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特許7332335アルミニウム建築部材及び改修排水ドレン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】アルミニウム建築部材及び改修排水ドレン
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/04 20060101AFI20230816BHJP
   E04G 23/03 20060101ALI20230816BHJP
   E04G 23/02 20060101ALI20230816BHJP
   E03C 1/12 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
E04D13/04 A
E04G23/03
E04G23/02 C
E03C1/12 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019096268
(22)【出願日】2019-05-22
(65)【公開番号】P2020190131
(43)【公開日】2020-11-26
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】永田 章
(72)【発明者】
【氏名】星河 浩介
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄輝
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-017073(JP,A)
【文献】特開2007-247295(JP,A)
【文献】実開平05-035929(JP,U)
【文献】特開2018-030141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E04G 23/03
E04G 23/02
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、前記アルミニウム板状構造体と前記アルミニウム中空管との溶接部とからなるアルミニウム建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
前記アルミニウム中空管は、A1070又はA6063のアルミニウム材から構成され、
前記周縁部の外壁と前記アルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した前記溶接部が形成されており、
前記溶接部が、前記周縁部及び前記アルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する、アルミニウム建築部材。
【請求項2】
前記アルミニウム板状構造体の板厚が、0.8mm以上1.0mm以下である請求項1に記載のアルミニウム建築部材。
【請求項3】
前記純度が99.996質量%以上である請求項1又は2に記載のアルミニウム建築部材。
【請求項4】
前記アルミニウム板状構造体が調質処理材である請求項1~3のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
【請求項5】
前記開口部が略円形であり、前記アルミニウム中空管が略円筒状である請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
【請求項6】
前記溶接部が前記アルミニウム板状構造体の前記表面から離間している請求項1~のいずれか1項に記載のアルミニウム建築部材。
【請求項7】
請求項1~のいずれか1項に記載の建築部材である改修排水ドレン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム建築部材及び改修排水ドレンに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミニウムは、建築部材、例えば建築物を補修するための建築部材として広く用いられている。そのような建築部材として、例えば以下のような改修排水ドレンが挙げられる。
【0003】
屋上、陸屋根、廊下、バルコニー等(以下、「屋上等」と呼ぶことがある)の建物平坦部に降った雨水を集めて竪樋等に流すために、屋上等には通常、排水ドレンが設けられている。
【0004】
排水ドレンには、屋上等の下に設けられた竪樋等に雨水を流す縦引き排水用の排水ドレンと、屋上等の横に設けられた竪樋等に雨水を引込む横引き排水用の排水ドレンとがある。
【0005】
排水ドレンは通常、鋳鉄、ステンレス又はアルミニウム等の材質でできており、焼き付け塗装等の塗装が施されているものもあり、屋上等に種々の方法で固定されている。
【0006】
しかしながら、時間の経過とともに、排水ドレン自体が劣化したり、排水ドレンを屋上等に固定してある接触場所等が浸食を受けたりして、雨水が正常に竪桶等に流れなくなったり、排水ドレンの周辺が汚くなったり、また排水ドレンの腐食部等から漏水したりすることがある。
【0007】
このような劣化した排水ドレンや排水ドレン周辺を補修するために、例えば特許文献1に開示されているように、改修排水ドレンが広く用いられている。図10に、改修排水ドレンの一例を示す。図10に示すように、改修排水ドレン50は、板状構造体52の略中央部に穴が開けられており、その穴から板状構造体52の片面側に中空管54が伸びている。改修排水ドレン設置前の排水ドレン下地の概略断面図を図11に、改修排水ドレンを設置した排水ドレン下地の概略断面図を図12に示す。図11に示すように、改修排水ドレン設置前の排水ドレン下地62には、例えば平坦部64及び窪み部66があり、排水口60を備える既設ドレン管68が配置されている。図12に示すように、中空管54を、補修しようとする排水ドレンの既設ドレン管68に差し込み、板状構造体52をハンマー等で叩くことにより、板状構造体52を排水ドレン下地62の形状になじませ、密着させることで排水ドレンを補修できる。そのため、排水ドレン下地62の形状に合うように容易に変形し、且つ密着する(すなわち、下地追従性が高い)板状構造体52が必要である。
【0008】
このような板状構造体としてアルミニウムを用いた改修排水ドレンが用いられている。例えば特許文献2には、改修排水ドレンの板状構造体として、アルミニウム金属メッシュを含み、当該アルミニウム金属メッシュをゴムで被覆したものが開示されている。
【0009】
特許文献3には、改修排水ドレンの板状構造体として工業用純アルミニウムを用いるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-101643号公報
【文献】特開2012-202048号公報
【文献】特開2015-59333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
改修排水ドレンのようなアルミニウム建築部材を施工する際、ハンマー等から板状構造体に加わった衝撃により、板状構造体と中空管との接合部(溶接部等)が破損し、板状構造体から中空管が外れることがある。そのため、変形加工がし易いことに加えて、接合部の強度が高いアルミニウム建築部材が求められている。
【0012】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、変形加工がし易く、接合部の強度が高いアルミニウム建築部材及び改修排水ドレンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の態様1は、
アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、前記アルミニウム板状構造体と前記アルミニウム中空管との溶接部とからなるアルミニウム建築部材であって、
前記アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
前記アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
前記周縁部の外壁と前記アルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した前記溶接部が形成されており、
前記溶接部が、前記周縁部及び前記アルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する、アルミニウム建築部材である。
【0014】
本発明の態様2は、前記純度が99.996質量%以上である態様1に記載の建築部材である。
【0015】
本発明の態様3は、前記アルミニウム板状構造体が調質処理材である態様1又は2に記載の建築部材である。
【0016】
本発明の態様4は、前記開口部が略円形であり、前記アルミニウム中空管が略円筒状である態様1~3のいずれかに記載のアルミニウム建築部材である。
【0017】
本発明の態様5は、前記溶接部が前記アルミニウム板状構造体の前記表面から離間している態様1~4のいずれかに記載のアルミニウム建築部材である。
【0018】
本発明の態様6は、態様1~5のいずれかに記載の建築部材である改修排水ドレンである。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、変形加工がし易く、接合部の強度が高いアルミニウム建築部材及び改修排水ドレンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、アルミニウム板状構造体の開口部の一例を示す概略的斜視図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材の断面の一例を示す概略的断面図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材の断面の一例を示す概略的断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材の断面の一例を示す概略的断面図である。
図5図5は、アルミニウム板状構造体と中空管とをろう付けして得られたアルミニウム建築部材の断面の一例を示す概略的断面図である。
図6図6は、下地追従性試験に用いたアルミニウム板状構造体の開口部を示す概略的断面図である。
図7図7は、下地追従性試験に用いた試験用治具を示す概略的断面図である。
図8図8は、下地追従性試験前のアルミニウム建築部材を示す概略的断面図である。
図9図9は、下地追従性試験後のアルミニウム建築部材を示す概略的断面図である。
図10図10は、改修排水ドレンの一例を示す概略斜視図である。
図11図11は、排水ドレン下地の一例を示す概略断面図である。
図12図12は、改修排水ドレンの中空管が、排水ドレン管の内部まで差し込まれた状態の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1.アルミニウム建築部材、改修排水ドレン
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材は、
アルミニウム板状構造体と、アルミニウム中空管と、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管との溶接部とからなり、
アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であり、
アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、
周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した溶接部が形成されており、
溶接部が、周縁部及びアルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する。
【0022】
本発明の実施形態に係る改修排水ドレンは、本発明の実施形態に係る建築部材の一態様である。
【0023】
本発明の実施形態に係る建築部材は、柔軟性に優れた高純度アルミニウムを用いることに加えて、アルミニウム板状構造体の表面から突出した開口部の周縁部の外壁がアルミニウム中空管の端部の内壁と溶接されており、溶接部は溶接凝固組織を有している。そのため、本発明の実施形態に係る建築部材は、変形加工がし易く、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管との接合強度が高い。以下、本発明の実施形態に係る建築部材として、改修排水ドレンを例にして、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材をより具体的に説明する。
【0024】
従来、改修排水ドレンの板状構造体として工業用純アルミニウムを適用しているものが提案されている。しかし、このような工業用純アルミニウムは、ホール・エルー法等の電気分解法により製造されるため、通常は純度が99質量%程度であり、すなわち1質量%に近い不純物元素を含む。例えば、JIS規格の合金番号A1100の純度は99質量%程度、A1050の純度は99.5質量%程度である。
なお、純度を示す質量パーセント表記における先頭から連続する9の数の後にナインの頭文字であるNを付して、例えば純度99.99質量%を「4N」と記載し、「フォーナイン」と呼ぶことがある。純度4Nのアルミニウムを「4N-Al」と記載する場合がある。
また、例えば、99.996質量%のような連続する9の後ろに9以外の数値を持つ純度の場合、当該9以外の数値を上述のNの後ろに付けて、「4N6」のように記載することがある。純度4N6のアルミニウムを「4N6-Al」と記載する場合がある。
【0025】
99質量%程度の純度の純アルミニウムは、通常1質量%程度の不純物元素を含んでいる。
【0026】
上述したように、劣化した排水ドレンを補修する際には、排水ドレン及びその周辺の形状に合わせて改修排水ドレンが隙間なく密接するように、改修排水ドレンを変形加工して使用する。99質量%程度の純度の工業用純アルミニウムは、不純物元素を多く含有するため強度が高く、ハンマー等での押叩きにて板材を下地に追従させることが困難である。さらに工業用純アルミニウムの中では強度が低い調質処理材を用いた場合でも、改修排水ドレンの材料として広く用いられている鉛と比較すると強度が高いために変形させにくく、また加工硬化により強度が上昇し易いため、十分に塑性変形させてドレン下地に追従させることが困難であった。そこで、低強度であり、塑性変形性が高く、且つ加工硬化しにくい素材が必要となることに着眼した。
【0027】
本発明者らは、鋭意検討した結果、99.99質量%以上の純度(4N以上)の高純度のアルミニウム材をアルミニウム板状構造体の素材として用いることが上述の課題を解決するために重要であることを見出した。
すなわち、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上である。これにより、アルミニウム板状構造体の強度を抑制し、塑性変形を容易にし、且つ加工硬化による強度上昇を小さくすることができる。
【0028】
なお、高純度アルミニウムの純度については、高純度に精製したアルミニウムを用いて、不純物の進入を抑制して溶解鋳造を行い、一旦高純度のアルミニウム鋳塊を得ると、その後に均質加熱処理、圧延、面削および切削等の加工、ならびに加工後の熱処理等の工程を経ても純度は実質的に変化しないことが広く知られている。このため、アルミニウム板状構造体を製造する際、いずれかの工程において測定したアルミニウムの純度を最終的に得られるアルミニウム板状構造体の純度として用いてよいことが広く知られている。また、予め組成が分かっている原料を用い、不純物の侵入を抑制して溶解鋳造を行った場合も当該原料の組成を最終的に得られるアルミニウム板状構造体の純度として用いてよいことが広く知られている。
【0029】
また、高純度アルミニウムの不純物元素として、典型的な元素は、鉄(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マンガン(Mn)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ガリウム(Ga)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、亜鉛(Zn)及びジルコニウム(Zr)の13元素であることが知られている。これら13元素の中でも、特にFe、Cu及びSiの量が多いことが知られている。
そこで、Fe、Cu及びSiの合計の含有量を用いて、高純度アルミニウムの純度を求めてよい。すなわち、高純度アルミニウムの純度[質量%]を、(100-(Fe、Cu及びSiの合計の含有量[質量%])としてよい。例えば、Fe、Cu及びSiの合計の含有量が0.01質量%以下である場合の高純度アルミニウムの純度を、99.99%以上(4N以上)としてよい。
【0030】
上記13元素の含有量の測定には、測定精度を確保できる既知の分析方法を用いてよい。例えば、グロー放電質量分析(GD-MS)又は固体発光分光分析により求めてよい。
【0031】
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、純度が、好ましくは99.996質量%以上(4N6以上)、より好ましくは99.999質量%以上(5N以上)、更に好ましくは99.9996質量%以上(5N6以上)、より更に好ましくは99.9999質量%以上(6N以上)である。不純物であるFe、Si及びCuの合計の含有量をより制限することにより、アルミニウム板状構造体の強度をより小さくし、塑性変形をより容易にし、加工硬化をより抑制することができる。そのため、例えば本発明に係るアルミニウム建築部材が改修排水ドレンである場合、その施工性をより向上することができる。
【0032】
アルミニウムの純度が高いほど、加工硬化による強度向上を抑制できるメカニズムは、明確ではないが、以下のように推測している。つまり、不純物濃度が高い一般的な金属の場合には、加工とともに転位と呼ばれる結晶欠陥が導入された際に、転位の移動が不純物元素で抑制されて(すなわち、ピン止めされて)蓄積し、転位が移動しにくくなる、つまり加工硬化していく。それに対し、アルミニウムの純度が99.99質量%以上になると、一般的な金属と比べて不純物元素が大幅に少ないため、転位の移動が不純物元素によって抑制される(ピン止めされる)効果が小さくなり、従って加工硬化が生じにくいと考えられる。
【0033】
また、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、純度が99.99質量%以上であるため、加工硬化による柔軟性の低下を抑制できることに加えて、優れた耐食性を有することができる。そのため、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材が改修排水ドレンである場合、長時間雨水に曝されても劣化しにくくなる。このような耐食性向上の効果は、純度を高めることによって、より顕著に発揮できる。従って、耐食性の効果を得る観点からも、純度は、好ましくは99.996質量%以上、より好ましくは99.999質量%以上、更に好ましくは99.9996質量%以上、より更に好ましくは99.9999質量%以上である。
【0034】
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、調質処理材であってよい。調質処理材とすることにより、製造時の圧延工程で導入された加工歪が緩和され柔軟性が向上する。そのため、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材が改修排水ドレンである場合、アルミニウム板状構造体が排水ドレンの補修部位の形状に合わせてより密着しやすくなり、改修排水ドレンの施工性をより向上することができる。
【0035】
アルミニウム中空管の化学成分組成はアルミニウム板状構造体と同一であってよく、あるいは異なってもよい。例えば、アルミニウム中空管は、A1070、A6063等のアルミニウム材から構成されるものであってよい。
【0036】
上述のように、高純度アルミニウム材を用いると、アルミニウム板状構造体の柔軟性を確保することができる。しかし、高純度アルミニウム材を用いるだけでは、アルミニウム建築部材を施工する際、ハンマー等からアルミニウム板状構造体に加わった衝撃により、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管との接合部が破損することがある。そこで、本発明者らは、鋭意検討した結果、上記のように加工硬化による強度上昇が小さい高純度アルミニウム材を用いることに加えて、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管との接合強度をより高めることができる形態で両者を接合することが上述の課題を解決するために重要であることを見出した。
すなわち、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材において、アルミニウム板状構造体は、表面と、当該表面から突出した周縁部で規定される開口部とを有し、当該周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とが溶接した溶接部が形成されており、溶接部が、周縁部及びアルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織を有する。
【0037】
以下、本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材について、図面を参照しながら説明する。但し、以下に説明する実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であって、本発明はこれに限定されるものではない。尚、以下の説明において参照する図面は、理解を容易にするために本発明の実施形態を概略的に示したものである。
【0038】
図1に示すように、アルミニウム板状構造体10は、開口部12と、表面16と、表面16から突出し、且つ開口部12を規定する周縁部14とを有する。開口部12は、例えば、アルミニウム板にプレス加工を施すことにより形成することができる。
【0039】
本発明の1つの実施形態に係るアルミニウム建築部材40を図2に示す。図2に示すように、アルミニウム板状構造体10の周縁部14の外壁は、アルミニウム中空管20の一方の端部22の内壁と溶接されて、溶接部30が形成されている。当該実施形態に係るアルミニウム建築部材40では、溶接部30は、アルミニウム板状構造体10の周縁部14に加え、表面16上に亘って形成している。
【0040】
本発明の他の実施形態に係るアルミニウム建築部材40を図3及び4に示す。図3及び4に示すように、図2のアルミニウム建築部材40と同様、アルミニウム板状構造体10の周縁部14の外壁は、アルミニウム中空管20の一方の端部22の内壁と溶接により接合しており、溶接部30が形成されている。
図3及び4に示されるアルミニウム建築部材40は、図2のアルミニウム建築部材40とは異なり、溶接部30は、アルミニウム板状構造体10の表面16上に形成していない。この場合、アルミニウム板状構造体10の周縁部14に隣接する表面16の部分が変形する際、溶接部30による影響を受けにくいため、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材40が改修排水ドレンである場合、下地追従性をより向上させることができる。従って、下地追従性をより向上させる観点から、溶接部30がアルミニウム板状構造体10の表面16から離間している、すなわち、アルミニウム板状構造体10の表面16と当該表面に近い溶接部30の端部とが離間していることが好ましい。つまり、溶接部30とアルミニウム板状構造体10との境界が周縁部14の外壁にあることが好ましい。離間距離は、アルミニウム建築部材のサイズ等を考慮して適宜選択してよく、例えば1mm以上であってよい。
【0041】
溶接部30は、溶接凝固組織32を有し、溶接凝固組織32は、周縁部14及びアルミニウム中空管20の端部22の少なくとも一方に形成されている。例えば図2及び3に示すように、周縁部14及びアルミニウム中空管20の端部22の両方に溶接凝固組織32が形成していてよく、また、例えば図4に示すように、中空管20のみに溶接凝固組織32が形成されていてもよい。
溶接の際に溶加材を用いた場合には、溶接部30は、アルミニウム板状構造体10及びアルミニウム中空管22の化学成分に加えて、溶加材の化学成分も含む。
なお、例えば図5に示すように、アルミニウム板状構造体10の周縁部14とアルミニウム中空管20の一方の端部22とをろう付けして得られたアルミニウム建築部材70は、溶接凝固組織32は形成されず、ろう材72で形成したろう付け部74により接合されている。
【0042】
アルミニウム板状構造体10の形状は、板状である限り特に限定されず、建築部材の用途及び設計等に応じて、適宜選択してよい。例えば、アルミニウム板状構造体10は、一辺200mm以上600mm以下の略四角形又は直径200mm以上600mm以下の略円形であってよい。
また、アルミニウム板状構造体10の開口部12及びアルミニウム中空管20の形状は特に限定されず、建築部材の用途及び設計等に応じて、適宜選択してよい。例えば、開口部12の形状を略円形とし、アルミニウム中空管20を円筒状としてよい。略円形の開口部12を有するアルミニウム板状構造体10に円筒状のアルミニウム中空管20を溶接して得られたアルミニウム建築部材40は、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材40が改修排水ドレンである場合、円筒状の既設ドレン管に好適に用いることができる。開口部12の形状が略円形である場合、その直径は例えば30mm以上200mm以下であってよい。
【0043】
アルミニウム板状構造体10の板厚は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上、更に好ましくは0.7mm以上である。これにより、例えば本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材40が改修排水ドレンである場合、改修排水ドレンを施工する際、アルミニウム板状構造体10がより破損しにくくなり、また雨水等による腐食による漏水がより生じにくくなる。
また、アルミニウム板状構造体10の板厚は、好ましくは2.0mm以下、より好ましくは1.8mm以下、更に好ましくは1.5mm以下である。これにより、例えば本発明の実施形態に係る建築部材40が改修排水ドレンである場合、アルミニウム板状構造体10の柔軟性を確保することがより容易となり、改修排水ドレンの施工性を向上させることがより容易となる。
【0044】
2.アルミニウム建築部材の製造方法
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材は、例えば、
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム板を準備する工程と、
アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出し、且つプレス加工等によりアルミニウム板状構造体に表面から突出した周縁部で規定される開口部を形成する切断加工工程と、
周縁部とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とを溶接する溶接工程と
を含む方法により製造することができる。
以下、各工程について説明する。
【0045】
(1)アルミニウム板を準備する工程
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム板を準備する。
【0046】
アルミニウム板を準備する方法は特に限定されないが、例えば、
純度が99.99質量%以上であるアルミニウム材からなる圧延素材を作製する工程と、
圧延素材を圧延してアルミニウム板を得る圧延工程と
を含む方法により、アルミニウム板を準備してよい。
【0047】
(1-1)圧延素材を作製する工程
上述した組成を有するアルミニウム材からなる圧延素材は、例えば以下のような方法で得ることができる。すなわち、後述する精製方法により得られる高純度アルミニウムに対して、不純物の侵入を抑制しつつ溶解した溶湯から所定形状の鋳塊を作製する。その後、鋳塊を所定形状に切削加工することで圧延素材を得ることができる。なお、圧延素材の作成方法は上述の方法に限定されるものではなく、従来公知の方法(例えばダイキャスティング、押出等)を用いてもよい。また、圧延素材に熱処理を施す工程(均質化熱処理工程)が含まれていてもよい。
【0048】
高純度アルミニウムの精製方法として、例えば偏析法及び三層電解法が挙げられる。
【0049】
偏析法は、アルミニウム溶湯の凝固の際の偏析現象を利用した純化法であり、複数の手法が実用化されている。偏析法の一つの形態としては、容器の中に溶湯アルミニウムを注ぎ、容器を回転させながら上部の溶融アルミニウムを加熱、撹拌しつつ底部より精製アルミニウムを凝固させる。偏析法により、純度99.99質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。
【0050】
三層電解法は、Al-Cu合金層に比較的純度の低い純アルミニウム等(例えば純度99.9質量%のJIS-H2102の特1種程度のグレード)を投入し、溶融状態で陽極とし、その上に例えばフッ化アルミニウム及びフッ化バリウム等を含む電解浴を配置し、陰極に高純度のアルミニウムを析出させる方法である。
三層電解法では純度99.999質量%以上の高純度アルミニウムを得ることができる。またアルミニウム中のFeの濃度を比較的容易に10質量ppm(0.001質量%)以下に抑制することができる。
【0051】
高純度アルミニウムの精製方法の例として、偏析法及び三層電解法を説明したが、高純度アルミニウムの精製方法はこれらに限定されず、帯溶融精製法、超高真空溶解精製法等、既知の他の方法及びそれらの組み合わせでもよい。
【0052】
アルミニウム板の純度は、好ましくは99.996質量%以上、より好ましくは99.999質量%以上、更に好ましくは99.9996質量%以上、より更に好ましくは99.9999質量%以上である。
【0053】
(1-2)アルミニウム板を得る圧延工程
圧延工程は、得られた圧延素材を圧延する工程であり、例えば圧延加工率90%以上の圧延を施す工程である。ここでいう圧延加工率は、圧延素材の厚さ(つまり、圧延前の厚さ)から圧延により得られた最終板材の厚さを差し引いた値(つまり、圧延により減少した厚さ)を、圧延素材の厚さで除した値の百分率であって、次式:
圧延加工率(%)=[(圧延前の厚さ-圧延後の厚さ)÷圧延前の厚さ]×100
により算出される。例えば厚さ10mmの圧延素材を圧延して厚さ1mmの板材とすれば、圧延加工率は90%となる。
【0054】
圧延素材に圧延加工を複数回行って最終板厚とすることが好ましい。圧延加工率が大きいほど生産効率を高められる場合が多いため、圧延加工率は90%以上が望ましい。なお、圧延加工率は高い程好ましいため、上限は特に設けない。
【0055】
圧延方法は、冷間圧延、熱間圧延のどちらでもよい。熱間圧延と冷間圧延を組み合わせることもでき、例えば複数回行われる圧延加工のうち、初期は熱間圧延とし、後半を冷間圧延とするような形態をとることもできる。
【0056】
(2)切断加工工程
アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出し、且つプレス加工等によりアルミニウム板状構造体に表面から突出した周縁部で規定される開口部を形成する。なお、プレス加工等によりアルミニウム板に当該開口部を形成した後、アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出してもよい。
【0057】
アルミニウム板状構造体をアルミニウム板から切り出す方法は特に限定されないが、例えばシャー切断、プレス加工等が挙げられる。
【0058】
(3)焼鈍工程
本発明の実施形態に係るアルミニウム建築部材の製造方法は、アルミニウム板又はアルミニウム板状構造体を焼鈍する焼鈍工程を含んでよい。焼鈍工程は、切断工程前のアルミニウム板に施してよく、あるいは、切断工程で未焼鈍のアルミニウム板を切断して得られたアルミニウム板状構造体に施してもよい。焼鈍工程により、アルミニウム板状構造体を調質処理材とすることができる。
焼鈍温度を300℃以上とすることで、より優れた柔軟性を有するアルミニウム板状構造体を得ることができる。一方、その温度を600℃以下とすることで、焼鈍の際、アルミニウム板同士又はアルミニウム板状構造体同士の貼り付きを抑制でき、外観品質の良好な建築部材が得られる。従って、焼鈍温度は、好ましくは300℃以上であり、好ましくは600℃以下である。
また、焼鈍時間を1時間以上とすることで、より柔軟性に優れた改修排水ドレン用板状構造体が得られる。焼鈍時間は長くしても特性上の問題は生じないが、コスト上の観点から24時間程度までで充分である。従って、焼鈍時間は、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上であり、好ましくは24時間以下、より好ましくは12時間以下である。
【0059】
(4)溶接工程
アルミニウム板状構造体の周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とを接触させた状態で溶接する。これにより、アルミニウム板状構造体の開口部とアルミニウム中空管の中空部とが流体連通する。
【0060】
溶接方法は、溶接凝固組織を有する溶接部が形成可能な方法であれば特に限定されず、例えばTIG溶接、レーザー溶接、MIG溶接、アーク溶接等が挙げられる。溶接部の接合強度を高める観点からは、レーザー溶接が好ましい。また、溶接の際、必要に応じて、適切な組成を有する溶加材を用いてよい。なお、ろう付け及びはんだ付けでは、溶接凝固組織を有する溶接部が形成されないため、アルミニウム板状構造体とアルミニウム中空管の接合が不十分であり、所望の接合強度が得られない。
【実施例
【0061】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は実施例により何ら制限されるものではない。
【0062】
1.アルミニウム建築部材の作製
偏析法により、純度99.996質量%の高純度アルミニウム(4N6-Al)を準備した。三層電解法により、純度99.999質量%以上の高純度アルミニウム(5N-Al、5N6-Al、6N-Al)を準備した。これらの高純度アルミニウムのFe、Si及びCuの含有量[質量%]、並びにその他の不純物元素(Ti、Mn、Mg、Ga、Ni、V、Zn、Cr、B、Zr)の含有量[質量%]を固体発光分析法により測定した結果を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上記高純度アルミニウムからなる圧延素材をそれぞれ準備し、圧延素材を厚さ20mmから室温で圧延し、厚さ0.6mm、0.8mm及び1.0mmのアルミニウム圧延板を得た。シャー切断により、アルミニウム圧延板から一辺130mmの略四角形であるアルミニウム板を得た。アルミニウム板について、(1)熱処理を施さないもの、(2)200℃で6時間熱処理を行ったもの、(3)430℃で6時間熱処理を行ったものを準備した。このようにして準備したアルミニウム板にプレス加工を施して、高さh(10mm)の周縁部(立ち上がり部)で規定される直径d(45mm)の略円形の開口部を有するアルミニウム板状構造体を得た。得られたアルミニウム板状構造体の断面の概略模式図を図6に示す。図6では、便宜のため、アルミニウム板状構造体を線で記載している。
【0065】
A1070のアルミニウム材からなるアルミニウム中空管(内径[mm]/外径[mm]が、47/50又は48/50)、及びA60603のアルミニウム材からなるアルミニウム中空管(内径[mm]/外径[mm]が、47/50又は48/50)を準備した。
【0066】
下記表2に示すように、実施例1~10及び比較例1~7のアルミニウム建築部材を準備した。実施例1~8のTIG溶接は、溶加材(材質:A5356)を溶接部位に添加しながら行った。
また、比較例1~7については、アルミニウム板状構造体の周縁部の外壁とアルミニウム中空管の一方の端部の内壁とをろう付け(ろう材の材質:A4000系)により接合した。比較例1~7において、ろう付け部は、アルミニウム板状構造体の表面に存在していた。
表2において、アルミニウム板状構造体の表面と溶接部との離間距離が「0mm」とあるものは、溶接部がアルミニウム板状構造体の表面に存在することを示す。
【0067】
【表2】
【0068】
2.接合部の組織観察
TIG溶接したアルミニウム建築部材(実施例1~8)、レーザー溶接したアルミニウム建築部材(実施例8及び9)、及びろう付けしたアルミニウム建築部材(比較例1~7)について、以下のようにして接合部の組織観察を行った。
【0069】
アルミニウム板状構造体の周縁部とアルミニウム中空管の端部と接合部とを含むようにアルミニウム建築部材から試料を切出し、試料を樹脂埋めした。樹脂埋めした試料から接合部の断面が見えるように観察面を切出し、観察面を鏡面研磨し、エッチングした後、光学顕微鏡により観察面の金属組織を観察した。
【0070】
その結果、TIG溶接及びレーザー溶接したアルミニウム建築部材の接合部の断面には、アルミニウム板状構造体の周縁部及びアルミニウム中空管の端部の少なくとも一方に溶接凝固組織が確認された。一方、ろう付けしたアルミニウム建築部材の接合部の断面には溶接凝固組織は確認されなかった。
【0071】
3.下地追従性試験
上記のようにして得られたアルミニウム建築部材について、以下のようにして下地追従性試験を行った。
【0072】
高さ80mm、直径200mmの硬質金属ブロック(材質:A5052合金)を用いて、図7に示すように、硬質金属ブロックの上面の略中心から下面に向かって球面状の凸部を設けた、高さLが10mm、20mm、30mm及び40mmである4つの試験用冶具を作製した。
【0073】
下地追従性試験前のアルミニウム建築部材の概略的断面を図8に示す。図8では、便宜のため、アルミニウム建築部材を線で記載し、接合部の記載を省略している。
まず、下地追従性試験前のアルミニウム建築部材40の高さHを測定した。高さHは、アルミニウム中空管20の接合していない他端部からアルミニウム板状構造体10の下面までの長さであり、当該他端部から引いた直線及び当該下面から引いた直線とアルミニウム中空管20の略中心線とがそれぞれ直交する。アルミニウム建築部材40の構造が均一でなく、測定箇所によって高さHが変動する場合には、高さHが最大となるような箇所で高さHを測定した。
【0074】
次に、高さLが10mmの試験用冶具の上面の略中心部を通り、且つ底面に略垂直な直線がアルミニウム中空管20の略中心線と概ね重なるように、アルミニウム建築部材40を試験用治具の上面に設置した。続いて、アルミニウム板状構造体10の上方から、アルミニウム板状構造体10の表面16をハンマー(ヘッド径:32mm、ヘッド重さ:約700g、全長:370mm)で毎分120回×2分間(計240回)叩き、アルミニウム板状構造体10を試験用治具の凸部の表面に追従させた。なお、ハンマーのヘッドを振り上げる際には、ハンマーのヘッドの高さが、試験用治具の上面から10~20cm以内の範囲となるようにし、ハンマーのヘッドの振り下ろしはヘッドの自重を利用して行い、アルミニウム板状構造体10の表面16全面を均等に叩いた。その際、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れた場合は接合強度が低い(×)と判定した。
次に、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが20mmの試験用冶具を用いて、上記と同様にしてアルミニウム板状構造体10の表面16をハンマーで叩き、接合強度が不良であるか否かを判定した。
高さLが20mmの試験用冶具用いた試験でアルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが30mmの試験用冶具を用いて、上記と同様のハンマー叩きを行い、接合強度が不良であるか否かを判定した。
高さLが30mmの試験用冶具用いた試験でアルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れなかったアルミニウム建築部材40について、高さLが40mmの試験用冶具を用いて、上記と同様のハンマー叩きを2セット行い、接合強度が不良であるか否かを判定した。高さLが40mmの試験用冶具を用いた試験後、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れていないものを接合強度が高い(〇)と判定した
【0075】
下地追従性試験後のアルミニウム建築部材の概略的断面を図9に示す。図9では、便宜のため、アルミニウム建築部材を線で記載し、接合部の記載を省略している。
まず、下地追従性試験後のアルミニウム建築部材40の高さHを測定した。高さHは、アルミニウム中空管20の接合していない他端部から、試験用治具の凸部の表面に追従したアルミニウム板状構造体10の下端部までの長さであり、当該他端部から引いた直線及び当該下端部から引いた直線とアルミニウム中空管20の略中心線とがそれぞれ直交する。アルミニウム建築部材40の構造が均一でない、あるいは試験用治具の凸部の表面へのアルミニウム板状構造体10の追従が均一でなく、測定箇所によって高さHが変動する場合には、高さHが最大となる箇所で高さHを測定した。
試験用治具の高さLをx軸とし、下地追従性試験後のアルミニウム建築部材40の高さHをy軸としてプロットしたグラフを作製し、最小二乗法により直線回帰して回帰直線を得た。回帰直線の傾き(以下、「変化率」と呼ぶことがある)は、下地追従性の指標であり、変化率が大きい程下地追従性が良好であり、変化率が0.35以上のものを下地追従性に優れていると判定した。
下地追従性試験の結果を表3に示す。
【0076】
【表3】
【0077】
以上の結果から分かるように、アルミニウム板状構造体10の周縁部14の外壁とアルミニウム中空管20の一方の端部の内壁とが溶接されている実施例1~10のアルミニウム建築部材は、下地追従性試験後、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れず、接合強度に優れていた。また、実施例1~10のアルミニウム建築部材は、いずれも変化率が0.35以上であり、下地追従性に優れていた。更に、溶接部がアルミニウム板状構造体の表面から離間している実施例9は、溶接部がアルミニウム板状構造体の表面から離間していない実施例10と比較して変化率が大きく、より下地追従性に優れていた。
一方、アルミニウム板状構造体10の周縁部14とアルミニウム中空管20の一方の端部の内壁とをろう付けで接合した比較例1~7は、下地追従性試験後、アルミニウム中空管20がアルミニウム板状構造体10から外れ、接合強度が劣っていた。
【符号の説明】
【0078】
10、70:アルミニウム板状構造体
12:開口部
14:周縁部
16:表面
20:アルミニウム中空管
22:端部
30:溶接部
32:溶接凝固組織
40:アルミニウム建築部材
50:改修排水ドレン
52:板状構造体
54:中空管
60:排水口
62:排水ドレン下地
64:排水ドレン下地平坦部
66:排水ドレン下地窪み部
68:既設ドレン管
72:ろう材
74:ろう付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12