(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】全芳香族ポリエステルアミド、ポリエステルアミド樹脂組成物及びポリエステルアミド成形品
(51)【国際特許分類】
C08G 69/44 20060101AFI20230816BHJP
C08L 77/12 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C08G69/44
C08L77/12
(21)【出願番号】P 2018237371
(22)【出願日】2018-12-19
【審査請求日】2021-12-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】池田 聡
(72)【発明者】
【氏名】多田 智之
【審査官】谷合 正光
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-516093(JP,A)
【文献】特許第6010039(JP,B2)
【文献】特開昭57-177020(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0057284(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0135540(KR,A)
【文献】特開2004-339462(JP,A)
【文献】特表2013-543926(JP,A)
【文献】特表平07-506132(JP,A)
【文献】特開2003-128782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 69/44
C08L 77/12
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記構成単位(I)、(II)及び(III)からなり、全構成単位に対して下記構成単位(I)が25~50モル%、下記構成単位(II)が30~45モル%、下記構成単位(III)が15~35モル%であり、下記構成単位(I)と下記構成単位(II)との比率(構成単位(I)/構成単位(II))が0.7~3であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が140,000~300,000である、全芳香族ポリエステルアミド。
【化1】
【請求項2】
融点が240~350℃である、請求項1に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の全芳香族ポリエステルアミドを含有するポリエステルアミド樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の全芳香族ポリエステル
アミド、又は請求項3に記載のポリエステルアミド樹脂組成物を成形して得られるポリエステルアミド成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全芳香族ポリエステルアミド、当該全芳香族ポリエステルアミドを含む樹脂組成物及びその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶性ポリマーは、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有するため、高機能エンジニアリングプラスチックスとして広く利用されている。液晶性ポリマーとしては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及び必要に応じて他のモノマー成分を共重合して得られる全芳香族ポリエステルが知られている。他には、全芳香族ポリエステルにアミド基を導入した全芳香族ポリエステルアミドが知られている。全芳香族ポリエステルアミドは、ポリマー鎖間において水素結合が形成されるため、全芳香族ポリエステルと比較して、機械的強度、耐熱性、成形性、弾性率などの性能が優れる傾向にある。
【0003】
全芳香族ポリエステルアミドのうち、原料モノマーとして特定の3種を用いたものとしては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及び3-アミノ安息香酸又は4-アミノ安息香酸を共重合させて得られるものが知られている(特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭57-177020号公報
【文献】特開2003-128782号公報
【文献】特開2004-339462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~3に代表される従来の全芳香族ポリエステルアミドのうち、特に、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、及び4-アミノ安息香酸を共重合させて得られるものは非晶性のものである。また、そのような全芳香族ポリエステルアミドは、高い強度及び高い弾性率を有するものが得られなかった。強度及び弾性率を向上させるには、アミド基の比率を増やし水素結合の割合をより多くすることが考えられる。しかし、単にアミド基の割合を増やしたのでは、高融点化及び高粘度化を引き起こすため溶融加工をすることが困難となる。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その課題は、溶融加工性を有し、かつ、高い強度及び高い弾性率を有する全芳香族ポリエステルアミドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する本発明の一態様は以下の通りである。
【0008】
(1)下記構成単位(I)、(II)及び(III)からなり、全構成単位に対して下記構成単位(I)が20~60モル%、下記構成単位(II)が20~50モル%、下記構成単位(III)が15~35モル%であり、下記構成単位(I)と下記構成単位(II)との比率(構成単位(I)/構成単位(II))が0.7~3である全芳香族ポリエステルアミド。
【0009】
【0010】
(2)ポリスチレン換算の重量平均分子量が140,000~300,000である、前記(1)に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
【0011】
(3)融点が240~350℃である、前記(1)又は(2)に記載の全芳香族ポリエステルアミド。
【0012】
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載の全芳香族ポリエステルアミドを含有するポリエステルアミド樹脂組成物。
【0013】
(5)前記(1)~(3)のいずれかに記載の全芳香族ポリエステル、又は前記(4)に記載のポリエステルアミド樹脂組成物を成形して得られるポリエステルアミド成形品。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、溶融加工性を有し、かつ、高い強度及び高い弾性率を有する全芳香族ポリエステルアミドを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<全芳香族ポリエステルアミド>
本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、下記構成単位(I)、(II)及び(III)からなり、全構成単位に対して下記構成単位(I)が20~60モル%、下記構成単位(II)が20~50モル%、下記構成単位(III)が15~35モル%であり、下記構成単位(I)と下記構成単位(II)との比率(構成単位(I)/構成単位(II))が0.7~3であることを特徴としている。
【0016】
【0017】
本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、上記構成単位(I)~(III)を上記範囲の含有率で含み、かつ、上記構成単位(I)と上記構成単位(II)との比率が上記比率である。そのため、当該全芳香族ポリエステルアミドは、所定温度の融点が観測される結晶性樹脂であり、溶融加工性を有し、かつ、高い強度及び高い弾性率を有する。なお、溶融加工性とは、押出機及び射出成形機等を用いて、ポリマーを溶融して加工することが可能な性能を意味する。
以下に、各構成単位について説明する。
【0018】
構成単位(I)は、4-ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」ともいう。)から誘導される。本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)を20~60モル%含む。構成単位(I)の含有量が20モル%未満であるか又は60モル%を超えると、製造時にポリマーが重合容器内で固化し、十分に重合できない。構成単位(I)の含有量は、好ましくは20~55モル%、より好ましくは25~55モル%、更に好ましくは25~50モル%、特に好ましくは30~50モル%である。
【0019】
構成単位(II)は、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(以下、「HNA」ともいう。)から誘導される。本実施形態の全芳香族ポリエステルは、全構成単位に対して構成単位(II)を20~50モル%含む。構成単位(II)の含有量が20モル%未満であると、製造時にポリマーが重合容器内で固化し、十分に重合できない。また、構成単位(II)の含有量が50モル%を超えると、機械強度が低下する。構成単位(II)の含有量は、好ましくは25~50モル%、より好ましくは25~45モル%、更に好ましくは30~45モル%、特に好ましくは30~40モル%である。
【0020】
本実施形態においては、構成単位(I)と構成単位(II)との比率(構成単位(I)/構成単位(II))は0.7~3である。当該比率が0.7未満であると非晶性となり、溶融重合を経た後において固相重合することが困難となる。ひいては、固相重合により分子量を増大させることができず、成形品を得ることが困難となる。さらに、機械強度が低下する。当該比率が3を超えると溶融加工性に劣る、すなわち増粘して成形品を得ることが困難となる。当該比率は、好ましくは0.7~2であり、より好ましくは0.75~2であり、更に好ましくは0.75~1である。
【0021】
構成単位(III)は、4-アミノ安息香酸(以下、「pABA」ともいう。)又は4-アセトアミド安息香酸(以下、「pAABA」ともいう。)から誘導される。本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(III)を15~35モル%含む。構成単位(III)の含有量が15モル%未満であると、水素結合が十分に形成されないため強度及び弾性率が低下する。構成単位(III)の含有量が35モル%を超えると、水素結合が多く形成され、溶融加工性に劣る、すなわち増粘して成形品を得ることが困難となる。構成単位(III)の含有量は、好ましくは17.5~35モル%、より好ましくは17.5~32.5モル%、更に好ましくは20~32.5モル%、特に好ましくは20~30モル%である。
なお、構成単位(III)を導入するに当たり、pABAを用いるよりもpAABAを用いた方が反応が穏やかになるため、後記の実施例ではpAABAを用いている。
【0022】
以上の通り、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、構成単位(I)~(III)を所定の含有量で含むため、所定温度の融点が観測される結晶性樹脂であり、溶融加工性を有し、かつ、高い強度及び高い弾性率を有する。ひいては、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドを用いて得られる成形品は、高い強度及び高い弾性率を有する。なお、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、全構成単位に対して構成単位(I)~(III)を合計で100モル%含む。
【0023】
次いで、全芳香族ポリエステルアミドの性質について説明する。本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、溶融時に光学的異方性を示す。溶融時に光学的異方性を示すことは、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることを意味する。
【0024】
本実施形態において、全芳香族ポリエステルアミドが液晶性ポリマーであることは、全芳香族ポリエステルアミドが熱安定性と易加工性を併せ持つ上で不可欠な要素である。上記構成単位(I)~(III)から構成される全芳香族ポリエステルアミドは、構成成分及びポリマー中のシーケンス分布によっては、異方性溶融相を形成しないものも存在するが、本実施形態のポリマーは溶融時に光学的異方性を示す全芳香族ポリエステルに限られる。
【0025】
溶融異方性の性質は直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には溶融異方性の確認は、オリンパス社製偏光顕微鏡を使用しリンカム社製ホットステージにのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性ポリマーは光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
【0026】
ネマチックな液晶性ポリマーは融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。融点は、でき得る限り高い方が耐熱性の観点からは好ましいが、ポリマーの溶融加工時の熱劣化や成形機の加熱能力等を考慮すると、360℃以下であることが好ましい目安となる。なお、融点は好ましくは240~350℃であり、より好ましくは240~340℃であり、更に好ましくは250~340℃である。
【0027】
次いで、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドの製造方法について説明する。本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドは、直接重合法やエステル交換法等を用いて重合される。重合に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0028】
本実施形態では、重合に際し、重合モノマーに対するアシル化剤や、酸塩化物誘導体として末端を活性化したモノマーを使用できる。アシル化剤としては、無水酢酸等の脂肪酸無水物等が挙げられる。
【0029】
これらの重合に際しては種々の触媒の使用が可能であり、代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、N-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。触媒の使用量は一般にはモノマーの全質量に基づいて約0.001~1質量%、特に約0.003~0.2質量%が好ましい。
【0030】
本実施形態においては、溶融重合で得られた樹脂を、さらに固相重合させることにより分子量を増加させ成形性を向上させることができる。
【0031】
固相重合は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、減圧又は真空下、窒素ガス等の不活性ガス気流中で、原料樹脂の液晶形成温度よりも10~120℃低い温度で加熱することにより行うことができる。なお、液晶性樹脂は固相重合が進むにしたがってその融点も上昇するので、原料樹脂の元の融点以上で固相重合することも可能である。固相重合は、一定の温度で実施してもよいし段階的に高温にしてもよい。加熱方法は、特に限定されず、マイクロ波加熱、ヒータ加熱等を用いることができる。
【0032】
本実施形態において、芳香族ポリエステルアミドのポリスチレン換算の重量平均分子量は、高強度及び高弾性率としながら、溶融時に十分な流動性が得られる点で、140,000~300,000であることが好ましい。当該重量平均分子量は150,000~250,000が好ましく、160,000~200,000がより好ましい。なお、本実施形態において、芳香族ポリエステルアミドの重量平均分子量を140,000以上とするには、溶融重合等により重合した後、さらに固相重合することが好ましい。また、本実施形態において、ポリスチレン換算の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により求められるポリスチレン換算によるものである。より詳細には、後述する実施例に記載の方法により求められる。
【0033】
[ポリエステルアミド樹脂組成物]
本実施形態の全芳香族ポリエステルアミドには、使用目的に応じて各種の繊維状、粉粒状、板状の無機及び有機の充填剤を配合してポリエステルアミド樹脂組成物とすることができる。
【0034】
本実施形態のポリエステルアミド樹脂組成物に配合される無機充填剤としては、繊維状、粒状、板状のものが挙げられる。
【0035】
繊維状無機充填剤としてはガラス繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化珪素繊維、硼素繊維、チタン酸カリ繊維、ウォラストナイトの如き珪酸塩の繊維、硫酸マグネシウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物等の無機質繊維状物質が挙げられる。特に代表的な繊維状充填剤はガラス繊維である。
【0036】
また、粉粒状無機充填剤としてはカーボンブラック、黒鉛、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ミルドガラスファイバー、ガラスバルーン、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、硅藻土、ウォラストナイトの如き硅酸塩、酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、アルミナの如き金属の酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムの如き金属の炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムの如き金属の硫酸塩、その他フェライト、炭化硅素、窒化硅素、窒化硼素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0037】
また、板状無機充填剤としてはマイカ、ガラスフレーク、タルク、各種の金属箔等が挙げられる。
【0038】
本実施形態のポリエステルアミド樹脂組成物に配合される、有機充填剤の例を示せば、芳香族ポリエステル繊維、液晶性ポリマー繊維、芳香族ポリアミド、ポリイミド繊維等の耐熱性高強度合成繊維等である。
【0039】
これらの無機及び有機充填剤は一種又は二種以上を併用することができる。繊維状無機充填剤と粒状又は板状無機充填剤との併用は、機械的強度と寸法精度、電気的性質等を兼備する上で好ましい組み合わせである。特に好ましくは、繊維状充填剤としてガラス繊維、板状充填剤としてマイカ及びタルクであり、その配合量は、全芳香族ポリエステルアミド100質量部に対して120質量部以下、好ましくは20~80質量部である。ガラス繊維をマイカ又はタルクと組み合わせることで、ポリエステルアミド樹脂組成物は、熱変形温度、機械的物性等の向上が特に顕著である。
【0040】
これらの充填剤の使用にあたっては必要ならば収束剤又は表面処理剤を使用することができる。
【0041】
本実施形態のポリエステルアミド樹脂組成物は、上述の通り、必須成分として、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミド、及び必要に応じて無機又は有機充填剤を含むが、本実施形態の効果を害さない範囲であれば、その他の成分が含まれていてもよい。ここで、その他の成分とは、どのような成分であってもよく、例えば、その他の樹脂、酸化防止剤、安定剤、顔料、結晶核剤等の添加剤を挙げることができる。
【0042】
また、本実施形態のポリエステル樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で、ポリエステル樹脂組成物を調製することができる。
【0043】
[ポリエステルアミド成形品]
本実施形態のポリエステルアミド成形品は、本実施形態の全芳香族ポリエステルアミド又はポリエステルアミド樹脂組成物を成形してなる。成形方法としては、特に限定されず一般的な成形方法を採用することができる。一般的な成形方法としては、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形、インフレーション成形等の方法を例示することができる。
【0044】
本実施形態のポリエステルアミド成形品は、上述の本実施形態の全芳香族ポリエステルアミド又はポリエステルアミド樹脂組成物を成形してなるため高い強度及び高い弾性率を有する。
【0045】
以上のような性質を有する本実施形態のポリエステルアミド成形品の好ましい用途としては、コネクター、CPUソケット、リレースイッチ部品、ボビン、アクチュエータ、ノイズ低減フィルターケース等が挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下に、実施例により本実施形態をさらに具体的に説明するが、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0047】
[実施例1]
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、アシル化剤を仕込み、窒素置換を開始した。なお、下記(I)~(III)はそれぞれ、構成単位(I)~(III)の由来となるモノマーである。
(I)4-ヒドロキシ安息香酸:869g(40モル%)(HBA)
(II)6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸:1183g(40モル%)(HNA)
(III)4-アセトアミド安息香酸:563g(20モル%)(pAABA)
酢酸カリウム触媒:165mg
無水酢酸:1310g(HBAとHNAの合計の水酸基当量の1.02倍)
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で1時間反応させた。その後、更に300℃まで2.8時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、その他の低沸分を留出させながら重縮合を行った。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマー(プレポリマー)を排出し、ペレタイズして樹脂ペレットを得た。
次いで、得られたプレポリマーを、窒素気流下、240℃で70時間の熱処理(固相重合)を行い、目的とするポリマーを得た。
【0048】
<評価>
実施例1の樹脂ペレットについて、融点及び重量平均分子量の測定、及び曲げ試験(曲げ強度(FS)、曲げ歪み及び曲げ弾性率(FM)の測定)を以下のようにして行った。評価結果を表1に示す。
【0049】
[融点]
示差走査熱量計(DSC7000X、(株)日立ハイテクサイエンス製)にて、得られた樹脂ペレットを室温から20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の測定後、(Tm1+40)℃の温度で2分間保持した後、20℃/分の降温速度で室温まで一旦冷却した後、再度、20℃/分の昇温速度で加熱した際に観測される吸熱ピークの温度(Tm2)を融点として測定した。
【0050】
[重量平均分子量]
得られた樹脂ペレットを、溶媒としてビストリフルオロメチルフェノールを使用して常温で6時間溶解させた。ゲル浸透クロマトグラフ法(東ソー(株)製「HLC-8320GPC」、示差屈折計検出器)を行い、標準ポリスチレン換算で重量平均分子量を算出した。
【0051】
[曲げ試験]
得られた樹脂ペレットを、小型成形機(椿本興業(株)製「Minishot2」)を用いて、以下の成形条件で成形し、8.7mm×2.6mm×3.0mmの曲げ試験片を作製した。この試験片を用いて、曲げ強度(FS)、曲げ歪み、及び曲げ弾性率(FM)を測定した。測定結果を表1に示す。
(成形条件)
シリンダー温度:300℃
【0052】
[実施例2、比較例1~7]
原料モノマーの種類、仕込み比率(モル%)を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同様にしてポリマーを得た。そして、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0053】
【0054】
表1より、実施例1及び2においてはいずれも曲げ試験において良好な評価結果が得られたことが分かる。
これに対して、構成単位(III)を含まない比較例1、構成単位(III)の含有率が15モル%未満の比較例2、構成単位(II)の含有率が50モル%を超える比較例3においてはいずれも曲げ試験において良好な結果が得られなかったことが分かる。また、構成単位(I)と構成単位(II)との比率が0.7に満たない比較例4は非晶性であり固相重合できず、曲げ試験に至らなかった。さらに、構成単位(III)の含有率が35モル%を超える比較例5は、ポリマーの合成時にポリマー(プレポリマー)が増粘して重合容器の下部からの排出がなされず、評価を行うことができなかった。構成単位(I)の含有率が20モル%未満であり、かつ、構成単位(II)の含有率が50モル%を超える比較例6、及び構成単位(I)の含有率が60モル%を超え、かつ、構成単位(II)の含有率が20モル%未満である比較例7はいずれも、ポリマーの合成時にポリマー(プレポリマー)が固化して重合容器の下部からの排出がなされず、評価を行うことができなかった。