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特許7331845防眩性透明基体およびそれを備える表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】防眩性透明基体およびそれを備える表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/02 20060101AFI20230816BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230816BHJP
   C03C 21/00 20060101ALI20230816BHJP
   C03C 19/00 20060101ALI20230816BHJP
   C03C 15/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02F1/1335
C03C21/00 101
C03C19/00 A
C03C15/00 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020521187
(86)(22)【出願日】2019-05-15
(86)【国際出願番号】 JP2019019416
(87)【国際公開番号】W WO2019225450
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018096981
(32)【優先日】2018-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】波田野 麻耶
(72)【発明者】
【氏名】金杉 諭
(72)【発明者】
【氏名】尾関 正雄
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/082199(WO,A1)
【文献】特開2018-52802(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047710(WO,A1)
【文献】特開2014-84234(JP,A)
【文献】特開2017-116573(JP,A)
【文献】国際公開第2017/094683(WO,A1)
【文献】特表2016-523796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
C03C15/00
C03C19/00
C03C21/00
G02F 1/1335
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面および第2主面を備える化学強化ガラスからなる透明基体を備え、
前記第1主面は、
算術平均粗さRaが0.05nm以上2nm以下の第1平滑領域と、
前記第1平滑領域の算術平均粗さRaよりも大きい算術平均粗さRaを有する第1粗面領域を備え、
前記第1粗面領域は、算術平均粗さRaが2nm超75nm以下であり、
前記第2主面は、
前記第1平滑領域と対向する領域の少なくとも一部に、算術平均粗さRaが0.05nm以上2nm以下の第2平滑領域と、
前記第2平滑領域の算術平均粗さRaよりも大きい算術平均粗さRaを有する第2粗面領域を備え、
前記第1平滑領域の表面圧縮応力CSが、前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSよりも大きいことを特徴とする、防眩性透明基体。
【請求項2】
前記第1平滑領域の面積をS 、前記第1粗面領域の面積をS とした際に、面積比(S /S )×100で表される比が0.5%以上10%以下である、請求項1に記載の防眩性透明基体。
【請求項3】
前記第1平滑領域の面積をS 、前記第2平滑領域の面積をS とした際に、面積比(S /S )×100で表される比が90%以上99.5%以下である、請求項2に記載の防眩性透明基体。
【請求項4】
前記第2粗面領域は、算術平均粗さRaが2nm超1000nm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項5】
SiとAl、B、Zr、Tiからなる群より選ばれる元素Xとの原子組成比X/SiをZ、前記第1粗面領域における原子組成比ZをZ、前記第1平滑領域における原子組成比ZをZと定義したとき、ZとZとの比Z/Zが0~1.1となる請求項1~4のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項6】
前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項7】
前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0.2以上である、請求項6に記載の防眩性透明基体。
【請求項8】
前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0未満である、請求項1~5のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項9】
前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が-0.2未満である、請求項8に記載の防眩性透明基体。
【請求項10】
引張応力を正値、圧縮応力を負値とした場合、前記第1平滑領域の板厚方向応力積分値Sが、0MPa未満である、請求項1~9のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項11】
前記第1平滑領域の板厚方向応力積分値Sが-3MPa未満となる、請求項10に記載の防眩性透明基体。
【請求項12】
前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSが、500MPa以上である、請求項1~11のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項13】
前記透明基体の厚さが2mm以下である、請求項1~12のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項14】
前記第1粗面領域の少なくとも一部に屈曲部を有する、請求項1~13のいずれか1項に記載の防眩性透明基体。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の防眩性透明基体を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性透明基体およびそれを備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーナビゲーションシステムや、オーディオ等の車載用情報機器や、携帯通信機器は、表示装置を備える。
表示装置には、表示パネルの前面に接着層を介して板状の透明基体である保護カバーが設けられる。保護カバーは、外光反射を低減したり、表示パネルを外部衝撃から保護したりする機能を備える。
保護カバーには、強度、美観、視認性の観点から化学強化ガラスが用いられる場合がある。一方で、保護カバーには入射光により、周囲の景色が映り込むことがある。
入射光による映り込みを防ぐためには、防眩処理(AG処理)を保護カバーの表面に施して防眩性透明基体とすることが有効である。防眩処理は、保護カバーの表面に微細な凹凸を形成する処理である。防眩処理が施された表面により、入射した光を散乱させ、映り込んだ周囲の景色をぼかすことができる。
【0003】
防眩処理は、映り込みを防ぐ観点からは有用であるが、平滑な面が必要となる領域には設けない方が好ましい場合がある。これは指紋認証のように、認証対象の立体的な形状を読み取る機能を表示装置が備える場合、防眩処理により形成された微細な凹凸を、認証対象の立体形状の一部と認証部が誤認する恐れがあるためである。
【0004】
そこで、防眩処理後の表面の一部を砥石で研磨することにより、微細な凹凸を除去する方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】日本国特開2017-116573号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、化学強化ガラスに防眩処理を施した領域と施さない領域とを両方とも設けると、ガラス基板が反り易いという問題があった。
これは、防眩処理後に化学強化を行った場合、表面形状の違いに起因して、防眩処理を施す領域と施さない領域とで、化学強化により交換されるイオンの物質移動係数が変わるため、化学強化が不均一となり、主表面間での応力分布が不均一になるためである。
また、化学強化後に防眩処理を行った場合でも、防眩処理後の熱処理の際に、表面形状の違いに起因して防眩処理を施す面と施さない面とで、ガラス中の成分の物質移動係数が変わり、主表面間での応力分布が不均一になるためである。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、防眩処理を施した領域と施さない領域とを両方とも透明基体に設ける場合であっても、反りを抑制できる防眩性透明基体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の防眩性透明基体は、第1主面および第2主面を備える化学強化ガラスからなる透明基体を備え、前記第1主面は、算術平均粗さRaが0.05nm以上2nm以下の第1平滑領域と、前記第1平滑領域の算術平均粗さRaよりも大きい算術平均粗さRaを有する第1粗面領域とを備え、前記第2主面は、前記第1平滑領域と対向する領域の少なくとも一部に、算術平均粗さRaが0.05nm以上2nm以下の第2平滑領域を備えることを特徴とする。
本発明によれば、第1粗面領域の位置によらず、第1平滑領域と第2平滑領域の少なくとも一部が対向している。そのため、対向した領域では、主表面間の表面形状の違いに起因する、応力分布の差が生じ難い。よって、防眩処理を施した領域と施さない領域を両方とも透明基体に設ける場合であっても、反りを抑制できる。
【0009】
本発明では、前記第1粗面領域は、算術平均粗さRaが2nm超1000nm以下であるのが好ましい。
第1粗面領域が、算術平均粗さRaが2nm超1000nm以下である場合、第1主面側から第1粗面領域に入射した可視光を散乱させ、映り込みをぼかすことができる。そのため、防眩処理を施した面として、第1粗面領域を好適に利用できる。
【0010】
本発明では、前記第2主面は、さらに、前記第2平滑領域の算術平均粗さRaよりも大きい算術平均粗さRaを有する第2粗面領域を備えるのが好ましい。
第2主面にも粗面領域を備える場合、第2主面側から入射した可視光に対しても防眩性を発揮できる。
【0011】
本発明では、前記第2粗面領域は、算術平均粗さRaが2nm超1000nm以下であるのが好ましい。
第2粗面領域の表面粗さが、算術平均粗さRaで2nm超1000nm以下である場合、第2主面側から第2粗面領域に入射した可視光を散乱させ、映り込みをぼかすことができる。そのため、防眩処理を施した面として、第2粗面領域を好適に利用できる。
【0012】
本発明ではSiとAl、B、Zr、Tiからなる群より選ばれる元素Xとの原子組成比X/SiをZ、前記第1粗面領域における原子組成比ZをZ、前記第1平滑領域における原子組成比ZをZと定義したとき、ZとZとの比Z/Zが0~1.1となるのが好ましい。
上記の比Z/Zが0~1.1である場合、表面に反射防止層などを堆積しても光学的異質層となりにくく、優れた防眩性透明基体が得られる
【0013】
本発明では、前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0以上であってもよい。
Sskが0以上である場合、第1粗面領域の凸部のピーク幅が狭くなり、指すべり性の向上や指紋が付着しにくい効果が期待できる。
【0014】
本発明では、前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0.2以上であってもよい。
Sskが0.2以上である場合、ガラス表面での光の散乱が多くなるため、ガラス表面のギラツキを抑制する効果がある。
【0015】
本発明では、前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が0未満であってもよい。
Sskが0未満である場合、第1粗面領域の凹部のピーク幅が狭くなり、耐擦傷性が向上できる。
【0016】
本発明では、前記第1粗面領域の面の偏り度(Ssk)が-0.2未満であってもよい。
Sskが-0.2未満である場合、ガラス表層の光沢や艶を消す効果があり、アンチグレア効果が向上する。
【0017】
本発明では、引張応力を正値、圧縮応力を負値とした場合、前記第1平滑領域の板厚方向応力積分値Sが、0MPa未満であるのが好ましい。
板厚方向応力積分値Sが0MPa未満である場合、第1平滑領域を含む透明基体の板厚方向に圧縮応力が生じる。
そのため、第1平滑領域への衝撃に対して透明基体が割れにくくなる。
【0018】
本発明では、前記第1平滑領域の板厚方向応力積分値Sが-3MPa未満となるのが好ましい。
板厚方向応力積分値Sが-3MPa未満である場合、第1平滑領域を含む透明基体の板厚方向に、さらに強い圧縮応力が生じる。
そのため、第1平滑領域への衝撃に対して、さらに透明基体が割れにくくなる。
【0019】
本発明では、前記第1平滑領域の表面圧縮応力CSが、前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSよりも大きいことが好ましい。
前記第1平滑領域の表面圧縮応力CSが、前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSよりも大きい場合、防眩性透明基体に衝撃が加えられた場合に、第1平滑領域の方が第1粗面領域よりも割れにくい。そのため、第1平滑領域を指紋認証等に用いる場合に、外部からの衝撃で認証不能になりにくい。
【0020】
本発明では、前記第1平滑領域の表面圧縮応力CSが、前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSよりも大きい場合、前記第1粗面領域の表面圧縮応力CSが、500MPa以上であるのが好ましい。
第1平滑領域および第1粗面領域の表面圧縮応力CSが500MPa以上となる場合、防眩性透明基体に衝撃が加えられた場合に、より透明基体が割れにくくなる。
【0021】
本発明では、前記透明基体の厚さが2mm以下であるのが好ましい。
透明基体の厚さが2mm以下である場合、防眩性透明基体の質量を減らせ軽量化でき、さらに防眩性透明基体と表示パネルの間に指紋認証部等を設けた場合に、認証精度を向上させられる。
【0022】
本発明では、前記第1粗面領域の少なくとも一部に屈曲部を有するのが好ましい。
前記第1粗面領域の少なくとも一部に屈曲部を有する場合、防眩性透明基体を取り付ける相手側部材が屈曲形状を有していても、取り付けの精度が下がるのを防げる。
【0023】
本発明の表示装置は、上記いずれかに記載の防眩性透明基体を備える。
本発明によれば、防眩性透明基体で保護された表示装置を得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1図1は本実施形態に係る防眩性透明基体を示す図であって、(A)は平面図、(B)は、(A)の1A-1A断面図、(C)は(B)の点線で囲んだ領域の拡大図である。
図2図2は本実施形態に係る防眩性透明基体の変形例を示す断面図である。
図3図3は本実施形態に係る防眩性透明基体の変形例を示す図であって、(A)は断面図、(B)は(A)の点線で囲んだ領域の拡大図である。
図4図4は本実施形態に係る防眩性透明基体の変形例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は(A)の4A-4A断面図である。
図5図5は本実施形態に係る防眩性透明基体の変形例を示す図であって、(A)は平面図、(B)は(A)の5A-5A断面図、(C)は(A)の5A’-5A’断面図である。
図6図6は本実施形態に係る防眩性透明基体の変形例を示す断面図である。
図7図7は本実施形態に係る防眩性透明基体を備える表示装置を示す断面図である。
図8図8は実施例において、全体形状を示すグラフである。
図9図9は実施例において、認証部に相当する領域の形状を示すグラフである。
図10図10は実施例において、表面圧縮応力CSの分布を示すグラフである。
図11図11は実施例において、断面応力分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態について説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることはない。また、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換等を加えられる。
【0026】
(防眩性透明基体の構成)
まず、図1を参照して、防眩性透明基体の構造について説明する。
本実施形態に係る防眩性透明基体は、化学強化ガラスからなる透明基体を備え、任意の保護対象を保護するために用いられる。
【0027】
図1に示すように、防眩性透明基体1は、板状の化学強化ガラスからなる透明基体2を備える。
透明基体2は、第1主面21および第2主面22を備える。第1主面21は、第1平滑領域25および第1粗面領域27を備える。第2主面22は第2平滑領域29を備える。
透明基体2は化学強化ガラスであるため、圧縮応力層26および引張応力層28を備える。圧縮応力層26は圧縮応力が作用する層(圧縮応力が0MPa以上の層)である。圧縮応力層26は第1主面21および第2主面22の表面から、板厚方向の所定の深さまでの範囲に設けられる。圧縮応力層26は端面にも設けられるが、ここでは説明を省略する。
引張応力層28は、引張応力が作用する層(圧縮応力が0MPa未満の層)である。引張応力層28は、圧縮応力層26の間に設けられる。
【0028】
第1平滑領域25は、平滑面を備えた領域である。防眩性透明基体1の保護対象が、スマートフォンである場合、第1平滑領域25は、指紋認証センサ等のセンサに対向する位置に設けられる。
【0029】
第1平滑領域25は、表面粗さが、算術平均粗さRaで0.05nm以上2nm以下である。
Raが2nm以下であることにより、平滑面が得られ、センサの検出精度を向上させられる。Raが0.05nm以上であることにより、表面仕上げに要するコストを抑制できる。
なお、算術平均粗さRaは、JIS B 0601(2013)で規定される値である。
【0030】
Raは、0.06nm以上1.8nm以下が好ましく、0.07nm以上1.5nm以下がより好ましく、0.08nm以上1.2nm以下がさらに好ましい。
【0031】
第2平滑領域29は、平滑面を備えた領域である。第2平滑領域29は、第1平滑領域25に対向する領域29Aを少なくとも一部に有する。ここでいう「対向」とは、第1平滑領域25と、領域29Aの平面上の位置、ここでは第1主面21または第2主面22から見た位置が重なっていることを意味する。
第2平滑領域29の表面粗さは、第1平滑領域25と同程度であり、算術平均粗さRaで0.05nm以上2.0nm以下である。
【0032】
第1粗面領域27は、表面粗さが、算術平均粗さで第1平滑領域25よりも大きい領域である。防眩性透明基体1の保護対象が、スマートフォンである場合、第1粗面領域27は、表示部に対向する防眩処理が施された領域に該当する。
【0033】
第1粗面領域27は、表面粗さが、算術平均粗さRaで2nm超1000nm以下であるのが好ましい。
算術平均粗さRaが2.0nm超であることにより、第1主面21側から防眩性透明基体1に入射した光を散乱させ、入射光による映り込みをぼかすことができる。
算術平均粗さRaが1000nm以下であることにより、第1粗面領域27が覆う表示部の視認性を確保できる。
【0034】
第1粗面領域27は、表面粗さが、算術平均粗さRaで、2nm超1000nm以下が好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましく、50nm以上75nm以下がさらに好ましい。算術平均粗さRaを上記範囲とすることで、第1粗面領域27のヘイズ値を1%以上30%以下に調整できる。ヘイズ値は、JIS K 7136(2000)で規定される値である。
【0035】
算術平均粗さが上記範囲を満たせば、第1粗面領域27の表面形状は特に限定しない。該表面形状はガラス表面に静電スプレー等で微粒子を吹き付けて凸部を形成してなる形状でもよい。該表面形状はエッチングにより、ガラス表面に凹部を形成してなる形状でもよい。
【0036】
第1平滑領域25の面積をS、第1粗面領域27の面積をSとしたとき、面積比S/S×100は特に規定しないが、0.5%以上10%以下程度である。第1平滑領域25の面積Sと第2平滑領域29の面積Sの面積比(S/S×100)も特に規定しないが、90%以上99.5%以下程度である。
【0037】
表面形状が凸部や凹部を形成してなる形状の場合、SiとAl、B、Zr、Tiからなる群より選ばれる元素Xとの原子組成比X/SiをZ、前記第1粗面領域における原子組成比ZをZ、前記第1平滑領域における原子組成比ZをZと定義したとき、ZとZとの比Z/Zが0~1.1となるのが好ましい。スプレーコートのように第1粗面領域27に含まれるSiが多い場合は、Z/Zが1未満であることが好ましい。一方で、第1粗面領域27に含まれるSiが少ない場合は、Z/Zが1~1.1であることが好ましい。
Siおよび元素Xの含有量はEDX(Energy Dispersive X-ray spectrometry)、ICP(Inductively Coupled Plasma)等の公知の手法で測定できる。
第1粗面領域27や第1平滑領域25のSi含有量は、第1主面21の表面から板厚方向に深さ1μm程度、あるいは透明基体2の全厚に対して0.1%程度の深さまでのSi含有量に相当する。
【0038】
表面形状が凸部を形成してなる形状の場合、第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が0以上であるのが好ましい。Sskが0以上であることにより、凸部のピーク幅が狭くなり、指すべり性の向上や指紋が付着しにくい効果が期待できる。第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)は0.2以上がより好ましい。
なお、面の偏り度(Ssk)は、ISO 25178-2(2012)で規定される値である。
【0039】
表面形状が凹部を形成してなる形状の場合、第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が0未満であるのが好ましい。Sskが0未満であることにより、凹部のピーク幅が狭くなり、耐擦傷性が向上できる。第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)は-0.2未満がより好ましい。
【0040】
防眩性透明基体1は、引張応力を正値、圧縮応力を負値とした場合、第1平滑領域25の板厚方向応力積分値Sが、0MPa未満であるのが好ましい。
第1平滑領域25の板厚方向応力積分値Sが0MPa未満となると、第1平滑領域25を含む板厚方向に圧縮応力が生じる。そのため、第1平滑領域25を含む領域の板厚が薄くても衝撃に対して割れにくくなり、必要な強度を備える。
【0041】
ここでいう板厚方向応力積分値Sは、フォトニックラティス社のWPA100等の位相差評価装置により位相差Rを求め、以下の式(1)によりS値に変換した値である。
S=位相差R÷ガラスの光弾性定数C ・・・(1)
【0042】
測定位置は、第1平滑領域25内であれば、特に限定されないが、例えば重心位置である。式(1)における位相差Rと光弾性定数Cの関係は、内部応力(正確には主応力の差)をσ、板厚をtとすると、R/C=σtで表されるため、式(1)の板厚方向応力積分値Sは内部応力の積分値相当であるσtに相当する。
【0043】
板厚方向応力積分値Sが-3MPa未満であると、さらに強い圧縮応力が生じるので、好ましく、-5MPa未満がより好ましい。これにより防眩性透明基体1の主面に発生したクラックなどが伸展しにくくなるため、防眩性透明基体1の耐衝撃性が向上する。板厚方向応力積分値Sの下限値は特に制限はないが、-20MPa以上が好ましく、-10MPa以上がより好ましい。これにより、防眩性透明基体1の光学的ひずみを示すリタデーションが下がり、防眩性透明基体1を透過する光が偏光しにくくなるため、光学的センサ等を使用する場合は認証精度を向上できる。
【0044】
板厚方向応力積分値Sを0MPa未満にするための具体的な方法としては、第1平滑領域25を含む領域の板厚をなるべく薄くしたうえで化学強化する方法がある。化学強化時間は長い方が好ましい。また、第1平滑領域25を選択的に化学強化する方法もある。
【0045】
防眩性透明基体1は、第1平滑領域25の表面圧縮応力CSが、第1粗面領域27の表面圧縮応力CSよりも大きいことが好ましい。これにより、防眩性透明基体1に衝撃が加えられた場合に、第1平滑領域25の方が割れにくくなる。そのため、第1平滑領域25を指紋認証等に用いる場合に、外部からの衝撃で認証不能になりにくくなり、好ましい。
第1平滑領域の表面圧縮応力CSが、第1粗面領域の表面圧縮応力CSよりも大きい場合、第1粗面領域27の表面圧縮応力CSは、500MPa以上が好ましく、600MPa以上がより好ましい。第1平滑領域25および第1粗面領域27の表面圧縮応力CSは500MPa以上であることにより、防眩性透明基体1が、より衝撃に強くなり、より割れにくくなる。表面圧縮応力CSの上限値は特に制限はないが、900MPa以下が好ましく。800MPa以下がより好ましい。これにより、防眩性透明基体1が割れた時の破砕片が細かくなりすぎずに、仮に防眩性透明基体1が割れても認証機能を維持できる場合がある。
表面圧縮応力CSは、表面応力計(例えば、折原製作所製FSM-6000)等を用いて測定できる。
【0046】
第1平滑領域25の圧縮応力深さDOLは10μm以上が好ましく、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。DOLが10μm以上であることにより、防眩性透明基体1の耐擦傷性を向上できる。圧縮応力深さDOLは150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。これにより、プロセス時間短縮が可能となり、より現実的なコストで強化できるため好ましい。
圧縮応力層深さDOLは、任意の方法により測定できる。例えばEPMA(Electron Probe Micro Analyzer、電子線マイクロアナライザー)にてガラスの深さ方向のアルカリイオン濃度分析(この例の場合はカリウムイオン濃度分析)を行い、測定で得られたイオン拡散深さを圧縮応力層深さDOLとみなせる。
圧縮応力層深さDOLは表面応力計(例えば、折原製作所製FSM-6000)等を用いても測定できる。またガラス表層のリチウムイオンと溶融塩中のナトリウムイオンとをイオン交換する場合、EPMAにてガラスの深さ方向のナトリウムイオン濃度分析を行い、測定により得られたイオン拡散深さを圧縮応力層深さDOLとみなすこともできる。
【0047】
第1平滑領域25の内部引張応力CTは10MPa~100MPaが好ましい。CTが10MPa以上であることにより、第1平滑領域25へのクラックの進展を阻止できる。CTが100MPa以下であることにより、ガラスが割れた際にガラスが細かく飛散することを防止できる。
内部引張応力CTは一般に、板厚tと、圧縮応力層26の表面圧縮応力CSと、圧縮応力層深さDOLと、によって、関係式CT=(CS×DOL)/(t-2×DOL)により近似的に求められる。
以上が、防眩性透明基体1の構成の説明である。
【0048】
〔製造方法〕
次に、製造方法の例について説明する。
【0049】
まず、化学強化ガラスを製造する。
化学強化ガラスは、一般的なガラス製造方法によって製造された化学強化用ガラスを、化学強化処理して製造される。
化学強化処理は、ガラスの表面にイオン交換処理を施し、圧縮応力を有する表面層を形成させる処理である。具体的には、化学強化用ガラスのガラス転移点以下の温度でイオン交換処理を行い、ガラス板表面付近に存在するイオン半径が小さな金属イオン(典型的には、LiイオンまたはNaイオン)を、イオン半径のより大きいイオン(典型的には、Liイオンに対してはNaイオンまたはKイオンであり、Naイオンに対してはKイオン)に置換する。
【0050】
化学強化ガラスは、化学強化用ガラスを、化学強化処理して製造できる。
なお、下記の製造方法は、板状の化学強化ガラスを製造する場合の例である。
【0051】
まず、ガラス原料を調合し、ガラス溶融窯で加熱溶融する。その後、バブリング、撹拌、清澄剤の添加等によりガラスを均質化し、従来公知の成形法により所定の厚さのガラス板に成形し、徐冷する。またはブロック状に成形して徐冷した後に切断する方法で板状に成形してもよい。
【0052】
板状に成形する方法としては、例えば、フロート法、プレス法、フュージョン法及びダウンドロー法が挙げられる。特に、大型のガラス板を製造する場合は、フロート法が好ましい。また、フロート法以外の連続成形法、たとえば、フュージョン法及びダウンドロー法も好ましい。
【0053】
その後、成形したガラスを所定の大きさに切断し、面取りを行う。平面視での面取り部の寸法が、0.05mm以上0.5mm以下となるように面取りを行うことが好ましい。
【0054】
次に、ガラス板を1回または2回(1段階または2段階)イオン交換処理することにより、化学強化を行い、圧縮応力層26および引張応力層28を形成する。
化学強化工程では、処理に供するガラスを、そのガラス中に含まれるアルカリ金属イオン(例えば、ナトリウムイオン、または、リチウムイオン)より、イオン半径の大きなアルカリ金属イオンを含む溶融塩(例えば、カリウム塩、または、ナトリウム塩)と、ガラスの転移温度を超えない温度域で接触させる。
【0055】
ガラス中のアルカリ金属イオンと、アルカリ金属塩のイオン半径の大きなアルカリ金属イオンとを、イオン交換させ、アルカリ金属イオンの占有面積の差により、ガラス表面に圧縮応力を発生させ、圧縮応力層26を形成する。ガラスを溶融塩と接触させる温度域はガラスの転移温度を超えない温度域であればよいが、ガラス転移点より50℃以上低いことが好ましい。これによりガラスの応力緩和を防げる。
【0056】
化学強化処理において、ガラスとアルカリ金属イオンを含む溶融塩とを接触させる処理温度および処理時間は、ガラスおよび溶融塩の組成に応じて適宜調整できる。溶融塩の加熱温度は、通常350℃以上が好ましく、370℃以上がより好ましい。また、通常500℃以下が好ましく、450℃以下がより好ましい。
【0057】
溶融塩の加熱温度を350℃以上とすることにより、イオン交換速度の低下により化学強化が入りにくくなるのを防ぐ。また、加熱温度を500℃以下とすることにより溶融塩の分解及び劣化を抑制できる。
【0058】
ガラスを溶融塩に接触させる処理時間は1回あたり、十分な圧縮応力を付与するためには、通常10分以上が好ましく、15分以上がより好ましい。また、長時間のイオン交換では、生産性が落ちるとともに、緩和により圧縮応力値が低下するため、処理時間は1回あたり、通常20時間以下が好ましく、16時間以下がより好ましい。
【0059】
化学強化の回数は、1回または2回を例示したが、目標とする圧縮応力層26および引張応力層28の物性(DOL、CS、CT)が得られるのであれば、特に回数は限定されない。化学強化の回数は3回以上でもよい。また、2回の強化の間に、熱処理工程を行ってもよい。以下の説明では、3回化学強化を行う場合、および2回の強化の間に、熱処理工程を行う場合を3段階の強化と呼ぶ。
3段階の強化の場合、例えば以下に説明する強化処理方法1または強化処理方法2を用いて製造できる。
【0060】
(強化処理方法1)
強化処理方法1においては、まず、ナトリウム(Na)イオンを含む金属塩(第一の金属塩)に、LiOを含有する化学強化用ガラスを接触させて、金属塩中のNaイオンと、ガラス中のLiイオンとの、イオン交換を起こさせる。以下ではこのイオン交換処理を「1段目の処理」と呼ぶことがある。
1段目の処理は、たとえば化学強化用ガラスを、350~500℃程度のNaイオンを含む金属塩(例えば硝酸ナトリウム)に、0.1~24時間程度浸漬する。生産性を向上するためには、1段目の処理時間は12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
【0061】
1段目の処理によって、ガラス表面に深い圧縮応力層26が形成され、CSが200MPa以上、圧縮応力深さDOLが、板厚の1/8以上となるような応力プロファイルを形成できる。また、1段目の処理を終えた段階のガラスは、内部引張応力CTが大きいので破砕性が大きい。しかし、後の処理によって破砕性が改善されるので、この段階でのCTが大きいことはむしろ好ましい。1段目の処理を終えたガラスの内部引張応力CTは、90MPa以上が好ましく、100MPa以上がより好ましく、110MPa以上がさらに好ましい。圧縮応力層26の表面圧縮応力CSが大きくなるからである。
【0062】
第一の金属塩はアルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとしては、Naイオンを最も多く含有する。Liイオンを含有してもよいが、アルカリイオンのモル数100%に対して、Liイオンは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、Kイオンを含有してもよい。第一の金属塩に含まれるアルカリ金属イオンのモル数100%に対して、Kイオンは20%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。
【0063】
次に、リチウム(Li)イオンを含有する金属塩(第二の金属塩)に、1段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のLiイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、表層近傍の圧縮応力値を減少させる。この処理を「2段目の処理」と呼ぶことがある。
具体的には、たとえば、350~500℃程度のNaとLiを含む金属塩(例えば硝酸ナトリウムと硝酸リチウムの混合塩)に、ガラスを0.1~24時間程度浸漬する。生産性を向上するためには、2段目の処理時間は12時間以下が好ましく、6時間以下がより好ましい。
【0064】
2段目の処理を終えたガラスは、内部の引っ張り応力を下げることができ、割れた際に激しい割れ方をしなくなる。
【0065】
第2の金属塩は、アルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとしてNaイオンとLiイオンを含有することが好ましい。また硝酸塩が好ましい。第二の金属塩に含まれるアルカリ金属イオンのモル数100%に対して、NaイオンとLiイオンの合計のモル数は、50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。Na/Liモル比を調整することで、DOLの1/4~1/2の深さにおける応力プロファイルを制御できる。
第2の金属塩のNa/Liモル比の最適値は、ガラス組成によって異なるが、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、1以上がより好ましい。CTを小さくしつつ、圧縮応力層26の圧縮応力値を大きくするためには、第2の金属塩のNa/Liモル比は100以下が好ましく、60以下がより好ましく、40以下がさらに好ましい。
【0066】
第2の金属塩が、硝酸ナトリウム-硝酸リチウム混合塩の場合、硝酸ナトリウムと硝酸リチウムの質量比は、たとえば25:75~99:1が好ましく、50:50~98:2がより好ましく、70:30~97:3が、さらに好ましい。
【0067】
次に、カリウム(K)イオンを含む金属塩(第3の金属塩)に、2段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のKイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、ガラス表面に大きな圧縮応力を発生させる。このイオン交換処理を「3段目の処理」と呼ぶことがある。
具体的には、たとえば350~500℃程度のKイオンを含む金属塩(例えば硝酸カリウム)にガラスを0.1~10時間程度浸漬する。このプロセスにより、ガラス表層の0~10μm程度の領域に大きな圧縮応力を形成できる。
【0068】
3段目の処理はガラス表面の浅い部分の圧縮応力だけを大きくし、内部にはほとんど影響しないので、内部の引っ張り応力を抑制したままで、表層に大きな圧縮応力を形成できる。
第3の金属塩はアルカリ金属塩であり、アルカリ金属イオンとして、Liイオンを含んでもよいが、アルカリ金属イオンのモル数100%に対してLiイオンは2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく、0.2%以下がさらに好ましい。また、Naイオンの含有量は2%以下が好ましく、1%以下がより好ましく0.2%以下がさらに好ましい。
【0069】
強化処理方法1では、1~3段目の処理時間の総和を24時間以下にできるので、生産性が高く好ましい。処理時間の総和は15時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。
【0070】
(強化処理方法2)
強化処理方法2においては、まず、ナトリウム(Na)イオンを含む第一の金属塩に、LiOを含有する化学強化用ガラスを接触させて、金属塩中のNaイオンと、ガラス中のLiイオンとのイオン交換を起こさせる、1段目の処理を行う。
1段目の処理については、強化処理方法1の場合と同様なので説明を省略する。
【0071】
次に、1段目の処理を終えたガラスを金属塩に接触させずに熱処理する。これを2段目の処理と呼ぶ。
2段目の処理は、たとえば1段目の処理を終えたガラスを、大気中で350℃以上の温度に一定時間保持して行う。保持温度は化学強化用ガラスの歪点以下の温度であり、1段目の処理温度より10℃高い温度以下が好ましく、1段目の処理温度と同じ温度がより好ましい。
この処理によれば、1段目の処理でガラス表面に導入されたアルカリイオンが、熱拡散することでCTが低下すると考えられる。
【0072】
次に、カリウム(K)イオンを含む第3の金属塩に、2段目の処理を終えたガラスを接触させ、金属塩中のKイオンとガラス中のNaイオンとのイオン交換により、ガラス表面に大きな圧縮応力を発生させる。このイオン交換処理を「3段目の処理」と呼ぶことがある。
3段目の処理については、強化処理方法1の場合と同様なので説明を省略する。
【0073】
強化処理方法2では、1~3段目の処理時間の総和を24時間以下にできるので、生産性が高く好ましい。処理時間の総和は15時間以下がより好ましく、10時間以下がさらに好ましい。
【0074】
強化処理方法1によれば、2段目の処理に用いる第2の金属塩の組成や処理温度の調整により、応力プロファイルを精密に制御できる。
強化処理方法2によれば、比較的簡単な処理により低コストで優れた特性の化学強化ガラスが得られる。
【0075】
化学強化処理の処理条件は、ガラスの特性及び組成や溶融塩の種類などを考慮して、時間及び温度等を適切に選択すればよい。
以上の手順で化学強化ガラスが製造される。
【0076】
次に、上記化学強化ガラスに防眩処理を行って凹凸形状を形成し、第1粗面領域27を形成する。防眩処理を行わなかった面は、通常のガラスの製造方法では、第1平滑領域25および第2平滑領域29となる。
【0077】
凹凸形状は、公知の方法で形成できる。ガラス基板の表面に化学的または物理的に表面処理を施してエッチング層を形成し、所望の表面粗さの凹凸形状を形成する方法や、防眩フィルムや静電スプレーによりコーティング層を形成する方法が利用できる。
防眩層がエッチング層であると、防眩用の材料を別途被覆する必要がない点で有利である。防眩層がコーティング層であると、材料の選択により、防眩性の制御が容易な点で有利である。
なお、化学強化処理前に凹凸形状を形成してもよいし、化学強化処理後に凹凸形状を形成しても良い。化学強化処理前にエッチング層を作った場合、強化層表面のエッチングによるCSの低下を抑制できるため、強度のコントロールが容易となる。化学強化処理前にスプレー層を作った場合、認証部をより大きく変形させることができ、認証部の指での認識が容易になる。化学強化処理後にエッチング層を作った場合、エッチング後の表面形状の微小な変形を抑制できるため、表面特性のコントロールが容易である。化学強化処理後にスプレー層を作った場合、本体の変形を抑制できるためより平坦なカバーガラスが得られる。
【0078】
化学的に防眩処理を行う方法としては、フロスト処理が挙げられる。フロスト処理は、例えば、フッ化水素とフッ化アンモニウムの混合溶液に、被処理体であるガラス基板を浸漬することで実現できる。この際、混合溶液の比率や浸漬時間をコントロールすることで、Sskを0未満にできる。
物理的に防眩処理を行う方法としては、例えば、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を加圧空気でガラス基板の主面に吹き付けるサンドブラスト処理や、結晶質二酸化ケイ素粉、炭化ケイ素粉等を付着させたブラシを水で湿らせたものを用いて擦る方法等を利用できる。この際、サンドブラストなどの場合は粉の粒径や加圧力を制御することで、ブラシで擦る方法の場合は使用する粉末の粒径や擦る力を制御することで、Sskを0以上にできる。
【0079】
〔作用効果〕
防眩性透明基体1は、第1粗面領域27の位置によらず、第1平滑領域25と第2平滑領域29の少なくとも一部が対向しているため、対向した領域では、第1主面21と第2主面22間の表面形状の違いに起因する、応力分布の差が生じ難い。そのため、防眩処理を施した面と施さない面を両方とも設ける場合であっても、反りを抑制できる。
【0080】
第1粗面領域27の表面粗さは、算術平均粗さRaで2nm超1000nm以下であるため、第1主面側21から第1粗面領域27に入射した可視光を散乱させ、入射光による映り込みをぼかすことができる。そのため、防眩処理を施した面として、第1粗面領域27を好適に利用できる。
【0081】
防眩性透明基体1は、第1粗面領域27の原子組成比Zと、第1平滑領域25の原子組成比Zとの比率Z/Zが1未満の場合、表面がSiリッチとなるため、表面硬度が上がり、耐擦傷性を向上できる。また、Z/Zが1~1.1の場合、アルカリ金属組成比K/(Li+Na+K)が防眩性透明基体1の厚さ方向断面視中央部に比べ、表面処理層の方が大きい反射防止層を堆積する際に、光学的異質層となりにくく優れた防眩性透明基体1が得られる。
【0082】
第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が0以上であることにより、第1粗面領域27の凸部のピーク幅が狭くなり、指すべり性の向上や指紋が付着しにくい効果が期待できる。
【0083】
第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が0.2以上であることにより、ガラス表面での光の散乱が多くなるため、ガラス表面のギラツキを抑制する効果がある。
【0084】
第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が0未満であることにより、第1粗面領域27の凹部のピーク幅が狭くなり、耐擦傷性が向上できる。
【0085】
第1粗面領域27の面の偏り度(Ssk)が-0.2未満であることにより、ガラス表層の光沢や艶を消す効果があり、アンチグレア効果が向上する。
【0086】
引張応力を正値、圧縮応力を負値とした場合、第1平滑領域25の板厚方向応力積分値Sが、0MPa未満であるため、第1平滑領域25を含む透明基体2の板厚方向に圧縮応力が生じる。そのため、第1平滑領域25への衝撃に対して透明基体2が割れにくくなる。
【0087】
第1平滑領域25の板厚方向応力積分値Sが-3MPa未満であるため、第1平滑領域25を含む透明基体2の板厚方向に、さらに強い圧縮応力が生じる。そのため、第1平滑領域25への衝撃に対して、さらに透明基体2が割れにくくなる。
【0088】
第1平滑領域25の表面圧縮応力CSが、第1粗面領域27の表面圧縮応力CSよりも大きいため、防眩性透明基体1に衝撃が加えられた場合に、第1平滑領域25の方が割れにくい。そのため、第1平滑領域25を指紋認証等に用いる場合に、外部からの衝撃で認証不能になりにくい。
【0089】
第1平滑領域25および第1粗面領域27の表面圧縮応力CSが500MPa以上であるため、防眩性透明基体1に衝撃が加えられた場合に、より割れにくい。
【0090】
[変形例]
本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更等が可能である。本発明の実施の際の具体的な手順、および構造等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【0091】
透明基体2としては、用途に応じて、種々の形状、材料からなるものを使用できる。
形状としては、例えば、平坦面のみを有する板のみならず、少なくとも一部に曲面を有する板、凹部を有する板であってもよい。屈曲ガラスを用いることで、防眩性透明基体1を取り付ける相手側部材が屈曲形状を有していても、取り付けの精度が下がるのを防げる。例えば、図2に示すように、第1粗面領域27に屈曲部42を備える屈曲ガラスを用いてもよい。それにより、認証部が平坦性を保つため、認証部の装置が組み付けやすい。また、第1平滑領域25に屈曲部42を備える屈曲ガラスでも良い。それにより、認証部を指で認識することがより容易になる。さらに、その両方を備える屈曲ガラスでも良い。それにより、より見栄えが良くなる。また、防眩性透明基体1はフィルム状であってもよい。防眩性透明基体1は孔部を有してもよく、部分的に切り欠いた領域を有してもよい。
【0092】
材料としては、引張応力層28の組成が、例えば、以下の(i)~(vii)のいずれか一つの要件を満たすガラスが挙げられる。なお、以下の(i)~(v)のガラス組成は、酸化物基準のモル%で表示した組成であり、(vi)~(vii)のガラス組成は、酸化物基準の質量%で表示した組成である。引張応力層28の組成は、ガラスの板厚方向中央の組成をEDX、ICP等の公知の方法で分析すればよい。
(i)SiOを50~80%、Alを2~25%、LiOを0~10%、NaOを0~18%、KOを0~10%、MgOを0~15%、CaOを0~5%およびZrOを0~5%を含むガラス。
(ii)SiOを50~74%、Alを1~10%、NaOを6~14%、KOを3~11%、MgOを2~15%、CaOを0~6%およびZrOを0~5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が75%以下、NaOおよびKOの含有量の合計が12~25%、MgOおよびCaOの含有量の合計が7~15%であるガラス。
(iii)SiOを68~80%、Alを4~10%、NaOを5~15%、KOを0~1%、MgOを4~15%およびZrOを0~1%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が80%以下であるガラス。
(iv)SiOを67~75%、Alを0~4%、NaOを7~15%、KOを1~9%、MgOを6~14%、CaOを0~1%およびZrOを0~1.5%含有し、SiOおよびAlの含有量の合計が71~75%、NaOおよびKOの含有量の合計が12~20%であるガラス。
(v)SiOを60~75%、Alを0.5~8%、NaOを10~18%、KOを0~5%、MgOを6~15%、CaOを0~8%含むガラス。
(vi)SiOを63~75%、Alを3~12%、MgOを3~10%、CaOを0.5~10%、SrOを0~3%、BaOを0~3%、NaOを10~18%、KOを0~8%、ZrOを0~3%、Feを0.005~0.25%含有し、RO/Al(式中、ROはNaO+KOである)が2.0以上4.6以下であるガラス。
(vii)SiOを66~75%、Alを0~3%、MgOを1~9%、CaOを1~12%、NaOを10~16%、KOを0~5%含有するガラス。
【0093】
防眩性透明基体1の厚さは2mm以下が好ましい。2mm以下の厚さであれば、防眩性透明基体1の質量を減らせ軽量化でき、さらに防眩性透明基体1と表示パネルの間に指紋認証部等を設けた場合に、認証精度を向上させられる。該厚さは0.1mm以上が好ましい。0.1mm以上の厚さを備えたガラスであれば、高い強度と良好な質感を兼ね備えた防眩性透明基体1を得られる利点がある。該厚さは、0.2mm以上1.5mm以下がより好ましく、0.3mm以上1.5mm以下がさらに好ましい。
【0094】
図3に示すように第2主面22は、表面粗さが、算術平均粗さで第2平滑領域29よりも大きい、第2粗面領域41を備えてもよい。第2粗面領域41は、第1粗面領域27と同様に、防眩性透明基体1の保護対象が、スマートフォンである場合、表示部に対向する防眩処理が施された領域に該当する。
第2主面22にも粗面領域として第2粗面領域41を備えることにより、第2主面22側から入射した可視光に対しても防眩性を発揮できる。また、第2主面22にも第2粗面領域41を備えることにより、接着層や印刷層がアンカー効果により剥離しにくくなる。
【0095】
第2粗面領域41の表面粗さは、第1粗面領域27と同程度であり、例えば算術平均粗さRaで2nm超1000nm以下であるのが好ましく、5nm以上200nm以下がより好ましい。理由は第1粗面領域27と同様である。第2主面22側から第2粗面領域41に入射した可視光を散乱させ、入射光による映り込みをぼかすことができる。そのため、防眩処理を施した面として、第2粗面領域41を好適に利用できる。
第2粗面領域41の凹凸形状は、第1粗面領域27に適用可能な凹凸形状であれば、特に限定されない。Sskも、第1粗面領域27と同程度の値であればよい。
【0096】
図4に示すように、防眩性透明基体1は、第2主面22上に設けられた遮光層31を備えてもよい。遮光層31は可視光を遮蔽する層であり、具体的には、例えば波長380nm~780nmの光の視感透過率が50%以下の層である。遮光層31を備えることにより、表示装置側の配線を隠蔽したり、バックライトの照明光を隠蔽して、表示装置の周囲から照明光が漏れるのを防止したりできる。
遮光層31が設けられる第2主面22には、遮光層31との密着性をさらに向上させるため、プライマー処理やエッチング処理等が施されていてもよい。
【0097】
遮光層31を設ける方法は特に限定しないが、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、スクリーン法、インクジェット法、オフセット法等によりインクを印刷することにより設ける方法が挙げられる。厚さの制御の容易差を考慮すると、スクリーン法やインクジェット法が好ましい。
遮光層31に使用するインクは、無機系インクでも有機系インクであってもよい。無機系のインクとしては、例えば、SiO、ZnO、B、Bi、LiO、NaOおよびKOから選択される1種以上、CuO、Al、ZrO、SnOおよびCeOから選択される1種以上、FeおよびTiOからなる組成物であってもよい。
【0098】
有機系のインクとしては、樹脂を溶剤に溶解した種々の印刷材料を使用できる。例えば、樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等の樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1種を選択して使用してよい。溶剤としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ(登録商標)100、ソルベッソ(登録商標)150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。なお、これらは例として挙げたものであり、その他、種々の印刷材料を使用できる。前記有機系の印刷材料は、透明基体2に塗布した後、溶剤を蒸発させて樹脂の遮光層31を形成できる。印刷材料は加熱により硬化できる熱硬化性インクでもよく、UV硬化性インクでもよく、特に制限はない。
【0099】
遮光層31に用いられるインクには、着色剤が含まれてもよい。着色剤としては、例えば、遮光層31を黒色とする場合、カーボンブラック等の黒色の着色剤を使用できる。その他、所望の色に応じて適切な色の着色剤を使用できる。
遮光層31は、所望の回数だけ積層してもよく、印刷に用いるインクは、各層異なるものを使用してもよい。また、遮光層31は、一方の主面だけでなく、他方の主面にも印刷してよく、端面に印刷してもよい。
遮光層31を所望の回数だけ積層する場合、各層で異なるインクを用いてもよい。例えば、利用者が防眩性透明基体1を第1主面21側から見たときに、遮光層31を白く見せたい場合には、1層目を白色で印刷し、続いて2層目を黒色で印刷すればよい。これにより使用者が第1主面21側から遮光層31を見た際、遮光層31の背面の視認性に関わる、いわゆる「透け感」を抑制した白色の遮光層31を形成できる。
【0100】
遮光層31の平面形状は、図4では枠形であり、枠の内側が表示領域を構成するが、枠形ではなく、第2主面22の一辺に沿う線状、連続する二辺に沿うL字状、対向する二辺に沿う2本の直線状でもよい。遮光層31は、第2主面22が四角形以外の多角形や円形あるいは異形の場合、これらの形状に対応する枠状、多角形の一辺に沿う直線状、円形の一部に沿う円弧状でもよい。
防眩性透明基体1を表示装置に用いる場合、遮光層31は、表示装置が非表示の場合の色彩に対応した色彩を有するのが好ましい。例えば、非表示の場合の色彩が黒色系の場合は、遮光層31も黒色系であるのが好ましい。
【0101】
防眩性透明基体1が遮光層31を備える場合、図5(A)、(B)に示すように遮光層31は開口部33を有してもよい。開口部33を設けることにより、開口部33が可視光を透過させるため、開口部33の形状を、製品のロゴマークを構成する文字、図形、記号に対応させることにより、表示装置の照明光が点灯している時のみ、開口部33にロゴマークを表示させられる。
図5(A)、(C)に示すように、開口部33には、赤外線透過率が遮光層31よりも高い赤外線透過層35を設けてもよい。赤外線透過層35を設けることにより、赤外線センサを遮光層31の裏側に設けられ、かつ赤外線透過層35を目立たなくできる。
赤外線透過層35を形成するインクは、無機系インクでも有機系インクであってもよい。無機系インクに含まれる顔料としては、例えば、SiO、ZnO、B、Bi、LiO、NaOおよびKOから選択される1種以上、CuO、Al、ZrO、SnOおよびCeOから選択される1種以上、FeおよびTiOからなる組成物であってもよい。
【0102】
有機系インクとしては、樹脂と顔料とを溶剤に溶解した種々の印刷材料を使用できる。例えば、樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等の樹脂からなる群から選ばれる、少なくとも1種を選択して使用してよい。溶剤としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソ(登録商標)100、ソルベッソ(登録商標)150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。なお、これらは例として挙げたものであり、その他、種々の印刷材料を使用できる。前記有機系の印刷材料は、透明基体2に塗布した後、溶剤を蒸発させて樹脂の赤外線透過層35を形成できる。印刷材料は加熱により硬化できる熱硬化性インクでもよく、UV硬化性インクでもよく、特に制限はない。
【0103】
赤外線透過層35に用いられるインクには、顔料が含まれてもよい。顔料としては、例えば、赤外線透過層35を黒色とする場合、カーボンブラック等の黒色顔料を使用できる。その他、所望の色に応じて適切な色の顔料を使用できる。
【0104】
赤外線透過層35中の顔料の含有割合は、所望の光学特性に応じて自由に変更できる。赤外線透過層35の全質量に対する、顔料の含有量の比である含有割合は0.01~10質量%が好ましい。含有割合は、インクの質量全体に対する、赤外線透過材料の含有割合を調整することで実現できる。
【0105】
赤外線透過層35を形成するインクは、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂に赤外線透過能を有する顔料を含む。顔料としては、無機顔料および有機顔料のいずれも使用できる。無機顔料としては、酸化鉄、酸化チタン、複合酸化物系顔料などが挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、アゾ系顔料等の金属錯体系顔料などが挙げられる。赤外線透過層35の色彩は、遮光層31と同じであることが好ましい。遮光層31が黒色の場合は、赤外線透過層35も黒色であるのが好ましい。
【0106】
赤外線透過層35を形成する方法としては、特に限定はされないが、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法、スクリーン法、インクジェット法、オフセット法が挙げられる。製法の連続性を考慮すると、遮光層31と同じ形成方法が好ましい。
【0107】
図6に示すように、防眩性透明基体1の第1主面21および第2主面22のうち少なくとも一方の面には、反射防止層、防汚層等を有する機能層81を備えてもよい。
【0108】
<反射防止層>
反射防止層とは、反射率の低減の効果をもたらし、光の映り込みによる眩しさを低減するほか、表示装置に使用した場合には、表示装置からの光の透過率を向上でき、表示装置の視認性を向上できる層を示す。機能層81が反射防止層を備えることにより、いずれかの主面に反射防止層が設けられるので、第2主面22側から入射した光の反射を防止でき、入射光による映り込みを防止できる。
【0109】
機能層81が反射防止層である場合、波長550nmの光の屈折率が1.9以上の高屈折率層と、波長550nmの光の屈折率が1.6以下の低屈折率層を、積層した構造が好ましい。反射防止層が高屈折率層と低屈折率層を積層した構造により、可視光の反射を、より確実に防止できる。
【0110】
反射防止層における高屈折率層と低屈折率層との層数は、それぞれを1層ずつ含む形態でよいが、それぞれを2層以上含む構成でもよい。高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ1層含む構成の場合は、防眩性透明基体1の第2主面22に、高屈折率層、低屈折率層の順に積層したものが好ましい。また、高屈折率層と低屈折率層をそれぞれ2層以上含む構成の場合は、高屈折率層、低屈折率層の順に交互に積層した積層体が好ましい。積層体は、全体で2層以上8層以下が好ましく、2層以上6層以下がより好ましく、2層以上4層以下がさらに好ましい。また、光学特性を損なわない範囲での層の追加を行ってもよい。例えば、ガラス板からのNa拡散を防ぐために、ガラスと第1層との間にSiO膜を挿入しても良い。
【0111】
高屈折率層、低屈折率層を構成する材料は、特に制限はなく、要求される反射防止性の程度や生産性を考慮して選択できる。高屈折率層を構成する材料としては、例えば、酸化ニオブ(Nb)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化タンタル(Ta)、酸化アルミニウム(Al)、窒化ケイ素(SiN)等が挙げられる。これらの材料から選択される1種以上を好ましく使用できる。低屈折率層を構成する材料としては、酸化ケイ素(特に、二酸化ケイ素SiO)、SiとSnとの混合酸化物を含む材料、SiとZrとの混合酸化物を含む材料、SiとAlとの混合酸化物を含む材料等が挙げられる。これら材料から選択される1種以上を好ましく使用できる。
【0112】
反射防止層は、表面に無機薄膜を直接形成する方法、エッチング等の手法により表面処理する方法や、乾式法、例えば、化学蒸着(CVD)法や物理蒸着(PVD)法、特に物理蒸着法の一種である真空蒸着法やスパッタ法により好適に形成できる。
【0113】
反射防止層の厚さは、100nm以上500nm以下が好ましい。反射防止層の厚さを100nm以上とすることで、効果的に外光の反射を抑制できるため好ましい。
【0114】
反射防止層は、CIE(国際照明委員会)色差式において、Aが-6~1であり、Bが-8~1であるのが好ましい。
反射防止層の、Aが-6~1であり、Bが-8~1であると、反射防止層が危険色(警告色)に着色する恐れがなく、反射防止層の色彩が目立つのを防止できる。
【0115】
<防汚層>
防汚層とは、有機物や無機物の付着を抑制する層、または有機物や無機物が付着した場合においても、拭き取り等のクリーニングにより付着物が容易に除去できる効果をもたらす層を示す。機能層81として防眩層を設けることにより、いずれかの主面に人間の指が触れても、指紋、皮脂、汗等による汚れが付着するのを低減できる。
【0116】
防汚層の形成方法としては、フッ素含有有機化合物等を真空槽内で蒸発させて、反射防止層の表面に付着させる真空蒸着法(乾式法)や、フッ素含有有機化合物等を有機溶剤に溶解させ、所定の濃度になるように調整し、反射防止層の表面に塗布する方法(湿式法)等を利用できる。
【0117】
乾式法としては、イオンビームアシスト蒸着法、イオンプレート法、スパッタ法、プラズマCVD法等、湿式法としては、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレー法等から適宜選択できる。乾式法、湿式法のどちらも使用できる。耐擦傷性の観点からは、乾式の成膜方法を用いることが好ましい。
【0118】
防汚層の構成材料は、防汚性、撥水性、撥油性を付与できるフッ素含有有機化合物等から適宜選択できる。具体的には、含フッ素有機ケイ素化合物や、含フッ素加水分解性ケイ素化合物が挙げられる。フッ素含有有機化合物は、防汚性、撥水性および撥油性を付与できれば、特に制限なく使用できる。
【0119】
防汚層を形成する含フッ素有機ケイ素化合物被膜は、透明基体2の主面または防眩層の処理面に反射防止層が形成される場合には、当該反射防止層の表面に形成されることが好ましい。また、透明基体2として、反射防止層が形成されないガラス板を用いる場合には、含フッ素有機ケイ素化合物被膜は、これら表面処理の施された面に直接形成されることが好ましい。
【0120】
含フッ素有機ケイ素化合物被膜を形成する方法としては、パーフルオロアルキル基;パーフルオロ(ポリオキシアルキレン)鎖を含む、フルオロアルキル基等のフルオロアルキル基を有するシランカップリング剤の組成物を、スピンコート法、ディップコート法、キャスト法、スリットコート法、スプレーコート法等により塗布した後加熱処理する方法、または、含フッ素有機ケイ素化合物を気相蒸着させた後加熱処理する、真空蒸着法等が挙げられる。密着性の高い含フッ素有機ケイ素化合物被膜を得るには、真空蒸着法により形成することが好ましい。真空蒸着法による含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成は、含フッ素加水分解性ケイ素化合物を含有する、被膜形成用組成物を用いることが好ましい。
【0121】
防汚層において、含フッ素有機ケイ素化合物被膜の形成に用いる含フッ素加水分解性ケイ素化合物は、得られる含フッ素有機ケイ素化合物被膜が、撥水性、撥油性等の防汚性を有するものであれば特に制限はない。具体的には、パーフルオロポリエーテル基、パーフルオロアルキレン基、およびパーフルオロアルキル基からなる群から選ばれる、1つ以上の基を有する、含フッ素加水分解性ケイ素化合物が挙げられる。
【0122】
防汚層の層厚は、特に制限されないが、2nm以上20nm以下が好ましく、2nm以上15nm以下がより好ましく、3nm以上10nm以下がさらに好ましい。防汚層の層厚が下限値以上であれば、防汚層によって反射防止層の表面が均一に覆われた状態となり、耐擦傷性の観点で防眩性透明基体1が実用に耐えるものとなる。また、防汚層の層厚が上限値以下であれば、防汚層が積層された状態での視感反射率やヘイズ値等の光学特性が良好である。
【0123】
機能層81は、反射防止層、防汚層のいずれかの単層には限定されない。2種以上を積層してもよい。機能層81上に、さらに保護層を設けてもよい。
【0124】
本発明の防眩性透明基体1は、例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等のパネルディスプレイや、車載用情報機器、携帯機器のカバーガラスといった表示装置用のカバー部材に使用できる。本発明の防眩性透明基体1を表示装置用カバーに用いることで、視認性を確保しつつ被対象物を保護できる。
防眩性透明基体1を表示装置に用いる場合で、遮光層31を設ける場合、表示装置が非表示の場合の色彩に対応した色彩を遮光層31が有するのが好ましい。例えば、非表示の場合の色彩が黒色系の場合は、遮光層31も黒色系が好ましい。
遮光層31は、防眩性透明基体1が用いられる物品の模様を構成し、当該物品の意匠性を向上させるものでもよい。
【0125】
ここで、防眩性透明基体1を備える表示装置の一例について説明する。
図7に示す表示装置10は、フレーム50を備える。フレーム50は、底部51と、底部51に対して交差する側壁部52と、底部51に対向する開口部53とを備える。底部51と側壁部52とで囲まれた空間には、液晶モジュール6が配置されている。液晶モジュール6は、底部51側に配置されたバックライト61、バックライト61上に配置された液晶パネル62A(表示パネル)、赤外線センサ62B、および指紋認証センサ71を備える。
フレーム50の上端には、第2主面22が液晶モジュール6側を向くように防眩性透明基体1が設けられる。防眩性透明基体1は、開口部53および側壁部52の上端面に設けられた接着層7を介して、遮光層31の一部がフレーム50に、遮光層31の一部および第2主面22の表示部4が、液晶モジュール6に、それぞれ貼合されている。赤外線透過層35は、赤外線センサ62Bと対向する位置に配置される。第1平滑領域25は、指紋認証センサ71と対向する位置に配置される。
【0126】
接着層7は、透明で、防眩性透明基体1との屈折率差が小さいことが好ましい。
接着層7としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物等が挙げられ、その中でも、硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物を、例えば、ダイコータ、ロールコータ等の方法を用いて塗布し、硬化性樹脂組成物膜を形成する。
接着層7は、OCA(Optical Clear Adhesive)フィルム(OCAテープ)であってもよい。この場合、防眩性透明基体1の第2主面22側にOCAフィルムを貼合すればよい。
接着層7の厚さは、5μm以上400μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。接着層7の貯蔵せん断弾性率は、5kPa以上5MPa以下が好ましく、1MPa以上5MPa以下がより好ましい。
【0127】
表示装置10を製造する際の、組立順序は特に限定されない。例えば、予め防眩性透明基体1に接着層7を配置した構造体を準備しておき、フレーム50に配置し、その後、液晶モジュール6を貼合してもよい。
表示装置10は、タッチセンサ等を備えていてもよい。タッチセンサを組み込む場合は、防眩性透明基体1の第2主面22側に、図示しない別の接着層を介してタッチセンサを配置し、それに接着層7を介して液晶モジュール6を配置する。
【実施例
【0128】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
種々の条件で化学強化のシミュレーションを行い、変形量と応力分布を比較した。具体的な手順は以下の通りである。例1および例2が実施例であり、例3、4は比較例であり、例5は、粗面領域を設けない場合の化学強化後の変形量と応力分布を把握するための参考例である。
【0129】
(例1)
化学強化前のガラスとして、Z方向厚さ(板厚)が0.7mm、主面が縦横150mm×72mmのガラス基板を想定した。なお、ガラス基板の長辺方向(縦方向)をy方向、短辺方向(横方向)をx方向とする。このガラス基板の第1主面21に、図8に示すように、指紋認証部(図11)を想定した領域R1を第1平滑領域25(算術平均粗さRa=1nmと仮定)として想定した。領域R1は、短辺方向一端から横方向に36mm、長辺方向下端から縦方向に6mmの位置Pを中心に、縦横6mm×17mm、角部の曲率半径が3mmの領域とした。
次に、図8に示すように、ガラス基板の一方の面(第1主面21)の、領域R1以外の面の全面に、第1粗面領域27を想定した領域R2を設定した。第1粗面領域27は、エッチングにより設けたものを想定した(算術平均粗さRa=300nmと仮定)。裏面(第2主面22)は第2平滑領域29を想定して、全面を第1平滑領域25と同じ粗さと想定した。図8では、斜線部分が粗面であり、白塗り部分が平滑面である。
ガラス基板の組成はAGC株式会社製Dragontrail(登録商標)に対応する組成を想定した。
【0130】
(例2)
例1において、図8に示すように、第2主面22側を、領域R1に対向する領域のみを第2平滑領域29とし、他の領域は第2粗面領域41と想定したこと以外は、例1と同じガラスを想定した。第2粗面領域41の表面粗さは第1粗面領域27と同じと想定した。
【0131】
(例3)
例1において、図8に示すように、第2主面22側の全面を第2粗面領域41と想定したこと以外は、例1と同じガラスを想定した。
(例4)
例1において、図8に示すように、第1主面21の全面を第1粗面領域27とし、第2主面22の全面を第2平滑領域29と想定したこと以外は、例1と同じガラスを想定した。
(例5)
例1において、第1主面21の全面を第1平滑領域25とし、第2主面22の全面を第2平滑領域29と想定したこと以外は、例1と同じガラスを想定した。
【0132】
例1~5について、以下に示す化学強化シミュレーションモデルにより、化学強化を行う。
【0133】
[化学強化シミュレーション]
化学強化のシミュレーションには、汎用構造解析「Abaqus」(Ver6.13-2)を用いた。Abaqusの熱伝導解析を用いて、「カリウムイオン濃度分布」を「温度分布」とみなして、例1~例5のガラス基板を化学強化して防眩性透明基体1を製造する工程を、非定常計算によりシミュレーションした。なお、本シミュレーションに式(2)および式(3)を用い、表1に示す、425℃における硝酸カリウム100mol%溶融塩での材料係数を使用して計算した。ただし、平滑領域と粗面領域で、カリウムイオンの物質移動係数を異なった値とすることで表面粗さの違いを模擬した。
【0134】
【数1】
【0135】
ここで、式(2)におけるCはカリウムイオン濃度[mol%]、Cは初期カリウムイオン濃度[mol%]、Ceqは平衡カリウムイオン濃度[mol%]、Dはカリウムイオンの拡散係数[m/s]、Hはカリウムイオンの物質移動係数[m/s]、tは時間[s]、xはガラス表面からの深さ[m]である。
【0136】
【数2】
【0137】
ここで、式(3)におけるσは応力[Pa]、Bは膨張係数、Eはヤング率[Pa]、νはポアソン比、Cavgは平均カリウム濃度[mol%]であり、式(4)で求められる。
【0138】
【数3】
【0139】
ここで、式(4)におけるLは半厚さ[m]、xはガラス表面からの深さ[m]である。
【0140】
【表1】
【0141】
化学強化温度は425℃、化学強化時間は2時間とし、全体形状、領域R1の形状、板厚方向応力積分値S、表面圧縮応力CS、断面応力、内部引張応力の最大値CTmaxを式(2)~(4)に基づき求めた。
全体形状、領域R1の形状は、図8に示すように、ガラスの縦方向に平行で、領域R1の位置Pを通るY方向と平行となる線上でのZ方向の変位量(図8のline A参照)を求め、化学強化前との差を求めた。図9に示すように、領域R1の内部の値のみを求めたものも図示する。
表面圧縮応力CSは、Y方向は全体形状と同様に求め、X方向は、領域R1の位置Pから右端までの値を求めた。
断面応力およびCTの測定位置は、ガラスの重心位置(図11では本体部と記載)、および領域R1の重心位置(図11では認証部と記載)とした。初期値は以下の通りとした。
S=0(MPa・mm)
CS=0(MPa)
CTmax=0(MPa)
ある時刻tにおけるCSは、(2)式においてx=0,t=tとしてAbaqusで算出される。
CTmaxは、板厚方向各節点における応力算出値の最大値と定義した。
断面応力(主応力)は、各節点での主応力の最大値と最小値を比較したとき、その絶対値が大きい方と定義した。
以上の結果を図8図11に示す。
【0142】
図8は、位置Pを(x,y,z)=(0,0,0)とした場合の、lineAに沿った変位量を示したグラフである。図8に示すように、第1平滑領域25に対向する領域の少なくとも一部に、第2平滑領域29を設けた例1、2は、第1平滑領域25に対向する領域の少なくとも一部に、第2平滑領域29が設けられていない例3、4と比べてZ方向の変位が小さかった。
【0143】
図9は、位置Pを(x,y,z)=(0,0,0)とした場合の、領域R1におけるline Aに沿った変位量およびline Bに沿った変位量を示したグラフである。図9に示すように、例1、2は、領域R1内での変位がほとんどなかったのに対し、例3、4は領域R1内での変位が見られた。
【0144】
この結果から、第1平滑領域25に対向する領域の少なくとも一部に、第2平滑領域29を設けることにより、特に第1平滑領域25と第2平滑領域29の反りを防止できることが分かった。
【0145】
図10に示すように、表面圧縮応力CSは、絶対値として、全て500MPa以上であった。例1~例3は、領域R1の表面圧縮応力CSが領域R2よりも絶対値として大きかった。
【0146】
図11に示すように、断面応力分布は例1~5で大きな差は見られなかった。
そのため、第1平滑領域25に対向する領域の少なくとも一部に、第2平滑領域29を設ける場合であっても、従来と同様の範囲で断面応力分布を制御できることが分かった。
【0147】
なお、断面応力分布を基にS値を求めた所、例1は-0.5MPaであり、0MPa未満となり、例2は-3.4MPaであり、-3MPa未満であった。また、例3は0.4MPa、例4は0.0MPa、例5は0.0MPaであった。
この結果から、第1平滑領域25に対向する領域の少なくとも一部に、第2平滑領域29を設ける場合であっても、S値を0MPa未満、さらには-3MPa未満に制御できることが分かった。
【0148】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない範囲において、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0149】
本出願は、2018年5月21日出願の日本国特許出願2018-096981に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0150】
1…防眩性透明基体
2…透明基体
21…第1主面
22…第2主面
25…第1平滑領域
27…第1粗面領域
29…第2平滑領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11