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  • 特許-エッチング液組成物及びエッチング方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】エッチング液組成物及びエッチング方法
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/18 20060101AFI20230818BHJP
   C23F 1/34 20060101ALI20230818BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
C23F1/18
C23F1/34
H05K3/06 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019563948
(86)(22)【出願日】2018-12-13
(86)【国際出願番号】 JP2018045797
(87)【国際公開番号】W WO2019135338
(87)【国際公開日】2019-07-11
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018000654
(32)【優先日】2018-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(72)【発明者】
【氏名】正元 祐次
(72)【発明者】
【氏名】阿部 徹司
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 康太
(72)【発明者】
【氏名】千葉 広之
【審査官】▲辻▼ 弘輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-017054(JP,A)
【文献】特開平06-268225(JP,A)
【文献】特開昭57-089482(JP,A)
【文献】特開2003-138389(JP,A)
【文献】特開2004-175839(JP,A)
【文献】特開平09-209178(JP,A)
【文献】特開2004-256901(JP,A)
【文献】特開2012-153940(JP,A)
【文献】特開2017-150069(JP,A)
【文献】特表2016-536453(JP,A)
【文献】特開昭63-026385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/18
C23F 1/34
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅合金からなる層又は銅箔である銅系層をエッチングするために用いられるエッチング液組成物であって、
(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1種の成分1~25質量%;
(B)塩化物イオン1~30質量%;
(C)下記一般式(1)で表される、数平均分子量550~1,400の化合物0.1~10質量%;及び
水を含有する水溶液であり、
前記(A)成分に対する前記(B)塩化物イオンの質量比率が、(B)/(A)=0.5~2であるエッチング液組成物。
(前記一般式(1)中、Rは、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R及びRは、メチルエチレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキル基を表し、nは、それぞれ独立に、前記一般式(1)で表される化合物の数平均分子量が550~1,400となる数を表す)
【請求項2】
前記(A)成分の濃度が、10~25質量%であり、
前記(B)成分の濃度が、10~30質量%であり、
前記(C)成分の濃度が、0.6~10質量%である請求項1に記載のエッチング液組成物。
【請求項3】
前記(A)成分に対する前記(B)成分の質量比率が、(B)/(A)=0.5~1.7である請求項1又は2に記載のエッチング液組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか一項に記載のエッチング液組成物を用いてエッチングする工程を有するエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造の化合物を含有する組成物、及びそれを用いたエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板や半導体パッケージ基板等の回路形成法として、回路パターンを後から基板に付け加えるアディティブ法や、基板上の金属箔から不要部分を除去して回路パターンを形成するサブトラクティブ法(エッチング法)が知られている。現在、製造コストの低いサブトラクティブ法(エッチング法)がプリント基板の製造に一般的に採用されている。そして、近年の電子デバイスの高度化及び小型化に伴い、プリント基板についてもパターンの微細化が要求されており、基板に微細なパターンを形成しうるエッチング液の開発が進められている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エッチング液として、塩化鉄、シュウ酸、及びエチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレンを含有する銅又は銅合金用のエッチング液が開示されている。また、特許文献2には、塩化第二鉄、グリコールエーテル類化合物、エチレンジアミンテトラポリオキシエチレンポリオキシプロピレン、リン酸、及び塩酸を含有する銅含有材料用のエッチング液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-107286号公報
【文献】特開2009-167459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の特許文献で開示されたエッチング液では、所望の寸法精度を有する微細なパターンを形成することが困難である、又は断線やショートの原因となる残膜が発生しやすくなるという問題があった。
【0006】
したがって、本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、寸法精度に優れた微細なパターンを残膜の発生を抑制しつつ形成することが可能な、銅系層などの金属層のエッチングに有用な組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記組成物を用いたエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の成分を含有する組成物が上記問題を解決し得ることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1種の成分0.1~25質量%;(B)塩化物イオン0.1~30質量%;(C)下記一般式(1)で表される、数平均分子量550~1,400の化合物0.01~10質量%;及び水を含有する水溶液であり、前記(A)成分に対する前記(B)塩化物イオンの質量比率が、(B)/(A)=0.5~2である組成物が提供される。
【0009】
(前記一般式(1)中、Rは、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の直鎖又は分岐状のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキル基を表し、nは、それぞれ独立に、前記一般式(1)で表される化合物の数平均分子量が550~1,400となる数を表す)
【0010】
また、本発明によれば、上記の組成物を用いてエッチングする工程を有するエッチング方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、寸法精度に優れた微細なパターンを残膜の発生を抑制しつつ形成することが可能な、銅系層などの金属層のエッチングに有用な組成物を提供することができる。また、本発明によれば、上記組成物を用いたエッチング方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】エッチング後の試験基板を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の組成物は、(A)第二銅イオン及び第二鉄イオンから選択される少なくとも1種の成分(以下、「(A)成分」とも記す);(B)塩化物イオン(以下、「(B)成分」とも記す);(C)一般式(1)で表される化合物(以下、「(C)成分」とも記す);及び水を必須成分として含有する水溶液である。本発明の組成物は、銅系層などの金属層をエッチングするために用いられるエッチング液組成物として好適である。銅系層としては、銀銅合金、アルミニウム銅合金等の銅合金;及び銅などを含む層を挙げることができる。なかでも、本発明の組成物は、銅を含む銅系層をエッチングするために用いられるエッチング液組成物として好適である。
【0014】
(A)成分としては、第二銅イオン及び第二鉄イオンをそれぞれ単独で、又はこれらを組み合わせて用いる。銅(II)化合物を配合することで、第二銅イオンを組成物に含有させることができる。すなわち、第二銅イオンの供給源として銅(II)化合物を用いることができる。また、鉄(III)化合物を配合することで、第二鉄イオンを組成物に含有させることができる。すなわち、第二鉄イオンの供給源として鉄(III)化合物を用いることができる。
【0015】
銅(II)化合物としては、例えば、塩化銅(II)、臭化銅(II)、硫酸銅(II)、及び水酸化銅(II)等を挙げることができる。鉄(III)化合物としては、例えば、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、ヨウ化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、及び酢酸鉄(III)等を挙げることができる。これらの化合物のなかでも、塩化銅(II)及び塩化鉄(III)が好ましく、塩化銅(II)がさらに好ましい。これらの化合物は、一種単独又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明の組成物中の(A)成分の濃度は、0.1~25質量%であり、好ましくは0.5~23質量%、さらに好ましくは1~20質量%である。(A)成分の濃度は、被エッチング物の厚さや幅などに応じて適宜調整することができる。(A)成分の濃度は、第二銅イオン又は第二鉄イオンを単独で使用する場合には、第二銅イオンの濃度又は第二鉄イオンの濃度を意味する。また、第二銅イオン及び第二鉄イオンを組み合わせて(混合して)使用する場合には、第二銅イオンの濃度と第二鉄イオンの濃度との和を意味する。例えば、塩化銅(II)を10質量%含有する場合には、(A)成分の濃度は約4.7質量%である。また、塩化銅(II)を10質量%含有し、塩化鉄(III)を10質量%含有する場合には、(A)成分の濃度は約8.2質量%である。また、第二鉄イオンの濃度は5質量%未満であることが好ましい。
【0017】
(B)成分の供給源として、塩化水素、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化バリウム、塩化アンモニウム、塩化鉄(III)、塩化銅(II)、塩化マンガン(II)、塩化コバルト(II)、塩化セリウム(III)、及び塩化亜鉛(II)等を用いることができる。なかでも、エッチング速度を制御しやすい、及び配線パターンの形状を制御しやすい等の理由から、塩化水素、塩化鉄(III)、塩化銅(II)が好ましく、塩化水素がさらに好ましい。
【0018】
本発明の組成物中の(B)成分の濃度は、0.1~30質量%であり、好ましくは0.5~28質量%、さらに好ましくは1~25質量%である。(B)成分の濃度は、被エッチング物の厚さや幅などに応じて適宜調整することができる。(B)成分の濃度が0.1質量%未満であると、エッチング速度が不十分になることがある。一方、(B)成分の濃度が30質量%を超えても、エッチング速度をさらに向上させることは困難になるとともに、かえって装置部材の腐食等の不具合が生じやすくなることがある。
【0019】
本発明の組成物中、(A)成分に対する(B)成分の質量比率は、(B)/(A)=0.5~2であり、好ましくは、0.6~1.8であり、特に好ましくは0.65~1.7であり、最も好ましくは0.7~1.4である。(B)/(A)の値が2超であると、寸法精度に優れた微細な配線パターンを形成することができなくなる。一方、(B)/(A)の値が0.5未満であると、エッチング速度が不十分になることがある。
【0020】
(C)成分は、下記一般式(1)で表される、数平均分子量550~1,400の化合物である。
【0021】
(前記一般式(1)中、Rは、単結合、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1~4の直鎖又は分岐状のアルキレン基を表し、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数1~4の直鎖若しくは分岐状のアルキル基を表し、nは、それぞれ独立に、前記一般式(1)で表される化合物の数平均分子量が550~1,400となる数を表す)
【0022】
、R、及びRで表される炭素原子数1~4の直鎖又は分岐状のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基、ブチレン基、エチルエチレン基、1-メチルプロピレン基、及び2-メチルプロピレン基を挙げることができる。R及びRで表される炭素原子数1~4の直鎖又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、第二ブチル基、第三ブチル基を挙げることができる。
【0023】
(C)成分としては、一般式(1)中のRがエチレン基であり、R及びRがメチルエチレン基であり、R及びRが水素原子であり、かつ、数平均分子量が650~1,300である化合物が、エッチング速度を制御しやすく、サイドエッチングを抑制しやすくなるために好ましい。なかでも、(C)成分の数平均分子量は、750~1,200であることが特に好ましい。
【0024】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、下記化学式No.1~No.36で表される化合物を挙げることができる。下記化学式No.1~No.36中、「Me」はメチル基を表し、「Et」はエチル基を表し、「iPr」はイソプロピル基を表す。また、nは、それぞれ独立に、化学式No.1~No.36で表される化合物の数平均分子量が550~1,400となる数を表す。
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
(C)成分を製造する方法は特に限定されず、周知の反応を応用して製造することができる。例えば、エチレンジアミンとプロピレンオキサイドを原料として使用し、下記式(2)で表される反応により製造することができる。下記式(2)中の「Me」は、メチル基を表す。
【0029】
【0030】
本発明の組成物中の(C)成分の濃度は、0.01~10質量%であり、好ましくは0.05~8質量%、さらに好ましくは0.1~5質量%である。(C)成分の濃度が0.01質量%未満であると、(C)成分を配合することによる所望の効果を得ることができない。一方、(C)成分の濃度が10質量%超であると、本発明の組成物をエッチング液組成物として用いる場合、エッチング速度が低下しやすくなる。また、銅系層などの金属層とレジストとの界面にエッチング液組成物が浸透しやすくなり、パターン形状に不良等が生じやすくなる場合がある。
【0031】
本発明の組成物は、水を必須成分として含有する、各成分が水に溶解した水溶液である。水としては、イオン交換水、純水、及び超純水等の、イオン性物質や不純物を除去した水を用いることが好ましい。
【0032】
本発明の組成物は、銅系層等の金属層をエッチングするためのエッチング剤組成物(エッチング液)、無電解めっき液用添加剤、金属電解精錬用添加剤、農薬、及び殺虫剤等として好適に用いることができる。なかでも、金属層をエッチングするために用いられるエッチング剤組成物として好適である。
【0033】
本発明の組成物がエッチング液組成物である場合、このエッチング液組成物には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び水以外の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で周知の添加剤を配合することができる。添加剤としては、エッチング液組成物の安定化剤、各成分の可溶化剤、消泡剤、pH調整剤、比重調整剤、粘度調整剤、濡れ性改善剤、キレート剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤等を挙げることができる。これらの添加剤の濃度は、それぞれ0.001~50質量%の範囲とすればよい。
【0034】
pH調整剤としては、例えば、硫酸、硝酸などの無機酸、及びそれらの塩;水溶性の有機酸、及びその塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化アルカリ金属類;水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウムなどの水酸化アルカリ土類金属類;炭酸アンモニウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩類;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属の炭酸水素塩類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、コリンなどの4級アンモニウムヒドロキシド類;エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ヒドロキシエチルアミンなどの有機アミン類;炭酸水素アンモニウム;アンモニア;等を挙げることができる。これらのpH調整剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。pH調整剤の含有量は、エッチング液組成物のpHが所望とするpHとなる量とすればよい。
【0035】
キレート剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、テトラエチレンペンタミン七酢酸、ペンタエチレンヘキサミン八酢酸、ニトリロ三酢酸、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のアミノカルボン酸系キレート剤;ヒドロキシエチリデンジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、ホスホノブタントリカルボン酸、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等のホスホン酸系キレート剤;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、それらの無水物、及びそれらのアルカリ金属(好ましくはナトリウム)塩等の2価以上のカルボン酸化合物、2価以上のカルボン酸化合物が脱水した一無水物や二無水物を挙げることができる。エッチング液組成物中のキレート剤の濃度は、一般的に、0.01~40質量%の範囲であり、好ましくは0.05~30質量%の範囲である。
【0036】
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤、カチオン性活性剤、及び両性界面活性剤を用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの付加形態は、ランダム状及びブロック状のいずれでもよい)、ポリエチレングリコールプロピレンオキサイド付加物、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、グリセリン脂肪酸エステル及びそのエチレンオキサイド付加物、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、脂肪酸モノエタノールアミド及びそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸-N-メチルモノエタノールアミド及びそのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸ジエタノールアミド及びそのエチレンオキサイド付加物、ショ糖脂肪酸エステル、アルキル(ポリ)グリセリンエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸メチルエステルエトキシレート、N-長鎖アルキルジメチルアミンオキサイド等を挙げることができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキル(アルケニル)トリメチルアンモニウム塩、ジアルキル(アルケニル)ジメチルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、エーテル基、エステル基、又はアミド基を含むモノ又はジアルキル(アルケニル)四級アンモニウム塩、アルキル(アルケニル)ピリジニウム塩、アルキル(アルケニル)ジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキル(アルケニル)イソキノリニウム塩、ジアルキル(アルケニル)モルホニウム塩、ポリオキシエチレンアルキル(アルケニル)アミン、アルキル(アルケニル)アミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体、アミルアルコール脂肪酸誘導体、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等を挙げることができる。両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン、スルホベタイン、ホスホベタイン、アミドアミノ酸、イミダゾリニウムベタイン系の界面活性剤等を挙げることができる。エッチング液組成物中の界面活性剤の濃度は、一般的に、0.001~10質量%の範囲である。
【0037】
本発明のエッチング方法は、上記の本発明の組成物(エッチング液組成物)を用いてエッチングする工程を有する。上記のエッチング液組成物を用いること以外、本発明のエッチング方法は、周知一般のエッチング方法の工程を採用することができる。被エッチング物としては、金属層のなかでも、特に銅系層が好適である。銅系層としては、銀銅合金、アルミニウム銅合金等の銅合金;及び銅などを含む層を挙げることができる。なかでも、特に銅が好適である。具体的なエッチング方法としては、例えば、浸漬法やスプレー法等を採用することができる。エッチング条件についても、使用するエッチング液組成物の組成やエッチング方法に応じて適宜調整すればよい。さらに、バッチ式、フロー式、エッチャントの酸化還元電位や比重、酸濃度によるオートコントロール式等の周知の様々な方式を採用してもよい。
【0038】
エッチング条件は特に限定されるものではなく、被エッチング物の形状や膜厚などに応じて任意に設定することができる。例えば、0.01~0.2MPaでエッチング液組成物を噴霧することが好ましく、0.01~0.1MPaで噴霧することがさらに好ましい。また、エッチング温度は10~50℃が好ましく、20~50℃がさらに好ましい。エッチング液組成物の温度は反応熱により上昇することがあるので、必要に応じて、上記温度範囲内に維持されるように公知の手段により温度制御してもよい。エッチング時間は、被エッチング物を十分にエッチングすることができる時間とすればよい。例えば、膜厚1μm程度、線幅10μm程度、及び開口部100μm程度の被エッチング物を上記の温度範囲でエッチングする場合には、エッチング時間を10~300秒程度とすればよい。
【0039】
本発明のエッチング液組成物を用いるエッチング方法によれば、残膜の発生を抑制しながら、微細なパターンを形成することができる。このため、プリント配線基板の他、微細なピッチが要求されるパッケージ用基板、COF、TAB用途のサブトラクティブ法に好適に使用することができる。
【実施例
【0040】
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、これらによって本発明が限定されるものではない。
【0041】
実施例及び比較例で使用した(C)成分の数平均分子量を表1に示す。表1中のc-1~c-4は、化学式No.17で表される化合物であり、化学式No.17中のnは、化学式No.17で表される化合物の数平均分子量が表1に示す値となる数である。また、表1中のc-5及びc-6は、下記一般式(3)で表される化合物である。
【0042】
(前記一般式(3)中、R11は、エチレン基を表し、R12及びR13は、メチルエチレン基を表し、R14及びR15は、エチレン基を表し、n及びnは、前記一般式(3)で表される化合物の数平均分子量が表1に示す値となる数を表す。但し、n/(n+n)=0.2である)
【0043】
【0044】
(実施例1及び比較例1)
表2に示す組成となるように、塩化銅(II)、塩酸、及び(C)成分を混合して、エッチング液組成物No.1~21を得た。なお、これらのエッチング液組成物における残部は水である。
【0045】
【0046】
(実施例2及び比較例2)
樹脂基体上に厚さ8μmの銅箔を積層した基体を用意した。この基体の銅箔上に線幅14μm、開口部6μmのパターンのドライフィルムレジストを形成して試験基板を作製した。作製した試験基板に対し、調製したエッチング液組成物を用いて、処理温度45℃、処理圧力0.1MPaの条件下で、ジャストエッチング時間(50~130秒)スプレーするウェットエッチングを行った。ジャストエッチング時間とは、細線下部の幅が10μmになるまでの時間をエッチング速度から算出した時間を意味する。その後、剥離液を用いてレジストパターンを除去し、微細なパターン(細線)を形成した。
【0047】
形成した細線につき、以下に示す(1)~(5)の評価を行った。評価結果を表3に示す。なお、片側サイドエッチ幅が小さいほど、サイドエッチングが抑制されたことを意味する。また、残膜(エッチング部分の残り)がないことは、断線やショートが発生しにくいことを意味する。エッチング後の試験基板を模式的に示す断面図を図1に示す。
【0048】
(1)細線上部の幅
レーザー顕微鏡を使用し、断面観察して測定した。単位は「μm」である。
(2)細線下部の幅
レーザー顕微鏡を使用し、断面観察して測定した。単位は「μm」である。
(3)細線下部の幅と細線上部の幅との差
下記式から算出した。単位は「μm」である。
「細線下部の幅と細線上部の幅との差」=「細線下部の幅の測定値」-「細線上部の幅の測定値」
(4)片側サイドエッチ幅
下記式から算出した。単位は「μm」である。
「片側サイドエッチ幅」={「レジストの線幅」-「細線上部の幅の測定値」}/2
(5)残膜の有無
レーザー顕微鏡を使用し、エッチング部分の残りが観察されたものを「あり」、観察されなかったものを「なし」とした。
【0049】
【0050】
表3に示すように、実施例2-1~2-11では、比較例2-1、2-2、及び2-5~2-10に比べて、細線上部の幅が維持されているとともに、細線下部の幅と細線上部の幅との差が小さく、かつ、片側サイドエッチ幅が小さいことがわかる。特に、実施例2-1~2-3、2-6~2-8、及び2-10では、細線下部の幅と細線上部の幅との差が2.0μm未満であり、寸法精度の高いパターンが形成されることがわかる。一方、比較例2-3及び2-4では、エッチング速度が不十分であったためにパターンが形成されず、評価項目(1)~(4)を測定することができなかった。実施例2-1~2-11及び比較例2-1~2-4の結果から、一般式(1)で表される化合物を含有する組成物を用いてエッチングする場合であっても、組成物の(B)/(A)の値が特定の範囲から外れていると、寸法精度が低下する又はパターンが形成されなくなることがわかる。また、実施例2-1~2-11、並びに比較例2-5及び2-6では残膜(エッチング部分の残り)が観察されなかったのに対して、比較例2-1~2-4及び2-7~2-10では残膜が観察された。以上の通り、本発明によれば、断線やショートの原因となる残膜が発生しにくく、所望とする寸法精度の微細なパターンを形成することが可能なエッチング用の組成物及びエッチング方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0051】
1:銅箔
2:レジスト
3:樹脂基体
4:細線上部の幅
5:細線下部の幅
6:レジストの線幅
図1