(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】農業資材施用方法及びマルチコプター
(51)【国際特許分類】
A01M 7/00 20060101AFI20230817BHJP
B64C 27/08 20230101ALI20230817BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230817BHJP
B64D 1/02 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
A01M7/00 H
B64C27/08
B64C39/02
B64D1/02
A01M7/00 E
(21)【出願番号】P 2019217146
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2018226599
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018234135
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】川中 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】水谷 基文
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-130064(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216214(WO,A1)
【文献】特開2001-302405(JP,A)
【文献】特開2009-173575(JP,A)
【文献】特開2018-127076(JP,A)
【文献】特開2006-121997(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00 - 99/00
B64C 27/08
B64C 39/02
B64D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチコプターを使用して圃場に農業資材を施用する農業資材施用方法において、
前記農業資材は、有効成分を含み且つ水に浮く粒剤又は粉剤であり、
前記農業資材は収容部材または結合部材によって一定量が分散しないように集められていて見かけ上一つの塊状製剤となっており、
前記収容部材または結合部材は、一部または全部が水溶性の物質によって作られており、
前記マルチコプターは、前記塊状製剤を複数個収容可能である収容部と、前記塊状製剤を一個ずつ又は数個ずつ排出する排出手段を有し、
前記マルチコプターに、前記塊状製剤を複数個搭載し、
湛水状態の圃場の上に前記マルチコプターを飛ばし、
前記圃場に、間隔を開けて、一個ずつ又は数個ずつ前記塊状製剤を投下することを特徴とする農業資材施用方法。
【請求項2】
前記マルチコプターはロータを有し、
前記農業資材は、比重が1以下の農薬含有粒剤であり、水溶性高分子フィルムの袋に該粒剤が充填されて前記塊状製剤が構成されており、
前記塊状製剤を前記ロー
タが発生させるダウンウオッシュの当たらない位置であって、且つ平面視における各ロー
タの内側の位置から、直下に落下させることを特徴とする請求項1に記載の農業資材施用方法。
【請求項3】
前記圃場は、イネ苗が移植された水田であり、前記イネ苗の水面上の高さの20倍以下の高さから前記塊状製剤を投下することを特徴とする請求項1又は2に記載の農業資材施用方法。
【請求項4】
前記マルチコプターは、自動制御可能であり、少なくとも下記のいずれかの機能を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の農業資材施用方法。
(1)飛行ルートの算出が可能であ
り、前記飛行ルートを自動操縦で飛行可能。
(2)農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり
、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(3)風量ならびに風向の影響を考慮した農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり
、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(4
)飛行ルート、及び農業資材の投下位置を記録することが可能。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の農業資材施用方法で使用
されるマルチコプタ
ー。
【請求項6】
前記収容部は、複数の収容室に区画され、
前記収容部の下部に開口部があり、前記収容室と前記開口部を相対的に移動させて特定の収容室と前記開口部を一致させ、特定の収容室内の塊状製剤を前記開口部から排出することを特徴とする請求項5に記載のマルチコプター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水田等の湛水させる圃場に農薬等を施用する農業資材施用方法に関するものである。本発明は、一般に「ドローン」と称されるマルチコプターを使用して農薬等を施用するものである。また本発明は、農業用のマルチコプターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数のロータを有し、垂直離着陸するマルチコプターが知られている。マルチコプターは、当初、玩具として販売されたが、次第に高機能化し、航空写真の撮影や、物資の運搬等の業務用にも使用されつつある。
また農業分野においても、マルチコプターの活用が期待されている。
【0003】
マルチコプターを使用して液状の農薬を圃場に散布する方法が、特許文献1に開示されている。
特許文献1に開示された方法では、マルチコプターに液状の農薬を貯留するタンクを搭載し、複数のノズルから農薬を散布する。
特許文献1では、液状の農薬を広く拡散させるために、ロータの吹き下ろし気流の中にノズルから薬剤を噴射している。
【0004】
また特許文献2には、粒状の農薬を圃場に施用する方法が開示されている。
特許文献2に開示された方法では、マルチコプターに粒剤を貯留するタンクと、拡散羽根が搭載されている。特許文献2では、貯留タンクから拡散羽根に粒剤を落とし、拡散羽根の遠心力で粒剤を拡散させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-36011号公報
【文献】特開2018-130064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マルチコプターを使用して農薬散布を行う場合は、マルチコプターから中空に広く農薬を散布し、地上に落下させることが重要であると考えられていた。
この思想に基づき、特許文献1においては、ロータの吹き下ろし気流の中にノズルから薬剤を噴射し、吹き下ろし気流によって薬剤の拡散を促進している。
特許文献2においては、拡散羽根によって粒剤に遠心力を与え、遠心力によって粒剤を飛ばして広く拡散させる。
【0007】
ところで、無農薬栽培を標榜する農家があり、当該農家の圃場に他家の圃場に散布された農薬が落下することは避けなければならない。
同様に、通行量の多い道路に農薬が散布されることも避けるべきである。
さらに作業者に農薬がかかることも好ましくない。
【0008】
一方、従来技術の方法によると、ノズルや拡散羽根によってマルチコプターから広い範囲に薬剤が散布されてしまう。
そのため近隣に農薬を散布されてしまうことを防ぐため、圃場の辺部においては、予め枕地散布と称される作業を行う必要があった。
【0009】
そこで前記した特許文献2に開示された態様では、粒剤が拡散しすぎることを防止するべく、散布カバーを設け、粒剤の飛散方向を制限している。
しかしながら、特許文献2に記載された方策においても、粒剤が拡散羽根によって蒔き散らされるため、隣の圃場や道路に農薬が落下することを完全に防ぐことはできない。
【0010】
本発明は、従来技術の上記した問題点に注目し、施用目標の圃場以外の場所に農薬等の農業資材が落下することを防ぐことが可能な農業資材施用方法を開発することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した課題を解決するための態様は、マルチコプターを使用して圃場に農業資材を施用する農業資材施用方法において、前記農業資材は、有効成分を含み且つ水に浮く粒剤又は粉剤であり、前記農業資材は収容部材または結合部材によって一定量が分散しないように集められていて見かけ上一つの塊状製剤となっており、前記収容部材または結合部材は、一部または全部が水溶性の物質によって作られており、前記マルチコプターに、前記塊状製剤を複数個搭載し、湛水状態の圃場の上に前記マルチコプターを飛ばし、前記圃場に、間隔を開けて、一個ずつ又は数個ずつ前記塊状製剤を投下することを特徴とする農業資材施用方法である。
【0012】
農業資材には、殺虫剤、殺菌剤、除草剤等の農薬の他、肥料も含まれる。
収容部材は、例えば袋や容器である。フィルムやシートを折畳んでラッピングした様なものも収容部材に含まれる。
塊状製剤は、例えば水溶性のフィルムで作られた袋に一定量の粒剤を充填したものや、水溶性のフィルムで一定量の粒剤を包んだものが採用可能である。
塊状製剤は、見かけ上、塊であれば足り、常に一定の形状を維持している必要はない。例えばお手玉や枕の様に、袋の中で農業資材に自由度があって動くものであってもよい。勿論、変形できない程度に粒剤等が詰め込まれていてもよい。
本態様では、マルチコプターから水田等の湛水状態の圃場に、一定間隔を開けて、一個ずつ又は数個ずつ塊状製剤を投下する。
通常の注意力を有する作業者であれば、塊状製剤を目標の圃場以外に落としてしまうことはない。
落下された塊状製剤は、水溶性の物質が圃場の水で溶けて内部の農業資材がばらばらに漏れ出る。当初、農業資材は一定の領域に浮遊するが、時間の経過とともに圃場に広がる。
【0013】
上記した態様において、マルチコプターはロータを有し、前記農業資材は、比重が1以下の農薬含有粒剤であり、水溶性高分子フィルムの袋に当該粒剤が充填されて前記塊状製剤が構成されており、前記塊状製剤を前記ローターが発生させるダウンウオッシュの当たらない位置であって、且つ平面視における各ロータ一の内側の位置から、直下に落下させることが望ましい。
【0014】
本態様によると、塊状製剤を目標位置に正確に投下することができる。また、本態様によると、湛水状態の圃場に対して塊状製剤を一個ずつ又は数個ずつ投下することで農業資材を施用する為、粒状の農薬を拡散させる施用方法に比べて、マルチコプターの飛行時間を短縮できる。その為、一般的に蓄電池で駆動されるマルチコプターを効率的に運用できる。
【0015】
圃場は、イネ苗が移植された水田であり、前記イネ苗の水面上の高さの20倍以下の高さから前記塊状製剤を投下することが望ましい。
【0016】
本態様によると、比較的低い高さから塊状製剤が投下されるので、仮にイネ苗に塊状製剤が当たっても、イネ苗の損傷が少ない。
また本態様によると、比較的低い高さから塊状製剤が投下されるので、落下した塊状製剤が水層を通過して下の土層と衝突しても、土層にめり込んでしまうことが少ない。
【0017】
前記マルチコプターは、自動制御可能であり、少なくとも下記のいずれかの機能を有することが望ましい。
(1)飛行ルートの算出が可能であり、前記マルチコプターは、前記飛行ルートを自動操縦で飛行可能。
(2)農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり、前記マルチコプターは、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(3)風量ならびに風向の影響を考慮した農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり、前記マルチコプターは、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(4)マルチコプターの飛行ルート、及び農業資材の投下位置を記録することが可能。
【0018】
マルチコプターに関する態様は、上記したいずれかに記載の農業資材施用方法で使用するマルチコプターであって、前記塊状製剤を複数個収容可能である収容部と、前記塊状製剤を一個ずつ又は数個ずつ排出する排出手段を有することを特徴とするマルチコプターである。
【0019】
本態様のマルチコプターによると、収容部に塊状製剤を複数個搭載し、湛水状態の圃場の上に前記マルチコプターを飛ばし、前記圃場に、間隔を開けて、一個ずつ又は数個ずつ前記塊状製剤を投下することができる。
【0020】
マルチコプターの態様において、前記収容部は、複数の収容室に区画され、前記収容部の下部に開口部があり、前記収容室と前記開口部を相対的に移動させて特定の収容室と前記開口部を一致させ、特定の収容室内の塊状製剤を前記開口部から排出することが望ましい。
【0021】
本態様によると、収容部内の塊状製剤を収容室ごとに排出して、圃場に投下することができる。
【0022】
またマルチコプターは、少なくとも下記のいずれかの機能を有することが望ましい。
(1)飛行ルートの算出が可能であり、前記飛行ルートを自動操縦で飛行可能。
(2)農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(3)風量ならびに風向の影響を考慮した農業資材の投下位置、投下個数の算出が可能であり、算出された投下位置で農業資材を自動操縦で投下可能。
(4)飛行ルート、及び農業資材の投下位置を記録することが可能。
【0023】
本態様のマルチコプターは、実用的である。
【発明の効果】
【0024】
本発明の農業資材施用方法によると、施用目標の圃場以外の場所に農薬等の農業資材が落下してしまうことが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態の農業資材施用方法で使用するマルチコプターの斜視図であり、(b)は(a)のマルチコプター及び貯留タンクの位置関係を模式的に表示した平面図である。
【
図2】(a)は
図1のマルチコプターに搭載される貯留タンクの分解斜視図であり、(b)は貯留タンクの断面図である。
【
図3】(a)は
図1のマルチコプターに搭載される塊状製剤の斜視図であり、(b)はその断面斜視図である。
【
図4】本発明の実施形態の農業資材施用方法における施用工程を示す説明図であり、水田を斜視した図である。
【
図5】本発明の実施形態の農業資材施用方法における施用工程を示す説明図であり、水田の断面図である。
【
図6】(a)(b)(c)は、本発明の実施形態の農業資材施用方法における拡散工程を示す説明図であり、水田の断面斜視図である。
【
図7】貯留タンクから塊状製剤を排出する機構の変形例を示す機構図であり、(a)(b)(c)(d)はその動作を順次説明するものである。
【
図8】貯留タンクから塊状製剤を排出する機構の他の変形例を示す機構図であり、(a)(b)(c)はその動作を順次説明するものである。
【
図9】貯留タンクから塊状製剤を排出する機構のさらに他の変形例を示す機構図であり、(a)(b)はその動作を順次説明するものである。
【
図10】(a)は貯留タンクの変形例を示す斜視図であり、(b)はその断面図である。
【
図11】(a)は貯留タンクのさらに他の変形例を示す斜視図であり、(b)は、その駆動機構の間欠ギヤと終段ギヤの係合関係を示す平面図である。
【
図13】(a)(b)(c)は、塊状製剤の変形例を示す斜視図である。
【
図14】自動制御されたマルチコプターならびに地上側制御システムの斜視図である。
【
図15】(a)は
図14の自動制御されたマルチコプターのマルチコプター制御システムのブロック図であり、(b)は
図14の地上側制御システムのブロック図である。
【
図16】他の実施形態の自動制御されたマルチコプターに適用される水田の説明図である。
【
図17】(a)は統合コントローラのソフトウェア構成を示すブロック図であり、(b)は地上側制御装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【
図18】別の実施形態での自動制御されたマルチコプターの飛行ルートと塊状製剤の投下位置を示す説明図である。
【
図19】除外される飛行ルートを示す説明図である。
【
図20】飛び地状の水田での飛行ルートを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下さらに本発明の実施形態について説明する。
本発明の農業資材施用方法は、ドローンと称されるマルチコプター1を使用して農薬等を施用するものである。以下、本発明の実施形態として、水田に除草剤を施用する方法を説明する。
マルチコプター1は、8枚のロータ2を備えたドローンであり、無線によって遠隔操作される。マルチコプター1は、公知のそれと同様に、ロータ2を回転することによってダウンウオッシュ(下降気流)を発生させて中空に浮き上がり、各ロータ2の回転数を相違させることによって水平方向に移動する。
【0027】
マルチコプター1には、蓄電池、モータ及び制御装置が搭載されている。
制御装置は、GPSと、対操縦装置通信手段が搭載されている(いずれも図示せず)。
即ちマルチコプター1には、GPSが搭載されており、位置情報取得手段を備えている。マルチコプター1は、全地球衛星測位システムにより、現在の位置座標を認識することができる。操縦装置(図示せず)には表示装置があり、マルチコプター1の周囲の地形図を表示することができる。
またマルチコプター1には、高度計が搭載されている。高度計には、公知の気圧高度計、レーザ距離センサー、超音波センサーが採用可能である。
対操縦装置通信手段(図示せず)は、図示しない操縦装置から発せられる操作信号を受信するものであり、対操縦装置通信手段で受信される操作信号に基づいて各ロータ2のモータが駆動され、マルチコプター1が昇降及び横行する。
【0028】
マルチコプター1には、
図1の様に貯留タンク10が搭載されている。
貯留タンク10の外形形状は円筒形であり、マルチコプター1の下部であって、中心部に垂下されている。
即ちマルチコプター1には、固定フレーム3が設けられており、当該固定フレーム3に貯留タンク10が支持されている。
マルチコプター1と貯留タンク10の位置関係は、
図1(b)の様であり、マルチコプター1を平面視したとき、貯留タンク10は、8枚ロータ2の回転領域から外れた位置にある。
【0029】
貯留タンク10は、
図2の様に、収容部11と、排出手段12を有している。
本実施形態では、収容部11は円筒形であり、内部に縦方向の仕切り5があり複数の収容室13に区切られている。
【0030】
排出手段12は、モータ15と回転板16によって構成されている。回転板16は、収容部11の下部を覆うものであるが、一か所に切り欠き(開口部)17が設けられている。
モータ15は、収容部11の上部にあり、シャフト18によって回転板16と接続されている。
排出手段12の回転板16は、モータ15によってゆっくりと回転する。そして回転板16に形成された切り欠き17が、いずれかの収容室13の下部と一致すると、収容室13の下部が開放される。
【0031】
貯留タンク10の各収容室13には、塊状製剤20が複数個収納されている。
塊状製剤20は、
図3の様に、フィルム21によって複数の農薬含有粒剤(以下、単に粒剤と称する)22が包まれて、見かけ上一つの塊となったものである。粒剤22は、農業資材の一例である。
本実施形態では、二枚のフィルム21a、21bによって収容部材25が構成されている。本実施形態では、塊状製剤20は、二枚のフィルム21a、21bの間に多数の粒剤22があり、二枚のフィルム21a、21bの各辺同士が重ねられて接着されたものである。
二枚のフィルム21a、21bは、いずれも水溶性高分子フィルムであり、4辺が接着されることによって中央部に袋23が形成され、当該袋23に粒剤22が充填されたものである。
【0032】
次に、農業資材施用方法を順を追って説明する。
準備段階として、地上において、貯留タンク10の各収容室13に、塊状製剤20をそれぞれ複数個、充填する。
そして湛水状態の水田100の近くにマルチコプター1を運ぶ。
本実施形態で採用するマルチコプター1は、GPSを備えており、図示しない操縦装置のタッチパネル等の表示装置に、周辺の地図を表示することができる。当該地図には、施用目標の水田100についても表示されることとなる。
【0033】
次に、タッチパネルに表示された地図に触れ、農薬を施用するべき水田100の輪郭をなぞる。
その結果、施用目標の水田100が特定される。
またタッチパネルには、
図4の様な水田100の絵が表示され、一点鎖線の様な区切り線が表示される。
【0034】
この状態で、ロータ2を駆動してマルチコプター1を飛ばす。マルチコプター1には、高度計が搭載されており、マルチコプター1の高度を一定の高度に保つことができる。
本実施形態は、
図5に示す様に湛水状態であって、イネの移植が完了した水田100に除草剤を施用する場合を例にとるものであり、マルチコプター1の高度Hは、イネの高さ(水面上の高さ)hの20倍以下の高さに保たれる。
【0035】
マルチコプター1は、湛水された水田100の上空を飛行する。そして
図4の一点鎖線で区切られた区画内に、塊状製剤20を一個ずつ投下する。
具体的には、マルチコプター1の位置をGPSで監視しながら水平飛行させ、区画の中心部でマルチコプター1をホバリングさせる。
そして排出手段12の回転板16を回転して、切り欠き17の位置を一つの収容室13の下部と一致させ、当該収容室13の下部を開放して、塊状製剤20を一個だけ排出して下の水田100の水面に落下させる。
【0036】
ここで前記した様に、貯留タンク10は、8枚のロータ2の回転領域から外れた位置に垂下されているから、塊状製剤20は、ロータ2が発生させる下向きの気流(ダウンウオッシュ)の当たらない位置から投下されることとなる。
そのため塊状製剤20は、ダウンウオッシュの影響を受けにくく、真下の位置に落下する。従って、塊状製剤20は目標位置に正確に投下される。
【0037】
塊状製剤20が排出されると、マルチコプター1は、水平移動を再開して次の目標地に向かう。
目標値に到達すると、前記と同様に、回転板16を回転して、切り欠き17の位置を一つの収容室13の下部と一致させ、塊状製剤20を一個だけ下の水田100に落下させる。
【0038】
こうして湛水状態の水田100に、塊状製剤20をX-Y方向にそれぞれ一定間隔を開けて一個ずつ投下する。投下間隔は任意であるが、5m以上の間隔を開けることが望ましい。例えば1アール当たり、一個ずつ塊状製剤20を投下するのであれば、10m程度の間隔を開けることとなる。
保有する総ての塊状製剤20を投下し終えると、マルチコプター1を帰還させ、新たな塊状製剤20を貯留タンク10に再充填する。そして再度、水田100の上空にマルチコプター1を飛ばし、作業を続ける。
【0039】
塊状製剤20は、比較的低い位置から水田100に落下するので、落下時に衝撃によって沈み込む深さは浅く、土の層には達しない。また土の層に達したとしても、そのときの速度エネルギーは小さく、土の層にめり込むことは少ない。
投下された塊状製剤20は、
図6(a)の様に水面に浮く。そして時間が経過すると、
図6(b)の様に収容部材25を構成する水溶性のフィルム21が溶けて破れ、袋23の中から粒剤22が零れ出る。ここで粒剤22は、比重が1よりも軽く、水に浮く。
さらに時間が経過すると、
図6(c)の様に粒剤22が一定の領域に拡散する。
本実施形態では、塊状製剤20がX方向とY方向に一定の間隔を開けて投下されているので、ある程度の時間が経過すると、粒剤22は水田100の一面にくまなく広がる。
そして粒剤22の有効成分が溶けだし、水田100の水に有効成分が有効濃度以上に含まれる状態となる。
【0040】
本実施形態の農業資材施用方法によると、粒剤が一塊となって水田100等に投下されるので、他家の水田100や道路に粒剤が落下する危険は少ない。
また塊状製剤20の収容部材25を構成するフィルム21が破れて粒剤22等が零れ出し、水面状に拡散するので、粒剤22等を広く分布させることができる。
【0041】
以上説明した実施形態では、GPSでマルチコプター1を所定の位置に誘導したが、目視によってマルチコプター1を目標位置に移動させてもよい。
【0042】
次に、貯留タンク10の収容部から塊状製剤20を排出する機構について説明する。
上記した実施形態では、回転板16を回転させることによって収容室13の下部を選択的に開放した。
他の方法としては、例えば
図7の貯留タンク28の様に収容室13の下部に、ウイング状の開閉扉30を設け、その上に補助係合部31を設ける構造が考えられる。
図7に示した貯留タンク28では、
図7(a)の様に、開閉扉30によって収容室13の下部が封鎖される。開閉扉30には、最下部の塊状製剤20aが載置されている。
また補助係合部31によって、二番目の塊状製剤20bの落下が防がれている。
【0043】
塊状製剤20を投下する際には、
図7(b)の様に開閉扉30を開いて最下部の塊状製剤20aを落とす。このとき、二番目の塊状製剤20bは補助係合部31に支持されているので落下しない。
最下部の塊状製剤20aが落ちたことが確認されると、
図7(c)の様に開閉扉30を閉じる。そして補助係合部31を下げて二番目の塊状製剤20bを開閉扉30の位置まで降ろす。
その後、
図7(d)の様に補助係合部31を突出させて、二番目の塊状製剤20cを保持する。
【0044】
また
図8に示した貯留タンク35の様に、プッシャ36で、塊状製剤20を横方向に押し出してもよい。
図8に示した貯留タンク35では、収容室13の下部であって側面に放出口37が開口している。
図8に示した貯留タンク35では、最下部の塊状製剤20aをプッシャ36で押して放出口37から排出する。
【0045】
また
図9に示した貯留タンク40の様に、収容室13の下部にゴム等の弾性を有する封鎖部材41を設けてもよい。
図9に示した貯留タンク40では、最上部を押したり、打撃を加え、封鎖部材41を押し開いて最下部の塊状製剤20aだけを排出する。
【0046】
図7乃至
図9の構造を採用する場合には、貯留タンク28、35、40の内部全体が、一つの収容室であってもよい。即ち、
図7乃至
図9の構造を採用する場合には、貯留タンク28、35、40の内部が区切りのない一つの収容部であってもよい。
【0047】
図10は、より具体的な貯留タンク42を例示するものである。貯留タンク42は、ブッシャによって塊状製剤20を押し出すものである。貯留タンク42は、
図10(a)の様に、複数の収容室13を有している。収容室13は先の実施形態と同様に放射状に配置されている。収容室13の側面であって下部には放出口43が開口している。
貯留タンク42の中心には、プッシャ部材45がある。プッシャ部材45は、バネによって突出方向に付勢された押し出し部材46がある。
プッシャ部材45は、モータ47によって、水平方向に回転する。
貯留タンク42の内部には、図示しないガイドがあり、プッシャ部材45が回転すると、ガイドによって押し出し部材46が中心側に押し込められる。そしてプッシャ部材45がさらに回転し、収容室13の位置と一致すると、ガイドによる規制が開放され、バネの圧縮が開放されて押し出し部材46が突出し、最下部の塊状製剤20aを押し出す。
【0048】
前述した
図2に示す貯留タンク10は、収容部11は動かず、下の回転板16が回転し、回転板16に設けられた切り欠き(開口部)17が、特定の収容室13の位置に回動して特定の収容室13の下部を開放するものであった。
逆に、切り欠き(開口部)17の位置が固定的であり、上部の収容室13が回動してもよい。即ち、収容室13と切り欠き(開口部)17が相対的に移動して、特定の収容室13と切り欠き(開口部)17を一致させ、特定の収容室13内の塊状製剤を前記切り欠き(開口部)17から排出してもよい。
【0049】
以下、
図11、
図12を参照しつつ、収容部材32側が回転する貯留タンク33について説明する。
貯留タンク33は、
図12の様に、収容部材32と、底板53と、駆動機構48を有している。
収容部材32は下部が解放された円筒形であり、上蓋部材56と、周壁59を有している。上蓋部材56と周壁59は、図示しない締結要素によって一体的に結合されている。収容部材32の内部は、収容部11として機能する。収容部材32の内部には、縦方向の仕切り5があり収容部材32の内部が複数の収容室13に区切られている。
底板53の一部には、開口部54が設けられている。
収容部材32は、底板53の上にあって、底板53に対して回転可能である。
【0050】
駆動機構48は、モータ57とギヤ列58によって構成されている。本実施形態では、駆動機構48と、底板53によって、排出手段が構成されている。
ギヤ列58は、モータ57の回転を減速するとともに、間欠的に収容部材32を回転させるものである。
【0051】
ギヤ列58は、
図12の様に、ピニオンギヤ66、中間ギヤ67、二連ギヤ68及び終段ギヤ69によって構成されている。
ピニオンギヤ66は、モータ57の出力軸に接続されており、終段ギヤ69は、収容部材32の中心軸に直接的に接続されている。
二連ギヤ68は、大径ギヤ75と間欠ギヤ76が同軸状に接続されたものである。間欠ギヤ76は、
図11(b)の様に、一部だけに歯が設けられている。
【0052】
モータ57の回転力は、ピニオンギヤ66、中間ギヤ67、二連ギヤ68の大径ギヤ75、二連ギヤ68の間欠ギヤ76、終段ギヤ69の順に動力伝動され、モータ57の回転力が間欠的に収容部材32に伝動される。
本実施形態では、モータ57は連続回転され、ピニオンギヤ66、中間ギヤ67、二連ギヤ68は、連続的に回転する。しかしながら、二連ギヤ68の間欠ギヤ76は、一部だけに歯があるので、当該歯が終段ギヤ69と係合する際だけ、終段ギヤ69に動力が伝動され、収容部材32が間欠的に回転する。
【0053】
ここで、本実施形態では、間欠ギヤ76の歯数Tは、終段ギヤ69の歯数をAとし、収容室13の数をBとしたとき、(A/B)の数である。即ち、間欠ギヤ76が一回転すると、終段ギヤ69に直結された収容部材32が、収容室13一個分だけ回転する。
また収容部材32は、回転停止時には、常にいずれかの収容室13が底板53の開口部54と合致する。
【0054】
本実施形態では、モータ57は常時回転される。一方、収容部材32は、間欠的に回転し、一定時間置きに回転して、新たな収容室13が、開口部54と合致する。
本実施形態では、各収容室13内に、塊状製剤20が一個ずつ収容される。
マルチコプターの飛行中、モータ57は常時回転される。そのため、一定時間置きに収容部材32が回転し、新たな収容室13が、開口部54と合致して、収容室13内の塊状製剤20を排出する。
【0055】
以上説明した実施形態では、塊状製剤20は二枚のフィルム21a、21bによって袋23が形成され、当該袋23に粒剤が充填されたものであるが、本発明は、この構造の塊状製剤20の使用に限定されるものではない。
【0056】
例えば
図13(a)の塊状製剤50の様に、筒状や樽状の容器(収容部材)51に粒剤が充填されたものであってもよい。また球状であってもよい。容器51は、一部又は全部が水溶性の部材で構成されており、水に漬かると、水溶性の部分が破れて中から粒剤等がこぼれ落ちる。
塊状製剤の形状は任意であり、例えば
図13(b)の塊状製剤52の様に立方体や直方体であってもよい。
上記した各実施形態では、フィルムや容器等で収容部材の壁を作り、当該壁で囲まれた空間内に粒剤等を充填したが、
図13(c)に示す塊状製剤55の様に、粒剤22を集め、その周囲を水溶性の樹脂液(結合部材)56で固めて固形状に成形してもよい。
【0057】
上記した実施形態では、農業資材として農薬含有粒剤を例示したが、粉体であってもよい。
一回に投下する塊状製剤20の個数は、一個であることが望ましいが、複数個であってもよい。塊状製剤の一個当たりの効果が有効な面積は、農業資材の種類や製剤中の含有量により異なるが、通常は各塊状製剤毎に推奨される使用条件の範囲にて決定することが好ましい。また圃場の環境条件等により変動させることも可能である。
【0058】
次に、塊状製剤20に内包される農薬含有粒剤(農業資材)22について説明する。
粒剤(農業資材)22は、化学的には農薬活性成分(有効成分)を含み、物理的には比重が1以下であって水に浮く固形物である。
粒剤22は、農薬活性成分の他に、浮遊助剤、及び増量剤を含有している。
【0059】
粒剤22に含有される農薬活性成分(有効成分)は特に限定されず、従来公知の各種の除草活性成分、植物生長調節活性成分、殺菌活性成分、殺虫活性成分等が挙げられる。
【0060】
殺虫活性成分及び昆虫成長調節活性成分としては、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、テトラメトリン、テフルスリン等のピレスロイド化合物;プロポキサー、イソプロカルブ、キシリルカルブ、メトルカルブ、チオジカルブ、XMC、カルバリル、ピリミカルブ、カルボフラン、メソミル、フェノキシカルブ、フェノブカルブ等のカーバメート化合物;アセフェート、トリクロルホン、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、ピリダフェンチオン、ピリミホスメチル、フェンチオン、フェニトロチオン、ダイアジオン、キナルホス、イソキサチオン、クロルピリホスメチル、バミドチオン、マラチオン、フェントエート、ジメトエート、ジスルオトン、モノクロトホス、クロルフェンビンホス、プロパホス、EPN、ピラクロホス、アジンホスエチル、アジンホスメチル等の有機リン化合物;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4-クロロ-2-(2-クロロ-2-メチルプロピル)-5-(6-ヨード-3-ピリジルメトキシ)ピリダジン-3(2H)-オン、1-(2、6-ジフルオロベンゾイル)-3-[2-フルオロ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1-(2、6-ジフルオロベンゾイル)-3-[2-フルオロ-4-(1、1、2、3、3、3-ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2-tert-ブチルイミノ-3-イソプロピル-5-フェニル-3、4、5、6-テトラヒドロ-2H-1、3、5-チアジアゾン-4-オン、1-(2、6-ジフルオロベンゾイル)-3-[2-フルオロ-4-(1、1、2、2-テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア化合物;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、チアメトキサム、ジノテフラン、チアクロプリド等のクロロニコチル化合物;スピノサドなどのスピノシン類;フルベンジアミド、クロラントラニリプロール、シアントラニリプロールなどのジアミド化合物;フィプロニル、エチプロールなどのフェニルピラゾール化合物;スピロテトラマット、スピロメシフェン、スピロジクロフェンなどのテトラミックアシッド化合物、カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、ヒドラメチルノン、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アベルメクチン、ホウ酸、パラジクロロベンゼンが挙げられる。
【0061】
殺菌活性成分としては、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール化合物;メタラキシル等のアシルアラニン化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、チフルザミド等のカルボキシアミド化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、SSF-126等のメトキシアクリレート化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、CGA245704、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3-アイオド-2-プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム、オリサストロビン、イソチアニル、チアジニル、チウラムが挙げられる。
【0062】
除草活性成分としては、ベンスルフロンメチル、ピラゾスルフロンエチル、アジムスルフロン、スルホスルフロン、イマゾスルフロン、プロピリスルフロン、フェンメディファム、アシュラム、ピリブチカルブ、プロパクロール、メタザクロール、テニルクロール、シマジン、アトラジン、プロパジン、シアナジン、アメトリン、シメトリン、ジメタメトリン、プロメトリン、イソキサベン、ジフルフェニカン、ジウロン、リニュロン、フルオメツロン、メチルダイムロン、イソプロツロン、イソウロン、テブチウロン、メタベンゾチアズウロン、プロパニル、メフェナセット、クロメプロップ、ナプロアニリド、ブロモブチド、ダイムロン、エトベンザニド、インダノファン、アミトロール、スルフェントラゾン、フェントラザミド、イソキサフルトール、クロリダゾン、ノルフルラゾン、ピリチオバック、ブロマシル、ターバシル、メトリブジン、オキサジクロメホン、シンメチリン、フルミクロラックペンチル、フルミオキサジン、フルチアセットメチル、アザフェニジン、オキサジアゾン、オキサジアルギル、ペントキサゾン、カフェンストロール、ピリミノバックメチル、ビスピリバックナトリウム、ピリフタリド、インダノファン、ベンゾビシクロン、ジチオピル、クロルチアミド、プレチラクロール、イプフェンカルバゾン、ピラクロニルが挙げられる。
【0063】
植物生長調節活性成分としては、マレイックヒドラジド、クロルメカット、エテフォン、ジベレリン、メピカットクロライド、チジアズロン、イナベンファイド、パクロブトラゾール、ウニコナゾールが挙げられる。
【0064】
これらの中でも、除草活性成分が好ましく、特に好ましくは、プロピリスルフロン、ブロモブチド、ベンゾビシクロン、ペントキサゾン、イプフェンカルバゾン、イマゾスルフロン、ピリミノバックメチル及びピラクロニルからなる群より選ばれる1種以上の除草活性成分である。
【0065】
粒剤(農業資材)22に含有される農薬活性成分(有効成分)の含有量は、粒状の100重量%に対して、通常0.1~80重量%、好ましくは0.5~70重量%、さらに好ましくは1~50重量%である。
【0066】
浮遊助剤は、その比重が1未満であり、粒剤の比重を小さくして水面に浮遊させるために添加する物質を意味する。ここで言う比重とは、見掛け比重のことであり、タップしないかさ密度のことである。通常、その測定方法は農薬公定法に記載のある、物理性検定法農林水産省告示第71号の見掛け比重に準じて測定する。粒剤に含有される浮遊助剤としては、無機質浮遊助剤及び有機質浮遊助剤が存在し、無機質浮遊助剤としては、ガラス微小中空体、発泡シラス、発泡軽石、発泡パーライトが例示される。また、有機質浮遊助剤としては、例えば、発泡合成樹脂(プラスチック微小中空体を含む)、ポリエチレン粉末やポリプロピレン粉末等の合成樹脂粉末、パラフィンワックス、動植物由来のろう状物質、コルク、木粉が挙げられる。これらのなかでも、ガラス微小中空体、発泡シラス、プラスチック微小中空体が好ましく、特にガラス微小中空体、プラスチック微小中空体が好ましい。
【0067】
ガラス微小中空体とは、その外殻の材質が、二酸化ケイ素(SiO2 )を主成分とし、Na2 O等のアルカリ金属酸化物やその他アルカリ土類金属酸化物、ホウ酸等を含むいわゆるガラスである中空粒子である。ガラス微小中空体の粒径は通常16~65μmであり、ここで、粒径とは、体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒径を指し、レーザー回折散乱式の粒度分布測定装置により測定することができる。市販されているガラス微小中空体としては、例えばグラスバブルズ(住友スリーエム株式会社製)が挙げられる。
【0068】
プラスチック微小中空体は、その外殻の材質が熱可塑性樹脂である中空粒子であり、プラスチックマイクロバルーンとも呼ばれる。熱可塑性樹脂としては、通常、塩化ビニリデン系共重合体、アクリロニトリル系共重合体、アクリル酸エステル系共重合体等が用いられている。プラスチック微小中空体の粒径は通常5~130μmであり、ここで、粒径とは、体積基準の頻度分布において累積頻度で50%となる粒径を指し、レーザー回折散乱式の粒度分布測定装置により測定することができる。市販されているプラスチック微小中空体としては、例えばマツモトマイクロスフェアーF-30E(外殻の材質が塩化ビニリデン-アクリロニトリル共重合体であるプラスチック微小中空体10重量%と水90重量%との混合物、松本油脂製薬株式会社製)が挙げられる。
【0069】
浮遊助剤の含有量は、粒剤の100重量%に対して、通常0.5~80重量%、好ましくは1~50重量%である。
【0070】
増量剤としては、通常の粒状農薬において用いられる固体担体を用いることができ、例えば、有機酸(クエン酸、コハク酸、マレイン酸など)又はその塩、尿素や糖類[ラクトース(乳糖)、グルコース、ショ糖など]等の水溶性担体、植物性粉末(例えば、大豆粉、タバコ粉、小麦粉、木粉など)、鉱物性又は無機質粉末(例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土、クレイ等のクレイ類、滑石粉、ろう石粉等のタルク類、珪藻土、雲母粉等のシリカ類、アルミナ、イオウ粉末、活性炭、塩化カリウム、硫安、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなど)などが挙げられ、ベントナイト及び炭酸カルシウムからなる群より選ばれる1種以上の増量剤が特に好ましい。本発明粒状農薬における成分fの含有量は、粒剤の100重量%に対して、通常5~90重量%、好ましくは10~90重量%である。
【0071】
粒剤はさらに、通常の粒状農薬において用いられる製剤用助剤を含有していてもよい。かかる製剤用助剤としては、結合剤、安定剤、着色料及び香料等が挙げられる。本発明粒状農薬が製剤用助剤を含有する場合、その含有量は、本発明粒状農薬の100重量%に対して、通常0.01~30重量%、好ましくは0.1~20重量%である。
【0072】
結合剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩など)、ポリビニルアルコール又はその誘導体、アルギン酸ナトリウム、キサンタンガム、アラビアガムなどの水溶性高分子などが挙げられる。これらの中でも、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩など)が特に好ましい。
【0073】
安定剤としては、例えば、フェノール酸化防止剤、アミン酸化防止剤、リン酸化防止剤、イオウ酸化防止剤、紫外線吸収剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化菜種油等のエポキシ化植物油、イソプロピルアシッドホスフェート、流動パラフィン、エチレングリコールなどが挙げられる。
【0074】
着色料としては、例えば、ローダミンB、ソーラーローダミンなどのローダミン類、黄色4号、青色1号、赤色2号などの色素等が、香料としては、例えば、アセト酢酸エチル、エナント酸エチル、桂皮酸エチル、酢酸イソアミル等のエステル香料、カプロン酸、桂皮酸等の有機酸香料、桂皮アルコール、ゲラニオール、シトラール、デシルアルコール等のアルコール香料、バニリン、ピペロナール、ペリルアルデヒド等のアルデヒド類、マルトール、メチルβ-ナフチルケトン等のケトン香料、メントールなどが挙げられる。
【0075】
水溶性フィルムは、水中で溶解するフィルムであればよく、例えば、ポリビニルアルコール又はその誘導体、プルラン、カルボキシメチルセルロースの塩(ナトリウム塩など)などの水溶性のセルロース誘導体、ポリエチレンオキサイド又はその誘導体を原料として成形されたフィルムが挙げられる。なかでも、ポリビニルアルコール又はその誘導体を原料として成形されたフィルムが好ましい。
【0076】
次に、自動制御されたマルチコプターを用いた実施形態について、説明する。
最初に本実施形態のハードウェア構成を説明する。
【0077】
図14に示すように、本実施形態のマルチコプター1は、マルチコプター制御システム60を搭載している。マルチコプター制御システム60は、マルチコプター1の自動操縦と地上側制御システム70とのデータの送受信を行うことができる。地上側には、マルチコプター1の制御と管理ならびにマルチコプター1とのデータ通信を行う地上側制御システム70が配置されている。
【0078】
マルチコプター制御システム60は、
図15(a)のように、GPS信号受信装置61、マルチコプター制御装置62、貯留タンク投下制御装置63、マルチコプター側送受信装置64、および統合コントローラ65を備えている。
一方、地上側制御システム70は、
図15(b)のように、地上側送受信装置71と地上側制御装置72から構成されている。また地上側制御装置72は、表示部73と地図情報入力部74を備えている。
【0079】
マルチコプター制御システム60の各ハードウェア構成要素は下記機能をもつ。
GPS信号受信装置61は、GPSアンテナ及びGPS受信装置から構成されており、GPS衛星からの信号を受信し、GPS受信データを統合コントローラ65に与える。
マルチコプター制御装置62は、統合コントローラ65からの指令に基き、マルチコプター1のロータ2を制御し、自動操縦を行う。
また貯留タンク投下制御装置63は、統合コントローラ65に制御され、貯留タンク10を制御し塊状製剤20を投下する。
マルチコプター側送受信装置64は、地上側送受信装置71との間で無線通信を行い、GPS受信データやマルチコプター1のステータス情報を地上側制御システム70へ送信する。マルチコプター側送受信装置64は、地上側送受信装置71との間で無線通信を行い、飛行ルート203や塊状製剤20の投下位置202等の情報を地上側制御システム70から受信する。
マルチコプター制御システム60の統合コントローラ65は、マイクロコンピュータ等のプログラム可能な素子で構成されるもので、ソフトウェアを動作させることで機能を実現している。この機能の詳細は、後述する。
【0080】
次に、地上側制御システム70の機能について、説明する。
地上側送受信装置71は、マルチコプター1のマルチコプター側送受信装置64との間で無線通信を行い、マルチコプター1からGPS受信信号及びマルチコプターステータス情報を受信する。一方、地上側送受信装置71は、自動運転操縦の飛行ルート203や塊状製剤20の投下位置202等の情報を、マルチコプター1へ送信する。
地上側制御装置72は、ノートパソコン等のプログラム可能な装置で構成されるもので、その機能については後述する。
【0081】
次に、マルチコプター制御システム60の統合コントローラ65と、地上側制御システム70の地上側制御装置72のソフトウェア(プログラム)構成を述べる。
図17(a)は統合コントローラ65のソフトウェア構成85を示し、
図17(b)は地上側制御装置72のソフトウェア構成90を示す。
【0082】
地上側制御装置72のソフトウェア構成90は、塊状製剤投下位置/投下個数算出プログラム91、最適飛行ルート算出プログラム92、必要容量算出プログラム93、地上側送受信制御プログラム94、施用記録管理プログラム95等を含むものである。
【0083】
塊状製剤投下位置/投下個数算出プログラム91についてその動作を述べる。地上側制御装置72には、適切な地図情報が地図情報入力部74から入力されている。またこの地図情報は表示部73に示され、この表示を見ながら施用目標の水田200の範囲を地上側制御装置72から入力することが可能な構成となっている。地図情報に示された施用目標の水田200の範囲から、
図18のように一点鎖線で区切られた多数のメッシュが算出される。このメッシュの個数が、塊状製剤20の必要な投下個数であり、メッシュの中心位置(太丸で示された位置)が、塊状製剤20の算出された投下位置202である。なお、塊状製剤20の必要な投下個数も表示部73に示される。塊状製剤20の効果が有効な面積は、地上側制御装置72より予め入力されている。
【0084】
次に、最適飛行ルート算出プログラム92についてその動作を述べる。マルチコプター1のスタート位置201は、マルチコプター1のGPS信号受信装置61から得ることができ、地上側制御装置72は、この信号を地上側送受信装置71から得ることができる。このマルチコプター1のスタート位置201を、
図18の様に地図情報に対応させる。そしてスタート位置201からすべてのメッシュの中心位置(投下位置202)を通り、このスタート位置201に帰ってくるまでの経路の長さを算出し、最短の距離の経路を求める。ここで、算出された最短の距離が、最適飛行ルートである。
【0085】
水田の平面形状は、前記した
図4の様な四角形のものが多いが、
図18に示す水田200の様な歪んだ形状のものもある。例えば
図18に示すような歪んだ平面形状の水田であっても、表示部73に仮想線が表示される。そして前記した様に、一点鎖線で囲まれた総てのメッシュの投下位置202に、塊状製剤20が投下される。
【0086】
飛行ルートを決定する指針として、総ての飛行ルートが圃場の上空にある様に決定されることが好ましい。本実施形態の最適飛行ルート算出プログラム92では、
図18の様に、総ての飛行ルートが圃場の上空にある様に決定される。例えば
図19の様に、マルチコプター1が、農道上空を通過する様な飛行ルート303は、飛行距離が短くでもプログラムによって自動的に除外される。
【0087】
また
図20の様に、水田400、410、420が飛び地状に存在する場合には、水田毎に施用が実施される。即ち水田400に関しては、
図20の飛行ルート403に従ってマルチコプター1を離着陸させて塊状製剤20を施用する。水田400に対する施用が完了すると、トラック等でマルチコプター1を次の水田410の近傍に移動させ、
図20の飛行ルート413に従ってマルチコプター1を離着陸させて施用する。そして、水田410に対する施用が完了すると、トラック等でマルチコプター1を次の水田420の近傍に移動させ、
図20の飛行ルート423に従ってマルチコプター1を離着陸させて施用する。
【0088】
必要容量算出プログラム93は、上記最適飛行ルートを飛行するのに要する蓄電池の必要容量を算出するプログラムである。直線部、様々な角度での方向変換部においての必要容量を算出する。そしてその総和が蓄電池の必要容量となる。また現在の蓄電池の残容量が、上記最適飛行ルートを飛行するのに充分かどうかの判定を行う。
【0089】
地上側送受信制御プログラム94は、マルチコプター1と地上側制御システム70の間の無線データ通信を実行する地上側送受信装置71を制御するプログラムである。即ち、地上側送受信制御プログラム94は、地上側送受信装置71を使って、地上側制御装置72で計算された最適飛行ルートと塊状製剤投下位置/投下個数等とを地上側制御システム70からマルチコプター1に送信するプログラムである。また、地上側送受信制御プログラム94は、マルチコプター1からのGPS受信信号及びマルチコプターステータス情報(例えば、蓄電池の残容量、塊状製剤、あるいはエラー情報等)を地上側送受信装置71を使って、受信するプログラムである。
【0090】
施用記録管理プログラム95は、マルチコプター1の飛行ルート203と塊状製剤20の投下位置等を、記録するプログラムである。この時、施用を実行した年月日/時間、塊状製剤20の種類/個数も併せて記録する。この情報は、施用記録のデータベースの基礎データとして活用していくものである。
【0091】
次にマルチコプター制御システム60の統合コントローラ65のソフトウェア(プログラム)構成85について、述べる。
統合コントローラ65のソフトウェア構成85は、GPS信号受信制御プログラム86、マルチコプター制御プログラム87、貯留タンク投下制御プログラム88、マルチコプター側送受信制御プログラム89を含むものである。
【0092】
GPS信号受信制御プログラム86は、GPS信号受信装置61を使って受信するプログラムである。また受信したGPS受信信号を統合コントローラ65のメモリ(図示せず)に受信した時間情報とともにストアするものである。
【0093】
マルチコプター制御プログラム87は、マルチコプター制御装置62を制御して、マルチコプター1を飛行させるプログラムである。この時GPS信号受信制御プログラム86で得られ、統合コントローラ65のメモリにストアされているGPS受信信号を使いながら、地上側制御システム70で算出されマルチコプター1に送付された飛行ルート203に沿って、マルチコプター1を制御し、飛行させる。また投下位置202でマルチコプター1をホバリングさせる制御も本プログラムで行っている。
【0094】
貯留タンク投下制御プログラム88は、貯留タンク投下制御装置63を制御して、マルチコプター1から塊状製剤20を投下させるプログラムである。また投下がうまく作動しない場合、投下をリトライする処理も含むプログラムである。さらに、一定回数リトライしても投下できない場合はエラーステータスを生成する。
【0095】
マルチコプター側送受信制御プログラム89は、マルチコプター1と地上側制御システム70との間の無線データ通信をマルチコプター側送受信装置64を使って、実行するプログラムである。即ち、地上側制御システム70で最適飛行ルート算出プログラム92を使って算出された最適飛行ルートと、塊状製剤投下位置/投下個数プログラムを使って算出された塊状製剤投下位置/投下個数等とを地上側制御システム70から受信するプログラムである。またマルチコプター1が得たGPS受信信号及びマルチコプターステータス情報(例えば、蓄電池の残容量、塊状製剤、あるいはエラー情報等)をマルチコプター1から地上側制御システム70に送信するプログラムである。
【0096】
本発明の自動制御されたマルチコプターの別の実施形態として、さらに
図16に示すように水田100の近辺に風量器81、風向器82を設置してもよい。この時、地上側制御システム70の地上側制御装置72は、水田100の風量と風向に関する情報を風量器81ならびに風向器82から得ることができ、風の影響を考慮してさらに高精度に塊状製剤20の投下位置を算出することができる。
【0097】
以下、自動制御されたマルチコプターの使用方法について説明する。
マルチコプター1の使用者は、地上側制御システム70を使って、地図情報を地図情報入力部74から入力する。そして地上側制御システム70の表示部73で表示される地図上に施用目標の水田200の範囲情報を登録する。この時、塊状製剤投下位置/投下個数算出プログラム91が動作し、表示部73に塊状製剤20の投下位置202が示されるとともに、塊状製剤20の必要な投下個数も表示される。この必要な投下個数分の塊状製剤20を、貯留タンク10の収容部11に収納する。収容部11にその時点で収納されている塊状製剤20の個数では不足する場合は、不足分の個数の塊状製剤20を収納する。逆に収納されている塊状製剤20の個数が過剰な場合は、搭載個数を減らし塊状製剤20の個数を必要個数に合わせる。これにより、蓄電池に対する負荷を少なくすることができ、蓄電池の充電回数を減ずることが可能で、蓄電池の寿命を伸ばすことができる。
【0098】
ここで、もし必要な投下個数が収容部11の最大収容数を超えていれば、塊状製剤投下位置/投下個数算出プログラム91ならびに最適飛行ルート算出プログラム92を動作させ、飛行ルート203を2つ以上の複数のルートに分けて、複数の最適飛行ルート203および各々の飛行ルート203における投下位置202を算出する。
【0099】
最後に上記した飛行ルート203を飛行するのに要する蓄電池の必要容量を、必要容量算出プログラム93を動作させて算出する。そして残容量が必要容量より少ない場合、蓄電池は算出された必要容量を上回るように充電される。
【0100】
以上の準備を行った上で、マルチコプター1を
図18のスタート位置201から飛行を開始させ、飛行ルート203に沿って自動操縦で飛行させる。ここで
図18の黒丸で示す投下位置202に到達すると、マルチコプター1は自動的にホバリング動作を行い塊状製剤20を投下する。この飛行/ホバリング/投下動作を繰り返し、マルチコプター1は、最終的にスタート位置201に戻ってくる。そして上記したように飛行ルート203が複数ある場合は、スタート位置201から飛行/ホバリング/投下動作を行いスタート位置へ戻ってくる動作を繰り返し実行させる。
【0101】
上記において、塊状製剤20の投下がうまく作動しない場合は、貯留タンク投下制御プログラム88にはリトライ処理が含まれているので、一定回数の投下をリトライする。そしてリトライ回数内で投下できない場合はエラーステータスが生成され、地上側制御システム70に送信される。
【0102】
上記動作によるマルチコプター1の飛行ルート203、塊状製剤20の投下位置202は、施用記録管理プログラム95によって記録され、将来のために残される。
【0103】
上記した実施形態では、自動操縦されるマルチコプターの位置情報を得るためにGPS信号を用いたが、本発明は位置情報を得るための手法をGPSに限定するものではない。
2018年11月1日、日本版GPSである準天頂衛星システム「みちびき」のサービスが始まった。この「みちびち」とGPSを併用することでセンチメートル単位の精度で位置情報を得ることができる。上記した位置情報を得る手段として、GPSと「みちびき」とを併用してもよい。この実施形態によると、マルチコプター1の実際の飛行ルート203ならびに投下位置202を、算出した飛行ルート203と投下位置202に精度良く合致させることができる。
【0104】
上記実施形態のGPS信号受信装置の替わりに、加速度計を配置し加速度計により3次元の加速度を測定し、この加速度から速度、移動距離を算出することでマルチコプターの位置情報を得てもよい。
【0105】
上記した実施例では、適切な地図情報を地図情報入力部74から入力し、さらに表示部73で表示される地図上に施用目標の水田200の範囲情報を登録する手法を用いている。しかしながら本発明の施用目標の水田200の範囲情報を得る手段は、この手段に限られるものではない。
上記した実施例では、水田200を地図情報入力部74から地上側制御システム70に入力するのに先立ち、地図上に正確に施用目標の水田200の範囲情報を記入することが必要で、このため手間がかかる。
上記の手間を避けるべく、別の実施形態として、マルチコプター1に発光部と受光部を有する光電スイッチを配し、施用目標の水田200の境界線に反射板を配置してもよい。ここで境界線においてのみ反射光が検知されるので、境界線上の地図を認識するために必要な複数の地点の位置情報をGPS信号受信装置61を使って、得ることができる。この範囲情報は地上側制御装置72に送信され、地上側制御装置72が登録されている地図情報にインプットされる。この手法を用いると、施用目標の水田200の範囲が手間を要することなく、比較的に簡単に得ることができる。
【0106】
またより簡便な方法として、目視によってマルチコプター1を飛行させるとともに、例えば
図11に示す貯留タンク33を採用し、マルチコプター1の位置とは関係なく、一定時間置きに塊状製剤20を投下することとしてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1 マルチコプター
2 ロータ
10、28、33、35、40、42 貯留タンク
17 切り欠き(開口部)
11 収容部
13 収容室
20、50、52、55 塊状製剤
21 フィルム
22 粒剤
23 袋
25 収容部材
51 容器(収容部材)
54 開口部