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特許7333165から揚げ用ブレッダー及びから揚げの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】から揚げ用ブレッダー及びから揚げの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/157 20160101AFI20230817BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20230817BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018188924
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020054311
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100154597
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】篠原 大次郎
(72)【発明者】
【氏名】間平 由梨佳
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-131109(JP,A)
【文献】特開2011-103837(JP,A)
【文献】特開2000-125794(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143215(WO,A1)
【文献】特開2015-223119(JP,A)
【文献】特開平08-154610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 2/00 - 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
から揚げを製造するために、具材の表面に付着させるから揚げ用ブレッダーであって、
主成分として小麦粉及び/又は澱粉を含み、
酸化処理以外の化学的処理がされていない酸化澱粉を3.0質量%以下で含有し、酸化澱粉以外のワキシー澱粉を含まないことを特徴とするから揚げ用ブレッダー。
【請求項2】
前記酸化澱粉の含有量が、前記から揚げ用ブレッダーの質量に基づいて、0.01~2.0質量%である請求項1に記載のから揚げ用ブレッダー。
【請求項3】
表面全体に渡って凹凸感を有するから揚げを製造することができる請求項1又は2に記載のから揚げ用ブレッダー。
【請求項4】
具材の表面に、から揚げ用ブレッダーを付着させた後、油ちょうするから揚げの製造方法であって、
前記から揚げ用ブレッダーが、主成分として小麦粉及び/又は澱粉を含み、酸化処理以外の化学的処理がされていない酸化澱粉を3.0質量%以下で含有し、酸化澱粉以外のワキシー澱粉を含まないことを特徴とするから揚げの製造方法。
【請求項5】
前記から揚げ用ブレッダーとして、請求項1~3のいずれか1項に記載のから揚げ用ブレッダーを用いる請求項4に記載のから揚げの製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載のから揚げ用ブレッダーを用いるから揚げの表面全体に凹凸感を行き渡らせる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、から揚げ用ブレッダーに関し、特に、表面全体に渡って凹凸感を有するから揚げを容易に製造することができるから揚げ用ブレッダーに関する。
【背景技術】
【0002】
から揚げは、具材に衣を付着させ、油ちょうして得られる食品である。通常、から揚げの製造方法としては、粉粒状のから揚げ用組成物(本発明において、「ブレッダー」と称する)を、必要に応じて調味液等の下処理液を具材に付着させた後、具材の表面にまぶしたり、具材に練り込んだりして付着させた揚げ種を油ちょうする方法(本発明において、「まぶし法」と称する)、粉粒状のから揚げ用組成物に水等を加えて均一な流体(本発明において、「バッター」と称する)を調製し、そのバッターを、必要に応じて調味液等の下処理液に漬け込んだ後、具材に付着させた揚げ種を油ちょうする方法等がある。一般に、まぶし法は、バッターを用いる方法よりも、表面全体に渡って凹凸感があり、粉をふいたような良好な外観を有するから揚げが製造できる。しかしながら、まぶし法は、から揚げ専門店等で熟練の調理者が作業する場合は良好な外観や食感を有するから揚げが得られても、スーパーマーケットのバックヤード等で技量が十分ではない調理者が作業する場合や、大量調理の場合は、混ぜ過ぎたり、作業時間が掛かり過ぎたりすること等により、ブレッダーがべちゃついて作業性が悪くなったり、油ちょう後の表面全体に渡る凹凸感が良好に得られなかったり、衣の歯切れが悪くなったりする場合がある。
【0003】
従来から、から揚げの外観や食感の改善、及び製造時の作業性を向上する技術が開発されている。例えば、特許文献1では、水溶きタイプのから揚げでも容易にから揚げの表面に凹凸が出せ、サックリとした良好な食感を得ること等を目的とし、フライ可能な食用粒状物(粒状植物蛋白、パン粉、穀類、クラッカー粉、フライドポテト、パスタ、蒸練生地、穀粉及び澱粉で造粒した粒)をから揚げ粉に混合したことを特長としたから揚げ粉が開示されている。また、特許文献2では、熟練者でなくとも、不均一で、不定形の細かな突起状凹凸等を有する良好な手作り感の外観を備えるから揚げ又はその凍結物を容易に調製することが可能なから揚げの製造方法を提供すること等を目的とし、少なくとも澱粉及び/又は小麦粉と、水と、ゲル化剤とを含み、10℃におけるゲル強度が5~65gfのゲル状バッターと、複数のから揚げ用具材とを準備する工程(A)、前記ゲル状バッターと前記複数のから揚げ用具材とを、該具材表面に、少なくとも2以上の不定形ゲル状バッター小塊が不均一に付着するよう混合する工程(B)及び、工程(B)で調製したゲル状バッター小塊を不均一に有するから揚げ用具材を油ちょうする工程(C)を含むことを特徴とするから揚げの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-46712号公報
【文献】特開2007-185164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の技術を用いても、上述のように、まぶし法で、熟練の調理者が作業して得られる、表面全体に渡る凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げに匹敵するものを製造することは依然として困難であり、さらなる技術開発が求められている。
【0006】
したがって、本発明の目的は、調理者の技量によらず、また、大量調理においても、まぶし法によって、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げを容易に製造することができるから揚げ用ブレッダー、及びそのようなから揚げの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、から揚げ用ブレッダーの配合について種々検討を行なった結果、所定の加工澱粉を配合することで上記課題を解決できることを見出した。
【0008】
すなわち、上記目的は、から揚げを製造するために、具材の表面に付着させるから揚げ用ブレッダーであって、主成分として小麦粉及び/又は澱粉を含み、酸化処理以外の化学的処理がされていない酸化澱粉を3.0質量%以下で含有し、酸化澱粉以外のワキシー澱粉を含まないことを特徴とするから揚げ用ブレッダーによって達成される。また、上記目的は、具材の表面に、から揚げ用ブレッダーを付着させた後、油ちょうするから揚げの製造方法であって、前記から揚げ用ブレッダーが、主成分として小麦粉及び/又は澱粉を含み、酸化処理以外の化学的処理がされていない酸化澱粉を3.0質量%以下で含有し、酸化澱粉以外のワキシー澱粉を含まないことを特徴とするから揚げの製造方法によって達成される。
【発明の効果】
【0009】
本発明のから揚げ用ブレッダー、及びから揚げの製造方法を用いることにより、調理者の技量によらず、まぶし法によって、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げを容易に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[から揚げ用ブレッダー]
本発明のから揚げ用ブレッダーは、から揚げを製造するために、具材の表面に付着させるから揚げ用ブレッダーであって、酸化澱粉を3.0質量%以下で含有することを特徴とする。すなわち、本発明のから揚げ用ブレッダーは、から揚げの製造方法の内、ブレッダーを具材に直接、又は必要に応じて、具材を調味液等の下処理液に漬け込んだり、下処理液を具材に揉み込んだりして、下処理液を具材に付着させた後、具材の表面にまぶしたり、練り込んだりして付着させた揚げ種を油ちょうする「まぶし法」に用いるから揚げ用ブレッダーである。上述の通り、従来技術においては、前記まぶし法は、から揚げ専門店等で熟練の調理者が作業する場合は、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げが製造できるが、技量が十分でない調理者が作業した場合や、大量調理の場合は、ブレッダーを具材に付着させる際に、混ぜ過ぎや作業時間が掛かり過ぎること等により、ブレッダーがべちゃついて作業性が悪くなったり、油ちょう後の表面全体に渡る凹凸感が良好に得られなかったり、衣の歯切れが悪くなったりすることがあった。本発明のから揚げ用ブレッダーを用いることで、前記まぶし法において、具材に直接、又は必要に応じて下処理液を具材に付着させた後、ブレッダーを付着させる際に、混ぜ過ぎても、作業時間が掛かり過ぎても、ブレッダーがべちゃつき難いため、作業性が良好であり、から揚げの表面全体に渡って凹凸を形成するように付着させることができる。これにより、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げを製造することができる。本発明のから揚げ用ブレッダーを用いて製造されたから揚げは、表面全体に渡って粉をふいたような外観も得易い。なお、本発明において、「下処理液」とは、食肉、魚貝類等の具材を漬け込んだり、具材に揉み込んだりすることにより、具材の調味や物性調整等の下処理をするための液状組成物のことを称し、例えば調味液、浸漬液、バッター等が挙げられる。
【0011】
これまでも、揚げ物の食感や油っぽさの改善のため、揚げ物用組成物に、他の材料と組み合わせて、酸化澱粉を含有させる技術は知られていた(例えば、特開平8-131109号公報、特開2011-254785号公報、特開2015-223119号公報)。しかしながら、前記まぶし法に用いるから揚げ用ブレッダーに酸化澱粉を含有させることで、具材に付着させる際に、有利な効果が得られるようなことは一切知られていなかった。本発明においては、前記まぶし法に用いるから揚げ用ブレッダーに酸化澱粉を所定量含有させることで、上述のように、具材に付着させる際に、混ぜ過ぎても、作業時間が掛かり過ぎても、ブレッダーがべちゃつき難いため、作業性が良好であり、から揚げの表面全体に渡って凹凸を形成するように付着させることができることが初めて見出された。
【0012】
本発明のから揚げ用ブレッダーにおける、酸化澱粉の含有量は3.0質量%以下であれば特に制限はなく、本発明の効果が得られる範囲に適宜調整することができる。本発明においては、酸化澱粉の含有量は、前記から揚げ用ブレッダーの質量に基づいて、上限値としては、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。また、下限値としては、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。これにより、上述の本発明のから揚げ用ブレッダーの効果がさらに良好に発揮される。
【0013】
前記酸化澱粉は、常法によって調製することができる。例えば、原料澱粉の水懸濁液に所定量の次亜塩素酸ナトリウムの溶液を添加してアルカリ性下で反応させた後、亜硫酸水素ナトリウムなどの還元剤を加えて残存する有効塩素を消去し、酸を加えて中和する。その後、水でよく洗浄して副生する塩や不純物を除去し、脱水乾燥して調製することができる。前記酸化澱粉は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、酸化処理以外の加工処理、例えば、焙焼;α化;酸処理;アルカリ処理;アセチル化等のエステル化処理、ヒドロキシプロピル化等のエーテル化処理;架橋処理等の物理的又は化学的加工処理が、酸化処理と組合せて施されていてもよい。本発明において、酸化澱粉は、酸化処理以外の化学的処理がされていない加工澱粉が好ましい。本発明において、前記酸化澱粉の原料澱粉としては、植物から抽出した澱粉であれば特に制限はなく、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の澱粉が挙げられる。本発明において、酸化澱粉は、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができ、市販品を適宜使用することができる。
【0014】
本発明のから揚げ用ブレッダーにおいて、前記酸化澱粉以外の材料については、本発明の効果を阻害しない限り、特に制限はなく、通常のから揚げ用ブレッダーに用いられる材料を適宜配合することができる。例えば、薄力粉、中力粉、準強力粉、強力粉、全粒粉、デュラム小麦粉等の小麦粉、米粉、大麦粉、大豆粉、そば粉、ライ麦粉、ホワイトソルガム粉、トウモロコシ粉、これらの穀粉を加熱処理した加熱処理穀粉等の穀粉類;コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、甘藷澱粉等の澱粉、及びこれらの澱粉に酸化処理以外の物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合わせて施した加工澱粉等の澱粉類;デキストリン、オリゴ糖、ぶどう糖、ショ糖、マルトース等の糖質類;植物性油脂、動物性油脂、加工油脂、粉末油脂等の油脂類;卵白粉、卵黄粉、全卵粉、小麦たん白、乳たん白、大豆たん白等のたん白素材;重曹(炭酸水素ナトリウム)、炭酸アンモニウム、炭酸カルシウム等のガス発生剤、及び酒石酸、酒石酸水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム等の酸性剤を含むベーキングパウダー等の膨張剤;カードラン、キサンタンガム、グアガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びカラギーナン等の増粘剤;食塩、グルタミン酸ナトリウム、たん白加水分解物、粉末醤油等の調味料;酵母エキス、畜肉又は魚介由来エキス等のエキス類;グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤;その他、かぼちゃ粉、色素、香料、香辛料、酵素、種々の品質改良剤等が挙げられる。
【0015】
[から揚げの製造方法]
本発明のから揚げの製造方法は、具材の表面に、から揚げ用ブレッダーを付着させた後、油ちょうするから揚げの製造方法であって、前記から揚げ用ブレッダーが、酸化澱粉を3.0質量%以下で含有することを特徴とする。すなわち、本発明のから揚げの製造方法は、上述の「まぶし法」であり、前記から揚げ用ブレッダーとして、前記酸化澱粉を所定量含有するから揚げ用ブレッダーを用いることで、上述の通り、具材に直接、又は必要に応じて下処理液を具材に付着させた後、ブレッダーをまぶす際に、混ぜ過ぎても、作業時間が掛かり過ぎても、ブレッダーがべちゃつき難く、作業性が良好であり、から揚げの表面全体に渡って凹凸を形成するように付着させることができる。そして、その揚げ種を油ちょうすることで、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げを製造することができる。本発明の製造方法によって製造されたから揚げは、表面全体に渡って粉をふいたような外観も得易い。本発明のから揚げの製造方法は、常法に従って実施することができる。例えば、前記から揚げ用ブレッダーを、具材に直接、又は必要に応じて具材を調味液等の下処理液に漬け込んだり、下処理液を具材に揉み込んだりして、下処理液を具材に付着させた後、具材の表面にまぶしたり、練り込んだりして付着させた揚げ種を調製し、得られた揚げ種を適切な温度のフライ油に投入し、適切な時間油ちょうする。本発明のから揚げの製造方法によって製造されたから揚げは、上述の通り、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げである。
【0016】
本発明のから揚げの製造方法において、前記から揚げ用ブレッダーの好ましい態様は、上述のから揚げ用ブレッダーの場合と同様である。したがって、前記酸化澱粉の含有量は、前記から揚げ用ブレッダーの質量に基づいて、上限値としては、2.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以下がさらに好ましい。また、下限値としては、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がさらに好ましい。本発明のから揚げの製造方法においては、前記から揚げ用ブレッダーとして、本発明のから揚げ用ブレッダーを用いてもよく、前記酸化澱粉の含有量が所望の範囲になるように、上述の本発明のから揚げ用ブレッダーに含まれる各材料を、それぞれ個別に、又は一部が予め混合されたものを用いて混合した粉粒体を用いてもよい。本発明のから揚げの製造方法においては、容易に使用できる点で、前記から揚げ用ブレッダーとして、本発明のから揚げ用ブレッダーを用いることが好ましい。
【0017】
本発明のから揚げの製造方法において、から揚げとしては、「まぶし法」で製造できる揚げ物であれば、特に制限はなく、具材としては、鶏肉、豚肉、牛肉等の食肉類、マグロ、カツオ、タコ、イカ等の魚貝類、ナス、ゴボウ、レンコン等の野菜類等が挙げられ、一般的なから揚げの他、竜田揚げ等を含む。
【0018】
なお、本発明は、上述の説明から理解できる通り、本発明のから揚げ用ブレッダーを用いるから揚げの表面全体に凹凸感を行き渡らせる方法にもある。本発明の方法により、「まぶし法」でから揚げを製造する際に、調理者の技量によらず、から揚げの表面全体に凹凸感を行き渡らせることができる。本発明の方法に用いる前記から揚げ用ブレッダーの好ましい態様は、上述のから揚げ用ブレッダーの場合と同様である。
【実施例
【0019】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.から揚げ用ブレッダーの調製
表2~表4に示した配合で、各材料を混合して各実施例及び各比較例のから揚げ用ブレッダーを調製した。なお、使用した澱粉材料を表1に示した。
【0020】
【表1】
【0021】
2.から揚げの作製
約250g(10切れ)の鶏もも肉に、前記肉の質量に基づいて15質量%の下処理液(生姜醤油系調味液)を加え、よく揉み込んだ後、冷蔵で約2時間静置した。下処理液を付着させた肉に、前記肉(下処理液の付着前)の質量に基づいて、13質量%の各から揚げ用ブレッダーをまぶして混ぜ合わせ、前記肉の全体に付着させた。この工程については、以下の評価基準で、専門パネル3名が相談して作業性を評価した。評価結果は表2~表4に示した。
◎:べちゃつきがなく、作業性が非常に良い
○:べちゃつきが少なく、作業性が良い
△:べちゃつきがあり、作業性がやや悪い
×:非常にべちゃつき、作業性が非常に悪い
その後、170℃の大豆油で4分間油ちょうして、から揚げを得た。
3.から揚げの評価
2.で得られた各から揚げの外観及び食感(衣の歯切れ)を以下の評価基準で評価した。評価は、専門パネル10名で行い、評価結果は、評価点の平均値を求め、表2~表4に示した。
(1)外観
5:凹凸感がまんべんなく全体に有り、非常に良好
4:凹凸感が全体にあり、良好
3:凹凸感が部分的にあり、許容範囲
2:凹凸感がほとんどなく、悪い
1:凹凸感が全くなく、非常に悪い
(2)食感(衣の歯切れ)
5:衣の歯切れが非常に良い
4:衣の歯切れが良い
3:衣の歯切れが許容範囲
2:衣の歯切れが悪い
1:衣の歯切れが非常に悪い
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】
表2及び表3に示した通り、上記のまぶし法によるから揚げの製造方法において、酸化澱粉を0.01~3.0質量%の含有量で含むから揚げ用ブレッダーを用いた実施例1~13では、馬鈴薯澱粉のみをから揚げ用ブレッダーとして用いた比較例1と比較して作業性が改善され、得られたから揚げは、表面全体に渡って凹凸感を有する良好な外観を示し、且つ衣の歯切れが良好な食感を示した。また、これらのから揚げは、表面全体に渡って粉をふいたような外観も認められた。一方、酸化澱粉の代わりに、リン酸架橋澱粉を0.5質量%含有させた比較例2、コーンスターチを0.5質量%含有させた比較例3では、そのような効果は認められず、酸化澱粉を5.0質量%含有させた比較例4及び比較例5では作業性は改善されず、外観、及び食感も良好ではなかった。
【0025】
【表4】
【0026】
表4では、酸化澱粉以外の材料として、馬鈴薯澱粉以外の材料を含むから揚げ用ブレッダーについて調べた結果である。表4に示した通り、酸化澱粉Bを0.5質量%の含有量で含み、それ以外の材料として馬鈴薯澱粉、コーンスターチ及び小麦粉を含むから揚げ用ブレッダーを用いた実施例14、馬鈴薯澱粉及び小麦粉を含むから揚げ用ブレッダーを用いた実施例15、並びに小麦粉のみを含むから揚げ用ブレッダーを用いた実施例16についても、酸化澱粉B以外に馬鈴薯澱粉のみを含むから揚げ用ブレッダーを用いた実施例2と同様に、作業性が改善され、得られたから揚げは、表面全体に渡って凹凸感を有する良好な外観を示し、且つ衣の歯切れが良好な食感を示した。なお、小麦粉のみをから揚げ用ブレッダーとして用いた比較例6は、馬鈴薯澱粉のみをから揚げ用ブレッダーとして用いた比較例1と同様な評価結果であった。したがって、本発明のから揚げ用ブレッダーにおいて、酸化澱粉以外の材料については、特に制限はなく、通常のから揚げ用ブレッダーに用いられる材料を適宜配合することができることが示唆された。
【0027】
以上により、まぶし法によるから揚げの製造方法において、酸化澱粉を3.0質量%以下で含有するから揚げ用ブレッダーを用いることにより、作業性が良好であり、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好なから揚げを製造できることが示唆された。
【0028】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明により、調理者の技量によらず、まぶし法によって、表面全体に渡って凹凸感を有し、且つ衣の歯切れが良好な食感を有するから揚げを容易に製造することができる。