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特許7333277パターン検査装置の故障診断方法及びパターン検査装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-16
(45)【発行日】2023-08-24
(54)【発明の名称】パターン検査装置の故障診断方法及びパターン検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/30 20060101AFI20230817BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20230817BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20230817BHJP
【FI】
G01B11/30 A
G03F1/84
G01N21/956 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020000502
(22)【出願日】2020-01-06
(65)【公開番号】P2021110556
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】眞野 敬史
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-125416(JP,A)
【文献】特開2016-145887(JP,A)
【文献】特開2013-120101(JP,A)
【文献】特開2008-14768(JP,A)
【文献】特開2018-205184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/30
G03F 1/84
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パターン検査装置の画像取得機構を用いて、パターンが形成された基板のパターン検査を開始する前に前記基板の所定の領域の第1の光学画像を取得する工程と、
取得された前記所定の領域の第1の光学画像のデータを用いて前記第1の光学画像の複数の画素の第1の値を演算する工程と、
前記画像取得機構を用いて、前記基板の前記パターン検査の途中で、前記第1の光学画像の領域と同じ前記基板の前記所定の領域の第2の光学画像を取得する工程と、
取得された前記所定の領域の第2の光学画像のデータを用いて、前記第1の値の演算と同じ演算を行うことにより前記第2の光学画像の複数の画素の第2の値を演算する工程と、
前記第1の光学画像の前記複数の画素の第1の値と前記第2の光学画像の前記複数の画素の第2の値との差分が差分閾値の範囲内から外れる画素が存在する場合に前記パターン検査装置の故障と判定し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置の故障診断方法。
【請求項2】
前記所定の領域として、前記基板上の前記パターンが形成される領域のうちの欠陥個所を含む領域が用いられることを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置の故障診断方法。
【請求項3】
前記所定の領域として、前記基板上の前記パターンが形成される領域のうちの任意の領域が用いられることを特徴とする請求項1記載のパターン検査装置の故障診断方法。
【請求項4】
前記基板の検査領域は、複数のストライプ領域に分割され、
前記パターン検査は、前記複数のストライプ領域のストライプ領域毎に実施され、
前記基板に形成されたパターンの欠陥が検出されなくなったストライプ領域の数が所定数まで達した後で、前記所定の領域の第2の光学画像が取得されることを特徴とする請求項1~3いずれかに記載のパターン検査装置の故障診断方法。
【請求項5】
パターンが形成された基板のパターン検査を開始する前に前記基板の所定の領域の第1の光学画像を取得すると共に、前記基板のパターン検査の途中で、前記第1の光学画像の領域と同じ前記基板の前記所定の領域の第2の光学画像を取得する画像取得機構と、
取得された前記所定の領域の第1の光学画像のデータを用いて前記第1の光学画像の複数の画素の第1の値を演算すると共に、取得された前記所定の領域の第2の光学画像のデータを用いて、前記第1の値の演算と同じ演算を行うことにより前記第2の光学画像の複数の画素の第2の値を演算する演算処理回路と、
前記第1の光学画像の前記複数の画素の第1の値と前記第2の光学画像の前記複数の画素の第2の値との差分が差分閾値の範囲内から外れる画素が存在する場合に前記パターン検査装置の故障と判定する判定処理回路と、
を備えたことを特徴とするパターン検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パターン検査装置の故障診断方法及びパターン検査装置に関する。例えば、半導体製造に用いる物体のパターン欠陥を検査する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、パターンを転写する原版のパターン欠陥があげられる。例えば、紫外光で解像可能なパターンの欠陥が挙げられる。また、かかる微細化に伴って、例えば数nm~数十nmといった、紫外光を使った検査装置では解像困難なサイズの非解像パターンを転写する技術の開発が進められている。例えば、微細な凹凸パターンが形成されたテンプレートを試料に押し付けてパターンを転写するナノインプリントリソグラフィ技術の開発が進められている。そのため、原版のパターン欠陥として、解像可能なパターンの欠陥の他、例えば、紫外光で解像困難なパターンの欠陥が挙げられる。
【0003】
そのため、原版のパターン欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。検査手法としては、例えば、同一原版上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
検査装置では、検査前に欠陥を含む領域の画像をサンプリングして、欠陥が検出できるように検査閾値を設定することが行われる。しかし、検査前に欠陥を検出することができた場合であっても、検査の途中で装置光学系等の故障が生じた場合に、本来、欠陥として検出されるべきものを取りこぼす事態が発生し得る。よって、欠陥の取りこぼしが生じ得る故障が発生しているかどうかを自己診断する機能が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-206169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の一態様は、欠陥の取りこぼしが生じ得る故障が検査装置に発生しているかどうかを自己診断可能な方法及びかかる方法を実行する機能を搭載した検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のパターン検査装置の故障診断方法は、
パターン検査装置の画像取得機構を用いて、パターンが形成された基板のパターン検査を開始する前に基板の所定の領域の第1の光学画像を取得する工程と、
取得された所定の領域の第1の光学画像のデータを用いて第1の光学画像の複数の画素の第1の値を演算する工程と、
画像取得機構を用いて、基板のパターン検査の途中で、第1の光学画像の領域と同じ基板の上述した所定の領域の第2の光学画像を取得する工程と、
取得された所定の領域の第2の光学画像のデータを用いて、第1の値の演算と同じ演算を行うことにより第2の光学画像の複数の画素の第2の値を演算する工程と、
第1の光学画像の複数の画素の第1の値と第2の光学画像の複数の画素の第2の値との差分が差分閾値の範囲内から外れる画素が存在する場合にパターン検査装置の故障と判定し、結果を出力する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、所定の領域として、基板上のパターンが形成される領域のうちの欠陥個所を含む領域が用いられると好適である。
【0009】
或いは、所定の領域として、基板上のパターンが形成される領域のうちの任意の領域が用いられると好適である。
【0010】
また、基板の検査領域は、複数のストライプ領域に分割され、
パターン検査は、複数のストライプ領域のストライプ領域毎に実施され、
基板に形成されたパターンの欠陥が検出されなくなったストライプ領域の数が所定数まで達した後で、所定の領域の第2の光学画像が取得されると好適である。
【0011】
本発明の一態様のパターン検査装置は、
パターンが形成された基板のパターン検査を開始する前に基板の所定の領域の第1の光学画像を取得すると共に、基板のパターン検査の途中で、第1の光学画像の領域と同じ基板の上述した所定の領域の第2の光学画像を取得する画像取得機構と、
取得された所定の領域の第1の光学画像のデータを用いて第1の光学画像の複数の画素の第1の値を演算すると共に、取得された所定の領域の第2の光学画像のデータを用いて、第1の値の演算と同じ演算を行うことにより第2の光学画像の複数の画素の第2の値を演算する演算処理回路と、
第1の光学画像の複数の画素の第1の値と第2の光学画像の複数の画素の第2の値との差分が差分閾値の範囲内から外れる画素が存在する場合にパターン検査装置の故障と判定する判定処理回路と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、欠陥の取りこぼしが生じ得る故障が検査装置に発生しているかどうかを自己診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。
図3】実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。
図4】実施の形態1における診断回路の内部構成の一例を示す図である。
図5】実施の形態1におけるサンプリング領域を説明するための図である。
図6】実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。
図7】実施の形態1における各画素の反応値の一例を説明するための図である。
図8】実施の形態1における診断のための画像取得を説明するための図である。
図9】実施の形態1の変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、検査対象基板に形成されたパターンの欠陥を検査する検査装置100は、光学画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。
【0015】
光学画像取得機構150は、光源103、照明光学系170、ビームスプリッタ174、拡大光学系104、移動可能に配置されたXYθテーブル102、結像光学系176、フォトダイオードアレイ105(センサの一例)、センサ回路106、ストライプパターンメモリ123、及びレーザ測長システム122を有している。XYθテーブル102上には、検査対象の試料となる基板101が配置される。基板101として、例えば、露光用マスクやナノインプリントリソグラフィ用のテンプレートが含まれる。また、このテンプレートには、光源103から発生する光の波長では解像できない非解像パターンが形成される。以下、基板101として、例えば、非解像パターンが形成されたテンプレートを用いる場合を説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を下側に向けてXYθテーブル102に配置される。
【0016】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、診断回路140、磁気ディスク装置109、GUI(グラフィックユーザインタフェース)116、外部インターフェース(I/F)117、パターンモニタ118、及びプリンタ119に接続されている。また、センサ回路106は、ストライプパターンメモリ123に接続され、ストライプパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYθテーブル102は、X軸モータ、Y軸モータ、θ軸モータにより駆動される。XYθテーブル102は、ステージの一例となる。
【0017】
なお、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、及び診断回路140といった一連の「~回路」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、オートローダ制御回路113、テーブル制御回路114、及び診断回路140といった一連の「~回路」は、制御計算機110によって構成され、実行されても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置109、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。
【0018】
検査装置100では、光源103、照明光学系170、ビームスプリッタ174、拡大光学系104、結像光学系176、フォトダイオードアレイ105、及びセンサ回路106により高倍率の検査光学系が構成されている。また、XYθテーブル102は、制御計算機110の制御の下にテーブル制御回路114により駆動される。X方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系によって移動可能となっている。これらの、Xモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYθテーブル102は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYθテーブル102上に配置された基板101の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。
【0019】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成部分について記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成が含まれても構わないことは言うまでもない。
【0020】
図2は、実施の形態1における検査領域を説明するための概念図である。基板101の検査領域10(検査領域全体)は、図2に示すように、例えばY方向に向かって、スキャン幅Wの短冊状の複数の検査ストライプ20(ストライプ領域)に仮想的に分割される。実施の形態1におけるパターン検査は、検査ストライプ20毎に実施される。パターン検査では、検査に用いる画像の取得と、取得された画像を使った比較処理とが実施される。そこで、検査装置100では、検査ストライプ20毎に画像(ストライプ領域画像)を取得していく。検査ストライプ20の各々に対して、レーザ光を用いて、当該ストライプ領域の長手方向(X方向)に向かって当該ストライプ領域内に配置される図形パターンの画像を撮像する。XYθテーブル102の移動によってフォトダイオードアレイ105が相対的にX方向に連続移動しながら光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105では、図2に示されるようなスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。言い換えれば、センサの一例となるフォトダイオードアレイ105は、XYθテーブル102(ステージ)と相対移動しながら、検査光を用いて基板101に形成されたパターンの光学画像を撮像する。実施の形態1では、1つの検査ストライプ20における光学画像を撮像した後、Y方向に次の検査ストライプ20の位置まで移動して今度は逆方向に移動しながら同様にスキャン幅Wの光学画像を連続的に撮像する。すなわち、往路と復路で逆方向に向かうフォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の方向で撮像を繰り返す。
【0021】
また、各検査ストライプ20のストライプ領域画像は、図2に示すように、例えば、スキャン幅で長手方向に向かって複数のフレーム画像に分割される。そして、フレーム画像毎に検査を行っていく。各検査ストライプ20のストライプ領域がかかるフレーム画像のサイズに分割された領域がフレーム領域30となる。言い換えれば、各検査ストライプ20のストライプ領域が、図2に示すように、例えば、スキャン幅で長手方向に向かって複数のフレーム領域30に分割される。例えば、512×512画素のサイズに分割される。図2の例では、フレーム領域30の各辺のサイズと検査ストライプ20の幅(短手方向)サイズが同じサイズの場合を示しているが、これに限るものではない。異なるサイズであっても構わない。例えば、フレーム領域30の各辺のサイズが検査ストライプ20の幅(短手方向)サイズの1/2になるように設定しても好適である。
【0022】
ここで、撮像の方向は、フォワード(FWD)-バックフォワード(BWD)の繰り返しに限るものではない。一方の方向から撮像してもよい。例えば、FWD-FWDの繰り返しでもよい。或いは、BWD-BWDの繰り返しでもよい。次に、光学画像取得機構150による画像の取得動作について具体的に説明する。
【0023】
基板101の検査領域には、適切な光源103から、検査光となる紫外域以下の波長のレーザ光(例えば、DUV光)が照明光学系170によりビームスプリッタ174に照射される。照射されたレーザ光は、ビームスプリッタ174で反射して、拡大光学系104により基板101に照射される。基板101から反射した光は拡大光学系104及びビームスプリッタ174を通過して、結像光学系176によりフォトダイオードアレイ105(センサの一例)に光学像として結像し、入射する。フォトダイオードアレイ105として、例えば、TDI(タイム・ディレイ・インテグレーション)センサを用いると好適である。
【0024】
フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D(アナログ・デジタル)変換される。そして、ストライプパターンメモリ123に、測定対象の検査ストライプ20の画素データが格納される。その後、ストライプ領域画像は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上における基板101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0025】
ここで、基板101の一例となるテンプレートには、上述したように、光源103から発生する光の波長では解像できない非解像パターンが形成される場合がある。かかる場合、得られる画像からは、形成されている図形パターンの形状を識別することが困難である。また、被検査単位となるフレーム領域30内では、同じパターンが繰り返し形成されている場合が多い。よって、得られる画像内の各画素の階調値は、欠陥が存在しなければ、互いにある範囲内の近い中間階調値になることが想定される。そこで、実施の形態1では、得られた画像内の各画素について、同じ画像内の他の画素の階調値との違いを反応値として求め、かかる反応値を反応閾値と比較することにより、欠陥個所を検出する検査手法を用いる場合を一例として説明する。なお、かかる検査手法では、設計データから作成される参照画像との比較(ダイーデータベース検査)を行わないので、図1の参照画像作成回路112は省略しても構わない。
【0026】
図3は、実施の形態1における検査方法の要部工程の一例を示すフローチャート図である。図3において、実施の形態1における検査方法は、サンプリング領域画像(1)取得工程(S102)と、画像(1)反応値演算工程(S106)と、欠陥未検出ストライプ数閾値設定工程(S112)と、検査処理工程(S120)と、判定工程(S130)と、判定工程(S140)と、サンプリング領域への移動工程(S142)と、サンプリング領域画像(2)取得工程(S144)と、画像(2)反応値演算工程(S146)と、判定工程(S148)と、いう一連の工程を実施する。また、検査処理工程(S120)は、内部工程として、ストライプ画像取得工程(S122)と、フレーム画像作成工程(S124)と、反応値演算工程(S126)と、比較処理工程(S128)と、いう一連の工程を実施する。
【0027】
サンプリング領域画像(1)取得工程(S102)として、光学画像取得機構150(画像取得機構)は、パターンが形成された基板101のパターン検査を開始する前に基板101のサンプリング領域(所定の領域)の光学画像(第1の光学画像)を取得する。
【0028】
図4は、実施の形態1における診断回路の内部構成の一例を示す図である。図4において、診断回路140内には、磁気ディスク装置等の記憶装置80、サンプリング領域設定部72、欠陥未検出ストライプ数閾値設定部82、判定部84、画像再取得制御部86、及び判定部88が配置される。サンプリング領域設定部72、欠陥未検出ストライプ数閾値設定部82、判定部84、画像再取得制御部86、及び判定部88といった一連の「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。サンプリング領域設定部72、欠陥未検出ストライプ数閾値設定部82、判定部84、画像再取得制御部86、及び判定部88に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリに記憶される。
【0029】
まず、サンプリング領域設定部72は、基板101の検査領域10の中からサンプリング領域を設定する。
【0030】
図5は、実施の形態1におけるサンプリング領域を説明するための図である。図5に示すように、サンプリング領域設定部72は、サンプリング領域11として、基板101上のパターンが形成される検査領域10のうちの欠陥個所12を含む領域を設定する。ここでは、あえて、特徴的な反応値を示すと想定される欠陥個所12を含む領域を用いる場合を示している。但し、これに限るものではない。検査前と検査途中とで同じ画像が得られているかどうかを判定できればよいので、サンプリング領域設定部72は、サンプリング領域11として、基板101上のパターンが形成される検査領域10のうちの任意の領域を設定しても構わない。かかる場合、任意の領域なので、欠陥の存在有無は不明となる。サンプリング領域11として、例えば、フレーム領域30と同様のサイズに設定すると好適である。但し、これに限るものではない。フレーム領域30よりも小さいサイズであっても構わない。例えば、フレーム領域30のn(nは2以上の整数)分の1のサイズに設定しても構わない。或いはフレーム領域30よりも大きいサイズであっても構わない。
【0031】
そして、サンプリング領域11を撮像可能な位置にXYθテーブル102を移動させる。そして、光学画像取得機構150は、サンプリング領域11の光学画像(サンプリング領域画像(1))を取得する。光学画像の取得動作は、上述した通りである。XYθテーブル102の移動によってフォトダイオードアレイ105が相対的にX方向に連続移動しながらサンプリング領域11の光学画像が取得される。フォトダイオードアレイ105上に結像されたパターンの像は、フォトダイオードアレイ105の各受光素子によって光電変換され、更にセンサ回路106によってA/D変換される。そして、ストライプパターンメモリ123に、サンプリング領域11の画素データが格納される。ここで、サンプリング領域11を含む検査ストライプ20単位で撮像しても良いし、サンプリング領域11だけを撮像しても良い。撮像されたサンプリング領域11の光学画像データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上における基板101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0032】
図6は、実施の形態1における比較回路の内部構成の一例を示す図である。図6において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,54,68、フレーム画像作成部52、反応値演算部56、及び比較処理部58が配置される。フレーム画像作成部52、反応値演算部56、及び比較処理部58といった一連の「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。フレーム画像作成部52、反応値演算部56、及び比較処理部58に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリに記憶される。
【0033】
撮像されたサンプリング領域11の光学画像データは、比較回路108内の記憶装置50に格納される。光学画像データがサンプリング領域11を含む検査ストライプ20単位で撮像された場合には、フレーム画像作成部52がサンプリング領域11のフレーム画像を作成する。サンプリング領域11のフレーム画像は記憶装置54に格納される。サンプリング領域11の光学画像データがフレーム領域30サイズ或いはフレーム領域30よりも小さいサイズで撮像された場合、フレーム画像作成部52での処理をせずに記憶装置54に格納される。
【0034】
画像(1)反応値演算工程(S106)として、反応値演算部56(演算処理回路)は、取得されたサンプリング領域11の光学画像のデータを用いてサンプリング領域11の光学画像の複数の画素の反応値t1(第1の値)を演算する。
【0035】
図7は、実施の形態1における各画素の反応値の一例を説明するための図である。図7の例では、反応値演算部56は、例えば、サンプリング領域11の測定画像内のすべての画素の階調値の平均値を演算する。そして、サンプリング領域11の測定画像内の画素毎に、対象となる画素32の階調値と演算された平均値との差分を反応値t1として演算する。図7の例では、サンプリング領域11となったフレーム領域30内の測定画像のすべての画素の階調値の平均値が例えば100である場合であって、対象となる画素32の階調値が例えば120であれば、かかる画素32の反応値は20となる。但し、これに限るものではない。例えば、同じ画像内で対象画素32を含む部分領域31の複数の画素の階調値の平均値と対象画素32の階調値との差分値であっても好適である。或いは、同じ画像内で対象画素32を含むx方向或いはy方向の画素列33の複数の画素の階調値の平均値と対象画素32の階調値との差分値であっても好適である。或いは、これらの平均値の代わりに、その他の統計値(例えば、中央値、或いは最小値等)を用いる場合でも良い。或いは、反応値として、上述した差分値の代わりに、対象画素32の階調値と例えば平均値との比率であっても良い。或いは、対象画素32と対象画素32以外のその他の画素の階調値とを用いたその他のアルゴリズムによって演算された値であっても良い。演算された各画素の反応値は、診断回路140に出力され、記憶装置80に格納される。
【0036】
上述したように、検査処理工程(S120)(基板のパターン検査)前に欠陥を検出することができた場合であっても、検査の途中で、例えば、光量異常やXYθテーブル102の走行異常といった、画像を取得する際に使用される光学系や走行系の故障等の装置故障が生じた場合に、得られる画像の精度が劣化して、本来、欠陥として検出されるべきものを取りこぼす事態が発生し得る。よって、欠陥の取りこぼしが生じ得る故障が発生しているかどうかを自己診断する機能が求められる。そこで、実施の形態1では、検査の結果、欠陥が未検出の検査ストライプ20の数が、所定数まで達した場合に、例えば光学系や走行系の故障等の装置故障が生じたか否かを診断回路140で診断する。そのために、まず、故障診断を開始するための欠陥が未検出の検査ストライプ20の数の閾値を設定する。
【0037】
欠陥未検出ストライプ数閾値設定工程(S112)として、欠陥未検出ストライプ数閾値設定部82は、故障診断を開始する欠陥未検出ストライプ数閾値mを設定する。欠陥未検出ストライプ数閾値mとして、例えば、10~100程度の値が好適である。
【0038】
以上の検査処理前の各工程が実行された後、検査処理工程(S120)を実施する。言い換えれば、基板101に形成されたパターンの欠陥の有無の検査が開始される前に、サンプリング領域11の光学画像が取得される。検査処理工程(S120)では、基板101から検査ストライプ20毎に取得される光学画像を用いて上述したサンプリング領域11の光学画像における複数の画素の反応値t1の演算と同じ演算を行うことにより得られた反応値(被検査対象値)と、予め設定されている判定閾値thとを比較することによって、パターンの欠陥の有無を検査する。具体的には以下のように動作する。
【0039】
ストライプ画像取得工程(S122)として、光学画像取得機構150は、検査ストライプ20毎に、基板101から光学画像を取得する。光学画像の取得の仕方は、上述した通りである。取得されたストライプ領域画像のデータ(ストライプデータ)は、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上における基板101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。
【0040】
比較回路108に入力されたストライプデータ(光学画像データ)は記憶装置50に格納される。また、比較回路108に入力された反応閾値thは記憶装置66に格納される。
【0041】
フレーム画像作成工程(S124)として、フレーム画像作成部52は、ストライプ領域画像からフレーム領域30毎のフレーム画像を作成する。例えば、512×512画素のフレーム画像を作成する。複数のフレーム画像30は、隣接するフレーム画像30同士間が所定のマージン幅でオーバーラップするように作成されると好適である。かかる処理により、複数のフレーム領域30に応じた複数のフレーム画像30(光学画像)が取得される。複数のフレーム画像30は、記憶装置54に格納される。以上により、検査のために比較される画像(測定された画像)データが生成される。
【0042】
反応値演算工程(S126)として、反応値演算部56は、フレーム画像毎に、フレーム画像のデータを用いて複数の画素の反応値tを演算する。ここで演算される反応値tは、サンプリング領域11の光学画像における複数の画素の反応値t1の演算と同じ演算を行うことにより求められる。例えば、同じフレーム画像内の画素毎に、対象となる画素の階調値と、同じフレーム画像内の全画素の階調値の平均値との差分を反応値tとして演算する。
【0043】
比較処理工程(S128)として、比較処理部58は、画素毎に、反応値tと反応閾値thとを比較して、フレーム画像内のパターンの欠陥を検査する。例えば、反応値tが反応閾値thより大きい場合を欠陥と判定する。そして、比較結果(検査結果)が出力される。比較結果は、記憶装置68に格納されると共に、磁気ディスク装置109、或いは/及びパターンモニタ118に出力される、或いは/及び外部I/F117を介して外部に出力される。或いは/及びプリンタ119から出力されても構わない。
【0044】
判定工程(S130)として、制御計算機110は、すべての検査ストライプ20の検査が終了したかどうかを判定する。まだ検査されていない検査ストライプ20が残っている場合には、検査処理工程(S120)に戻り、まだ検査されていない次の検査ストライプ20の検査を実施する。すべての検査ストライプ20の検査が終了した場合には、検査処理を終了する。
【0045】
かかる複数の検査ストライプ20の検査処理が行われる間、診断回路140では、以下の動作を実施する。
【0046】
判定工程(S140)として、判定部84は、複数の検査ストライプ20の検査処理が行われる間、記憶装置68に格納された検査結果を参照して、欠陥が未検出の検査ストライプ20の数が、例えば連続して欠陥未検出ストライプ数閾値mまで達したかどうかを判定する。欠陥が未検出の状態が続く場合には、画像を取得する際の装置故障等が発生した可能性があると判定する。欠陥未検出ストライプ数閾値mまで達していない場合には、検査処理工程(S120)を続行する。欠陥未検出ストライプ数閾値mまで達した場合には、サンプリング領域への移動工程(S142)へと進む。
【0047】
サンプリング領域への移動工程(S142)として、画像再取得制御部86の制御のもと、テーブル制御回路114は、サンプリング領域11を撮像可能な位置にXYθテーブル102を移動させる。
【0048】
図8は、実施の形態1における診断のための画像取得を説明するための図である。図9に示すように、欠陥未検出ストライプ数閾値mに達したと判定された時点で撮像していた検査ストライプ20があれば、かかる検査ストライプ20のスキャン動作が終了した時点で、検査前に反応閾値thを設定するために撮像したサンプリング領域11に戻ると好適である。故障診断の結果、正常であると判断される場合に、撮像していた検査ストライプ20の途中でサンプリング領域11に戻ると、撮像していた検査ストライプ20のスキャン動作がやり直しになってしまう。そのため、撮像していた検査ストライプ20のスキャン動作が終了した時点でサンプリング領域11に戻ることで、スキャンのやり直しを回避できる。
【0049】
サンプリング領域画像(2)取得工程(S144)として、光学画像取得機構150は、一連の検査処理工程(S120)(パターン検査処理)の途中で、検査開始前に行ったサンプリング領域11の光学画像(第1の光学画像)の領域と同じ基板101のサンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)を取得する。言い換えれば、画像再取得制御部86の制御のもと、光学画像取得機構150は、再度、パターンが形成された基板101のサンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)を取得する。サンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)は、パターン検査処理の開始後であって基板101に形成されたパターンの欠陥が検出されなくなった検査ストライプ20の数が所定数に達した後で、サンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)が取得される。光学画像の取得動作は、上述した通りである。ここで、サンプリング領域11を含む検査ストライプ20単位で撮像しても良いし、サンプリング領域11だけを撮像しても良い。撮像されたサンプリング領域11の光学画像データは、位置回路107から出力されたXYθテーブル102上における基板101の位置を示すデータと共に比較回路108に送られる。測定データ(画素データ)は例えば8ビットの符号なしデータであり、各画素の明るさの階調(光量)を表現している。
【0050】
撮像されたサンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)データは、記憶装置50に格納される。光学画像データがサンプリング領域11を含む検査ストライプ20単位で撮像された場合には、フレーム画像作成部52がサンプリング領域11のフレーム画像を作成する。サンプリング領域11のフレーム画像は記憶装置54に格納される。サンプリング領域11の光学画像データがフレーム領域30サイズ或いはフレーム領域30よりも小さいサイズで撮像された場合、フレーム画像作成部52での処理をせずに記憶装置54に格納される。
【0051】
画像(2)反応値演算工程(S146)として、反応値演算部56は、取得されたサンプリング領域11の光学画像(第2の光学画像)のデータを用いて、画像(1)反応値演算工程(S106)で演算された反応値t1(第1の値)の演算と同じ演算を行うことにより、サンプリング領域11の光学画像の複数の画素の反応値t2(第2の値)を演算する。
【0052】
検査処理の途中で光学系等の故障が発生していれば、演算される反応値が異常な値になると想定される。装置故障が生じていない場合には、検査前に取得した画像(1)反応値演算工程(S106)で演算された複数の画素の反応値t1と、検査開始後に同じサンプリング領域11で取得した画像についての画像(2)反応値演算工程(S146)で演算された複数の画素の反応値t2との差は、誤差範囲に留まるはずである。そこで、以下の判定処理を行う。
【0053】
判定工程(S148)として、判定部88(判定処理回路)は、検査前に取得したサンプリング領域11の光学画像の複数の画素の反応値t1と、画像(2)反応値演算工程(S146)で演算された複数の画素の反応値t2との差分が差分閾値th’の範囲内から外れる画素が存在するかどうかを判定する。差分閾値th’は予め設定しておけばよい。具体的には、画素毎に、反応値t1と反応値t2との差分の絶対値が差分閾値th’よりも大きいかどうかを判定する。そして、判定部88は、複数の画素の反応値t1と、同じ複数の画素の反応値t2との差分が差分閾値th’の範囲内から外れる画素が存在する場合に検査装置100の故障と判定する。判定結果は、制御計算機110に出力される。複数の画素の反応値t1と、同じ複数の画素の反応値t2との差分が差分閾値th’ の範囲内から外れる画素が存在しない場合、制御計算機110は、スキャン動作が終了した検査ストライプ20の次の検査ストライプ20からストライプ画像のスキャン動作を開始させると共に、検査処理を続行する。
【0054】
複数の画素の反応値t1と、同じ複数の画素の反応値t2との差分が差分閾値th’ の範囲内から外れる画素が存在する場合、制御計算機110は、装置故障と診断して、検査装置100を異常停止する。これにより、本来、欠陥として検出されるべきものを取りこぼす、欠陥の取りこぼしを防止できる。装置故障を改善した後、改めて検査を実施すればよい。
【0055】
以上のように、実施の形態1によれば、欠陥の取りこぼしが生じ得る故障が検査装置に発生しているかどうかを自己診断できる。
【0056】
ここで、上述した例では、自己の画像内の各画素について、同じ画像内の他の画素の階調値との違いを反応値として求め、かかる反応値を反応閾値thと比較することにより、欠陥個所を検出する検査手法を用いる場合を説明したが、検査手法はこれに限るものではない。例えば、ダイーダイ検査を実施しても構わない。
【0057】
図9は、実施の形態1の変形例を説明するための図である。ダイーダイ検査では、同一基板101上の異なる場所の同一パターンを撮像した光学画像同士を比較する。そこで、ダイ(1)のサンプリング領域11aの光学画像と、同一パターンが形成されるダイ(2)のサンプリング領域11bの光学画像とを取得する。そして、画素毎に、ダイ(1)の画像の画素の階調値とダイ(2)の画像の画素の階調値とを用いた所定のアルゴリズムで演算される値を反応値t1として演算する。例えば、画素毎に、ダイ(1)の画像の画素の階調値とダイ(2)の画像の画素の階調値との差分を反応値t1に設定しても好適である。検査処理工程(S120)においても、同様に、ダイ(1)のフレーム画像の画素の階調値と、対応するダイ(2)のフレーム画像の画素の階調値との差分を反応値tとして演算し、反応閾値thと比較しても好適である。故障診断においては、ダイ(1)のサンプリング領域11aの光学画像と、同一パターンが形成されるダイ(2)のサンプリング領域11bの光学画像とを再度取得して、画素毎に反応値t2を演算すればよい。その他の内容は、上述した内容と同様で構わない。
【0058】
その他、検査手法として、例えば、ダイーデータベース検査を実施しても構わない。ダイーデータベース検査では、基板101から得られた画像と、基板101に形成されたパターンの元になる設計パターンデータから演算された参照画像とを比較する。そこで、基板101のサンプリング領域11の光学画像を取得し、同一領域の参照画像を作成する。そして、画素毎に、光学画像の画素の階調値と参照画像の画素の階調値とを用いた所定のアルゴリズムで演算される値を反応値t1として演算する。検査処理工程(S120)においても、同様に、基板101から取得したフレーム画像の画素の階調値と、対応する参照画像の画素の階調値とを用いた所定のアルゴリズムで演算される値を反応値tとして演算し、反応閾値thと比較しても好適である。故障診断においては、サンプリング領域11の光学画像を再度取得して、参照画像との間で、画素毎に反応値t2を演算すればよい。その他の内容は、上述した内容と同様で構わない。
【0059】
参照画像は、参照画像作成回路112により作成される。参照画像作成回路112は、記憶装置109から制御計算機110を通して描画データ(設計パターンデータ)を読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0060】
設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0061】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、その図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、フレーム領域30を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データ(設計画像データ)を出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして作成する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。また、得られた設計画像に光学特性に合わせた所定のフィルタ処理を行うことで参照画像が作成される。作成された参照画像は、比較回路108に出力されればよい。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、実施の形態では、照明光学系170として、反射光を用いた反射照明光学系を示したが、これに限るものではない。例えば、透過光を用いた透過照明光学系であってもよい。或いは、透過照明光学系と反射照明光学系とを組み合わせて、透過光と反射光を同時に用いてもよい。
【0063】
また、上述した例では、故障診断に用いる反応値t1,t2を、検査処理工程(S120)において比較処理に用いる反応値tと同じ演算の仕方で求める場合を説明したが、これに限るものではない。装置故障を診断できればよいので、本来の検査処理工程(S120)において比較処理に用いる反応値tを求めるために用いるアルゴリズムとは別のアルゴリズムにより、診断に用いる反応値t1,t2を演算しても良い。
【0064】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、検査装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0065】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのパターン検査装置の故障診断方法及びパターン検査装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0066】
10 検査領域
11 サンプリング領域
20 検査ストライプ
30 フレーム領域
50,54,68 記憶装置
52 フレーム画像作成部
56 反応値演算部
58 比較処理部
72 サンプリング領域設定部
80 記憶装置
82 欠陥未検出ストライプ数閾値設定部
84 判定部
86 画像再取得制御部
88 判定部
100 検査装置
101 基板
102 XYθテーブル
103 光源
104 拡大光学系
105 フォトダイオードアレイ
106 センサ回路
107 位置回路
108 比較回路
109 磁気ディスク装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
113 オートローダ制御回路
114 テーブル制御回路
116 GUI
117 外部I/F
118 パターンモニタ
119 プリンタ
120 バス
122 レーザ測長システム
123 ストライプパターンメモリ
140 診断回路
150 光学画像取得機構
160 制御系回路
170 照明光学系
174 ビームスプリッタ
176 結像光学系
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9