(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法、および組成物
(51)【国際特許分類】
C07C 17/389 20060101AFI20230816BHJP
C07C 21/18 20060101ALI20230816BHJP
C07C 17/25 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C07C17/389
C07C21/18
C07C17/25
(21)【出願番号】P 2020519865
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(86)【国際出願番号】 JP2019019161
(87)【国際公開番号】W WO2019221136
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018093851
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】河口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】高木 洋一
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-516042(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1177924(KR,B1)
【文献】国際公開第2015/125877(WO,A1)
【文献】特開2008-162985(JP,A)
【文献】ZAPEVALOV, A. Ya. et al.,α,α-Disubstituted polyfluoroalkenes,Zhurnal Organicheskoi Khimii,1988年,Vol.24, No.8,p.1626-1633,ISSN 0514-7492
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンと、
水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、および1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質と、
を含む組成物を、固体吸着剤と接触させて、前記組成物から前記物質を除去する、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法。
【請求項2】
前記固体吸着剤が、活性炭、ゼオライト、シリカ、およびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記組成物が、水を含み、前記固体吸着剤がゼオライトを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記組成物が、前記3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンおよび前記1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記組成物が、前記3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンおよび前記1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、前記固体吸着剤が活性炭およびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
前記ゼオライトが、ゼオライト3A、ゼオライト4A、およびゼオライト5Aからなる群から選ばれる少なくとも1つである請求項2または3に記載の製造方法。
【請求項7】
前記活性炭が、600~2500m
2/gの比表面積、1.6~3.5nmの平均細孔径および0.25~1.5mL/gの細孔容積を有する請求項2または5に記載の製造方法。
【請求項8】
前記シリカが、多孔質合成シリカゲル、メソポーラスシリカ、またはシリカアルミナである請求項2または5に記載の製造方法。
【請求項9】
前記アルミナが、50~350m
2/gのBET比表面積、5~200Åの窒素吸着法で測定した平均細孔径、0.1~0.8mL/gの細孔容積を有する請求項2に記載の製造方法。
【請求項10】
5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンを脱フッ化水素反応させて、前記組成物を製造する請求項1~9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンと、
水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、および1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質と、を含む組成物であって、
前記組成物中の前記水の量が200質量ppm以下である組成物。
【請求項12】
前記組成物中の前記3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの量が、1~1200質量ppmである請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物中の前記1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの量が、1~600質量ppmである、請求項11または12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信頼性や性能上の問題を引き起こし得る物質の含有量が低減された、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンを製造する方法、およびそれを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)は、オゾン層に悪影響を及ぼすことから、その生産の規制が予定されている。HCFCとして、3,3-ジクロロ-1,1,1,2,2-ペンタフルオロプロパン(CF3-CF2-CHCl2、HCFC-225ca。以下、225caと称する。)、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン(CClF2-CF2-CHFCl、HCFC-225cb。以下、225cbと称する。)等が挙げられる。HCFCの規制に伴い、これに代わる化合物の開発が望まれている。
【0003】
HCFCに代わる化合物として、例えば、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン(CHCl=CF-CF2-CF2-CF2H、HCFO-1437dycc。以下、1437dyccと称する。)が挙げられる。1437dyccは、地球温暖化係数(GWP)が小さく、洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤、エアゾール等の用途に好適な化合物として期待されている。
【0004】
非特許文献1には、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンタノール(以下、OFPOと称する。)をジクロロトリフェニルホスホランと反応させ、5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(HCFC-448occc。以下、448occcと称する。)を得た後、448occcをナトリウムメトキシドと反応させることにより、448occcを脱フッ化水素させて1437dyccを得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Zhurnal Organicheskoi Khimii, (ロシア),1988年,24巻,8号,1626-1633頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記非特許文献2などの方法により製造される1437dyccを含む組成物は、1437dycc以外の物質を含む。この物質は、例えば、副生物、水、不純物等が挙げられる。これらの物質は、上記組成物を洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤またはエアゾールとして使用する際に、信頼性および性能上の種々の問題を引き起こす場合がある。よって、組成物中の上記物質をできるだけ少なくすることが好ましい。
【0007】
本発明は、上記観点からなされたものであり、1437dyccと、信頼性および性能上の問題を引き起こし得る物質と、を含む組成物から、上記物質の含有量が低減された1437dyccを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す態様を有する。
[1]1437dyccと、水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン(CH≡CCF2CF2CHF2)、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン(CCl≡CCF2CF2CHF2)、およびオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質と、を含む組成物を、固体吸着剤と接触させて、上記組成物から上記物質を除去する、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテンの製造方法。
[2]上記固体吸着剤が活性炭、ゼオライト、シリカ、およびアルミナからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む[1]に記載の製造方法。
[3]上記組成物が上記水を含み、上記固体吸着剤がゼオライトを含む[1]に記載の製造方法。
【0009】
[4]上記組成物が上記3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンおよび上記1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンからなる群より選ばれる少なくとも1つを含み、上記固体吸着剤が活性炭およびシリカからなる群より選ばれる少なくとも1つを含む[1]に記載の製造方法。
[5]上記組成物がオキサイドを含み、上記固体吸着剤が活性炭またはアルミナである[1]に記載の製造方法。
[6]上記オキサイドが、3-クロロ-2-フルオロ-2-(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル)-オキシラン、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブタノイルフルオリド、ホルミルクロライド、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、および1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)からなる群より選ばれる少なくとも1つである[5]に記載の製造方法。
【0010】
[7]上記ゼオライトが、ゼオライト3A、ゼオライト4A、およびゼオライト5Aから
なる群から選ばれる少なくとも1つである[2]または[3]に記載の製造方法。
[8]上記活性炭が、600~2500m2/gの比表面積、1.6~3.5nmの平均細孔径および0.25~1.5mL/gの細孔容積を有する[2]または[4]に記載の製造方法。
[9]上記シリカが、多孔質合成シリカゲル、メソポーラスシリカ、またはシリカアルミナである[2]または[4]に記載の製造方法。
[10]上記アルミナが、50~350m2/gのBET比表面積、5~200Åの窒素吸着法で測定した平均細孔径、0.1~0.8mL/gの細孔容積を有する[2]または[5]に記載の製造方法。
[11]5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタンを脱フッ化水素反応させて、前記組成物を製造する[1]~[10]のいずれかに記載の製造方法。
[12]1437dyccと、水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、およびオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質と、を含む組成物であって、上記組成物中の上記水の量が200質量ppm以下である組成物。
[13]上記組成物中の上記3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの量が、1~1200質量ppmである[12]に記載の組成物。
[14]上記組成物中の上記1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの量が、1~600質量ppmである[12]または[13]に記載の組成物。
【0011】
[15]上記組成物中の前記オキサイドの量が、1~100質量ppmである[12]~[14]のいずれかに記載の組成物。
[16]上記オキサイドが、3-クロロ-2-フルオロ-2-(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル)-オキシラン、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブタノイルフルオリド、ホルミルクロライド、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、および1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)からなる群より選ばれる少なくとも1つである[12]~[15]のいずれかに記載の組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1437dyccと、水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、およびオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質と、を含む組成物から、上記物質を効率よく除去して、上記物質の含有量が低減された1437dyccを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書における用語の定義および記載の仕方などは次のとおりである。
「ハロゲン化炭化水素」は、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記した場合、必要に応じて化合物名に代えてその略称で記載する。
「分子内に二重結合を有し、E体とZ体が存在する化合物は、E体とZ体をそれぞれ化合物の略称の末尾に(E)、(Z)と表記して示す。化合物名の略称の末尾に(E)、(Z)の表記がないものは、(E)体、(Z)体、または(E)体と(Z)体の混合物のいずれかを示す。
【0014】
「水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、およびオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1つの物質」を「物質(X)」ともいい、1437dyccと物質(X)とを含む組成物を「精製用組成物」ともいう。物質(X)は、信頼性および性能上の問題を引き起こし得る物質である。
【0015】
平均粒径は、特に言及しない限り、JIS Z 8801に規定するふるい分け法で測定される体積基準50%平均粒径D50の値である。
固体吸着材の平均細孔径は、特に言及しない限り、定容量式ガス吸着法により測定される。定容量式ガス吸着法に使用する吸着ガスとしては、N2、CO2、CH4、H2、Ar等が使用される。
比表面積は、特に言及しない限り、N2、CO2、CH4、H2、Ar等を用いてガス吸着法で測定される。
数値範囲を示す「~」は、その下限値およびその上限値を含む範囲である。また、数値範囲の下限値および上限値が同じ単位の場合、簡潔化のために、片方の記載を省略することがある。
【0016】
[精製用組成物]
精製用組成物は、1437dyccと、物質(X)と、を含む組成物であれば特に限定されない。精製用組成物は、1437dyccおよび物質(X)以外のその他の成分を含んでもよい。その他の成分は、448occc等の1437dyccの製造原料、1437dyccの製造工程で生成する副生物等である。精製用組成物は、液体でも気体でもよい。
【0017】
精製用組成物としては、例えば、1437dyccを製造する目的で、各種原料成分を反応させて得られる、1437dyccを含有する反応生成物を用いることができる。すなわち、後述するように、1437dyccの製造工程によって得られる反応生成物に1437dyccと物質(X)が含まれている場合、この反応生成物をそのまま精製用組成物として用いることができる。反応生成物を水洗浄やアルカリ洗浄して、反応生成物に含まれるフッ化水素、塩化水素等の酸性物質を除去した後の組成物を精製用組成物として用いてもよい。
【0018】
1437dyccは、大気中のOHラジカルによって分解され易い炭素-炭素二重結合を分子内に有しており、燃焼性が低く、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない。したがって、溶剤や、作動媒体(熱交換等に用いる熱媒体、熱サイクルシステム等に用いる作動媒体等)としての有用性が高い。
【0019】
精製用組成物から物質(X)を除去する工程を具備する1437dyccの製造方法は、1437dyccを含む精製用組成物を製造する工程をさらに具備していてもよい。1437dyccは、例えば液相反応または気相反応により5-クロロ-1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロペンタン(HCFC-448occc、448occc。)を脱フッ化水素反応させて得られる。液相反応で脱フッ化水素させるとは、液体状態の448occcを脱フッ化水素させることをいう。気相反応で脱フッ化水素させるとは、気体状態の448occcを脱フッ化水素させることをいう。
【0020】
1437dyccは、例えば、塩基存在下にて448occcを脱フッ化水素反応させて得られる。塩基存在下では、液相反応、または気相反応のいずれでも脱フッ化水素反応を行うことができる。上記反応は、以下の式(1)で示される。
【0021】
【0022】
1437dycc(Z)は、1437dycc(E)よりも化学的安定性が高く、溶剤や作動媒体としてより好ましい。そして、塩基存在下にて448occcを脱フッ化水素させる1437dyccの製造方法によれば、1437dyccを効率的に製造できる。さらに、上記製造方法によれば、1437dycc(E)に比べて1437dycc(Z)の含有割合が高い1437dyccを得ることができる。
【0023】
塩基は、脱フッ化水素反応が実行可能な塩基であればよく、例えば、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩が挙げられる。塩基は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0024】
金属水酸化物の具体例としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物が挙げられる。アルカリ金属水酸化物の具体例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。アルカリ土類金属水酸化物の具体例としては、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムが挙げられる。
【0025】
金属酸化物の具体例としては、アルカリ金属酸化物、アルカリ土類金属酸化物が挙げられる。アルカリ金属酸化物の具体例としては、酸化ナトリウムが挙げられる。アルカリ土類金属酸化物の具体例としては、酸化カルシウムが挙げられる。
【0026】
金属炭酸塩の具体例としては、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩が挙げられる。アルカリ金属炭酸塩の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、または、フランシウムの炭酸塩が挙げられる。アルカリ土類金属炭酸塩の具体例としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、または、ラジウムの炭酸塩が挙げられる。
【0027】
液相反応で448occcを脱フッ化水素させる場合、塩基は、溶媒に混合される。溶媒としては、例えば水が好ましい。水を用いる場合、塩基としては、水に対する溶解度が大きく取扱いが容易であり、かつ、反応性が高い点から、金属水酸化物が好ましく、水酸化カリウム、または水酸化ナトリウムがより好ましい。
【0028】
液相反応で448occcを脱フッ化水素させる場合、反応速度を上げるために、相間移動触媒の存在下で脱フッ化水素反応を行うことが好ましい。相関移動触媒は、例えば溶媒に混合される。
【0029】
相間移動触媒の具体例としては、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、スルホニウム塩、クラウンエーテルが挙げられる。なかでも、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、第4級アルソニウム塩、またはスルホニウム塩が好ましく、反応速度に優れる点から、第4級アンモニウム塩がより好ましい。
【0030】
第4級アンモニウム塩の具体例としては、テトラ-n-ブチルアンモニウムクロリド(TBAC)、テトラ-n-ブチルアンモニウムブロミド(TBAB)、メチルトリ-n-オクチルアンモニウムクロリド(TOMAC)等が挙げられる。
【0031】
第4級ホスホニウム塩の具体例としては、テトラエチルホスホニウム、テトラ-n-ブチルホスホニウム、エチルトリ-n-オクチルホスホニウム、セチルトリエチルホスホニウム、セチルトリ-n-ブチルホスホニウム、n-ブチルトリフェニルホスホニウム、n-アミルトリフェニルホスホニウム、メチルトリフェニルホスホニウム、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。
【0032】
第4級アルソニウム塩の具体例としては、トリフェニルメチルアルソニウムフロライド、テトラフェニルアルソニウムフロライド、トリフェニルメチルアルソニウムクロライド、テトラフェニルアルソニウムクロライド、テトラフェニルアルソニウムブロマイド等が挙げられる。
【0033】
スルホニウム塩の具体例としては、ジ-n-ブチルメチルスルホニウムアイオダイド、トリ-n-ブチルスルホニウムテトラフルオロボレート、ジヘキシルメチルスルホニウムアイオダイド、ジシクロヘキシルメチルスルホニウムアイオダイド、ドデシルメチルエチルスルホニウムクロライド、トリス(ジエチルアミノ)スルホニウムジフルオロトリメチルシリケート等が挙げられる。
【0034】
クラウンエーテルの具体例としては、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6等が挙げられる。
【0035】
上記した相間移動触媒のうち、工業的入手の容易さ、価格、扱いやすさ、反応性の点から、TBAC、TBAB、またはTOMACが好ましい。
【0036】
相間移動触媒の量は、448occcの100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5.0質量部がより好ましく、0.1~2.0質量部がさらに好ましく、0.1~1.0質量部が特に好ましい。相間移動触媒の量が上記範囲内であると、十分な反応速度が得られやすい。上記範囲外であると反応促進効果は得られにくく、コスト面で不利になりやすい。相間移動触媒を使用する場合、相関移動触媒を均一に存在させるため、予め相間移動触媒を448occcに混合しておき、448occcとの混合液の状態で反応器に供給することが好ましい。相間移動触媒の量は、448occcの100質量部に対して0.1~0.8質量部であると、1437dyccの選択率および収率が高いため、最も好ましい。
【0037】
気相反応で448occcを脱フッ化水素させる場合、例えば活性炭または金属触媒の存在下で448occcを脱フッ化水素させることができる。
活性炭の比表面積は、反応変換率の向上および副生物の抑制の点から、10~3000m2/gが好ましく、20~2500m2/gがより好ましく、50~2000m2/gがさらに好ましい。活性炭の比表面積は、BET法に準拠した方法で測定される。
【0038】
活性炭の具体例としては、木炭、石炭、ヤシ殻等から調製された活性炭が挙げられる。より具体的には、長さ2~5mm程度の成形炭、4~50メッシュ程度の破砕炭、粒状炭、粉末炭が挙げられる。
活性炭は、反応に用いる前に充分に乾燥させるのが好ましい。活性炭中の水分量は、反応性、選択率を向上させる点から、活性炭と水分との総量を100質量%とした場合に、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0039】
金属触媒の具体例としては、0価の鉄、0価のコバルト、0価のニッケル、0価のパラジウム、酸化クロム(クロミア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化ニッケル、フッ化酸化アルミニウム、フッ化酸化クロム、フッ化酸化マグネシウム、酸化フッ化ランタン、水酸化クロム、アルカリ金属ハロゲン化物、アルカリ土類金属ハロゲン化物が挙げられる。
【0040】
気相反応で448occcを脱フッ化水素させる場合、反応性、選択率を向上させる点から活性炭またはアルカリ土類金属フッ化物を用いて脱フッ化水素させることが好ましく、活性炭、BaF2、SrF2、またはCaF2を用いて脱フッ化水素させることがより好ましい。
【0041】
(精製用組成物)
精製用組成物は1437dyccを少量でも含んでいればよいが、1437dyccの含有量は、精製用組成物の全量に対して50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上がさらに好ましい。1437dyccの含有量が上記下限値以上であれば、物質(X)の除去効率がよい。精製用組成物中の1437dyccおよび物質(X)の含有量は特に限定されないが、物質(X)の除去効率の点で、(物質(X))/(1437dycc)で表わされるモル比で1未満が好ましく、0.001~0.7がより好ましく、0.1~0.2がさらに好ましい。
【0042】
(水)
精製用組成物には、例えば、液相反応により448occcを脱フッ化水素させる場合に用いられる水や、448occcを脱フッ化水素させて得られた反応生成物を水やアルカリで洗浄した際に混入する水が含まれる場合がある。水は、1437dyccの熱的、化学的安定性を低下させる場合がある。精製用組成物における水の含有量は、物質(X)の除去効率の点から、精製用組成物の全量に対して1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0043】
(3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン)
精製用組成物には、448occcを脱フッ化水素させる1437dyccの製造工程において副生される3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンが含まれる場合がある。3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンは下記式(2)に表される1437dyccの脱フッ化水素反応が進行して生成する。
CHCl=CFCF2CF2CHF2+H2O→
CH≡CCF2CF2CHF2+HF+HClO ・・・(2)
【0044】
3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンは、1437dyccの熱的、化学的安定性を低下させる場合がある。精製用組成物における3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は、物質(X)の除去効率の点で、精製用組成物の全量に対して1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.2質量%以下がさらに好ましい。
【0045】
(1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン)
精製用組成物には、448occcを脱フッ化水素させる1437dyccの製造工程において副生される1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンが含まれる場合がある。1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンは下記式(3)に表される1437dyccの脱フッ化水素反応が進行して生成する。
HCl=CFCF2CF2CHF2→CCl≡CCF2CF2CHF2+HF‥(3)
【0046】
1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンは、1437dyccの熱的、化学的安定性を低下させる場合がある。精製用組成物における1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は、物質(X)の除去効率の点で、精製用組成物の全量に対して1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
【0047】
(オキサイド)
精製用組成物にはオキサイドが含まれる場合がある。オキサイドは1437dyccの安定性の低下と酸性化物質の生成等の問題を引き起こす場合がある。オキサイドとしては、例えば1437dyccが酸素と反応することにより生成される酸化物が挙げられる。
具体的には、下式(A)により表される3-クロロ-2-フルオロ-2-(1,1,2,2,3,3-ヘキサフルオロプロピル)-オキシラン(オキサイド(A))、下式(B)により表される2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロブタノイルフルオリド(オキサイド(B))、下式(C)により表されるホルミルクロライド(オキサイド(C))、下式(D)により表される1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)(オキサイド(D))、下式(E)により表される1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(E)、1-クロロ-2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-5-ハイドロパーオキシ-1-ペンテン(Z)(オキサイド(E))等が挙げられる。
【0048】
【0049】
【0050】
オキサイド(A)、オキサイド(B)、オキサイド(C)は、ガスクロマトグラフィーを用いて分析を行うことにより定量できる。オキサイド(D)、オキサイド(E)のような-O-O-H構造を有するハイドロパーオキサイドの定量は、下記反応式(4)、(5)に表されるようにヨウ化ナトリウムによる滴定とチオ硫酸ナトリウムによる逆滴定によって行う。ROOHはオキサイド(D)またはオキサイド(E)を表し、ROHはオキサイド(D)またはオキサイド(E)の-O-O-H構造が-O-H構造に変化したものを表す。
【0051】
ROOH+2NaI+H2O →I2+2NaOH+ROH ・・・(4)
I2+2Na2S2O3 → Na2S4O6+2NaI ・・・(5)
【0052】
上記滴定と逆滴定は、具体的には次のように行う。ハイドロパーオキサイドを含むサンプル溶液約50mLにヨウ化ナトリウム(NaI)の2.5質量%と、アセトン溶液の約40mLとを混合し、さらに冷水約50mLを追加で混合し、上記反応式(4)に表されるように発生したヨウ素(I2)によって混合液を黄色に着色させる。この際に着色が発生しない場合はハイドロパーオキサイドが検出下限以下と判定される。着色した場合は、0.01mol/L(0.01N)のチオ硫酸ナトリウム(Na2S2O3)水溶液で着色が消えるまで混合液の逆滴定を行う。ハイドロパーオキサイドの定量値は上記滴定の実験値を用いて下記計算式で求める。
【0053】
ハイドロパーオキサイド[質量ppm]
={Na2S2O3水溶液消費量[mL]×Na2S2O3モル濃度[mol/mL]×(1/2)×ROOHの分子量}/サンプル溶液重量[g]×106
【0054】
精製用組成物におけるオキサイドの含有量は、物質(X)の除去効率の点で、精製用組成物に対して0.1質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下がさらに好ましい。
【0055】
[固体吸着剤]
固体吸着剤は、物質(X)のうちの少なくとも1つの物質を吸着する。固体吸着剤としては、活性炭、ゼオライト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。固体吸着剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
固体吸着剤は、精製用組成物と接触させる前に、予め100℃~400℃の乾燥ガスにより加熱処理されたもの、または減圧下で加熱処理されたものが好ましい。これにより、物質(X)の吸着性能を向上させることができる。
【0057】
(活性炭)
活性炭は、例えば、木材、木粉、ヤシ殻、パルプ製造時の副産物、バカス、廃糖蜜、泥炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、石油蒸留残渣成分、石油ピッチ、コークス、コールタール等の植物系原料若しくは化石系原料;フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、レゾルシノール樹脂、セルロイド、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂等の各種合成樹脂;ポリブチレン、ポリブタジエン、ポリクロロプレン等の合成ゴム;合成木材、合成パルプ等の活性炭原料の炭化、賦活によって得られる活性炭が挙げられる。これらの活性炭原料の中では、物質(X)に対して、高い吸着性能を有するため、ヤシ殻が好適に使用される。
【0058】
活性炭は、物質(X)の吸着性能に優れる点で、-196℃での窒素吸着法(Micromeritics社製 ASAP2405等を使用)により測定した以下の細孔特性を有するのが好ましい。比表面積は、600~2500m2/gが好ましく、1000~1600m2/gがより好ましく、平均細孔径は、1.6~3.5nmが好ましく、1.7~2.0nmがより好ましい。細孔容積は0.25~1.5mL/gが好ましく、0.3~1.0mL/gがより好ましい。
【0059】
活性炭は、物質(X)の吸着性能に優れる点で、JIS K1474試験法により測定した以下の物性値を有するのが好ましい。乾燥減量は5.0質量分率%以下であり、0質量%を超え~5.0質量%が好ましく、強熱残分は5.0質量分率%以下が好ましい。充てん密度は、0.25~0.85g/mLが好ましく、0.35g~0.60g/mLがより好ましい。pHは、4.0~12.0が好ましく、5.0~11.0がより好ましい。アセトン吸着性能は、14.0~41.0質量分率%が好ましく、25.0~39.0質量分率%がより好ましい。ヨウ素吸着性能が600~2600mg/gが好ましく、900mg/g~1600mg/gがより好ましい。硬さは90.0~100.0質量分率%が好ましい。
【0060】
活性炭の形状としては、長さ2~10mm程度の成形炭、4~50メッシュ程度の破砕炭、粒状炭等が挙げられ、活性の点から、4~50メッシュの破砕炭、または長さ2~5mmの成形炭が好ましい。なかでも、経済的に有利な点で、破砕状の活性炭が好ましく、破砕状のヤシ殻活性炭が特に好ましい。活性炭は市販品を用いてもよく、公知の方法で製造した活性炭を用いてもよい。さらに、活性炭としては、酸処理、熱処理、水蒸気処理等の前処理を施したものも使用できる。
【0061】
(ゼオライト)
ゼオライトとしては、例えば以下の式(6)または(7)で示す化学組成を有する合成ゼオライトが挙げられる。
KxNay[(AlO2)12(SiO2)12]・27H2O ………(6)
(ここで、x+y=12であり、x:y=4:6~8:2である。)
KxNay[(AlO2)86(SiO2)106]・276H2O ………(7)
(ここで、x+y=86であり、x:y=4:6~8:2である。)
【0062】
ゼオライトとしては、例えば、ゼオライト3A、4A、5Aが挙げられる。ゼオライト3A、4Aおよび5Aとは、平均細孔径が0.25~0.45nmを有する合成ゼオライトである。
【0063】
ゼオライト3Aとは、平均細孔径が0.28±0.03nmを有する合成ゼオライトをいう。ただし、通常の操作温度において空洞内に入ってくる分子の伸縮と運動エネルギーのために、合成ゼオライト3Aは有効直径0.3nmまでの分子を通過させることができる。
ゼオライト4Aとは、平均細孔径が0.35±0.03nmを有する合成ゼオライトをいう。ゼオライト5Aとは、平均細孔径が0.42±0.03nmを有する合成ゼオライトをいう。
【0064】
このようなゼオライトとして、A型合成ゼオライトのうちで3A、4Aおよび5Aと表記されるものが挙げられる。市販品としては、モレキュラーシーブ3A、4A、5A(ユニオン昭和社の商品名)等がある。X型合成ゼオライトの市販品としては、モレキュラーシーブ13Xがある。ゼオライト3A、4Aまたは5Aに加えて、モレキュラーシーブ13Xを併用してもよい。
【0065】
(シリカ)
シリカは、主としてSiO2の化学組成を有する化合物である。シリカとしては、多孔質合成シリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ等が挙げられる。シリカは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0066】
固体吸着剤として用いられるシリカの形状としては、粉末状、微粒子状、顆粒状、薄膜状等が挙げられる。シリカの形状は、吸着プロセスなどに応じて適した形状を適宜選択することができる。シリカの形状は、物質(X)の吸着性能の点で、粉末状または微粒子状が好ましい。なかでも、微粒子状のシリカは、液状の精製用組成物中に均一に分散されて分散液の状態になるため、取り扱い易い。微粒子状のシリカは、後述の吸着層を反応器内に形成し易い。
【0067】
多孔質合成シリカゲルは、細孔を有するシリカゲルである。多孔質合成シリカゲルの形状は、破砕した非球状であっても、球状であってもよいが、強度が高く、リサイクル使用しやすい点から、球状が好ましい。球状とは真球に限定されず、楕円球等やや変形した球形を含む。球状は好ましくは平均球形度0.5以上であり、より好ましくは0.85以上である。
【0068】
球状の多孔質合成シリカゲルの平均粒径は0.1~10000μmが好ましく、1~5000μmがより好ましい。また、平均細孔径は0.5~100nmが好ましく、2~50nmがより好ましい。比表面積は10~10000m2/gが好ましく、30~1000m2/gがより好ましい。これらの範囲を外れる場合、有効粒子や細孔の含有率が低下し、反応速度の低下、副反応の進行等を招くおそれがある。
【0069】
多孔質合成シリカゲルは、市販品として容易に入手可能であり、公知の方法により合成することもできる。さらに、この多孔質合成シリカゲルは、活性化処理等の前処理が施されていてもよい。市販品としては、例えば、クロマトグラフの担体としてもよく用いられているシリカゲル40、シリカゲル60、和光純薬工業社製Wakosil C-200、Wakosil C-300、関東化学社製球状シリカゲル等が挙げられる。
【0070】
メソポーラスシリカとは、均一で規則的なメソ孔(直径2~50nmの細孔)を持つ、主としてSiO2の化学組成を有する無機物である。メソポーラスシリカの形状は、球状、粉末状、微粒子状、薄膜状等が挙げられる。なかでも、比表面積が大きく、強度が高く、リサイクル使用しやすく、簡便に工業生産できる面から、球状の微粒子がより好ましい。平均細孔径は2~50nmが好ましく、2~10nmがより好ましい。平均細孔径が2nmより小さくなると、メソポーラスシリカ中への精製用組成物の拡散速度が低く、吸着性能が低下するおそれがある。一方、平均細孔径が50nmより大きくなると、精製用組成物とメソポーラスシリカが十分に接触せず、高選択率、高収率が得られないおそれがある。
【0071】
メソポーラスシリカのBET比表面積は10~3000m2/gが好ましく、50~3000m2/gがより好ましい。このようなBET比表面積のメソポーラスシリカは、容易に製造でき、精製用組成物に効率よく接触して物質(X)を効果的に吸着することが可能である。
メソポーラスシリカの平均粒径は0.2~10000μmが好ましく、1~5000μmがより好ましい。
【0072】
メソポーラスシリカの代表的な例として、MCM-41、MCM-48、MCM-50、SBA-1、SBA-11、SBA-15、SBA-16、FSM-16、KIT-5、KIT-6、HMS(六方晶)、MSU-F、MSU-H等が挙げられる。これらのメソポーラスシリカは市販品でも入手でき、公知の方法によって合成することもできる。
【0073】
シリカアルミナは、シリカ(SiO2)とアルミナ(Al2O3)を主成分とする複合酸化物であり、結晶性のものであっても、非晶質のものであってもよい。シリカアルミナにおけるシリカおよびアルミナの含有率の合計は95質量%以上であり、かつシリカの含有率は50mol%以上が好ましい。
【0074】
シリカアルミナの形状としては、球状、粉末状、微粒子状、薄膜状等が挙げられる。なかでも、比表面積が大きく、強度が高く、リサイクル使用しやすく、簡便に工業生産できる面から、球状の微粒子が好ましい。
【0075】
球状微粒子のシリカアルミナの平均粒径は0.2~20000μmが好ましく、1~10000μmがより好ましい。平均細孔径は1~100nmであり、2~50nmが好ましい。比表面積は10m~10000m2/gが好ましく、30~1000m2/gがより好ましい。上記平均粒径や比表面積の球状微粒子のシリカアルミナは、容易に製造できる。また上記平均粒径や比表面積であれば、精製用組成物の拡散速度が高く、物質(X)の吸着性能に優れる。
【0076】
シリカアルミナは、市販品として容易に入手可能であり、公知の方法により合成することができる。さらに、このシリカアルミナは、必要に応じて活性化処理等の前処理を施したものであってもよい。
シリカアルミナの市販品としては、例えば、富士シリシア化学社製シリカアルミナ308、日揮触媒化成社製N633HN、N631HN、N633L、N631L、シグマアルドリッチ社製Al-MCM-41、Al-MSU-F等が挙げられる。
【0077】
(アルミナ)
アルミナは、主としてAl2O3の化学組成を有する。アルミナとしては、活性アルミナが好ましい。活性アルミナは、無機多孔質体であり、水酸化アルミニウムから高温安定相であるα-アルミナへの転移過程における準安定相のアルミナである。比表面積が大きく吸着性能に優れることから、活性アルミナは非晶質ないしγ-アルミナが好ましい。
活性アルミナの形状は、球状、円柱状、角柱状、タブレット状、中空円筒状、ハニカム状等の成形体が好ましい。粒径が3mm~8mmの粒状物が取り扱いの点で、また固-気接触時の圧力損失を可及的に少なくする点で好ましい。
【0078】
活性アルミナに含有される細孔は、ミクロポア(平均細孔径20Å以下)、マクロポア(平均細孔径500Å以上)および両者の中間に位置するメソポアに分類される。これらの細孔のうち、物質(X)を物理的吸着するのはミクロポアであり、メソポアおよびマクロポアは精製用組成物の拡散律速を緩和すると考えられる。ミクロポアの占める細孔容積は全細孔容積の10~50%の範囲内にあることが好ましい。活性アルミナ中のメソポアおよびマクロポアの細孔径や容積は、活性アルミナを製造する際の原料の種類や、成形条件を調節することにより、調節することができる。
【0079】
活性アルミナは、物質(X)の吸着性能に優れる点で、BET比表面積が50~350m2/gが好ましく、100~350m2/gがより好ましい。活性アルミナの、窒素吸着法で測定した平均細孔径は、5~200Åが好ましく、10~150Åがより好ましい。活性アルミナの細孔容積は、0.1~0.8mL/gが好ましく、0.2~0.5mL/gがより好ましい。
【0080】
(固体吸着剤と精製用組成物の接触方法)
本発明において、精製用組成物を、上記した固体吸着剤に接触させることにより、精製用組成物中の物質(X)が固体吸着剤に吸着されて除去される。
固体吸着剤に接触させる際の精製用組成物は、気体(ガス状)でも液体(液状)でもよい。本発明において、固体吸着剤のうち2種以上を併用する場合には、接触させる固体吸着剤の順序は特に限定されない。例えば、精製用組成物を、固体吸着剤の2種以上に、順番に接触させてもよく、固体吸着剤の2種以上を混合する等して、同時に接触させてもよい。順番に接触させる場合には、用いられる固体吸着剤のそれぞれについて、後述する接触方法によって精製用組成物と固体吸着材とを接触させればよい。
【0081】
以下、ガス状の精製用組成物を用いる方法を例に説明する。この方法では、例えば、反応器内に、固体吸着剤を充填して吸着層を形成し、その吸着層に、ガス状の精製用組成物を流通させることで固体吸着剤と精製用組成物を接触させることができる。この方法による固体吸着剤と精製用組成物の接触は、回分式(バッチ式)でもよく、連続式でもよい。
【0082】
吸着層における固体吸着剤の充填密度は、0.1g/cm3以上が好ましく、0.25g/cm3以上がより好ましい。充填密度が下限値以上であれば、単位容積あたりの固体吸着剤の充填量が多くなり、ガス状の精製用組成物の処理量を多くできるため1437dycc以外の物質(X)の除去効率が向上する。吸着層は、1つであってもよく、2つ以上であってもよい。吸着層が2つ以上の場合、それらの吸着層は並列であっても直列であってもよい。
【0083】
接触時の吸着層の温度は、精製用組成物をガス状態で維持するために、1437dyccの沸点以上である60~100℃が好ましく、70~90℃がより好ましい。吸着層の温度が下限値以上であれば、固体吸着剤による、物質(X)の除去効率が向上する。吸着層の温度が上限値以下であれば、精製後の組成物の冷却に要するエネルギーがより少なくてすみ、設備等も簡便になる。
【0084】
接触時の反応器内の圧力(絶対圧)は、10~500kPaが好ましく、90~300kPaがより好ましい。圧力が下限値以上であれば、取り扱い性がよく、設備等をより簡便にできる。圧力が上限値以下であれば、物質(X)の除去効率が向上する。
【0085】
吸着層に流通させるガス状の精製用組成物と吸着層との接触時間は、1~1000秒が好ましく、3~300秒がより好ましい。接触時間が下限値以上であれば、物質(X)の除去効率が向上する。接触時間が上限値以下であれば、精製用組成物の精製に用いる吸着層が小さくて済むので、設備等が簡便になる。吸着層に精製用組成物を流通させる方法においては、接触時間は、精製用組成物の反応器内での滞留時間に相当し、精製用組成物の反応器への供給量(流量)を調節することで制御できる。後述の液状の精製用組成物を用いる場合も同様である。
【0086】
除去効率の点から、吸着層に流通させるガス状の精製用組成物に含まれる物質(X)の総量は、吸着層中の固体吸着剤の1質量部に対して、0.05質量部以下が好ましく、0.02質量部以下がより好ましい。つまり、ガス状の精製用組成物を用いる方法においては、固体吸着剤に接触させるガス状の精製用組成物の量を、物質(X)の固体吸着剤に対する割合が上記上限値以下となるように調節して接触させることが好ましい。
【0087】
精製用組成物ガスの固体吸着剤との接触に使用する反応器としては、固体吸着剤を充填して吸着層を形成できる反応器であればよい。反応器の材質としては、例えば、ガラス、鉄、ニッケル、またはこれらを主成分とする合金、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂等が挙げられる。
【0088】
次に、液状の精製用組成物を用いる方法を説明する。この方法では、ガス状の精製用組成物を用いる方法と同様に、反応器内に吸着層を形成し、その吸着層に、液状の精製用組成物を流通させる方法を用いることができる。固体吸着剤を収容した反器内で、精製用組成物に固体吸着剤を浸漬し、必要に応じて混合、撹拌する方法を用いることができる。これらの方法による固体吸着剤と精製用組成物の接触は、回分式(バッチ式)でもよく、連続式でもよい。
【0089】
精製用組成物を液体の状態で固体吸着剤に接触させる際には、精製用組成物を常圧で沸点以下の温度に調節して液状とすることができる。精製用組成物を溶媒に溶解させて液状とすることができる。このとき使用される溶媒としては、1437dyccと沸点の異なる溶媒を用いることで、蒸留等の方法で当該溶媒を精製後の組成物から容易に除去することができる。
【0090】
固体吸着剤と精製用組成物の接触時の反応器内の温度は、-30℃~70℃が好ましく、10℃~40℃がより好ましい。温度が下限値以上であれば、1437dycc以外の不純物の除去速度が向上する。温度が上限値以下であれば、精製後の組成物の冷却に要するエネルギーがより少なくてすみ、設備等も簡便になる。
【0091】
固体吸着剤と精製用組成物の接触時の反応器内の圧力(ゲージ圧)は、0~200kPaが好ましく、100~150kPaがより好ましい。圧力が下限値以上であれば、1437dycc以外の不純物の除去速度が向上する。圧力が上限値以下であれば、取り扱い性がよく、設備等が簡便ですむ。
【0092】
吸着層に1437dyccを含む精製用組成物を流通させる方法においては、吸着層に流通させる液状の精製用組成物と吸着層との接触時間は、1秒~1000秒が好ましく、3秒~300秒がより好ましい。接触時間が下限値以上であれば、物質(X)の除去効率が向上する。接触時間が上限値以下であれば、組成物の精製に用いる吸着層が小さくて済むので、設備等が簡便になる。
吸着層における固体吸着剤の充填密度および吸着層の構成の好ましい態様はガス状の精製用組成物を用いる方法と同様である。
【0093】
固体吸着剤を収容した反応器内で固体吸着剤を精製用組成物に浸漬する方法においては、反応器内における液状の精製用組成物と固体吸着剤との接触時間は、1~100時間が好ましく、3~60時間がより好ましい。接触時間が下限値以上であれば、物質(X)の除去効率が向上する。接触時間が上限値以下であれば、精製用組成物の精製に用いる固体吸着剤の量が少なくて済むので、設備等が簡便になる。
固体吸着剤を、反応器内で精製用組成物に浸漬する方法では、精製用組成物の精製後に、沈降あるいはろ過によって、精製された組成物と固体吸着剤を分離することができる。
【0094】
物質(X)の除去効率が向上する点から、固体吸着剤に接触させる液状の精製用組成物に含まれる物質(X)の総量は、固体吸着剤の1質量部に対して、0.05質量部以下が好ましく、0.02質量部以下がより好ましい。つまり、液状の精製用組成物を用いる方法においては、固体吸着剤に接触させる精製用組成物の液量を、上記物質(X)の固体吸着剤に対する割合が上記上限値以下となるように調節して接触させることが好ましい。
【0095】
液状の精製用組成物と固体吸着剤との接触に使用する反応器としては、例えば、固体吸着剤を収容できるものや、固体吸着剤からなる吸着層を形成できるものであればよい。反応器の材質としては、例えば、ガラス、鉄、ニッケル、またはこれらを主成分とする合金、テトラフルオロエチレン-ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体(PFA)等のフッ素樹脂等が挙げられる。混合液を固体吸着剤と混合して接触させる反応器としては、所望の温度、圧力で、固体吸着剤に精製用組成物を液体状態で接触させることのできる反応器、例えばオートクレーブ等が挙げられる。
【0096】
(精製後の組成物)
固体吸着剤は、一般的に、精製対象である組成物の組成や固体吸着剤の種類(物質組成や細孔の大きさ)によって、吸着し易い化合物が異なる。1437dyccと、物質(X)とを含む組成物を精製対象とする本発明において、例えば、水は、ゼオライト、好ましくはゼオライト3Aまたはゼオライト4Aに吸着されやすい。そのため、本発明においては、固体吸着剤としてゼオライト(特に、ゼオライト3Aまたは4A)を用い、1437dyccと水を含む精製用組成物と接触させることで、組成物中の水を選択的に除去し、1437dyccを精製することができる。
【0097】
精製用組成物中のオキサイドは、活性炭、アルミナに吸着され易い。そのため、実施形態の製造方法においては、固体吸着剤として活性炭またはアルミナを用い、1437dyccとオキサイドを含む精製用組成物と接触させることで、オキサイドを選択的に除去し、1437dyccを製造することができる。
【0098】
精製用組成物中の3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンや1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンは、活性炭、シリカに吸着されやすい。そのため、固体吸着剤として活性炭またはシリカを用い、1437dyccと3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンや1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンとを含む精製用組成物と接触させることで、精製用組成物から、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンや1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンを効率よく除去して、1437dyccを製造することができる。
【0099】
上記のように、本発明では、固体吸着剤の1種を単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることで、精製用組成物に含まれる物質(X)のうち、所望の化合物を望まれる程度に除去することができる。
本発明により、精製用組成物に含まれる物質(X)を除去することにより、物質(X)の含有量が低減された組成物を得ることができる。
【0100】
本発明により精製した後の組成物中の1437dyccの含有量は90質量%以上にでき、さらには、95質量%以上にできる。
本発明による精製後の組成物中の水の含有量は、200質量ppm以下にでき、さらには、100質量ppm以下にでき、特には、20質量ppm以下にできる。製造コストを抑える点から、精製後の組成物中の水の含有量は、1質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上であることが好ましい。
【0101】
本発明による精製後の組成物中の3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は1200質量ppm以下にでき、さらには、1100質量ppm以下にできる。なお、精製後の組成物中の3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は1質量ppm以上が好ましい。上記範囲内であれば、製造コストを抑えられ、かつ1437dyccの安定性に優れる。
【0102】
本発明による精製後の組成物中の1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は600質量ppm以下にでき、さらには、550質量ppm以下にでき、特には100質量ppm以下にできる。なお、精製後の組成物中の1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの含有量は1質量ppm以上下が好ましく、10質量ppm以上がより好ましく、50質量ppm以上がさらに好ましい。上記範囲内であれば、製造コストを抑えられ、かつ1437dyccの安定性に優れる。
【0103】
本発明による精製後の組成物中のオキサイドの含有量は、合計で100質量ppm以下にでき、さらには、50質量ppm以下にでき、特には、10質量ppm以下にできる。 オキサイドの含有量が上記上限値以下であれば、溶剤組成物の安定性の低下を充分に防止できる。オキサイドの含有量が上記上限値以下であれば、0質量ppmの極限まで低減しなくてもよい。なお、精製後の組成物中のオキサイドの含有量は、1質量ppm以上が好ましく、2質量ppm以上がより好ましい。上記下限値以上であれば、1437dyccの酸化が抑えられて、溶剤組成物の安定性に優れる。
【実施例】
【0104】
以下に、本発明について実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されない。
(分析方法)
分析対象組成物中の水以外の成分の含有量(含有比率)は、ガスクロマトグラフィーで分析する。カラムはDB-1301(長さ60m×内径250μm×厚み1μm、アジレント・テクノロジー社製)を用いる。水の含有量は、カールフィッシャー水分計で分析した。
【0105】
上記ガスクロマトグラフィーおよびカールフィッシャー水分計の分析結果を用いて、分析対象組成物の全体量に対する3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの割合(質量ppm)、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの割合(質量ppm)、および水の割合(質量ppm)を求めた。
【0106】
(製造例:1437dyccの製造)
フラスコに797gの448occcと、8.4gのテトラ-n-ブチルアンモニウムブロミドを入れ、反応温度を25℃に保ち、1001gの34質量%水酸化カリウム水溶液を1時間かけて滴下した。その後、12時間反応を続け、有機相と水相を二相分離し、有機相を回収した。回収した有機相を同重量の水で洗浄することで1437dycc、水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンおよび1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンを含む組成物(精製用組成物)を得た。精製用組成物の組成は、表1に示す。
【0107】
(実施例1)
上記の製造例により得られた精製用組成物5gを10mL蓋付きガラス製容器に入れ、精製用組成物5gに対して10質量%の活性炭(三菱化成工業社製品名:ダイアソープG4-8)を加えた後室温で48時間静置した。48時間後、精製用組成物から活性炭を分離して組成を分析すると、表1に示す処理後組成となった。
【0108】
(実施例2)
活性炭の代わりに活性アルミナ(西尾工業社製品名:活性アルミナKHO_47)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で処理をした。処理後、精製用組成物から活性アルミナを分離して組成を分析すると、表1に示す処理後組成となった。
【0109】
(実施例3)
活性炭の代わりにシリカゲル(関東化学社商品名:シリカゲル60N(球状、中性))を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で処理をした。処理後、精製用組成物からシリカゲルを分離して組成を分析すると、表1に示す処理後組成となった。
【0110】
(実施例4)
活性炭の代わりにゼオライト3A(純正化学社商品名:化学用MS3A)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で処理をした。処理後、精製用組成物からゼオライト3Aを分離して組成を分析すると、表2に示す処理後組成となった。
【0111】
(実施例5)
活性炭の代わりにゼオライト4A(純正化学社商品名:化学用MS4A)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で処理をした。処理後、精製用組成物からゼオライト4Aを分離して組成を分析すると、表2に示す処理後組成となった。
【0112】
(実施例6)
活性炭の代わりにゼオライト5A(純正化学社商品名:化学用MS5A)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で処理をした。処理後、精製用組成物からゼオライト5Aを分離して組成を分析すると、表2に示す処理後組成となった。
【0113】
【0114】
【0115】
実施例1~6より、1437dyccを含む精製用組成物を、それぞれ、活性炭、アルミナ、シリカゲル、ゼオライト3A、ゼオライト4Aまたはゼオライト5Aと接触させることで、精製用組成物からTBAB、水、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンおよび1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンを除去できることがわかる。
特に、精製用組成物からの水の除去には、ゼオライト3A、ゼオライト4A、ゼオライト5Aを用いると効果が高く、精製用組成物からの3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチン、1-クロロ-3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンチンの除去には、活性炭、またはシリカゲルを用いると効果が高いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明により製造される1437dyccを含む組成物は、信頼性や性能上の問題を引き起こし得る物質の含有量が低減されているので、洗浄剤、溶剤、冷媒、発泡剤、エアゾールなどの広範な分野において有利に使用できる。
【0117】
なお、2018年5月15日に出願された日本特許出願2018-093851号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。