(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-15
(45)【発行日】2023-08-23
(54)【発明の名称】疎水性及び疎氷性コーティング
(51)【国際特許分類】
C03C 17/245 20060101AFI20230816BHJP
C23C 16/42 20060101ALI20230816BHJP
B32B 9/00 20060101ALI20230816BHJP
【FI】
C03C17/245 Z
C23C16/42
B32B9/00 A
(21)【出願番号】P 2021556224
(86)(22)【出願日】2020-02-19
(86)【国際出願番号】 US2020018886
(87)【国際公開番号】W WO2020190441
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-11-15
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】バジャージ, ラジーブ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, メイ
(72)【発明者】
【氏名】パディ, ディーネッシュ
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-319871(JP,A)
【文献】特開平11-129382(JP,A)
【文献】特表2003-514746(JP,A)
【文献】米国特許第05665424(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 15/00-23/00
C23C 16/00-16/56
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティングを堆積する方法であって、
基板上に前記コーティングを堆積すること
を含み、ここで、
前記基板が可視光に対して少なくとも部分的に透明であり、
前記コーティングが、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含み、
前記コーティングが、前記基板と前記コーティングとの間に界面が形成されるように堆積され、
前記コーティングにおけるCの濃度が、前記界面よりも前記コーティングの上面でより
高く、
前記コーティングの前記上面が、前記コーティングの前記界面とは反対側に
配置され、
前記コーティングが90°から120°の水接触角を有し、かつ
前記コーティングの屈折率と前記基板の屈折率との差は0.2未満である、
方法。
【請求項2】
前記コーティングにおけるCの濃度が、
3原子パーセン
トから
25原子パーセント
の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板がSi及びOを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記コーティング中のCの濃度の変化が前記界面と前記上面との間で実質的に線型である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記コーティングの上に第2の基板を形成することをさらに含み、前記第2の基板と前記コーティングとは、ゼロ以外の距離又は中間層によって隔てられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の基板上に第2のコーティングを形成することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングが、5GPaから40GPaのバルク弾性率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングが、1GPaから10GPaの硬度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングにおけるCの濃度は、前記コーティングが前記界面から前記上面まで堆積されるにつれて高周波電力を低減することにより高められる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コーティングを堆積する方法であって、
可視光に対して少なくとも部分的に透明な基板をケイ素含有前駆体、酸素含有前駆体及び炭素含有前駆体を含むガス混合物に曝すことにより、前記基板上に前記コーティングを堆積すること
、
前記ガス混合物に高周波電力を適用すること、
前記基板上に前記コーティングの界面を形成すること、ここで、前記
界面が、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含み、
並びに
前記コーティングにおけるCの濃度が前記界面よりも前記コーティングの上面でより高くなるように、前記コーティングを前記界面から前記上面まで堆積する間に前記ガス混合物に適用される前記高周波電力を低減させて、前記Cの濃度を高めること
を含み、
前記コーティングは、該コーティングの前記上面に配置される複数の水滴と前記上面との水接触角が90°から120°になるように堆積され、かつ
前記コーティングの屈折率と前記基板の屈折率との差は0.2未満である、方法。
【請求項11】
前記コーティングにおけるCの濃度が、3原子パーセントから25原子パーセントの範囲である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記高周波電力が、400Wから800Wの間である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティングの厚さ
が1000Åか
ら10μmである、請求項
10に記載の方法。
【請求項14】
前記基板
をガス混合物に曝すことが、化学気相堆積(CVD)を含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項15】
層状構造であって、
基板;及び
前記基板上に配置されたコーティング
を含み、ここで、
前記基板が可視光に対して少なくとも部分的に透明であり、
前記コーティングが、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含み、
前記コーティングが、前記基板と前記コーティングとの間に界面が形成されるように堆積され、
前記コーティングにおけるCの濃度が、前記界面よりも前記コーティングの上面でより
高く、
前記コーティングの前記上面が、前記コーティングの前記界面とは反対側に堆積さ
れ、
前記コーティングの前記上面に配置される複数の水滴と前記上面との水接触角が90°から120°であり、かつ
前記コーティングの屈折率と前記基板の屈折率との差は0.2未満である、
層状構造。
【請求項16】
前記基板が車両用のフロントガラスを含む、請求項
15に記載の層状構造。
【請求項17】
前記コーティング中のCの濃度の変化が、前記界面と前記上面との間で実質的に線型である、請求項
15に記載の層状構造。
【請求項18】
前記コーティングにおけるCの濃度が
、3原子パーセントか
ら25原子パーセントの範囲である、請求項
15に記載の層状構造。
【請求項19】
前記基板がSi及びOを含む、請求項
15に記載の層状構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、方法及び製造品、より詳細には、疎水性及び疎氷性コーティングを堆積する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス表面は本質的に親水性であり、よって、ガラス表面は水を引き付ける傾向があり、その結果、表面に水膜又は氷膜の形成をもたらす。雪の降る冬の天候では、自動車及び他の車両は氷を蓄積し、これは、フロントガラス、窓、及び他の観察面においてとりわけ問題になる。さらには、雨の間、フロントガラスに形成される水膜は運転中の視界を損なう。
【0003】
この問題に対処するために、市場における現在の解決策は、雪を溶かすのに役立つ加熱されたフロントガラスワイパー、及び雪の形成を防ぐためにフロントガラスを覆うプラスチックのシートを含む。しかしながら、加熱されたフロントガラスワイパーは大量のエネルギーを消費し、除雪に長い時間を要し、最終的に除雪する前に雪をしばしば固い氷に変えてしまう。プラスチックシートカバーは繰り返し適用及び除去する必要があり、下に氷を閉じ込めてしまうことがよくある。
【0004】
一時的な疎水性コーティングを提供することによって氷及び雪の蓄積を防ぎ、フロントガラス又は他のガラス表面への氷及び雪の付着を低減する、シリコーンをベースとした液体配合物が当技術分野で見出されている。これらのコーティングの欠点の1つは、コーティングが一時的なものであり、数週間ごとに再塗布しなければならず、コスト及び時間を要することである。
【0005】
したがって、フロントガラス及び他のガラス表面の長持ちする疎水性及び疎氷性コーティングが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、基板上にコーティングを堆積することを含む、コーティングを堆積する方法が提供され、該コーティングはケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含む。基板は可視光に対して少なくとも部分的に透明である。コーティングは、基板とコーティングとの間に界面が形成されるように堆積される。コーティングにおけるCの濃度は、界面よりもコーティングの上面の方がより大きい。コーティングの上面は、コーティングの界面とは反対側に配置される。
【0007】
別の実施形態では、基板上にコーティングを堆積することを含む、コーティングを堆積する方法が提供され、該コーティングは、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含む。基板は可視光に対して少なくとも部分的に透明である。コーティングは、基板とコーティングとの間に界面が形成されるように堆積される。コーティングにおけるCの濃度は、界面よりもコーティングの上面の方がより大きい。コーティングの上面は、コーティングの界面とは反対側に配置される。コーティングにおけるCの濃度は、約3原子パーセントから約25原子パーセントの範囲である。
【0008】
別の実施形態では、基板及び該基板上に配置されたコーティングを含む、層状構造が提供される。コーティングは、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含む。基板は可視光に対して少なくとも部分的に透明である。コーティングは、基板とコーティングとの間に界面が形成されるように堆積される。コーティングにおけるCの濃度は、界面よりもコーティングの上面の方がより大きい。コーティングの上面は、コーティングの界面とは反対側に配置される。
【0009】
層状構造におけるコーティングの上面は、本質的に疎水性及び疎氷性であり、したがって、コーティングは、層状構造の表面での水又は氷の膜の濡れを少なくとも部分的に防止する。コーティングは定期的に交換する必要がなく、したがって、フロントガラス又は窓などの基板を再処理する必要がない。
【0010】
本開示の上記の特徴を詳細に理解できるように、その一部が添付の図面に示されている実施形態を参照することにより、上に簡単に要約されている本開示のより詳細な説明を得ることができる。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態も許容可能であるため、付随する図面はこの開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、本開示の範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態による、基板上にコーティングを堆積するための方法動作のフロー図
【
図2B】一実施形態による、コーティングの堆積中の
図2Aの層状構造を示す図
【
図2C】一実施形態による、後処理を受けている
図2Bの層状構造を示す図
【
図3】一実施形態による、自動車内における処理されたフロントガラスを示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
理解を容易にするため、可能な場合には、図面に共通する同一の要素を示すために同一の参照番号が用いられる。一実施形態の要素及び特徴は、さらなる記載がなくとも、他の実施形態に有益に組み込むことができることが想定されている。
【0013】
本明細書に提供される本開示の実施形態は、基板をコーティングする方法、及び基板をコーティングすることによって生成される層状構造を含む。ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含むコーティングが基板上に堆積される。コーティングの上面は本質的に疎水性及び疎氷性である。コーティングのCドーピングには変動があり、したがって、層状構造を通る可視光の不要な反射、屈折、又は拡散は、コーティングによる悪影響を受けない。加えて、コーティングを通じたCドーピングの段階的な変動は、表面とコーティングとの間の界面での良好な接着を可能にする。本明細書に提供される本開示の実施形態は、とりわけ、可視光に対して透明な基板上にコーティングを堆積する方法に有用でありうるが、これに限定されない。
【0014】
本明細書で用いられる場合、「約」という用語は、公称値から±10%の変動を指す。このような変動は、本明細書に提供される任意の値に含まれうることが理解されるべきである。
【0015】
図1は、一実施形態による、層状構造を生成するために基板上にコーティングを堆積させるための方法動作100のフロー図である。該方法動作は、
図1及び2A~Cに関連して説明されているが、当業者は、方法動作を任意の順序で実施するように構成された任意のシステムが、本明細書に記載される実施形態の範囲内に入ることを理解するであろう。
図2Aは、一実施形態による層状構造200を示している。層状構造200は基板205を含む。基板205は、一実施形態によるケイ素(Si)及び酸素(O)を含む。基板205は、可視光のスペクトルの少なくとも一部の通過を可能にする。基板はガラスを含みうる。基板205は、球面収差又は色収差などの画像の任意の収差を拡大又は補正するためのレンズを含めた、任意の種類の光学レンズでありうる。基板205は、眼鏡又はゴーグル用のレンズでありうる。基板205は、層状構造とすることができ、赤外線、紫外線などの光のスペクトルを部分的又は完全に遮断するための層又は他の特徴を含むことができる。
【0016】
基板205は、一実施形態によれば、車両用のフロントガラスである。基板205は、一実施形態によれば、車両用のサイドウィンドウ又はリアウィンドウである。車両は、自動車、トラック、オートバイ、ボート、船、スクーター、列車、水陸両用車、航空機、飛行機、ヘリコプター、宇宙船などでありうるが、これらに限定されない。基板205は、一実施形態によれば、建物、恒久的構造、又は一時的構造のための窓である。
【0017】
図1及び2A~Cを参照すると、方法は、コーティング215が基板205上に堆積される動作110から始まる。
図2Bは、一実施形態による、コーティング215の堆積中の
図2Aの層状構造200を示している。コーティング215は、限定はしないが、原子層堆積(ALD)、物理的気相堆積(PVD)、及び化学気相堆積(CVD)などの任意の従来の堆積プロセス210によって堆積することができる。堆積プロセス210は、任意の従来の堆積チャンバ(図示せず)内で実施することができる。前駆体は、炭素、酸素、及びケイ素を含む任意の前駆体又は前駆体の組合せでありうる。堆積プロセス210は、約300℃から約450℃の間の温度で実施することができる。該プロセスは、約60秒から約10分の間実施することができる。高周波(RF)は、約400Wから約800WのRF電力で供給することができる。チャンバ(図示せず)の圧力は約5Torrから約10Torrで維持されうる。アルゴン(Ar)又はヘリウム(He)などの中性ガスを、約2000sccmから約5000sccmの流量で、堆積中に並流させることができる。
【0018】
一実施形態では、堆積プロセス210はCVDであり、前駆体はオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、メタン(CH3)、及び酸素ガス(O2)であり、酸素ガスは約50sccmから約200sccmの流量で供給され、ヘリウムガス(He)は約2000sccmから約5000sccmの流量で堆積中に並流され、チャンバ(図示せず)の圧力は約5Torrから約10Torrで維持することができ、プロセスは、約350℃の温度で、約400Wから約800WのRF電力を印加して実行される。コーティング215の炭素は、約4000Å/分から約5000Å/分の速度で堆積される。より高いRF電力は、より低い炭素含有量をもたらし、したがって、一実施形態では、界面225の成長は、より高いRF電力で実行され、その後、堆積の過程で徐々に減少して、コーティング215の炭素含有量の変化を形成する。
【0019】
コーティング215は、ケイ素(Si)、酸素(O)、及び炭素(C)を含む。コーティングは水素(H)も含みうる。界面225は、コーティング215と基板205との間の化学結合によって形成される。Cは、末端メチル基(-CH3)を形成することにより、Oを置換し、Siに結合することができる。Cは、Si原子間にメチレンブリッジ(-CH2-)を形成することにより、結合したSi-Oネットワーク内のOを置き換えることができ、あるいは、Cは、結合したSi-Oネットワーク内のSiをCとして置き換えることができる。前述のC基はまた、コーティング215の上面215Sに配置され、このC基は、上面に配置された水滴の接触角を低減する。上面215Sは、一実施形態によれば、水滴の水接触角が約90°から約120°の間になるように、本質的に疎水性である。上面215Sもまた、氷が上面に形成されることを少なくとも部分的に防止するように、疎氷性である。
【0020】
疎水性及び疎氷性の表面は、水又は氷の膜の成長を介して水及び氷が表面に付着することを少なくとも部分的に防止し、水及び氷の除去をより容易にすることが知られている。水滴の水接触角が約90°から約120°の間にあると、氷又は水の約50%が材料の表面に付着する。したがって、上面215Sは、水膜又は氷膜の濡れを低減する。上面215Sは、堆積時に疎水性及び疎氷性であり、したがって、再処理する必要がなく、その結果、ユーザのコスト及び時間の削減をもたらす。
【0021】
コーティング215は、一実施形態によれば、約0原子百分率超のCから約40原子百分率未満のC、例えば、約3原子百分率のCから約25原子百分率のC、好ましくは約2原子百分率のCから約12原子パーセントの炭素を含む。コーティング215のC濃度は、コーティングにおけるCの濃度がコーティングの上面215Sよりも界面225で大きくなるように、可変であり、ここで、コーティングの上面はコーティングの界面とは反対側に配置されている。コーティング215中のC濃度の変化は、一実施形態によれば、界面225と上面215Sの間で実質的に線型である。Cの濃度の漸進的な変化は、コーティング215の屈折率の滑らかな変化を可能にし、大量の光が反射、屈折、回折、又は他の望ましくない変化をするのを防ぎ、したがって層状構造200を通して妨げられない視界を提供する。したがって、基板205と層状構造200の屈折率は類似しうる。
【0022】
Cの濃度の漸進的な変化は、基板205とコーティング215との間のきれいな界面225を可能にし、層状構造200を通る光の望ましくない反射、屈折、又は回折を引き起こす、界面における空孔又は格子間原子の形成を防ぐ。このように、コーティングにおけるCの濃度215は、約25原子百分率未満のC、好ましくは約3原子百分率のCから約12原子百分率のCである、上面215Sにおける所望の値に達するまで徐々に増加し、上面に存在するC基はコーティングの疎水性及び疎氷性に寄与する。コーティング215の厚さは、一実施形態によれば、約100Åから約10μm、好ましくは約100Åから約5μmである。より薄いコーティング215は、ガラスの光学的性能又は「シースルー」性能への影響が最小限であることから好ましいが、コーティングが薄すぎると、侵食若しくはフロントガラスワイパー又は他の洗浄動作による機械的摩耗に起因して、時間経過とともに摩耗する可能性があるため、上述した厚さでコーティングを成長させることにつながる。
【0023】
層状構造200は、許容可能なバルク弾性率及び硬度を有し、その結果、層状構造は、該層状構造の目的にとって許容可能な強度、例えば、車両のフロントガラス又はサイドウィンドウとして使用するのに十分な強度を有する。フロントガラス又は窓としての層状構造の使用に応じて、層状構造200のバルク弾性率は、約5GPaから約40GPaの間で変化させることができ、層状構造の硬度は、約1GPaから約10GPaの間で変化させることができる。コーティング215の屈折率は、基板205に類似しているか、あるいはその差が理想的な光学性能に対して最小である。ガラスの屈折率は約1.45であり、コーティング215の屈折率はより低いことが予想され、総膜厚を最小限に抑えつつ屈折率を徐々に変化させることにより、理想的な光学性能がもたらされる。屈折率の最大差は、層状構造200の所望の光学性能を維持するために、約0.2未満に維持する必要がある。
【0024】
任意選択的な動作120において、後処理220が層状構造200に適用される。後処理220は、順次又は同時に実行される、アニール、ベーク、化学エッチング、化学洗浄プロセス、又は上記の任意の組合せを含みうる。
図2Cは、一実施形態によれば、後処理220を受けている
図2Bの層状構造200を示している。後処理220は、コーティング215の均一性を改善し、コーティング、基板205、及び界面225内の原子空孔を修復し、基板とコーティングとの間のより滑らかな界面を確実にし、上面215Sの滑らかさを改善し、これらのすべてが層状構造200の光学的及び構造的特性を改善する。
【0025】
層状構造200は、基板205及びコーティング215の複数の層を含みうる。層状構造200上に膜を成長させることができ、その膜が、方法100を実施することができる新しい基板205となる。このようにして、方法100を繰り返し実施することができ、その結果、基板205及びコーティング215の複数の層がもたらされる。例えば、二重窓又はフロントガラスのように、層状構造200の繰り返しの間に、減圧間隙又は空隙が存在しうる。層状構造200は積層ガラスとすることができ、基板205及びコーティング215の繰り返しは中間層によって分離することができ、その結果、層状構造は、粉砕されたときに一緒に保持される。中間層は、ポリビニルブチラール(PVB)、エチレン-酢酸ビニル(EVA)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などを含みうる。
【0026】
図3は、一実施形態による、車両300における処理されたフロントガラス326を示している。
図3は、車両300が自動車であることを示しているが、車両は、上記の車両のみに限定されず、上記の車両のいずれかであってもよい。フロントガラスフレーム354は、車両300の開孔に配置され、処理されたフロントガラス326は、締め具360によってフロントガラスフレームに取り付けられる。締め具360は、例えばクリップ、モールディング、ウェザーストリッピングなど、当技術分野において車両300にフロントガラスを固定するために当技術分野で用いられる任意のものでありうる。基板205は従来のフロントガラスであり、したがって、一実施形態によれば、処理されたフロントガラス326は層状構造200であり、コーティング215は、処理されたフロントガラス表面の疎水性及び疎氷性を増加させる。コーティング215は、氷及び雪の蓄積を防止し、フロントガラスワイパーから氷及び雪をより容易に除去することができるようにする。コーティングの薄い厚さはフロントガラスを車両に固定する多くの設計を妨げないことから、従来のフロントガラスの厚さに比べてコーティング215の薄い厚さは、フロントガラスの再設計又はさらなる作業を必要とせずに、コーティングを従来のフロントガラスに適用することができる。
【0027】
上述したように、コーティング215が基板205に堆積されて層状構造200を成す。基板205はフロントガラスとすることができ、したがって、層状構造200は処理されたフロントガラス326である。コーティング215はケイ素、酸素、及び炭素を含み、コーティングの炭素ドーピングは、界面225とコーティングの上面215Sとの間で増加する。
【0028】
コーティング215の上面215Sは、本質的に疎水性及び疎氷性であり、コーティングの再塗布を必要とせずに、層状構造200上の水又は氷膜の濡れを低減する。コーティング215は、フロントガラス又は窓などの従来のガラス基板205上に堆積させることができる。コーティング215内の炭素濃度の漸進的な変化は、屈折率のゆっくりとした変化をもたらし、これにより、層状構造200を通過する光の望ましくない屈折、反射、又は回折が低減する。
【0029】
上記は本発明の実装形態を対象としているが、本発明の基本的な範囲から逸脱することなく、本発明の他の実装形態及びさらなる実装形態を考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。