IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニコンの特許一覧

特許7332986エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置
<>
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図1
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図2
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図3
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図4
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図5
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図6
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図7
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図8
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図9
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図10
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図11
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図12
  • 特許-エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】エンコーダ及びその組立方法、駆動装置、並びに車両用操舵装置
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20230817BHJP
   G01D 5/347 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01D5/245 110J
G01D5/347 110A
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020518308
(86)(22)【出願日】2019-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2019018311
(87)【国際公開番号】W WO2019216327
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018091018
(32)【優先日】2018-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100098165
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 聡
(72)【発明者】
【氏名】東海林 宏
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 昭宏
【審査官】吉田 久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-300155(JP,A)
【文献】特開2009-300154(JP,A)
【文献】特開2014-25713(JP,A)
【文献】特開2008-148457(JP,A)
【文献】特開2013-64684(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0163333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/00-5/38
G01B 7/00-7/34、
11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸に取り付けられて、前記回転軸の回転情報を検出するためのパターンが形成された回転体と、
前記回転体の前記パターンを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記回転軸の前記回転情報を求める演算部と、を備えるエンコーダであって、
前記回転体は、前記回転軸の回転方向に沿って、それぞれ前記パターンの一部が形成された複数のパーツ部に分割され
前記検出部は前記パターンに光を照射して、前記パターンで反射された前記光を検出し、
前記パターンは、前記光を反射する複数の第1反射部と、前記第1反射部より前記光の反射量が少ない複数の第1非反射部とを有し
前記回転体の複数の前記パーツ部の境界部は前記光を反射する第2反射部内、または前記光の反射量が前記第1反射部より少ない第2非反射部内に設けられる
エンコーダ。
【請求項2】
前記回転方向における前記第1反射部の最小の幅をdとしたとき、前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、前記回転方向における幅がdの前記第2反射部内に設けられる請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項3】
前記回転方向における前記第1非反射部の最小の幅をd、前記第1反射部と前記第1非反射部との最小の繰返し周期をPとしたとき、
前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、前記回転方向における幅が(d+n・P)(nは0以上の整数)の前記第2非反射部内に設けられる請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項4】
前記回転方向における前記第1非反射部の最小の幅をd、前記第1反射部と前記第1非反射部との最小の繰返し周期をPとしたとき、
前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、幅が(d+n・P)(nは0以上の整数)の隙間である前記第2非反射部内に設けられる請求項1に記載のエンコーダ。
【請求項5】
前記検出部は、前記パターンを検出する第1検出部と、前記第1検出部に対して前記回転軸の回転方向に所定間隔離して配置される第2検出部とを有し、
前記第2検出部は、前記第1検出部の第1検出領域内に前記回転体の分割位置が含まれているときに、前記パターンを検出可能な第2検出領域を有し、
前記演算部は、前記第1及び第2検出部の検出結果に基づいて、前記回転軸の前記回転角情報を求める請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項6】
前記回転体は、前記回転軸の前記回転方向に沿って等角度で3分割され、前記第1及び第2検出部は、前記回転軸の回転中心に関して対称な位置に配置されている請求項に記載のエンコーダ。
【請求項7】
前記回転体は、前記回転軸の前記回転方向に沿って等角度で2分割され、前記第1及び第2検出部は、前記回転軸の回転中心に関して非対称な位置に配置されている請求項に記載のエンコーダ。
【請求項8】
前記回転体は、前記回転軸の前記回転方向に沿って等角度で3つのパーツ部に分割され、前記第1及び第2検出部は、前記パーツ部の開き角より小さい角度間隔で配置されている請求項に記載のエンコーダ。
【請求項9】
前記パターンは、前記回転軸の前記回転方向の絶対位置を示すアブソリュートパターンを有し、
前記演算部は、前記第1及び第2検出部で検出される前記アブソリュートパターンの検出結果、及び予め記憶してある前記回転体の分割位置の情報を用いて、前記第1検出部の検出結果と、前記第2検出部の検出結果とを切り替えて、前記回転軸の前記回転情報を求める請求項から請求項のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項10】
前記演算部は、前記第1検出部の検出信号の大きさが所定値よりも小さくなったときに、前記第1検出部の検出結果から前記第2検出部の検出結果に切り替えて前記回転軸の前記回転情報を求める請求項から請求項のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項11】
複数の前記パーツ部は、それぞれ前記パターンの一部が形成されたスケール部と、前記回転軸に対する固定機構を有するハブ部とを有する請求項1から請求項10のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項12】
前記回転体は前記回転軸の回転方向に沿って分割された第1パーツ部及び第2パーツ部を有し、
前記第1パーツ部と前記回転軸とを前記回転方向に沿って位置決めする位置決め部と、
前記第2パーツ部と、前記第1パーツ部及び前記回転軸の少なくとも一方とを連結する連結部とを備える請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項13】
前記回転軸は中空部材である請求項1から請求項12のいずれか一項に記載のエンコーダ。
【請求項14】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のエンコーダと、
前記回転軸の回転角を制御する回転角制御部と、
前記エンコーダの検出結果を用いて前記回転角制御部を制御する制御部と、を備える駆動装置。
【請求項15】
請求項1から請求項13のいずれか一項に記載のエンコーダの組立方法であって、
複数の前記パーツ部及び前記検出部を準備することと、
前記回転軸に前記回転軸の側面方向側から複数の前記パーツ部を取り付けることと、
複数の前記パーツ部と前記検出部とを位置決めすることと、
前記回転軸を回転可能に支持する支持部に前記検出部を取り付けることと、
を含むエンコーダの組立方法。
【請求項16】
複数の前記パーツ部と前記検出部とを位置決めすることは、
前記回転体及び前記検出部に係合する係合部を有するとともに、前記回転軸の前記回転方向に沿って複数に分割された位置決め工具を前前記回転軸の側面に取り付けることと、
前記位置決め工具を用いて、複数の前記パーツ部と前記検出部とを位置決めすることと、を含む請求項15に記載のエンコーダの組立方法。
【請求項17】
回転軸と、
前記回転軸の一端部に設けられた操作部と、
前記回転軸の他端部側に連結されたアクチュエータと、
前記アクチュエータによって駆動される1対の駆動輪と、
前記回転軸の回転情報を検出するエンコーダと、
前記エンコーダの検出結果に基づいて前記アクチュエータの動作を制御する制御装置と、を備える車両用操舵装置であって、
前記エンコーダは、
前記回転軸に取り付けられて、前記回転軸の回転情報を検出するためのパターンが形成された回転体と、
前記回転体の前記パターンを検出する検出部と、
前記検出部の検出結果に基づいて、前記回転軸の前記回転情報を求める演算部と、を有し、
前記回転体は、前記回転軸の回転方向に沿って、それぞれ前記パターンの一部が形成された複数のパーツ部に分割され、
前記検出部は前記パターンに光を照射して、前記パターンで反射された前記光を検出し、
前記パターンは、前記光を反射する複数の第1反射部と、前記第1反射部より前記光の反射量が少ない複数の第1非反射部とを有し、
前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は前記光を反射する第2反射部内、または前記光の反射量が前記第1反射部より少ない第2非反射部内に設けられる
車両用操舵装置。
【請求項18】
前記回転方向における前記第1反射部の最小の幅をdとしたとき、前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、前記回転方向における幅がdの前記第2反射部内に設けられる請求項17に記載の車両用操舵装置。
【請求項19】
前記回転方向における前記第1非反射部の最小の幅をd、前記第1反射部と前記第1非反射部との最小の繰返し周期をPとしたとき、
前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、前記回転方向における幅が(d+n・P)(nは0以上の整数)の前記第2非反射部内に設けられる請求項17に記載の車両用操舵装置。
【請求項20】
前記回転方向における前記第1非反射部の最小の幅をd、前記第1反射部と前記第1非反射部との最小の繰返し周期をPとしたとき、
前記回転体の複数の前記パーツ部の少なくとも一つの境界部は、幅が(d+n・P)(nは0以上の整数)の隙間である前記第2非反射部内に設けられる請求項17に記載の車両用操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンコーダ、エンコーダの組立方法、エンコーダを備えた駆動装置、及びエンコーダを備えた車両用操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボット及び工作機械等の駆動部に用いられるモータの回転角の制御を高精度に行うためにエンコーダ(例えば、ロータリーエンコーダ)が使用される。エンコーダは、モータの回転軸に取り付けられて所定のパターンが形成された輪帯状の信号板と、そのパターンを検出する検出部とを有する。
信号板は、回転軸の軸方向から挿入された後、回転軸に固定され、検出部は、回転軸を回転可能に支持する支持部材に取り付けられる(例えば、引用文献1参照)。
【0003】
最近では、エンコーダはより様々な構造の駆動部に取り付けられるようになっている。例えば、一端部に操作部が設けられ、他端部が他のモータに連結された回転軸を有する駆動部に対し、エンコーダを取り付けたり、又は取り外したりすることが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-156563号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明の第1の態様によれば、回転軸に取り付けられて、その回転軸の回転情報を検出するためのパターンが形成された回転体と、その回転体のパターンを検出する検出部と、その検出部の検出結果に基づいて、その回転軸の回転情報を求める演算部と、を備えるエンコーダであって、その回転体は、その回転軸の回転方向に沿って、それぞれそのパターンの一部が形成された複数のパーツ部に分割され、その検出部はそのパターンに光を照射して、そのパターンで反射されたその光を検出し、そのパターンは、その光を反射する複数の第1反射部と、その第1反射部よりその光の反射量が少ない複数の第1非反射部とを有し、その回転体の複数のそのパーツ部の境界部はその光を反射する第2反射部内、またはその光の反射量がその第1反射部より少ない第2非反射部内に設けられるエンコーダが提供される。
【0006】
第2の態様によれば、第1の態様のエンコーダと、その回転軸の回転角を制御する回転角制御部と、そのエンコーダの検出結果を用いてその回転角制御部を制御する制御部とを備える駆動装置が提供される。
第3の態様によれば、第1の態様のエンコーダの組立方法であって、複数のそのパーツ部及びその検出部を準備することと、その回転軸にその回転軸の側面方向側から複数のそのパーツ部を取り付けることと、複数のそのパーツ部とその検出部とを位置決めすることと、その回転軸を回転可能に支持する支持部にその検出部を取り付けることと、を含むエンコーダの組立方法が提供される。
第4の態様によれば、回転軸と、その回転軸の一端部に設けられた操作部と、その回転軸の他端部側に連結されたアクチュエータと、そのアクチュエータによって駆動される1対の駆動輪と、その回転軸の回転情報を検出するための第1の態様のエンコーダと、そのエンコーダの検出結果に基づいてそのアクチュエータの動作を制御する制御装置と、を備える車両用操舵装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の第1の実施形態に係る駆動装置を示す図である。
図2】(A)は図1中のエンコーダ部の回転体及び受発光部を示す平面図、(B)は図2(A)の回転体の裏面を示す図、(C)はエンコーダ部の構成を示す図である。
図3】(A)は回転体を示す分解斜視図、(B)はシャフトに形成される位置決め用の種々の凹部を示す図である。
図4】(A)は回転体の境界部を示す側面図、(B)は図4(A)の領域Aを示す拡大図、(C)は図4(A)の領域Aの別の例を示す拡大図、(D)は図4(A)の領域Aのさらに別の例を示す拡大図である。
図5】エンコーダ部の組立方法の一例を示すフローチャートである。
図6】(A)は一体型の回転体の原型を示す斜視図、(B)はシャフトに第1の部分回転体を取り付けた状態を示す一部を切り欠いた平面図、(C)はシャフトに第1及び第2の部分回転体を取り付けた状態を示す平面図、(D)は第1及び第2部分回転体の境界部を示す側面図、(E)、(F)、(G)はそれぞれ第1及び第2部分回転体の境界部の別の例を示す側面図である。
図7】(A)は回転体及び受発光部を示す平面図、(B)及び(C)は2つの受発光部から出力される検出信号の一例を示す図である。
図8】(A)は第1の実施形態の変形例に係る回転体及び受発光部を示す平面図、(B)は図8(A)の側面図である。
図9】(A)は第2の実施形態に係るエンコーダ部の回転体及び受発光部を示す平面図、(B)は図9(A)の側面図である。
図10】(A)は変形例に係る回転体及び受発光部を示す平面図、(B)は図10(A)の側面図である。
図11】(A)は図9(A)の回転体を示す分解斜視図、(B)はシャフトに第1の部分回転体を取り付けた状態を示す斜視図、(C)はシャフトに回転体を取り付けた状態を示す斜視図、(D)は組立用工具を分解した状態を示す斜視図である。
図12】エンコーダ部の組立方法の他の例を示すフローチャートである。
図13】(A)はシャフトに回転体及び組立用工具を取り付けた状態を示す斜視図、(B)は基板を位置決めした状態における図13(A)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、第1の実施形態につき図1から図7を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る駆動装置10の概略構成を示す。一例として、駆動装置10は車両用操舵装置(又は車両用操舵システム)8に使用されている。図1において、駆動装置10は、円筒状のシャフト18と、シャフト18の一端部に設けられたステアリングホイール14と、シャフト18の他端部側に設けられたアクチュエータ16と、シャフト18の回転角を含む回転情報を検出するエンコーダ部12と、エンコーダ部12の検出結果に基づいてアクチュエータ16等の動作を制御する制御装置28とを備えている。アクチュエータ16は、ドライバー(不図示)がステアリングホイール14を介してシャフト18を回転したときに、ドライバーに回転角に応じた反力(いわゆる操舵反力)を与えるためのモータである。
【0009】
車両用操舵装置8は、駆動装置10と、シャフト18にクラッチ20を介して連結された連結軸22と、1対の駆動輪(転舵輪)26A,26Bと、制御装置28の制御のもとで駆動輪26A,26Bの進行方向を制御する転舵アクチュエータ24とを備えている。シャフト18は車両本体部(不図示)に回転可能に支持されている。なお、車両用操舵装置8において、クラッチ20及び連結軸22を省略してもよい。さらに、アクチュエータ16の代わりに差動角制御装置を使用し、転舵アクチュエータ24の代わりにパワーステアリングを使用してもよい。この場合、差動角制御装置が、ステアリングホイール14(シャフト18)の回転角と駆動輪26A,26Bの進行方向との差動角に応じてパワーステアリングを介して駆動輪26A,26Bの進行方向を制御してもよい。車両用操舵装置8と、モータ又はエンジンに連結された1対の駆動輪(不図示)と、車両本体部(不図示)と、ブレーキ装置(不図示)と、アクセル(不図示)等とを含んで車両が構成できる。
【0010】
本実施形態に係るエンコーダ部12は、シャフト18の側面に装着された円筒状で、例えばステアリングホイール14側の表面に回転角を検出するためのパターンが形成された回転体32を備えており、回転体32はシャフト18と一体的に回転する。また、エンコーダ部12は、回転体32のパターンを検出するための光電センサとしての第1及び第2の受発光部36A,36Bと、受発光部36Aが設けられた基板38Aと、受発光部36Bが設けられた基板38Bと、受発光部36A,36Bからの検出信号を処理して回転体32(ひいてはシャフト18)の回転情報を求める処理装置40とを備えている。回転体32は、そのパターンが形成された輪帯状のスケール部32bと、スケール部32bのアクチュエータ16側の面に設けられたスケール部32bよりも外径の小さい円筒状のハブ部32cとを一体的に連結したほぼ軸対称の形状である。なお、円筒状のハブ部32cの外径は、スケール部32bの外径と同じであってもよいし、スケール部32bの外径より大きくてもよい。基板38A,38Bは、車両本体部(不図示)に所定の連結部材(不図示)を介して支持されている。
【0011】
図2(A)は図1中のエンコーダ部12の回転体32及び基板38A,38Bを示す平面図、図2(C)はエンコーダ部12の回転体32、基板38A,38B、及び処理装置40を示す。図2(A)において、シャフト18は断面で表されている。また、回転体32は、一例として、シャフト18の中心軸AXの回りの円周方向(周方向)又は回転方向(以下、θ方向ともいう。)に、等角度(ここでは120°)で実質的に同じ形状の3つのパーツ部(以下、部分回転体という)32A,32B,32Cを例えばボルトB1,B2,B3によって連結したものである。言い替えると、回転体32は第1、第2、及び第3の3つの部分回転体32A~32Cに分割されている(分離可能である)。回転体はディスクともいうことができ、部分回転体32A~32Cは部分ディスク部ともいうことができる。なお、説明の便宜上、図2(C)等においては、ボルトB1,B3は、部分回転体32A,32Cの連結部に対して斜めに配置されているが、実際には後述の図3(A)に示すように、ボルトB1,B3は対応する連結部に対して垂直になるように配置されることが好ましい。部分回転体32A,32Bの連結部を境界部33A、部分回転体32B,32Cの連結部を境界部33B、部分回転体32C,32Aの連結部を境界部33Cという。なお、部分回転体32A~32Cの角度(中心軸AXに関する開き角)は互いに同じである必要はなく、例えば数°~数10°の範囲で異なっていてもよい。このように、部分回転体32A~32Cの角度が、例えば数°~数10°の範囲で異なっている場合、当然ながら境界部33A~33Cの角度も数°~数10°の範囲で異なることになる。
【0012】
回転体32の表面32aには、シャフト18の中心軸AXを中心とした同心円状のパターン領域に、インクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aがそれぞれ形成されている。インクリメンタルパターン34Iは、例えば光を反射する部分(反射部)と光の反射量(反射率)が反射部よりも小さい部分(非反射部)とを所定の周期(ピッチ)で円周方向に形成したものである。インクリメンタルパターン34Iからの反射光より得られる検出信号を内挿して積算することで、シャフト18の回転角又は回転速度等の積算値を高精度に求めることができる。アブソリュートパターン34Aは、例えば光を反射する部分(反射部)と光の反射量(反射率)が反射部よりも小さい部分(非反射部)とを有し、回転体32の1回転内の絶対角度(絶対位置)を示すパターンであり、アブソリュートパターン34Aからの反射光より得られる検出信号を用いて、シャフト18の1回転内の絶対角度を求めることができる。その絶対角度及びインクリメンタルパターン34Iから得られる回転角等の積算値を用いて、シャフト18の絶対角度をより高精度に求めることができる。
【0013】
また、第1の受発光部36Aは、検出用の光をアブソリュートパターン34Aの検出領域36AA及びインクリメンタルパターン34Iの検出領域36AIに照射する発光素子36Aaと、検出領域36AAからの反射光を受光する受光素子36Ab及び検出領域36AIからの反射光を受光する受光素子36Acとを有する。さらに、第2の受発光部36Bは、検出用の光をアブソリュートパターン34Aの検出領域36BA及びインクリメンタルパターン34Iの検出領域36BIに照射する発光素子36Baと、検出領域36BAからの反射光を受光する受光素子36Bb及び検出領域36BIからの反射光を受光する受光素子36Bcとを有する。発光素子36Aa,36Baは例えば発光ダイオード等であり、受光素子36Ab~36Bcは例えばフォトダイオード等である。このように受発光部36A,36Bは反射型であるが、回転体32に透過型のパターンを設け、受発光部36A,36Bを透過型の光センサとしてもよい。
【0014】
さらに、第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AIと、第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIとは、それぞれ中心軸AXに関して対称(点対称)な位置に配置されている。なお、第1の受発光部36Aの検出領域の位置,及び第2の受発光部36Bの検出領域の位置はその対称な位置から数°程度離れた位置に配置されていてもよい。この場合、回転体32の境界部33A~33Cは120°間隔で配置されているため、境界部33A~33Cのうちの任意の一つ(例えば境界部33A)が第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AI内に位置しているときには、他の境界部(例えば境界部33B,33C)は第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIから60°程度離れた位置にある。逆に、第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIが境界部33A~33C上にあるときには、第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AIは境界部33A~33Cから60°程度離れた位置にある。このため、第1の受発光部36Aの検出結果と、第2の受発光部36Bの検出結果とを切り替えることによって、常に境界部33A~33Cからずれた位置にあるインクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aからの反射光を受光でき、シャフト18の回転情報を高精度に検出できる。
【0015】
図3(A)は回転体32を3つの部分回転体32A~32Cに分解(分離)した分解斜視図である。図3(A)において、シャフト18の中空部18aには、図1のステアリングホイール14からアクチュエータ16の設置部を介して制御装置28に続く複数の配線(不図示)が配置されている。部分回転体32Aは、アブソリュートパターン34Aの一部のパターン34Aa及びインクリメンタルパターン34Iの一部のパターン34Iaが形成された表面を持つ扇形のスケール部32Abと、スケール部32Abの表面と反対側の面に連結されたハブ部32Acとを有する。また、部分回転体32Bは、アブソリュートパターン34Aの一部のパターン34Ab及びインクリメンタルパターン34Iの一部のパターン34Ibが形成された表面を持つ扇形のスケール部32Bbと、スケール部32Bbの表面と反対側の面に連結されたハブ部32Bcとを有する。さらに、部分回転体32Cは、アブソリュートパターン34Aの一部のパターン34Ac及びインクリメンタルパターン34Iの一部のパターン34Icが形成された表面を持つ扇形のスケール部32Cbと、スケール部32Cbの表面と反対側の面に連結されたハブ部32Ccとを有する。
【0016】
なお、スケール部32Ab,32Bb,32Cbとハブ部32Ac,32Bc,32Ccとは、一体的に形成されていてもよい。ハブ部32Ac,32Bc,32Ccは、一例としてスケール部32Ab,32Bb,32Cbよりも半径が小さい扇形の断面形状を持ち、高さがスケール部32Ab,32Bb,32Cbよりも高い形状である。また、以下では、中心軸AXに対して半径方向(θ方向に直交する方向)におけるシャフト18及び回転体32等の側面(外面及び内面を含む)をそれぞれ周側面とも称する。
【0017】
そして、第1の部分回転体32Aのハブ部32Acの周側面の中央部に、シャフト18の中心軸AXから半径方向に平行に(外周面から内周面に向かうように)、円形の貫通穴32Adが形成され、シャフト18の周側面の対応する位置にも円形の貫通穴18bが形成されている。貫通穴32Ad及び18bを通るように、棒状の位置決めピン54Aを差し込むことで、第1の部分回転体32Aとシャフト18との円周方向及び中心軸AXに沿った方向(以下、軸方向ともいう)の位置決めを行うことができる。
【0018】
また、第2の部分回転体32Bのハブ部32Bcの側面に設けたピン54Bを、第1の部分回転体32Aのハブ部32Acの側面に設けた凹部32Aeに嵌合させて、ボルトB1で部分回転体32Bと部分回転体32Aとを連結することで、部分回転体32A(シャフト18)に対して部分回転体32Bを位置決めできる。同様に、第3の部分回転体32Cのハブ部32Ccの側面に設けたピン54Cを、第1の部分回転体32Aのハブ部32Acの側面に設けた凹部32Afに嵌合させて、ボルトB2で部分回転体32Cと部分回転体32Aとを連結することで、部分回転体32A(シャフト18)に対して部分回転体32Cを位置決めできる。また、実際には第2の部分回転体32Bのハブ部32Bcと第3の部分回転体32Cのハブ部32Ccとは図2(A)のボルトB3によって連結されているが、図面の錯綜を避けるため、以下の説明ではボルトB3を省略する。なお、第2の部分回転体32Bのハブ部32Bcの内面に設けたピン(不図示)をシャフト18の側面に設けた凹部(不図示)に嵌合させて、部分回転体32Bをシャフト18に対して位置決めしてもよい。この際に、ピン54Bを省略してもよい。同様に、第3の部分回転体32Cをシャフト18に対して位置決めしてもよい。なお、各ハブ部の側面は、他のハブの側面と接触する面であるので接触面ともいう。
【0019】
そして、シャフト18が無い状態で、ボルトB1,B2,B3を用いて部分回転体32A~32Cを連結して形成される回転体32の内径は、シャフト18の外径よりもわずかに小さく設定されている。このため、部分回転体32A~32Cでシャフト18を囲む状態で、ボルトB1,B2,B3を用いて部分回転体32A~32Cを連結することによって、部分回転体32A~32Cがシャフト18を締め付けることになり、部分回転体32A~32Cがシャフト18に安定に装着される。
なお、図3(B)に示すように、シャフト18の周側面には、円形の貫通穴18bの代わりに、軸方向に細長い貫通穴18b1、円周方向に細長い貫通穴18b2、又は円周方向に形成された所定深さの溝18b3を設けてもよい。シャフト18の周側面に細長い貫通穴18b1及び18b2を設けた場合、第1の部分回転体32Aのハブ部32Acの周側面の中央部には2つの円形の貫通穴を形成し、2つの円形の貫通穴を介して2つの位置決めピンを細長い貫通穴18b1及び18b2のそれぞれに差し込めばよい。すなわち、細長い貫通穴18b1と位置決めピンとを嵌合させることによって、円周方向の位置決めが行われ、細長い貫通穴18b2と位置決めピンとを嵌合させることによって、軸方向の位置決めが行われる。
【0020】
また、シャフト18の側面に溝18b3を設けた場合、上記構成と同じように、第1の部分回転体32Aのハブ部32Acの中央部には円形の貫通穴を形成し、この円形の貫通穴を介して位置決めピンの先端部を溝18b3に差し込めばよい。すなわち、溝18b3と位置決めピンの先端部とを嵌合(係合)させることによって、軸方向の位置決めが行われる。この構成の場合、円周方向の位置決めは、部分回転体32A~32Cがシャフト18を締め付ける力で行ってもよいし、溝18b3に加え、上述した細長い貫通穴18b1を併用してもよい。
【0021】
さらに、シャフト18と第1の部分回転体32Aとの位置決めを位置決めピン54Aで行う構成について説明したが、この構成に限定されない。例えば、シャフト18にフランジを形成し、このフランジに第1の部分回転体32A、第2の部分回転体32B、第3の部分回転体32Cの少なくとも一つを載置した状態で、各部分回転体をボルトで連結してもよい。
【0022】
図2(C)に戻り、処理装置40は、第1の受発光部36Aの受光素子36Abの検出信号を処理して絶対角度を求める絶対角度回路42A1及び第1の受発光部36Aの受光素子Acの検出信号を処理して積算値を求める内挿回路42A2と、絶対角度回路42A1及び内挿回路42A2の出力からシャフト18の回転角の絶対値を高精度に求める第1のカウンタ44Aと、第2の受発光部36Bの受光素子36Bbの検出信号を処理して絶対角度を求める絶対角度回路42B1及び第2の受発光部36Bの受光素子36Bcの検出信号を処理して積算値を求める内挿回路42B2と、絶対角度回路42B1及び内挿回路42B2の出力からシャフト18の回転角の絶対値を高精度に求める第2のカウンタ44Bと、を有する。さらに、処理装置40は、絶対角度回路42A1,42B1の出力と、第1及び第2のカウンタ44A,44Bの出力とを用いて、回転体32の境界部33A~33Cに影響されることなく、シャフト18の回転角の絶対値等の回転情報を高精度に求める切り替え回路46を有する。なお、処理装置40の少なくとも一部の回路は、基板38A,38Bに形成されていてもよい。
【0023】
一例として、切り替え回路46は記憶部を有し、この記憶部には、例えば受発光部36Aがアブソリュートパターン34Aを検出して得られる絶対角度と、この絶対角度が得られたときに、受発光部36Bがアブソリュートパターン34Aを検出して得られる絶対角度との関係が記憶されている。すなわち、記憶部は受発光部36Aと受発光部36Bとの位置関係を記憶している。また、記憶部には、例えば境界部33Aが受発光部36Aの検出領域にあるときの境界部33B,33Cの絶対角度(又はアブソリュートパターン34A内での境界部33A~33Cの絶対角度)が記憶されている。そして、切り替え回路46では、例えば第1のカウンタ44Aの出力からシャフト18の回転情報を求めているときに、絶対角度回路42A1から出力される絶対角度が境界部33A~33Cの絶対角度に対して所定角度の範囲(例えば20°程度)内になったときには、第2のカウンタ44Bの出力からシャフト18の回転情報を求めるように第1のカウンタ44Aの出力から第2のカウンタ44Bの出力に切り替える。この際に、第1のカウンタ44Aの出力を第2のカウンタ44Bの出力としてプリセットしてもよい。この後、第1の受発光部36Aの検出領域36AA,36AIを境界部33A~33Cが通過しても、高精度にシャフト18の回転情報を求めることができる。
【0024】
同様に、第2のカウンタ44Bの出力からシャフト18の回転情報を求めているときに、絶対角度回路42B1から出力される絶対角度と受発光部36Bの位置を示す絶対角度との差分が、境界部33A~33Cの絶対角度に対して所定角度の範囲内になったときには、第1のカウンタ44Aの出力からシャフト18の回転情報を求めるようにすればよい。この際に、第2のカウンタ44Bの出力を第1のカウンタ44Aの出力としてプリセットしておいてもよい。この切り替え動作によって、境界部33A~33Cの位置に関係なく、常に高精度にシャフト18の回転情報を求めることができる。
【0025】
また、回転体32のスケール部32bの表面と反対側の面(ハブ部32c側の面)32dの周縁部には、図2(B)に示すように、シャフト18の中心軸AXからわずかに偏心した開き角がほぼ180°の細い扇形のN極の磁石48A及びS極の磁石48Cが固定され、磁石48A及び磁石48Cの内側に、中心軸AXからわずかに偏心した開き角がほぼ180°の細い扇形のS極の磁石48B及びN極の磁石48Dが固定されている。なお、一例として、磁石48A~48Dはそれぞれほぼ輪帯を2分割して得られる形状の強磁性体を軸方向に磁化したものである。例えばN極の磁石48Aの面32dに接する部分はS極に着磁されている。さらに、磁石48A~48Dに対向するように、例えば90°の開き角で2つの磁気センサ50A,50Bが配置されている。磁気センサ50A,50Bは、例えば複数の磁気抵抗素子又はホール素子等を組み合わせたものである。磁気センサ50A,50Bは、シャフト18を回転可能に支持している車両本体部(不図示)に所定の連結部材(不図示)を介して支持されている。
【0026】
回転体32の回転によって磁気センサ50A,50B上での磁石48A~48Dの磁界が変化し、磁気センサ50A,50Bの検出信号が変化する。処理装置40内には、磁気センサ50A,50Bの検出信号より、磁石48A~48D(シャフト18)の回転方向及び回転数(多回転情報)を求める多回転情報検出回路52が設けられている。多回転情報検出回路52の検出結果は切り替え回路46に供給されており、切り替え回路46はその多回転情報を用いて360°を超える範囲のシャフト18の回転角を求めることができる。なお、磁石48A~48D及び磁気センサ50A,50Bを用いることなく、回転体32の表面32aに多回転情報を含むパターンを形成しておき、このパターンを別の受発光部(不図示)によって検出することで、多回転情報を求めてもよい。
【0027】
また、図4(B)、(C)、(D)は、それぞれ図4(A)の部分回転体32A,32Bの境界部33Aの上端部を含む円形の領域Aの拡大図である。図4(B)に示すように、部分回転体32A,32Bの表面32Aa,32Baには円周方向に最小の幅W1の非反射部34Iaと最小の幅W2の反射部34Ib(第1反射部)とを周期P(=W1+W2)で配列したインクリメンタルパターン34Iが形成されている。また、部分回転体32A,32Bの表面のうち、境界部33Aの上端部の表面32Aa,32Baには、傾斜角φが45°の傾斜部32Aa1,32Ba1が形成されている。傾斜部32Aa1,32Ba1の円周方向の全体の幅W3は、一例として反射部34Ibの幅W2と同じである。この場合、図2(C)の発光素子36Aa(又は36Ba)からほぼ軸方向に平行に傾斜部32Aa1,32Ba1に入射する光ILは、2回の反射によって入射した方向に反射されるため、傾斜部32Aa1,32Ba1は反射部34Ibとみなすことができる。また、表面32Aa,32Baにインクリメンタルパターン34Iと平行に形成されているアブソリュートパターン(不図示)の最小幅の反射部は、傾斜部32Aa1,32Ba1を含む領域に形成されている。他の境界部33B,33Cの上端部の表面も同様に反射部となる。このため、境界部33A~33Cは、それらのパターンの最小幅の反射部(第2反射部)内に形成されているとみなすことができ、境界部33A~33Cが受発光部36A,36Bの検出領域を通過しても、検出信号のレベルの変化が小さく、常に高精度にシャフト18の回転情報を検出できる。
【0028】
また、図4(C)に示すように、部分回転体32A,32Bの境界部33Aの上端部の表面32Aa,32Baには、傾斜角φが45°の非反射部32Aa2,32Ba2を形成してもよい。非反射部32Aa2,32Ba2の円周方向の全体の幅W3は、一例として非反射部34Ia(第1非反射部)の最小の幅W1と同じか、又は1以上の整数nを用いて(W1+n・P)に設定される。この場合、図2(C)の発光素子36Aa(又は36Ba)からほぼ軸方向に平行に境界部33Aに入射する光ILは、非反射部32Aa2,32Ba2(第2非反射部)で反射されないため、境界部33Aは非反射部34Ia、又は非反射部34Iaを周期Pのn倍だけずらした部分の下に形成されているとみなすことができる。また、表面32Aa,32Baのアブソリュートパターン(不図示)の非反射部は、非反射部32Aa2,32Ba2を含む領域に形成されている。他の境界部33B,33Cも同様に非反射部の下に形成されている。このため、境界部33A~33Cは、それらのパターンの最小幅、又は最小幅に周期Pのn倍を加えた幅の非反射部とみなすことができ、境界部33A~33Cが受発光部36A,36Bの検出領域を通過しても、検出信号のレベルの変化が小さく、常に高精度にシャフト18の回転情報を検出できる。
【0029】
また、図4(D)に示すように、部分回転体32A,32Bの境界部33Aの上端部の表面32Aa,32Baには、円周方向の幅W3の隙間33Aaを形成してもよい。隙間33Aaの幅W3は、一例として非反射部34Iaの幅W1と同じか、又は1以上の整数nを用いて(W1+n・P)に設定される。この場合、図2(C)の発光素子36Aa(又は36Ba)からほぼ軸方向に平行に境界部33Aに入射する光ILは、隙間33Aaで反射されないため、隙間33Aaは非反射部34Ia、又は非反射部34Iaを周期Pのn倍だけずらした部分とみなすことができる。他の境界部33B,33Cの上端にも同様に隙間が設けられている。このため、境界部33A~33Cは、表面32Aa,32Baに設けられているパターンの最小幅、又は最小幅に周期Pのn倍を加えた幅の非反射部の下に形成されているとみなすことができ、境界部33A~33Cが受発光部36A,36Bの検出領域を通過しても、検出信号のレベルの変化が小さく、常に高精度にシャフト18の回転情報を検出できる。
【0030】
なお、図4(B)~(C)の例で示すように、回転体32の境界部33A~33Cをそれらのパターンの反射部又は非反射部とみなすことができる場合には、検出信号のレベルの変化が小さいため、図2(A)の2つ受発光部36A,36Bの一方を省略して、一つの受発光部36A(又は36B)のみを用いてもよい。このように一つの受発光部のみを用いても、シャフト18の回転情報を高精度に検出できる。
【0031】
次に、図5のフローチャートを参照して本実施形態のエンコーダ部12の組立方法の一例につき説明する。この場合、エンコーダ部12の回転体32は、図1に示すように、一端部側にシャフト18の断面形状よりも大きいステアリングホイール14が取り付けられ、他端部側にシャフト18の断面形状よりも大きいアクチュエータ16が装着されたシャフト18の中央部分に取り付けられるものとする。
図5のステップ102において、図3(A)の複数(ここでは3つ)の部分回転体32A~32C、図2(C)の基板38A,38Bに装着された受発光部36A,36B、及び処理装置40を準備する。まず、3つの部分回転体32A~32Cの製造方法について説明する。図6(A)に示すように、3つの部分回転体32A~32Cを一体化した形状の回転体の原型32Mを製造する。原型32Mは輪帯状のスケール部32Mbと、スケール部32Mbの外径よりも外径が小さい円筒状のハブ部32Mcとを一体化した形状であり、原型32Mの中央部には、円形の貫通穴32Meが形成されている。円形の貫通穴32Meの内径は、シャフト18の外径と同じか、又はその外径よりもわずかに小さく設定されている。
【0032】
さらに、例えばリソグラフィー工程を用いて、原型32Mの表面32Maにアブソリュートパターン34A及びインクリメンタルパターン34Iを形成し、各パターンを形成した後、例えばワイヤカット放電加工機を用いて、回転体の原型32Mを3箇所の境界部33A~33Cに対応する位置で切断する。この後、切断で形成された3つの部分回転体に図3(A)の貫通穴32Ad等を形成することで、部分回転体32A~32Cを製造できる。なお、部分回転体32A~32Cは互いに別の部材から形成してもよい。また、受発光部36A,36B及び処理装置40は、例えば半導体素子製造プロセスを用いて製造できる。
【0033】
次のステップ104において、3つの部分回転体32A~32Cをシャフト18の側面方向側からシャフト18の周側面に取り付ける。そのため、図6(B)に示すように、第1の部分回転体32Aの貫通穴32Ad及びシャフト18の周側面の貫通穴18bに位置決めピン54Aを差し込む。さらに、図6(C)に示すように、ボルトB1を用いて第1の部分回転体32Aの側面に第2の部分回転体32Bの側面を連結し、図3(A)のボルトB2を用いて第1の部分回転体32Aの側面に第3の部分回転体32Cの側面を連結する。また、図2(A)のボルトB3を用いて第2の部分回転体32Bの側面に第3の部分回転体32Cの側面を連結する。これによって、図2(A)に示すように、シャフト18を挟み込むように回転体32がシャフト18の周側面に取り付けられる。なお、各ボルトによって回転体32がシャフト18を締め付ける力が十分であれば、この後で第1の部分回転体32Aから位置決めピン54Aを引き抜いてもよい。
【0034】
次に、ステップ106において、回転体32(インクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34A)と、受発光部36A,36Bとの位置合わせを行い、ステップ108において、受発光部36A,36Bの基板38A,38Bを不図示の連結部材に固定し、受発光部36A,36Bを処理装置40と接続する。さらに、回転体32のスケール部32bの面32dに図2(B)の磁石48A~48Dを接着等で取り付け、不図示の連結部材に磁気センサ50A,50Bを取り付け、磁気センサ50A,50Bを処理装置40と接続することで、エンコーダ部12の組立が完了する。
なお、エンコーダ部12の組立方法はこの方法に限定されず、例えば、受発光部36A,36Bの基板38A、38Bを上記連結部材に固定した後、回転体32をシャフト18の周側面に取り付けてもよい。
【0035】
また、一例として、図6(D)に示すように、第1の部分回転体32Aと第2の部分回転体32Bとの境界部33Aでは、部分回転体32A,32Bのスケール部32Ab,32Bbが密着し、ハブ部32Ac,32Bcの間にはわずかな隙間33Abがある。隙間33Abでは、位置決めピン54Bによって部分回転体32A,32Bが位置決めされ、ボルトB1によって部分回転体32A,32Bが連結されている。これは他の境界部33B,33Cでも同様である。このような連結方法で部分回転体32A~32Cを相互に安定に連結できる。なお、部分回転体32A,32Bのスケール部32Ab,32Bbを密着させ、さらにハブ部32Ac,32Bcを密着させてもよい。
【0036】
上述のように、本実施形態のエンコーダ部12(エンコーダ)は、シャフト18(回転軸)に取り付けられて、シャフト18の回転情報を検出するためのパターン34I,34Aが形成された回転体32と、回転体32のパターンを検出する受発光部36A,36B(検出部)と、受発光部36A,36Bの検出結果に基づいてシャフト18の回転情報を求める処理装置40(演算部)と、を備えるエンコーダであって、回転体32は、回転体32の回転方向(θ方向)に沿って、それぞれそのパターン34I,34Aの一部が形成された複数の部分回転体32A~32C(パーツ部)に分割されている。言い替えると、回転体32は部分回転体32A~32Cに分離可能である。
【0037】
本実施形態のエンコーダ部12によれば、例えば両端に回転体32の外径より大きい部材が装着されたシャフト18の周側面に回転体32を取り付ける際には、回転体32を複数の部分回転体32A~32Cに分割(分離)してから、部分回転体32A~32Cをシャフト18の周側面に取り付ければよい。このため、シャフト18に対する回転体32の取り付けが容易である。さらに、例えばエンコーダ部12の使用中に、第2の部分回転体32Bの一部が損傷したような場合には、シャフト18から損傷した第2の部分回転体32Bを取り外し、その代わりに新しい第2の部分回転体32Bを取り付ければよい。これによって、使用中に回転体32の一部が損傷したときに、その損傷した部分を容易に取り替えることができる。
【0038】
また、本実施形態の駆動装置10は、エンコーダ部12と、シャフト18の回転角を制御するアクチュエータ16(回転角制御部)と、エンコーダ部12の検出結果を用いてアクチュエータ16を制御する制御装置28(制御部)とを備えている。駆動装置10によれば、シャフト18に対するエンコーダ部12の回転体32の取り付けが容易であるため、駆動装置10を容易に組み立てることができる。
【0039】
また、本実施形態のエンコーダ部12の組立方法は、複数の部分回転体32A~32C及び受発光部36A,36Bを準備するステップ102と、シャフト18にその側面から複数の部分回転体32A~32Cを取り付けるステップ104と、複数の部分回転体32A~32C(回転体32)と受発光部36A,36Bとを位置決めするステップ106と、シャフト18を回転可能に支持する支持部(車両本体部)に受発光部36A,36Bを取り付けるステップ108と、を含んでいる。この組立方法によれば、例えば両端に回転体32の外径より大きい部材が装着されたシャフト18の側面(周側面)に回転体32を容易に取り付けることができる。
【0040】
なお、本実施形態では、以下のような変形が可能である。
まず、図2(C)の切り替え回路46は、記憶部に記憶されている境界部33A~33Cの絶対角度に基づいてカウンタ44A,44Bの出力を切り替えているが、受発光部36A,36Bの検出信号に基づいてカウンタ44A,44Bの出力を切り替えてもよい。
図7(A)は、図2(A)の回転体32及び受発光部36A,36Bを示す平面図であり、図7(B)及び(C)はそれぞれ一例として受発光部36A,36Bのインクリメンタルパターン34Iからの光を検出する受光素子36Ac,36Bc(図2(C)参照)からの検出信号の振幅を示す信号SIA及びSIBである。図7(B)及び(C)の横軸は、図7(A)の状態を基準(θ=0°)とした、シャフト18(回転体32)の反時計回りの回転角θ(°)である。この変形例では、信号SIA,SIBは、例えば図2(C)の内挿回路42A2,42B2から切り替え回路46に供給される。回転体32には等角度間隔で3つの境界部33A~33Cがあるため、シャフト18が1回転する間に、信号SIA,SIBのレベルはそれぞれ120°間隔で低下するとともに、SIA,SIBのレベルはほぼ60°位相がずれている。
【0041】
切り替え回路46内では信号SIA,SIBに対して予め所定の閾値Sth(例えば信号SIA,SIBの実測値の最大値と最小値との中間の値など)が設定されている。そして、例えば信号SIAのレベルが閾値Sthよりも大きいときには、受発光部36Aの検出信号(カウンタ44Aの出力)を用いてシャフト18の回転情報を検出し、その後、信号SIAのレベルが閾値Sth以下になったときには、受発光部36Bの検出信号(カウンタ44Bの出力)を用いてシャフト18の回転情報を検出する。その後、信号SIBのレベルが閾値Sth以下になったときには、受発光部36Aの検出信号(カウンタ44Aの出力)を用いてシャフト18の回転情報を検出する。これによって、回転体32の境界部33A~33Cが受発光部36A,36Bの検出領域を通過しても、シャフト18の回転情報を高精度に検出できる。
【0042】
なお、回転体32のインクリメンタルパターン34I及び/又はアブソリュートパターン34Aの一部に受発光部36A,36Bの切り替えのタイミングを示すパターンを設けておき、受発光部36A又は36Bにそのパターンからの光を検出する受光素子を設けておいてもよい。そして、その受光素子の検出信号に基づいて受発光部36A,36B(カウンタ44A,44B)の切り替えを行うようにしてもよい。
【0043】
また、上述の実施形態では、部分回転体32A,32Bのスケール部32Ab,32Bbを密着させ、ハブ部32Ac,32Bcの間にわずかな隙間33Abを設けている。これに対して、図6(E)に示すように、境界部33Aにおいて、部分回転体32A,32Bのスケール部32Ab,32Bbの間にわずかな隙間33Aaを設け、ハブ部32Ac,32Bcを密着させてもよい。その隙間33Aaは図4(D)の幅W3の隙間33Aaとして使用できる。
【0044】
さらに、図6(F)に示すように、部分回転体32A,32Bの代わりに、ハブ部32Ac,32Bcの下面に、スケール部32Ab,32Bbと同様の形状の輪帯部32Db,32Ebを設けた形状の部分回転体32D,32Eを使用してもよい。部分回転体32D,32Eの境界部33Aにおいて、スケール部32Ab,32Bbを密着させ、ハブ部32Ac,32Bcの間にわずかな隙間33Abを設け、輪帯部32Db,32Ebを密着させてもよい。この例では、部分回転体32Cの代わりに、部分回転体32Dと同様の形状の部分回転体(不図示)が使用される。この連結方法では、スケール部32Ab,32Bbをより安定に密着させることができる。
【0045】
また、図6(G)に示すように、境界部33Aでは、部分回転体32Aのハブ部32Acの形状を凸部33Acを持つ形状とし、部分回転体32Bのハブ部32Bcの形状を凸部33Acに嵌合可能な凹部33Adを持つ形状としてもよい。この例では、部分回転体32A,32Bのスケール部32Ab,32Bbを密着させ、部分回転体32Aのハブ部32Acの凸部33Acを部分回転体32Bのハブ部32Bcの凹部33Adに嵌合させることで、部分回転体32A~32Cを相互に安定に密着させることができる。
【0046】
また、上述の実施形態では2つの受発光部36A,36Bの検出領域の位置は中心軸AXに対して対称な位置に配置されているが、要は第1の受発光部36Aの検出領域が境界部33A~33C上にあるときに、第2の受発光部36Bの検出領域が境界部33A~33Cから外れた位置にあればよい。また、図8(A)、(B)の変形例のエンコーダ部12Aで示すように、2つの受発光部36A,36Bの検出領域を近接させて配置してもよい。なお、図8(A)及び(B)において、図2(A)及び(C)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。この変形例において、シャフト18の中心軸AXに対する受発光部36A,36Bの検出領域の開き角θdは例えば45°から30°程度である。
【0047】
このとき、第1の受発光部36Aの検出領域が境界部33A~33C上にあるときには、第2の受発光部36Bの検出領域は境界部33A~33Cから少なくとも30°程度離れた位置にある。このため、受発光部36A又は36Bの検出領域は常に境界部33A~33Cからずれた位置にあるため、シャフト18の回転情報を高精度に検出できる。さらに、受発光部36A,36Bが近接して配置されているため、受発光部36A,36Bを一つの基板38Cに設けることができ、エンコーダ部12Aの構成が簡素化できる。
【0048】
また、上述の実施形態では、位置決めピン54Aを用いてシャフト18と部分回転体32A(回転体32)とを位置決めしているが、例えばシャフト18に設けた凸部に、部分回転体32Aの内面に設けた凹部を嵌合させて、シャフト18と部分回転体32A(回転体32)とを位置決めしてもよい。
また、上述の実施形態では、回転体32を3分割しているが、回転体32の分割数は任意であり、回転体32をシャフト18の円周方向に等角度で、又は非等角度でn分割(nは2以上の整数)してもよい。
【0049】
さらに、回転体32はスケール部32b及びハブ部32cより構成されているため、インクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aが形成されているスケール部32bを変形させることなく、ハブ部32cにおいて部分回転体32A~32Cを互いに安定に連結できる。なお、スケール部32bの高さを高くして、回転体32をスケール部32bのみから形成してもよい。この場合、分割されたスケール部32bの裏面側に分割されたスケール部を互いに連結する機構を設けてもよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、シャフト18を囲むように部分回転体32A~32Cを相互に連結することで、シャフト18を締め付けるようにシャフト18に回転体32を装着しているため、シャフト18には特に連結機構を設ける必要がない。なお、例えばシャフト18に外径が次第に大きくなるテーパー部を形成しておき、一体的に連結した部分回転体32A~32C(回転体32)をそのテーパー部で軸方向にずらして、圧入によって回転体32をシャフト18に固定してもよい。
さらに、例えばシャフト18にネジ穴を設けておき、部分回転体32A~32Cの少なくとも一つをボルト及びそのネジ穴を用いてシャフト18に固定してもよい。
【0051】
次に、第2の実施形態につき図9(A)から図13(B)を参照して説明する。なお、図9(A)から図11(C)において、図2(A)から図3(A)に対応する部分には同一符号を付してその詳細な説明を省略する。
図9(A)は、本実施形態に係るシャフト18の回転情報を検出するためのエンコーダ部12Bの回転体62、受発光部36Aが設けられた基板38A、及び受発光部36Bが設けられた基板38Bを示す平面図、図9(B)は図9(A)の側面図である。図9(A)、(B)において、回転体62は、アブソリュートパターン34A及びインクリメンタルパターン34Iが形成された表面62aを持つ輪帯状のスケール部62bと、スケール部62bの表面62aと反対側の面に設けられたスケール部62bよりも外径の小さい円筒状のハブ部62cとを一体的に連結したほぼ軸対称の形状である。
【0052】
また、回転体62は、シャフト18の円周方向(θ方向)に等角度(ここでは180°)の実質的に同じ形状の2つの部分回転体62A,62BをボルトB4,B5によって連結したものである。言い替えると、回転体62は第1、第2の部分回転体62A,62Bに分割されている(分離可能である)。部分回転体62A,62Bの連結部を以下では境界部63A,63Bという。なお、部分回転体62A,62Bの角度(中心軸AXに関する開き角)は互いに同じである必要はなく、例えば数°~数10°の範囲で異なっていてもよい。
【0053】
本実施形態において、第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIは、第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AIと中心軸AXに関して対称な位置に対して、反時計回り(時計回りでもよい)に例えば30°程度ずれた位置に配置されている。言い替えると、検出領域36AA,36AIと検出領域36BA,36BIとは中心軸AXに関して非対称な位置に配置されている。また、回転体62の境界部63A,63Bは180°間隔で(中心軸AXに関して対称に)配置されているため、一方の境界部63Aが第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AI内に位置しているときには、他方の境界部63Bは第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIから30°程度離れた位置にある。逆に、第2の受発光部36Bの検出領域36BA及び36BIが境界部63A,63B上にあるときには、第1の受発光部36Aの検出領域36AA及び36AIは境界部63A,63Bから30°程度離れた位置にある。このため、少なくとも第1又は第2の受発光部36A又は36Bは常に境界部63A,63Bからずれた位置にあるインクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aからの反射光を受光でき、シャフト18の回転情報を常に高精度に検出できる。
【0054】
図11(A)は回転体62を2つの部分回転体62A,62Bに分解(分離)した分解斜視図である。図11(A)において、部分回転体62Aはアブソリュートパターン34Aの一部のパターン34Ad及びインクリメンタルパターン34Iの一部のパターン34Idが形成された表面62Aaを持つ扇形のスケール部62Abと、スケール部62Abの表面62Aaと反対側の面に連結されたハブ部62Acとを有する。また、部分回転体62Bは、アブソリュートパターン34Aの一部のパターン34Ae及びインクリメンタルパターン34Iの一部のパターン34Ieが形成された表面62Baを持つ扇形のスケール部62Bbと、スケール部62Bbの表面62Baと反対側の面に連結されたハブ部62Bcとを有する。なお、スケール部62Ab,62Bbとハブ部62Ac,62Bcとは、一体的に形成されていてもよい。ハブ部62Ac,62Bcは、スケール部62Ab,62Bbよりも半径が小さい扇形の断面形状を持ち、高さがスケール部62Ab,62Bbよりも高い形状である。
【0055】
また、一例として、第1の部分回転体62Aのハブ部62Acの周側面の中央部に、シャフト18の中心軸AXから半径方向に平行に(外周面から内周面に向かうように)、円形の貫通穴62Adが形成され、シャフト18の周側面の対応する位置にも円形の貫通穴18b(図9(A)参照)が形成されている。貫通穴62Ad及び18bを通るように、位置決めピン54Aを差し込むことで、第1の部分回転体62Aとシャフト18との円周方向及び軸方向の位置決めを行うことができる。
【0056】
また、第2の部分回転体62Bのハブ部62Bcの側面に設けたピン54B,54Cを、第1の部分回転体62Aのハブ部62Acの側面に設けた凹部62Ae,62Afに嵌合させて、ボルトB4,B5で部分回転体62B,62Aを連結することで、部分回転体62A(シャフト18)に対して部分回転体62Bを位置決めできる。そして、シャフト18が無い状態で、ボルトB4,B5を用いて部分回転体62A,62Bを連結して形成される回転体62の内径は、シャフト18の外径よりもわずかに小さく設定されている。このため、部分回転体62A,62Bでシャフト18を囲む状態で、ボルトB4,B5を用いて部分回転体62A,62Bを連結することによって、シャフト18を締め付けることになり、部分回転体62A,62Bがシャフト18に安定に装着される。
【0057】
これ以外のエンコーダ部12Bの構成は第1の実施形態と同様であり、エンコーダ部12Bは図2(C)の処理装置40と同じ処理装置(以下、処理装置40という)を備えている。処理装置40を用いて、受発光部36A及び36Bの検出信号(カウンタ44A及び44Bの出力)を切り替えることによって、第1の実施形態と同様に、第1の受発光部36A(又は第2の受発光部36B)の検出領域を境界部63A,63Bが通過しても、高精度にシャフト18の回転情報を求めることができる。
【0058】
また、図4(B)~(C)の例で示したように、回転体62の境界部63A,63Bをインクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aの反射部又は非反射部とみなすことができる場合には、検出信号のレベルの変化が小さいため、2つ受発光部36A,36Bの一方を省略して、一つの受発光部36A(又は36B)のみを用いてもよい。この場合にも、シャフト18の回転情報を高精度に検出できる。
【0059】
なお、上述の実施形態では、シャフト18に設けた貫通穴18bを用いてシャフト18と部分回転体62Aとの回転方向の位置決めを行っている。これに対して、図10(A)及び(B)の変形例のエンコーダ部12Cで示すように、シャフト18の側面の軸方向の一部に平面状の切り欠き部18c及び18d(面取り部)を設けてもよい。一例として、切り欠き部18c及び18dは中心軸AXに関して対称に、すなわちθ方向に180°の間隔で設けられている。また、回転体62の部分回転体62A,62Bの内周面には、シャフト18の切り欠き部18c及び18dがある部分を収容可能な溝部62Ag,62Bgが設けられている。溝部62Ag,62Bgは全体として長方形状で、両端部が円弧状である。回転体62(スケール部62b及びハブ部62c)の軸方向の高さは、切り欠き部18c及び18dの軸方向の幅よりもわずかに短く設定されている。
【0060】
この他の構成は図9(A)及び(B)の実施形態と同様である。図10(A)のエンコーダ部12Cにおいて、切り欠き部18c及び18dを挟むように部分回転体62A,62Bを取り付け、ボルトB4,B5を用いて部分回転体62A,62Bを連結することによって、シャフト18の円周方向(回転方向)及び軸方向に対して位置決めした状態で、シャフト18の周側面に部分回転体62A,62B(回転体62)を安定に装着できる。このため、エンコーダ部12Cの信頼性が向上する。
【0061】
なお、エンコーダ部12Cにおいては、部分回転体62A,62Bの境界部63A,63Bは、中心軸AXを通る直線上にある必要はなく、境界部63A,63Bは、例えば中心軸AXに対して所定量だけ位置ずれした点を通る直線上(図10(A)の境界部63A,63Bを例えば上下に平行移動した位置)に配置されていてもよい。さらに、境界部63A,63Bのθ方向の角度を180°と異なる角度にすることも可能であり、部分回転体62A,62Bの製造が容易である。
また、エンコーダ部12Cにおいて、シャフト18の切り欠き部18c,18dの角度間隔は180°と異なる任意の角度に設定することができる。さらに、エンコーダ部12Cではシャフト18に1箇所の切り欠き部18cを設けるのみでもよく、シャフト18に3箇所以上の切り欠き部を設けてもよい。これらの場合、回転体62の内面にはそれぞれ1箇所及び3箇所以上の平坦部を設ければよい。
【0062】
次に、図12のフローチャートを参照して上述の実施形態のエンコーダ部12Bの組立方法の一例につき説明する。この場合、エンコーダ部12Bの回転体62は、図1に示すように、一端部側にシャフト18の断面形状よりも大きいステアリングホイール14が取り付けられ、他端部側にシャフト18の断面形状よりも大きいアクチュエータ16が装着されたシャフト18の中央部分の周側面に取り付けられるものとする。図12のステップ102において、図9(A)及び(B)の複数(ここでは2つ)の部分回転体62A,62B、及び基板38A,38Bに装着された受発光部36A,36B等を準備する。まず、2つの部分回転体62A,62Bを一体化した形状の回転体の原型32M(図6(A)参照)を製造し、原型32Mの表面にアブソリュートパターン34A及びインクリメンタルパターン34Iを形成し、例えばワイヤカット放電加工機を用いて、回転体の原型32Mを2箇所の境界部63A,63Bに対応する位置で切断する。この後、切断で形成された2つの部分回転体に図11(A)の貫通穴62Ad等を形成することで、部分回転体62A,62Bが製造できる。なお、部分回転体62A,62Bを互いに別の部材から形成してもよい。
【0063】
次のステップ104において、2つの部分回転体62A,62Bをシャフト18の側面方向側からシャフト18の周側面に取り付ける。そのため、図11(B)に示すように、第1の部分回転体62Aの貫通穴62Ad(図11(A)参照)及びシャフト18の周側面の貫通穴18b(図9(A)参照)に位置決めピン54Aを差し込む。さらに、第1の部分回転体62Aの凹部62Ae,62Afに第2の部分回転体62Bのピン54B,54Cを嵌合させて、ボルトB4,B5を用いて部分回転体62Aの側面に部分回転体62Bの側面を連結する。これによって、図11(C)に示すように、シャフト18を挟み込むように回転体62がシャフト18の周側面に取り付けられる。なお、この後で部分回転体62Aから位置決めピン54Aを引き抜いてもよい。
【0064】
次に、本実施形態では、図11(D)に示すように、開き角がほぼ180°の2つの扇形の部分(以下、部分組立用工具という)56A,56Bに分割(分離)されている組立用工具56(図13(A)参照)を使用する。部分組立用工具56A,56Bは、例えば内径がシャフト18の外径よりもわずかに小さい輪帯状の部材を2分割することによって製造できる。部分組立用工具56A,56Bは例えば2つのボルトB6,B7によって連結できる。部分組立用工具56A及び56Bの底面には、それぞれ互いに同じ形状の棒状の第1組の2つの位置決め部材58A及び58Bが設けられている。さらに、部分組立用工具56Bの底面には、互いに同じ形状の段差を持つ棒状の第2組の2つの位置決め部材60A,60Bが設けられている。
【0065】
なお、部分組立用工具56Aの底面に位置決め部材58Aを設け、部分組立用工具56Bの底面に位置決め部材58Bを設けたが、部分組立用工具56A又は部分組立用工具56Bのいずれか一方に、2つの位置決め部材58A及び58Bを設けてもよい。位置決め部材60A,60Bの全体の長さは位置決め部材58A,58Bの長さよりも短く、位置決め部材60A,60Bの先端部60Aa,60Baは固定端に比べ細い棒状となっている。
【0066】
次に、ステップ112において、図13(A)に示すように、シャフト18の回転体62が取り付けられている位置の上方の周側面に、シャフト18を挟むように部分組立用工具56A,56BをボルトB6,B7で連結することによって、組立用工具56を取り付ける。この際に、ボルトB6,B7の締め付け力を弱くしておき、組立用工具56をシャフト18の軸方向に容易に移動できるようにしておく。
【0067】
そして、ステップ114において、組立用工具56を用いて回転体62(インクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34A)と受発光部36A,36Bとの位置合わせを行う。このために、受発光部36Aが設けられた基板38Aには位置決め部材60A,60Bの先端部60Aa,60Baを挿入できる開口38Aa,38Abが設けられている。なお、説明の便宜上、図13(A)の基板38Aの形状は図9(A)の基板38Aの形状と異なっている。組立用工具56の底面には、位置決め部材60A,60Bに対して、図9(A)の基板38A,38Bの開き角と同じ開き角で、位置決め部材60A,60Bと同じ形状の第3組の2本の位置決め部材(不図示)が設けられている。そして、受発光部36Bが設けられた基板38Bにはその第3組の位置決め部材の先端部を挿入できる開口(不図示)が設けられている。また、基板38Aは、ボルトB11を介して中心軸AXに垂直な方向(半径方向)に所定範囲で移動可能に断面がL字型の連結部材64に取り付けられている。連結部材64は、中心軸AXの軸方向に細長い長穴64a,64b及びボルトB12を介して、所定範囲で軸方向に移動可能に連結部材66に取り付けられ、連結部材66は、シャフト18を回転可能に支持する車両本体部(支持部)(不図示)に連結されている。
【0068】
そして、図13(B)に示すように、組立用工具56をシャフト18の側面に沿って回転体62の方向に降下させて、組立用工具56の第2組の位置決め部材60A,60Bの先端部60Aa,60Baを基板38Aの開口38Aa,38Abに挿入し、組立用工具56の第1組の位置決め部材58A,58Bを回転体62の表面62aに当接させる。さらに、基板38Aが位置決め部材60A,60Bの段差部に突き当たるように基板38Aの高さを調整する。これにより、受発光部36Aと回転体62の表面62aとの間隔が最適な値になり、受発光部36Aとインクリメンタルパターン34I及びアブソリュートパターン34Aとの位置関係が最適な関係になるように、位置決め部材58A,58B及び60A,60Bの形状及び位置関係が設定されている。このため、受発光部36Aと回転体62との位置関係が最適な位置関係に設定される。同様に、受発光部36Bと回転体62との位置関係も最適な位置関係に設定される。
【0069】
さらに、ステップ108において、受発光部36Aの基板38Aを連結部材64,66を介して車両本体部(不図示)に固定し、同様に受発光部36Bの基板38Bを固定する。そして、基板38A,38Bと処理装置40とを接続することで、エンコーダ部12Bの組立が完了する。
本実施形態のエンコーダ部12Bによれば、回転体62はシャフト18(回転軸)の回転方向に沿って、それぞれアブソリュートパターン34A及びインクリメンタルパターン34Iの一部が形成された2つの部分回転体62A,62Bに分割されている(分離可能である)。このため、例えば両端にシャフト18の外径より大きい部材が装着されたシャフト18の周側面に回転体62を取り付ける際には、回転体62を2つの部分回転体62A,62Bに分割(分離)してから、部分回転体62A,62Bをシャフト18の周側面に取り付ければよい。このため、シャフト18に対する回転体62の取り付けが容易である。さらに、例えばエンコーダ部12Bの使用中に、第2の部分回転体62Bの一部が損傷した場合には、シャフト18から損傷した第2の部分回転体62Bを取り外し、その代わりに新しい第2の部分回転体62Bを取り付ければよい。これによって、使用中に回転体62の一部が損傷したときに、その損傷した部分を容易に取り替えることができる。また、回転体62の分割数は2分割と最小であるため、部分回転体62A,62Bを効率的に製造することができ、シャフト18への部分回転体62A,62Bの取り付けも容易である。
【0070】
また、本実施形態のエンコーダ部12Bの組立方法は、回転体62及び受発光部36A,36B(検出部)の基板38A,38Bに係合する位置決め部材58A,58B及び60A,60B(係合部)を有するとともに、シャフト18の回転方向に沿って複数に分割された組立用工具56(位置決め用工具)をシャフト18の側面に取り付けるステップ112と、組立用工具56を用いて、複数の部分回転体62A,62Bと受発光部36A,36Bとを位置決めするステップ114とを有する。このため、組立用工具56を容易にシャフト18の側面に装着可能であり、組立用工具56を用いて回転体62と受発光部36A,36Bとの位置合わせを効率的に行うことができる。
【0071】
なお、本実施形態の組立用工具56は2分割されているが、組立用工具56をn分割(nは2以上の整数)してもよい。さらに、中心軸AXに対する開き角が例えば180°以下の一つの部材(例えば部分組立用工具56B)のみを組立用工具として使用してもよい。この場合、その一つの部材を例えばシャフト18の側面に押し当てて軸方向に移動させながら、回転体62と受発光部36A,36Bとの位置合わせを行うようにしてもよい。
また、シャフト18に対するエンコーダ部12Bの取付位置が予め決められている場合には、シャフト18の周側面に、円形の貫通穴や、軸方向に細長い貫通穴及び円周方向に細長い貫通穴や、円周方向に形成された所定深さの溝を設け、これら貫通穴や溝に対して、部分組立用工具56A又は56Bの一方に形成された貫通穴を介して位置決めピンを差し込み、部分組立用工具56A又は56Bを位置決めすればよい。この位置決めされた部分組立用工具を基準としてエンコーダ部12Bを取り付けることができる。
【0072】
また、本実施形態においても、2つの受発光部36A,36Bを例えば角度間隔が30°程度になるように近接して配置してもよい。
なお、上述の各実施形態において、回転体32,62(ディスク)をシャフト18(回転軸)から一度取り外すと、回転体32,62をシャフト18に再度取り付けた際に以前と全く同じ条件で取り付けることが困難である恐れがある。つまり、部分回転体32A~32C(62A,62B)の着脱時のねじ締めによる部分回転体32A~32C(62A,62B)の歪みの違いによってパターン34A,34Iの位置に僅かな誤差が生じる恐れがある。例えば、エンコーダ部12A~12Cを工作機械に用いた場合などでは、この誤差による検出結果の影響が大きくなる恐れがある。
そのため、その誤差を小さくするために、部分回転体32A~32C(62A,62B)の再取り付け後に検出結果のキャリブレーションを以下に説明するように行うようにしてもよい。
【0073】
例えば、図1に示すシャフト18の端部に基準エンコーダ部(不図示で、基準エンコーダ部の回転体(回転体72と称する。)は例えば非分割式の一体型である)を設ける。そして、図1の回転体32をシャフト18に再度取り付けた後に、基準エンコーダ部の検出結果とエンコーダ部12の検出結果との差分を補正値としてエンコーダ部12の処理装置40又は制御装置28に記憶し、これ以降は記憶した差分でエンコーダ部12の出力値を補正してもよい。
また、基準エンコーダを用いない方法として、2つの受発光部36A,36Bの出力を用いて補正することも可能である。
例えば、図2(A)に示すように、回転体32が3分割されて受発光部36A,36Bが180°間隔で対向して(中心軸AXに関して対称な位置に)配置される場合は、2つの受発光部36A,36Bで検出される出力(カウント値)の平均を取ることにより補正する(誤差を減少する)ことができる。
【0074】
また、図9(A)に示すように回転体62が2つの部分回転体62A,62Bに分割されて受発光部36A,36Bが対称な位置からずれて配置される場合は、例えばシャフト18の側面に不図示のミラーを取り付けて、不図示のコリメータでシャフト18の回転角を実測できるようにしてもよい。そして、一例としてシャフト18を手動等で回転しながら、所定のサンプリングレートでコリメータで計測されるシャフト18の回転角と、受発光部36A,36Bの検出信号から算出される回転角とを取り込み、2つの計測値の差分から計測結果の誤差を求めてもよい。この際に、誤差が所定の許容範囲を超える場合には、回転体32をシャフト18から取り外した後、再度シャフト18に取り付けてもよい。別の方法として、求められた誤差を記憶し、この記憶した誤差で受発光部36A,36Bの検出信号から算出される回転角を補正してもよい。
【0075】
また、上述の各実施形態のエンコーダ部12~12Cは、光学式のパターンが形成された回転体32,62を分割しているが、磁気センサ用の磁気パターン又は静電容量型のセンサ用の導電パターン等が形成された回転体を複数の部分に分割し、回転軸の側面にその複数の部分を連結して取り付けるようにしてもよい。これらの場合、検出部としては、磁気センサ又は静電容量型のセンサが使用される。
【0076】
また、上述の各実施形態のエンコーダ部12~12Cは、交流モータ又は直流モータ等を備えた駆動装置にも適用することができ、この駆動装置は、各種工作機械又はロボット装置の駆動機構として使用できる。
【符号の説明】
【0077】
8…車両用操舵装置、10…駆動装置、12,12A,12B…エンコーダ部、14…ステアリングホイール、16…アクチュエータ、18…シャフト、28…制御装置、32…回転体、32A~32C…部分回転体、33A~33C…境界部、34A…アブソリュートパターン、34I…インクリメンタルパターン、36A,36B…受発光部、38A~38C…基板、40…処理装置、54A~54C…位置決めピン、56…組立用工具、56A,56B…部分組立用工具、62…回転体、62A,62B…部分回転体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13