(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】RF通信システム
(51)【国際特許分類】
G06K 7/10 20060101AFI20230816BHJP
H04B 5/02 20060101ALI20230816BHJP
G06K 19/07 20060101ALI20230816BHJP
G01F 23/284 20060101ALN20230816BHJP
【FI】
G06K7/10 168
H04B5/02
G06K7/10 240
G06K19/07 200
G06K19/07 230
G06K7/10 276
G01F23/284
(21)【出願番号】P 2019085132
(22)【出願日】2019-04-26
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柏崎 耕志
(72)【発明者】
【氏名】駒込 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】関野 顕
(72)【発明者】
【氏名】狩俣 昌史
【審査官】田名網 忠雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-033765(JP,A)
【文献】特開2007-259442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0191961(US,A1)
【文献】特開2009-070163(JP,A)
【文献】特開2008-107888(JP,A)
【文献】特開2006-148289(JP,A)
【文献】特表2011-516996(JP,A)
【文献】特開2007-248587(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 7/10
H04B 5/02
G06K 19/07
G01F 23/284
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダと、
前記リーダの交信範囲内に設けられる第1コイルと、
前記第1コイルに接続された第2コイルと、を備え、
前記リーダ及び前記第1コイルは、前記第2コイルに対して隔壁を隔てて配置され、
前記リーダは、前記第1コイルを介して、前記第2コイルの交信範囲内へのRFタグの侵入による第2コイル周辺の磁場の変化を読み取るように構成され
、
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物がコンベアで構成され、
前記コンベアが正常位置にあるとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲内に配置され、前記コンベアが脱線したとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲外に配置されるように構成された
ことを特徴とするRF通信システム。
【請求項2】
前記隔壁によって囲まれる前記隔壁の内側空間は、温度、圧力又は雰囲気が前記隔壁の外側と異なる環境にあり、
前記隔壁の内側空間に前記第2コイル及び前記RFタグが配置されると共に、前記隔壁の外側に前記リーダ及び前記第1コイルが配置されることを特徴とする請求項1に記載のRF通信システム。
【請求項3】
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物であって、異なる前記被検出物又は同一の前記被検出物の異なる部位に複数の前記RFタグが設けられ、
前記複数のRFタグの各々に対応して設けられた複数の前記第2コイルと、
前記複数の第2コイルの各々に接続された複数の前記第1コイルと、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のRF通信システム。
【請求項4】
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物であって、異なる前記被検出物又は同一の前記被検出物の異なる部位に複数の前記RFタグが設けられ、
前記複数のRFタグの各々に対応して設けられた複数の前記第2コイルと、
前記複数の第2コイルの各々に接続された1個の前記第1コイルと、
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のRF通信システム。
【請求項5】
前記複数の第2コイルの各々に接続されたアンテナ導線を結線又は断線させるスイッチを備えることを特徴とする請求項4に記載のRF通信システム。
【請求項6】
前記リーダが前記RFタグから得た情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記情報を表示する表示部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載のRF通信システム。
【請求項7】
リーダと、
前記リーダの交信範囲内に設けられる第1コイルと、
前記第1コイルに接続された第2コイルと、を備え、
前記リーダ及び前記第1コイルは、前記第2コイルに対して隔壁を隔てて配置され、
前記リーダは、前記第1コイルを介して、前記第2コイルの交信範囲内へのRFタグの侵入による第2コイル周辺の磁場の変化を読み取るように構成され、
前記RFタグを移動可能に支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記RFタグが設置された検出対象である被検出物の第1状態又は第2状態に応じて前記RFタグを前記第2コイルの交信範囲内又は交信範囲外に配置可能に構成されていることを特徴とす
るRF通信システム。
【請求項8】
前記支持部材は、軸中心に回動可能に支持された棒状体で構成され、
該棒状体は、一端が前記被検出物に接するように配置され、かつ他端に前記RFタグが装着され、
前記被検出物が第1位置に存在するとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲内に配置され、前記被検出物が第2位置に存在するとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲外に配置されるように構成されたことを特徴とする請求項7に記載のRF通信システム。
【請求項9】
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物がコンベアで構成され、
前記リーダが前記RFタグから得た情報を記憶する記憶部を備え、
複数の前記RFタグが前記コンベアの搬送方向において異なる場所に配置され、
前記複数のRFタグの各々は固有の識別番号を保持し、
少なくとも前記複数のRFタグの各々の前記固有の識別番号及び配置場所が前記記憶部に記憶されることを特徴とする
請求項1乃至8の何れか一項に記載のRF通信システム。
【請求項10】
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物がコンベアで搬送される被搬送物であり、
前記RFタグは前記被搬送物に装着されていることを特徴とする請求項
7又は8に記載のRF通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、RF通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍庫で食品を冷凍する場合に、冷凍庫内で食品をコンベアで搬送しながら連続的に冷凍する方法がある。このコンベアのコンベアベルトが軌道から脱線する場合があり、これを検知する方法として、コンベアベルトの傍に近接センサを配置し、近接センサで脱線の有無を検知する方法がある。しかし、冷凍庫内は通常-30℃以下の極低温に保持され、デフロスト運転時には常温以上まで昇温する大きな温度変化に晒され、冷凍庫内の洗浄時には高湿度環境に晒されている。そのため、近接センサに接続された電源線及び信号線の接続部から水分が侵入し、近接センサが故障する事例が生じている。近接センサが故障すると、コンベアが脱線しても検知できないため、脱線が波及し、ついにはコンベアの駆動装置の過負荷により異常停止する事態となる。この波及した脱線を復旧するためには多くの労力と時間が必要となり、冷凍庫の生産性を低下させる問題がある。
【0003】
そこで、近接センサを用いずに、特許文献1~3に開示されているように、被検出物側に設けられたRFタグの情報を誘導電磁界又は電磁波によって非接触で離れた位置にあるリーダに供給可能なRFIDシステムを採用することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-168985号公報
【文献】特開2013-142675号公報
【文献】特開2016-71462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、RF通信システムは、RFタグが電池を搭載しないパッシブタイプのRFタグの場合、比較的通信可能距離が長い極超短波(UHF)帯の電磁波を用いても、通信エリアが限定されるという問題がある。これによって、リーダライタ側機器の配置に様々な制約が生じる。逆に、電池を搭載するアクティブタイプのRFタグの場合、高コストであると共に、形状が大きく電池交換が必要になるため、作業性が低下するという問題がある。
また、RFタグが冷凍温度など温度、圧力等が常温、常圧と大きく異なる過酷な環境下、あるいは人体が生存できない環境下に置かれるとき、RFタグほど耐久性がないリーダ側機器をRFタグの近くに配置できないという問題がある。
【0006】
本開示に係る一実施形態は、RF通信システムにおいて、簡易な手段により通信距離を延長でき、リーダ側機器の配置の自由度を広げることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)一実施形態に係るRF通信システムは、
リーダと、
前記リーダの交信範囲内に設けられる第1コイルと、
前記第1コイルに接続された第2コイルと、を備え、
前記リーダ及び前記第1コイルは、前記第2コイルに対して隔壁を隔てて配置され、
前記リーダは、前記第1コイルを介して、前記第2コイルの交信範囲内へのRFタグの侵入による第2コイル周辺の磁場の変化を読み取るように構成される。
なお、本明細書において、「リーダ」とは、RFタグが保有する情報を読み取る機能のみを備えるものを指すが、複数のRFタグを用い、個々のRFタグを識別するため各RFタグに識別番号を書き込む必要がある通信システムに適用される場合などでは、読み取りだけでなく、RFタグに情報を書き込むことが可能なリーダライタとしての機能を有するものを含むものとする。
【0008】
上記(1)の構成によれば、RFIDシステムを採用することで、近接センサが不要になるため、近接センサの故障による検知不能や誤検知をなくすことができる。また、第1コイルと第2コイルとを接続する導線を長くし、第1コイルと第2コイル間の距離を長く取ることで、タグ情報の通信距離を延ばすことができるため、リーダ側機器の配置場所の制約を緩和できる。さらに、第1コイルと第2コイルとを隔壁を隔てて配置することで、RFタグが上記隔壁に囲まれ、作業員が立ち入り困難な場所に配置されても、リーダ側機器を上記隔壁外の作動に適した場所に配置できる。これによって、RF通信システムの用途を広げることができる。
【0009】
(2)一実施形態では、前記(1)の構成において、
前記隔壁によって囲まれる前記壁の内側空間は、温度、圧力又は雰囲気が前記隔壁の外側と異なる環境にあり、
前記隔壁の内側空間に前記第2コイル及び前記RFタグが配置されると共に、前記隔壁の外側に前記リーダ及び前記第1コイルが配置される。
上記(2)の構成によれば、上記隔壁の内側空間が温度、圧力等が常温、常圧と大きく異なる過酷な環境下、あるいは人体に有害な環境下にあり、RFタグ及び第2コイルがかかる環境下に置かれていても、第1コイルと第2コイルとの距離を延ばすことができるため、リーダ及び第1コイルを上記隔壁外の作動に適した環境下に置くことができる。
【0010】
(3)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物であって、異なる前記被検出物又は同一の前記被検出物の異なる部位に複数の前記RFタグが設けられ、
前記複数のRFタグの各々に対応して設けられた複数の前記第2コイルと、
前記複数の第2コイルの各々に接続された複数の前記第1コイルと、
を備える。
ここで、「RFタグが設置された」とは、RFタグが検出対象である被検出物に直接取り付けられる場合と、該被検出物に非接触でかつ該被検出物の動作に対応して位置変動可能な位置に近接配置される場合とを含むものとする。
【0011】
上記(3)の構成によれば、異なる被検出物又は同一の被検出物の異なる部位に設けられた複数のRFタグから、同時に複数の情報を得ることができると共に、第1コイル及び第2コイルを含む独立した複数のコイルアセンブリを備えるため、各々の第1コイルで発生する誘導電流が他のコイルアセンブリの第2コイルに分散されて同じコイルアセンブリの第2コイルに流れる電流量が減少してしまうことはなくなる。従って、各RFタグから送られる情報をリーダが正確に読み取ることができる。
【0012】
(4)一実施形態では、前記(1)又は(2)の構成において、
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物であって、異なる前記被検出物又は同一の前記被検出物の異なる部位に複数の前記RFタグが設けられ、
前記複数のRFタグの各々に対応して設けられた複数の前記第2コイルと、
前記複数の第2コイルの各々に接続された1個の前記第1コイルと、
を備える。
上記(4)の構成によれば、複数の第2コイルに対して1個の第1コイルを設ければよいので、コイルアセンブリを低コスト化できる。
【0013】
(5)一実施形態では、前記(4)の構成において、
前記複数の第2コイルの各々に接続されたアンテナ導線を結線又は断線させるスイッチを備える。
上記(5)の構成によれば、上記スイッチを備えるため、タグ情報がほしいRFタグのみリーダ側と結線させ、その他のアンテナ導線をリーダ側と断線させることができる。これによって、第1コイルで発生した誘導電流はタグ情報がほしい第2コイルのみに流れ、他のアンテナ導線には流れないため、第2コイルと第1コイルとの距離を延ばすことができると共に、スイッチを切り替えることにより複数のRFタグから送られるタグ情報をリーダで読み取ることができる。
【0014】
(6)一実施形態では、前記(1)~(5)の何れかの構成において、
前記リーダが前記RFタグから得た情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記情報を表示する表示部と、
を備える。
上記(6)の構成によれば、リーダに送られたタグ情報を上記記憶部に記憶させ、必要に応じて上記表示部に表示させることができる。
【0015】
(7)一実施形態では、前記(1)~(6)の何れかの構成において、
前記RFタグを移動可能に支持する支持部材を備え、
前記支持部材は、前記被検出物の第1状態又は第2状態に応じて前記RFタグを前記第2コイルの交信範囲内又は交信範囲外に配置可能に構成される。
上記(7)の構成によれば、上記支持部材を備えることで、RFタグは、被検出物の第1状態又は第2状態に応じて第2コイルの交信範囲内又は交信範囲外に配置されるため、リーダは、被検出物が第1状態又は第2状態にあることを読み取ることができる。
【0016】
(8)一実施形態では、前記(7)の構成において、
前記支持部材は、軸中心に回動可能に支持された棒状体で構成され、
該棒状体は、一端が前記被検出物に接するように配置され、かつ他端に前記RFタグが装着され、
前記被検出物が第1位置に存在するとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲内に配置され、前記被検出物が第2位置に存在するとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲外に配置されるように構成される。
上記(8)の構成によれば、棒状体で構成された簡易な支持部材を用いて、リーダは、被検出物が第1位置又は第2位置に存在することを読み取ることができる。
【0017】
(9)一実施形態では、前記(1)~(8)の何れかの構成において、
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物がコンベアで構成され、
複数の前記RFタグが前記コンベアの搬送方向において異なる場所に配置されている。
上記(9)の構成によれば、複数のRFタグがコンベアの搬送方向において異なる場所に設けられるので、コンベアの搬送方向の広い領域でコンベアの作動情報を得ることができる。
【0018】
(10)一実施形態では、前記(9)の構成において、
前記コンベアのコンベアベルトが正常位置にあるとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲内に配置され、前記コンベアベルトが脱線したとき、前記RFタグは前記第2コイルの交信範囲外に配置されるように構成される。
上記(10)の構成によれば、コンベアベルトの脱線有無を検出できると共に、アンテナ導線の破線などの異常が発生した時も同様の情報がリーダに供給されるため、アンテナ導線の破線発生も異常発生として検出できる。
【0019】
(11)一実施形態では、前記(9)又は(10)の構成において、
前記リーダが前記RFタグから得た情報を記憶する記憶部を備え、
複数の前記RFタグが前記コンベアの搬送方向において異なる場所に配置され、
前記複数のRFタグの各々は固有の識別番号を保持し、
少なくとも前記複数のRFタグの各々の前記固有の識別番号及び配置場所が前記記憶部に記憶される。
上記(11)の構成によれば、RFタグから供給されるタグ情報がどの場所に配置されたRFタグからのものかをリーダ側で読み取りできる。
【0020】
(12)一実施形態では、前記(1)~(11)の何れかの構成において、
前記RFタグが設置された検出対象である被検出物がコンベアで搬送される被搬送物であり、
前記RFタグは前記被搬送物に装着されている。
上記(12)の構成によれば、RFタグから供給されるタグ情報がどの被検出物から供給されるものかを識別できる。従って、コンベアに設けられたRFタグからのタグ情報と照合することで、例えば、被搬送物が食品であるとき、該食品のトレーサビリティなどの品質管理が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
幾つかの実施形態によれば、電磁波を用いたRF通信システムを用い、かつ簡易な手段で通信距離を延長できるので、RFタグがリーダ側機器と隔壁で隔てられた場所にあっても、リーダで読み取り可能である。これによって、リーダ側機器の配置の制約を緩和でき、RF通信システムの用途を広げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】一実施形態に係るRF通信システムの模式図である。
【
図2】一実施形態に係るRF通信システムの模式図である。
【
図3】一実施形態に係るRF通信システムの模式図である。
【
図4】一実施形態に係るRF通信システムの模式図である。
【
図5】一実施形態に係るRFタグの支持部材の模式図である。
【
図6】コンベアに適用した一実施形態に係るRF通信システムの模式図である。
【
図7】コンベアベルトの張力調整装置を示す模式図である。
【
図8】
図7の張力調整装置に適用されるRF通信システムの模式図である。
【
図9】一実施形態に係るRFタグの支持部材の模式図である。
【
図10】一実施形態に係るRFタグの支持部材の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載され又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一つの構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0024】
図1は、一実施形態に係るRF通信システム10(10A)を示す。RF通信システム10(10A)は、リーダライタ12と、コイルアセンブリ14とを備える。コイルアセンブリ14は、導電性のアンテナ導線で構成される第1コイル15及び第2コイル16を含んで構成される。第1コイル15及び第2コイル16は導線で接続され、第1コイル15はリーダライタ12の交信範囲内に設けられる。リーダライタ12及び第1コイル15は第2コイル16に対して隔壁17を隔てて配置される。第2コイル16は、RFタグ20が第2コイル16の交信範囲に侵入可能なようにRFタグ20の近傍に配置される。リーダライタ12によって発生する磁界により、電磁誘導の原理で第1コイル15に誘導電流が発生する。この誘導電流が第2コイル16に流れることによって、逆に第2コイル16に磁界が発生する。RFタグ20が第2コイル16の交信範囲に侵入すると、電力伝送を受け、RFタグ内のICが作動する。これによって生じる第2コイル周辺の磁場の変化をリーダライタ12が読み取ることによって、リーダライタ12はRFタグ20がもつ被検出物18に関する情報を識別できる。
【0025】
上記構成によれば、RFIDシステムを用いることで、近接センサが不要になるため、近接センサの故障による検知不能や誤検知をなくすことができる。また、第1コイル15と第2コイル16間の距離を長くすることで、タグ情報の通信距離を延ばすことができるため、リーダライタ側機器の配置場所の制約を緩和できる。第1コイル15及び第2コイル16間を流れる誘導電流は、第1コイル15及び第2コイル16を構成するアンテナ導線の抵抗によって減少するため、第1コイル15及び第2コイル16間の距離には限りがある。しかし、特許文献1~3に開示されているように、RFタグ20とリーダライタ12との間を電磁波で通信することと比較すると、通信距離を長く延ばすことができる。さらに、第1コイル15と第2コイル16とを隔壁17を隔てて配置することで、被検出物18及びRFタグ20が隔壁17に囲まれ、作業員が立ち入り困難な場所に配置されても、リーダライタ側機器を隔壁17外の作動に適した場所に配置できる。これによって、RF通信システム10(10A)の用途を広げることができる。
【0026】
コイルアセンブリ14に用いられるアンテナ導線は、例えば、抵抗が小さい銅線、アルミ線等が用いられる。
【0027】
一実施形態では、隔壁17によって囲まれる隔壁17の内側空間Siは、温度、圧力又は雰囲気が隔壁17の外側と異なる環境にあり、かかる環境下の内側空間Siに第2コイル16及びRFタグ20が配置される場合がある。内側空間Siが冷凍庫など温度、圧力等が常温、常圧と大きく異なる過酷な環境下、あるいは人体に有害な環境下にあっても、通信距離を延ばすことができるので、第1コイル15及びリーダライタ側機器を隔壁17の外側の作動に適した環境下に置くことができる。
【0028】
一実施形態では、リーダライタ側機器では、リーダライタ12に電源22から電力が供給される。上記実施形態では、RFタグ20が保有する情報を読み込むだけでなく、RFタグ20に新たに情報を書き込む機能を有するリーダライタ12を備えている。しかし、RFタグ20に情報を書き込む必要がない場合、例えば、1個のRFタグ20のみを用いているため、RFタグ20に識別番号などの識別情報を書き込む必要がない場合や、複数のRFタグ20を用いていても、すでに各RFタグ20に識別情報が書き込まれており、今後書き込みを行う必要がない場合などでは、リーダライタ12の代わりに、読み込みのみの機能をもつリーダを用いてもよい。
【0029】
一実施形態では、RFタグ20は、電池を搭載しないパッシブタイプを用いる。これによって、低コストで電池交換が不要になり、作業性が低下しない利点がある。
【0030】
一実施形態では、
図1に示すように、制御部30は、リーダライタ12がRFタグ20から得た情報を記憶するメモリを内蔵するプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)(programmable logic controller)24と、該メモリに記憶された情報を表示するためのディスプレイ26(表示部)とを備える。これによって、リーダライタ12に送られたタグ情報を該メモリに記憶させ、必要に応じて該メモリに記憶された情報をディスプレイ26に表示させることができる。
一実施形態では、制御部30は警報器28を内蔵する。PLC24に内蔵されたメモリに記憶されたタグ情報が被検出物18の異常を示すとき、警報器28は警報を発するように構成される。
【0031】
一実施形態では、
図2に示すRF通信システム10(10B)において、複数のRFタグ20(20a、20b、20c)が設けられる。複数のRFタグ20は、異なる複数の被検出物18に設けられ、あるいは、
図2に示すように、同一の被検出物18の異なる部位に設けられる。この実施形態において、複数のRFタグ20に対応して夫々同数の第2コイル16(16a、16b、16c)が設けられ、かつ複数の第2コイル16に対して隔壁17を隔てて夫々同数の第1コイル15(15a、15b、15c)が接続される。即ち、隔壁17を隔てて複数の独立したコイルアセンブリ14(14a、14b、14c)が構成される。
【0032】
この実施形態によれば、異なる被検出物18又は同一の被検出物18の異なる部位に設けられた複数のRFタグ20から、同時に複数の情報を得ることができると共に、第1コイル15及び第2コイル16を含む独立した複数のコイルアセンブリ14を備えるため、各々の第1コイル15で発生する誘導電流が他のコイルアセンブリ14の第2コイル16に分散されて同じコイルアセンブリ14の第2コイル16に流れる電流量が減少してしまうことはなくなる。従って、各RFタグ20から送られる情報をリーダライタ12が正確に読み取ることができる。
【0033】
図2に示す被検出物18(18a)は、コンベアベルト19(19a)が上下方向にスパイラル状に配置されたスパイラル型コンベアである。3個のRFタグ20(20a、20b、20c)が夫々上部、中部及び下部のコンベアベルト19(19a)に設けられ、これら3か所でRFタグ20(20a~20c)から送られる情報によってコンベアベルト19(19a)の状態を監視できる。
【0034】
図3及び
図4は夫々別な実施形態に係るRF通信システム10(10C、10D)を示す。これらの実施形態は、複数のRFタグ20(20a、20b、20c)が、異なる複数の被検出物18に設けられるか、あるいは、
図3及び
図4に示すように、同一の被検出物18の異なる部位に設けられる。また、複数のRFタグ20の夫々に対して複数の第2コイル16(16a、16b、16c)が設けられるが、RF通信システム10(10B)と異なる構成は、夫々のコイルアセンブリ14(14A、14B)は、複数の第2コイル16(16a~16c)に対し、隔壁17を隔てて1個の第1コイル15が接続されて構成される。
この実施形態によれば、複数の第2コイル16(16a~16c)に対して1個の第1コイル15を設ければよいので、コイルアセンブリ14(14A、14B)の構成を簡易かつ低コスト化できる。
【0035】
図3に示す実施形態では、
図2に示す実施形態と同様に、被検出物18(18a)はスパイラル状のコンベアベルト19(19a)を有するスパイラル型コンベアで構成される。3個のRFタグ20(20a~20c)が夫々上部、中部及び下部のコンベアベルト19(19a)に設けられており、これら3か所でコンベアベルト19(19a)の状態を監視できる。
【0036】
図4に示す実施形態では、被検出物18(18a)は水平方向に沿う搬送面を形成するコンベアベルト19(19b)を有するコンベアで構成されている。コンベアベルト19(19b)は矢印方向に移動し、3個のRFタグ20(20a~20c)は夫々コンベアベルト19(19b)の搬送方向上流側、中流側及び下流側の3か所に設けられている。従って、これら3か所でコンベアベルト19(19a)の状態を監視できる。
【0037】
一実施形態では、
図3及び
図4に示すように、複数のRFタグ20(20a、20b、20c)に対して、夫々複数の第2コイル16(16a、16b、16c)が設けられ、各第2コイル16に接続されたアンテナ導線を結線又は断線させるスイッチ32を備える。この実施形態によれば、スイッチ32を備えるため、タグ情報がほしいRFタグ20のみ第1コイル15と結線させ、その他のアンテナ導線を第1コイル15と断線させることができる。これによって、第1コイル15で発生した誘導電流はタグ情報がほしい第2コイル16のみに流れ、他のアンテナ導線には流れないため、第2コイル16と第1コイル15との距離を延ばすことができると共に、スイッチを切り替えることにより複数のRFタグ20から送られるタグ情報をリーダライタ12で読み取ることができる。
【0038】
一実施形態では、
図5に示すように、被検出物18に対応して設けられRFタグ20を移動可能に支持する支持部材34を備える。支持部材34は、被検出物18の第1状態A又は第2状態Bに応じてRFタグ20を第2コイル16の交信範囲R内又は交信範囲R外に配置可能に構成される。この実施形態によれば、RFタグ20は、支持部材34によって被検出物18の第1状態A又は第2状態Bに応じて第2コイル16の交信範囲R内又は交信範囲R外に配置されるため、リーダライタ12は、被検出物18が第1状態A又は第2状態Bにあることを読み取ることができる。
【0039】
一実施形態では、
図5に示すように、支持部材34は軸中心に回動可能に支持された棒状体36で構成される。棒状体36は、一端が被検出物18に接するように配置され、かつ他端にRFタグ20が装着される。被検出物18が第1位置Aに存在するとき、RFタグ20は第2コイル16の交信範囲R内に配置され、被検出物18が第2位置Bに存在するとき、RFタグ20は第2コイル16の交信範囲R外に配置されるように構成される。
この実施形態によれば、棒状体36で構成された簡易な支持部材34を用いて、リーダライタ12は、被検出物18が第1位置A又は第2位置Bに存在するタグ情報を読み取ることができる。
【0040】
一実施形態では、
図2~
図4に示すように、RFタグ20の検出対象である被検出物18がコンベアで構成され、複数のRFタグ20がコンベアの搬送方向において異なる場所に配置される。この実施形態によれば、複数のRFタグ20がコンベアの搬送方向において異なる場所に設けられるので、コンベアの搬送方向の広い領域でコンベアの情報を得ることができる。
【0041】
一実施形態では、被検出物18であるコンベアのコンベアベルトが正常位置にあるとき、例えば、
図5に示す第1位置Aに存在するとき、RFタグ20は第2コイル16の交信範囲R内に配置され、コンベアベルトが脱線したとき、RFタグ20は第2コイル16の交信範囲R外に配置されるように構成される。この実施形態によれば、コンベアベルトの脱線有無を検出できると共に、アンテナ導線の破線などの異常発生時も、RFタグ20が第2コイル16の交信範囲R外に配置されたときと同様の情報がリーダライタ12に供給されるため、アンテナ導線の破線発生をリーダライタ12が異常発生と読み取ることができる。
【0042】
一実施形態では、
図2~
図4に示すように、複数のRFタグ20が被検出物18であるコンベアの搬送方向においてコンベアベルト19(19a、19b)の異なる場所に配置され、複数のRFタグ20は夫々固有の識別番号を保持する。そして、少なくとも複数のRFタグ20の夫々の固有の識別番号及び配置場所がPLC24に内蔵されたメモリに記憶される。この実施形態によれば、RFタグ20から供給されるタグ情報がコンベアのどの場所に配置されたRFタグ20からの情報かをリーダライタ12側で読み取りできる。
【0043】
一実施形態では、RFタグ20が設置された検出対象である被検出物18がコンベアで搬送される被搬送物40であり、複数のRFタグ20が夫々異なる複数の被搬送物40に装着される。この実施形態によれば、各RFタグ20は夫々固有の識別番号を有するため、リーダライタ12に供給されるタグ情報がどの被搬送物40から供給されるものかを識別できる。これによって、特定の被搬送物40がコンベアの搬送方向でどこの位置にあるかを検出できると共に、被搬送物40が山積みになったのを検出できる。また、被搬送物40に設けられたRFタグ20のタグ情報と、コンベアに設けられたRFタグ20からのタグ情報とを照合することで、例えば、被搬送物40が冷凍庫内に設けられたコンベアで搬送され、搬送中に冷凍される食品であるとき、該食品のトレーサビリティなどの品質管理が可能となる。
【0044】
従来、冷凍庫内に設けられたスパイラル型コンベアに異常が発生したときの緊急停止手段として、コンベアの各所に機械式ロープスイッチが張り巡らされ、異常発生時に異常を発見した作業員がロープを引いてコンベアを緊急停止させる手段が用いられている。一実施形態では、上記手段の代わりに、
図6に示すように、RFタグ20を庫内各所に配置する。コンベアに異常が発生したとき、作業員がロープ42を引くことにより、RFタグ20が第2コイル16から離れ、隔壁17を隔てて庫外に設けられたリーダライタ12はこのオフ信号を読み取り、コンベアを停止し、警報を発するように構成される。RFタグ20とロープ42との間にバネ部材44が設けられ、バネ部材44によってRFタグ20及びロープ42が元の位置に戻る。
【0045】
図7に示すように、コンベアには、コンベアベルト19の張力を調整する装置50が設けられている。この張力調整装置50は、例えば、コンベアベルト19を駆動する駆動ローラ46の近傍に設けられ、一対のガイドローラ52と、ガイドローラ52との距離が可変となるように往復動可能な調整ローラ54と、を備えている。調整ローラ54がガイドローラ52との距離を調整することで、コンベアベルト19の張力を調整できる。
一実施形態では、
図8に示すように、調整ローラ54にRFタグ20が設けられ、調整ローラ54の往復動の両端位置にあるRFタグ20と対面する位置に第2コイル16(16d、16e)が配置される。調整ローラ54が該両端位置に来たときに、リーダライタ12がRFタグ20の侵入による第2コイル16周辺の磁場変化を読み取り、コンベアベルト19に異常が起きたと判定する。
【0046】
一実施形態では、冷凍庫内で使用する工具類にRFタグ20を付設し、冷凍庫外に設けられたリーダライタ12でタグ情報を読み取るようにする。これによって、工具の置忘れを防止できる。
【0047】
一実施形態では、
図9に示すように、タンク60に純水などの非導電性液体が貯留され、非導電性液体中に第2コイル16及びRFタグ20が配置され、第1コイル15及びリーダライタ12がタンク60の隔壁60aの外側に配置される。非導電性液体が非導電性を保持する間、リーダライタ12はタグ情報を読み取ることができる。他方、非導電性液体の汚れなどにより非導電性液体が導電性になると非導電性液体中に過電流が発生し、リーダライタ12はRFタグ20の情報を読み取ることができなくなる。これによって、非導電性液体の汚れなどを検出できる。第2コイル16及びRFタグ20の組合せをタンク60内の複数箇所に配置すれば、複数箇所の汚れなどのモニタリングが可能になる。
【0048】
図10は、タンク60内に貯留された導電性液体の液面レベルを検出する実施形態を示す。
図10において、タンク60内に第2コイル16(16f)及びRFタグ20(20d)と、第2コイル16(16g)及びRFタグ20(20e)と、が配置され、第2コイル16(16f、16g)と接続された第1コイル15及びリーダライタ12がタンク60の隔壁60aの外側に配置される。第2コイル16(16f)及びRFタグ20(20d)は、下限液面レベルh
1を検出するために設けられ、第2コイル16(16f)とRFタグ20(20d)とが下限液面レベルh
1を挟むように設けられる。第2コイル16(16g)及びRFタグ20(20e)は、上限液面レベルh
2を検出するために設けられ、第2コイル16(16g)とRFタグ20(20e)とが上限液面レベルh
2を挟むように設けられる。
【0049】
液面レベルがRFタグ20(20d)の下方にあるとき、リーダライタ12はタグ情報を読み取ることができるため、従って、このとき液面レベルはRFタグ20(20d)の下方にあることを検出できる。液面レベルが第2コイル16とRFタグ20との間にあるとき、リーダライタ12はタグ情報を読み取りできない。即ち、液面レベルが下限液面レベルh1にあるとき、リーダライタ12はRFタグ20(20d)の情報を読み取りできないが、RFタグ20(20e)の情報を読み取りできる。液面レベルが上限液面レベルh2にあるとき、リーダライタ12はRFタグ20(20d)及びRFタグ20(20e)の情報を読み取りできない。こうして、液面レベルを把握できる。なお、一つの液面レベルだけを検出する場合は、タンク60内に1組の第2コイル16及びRFタグ20を設ければよい。
【0050】
一実施形態では、冷蔵、冷凍庫の開閉扉や、作業員が近寄れない真空環境にある開閉扉及び放射線環境にある開閉扉の開閉状態をモニタリングする場合又は在庫管理する場合に適用できる。この例では、扉側にRFタグ20を設け、扉枠に第2コイル16を設ける。第2コイル16がRFタグ20の侵入による磁場変化を読み取ることで、閉状態にあることを読み取り、磁場変化がないとき開状態にあることを読み取る。
【産業上の利用可能性】
【0051】
幾つかの実施形態によれば、RF通信システムにおいて、簡易な手段により通信距離を延長でき、リーダ側機器の配置の自由度を広げることができ、これによって、RF通信システムの用途を広げることができる。
【符号の説明】
【0052】
10(10A、10B、10C、10D) RF通信システム
12 リーダライタ
14(14A、14B、14a、14b、14c) コイルアセンブリ
15(15a、15b、15c) 第1コイル
16(16a、16b、16c、16d、16e、16f、16g) 第2コイル
17 隔壁
18(18a、18b) 被検出物
19(19a、19b) コンベアベルト
20(20a、20b、20c、20d、20e) RFタグ
22 電源
24 PLC
26 ディスプレイ
28 警報器
30 制御部
32 スイッチ
34 支持部材
36 棒状体
40 被搬送物
42 ロープ
44 バネ部材
46 駆動ローラ
50 張力調整装置
52 ガイドローラ
54 調整ローラ
60 タンク
60a 隔壁
A 第1位置(第1状態)
B 第2位置(第2状態)
Si 内部空間
h1 下限液面レベル
h2 上限液面レベル
R 交信範囲