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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】導電性組成物および導電性接着剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20230816BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230816BHJP
   C08L 33/04 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 3/08 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20230816BHJP
   C08K 5/3445 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 9/02 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20230816BHJP
   C09J 133/00 20060101ALI20230816BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08L101/00
C08L63/00
C08L33/04
C08K3/08
C08K5/17
C08K5/3445
C09J9/02
C09J201/00
C09J11/06
C09J11/04
C09J163/00
C09J133/00
H01B1/22 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019034127
(22)【出願日】2019-02-27
(65)【公開番号】P2020139011
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-12-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591252862
【氏名又は名称】ナミックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】熊倉 さとみ
(72)【発明者】
【氏名】坂本 孝史
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103333583(CN,A)
【文献】特開2014-220238(JP,A)
【文献】特開2011-238595(JP,A)
【文献】国際公開第2013/094543(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
C09J 9/02
C09J 201/00-201/10
C09J 11/00- 11/08
C09J 163/00-163/10
C09J 133/00-133/26
H01B 1/00- 1/24
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)硬化剤、及び(D)下記式(1):
【化6】

(式中、Rは、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rは、水素原子又はメチル基であり、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは、1~6である。)
の化合物を含む、導電性組成物であって、
(B)熱硬化性樹脂は、常温(25℃±5℃)で液状のものであり、
導電性組成物中における(B)熱硬化性樹脂の量は、(A)導電性粒子100質量部に対して30~80質量部であり、
(C)硬化剤の量は、(B)熱硬化性樹脂の重合反応性基に対して、(C)硬化剤の活性基の当量比が0.3~2.5となる量であり、
導電性組成物中における(D)式(1)で表される化合物の量は、(A)導電性粒子100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、
導電性組成物中10質量%以上の含有量の溶媒を含まない、
導電性組成物。
【請求項2】
(A)導電性粒子が、銀粒子である、請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂の少なくとも1つである、請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂を含み、(C)硬化剤が、アミン系硬化剤を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項5】
さらに(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の導電性組成物。
【請求項6】
導電性組成物中における(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドの量が、(A)導電性粒子100質量部に対して0.3~5質量部ある、請求項5に記載の導電性組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性組成物を含む導電性接着剤。
【請求項8】
カメラモジュール用である、請求項7に記載の導電性接着剤。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の導電性接着剤の硬化物を含むカメラモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物、それを含む導電性接着剤、及びその導電性接着剤の硬化物を含むカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器及び電気機器では、カメラモジュール及び発光ダイオード(LED)のような微小な電子部品を固定することが必要である。微小な電子部品の固定のためには、接着剤が用いられている。微小な電子部品の固定のために、近年、さらに小さい寸法の隙間へ接着剤を注入するという要求が多くなっているが、従来、小さい寸法の隙間へ注入するための接着剤は、絶縁性の接着剤に限られている。
【0003】
一方、配線や電子部品の接合に用いられる導電性ペーストが知られている。例えば、特許文献1には、電気抵抗が低く、配線材料として好適な導電性ペーストとして、導電性粒子、バインダー樹脂及び該バインダー樹脂を溶解する溶媒を含む導電性ペーストであって、カーボンナノチューブを含み、前記溶媒が特定構造のポリエーテル系溶媒を含む導電性ペーストが記載されている。また、特許文献1には、この導電性組成物をディスペンス方法で基材上に塗布することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-165594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電子機器及び電気機器において、カメラモジュール及び発光ダイオード(LED)のような微小な電子部品を固定する必要がある。例えば、カメラモジュールを機器に装着するときに、それを格納するものとしてブラケットを用いて、アクティブアライメント工法という方法が採用されている。
【0006】
アクティブアライメント工法では、まず、ブラケットに対してカメラモジュールの位置を調整し、仮固定用接着剤により、ブラケットに対してカメラモジュールを固定する。具体的には、仮固定用接着剤を導入し、カメラモジュールの位置を調整して位置を決めした後、仮固定用接着剤をUV硬化させることで、ブラケットに対して所定の位置でカメラモジュールを固定する。
【0007】
次に、カメラモジュールとブラケットとの間の隙間の半分程の高さまで、導電性ペーストを導入する。導電性ペーストを導入することにより、カメラモジュールとブラケットとの間の導電性を得ることができるので、ブラケットに対するカメラモジュールのアースを取ることができる。
【0008】
最後に、カメラモジュールとブラケットとの間の隙間の残りの部分に、ブラケットフィル用の接着剤を導入することにより、カメラモジュールとブラケットとの間の隙間を埋め、最終的にカメラモジュールを本固定する。カメラモジュールとブラケットとの間の隙間の寸法は小さいので、ブラケットフィル用の接着剤には、高い流動性が必要となる。
【0009】
カメラモジュールの接着のために、近年、さらに、小さい寸法の隙間へ接着剤を注入するという要求が多くなっている。従来、小さい寸法の隙間へ注入するための接着剤は、絶縁性の接着剤に限られていた。導電性接着剤は、導電性を付与するための導電性フィラー(例えば、金属粒子)を多く含有するため、流動性が低く、小さい寸法の隙間へ注入するための接着剤としては用いられていなかった。
【0010】
一方、電子機器及び電気機器の製造コストを下げるためには、より簡単に電子部品を装着することが必要である。導電性接着剤の流動性が高い場合には、上述のアクティブアライメント工法において、導電性ペースト及びブラケットフィル用の接着剤を、一種類の導電性接着剤により代替できる可能性がある。すなわち、流動性が高い導電性接着剤を用いることにより、ブラケットに対するカメラモジュールのアースを取る工程、及び最終的にカメラモジュールを固定する工程の2つの工程を、1つの工程により行うことができる可能性があり、製造コストの低下が期待できる。
【0011】
そこで、本発明は、高い流動性を有し、かつ導電性を有する導電性組成物及び導電性接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
本発明の第一の実施形態は、
(A)導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)硬化剤、及び(D)下記式(1):
【化1】

(式中、Rは、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rは、水素原子又はメチル基であり、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは、1~6である。)
の化合物を含む、導電性組成物である。
本発明の第二の実施形態は、第一の実施形態の導電性組成物を含む導電性接着剤である。
本発明の第三の実施形態は、第二の実施形態の導電性接着剤の硬化物を含むカメラモジュールである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一の実施態様によれば、高い流動性を有し、かつ導電性を有する導電性組成物を得ることができる。また、本発明の第二の実施態様によれば、高い流動性を有し、かつ導電性を有する導電性接着剤を得ることができる。さらに、本発明の第三の実施態様によれば、高い流動性を有し、かつ導電性を有する導電性接着剤を用いて固定されたカメラモジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】導電性組成物の流動性を測定するための治具を側面から見た模式図である。
図2】導電性組成物の流動性を測定するための治具を上面から見た模式図である。
図3】導電性組成物の電気抵抗の測定するための、電極及び導電性組成物の配置を示す模式図である。
図4】ジェットディスペンス装置(ジェットディスペンサー)の一例の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[導電性組成物]
本発明の第一の実施形態である導電性組成物は、(A)導電性粒子、(B)熱硬化性樹脂、(C)硬化剤、及び(D)下記式(1):
【化2】

(式中、Rは、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rは、水素原子又はメチル基であり、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは、1~6である。)
で表される化合物を含む。本実施形態によれば、高い流動性を有し、かつ導電性を有する導電性組成物を得ることができる。
【0016】
(A)導電性粒子
本実施形態の導電性組成物は、(A)導電性粒子を含む。(A)導電性粒子としては、特に制限されないが、導電性の金属粒子を用いることができる。金属粒子の金属の種類としては、銀(Ag)、金(Au)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、スズ(Sn)及びこれらの合金等であることができる。(A)導電性粒子は、1種類の金属粒子又は合金粒子を単独で使用しても、2種類以上の金属粒子又は合金粒子を併用してもよい。
【0017】
本実施形態では、(A)導電性粒子が、銀粒子又は銀を含む合金粒子であることが好ましく、銀粒子であることがより好ましい。銀の電気伝導率は、他の金属と比べて高い。導電性粒子としての銀粒子を用いることにより、より高い導電性の導電性組成物を得ることができる。
【0018】
(A)導電性粒子の形状は、特に限定されず、例えば、球状、粒状、フレーク状、又は鱗片状の導電性粒子を用いることが可能である。例えば、球状又は粒状の導電性粒子を用いることにより、より高い導電性の導電性組成物を得ることができる。
【0019】
(A)導電性粒子の平均粒径は、0.1μm~50μmが好ましく、0.1μm~10μmがより好ましく、さらに好ましくは0.1μm~7μmであり、最も好ましくは0.1μm~5μmである。ここでいう平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる体積基準メジアン径(d50)を意味する。
【0020】
(A)導電性粒子の製造方法は、特に限定されず、例えば、還元法、粉砕法、電解法、アトマイズ法、熱処理法、あるいはそれらの組合せによって製造することができる。例えば、銀粒子についてもこれらの製造方法で製造することができる。フレーク状の銀粒子は、例えば、球状または粒状の銀粒子をボールミル等によって押し潰すことによって製造することができる。
【0021】
(B)熱硬化性樹脂
本実施形態の導電性組成物は、(B)熱硬化性樹脂を含む。(B)熱硬化性樹脂は、接着対象物をつなぎあわせて固定し、また、導電性組成物中の無機材料である(A)導電性粒子同士をつなぎあわせるものである。
【0022】
(B)熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ビニルエステル樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ポリイミド樹脂等を用いることができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0023】
本実施形態の導電性組成物は、(B)熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂の少なくとも1つを含むことが好ましい。(B)熱硬化性樹脂が、エポキシ樹脂又はアクリル樹脂の少なくとも1つを含むことにより、固定対象の電子部品の固定をより確実に行うことができる。
【0024】
エポキシ樹脂は、常温(25℃±5℃)で液状であることが好ましい。但し、常温で固体のエポキシ樹脂を希釈剤等により希釈し、液状にして用いることも可能である。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂:ジグリシジルアニリン、ジグリシジルオルソトルイジン、パラアミノフェノール型エポキシ樹脂などの液状グリシジルアミン型エポキシ樹脂;(3’,4’-エポキシシクロヘキサン)メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、1-メチル-4-(2-メチルオキシラニル)-7-オキサビシクロ[4,1,0]ヘプタンなどの脂環型エポキシ樹脂;2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンジグリシジルエーテルなどの水添型エポキシ樹脂、1,3-ビス(3-グリシドキシプロピル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンなどのエポキシ基を有するシクロヘキサンオリゴマー、ノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂等を用いることができる。エポキシ樹脂は、上述したエポキシ樹脂のうち、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。保存安定性の観点から、ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのグリシジルエーテルであるビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0025】
アクリル樹脂は、常温(25℃±5℃)で液状であることが好ましい。但し、常温で固体のアクリル樹脂を希釈剤等により希釈し、液状にして用いることも可能である。熱硬化性アクリル樹脂に使用される成分としては、耐熱性を確保する点を考慮すると、2個以上の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物が好ましく、2~6個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物がより好ましく、2個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物がさらに好ましい。また、粘度や硬化物物性(接着強度や柔軟性など)の調整のため、2個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物に加えて、1個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を用いることもできる。
【0026】
1個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物としては、例えば、炭素数4から16のアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のβカルボキシアルキル(メタ)アクリレート、炭素数2から14のアルキル化フェニル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート及びイソボニル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
2個の(メタ)アクリロイル基を持つ化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ダイマージオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジンクジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジエタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジアルキルアルコールジ(メタ)アクリレート、ジメタノールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールAD1モルとグリシジルアクリレート2モルとの反応物、ビスフェノールA、ビスフェノールFまたはビスフェノールAD1モルとグリシジルメタクリレート2モルとの反応物などが挙げられる。
アクリル樹脂は、上述したアクリル樹脂のうち、いずれか1種を用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。流動性の観点から、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、などの低分子量アクリル樹脂が好ましい。
【0027】
導電性組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量は、(A)導電性粒子100質量部に対して好ましくは30~80質量部であり、より好ましくは35~75質量部であり、さらに好ましくは40~70質量部である。導電性組成物中の(B)熱硬化性樹脂の量が上記の範囲内の場合、接着対象物をつなぎあわせて固定することを確実にできる。また、導電性組成物中の無機材料である(A)導電性粒子同士をつなぎあわせて固定することができ、(A)導電性粒子による所定の導電性を維持することができる。
【0028】
(C)硬化剤
本実施形態の導電性組成物は、(C)硬化剤を含む。(C)硬化剤は、(B)熱硬化性樹脂の硬化反応の活性化エネルギーを低下させる作用を有するものであり、(B)熱硬化性樹脂の硬化促進剤として知られている化合物であればいずれも使用できる。(C)硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤、フェノール系硬化剤、酸無水物を用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。なお、低粘度、耐吸湿性に優れ、且つガラス転移点(Tg)の調整が容易であるといった特性を有することから、アミン系硬化剤を用いることが好ましい。
【0029】
アミン系硬化剤としては、鎖状脂肪族アミン、環状脂肪族アミン、芳香族アミン、脂肪芳香族アミン等を用いることができる。具体的には、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタミン、m-キシレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、2-メチルペンタメチレンジアミン、イソフォロンジアミン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルネンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、N-アミノエチルピペラジン、1,4-ビス(2-アミノ-2-メチルプロピル)ピペラジン、ジエチルトルエンジアミン、ジメチルチオトルエンジアミン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジエチルジフェニルメタン、ビス(メチルチオ)トルエンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、m-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルスルホン、ジエチルトルエンジアミン、トリメチレンビス(4-アミノベンゾエート)、ポリテトラメチレンオキシド-ジ-p-アミノベンゾエート、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、トリジメチルアミノフェノール、トリジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、ベンジルメチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、トリエチレンジアミン、キノリン、N-メチルモルホリン、ジメチルアニリン、ジメチルシクロヘキシルアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7(DBU)、1,4-ジアザ-ビシクロ(2,2,2)オクタン等を用いることができる。
【0030】
フェノール系硬化剤としては、フェノール性水酸基を有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を指す。具体的には、フェノールノボラック樹脂およびそのアルキル化物またはアリル化物、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル(フェニレン、ビフェニレン骨格を含む)樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリフェノールメタン樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂等を用いることができる。
【0031】
酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルナジック酸無水物、水素化メチルナジック酸無水物、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリンビス(アンヒドロトリメリテート)モノアセテート、ドデセニル無水コハク酸、脂肪族二塩基酸ポリ無水物、クロレンド酸無水物、メチルブテニルテトラヒドロフタル酸無水物、アルキル化テトラヒドロフタル酸無水物、メチルハイミック酸無水物、アルケニル基で置換されたコハク酸無水物、グルタル酸無水物等を用いることができる。
【0032】
(B)熱硬化性樹脂が、その分子内にエチレン性不飽和基を有し、ラジカルによって重合反応が進行する化合物の場合は(例えば、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂)、(C)硬化剤としては、ラジカル開始剤を使用することもできる。ラジカル開始剤は、ラジカル反応を進めるために一定の反応条件でラジカルを発生させる化合物であればよい。ラジカル開始剤としては、有機過酸化物及びアゾ化合物等が挙げられるが、有機過酸化物が好ましい。
【0033】
有機過酸化物としては、例えば、ケトンペルオキシド類、ジアシルペルオキシド類、ヒドロペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、ペルオキシケタール類、アルキルペルエステル類、ペルカーボネート類から少なくとも1種類以上選択され、具体的には、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ2-エチルヘキサナート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、クミルペルオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシベンゾエート、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルα-クミルペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、ジ-t-ヘキシルペルオキシド、ジ(2-t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、2,2-ジ(4,4-ジ-(ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、p-メンタンハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、クメンハイドロペルオキシド、1,1-ジ(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、シクロヘキサノンペルオキシド、1,1-ジ(t-ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、bis(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用することができる。安定性と反応性の観点から、bis(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルα-クミルペルオキシドが、より好ましい。
【0034】
アゾ化合物としては、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[2-(1-ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(N-シクロヘキシル-2-メチルプロピオンアミド、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパンが挙げられる。これらは、単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0035】
上記の各種の硬化剤を錯体化又はマイクロカプセル化した潜在性硬化剤も(C)硬化剤として好ましく使用することができる。このような錯体化又はマイクロカプセル化した潜在性硬化剤としては、例えば、アミン系硬化剤の表面をポリウレタン樹脂で被覆したものを用いることができる。
【0036】
(C)硬化剤の量としては、(B)熱硬化性樹脂の重合反応性基に対して、(C)硬化剤の活性基の当量比が0.3~2.5となることが好ましく、0.6~1.5となることがより好ましい。
【0037】
(D)式(1)の化合物
本実施形態の導電性組成物は、(D)下記式(1):
【化3】

(式中、Rは、炭素数1~6のアルキレン基であり、Rは、水素原子又はメチル基であり、R及びRは、各々独立して、水素原子又はメチル基であり、Rは、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、nは、1~6である。)
で表される化合物を含む。(D)式(1)の化合物を含むことにより、高い流動性を有する導電性組成物を得ることができる。
【0038】
式(1)において、Rは、好ましくは炭素数2~4のアルキレン基であり、Rは、好ましくはメチル基であり、Rは、好ましくはメチル基であり、Rは、好ましくは水素原子であり、Rは、好ましくは炭素数2~5のアルキル基であり、nは、好ましくは2~4である。
【0039】
好ましい式(1)の化合物は、式(1A):
【化4】

で表される化合物である。
【0040】
本発明者らは、種々の分散剤の中でも、特に(D)式(1)の化合物を含むことにより、著しく高い流動性を有する導電性組成物を得ることができることを見出した。(D)式(1)の化合物を含むことにより、高い流動性を有する導電性組成物を得ることができる理由としては、以下が考えられる。(D)式(1)の化合物を含むことにより、(A)導電性粒子の表面に式(1)化合物が吸着し、立体障害反発、正電反発によって導電性粒子をより分散させることができ、かつ再凝集を防いでいると考えられる。また、導電性粒子の表面のぬれが進むことで、粘度が下がり、チクソトロピーインデックス(TI値)が下がると考えられる。特に、式(1)の化合物におけるイミダゾール部分を含む疎水性基が、(A)導電性粒子の表面に吸着することで、著しく流動性を向上することができると考えられる。
【0041】
本実施形態において、好ましくは、導電性組成物中における(D)式(1)で表される化合物の量は、(A)導電性粒子100質量部に対して0.1~5.0質量部であり、より好ましくは、0.2~3.0質量部である。(D)式(1)で表される化合物の量をこの範囲内とすることにより、流動性がより向上し、かつ抵抗値の低い樹脂組成物を提供することができる。
【0042】
(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリド
本実施形態の導電性組成物は、さらに(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドを含むことができる。これにより、樹脂組成物の導電性がさらに向上することができる。
(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドとは、1分子のグリセロールに3つの不飽和脂肪酸がエステル結合したアシルグリセロールのことをいう。不飽和脂肪酸としては、1つ以上の不飽和の炭素結合をもつ脂肪酸であり、モノ不飽和脂肪酸、ジ不飽和脂肪酸、トリ不飽和脂肪酸等が挙げられるが、モノ不飽和脂肪酸が好ましい。モノ不飽和脂肪酸としては、例えば、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、サピエン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リシノール酸等が挙げられるが、オレイン酸、リシノール酸が好ましい。ジ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノール酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸等が挙げられるが、リノール酸が好ましい。トリ不飽和脂肪酸としては、例えば、リノレン酸、ピノレン酸、エレオステアリン酸、エイコサトリエン酸等が挙げられる。
(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドは、1分子中同じ不飽和脂肪酸が3つ結合していてもよいし、1分子中異なる不飽和脂肪酸がそれぞれ1つずつ結合していてもよいし、1分子中同じ不飽和脂肪酸が2つ及び異なる不飽和脂肪酸が1つ結合していてもよい。1分子中同じ不飽和脂肪酸が3つ有している(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドとしては、例えば、リシノール酸が3つ結合しているトリグリセリドが挙げられる。1分子中異なる不飽和脂肪酸がそれぞれ1つずつ結合している(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドとしては、例えば、リシノール酸、オレイン酸、リノール酸がそれぞれ結合しているトリグリセリドが挙げられる。1分子中同じ不飽和脂肪酸が2つ及び異なる不飽和脂肪酸が1つ結合している(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドとしては、例えば、オレイン酸が2つ及びリシノール酸が1つ結合しているトリグリセリド、並びにリシノール酸が2つ及びオレイン酸が1つ結合しているトリグリセリドが挙げられる。
これら不飽和脂肪酸のトリグリセリドは、単独で、又は2種以上を併用することができる。
【0043】
(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドのより好ましい例としては、リシノール酸のトリグリセリドであり、下記式(2):
【化5】

で表される化合物である。
【0044】
ヒマシ油は、植物油の一種であり、不飽和脂肪酸(リシノール酸が87%、オレイン酸が7%、リノール酸が3%)のトリグリセリド及び少量の飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸などが3%)のトリグリセリドを含む。(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドとして、ヒマシ油を用いることもできる。
【0045】
導電性組成物中における(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドの量としては、(A)導電性粒子100質量部に対して0.3~5質量部であることが好ましく、0.4~4質量部であることがより好ましい。この範囲の量とすることにより、導電性をより向上することができる。
【0046】
(F)その他の成分
本実施形態の導電性組成物は、(F)その他の添加剤、例えば、分散剤、レオロジー調整剤、及び顔料などから適宜選択したものを含有してもよい。
【0047】
[導電性組成物の製造方法]
本実施形態の導電性組成物は、上記の各成分を、例えば、ライカイ機、ポットミル、三本ロールミル、回転式混合機、二軸ミキサー等を用いて混合することで製造することができる。
【0048】
[導電性組成物の用途]
導電性組成物の用途について説明する。本実施形態の導電性組成物は、所定の場所に塗布することにより、導電性接着剤及び/又は封止材として用いることができる。したがって、上記第一の実施形態の導電性組成物を含む導電性接着剤は、本発明の一実施形態である。塗布方法は任意であり、例えば、ディスペンス、ジェットディスペンス、孔版印刷、スクリーン印刷、ピン転写、スタンピングなどの公知の方法を用いて塗布することができる。
【0049】
本発明の導電性組成物又は導電性接着剤を所定の位置に塗布した後、塗布した導電性組成物又は導電性接着剤を、加熱処理することにより、硬化させることができる。加熱処理は、60~100℃まで20~40分間で温度を上昇させ、その後50~70分間、昇温後の温度を保つことにより硬化させることができる。具体的には、80℃まで30分間で温度を上昇させ、その後60分間80℃に温度を保つことにより硬化させることができる。
【0050】
本発明の導電性組成物又は導電性接着剤は、カメラモジュール用導電性接着剤として用いることができる。本発明の導電性組成物又は導電性接着剤は、高い流動性及び所定の導電性を共に有する。そのため、本発明の導電性組成物又は導電性接着剤は、カメラモジュールの固定の際に必要な流動性及び導電性の要求を満たすことができる。
【0051】
ブラケットへのカメラモジュールの接着のために、近年、さらに、小さい寸法の隙間へ接着剤を注入するという要求が多くなっている。具体的には、ブラケットとカメラモジュールの間の隙間は、数百μm(例えば300μm~600μm)であり、長さ数mmに渡って接着剤を注入することが必要である。仮固定用接着剤により、ブラケットに対してカメラモジュールを固定した後に、本実施形態の導電性接着剤をジェットディスペンスするならば、カメラモジュールとブラケットとの間の小さい寸法の隙間へ、導電性接着剤を供給(注入)することができる。本実施形態の導電性接着剤は、導電性を有するので、導電性ペースト(アース用のペースト)及びブラケットフィル用の接着剤(封止用の接着剤)の二つの機能を有する。したがって、本実施形態の導電性接着剤は、導電性ペースト及びブラケットフィル用の接着剤の二種を用いる代わりに、一つの接着剤として用いることができる。その後、供給した導電性組成物又は導電性接着剤を、加熱処理することにより硬化して、カメラモジュールをブラケットに対し最終的に固定する。よって、本発明の導電性接着剤の硬化物を含むカメラモジュールもまた、本発明の一実施形態である。
【0052】
以上述べたように、流動性が高く、導電性を有する本実施形態の導電性接着剤を用いることにより、ブラケットに対するカメラモジュールのアースを取る工程、及び最終的にカメラモジュールを固定する工程の2つの工程を、1つの工程により行うことができる可能性があり、製造コストの低下が期待できる。
【0053】
本実施形態の導電性接着剤の電気抵抗率ρは、1.0×10-4~5.0×10-1Ω・cmであることが好ましい。本実施形態の導電性接着剤は、アースを取るための導電性を有していれば足り、高い導電性を求める必要はない。
【0054】
上記のとおり、ブラケットに対するカメラモジュールのアースを取るため、及び最終的にカメラモジュールを固定するために、本発明の導電性組成物又は導電性接着剤を用いることができる。
【0055】
本実施形態の導電性接着剤は、小さい寸法の隙間へ供給することが可能なので、カメラモジュール及びイメージセンサモジュールのような、微小な素子を、装置の所定の場所に固定するために好ましく用いることができる。また、本実施形態の導電性接着剤は、狭い隙間の封止及び接着のために用いることができるので、チップ抵抗器、発光ダイオード(LED)など、電子部品の回路の形成や電極の形成、電子部品の基板への接合等に用いることが可能である。
【実施例
【0056】
以下、本発明を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0057】
[導電性組成物の調製]
以下の成分を、表1に示す割合で混合して、実施例及び比較例の導電性組成物を調製した。具体的には、各成分を、プラネタリーミキサーで混合し、さらに三本ロールミルで分散し、ペースト化することによって調製した。なお、表1に示す各成分の割合は、全て質量部で示している。
【0058】
(A)導電性粒子
(銀粒子1)フレーク状粒子、平均粒径6μm(METALOR社製、製品名:EA-0001)
(銀粒子2)球状粒子、平均粒径5μm(METALOR社製)
【0059】
(B)熱硬化性樹脂
(熱硬化性樹脂1)ビスフェノールF型エポキシ樹脂・ビスフェノールA型エポキシ樹脂混合物(芳香族系エポキシ樹脂)(DIC株式会社製、EXA835LV、エポキシ当量165)
(熱硬化性樹脂2)アミノフェノール型液状エポキシ樹脂、(三菱化学株式会社製、製品名:jER630D)
【0060】
(C)硬化剤
(硬化剤1)アミン系硬化剤(富士化成工業社製、製品名:フジキュア-FXR-1020)
(硬化剤2)アミン系硬化剤(富士化成工業社製、製品名:フジキュア-FXR-1121)
【0061】
(D)式(1)の化合物
分散剤DISPERBYK-2163(ビッグケミー・ジャパン株式会社製)(式(1A)の化合物を有効成分として45%含有する。表1中の量は、式(1A)化合物の量である。)
【0062】
(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリド
ヒマシ油(伊藤製油社製)(不飽和脂肪酸(リシノール酸が87%、オレイン酸が7%、リノール酸が3%)のトリグリセリド及び少量の飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸などが3%)のトリグリセリドを含む。表1中の量は、不飽和脂肪酸のトリグリセリドの量である。)
【0063】
[粘度の測定方法]
実施例及び比較例の導電性組成物の粘度は、導電性組成物を製造した直後、ブルックフィールド社製(B型)粘度計を用いて25℃の温度で測定した。粘度の測定は、実施例及び比較例のそれぞれの導電性接着剤に対して、10rpmの回転速度で行った。下記表1に測定結果を示す。
【0064】
[流動性の測定方法]
表1の「流動性(秒/mm)」は、600μmの隙間へジェットディスペンスしたときの、導電性組成物の流動性を示す指標である。具体的には、図1(側面から見た模式図)及び図2(上面から見た模式図)を示すような治具を用いて、導電性組成物の流動速度を測定した。すなわち、図1及び図2に示すように、ステンレス板14の上に隙間dが600μmとなるようにスペーサ16を介してガラス板12を配置し、その隙間の開口部近傍(図1の矢印部分)に、実施例及び比較例の導電性組成物20をジェットディスペンスすることにより配置した。その隙間への導電性組成物20の流動が、所定の距離L(mm)=20mmになったときの時間t(秒)を測定し、1mm当たりの流動時間t/L(秒/mm)を計算することにより、流動性とした。流動性の測定は、40℃で行った。下記表1に測定結果を示す。
【0065】
[電気抵抗の測定方法]
表1の「抵抗値(Ω)」は、実施例及び比較例の導電性組成物を硬化させたときの電気抵抗の測定値である。電気抵抗の測定は、図3に示すような電極24を用いて行った。すなわち、図3に示すように、硬化させたガラス板12の上に1対の帯状の電極24を、電極24の間隔Dが40mmとなるように配置した。ガラス板12及び1対の電極24の上に、実施例及び比較例の導電性組成物を幅Wが10mmとなるように孔版印刷法で配置し、硬化させた。配置した導電性組成物を、80℃まで30分間で温度を上昇させ、その後60分間80℃に温度を保つことにより硬化させた。硬化したときの導電性組成物の膜厚は、20μmだった。硬化した1対の電極24の間の電気抵抗値を抵抗計Rにより測定することで、実施例及び比較例の電気抵抗値を得た。なお、膜厚の測定には、(株)東京精密製表面粗さ形状測定機(型番:サーフコム1500SD-2)を用いた。また、電気抵抗値の測定には、(株)TFFケースレーインスツルメンツ製デジタルマルチメーター(型番:2001)を用いた。下記表1に測定結果を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1に示す結果からわかる通り、式(1)化合物を含む実施例1~9の導電性組成物は、粘度が低く、流動性が高かった。一方、式(1)化合物を含まない比較例1の導電性組成物は、粘度が高い上、流動性も低く、流動性の測定試験において開口部より3mm先には流動せず、試験片の所定の距離Lまで到達しなかった。
【0068】
また、式(1)化合物を含む実施例1~9の導電性組成物は、電気抵抗値も4.2~720Ωの範囲であり、アースをとるという用途においては適切な値だった。(E)不飽和脂肪酸のトリグリセリドをさらに含む実施例7~9は、(E)成分を含まない実施例1と比較して抵抗値が低く、導電性が向上したといえる。
【0069】
以上のことから、式(1)化合物を含む実施例1~9の導電性組成物は、高い流動性を示し、適度な導電性を有することが明らかとなった。したがって、本発明の導電性組成物は、例えばカメラモジュールの固定のための導電性接着剤として好ましく用いることができるといえる。
【符号の説明】
【0070】
12 ガラス板
14 ステンレス板
16 スペーサ
20 導電性組成物
22 ガラス板
24 電極
R 抵抗計
50 ジェットディスペンサー
52 ニードル
54 シール(密封部材)
56 ノズル
S ストローク
図1
図2
図3
図4