機器類、メガフロート、湾岸道路および海底トンネルが挙げられる。
【0235】
本発明に係る成形体は、摺動性に優れるため、例えば、シール材、ギア、アクチュエーター、ピストン、ベアリング、ベアリングリテーナ、ブッシュ、スイッチ、ベルト、軸受け、カム、ローラーおよびソケットの用途に好適に使用することができる。
【実施例
【0236】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。
【0237】
[I]重合体(1)に含まれる、エチレンに由来する構成単位(A)、上記式(1)で示される構成単位(B)および上記式(2)で示される構成単位(C)の数(単位:%)
核磁気共鳴分光器(NMR)を用い、以下に示す測定条件にて、重合体の核磁気共鳴スペクトル(以下、NMRスペクトル)を測定した。
【0238】
<炭素核磁気共鳴(13C-NMR)測定条件>
装置:ブルカー・バイオスピン(株)製 AVANCEIII 600HD
測定プローブ:10mmクライオプローブ
測定溶媒:1,2-ジクロロベンゼン/1,1,2,2-テトラクロロエタン-d=85/15(容積比)の混合液
試料濃度:100mg/mL
測定温度:135℃
測定方法:プロトンデカップリング法
積算回数:256回
パルス幅:45度
パルス繰り返し時間:4秒
測定基準:テトラメチルシラン
【0239】
<エチレン-メチルアクリレート共重合体に含まれる、エチレンに由来する構成単位(A)およびメチルアクリレートに由来する構成単位(C)の数>(単位:%)
上記の13C-NMR測定条件に従って得られたエチレン-メチルアクリレート共重合体の13C-NMRスペクトルについて、以下のa、b、c、dおよびeの範囲の積分値を求め、下記式から求められる3種のダイアッド(EE、EA、AA)の含有量(数)から、エチレンに由来する構成単位(A)およびメチルアクリレートに由来する構成単位(C)の数を算出した。なお、EEは、エチレン-エチレンダイアッドを意味し、EAは、エチレン-メチルアクリレートダイアッドを意味し、AAは、メチルアクリレート-メチルアクリレートダイアッドを意味する。
【0240】
:28.1-30.5ppm
:31.9-32.6ppm
:41.7ppm
:43.1-44.2ppm
:45.0-46.5ppm
【0241】
EE=a/4+b/2
EA=e
AA=c+d
【0242】
構成単位(A)の数=100-構成単位(C)の数
構成単位(C)の数=100×(EA/2+AA)/(EE+EA+AA)
【0243】
<メチルアクリレートに由来する構成単位(C)の式(1)で示される構成単位(B)への転化率(X)>(単位:%)
エチレン-メチルアクリレート共重合体と、後述のB-1またはB-2とを反応させて、エチレンに由来する構成単位(A)と式(1)で示される構成単位(B)とメチルアクリレートに由来する構成単位(C)とからなる重合体を得た実施例において、上記の13C-NMR測定条件に従って得られた該重合体の13C-NMRスペクトルについて、以下のfおよびgの範囲の積分値を求めた。次に、下記式から、エチレン-メチルアクリレート共重合体に含まれるメチルアクリレートに由来する構成単位(C)が、重合体(1)の式(1)で示される構成単位(B)に転化した転化率(X)を算出した。
【0244】
:50.4-51.2ppm
:55.6-56.8ppm
【0245】
転化率(X)=100×g/(f+g
【0246】
<重合体(1)に含まれる、エチレンに由来する構成単位(A)、式(1)で示される構成単位(B)、メチルアクリレートに由来する構成単位(C)の数>(単位:%)
重合体(1)に含まれる、エチレンに由来する構成単位(A)、式(1)で示される構成単位(B)、メチルアクリレートに由来する構成単位(C)の数は、それぞれ、下記式から算出した。
【0247】
重合体(1)に含まれる構成単位(A)の数=エチレン-メチルアクリレート共重合体に含まれる構成単位(A)の数
【0248】
重合体(1)に含まれる構成単位(B)の数=(エチレン-メチルアクリレート共重合体に含まれる構成単位(C)の数)×転化率(X)/100
【0249】
重合体(1)に含まれる構成単位(C)の数=(エチレン-メチルアクリレート共重合体に含まれる構成単位(C)の数)-(重合体(1)に含まれる構成単位(B)の数)
【0250】
このようにして得られた、構成単位(A)の数、構成単位(B)の数、構成単位(C)の数が、それぞれ、重合体に含まれるエチレンに由来する構成単位(A)、上記式(1)で示される構成単位(B)および上記式(2)で示される構成単位(C)の数(単位:%)に相当する。
【0251】
[II]重合体(1)に含まれる、エチレンに由来する構成単位(A)、上記式(1)で示される構成単位(B)および上記式(2)で示される構成単位(C)の重量%(単位:wt%)
重合体(1)に含まれるエチレンに由来する構成単位(A)、上記式(1)で示される構成単位(B)および上記式(2)で示される構成単位(C)の重量%は、それぞれ、下記式から算出した。
【0252】
構成単位(A)の重量%=(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0253】
構成単位(B)の重量%=(構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0254】
構成単位(C)の重量%=(構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)/(構成単位(A)の数×構成単位(A)の分子量+構成単位(B)の数×構成単位(B)の分子量+構成単位(C)の数×構成単位(C)の分子量)
【0255】
[III]重合体(1)のポリスチレン換算平均分子量(PS換算数平均分子量Mn、PS換算重量平均分子量Mw、PS換算z平均分子量Mz)(単位:g/mol)
ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)装置およびソフトウェアを用い、以下に示す測定条件にて、重合体のポリスチレン換算平均分子量を測定した。
【0256】
<GPC装置およびソフトウェア>
装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー)
GPCカラム:TOSOH TSKgelGMH6-HT 7.8mm I.D.×300mm(東ソー) 3本
示差屈折率計(RI):GPC装置に付属
ソフトウェア:GPC-8020modelII(東ソー)
【0257】
<GPC測定条件>
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.1w/v添加
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
試料注入部温度:140℃
検出器温度:140℃
試料溶液注入量:0.3mL
【0258】
<標準溶液調整条件>
標準物質:下記の標準1~4に記載の12種類のポリスチレン標準試料(東ソー)
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.1w/v添加
標準溶液濃度:下記の標準1~4の通り3種類ごとに所定重量を5mLの溶媒に添加
溶解条件:室温
標準1:F700(0.4mg)、F20(0.9mg)、A5000(1.2mg)
標準2:F288(0.4mg)、F10(1.0mg)、A2500(1.2mg)
標準3:F80(0.7mg)、F4(1.1mg)、A1000(1.3mg)
標準4:F40(0.8mg)、F2(1.1mg)、A500(1.3mg)
【0259】
<試料溶液調製条件>
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.1w/v添加
試料溶液濃度:1mg/mL
溶解条件:140℃、2時間
【0260】
[IV]式(I)で定義される比A(単位:なし)
<重合体(1)の絶対分子量と固有粘度の測定>
光散乱検出器と粘度検出器を備えた装置を用いるゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により、重合体(1)およびポリエチレン標準物質1475a(米国国立標準技術研究所製)のそれぞれの絶対分子量と固有粘度を測定した。
【0261】
<装置およびソフトウェア>
GPC装置:HLC-8121GPC/HT(東ソー)
GPCカラム:GMHHR-H(S)HT × 3本(東ソー)
示差屈折率計(RI):GPC装置に付属
光散乱光度計(LS):PD2040(Precision Detectors社) 差圧粘度計(VISC):H502(Viscotek社)
ソフトウェア:OmniSEC(version4.7)(Malvern社)
LSおよびVISCはGPC装置のカラムオーブン内に設置し、LS、RI、VISCの順で接続した。
【0262】
絶対分子量と固有粘度の算出は文献「Size Exclusion Chromatography,Springer(1999)」を参考にして行った。
【0263】
<GPC測定条件>
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.5mg/mL添加
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:155℃
試料注入部温度:155℃
各検出器温度:155℃
試料溶液注入量:0.3mL
屈折率増分(dn/dc):重合体(1)とポリエチレン標準物質1475aのdn/dcは-0.078mL/gとし、ポリスチレン標準物質のdn/dcは0.079mL/gとした。
散乱角度:90°
【0264】
LS、VISCの較正および検出器間の遅れ容量の補正には、Malvern社のポリスチレン標準物質であるPolycal TDS-PS-N(重量平均分子量Mw104,349、多分散度1.04)を1mg/mLの溶液濃度で用いた。
【0265】
<試料溶液調製条件>
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.1w/V添加
試料溶液濃度:2mg/mL
溶解条件:145℃、2時間
【0266】
<式(I)で定義される比Aの算出>
以下の方法により、αとαを求め、これらを下記式(I)に代入してAを求めた。

A=α/α (I)
【0267】
αは、重合体(1)の絶対分子量の対数を横軸とし、重合体(1)の固有粘度の対数を縦軸として、測定したデータをプロットし、絶対分子量の対数と固有粘度の対数とを、横軸が前記重合体(1)の重量平均分子量の対数以上でありz平均分子量の対数以下である範囲において、式(I-I)で最小二乗法近似し、式(I-I)で表される直線の傾き:αを求めることで得られる値である。

log[η]=αlogM+logK (I-I)
(式(I-I)中、[η]は重合体の固有粘度(単位:dl/g)を表し、Mは重合体の絶対分子量を表し、Kは定数である。)
【0268】
αは、ポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量の対数を横軸とし、ポリエチレン標準物質1475aの固有粘度の対数を縦軸として、測定したデータをプロットし、絶対分子量の対数と固有粘度の対数とを、横軸が前記ポリエチレン標準物質1475aの重量平均分子量の対数以上でありz平均分子量の対数以下である範囲において、式(I-II)で最小二乗法近似し、式(I-II)で表される直線の傾き:αを求めることで得られる値である。

log[η]=αlogM+logK (I-II)
(式(I-II)中、[η]はポリエチレン標準物質1475aの固有粘度(単位:dl/g)を表し、Mはポリエチレン標準物質1475aの絶対分子量を表し、Kは定数である。)
【0269】
[V]成形体の接触角(単位:°)
自動接触角計DM-501(協和界面科学社製)を用い、成形体(シート)の接触角を測定した。試験液としては、純水またはヘキサデカン(東京化成工業株式会社製)を用い、滴下量は2μL、測定法はθ/2法とした。純水の接触角が大きいほど撥水性が高く、ヘキサデカンの接触角が大きいほど撥油性が高い。
【0270】
[VI]表面自由エネルギーの算出
成形体(シート)の表面自由エネルギーは、表面自由エネルギーが既知の液体を用いて成形体表面に対する接触角を測定することにより求めることができる。
成形体表面に対する接触角の測定液体としてヘキサデカンを用いた。成形体(シート)に対するヘキサデカンの接触角から、前述の北崎・畑の方法を用いて、成形体(シート)の表面自由エネルギーを算出した。
【0271】
[VII]分散相の円相当径の測定
縦50 mm×横50 mm×2 mm厚の成形体から、縦10 mm×横0.5 mm×2 mm厚の切片を作製した後、クライオミクロトームを用いて断面出し(約200μm×400μm)を行うことで測定試料を作製した。断面が上になるように、走査型電子顕微鏡(SU8020、株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)の試料台に測定試料を貼り付けた後、帯電防止のためPt-Pd蒸着を施した。走査型電子顕微鏡を用いて、加速電圧10kVで蒸着を施した測定試料の反射電子像(YAG-BSE)を倍率2000倍で観察した。得られた反射電子像を画像解析ソフト(A像くん、旭化成エンジニアリング社製)を用いて粒子解析し、成形体の断面における分散相の円相当径を算出した。
【0272】
[VIII]原料
<構成単位(A)と構成単位(C)とを有する前駆重合体(1)>
A-1:エチレン-メチルアクリレート共重合体
エチレン-メチルアクリレート共重合体A-1を以下のとおり製造した。
【0273】
オートクレーブ式反応器にて、反応温度195℃、反応圧力160MPaで、ラジカル重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシピバレートを用いて、エチレンとメチルアクリレートを共重合して、エチレン-メチルアクリレート共重合体A-1を得た。得られた共重合体A-1の組成およびMFRは以下のとおりであった。
【0274】
エチレンに由来する構成単位の数:87.0%(68.6重量%)
メチルアクリレートに由来する構成単位の数:13.0%(31.4重量%)
MFR(190℃、21Nで測定):40.5g/10分
【0275】
A-2:エチレン-メチルアクリレート共重合体
エチレン-メチルアクリレート共重合体A-2を以下のとおり製造した。
【0276】
オートクレーブ式反応器にて、反応温度195℃、反応圧力160MPaで、ラジカル重合開始剤としてtert-ブチルパーオキシピバレートを用いて、エチレンとメチルアクリレートを共重合して、エチレン-メチルアクリレート共重合体A-2を得た。得られた共重合体A-2の組成およびMFRは以下のとおりであった。
【0277】
エチレンに由来する構成単位の数:85.3%(65.4重量%)
メチルアクリレートに由来する構成単位の数:14.7%(34.6重量%)
MFR(190℃、21Nで測定):41g/10分
【0278】
<化合物(α)>
B-1:1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デカノール [東京化成工業株式会社製]
B-2:1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクタノール [東京化成工業株式会社製]
【0279】
<触媒>
C-1:オルトチタン酸テトラ(iso-プロピル) [日本曹達株式会社製]
【0280】
<重合体(2)>
D-1:エスポレックスTPE 4272 (融解ピーク温度:161.6℃)[住友化学株式会社製]
【0281】
<本発明の重合体(1)とは異なるフッ素系樹脂>
E-1:フッ化ビニリデン-ヘキサフロロプロペン共重合体(Viton FreeFlow10) [DuPont製]
【0282】
〔実施例1〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
攪拌機およびフィンガーバッフルを備えた内容積0.3Lのセパラブルフラスコの内部を窒素ガス置換した後、A-1:40.00gと、B-1:50.44gとを加え、オイルバス温度を130℃に設定し、10kPa減圧下にて3時間加熱攪拌を行った。その後、窒素ガス雰囲気下で、そこへC-1:0.41gを加え、オイルバス温度を140℃に設定し、10~1kPa減圧下にて42時間加熱攪拌を行い、重合体(ex1-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex1-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
実施例1(1)で得られた重合体(ex1-1)を厚み2mmの金型を用いて、100℃で5分間圧縮成形した後、20℃で5分間圧縮しながら冷却し、50mm×50mm×2mmの成形体(ex1-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例1(2)で得られた成形体(ex1-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex1-2)の評価結果を表1に示す。
【0283】
〔実施例2〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
B-1の添加量を33.63gに変更したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、重合体(ex2-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex2-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を実施例2(1)で得られた重合体(ex2-1)へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex2-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例2(2)で得られた成形体(ex2-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex2-2)の評価結果を表1に示す。
【0284】
〔実施例3〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
B-1の添加量を16.81gに変更したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、重合体(ex3-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex3-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を実施例3(1)で得られた重合体(ex3-1)へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex3-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例3(2)で得られた成形体(ex3-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex3-2)の評価結果を表1に示す。
【0285】
〔実施例4〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
B-1の添加量を13.45gに変更したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、重合体(ex4-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex4-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を実施例4(1)で得られた重合体(ex4-1)へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex4-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例4(2)で得られた成形体(ex4-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex4-2)の評価結果を表1に示す。
【0286】
〔実施例5〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
B-1の添加量を6.73gに変更したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、重合体(ex5-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex5-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を実施例5(1)で得られた重合体(ex5-1)へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex5-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例5(2)で得られた成形体(ex5-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex5-2)の評価結果を表1に示す。
【0287】
〔実施例6〕
(1)構成単位(A)と構成単位(B)と構成単位(C)とからなる重合体(エチレン-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)の製造
前駆重合体(1)をA-1からA-2:40.00gに変更し、化合物(α)をB-1からB-2:43.32gに変更し、C-1の添加量を0.45gに変更したこと以外は、実施例1(1)と同様にして、重合体(ex6-1)(エチレン-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレート-メチルアクリレート共重合体)を得た。重合体(ex6-1)の評価結果を表1に示す。
(2)重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を実施例6(1)で得られた重合体(ex6-1)へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex6-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例6(2)で得られた成形体(ex6-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex6-2)の評価結果を表1に示す。
【0288】
〔比較例1〕
(2)前駆重合体(1)からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を前駆重合体(1)であるA-1へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして行い、50mm×50mm×2mmの成形体(ref1-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
比較例1(2)で得られた成形体(ref1-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ref1-2)の評価結果を表1に示す。
【0289】
〔比較例2〕
(2)本発明の重合体(1)とは異なるフッ素系樹脂からなる成形体(シート)の作製
重合体(ex1-1)を本発明の重合体(1)とは異なるフッ素系樹脂であるE-1へ変更したこと以外は、実施例1(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ref2-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
比較例2(2)で得られた成形体(ref2-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ref2-2)の接触角(純水)は91°、接触角(ヘキサデカン)は45°であり、成形体(ref2-2)の表面自由エネルギーの分散力成分γは20.1mN/mであった。
【0290】
〔実施例7〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(2)を含む樹脂であるD-1:100重量部と、実施例1(1)で得られた重合体(ex1-1):10重量部とを、ラボプラストミル(東洋精機製作所製 形式65C150)を用いて、窒素ガス雰囲気下で、回転数80rpm、チャンバー温度200℃で5分間混練し、樹脂組成物(ex7-1)を得た。樹脂組成物(ex7-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
実施例7(1)で得られた樹脂組成物(ex7-1)を厚み2mmの金型を用いて、200℃で5分間圧縮成形した後、20℃で5分間圧縮しながら冷却し、50mm×50mm×2mmの成形体(ex7-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例7(2)で得られた成形体(ex7-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex7-2)の評価結果を表2に示す。
(4)成形体(シート)の断面における分散相の円相当径の算出
実施例7(2)で得られた成形体(ex 7―2)の断面について、走査型電子顕微鏡の反射電子像を観察したところ、22個/1000μmの分散相が確認された。分散相の円相当径を算出したところ、0.5μm以上2.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raは0.85であり、2.0μm以上3.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raは0.13であり、3.0μm以上の円相当径を有する分散相の比率:Raは0.02であった。
【0291】
〔実施例8〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)の添加量を7.1重量部に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex8-1)を得た。樹脂組成物(ex8-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例8(1)で得られた樹脂組成物(ex8-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex8-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例8(2)で得られた成形体(ex8-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex8-2)の評価結果を表2に示す。
【0292】
〔実施例9〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)の添加量を3.6重量部に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex9-1)を得た。樹脂組成物(ex9-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例9(1)で得られた樹脂組成物(ex9-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex8-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例9(2)で得られた成形体(ex9-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex9-2)の評価結果を表2に示す。
【0293】
〔実施例10〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を実施例2(1)で得られた重合体(ex2-1)に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex10-1)を得た。樹脂組成物(ex10-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例10(1)で得られた樹脂組成物(ex10-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして行い、50mm×50mm×2mmの成形体(ex10-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例10(2)で得られた成形体(ex10-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex10-2)の評価結果を表2に示す。
【0294】
〔実施例11〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を実施例3(1)で得られた重合体(ex3-1)に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex11-1)を得た。樹脂組成物(ex11-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例11(1)で得られた樹脂組成物(ex11-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex11-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例11(2)で得られた成形体(ex11-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex11-2)の評価結果を表2に示す。
【0295】
〔実施例12〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を実施例4(1)で得られた重合体(ex4-1)に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex12-1)を得た。樹脂組成物(ex12-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例12(1)で得られた樹脂組成物(ex12-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして行い、50mm×50mm×2mmの成形体(ex12-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例12(2)で得られた成形体(ex12-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex12-2)の評価結果を表2に示す。
【0296】
〔実施例13〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロ-1-デシルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を実施例5(1)で得られた重合体(ex5-1)に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex13-1)を得た。樹脂組成物(ex13-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例13(1)で得られた樹脂組成物(ex13-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex13-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例13(2)で得られた成形体(ex13-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex13-2)の評価結果を表2に示す。
【0297】
〔実施例14〕
(1)樹脂組成物(エチレン-1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロ-1-オクチルアクリレート-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を実施例6(1)で得られた重合体(ex6-1):3.1重量部に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ex14-1)を得た。樹脂組成物(ex14-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を実施例14(1)で得られた樹脂組成物(ex14-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ex14-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
実施例14(2)で得られた成形体(ex14-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ex14-2)の評価結果を表2に示す。
【0298】
〔比較例3〕
(1)樹脂組成物(エチレン-メチルアクリレート共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を前駆重合体(1)であるA-1に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ref3-1)を得た。樹脂組成物(ref3-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を比較例3(1)で得られた樹脂組成物(ref3-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ref3-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
比較例3(2)で得られた成形体(ref3-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ref3-2)の評価結果を表2に示す。
【0299】
〔比較例4〕
(1)樹脂組成物(フッ化ビニリデン-ヘキサフロロプロペン共重合体を含む樹脂組成物)の作製
重合体(ex1-1)を本発明の重合体(1)とは異なるフッ素系樹脂であるE-1に変更したこと以外は、実施例7(1)と同様にして、樹脂組成物(ref4-1)を得た。樹脂組成物(ref4-1)の評価結果を表2に示す。
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を比較例4(1)で得られた樹脂組成物(ref4-1)へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして、50mm×50mm×2mmの成形体(ref4-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
比較例4(2)で得られた成形体(ref4-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ref4-2)の評価結果を表2に示す。
(4)成形体(シート)の断面における分散相の円相当径の算出
比較例4(2)で得られた成形体(ref 4―2)の断面について、走査型電子顕微鏡の反射電子像を観察したところ、1個/1000μmの分散相が確認された。分散相の円相当径を算出したところ、0.5μm以上2.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raは0であり、2.0μm以上3.0μm未満の円相当径を有する分散相の比率:Raは0であり、3.0μm以上の円相当径を有する分散相の比率:Raは1であった。
【0300】
〔比較例5〕
(2)樹脂組成物からなる成形体(シート)の作製
樹脂組成物(ex7-1)を重合体(2)であるD-1へ変更したこと以外は、実施例7(2)と同様にして行い、50mm×50mm×2mmの成形体(ref5-2)を作製した。
(3)成形体(シート)の撥水撥油性および表面自由エネルギーの評価
比較例5(2)で得られた成形体(ref5-2)について、純水およびヘキサデカンの接触角、並びに、表面自由エネルギーを評価した。成形体(ref5-2)の評価結果を表2に示す。
【0301】
【表1】
【0302】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0303】
本発明によれば、撥水性および撥油性に優れる重合体であり、他の樹脂へ少量添加した場合であっても、撥水性および撥油性に優れる樹脂組成物を与えることができる重合体を提供することができる。
図1
図2