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特許7333766電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法
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  • 特許-電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0273 20160101AFI20230818BHJP
   H01M 8/0284 20160101ALI20230818BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20230818BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20230818BHJP
   C09J 151/06 20060101ALI20230818BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20230818BHJP
【FI】
H01M8/0273
H01M8/0284
C09J11/08
C09J123/26
C09J151/06
H01M8/10 101
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020043127
(22)【出願日】2020-03-12
(65)【公開番号】P2021144877
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】武井 邦浩
(72)【発明者】
【氏名】丸山 悠以子
(72)【発明者】
【氏名】竹山 俊輔
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-218633(JP,A)
【文献】特開2010-040449(JP,A)
【文献】特開2014-120213(JP,A)
【文献】特開2017-149939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/02
H01M 8/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解質膜の接着に用いられる電解質膜接着用樹脂組成物であって、
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記電解質膜の官能基と反応する官能基を1分子中に2個以上有し、且つ、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基を1分子中に4個以上有する樹脂系化合物(B)とを、必須成分としてなり、
前記樹脂系化合物(B)の有する官能基が、エポキシ基及び水酸基、又はエポキシ基のみであることを特徴とする電解質膜接着用樹脂組成物。
【請求項2】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、前記樹脂系化合物(B)の有する官能基とが、グラフト重合されて得られたグラフト共重合体(G)を含有することを特徴とする請求項1に記載の電解質膜接着用樹脂組成物。
【請求項3】
前記電解質膜接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、前記樹脂系化合物(B)が1~25重量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電解質膜接着用樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂系化合物(B)が、エポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物。
【請求項5】
前記電解質膜接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、熱可塑性エラストマー樹脂(C)が1~15重量部の範囲内で含有することを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物がフィルム状に製膜されてなることを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物から形成されてなる接着層が、基材層の少なくとも片面に積層されてなることを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルム。
【請求項8】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物を溶融混練し、押出成形によりフィルム状に製膜することを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の電解質膜接着用樹脂組成物を溶剤に溶解して塗布することを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1には、燃料電池の電解質膜-触媒層に接する補強シートを接着層と弾性層とから構成し、接着層として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、及び固体高分子電解質アイオノマー樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが記載されている。引用文献1に記載の補強シートでは、電解質膜の膨脹及び収縮に追従し、電解質膜の破損を抑制するため、特定種類のゴムからなる弾性層が積層されている。引用文献1に記載の接着層は、固体電解質であるナフィオン(登録商標)アイオノマー、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等の接着剤を有機溶剤や水等の溶剤に分散し、接着剤溶液をコーティングで塗布し、溶剤を乾燥する方法で成膜されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5720810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電解質膜は、燃料電池の発電時に供給されるガスのアノード、カソードの差圧で変形する。電解質膜の変形、破断を防止するため、電解質膜に枠状の補強材を使用する場合があり、補強材と電解質膜との接着が必要になる。引用文献1に記載のように、液状の接着剤を枠状に塗工して、熱で乾燥、硬化し、電解質膜に固定していると、接着剤の塗工、硬化のタクトが長く、生産性に問題があった。また、発電時に発生する熱、水によって接着剤が劣化し、ガスがリークする問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、短時間で接着が可能であり、水で劣化しにくい電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、電解質膜の接着に用いられる電解質膜接着用樹脂組成物であって、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記電解質膜の官能基と反応する官能基を1分子中に2個以上有し、且つ、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基を1分子中に4個以上有する樹脂系化合物(B)とを、必須成分としてなり、前記樹脂系化合物(B)の有する官能基が、エポキシ基及び水酸基、又はエポキシ基のみであることを特徴とする電解質膜接着用樹脂組成物を提供する。
【0007】
前記電解質膜接着用樹脂組成物は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、前記樹脂系化合物(B)の有する官能基とが、グラフト重合されて得られたグラフト共重合体(G)を含有してもよい。
前記電解質膜接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、前記樹脂系化合物(B)が1~25重量部の範囲内で含有してもよい。
前記樹脂系化合物(B)が、エポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂であってもよい。
前記電解質膜接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、熱可塑性エラストマー樹脂(C)が1~15重量部の範囲内で含有してもよい。
【0008】
また、本発明は、前記電解質膜接着用樹脂組成物がフィルム状に製膜されてなることを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムを提供する。
また、本発明は、前記電解質膜接着用樹脂組成物から形成されてなる接着層が、基材層の少なくとも片面に積層されてなることを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムを提供する。
【0009】
また、本発明は、前記電解質膜接着用樹脂組成物を溶融混練し、押出成形によりフィルム状に製膜することを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法を提供する。
また、本発明は、前記電解質膜接着用樹脂組成物を溶剤に溶解して塗布することを特徴とする電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、短時間で接着が可能であり、水で劣化しにくい電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】基材層を有しない接着フィルムの一例を示す断面図である。
図2】基材層を有する接着フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
実施形態の接着用樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、電解質膜の官能基と反応する官能基を1分子中に2個以上有し、且つ、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基を1分子中に4個以上有する樹脂系化合物(B)とを、必須成分とする。実施形態の接着用樹脂組成物は、電解質膜の接着に使用することができる。
【0013】
〔酸変性ポリオレフィン樹脂(A)〕
前記接着用樹脂組成物に用いられる酸変性ポリオレフィン樹脂(A)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であり、ポリオレフィン系樹脂中にカルボキシル基や無水カルボン酸基を有する。好ましくは、ポリオレフィン系樹脂を、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性したものである。酸変性ポリオレフィン樹脂における酸変性方法としては、有機過酸化物や脂肪族アゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で酸官能基含有モノマーをポリオレフィン樹脂と溶融混練する等のグラフト変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合などが挙げられる。
【0014】
前記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンまたはα-オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレンまたはα-オレフィンとのブロック共重合体などが挙げられる。中でも、ホモポリプロピレン(ホモPP、プロピレン単独重合体)、プロピレン-エチレンのブロック共重合体(ブロックPP)、プロピレン-エチレンのランダム共重合体(ランダムPP)等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。特に、ランダムPPが好ましい。
共重合する場合の前記オレフィン類としては、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ヘキセン、α-オレフィン等のオレフィン系モノマーが挙げられる。
【0015】
前記酸官能基含有モノマーとしては、エチレン性二重結合と、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基とを、同一分子内に持つ化合物であり、各種の不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸、またはジカルボン酸の酸無水物からなる。
カルボン酸基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸基含有モノマー)としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、テトラヒドロフタル酸、エンド-ビシクロ[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸(エンディック酸)などのα,β-不飽和カルボン酸モノマーが挙げられる。
カルボン酸無水物基を有する酸官能基含有モノマー(カルボン酸無水物基含有モノマー)としては、無水マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水エンディック酸などの不飽和ジカルボン酸無水物モノマーが挙げられる。
これらの酸官能基含有モノマーは、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)において、1種類を用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
前記酸官能基含有モノマーのうち、より好ましくは、カルボン酸無水物基含有モノマーであり、より好ましくは、無水マレイン酸である。
酸変性に用いた酸官能基含有モノマーの一部が未反応である場合は、接着力への悪影響を抑制するため、未反応の酸官能基含有モノマーを除去したものを、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)として用いることが好ましい。
【0017】
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)におけるプロピレン成分に関しては、該樹脂の耐熱性の観点により、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とは、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。したがって、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)としては、プロピレン単位が過半量である、酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましい。
【0018】
〔樹脂系化合物(B)〕
前記接着用樹脂組成物に用いられる樹脂系化合物(B)は、電解質膜の官能基と反応する官能基を1分子中に2個以上有し、且つ、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基を、1分子中に4個以上有する化合物である。樹脂系化合物(B)の有する官能基は、エポキシ基及び水酸基、又はエポキシ基のみである。樹脂系化合物(B)としては、例えば、エポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂が挙げられる。また、側鎖の官能基にエポキシ基及び水酸基、又はエポキシ基のみを有する樹脂として、エポキシ基を有するモノマーを重合した重合体や、エポキシ基を有するモノマーと、水酸基を有するモノマーを含む共重合体を用いることもできる。
【0019】
樹脂系化合物(B)としては、ポリヒドロキシポリエーテル、ポリヒドロキシポリエステル、ポリヒドロキシポリカーボネート、ポリヒドロキシポリアミド等の、多数の水酸基を有するポリマーに対する、グリシジル化等のエポキシ化により、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものとした化合物が挙げられる。その具体例としては、ビスフェノール類とエピクロルヒドリンとを反応させて合成される、エポキシ樹脂またはフェノキシ樹脂であって、両末端にエポキシ基を有する、下記一般式(1)で表される、樹脂系化合物が挙げられる。
【0020】
-O-[R-O-CHCH(OH)CH-O]-R-O-R ・・・(1)
【0021】
一般式(1)において、Rは、グリシジル基(すなわち、2,3-エポキシプロピル基)を表す。また、Rは、ビスフェノール類をHO-C-C(R)(R)-C-OHと表したときに、-C-C(R)(R)-C-に相当する二価基である。ビスフェノール類の置換基R,Rとしては、各々独立して、水素原子またはメチル基、エチル基等のアルキル基が挙げられる。
【0022】
また、一般式(1)において、整数pは、前記化合物が1分子中に有する水酸基の個数(水酸基数)に等しい。この場合、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基は、p個の水酸基と両端の2個のエポキシ基である。酸官能基と反応する官能基を1分子中に4個以上とするためには、p+2≧4であることが好ましい。
【0023】
前記フェノキシ樹脂としては、一般式(1)におけるビスフェノール類の置換基R及びRが共にCHであるビスフェノールA(BPA)型のフェノキシ樹脂、R及びRが共にHであるビスフェノールF(BPF)型のフェノキシ樹脂、ビスフェノールA型とビスフェノールF型とが共重合した、BPA/BPF共重合型のフェノキシ樹脂、RまたはRの一方がCHであり、他方がHであるビスフェノールB型のフェノキシ樹脂、などが挙げられる。また、ビスフェノール型のエポキシ樹脂は、フェノキシ樹脂と同じく、上記一般式(1)で表されることから、比較的高分子量で、水酸基数pが大きいものを選定して用いることができる。
【0024】
前記フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)は、約3,000(ビスフェノールA型の場合、水酸基数pが約10)以上が好ましく、約15,000(ビスフェノールA型の場合、水酸基数pが約50)、約20,000(ビスフェノールA型の場合、水酸基数pが約70)、また、さらに高分子量のものも使用できる。
フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の平均分子量の上限は、特に限定されるものではないが、80,000程度(ビスフェノールA型の場合、水酸基数pが約280)であると好ましい。なお、フェノキシ樹脂またはエポキシ樹脂の平均分子量をGPCによって求める場合には、例えば、GPCの溶離液としてテトラヒドロフラン(THF)が用いられ、カラムとしては、TSKgel G4000HとTSKgel G3000H(いずれも東ソー株式会社製、商品名)を連結したものを用いて求めることができる。
【0025】
前記フェノキシ樹脂の具体例としては、新日鐵化学株式会社製の商品名:YP-50(Mwは60,000~80,000、BPA型、水酸基数pは約210~280)、YP-50S(Mwは50,000~70,000、BPA型、水酸基数pは約175~245)、YP-55U(Mwは40,000~45,000、BPA型、水酸基数pは約140~160)、YP-70(Mwは50,000~60,000、BPA/BPF共重合型)、ZX-1356-2(Mwは60,000~80,000、BPA/BPF共重合型)、FX-316(Mwは40,000~60,000、BPF型)等;三菱化学株式会社製のフェノキシタイプのグレード1256(分子量約50000、BPA型)、同4250(分子量約60000、BPA/BPF共重合型)、同4275(分子量約60000、BPA/BPF共重合型)、1255HX30、YX8100BH30、YX6954BH30等;巴工業株式会社製のPKHB、PKHC、PKHH、PKHJ等が挙げられる。
【0026】
また、前記エポキシ樹脂の具体例としては、新日鐵化学株式会社製の商品名:YD-020G(エポキシ当量3500~4500、BPA型)等;三菱化学株式会社製のグレード1010(平均分子量5500、BPA型、エポキシ当量3000~5000)、同1009(平均分子量3800、BPA型、エポキシ当量2400~3300)等が挙げられる。
【0027】
また、前記樹脂系化合物(B)としては、酸官能基と反応する官能基がエポキシ基のみであり、該エポキシ基を1分子中に4個以上有している化合物が挙げられる。このような化合物の具体例としてはフェノールノボラックとエピクロルヒドリンを反応させて合成される、フェノールノボラックエポキシ樹脂、O‐クレゾールノボラックとエピクロルヒドリンとを反応させて合成される、クレゾールノボラック樹脂など、分子鎖にエポキシ基を4個以上有する、樹脂系化合物が挙げられる。また、このようなエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂として、三菱化学株式会社製の商品名:jER157S70、DIC株式会社の商品名:EPICLON N-865、N-885、クレゾールノボラックエポキシ樹脂として、DIC株式会社の商品名:EPICLON N-670、N-673、N-680、N-690、N-695、フェノールノボラックエポキシ樹脂として、DIC株式会社の商品名:N-770、N-775等が挙げられる。
【0028】
また、前記樹脂系化合物(B)としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応するエポキシ基を1分子中に4個以上有する樹脂系化合物の他に、エポキシ基を1分子中に2個以上有し、且つ、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と反応する官能基を1分子中に4個以上有し、該官能基がエポキシ基及び水酸基である樹脂系化合物をさらに含有していてもよい。
【0029】
前記接着用樹脂組成物は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、樹脂系化合物(B)の官能基(エポキシ基、水酸基)が、被着体に対する接着性官能基として機能することにより、電解質膜を有する被着体に対して、優れた接着力を有する。また、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、樹脂系化合物(B)の官能基(エポキシ基、水酸基)とが、加熱によって容易に反応するので、他にこれらの官能基と反応し得る硬化剤等を配合する必要はない。
【0030】
前記接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、樹脂系化合物(B)は、1~25重量部の範囲内で含有することが好ましい。前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)のポリオレフィン部分による、極性の低いプラスチックに対する親和力と、前記接着性官能基による、電解質膜のような異種材料に対する親和力とが、好適なバランスを有するものとなり、電解質膜のような異種材料と接着するときに加えて、ポリオレフィン等の、極性の低いプラスチックと接着するときにも、優れた接着力を有する。前記固形分100重量部に対する樹脂系化合物(B)の割合の具体例としては、例えば、1重量部、5重量部、10重量部、15重量部、20重量部、25重量部など、あるいは、これらの近傍又は中間の値が挙げられる。
【0031】
〔グラフト共重合体(G)〕
前記接着用樹脂組成物においては、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基と、前記樹脂系化合物(B)の有する官能基(エポキシ基、水酸基)とが、グラフト重合されて得られたグラフト共重合体(G)を含有することが好ましい。該グラフト共重合体(G)によれば、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とが、グラフト重合することにより、両者の分離を防ぎ、酸官能基と官能基(エポキシ基、水酸基)との相乗効果により、優れた接着力を有することができる。
【0032】
前記グラフト共重合体(G)は、前記樹脂系化合物(B)に由来するエポキシ基を有することが好ましい。この場合、前記グラフト共重合体(G)として、酸官能基や官能基(エポキシ基、水酸基)とともに、エポキシ基による接着力の改善効果を得ることができる。前記グラフト共重合体(G)は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を75~99質量%と、前記樹脂系化合物(B)を1~25質量%との比率で配合し、グラフト重合させて得たものが好ましい。
【0033】
前記グラフト共重合体(G)は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とが、溶融グラフト重合されてなることが好ましい。この溶融グラフト重合は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とを含有する前記接着用樹脂組成物を、溶融混練により、装置内でグラフト重合するものである。溶融混練の装置としては、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダーなどを使用することができる。
【0034】
前記溶融グラフト重合の際における、グラフト共重合体(G)中のエポキシ基の分解を抑制するため、水分など、エポキシ基と反応し得る揮発成分は、装置外へ除去、排出することが望ましい。また、溶融混練中に揮発成分が発生する場合には、脱気等により随時装置外へ排出することが望ましい。これにより、前記接着用樹脂組成物を用いて接着フィルム又は接着層を製膜する際における、発泡を抑制することができる。
【0035】
前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が、酸官能基として、酸無水物基を有する場合、
前記樹脂系化合物(B)の官能基(エポキシ基、水酸基)との反応性が高く、より穏和な条件下で、グラフト重合が可能になるため、好ましい。
【0036】
前記溶融混練時の加熱温度(混練温度)は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及び前記樹脂系化合物(B)が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で、130~300℃の範囲内から選択することが好ましい。前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)が酸変性ポリプロピレン系樹脂である場合、180~300℃が好ましく、さらに分散性を向上するには、240~300℃が好ましい。なお、混練温度は、溶融混練の装置から押し出された直後における、溶融状態の接着用樹脂組成物に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
【0037】
〔熱可塑性エラストマー樹脂(C)〕
前記接着用樹脂組成物は、任意成分として、熱可塑性エラストマー樹脂(C)を含有することができる。前記熱可塑性エラストマー樹脂(C)としては、スチレンエラストマー、スチレンブタジエン共重合体、エポキシ変性スチレンブタジエン共重合体、オレフィンエラストマー、ポリエステルエラストマー、スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体、スチレンエチレンプロピレンスチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンブタジエンスチレンブロック共重合体、スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体などが挙げられる。前記熱可塑性エラストマー樹脂(C)を添加する場合、前記接着用樹脂組成物の固形分100重量部中に、前記熱可塑性エラストマー樹脂(C)が1~15重量部の範囲内で含有することが好ましい。
【0038】
前記熱可塑性エラストマー樹脂(C)は、前記接着用樹脂組成物の溶融混練の条件下において、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)や、前記樹脂系化合物(B)と反応しないものであれば、溶融混練の前に配合することもできる。この場合、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、前記樹脂系化合物(B)、前記熱可塑性エラストマー樹脂(C)を含む混合物を溶融混練する際、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とを選択的に反応させ、前記グラフト共重合体(G)を含有する接着用樹脂組成物を得ることができる。
【0039】
〔接着用樹脂組成物〕
前記接着用樹脂組成物は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とを必須成分とする前記接着用樹脂組成物を溶融混練し、押出成形する方法(1工程)により、接着層を製造することが可能である。接着層を単層のフィルム状に成形すると、単層の接着フィルムが得られる。接着層を基材層の上に積層すると、多層の接着フィルムが得られる。
【0040】
また、前記接着用樹脂組成物を溶剤に溶解して塗布する方法により、接着層を製造することが可能である。前記接着用樹脂組成物を塗布する方法は特に限定されず、バーコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布装置を用いて常法により塗布することができる。接着用樹脂組成物が塗布される対象物は、被着体、塗布後に接着層を剥離可能な剥離材(剥離フィルム等)、後述する接着用樹脂積層体の基材層等が挙げられる。
【0041】
塗布に用いる有機溶媒としては、前記接着用樹脂組成物を構成する樹脂成分と反応しにくい化合物が好ましく、例えば、トルエン等の炭化水素系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒が挙げられる。乾燥条件は、使用する有機溶剤に応じて適宜設定すればよいが、例えば、40~150℃の温度で5~600秒間加熱することにより、有機溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。
【0042】
前記接着用樹脂組成物は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の酸官能基や、前記樹脂系化合物(B)の官能基(エポキシ基、水酸基)が存在することにより、優れた接着力が得られる。特に、ベース樹脂である、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の融点(Tm)に近い、比較的低温の温度領域においても、優れた接着力が得られ、低温接着性が向上する。
【0043】
また、前記接着用樹脂組成物の溶融混練の際に、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とをグラフト重合する場合、グラフト共重合体(G)の調製工程を別に設ける必要がなく、生産性に優れ、しかも、樹脂成分へのダメージを抑制することができる。前記接着用樹脂組成物は、電解質膜を有する被着体に対して、優れた接着力を有しており、単純な組成からなり、接着層を容易に製造可能である。また、前記接着用樹脂組成物は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)の主鎖が、ポリオレフィン系樹脂のようにビニル基の付加重合により構成されており、加水分解を受けにくいため、高温環境下での耐水性を有する。
【0044】
前記接着用樹脂組成物は、その他の添加剤として、充填剤、着色剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、光吸収剤などを適宜添加することができる。前記接着用樹脂組成物は、必須成分である酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及び樹脂系化合物(B)又はグラフト共重合体(G)と、任意成分である熱可塑性エラストマー樹脂(C)と以外には、樹脂成分又は高分子成分を含有しないで構成することが可能である。必須成分である酸変性ポリオレフィン樹脂(A)及び樹脂系化合物(B)又はグラフト共重合体(G)と、任意成分である熱可塑性エラストマー樹脂(C)とを除いた他の固形分の割合は、全固形分100重量部中に、10重量部以下、5重量部以下、1重量部等としてもよい。
【0045】
〔被着体〕
被着体の電解質膜としては、燃料電池等の用途において公知又は市販の固体高分子電解質膜を使用することができる。例えば、水素イオン伝導性高分子電解質、パーフルオロスルホン酸系のフッ素イオン交換樹脂、アニオン導電性固高分子電解質膜などが挙げられる。パーフルオロカーボンスルホン酸系ポリマー(PFS系ポリマー)は、高分子に電気陰性度の高いフッ素原子を導入することで、化学的に非常に安定し、スルホン酸基の解離度が高く、高いイオン伝導性が実現できることから、好ましい。電解質膜の膜厚としては、例えば、20~250μm、好ましくは20~80μm程度が挙げられる。
【0046】
電解質膜の表面には、カソード触媒またはアノード触媒として、白金、白金合金、白金化合物等の触媒層が積層されていてもよい。また、被着体の電解質膜は、補強材等を有していてもよい。補強材等は、ポリオレフィン系樹脂、オレフィン系エラストマー等から構成してもよい。前記接着用樹脂組成物が2以上の被着体の間を接着する用途に使用される場合、少なくとも1つの被着体が電解質膜を有すればよい。前記接着用樹脂組成物の一部が触媒層又は補強材等に接するように接着されてもよい。
【0047】
前記樹脂系化合物(B)が電解質膜の官能基と反応する官能基(エポキシ基、水酸基)を1分子中に2個以上有する場合、前記接着用樹脂組成物が電解質膜と接するように接着されることで、界面において官能基間の化学結合が形成され、耐水性に優れた接着性を発揮する。電解質膜の官能基としては、例えば、スルホン酸基、カルボン酸基などが挙げられる。
【0048】
〔接着用樹脂成形体〕
実施形態の接着用樹脂成形体は、前記接着用樹脂組成物から形成され、フィルム、シート等の形状を有する成形体であり、単層の接着フィルム等として用いることができる。前記接着用樹脂成形体は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とを必須成分とする接着用樹脂組成物を溶融混練し、押出成形により、フィルム、シート等の形状に成形する方法(1工程)で、製造することが可能である。また、前記接着用樹脂組成物を溶剤に溶解して、被着体又は上記剥離材に塗布する方法により、接着用樹脂成形体を製造することが可能である。例えば、図1に示すように、単層の接着フィルム10の少なくとも片面において、被着体21と接着することが可能である。
【0049】
前記接着用樹脂成形体は、例えば、下記の(1)~(4)に挙げるような方法で、被着体と積層し、加熱により、好ましくは、加熱及び加圧により、各種の被着体と接着することが可能である。
(1)被着体の片面に、接着用樹脂成形体を積層して接着する方法。
(2)被着体の両面に、それぞれ別の接着用樹脂成形体を積層して接着する方法。
(3)接着用樹脂成形体の両面に、それぞれ別の被着体を積層して接着する方法。
(4)複数の接着用樹脂成形体と、複数の被着体とを、交互に積層して接着する方法。
【0050】
〔接着用樹脂積層体〕
実施形態の接着用樹脂積層体は、前記接着用樹脂組成物からなる接着層を基材層の少なくとも片面に有する積層体である。図2に示す、多層の接着フィルム10Aは、基材層12の片面に接着層11を有し、接着層11を用いて、被着体21と接着することができる。基材層としては、基材層自体に接着性を有する必要はなく、接着層と接着可能なものが好ましい。また、基材層は、電解質膜の膨脹や収縮に追従し得る柔軟性、電解質膜の使用条件に応じた耐熱性、耐薬品性等を有することが好ましい。
【0051】
前記基材層の具体例としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられる。樹脂フィルム等の薄い基材層を用いることにより、前記接着用樹脂積層体を、接着用樹脂フィルム又は接着用樹脂シート等として用いることができる。基材層に高温環境下での耐水性を求める場合は、ポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0052】
前記接着用樹脂積層体は、前記酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、前記樹脂系化合物(B)とを必須成分とする接着用樹脂組成物を溶融混練し、押出成形により、接着層を成形する方法(1工程)で、製造することが可能である。基材層が、熱可塑性樹脂からなる場合は、接着用樹脂組成物の押出成形を、共押出法により行うことが可能である。また、接着用樹脂組成物の押出成形を、押出ラミネート法によって行うことも、可能である。また、前記接着用樹脂組成物を溶剤に溶解して、基材層に塗布する方法により、接着用樹脂積層体を製造することが可能である。
【0053】
前記接着用樹脂積層体が、前記基材層の片面のみに前記接着層樹脂層を有する場合は、例えば、上記の(1)または(2)に挙げるような方法で、被着体と積層し、加熱により、好ましくは、加熱及び加圧により、各種の被着体と接着することが可能である。また、前記接着層樹脂積層体が、前記基材層の両面に前記接着層樹脂層を有する場合は、例えば、上記の(1)~(4)に挙げるような方法で、被着体と積層し、加熱により、好ましくは、加熱及び加圧により、各種の被着体と接着することが可能である。
【0054】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【実施例
【0055】
以下、実施例をもって、本発明を具体的に説明する。
【0056】
(接着フィルム)
表1に示す組成物1~9の接着用樹脂組成物を配合し、表2の層構成に示す接着フィルムを製造した。
基材層なし(組成物1~4,6,8,9)の場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)、樹脂系化合物(B)、熱可塑性エラストマー樹脂(C)を240℃で2分間溶融混練した後、押出成形により厚み150μmに成形する方法により、単層の接着層からなる接着フィルムを製造した。
【0057】
基材層あり(組成物5,7)の場合は、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と樹脂系化合物(B)をトルエンとメチルエチルケトン(MEK)の混合溶媒に溶解して接着用樹脂組成物の塗布液を調製した後、厚みが140μmのポリプロピレン(PP)フィルムのコロナ処理面上に前記塗布液をハンドコートにより乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布し、110℃で2分間乾燥させることにより、基材層と接着層からなる2層の接着フィルムを製造した。
【0058】
【表1】
【0059】
表1において用いた略語の意味は、次のとおりである。
「(A)-1」:マレイン酸変性ポリプロピレン(酸付加0.1質量%、融点140℃)
「(A)-2」:マレイン酸変性ポリオレフィン(酸付加1.1質量%、融点80℃)
「(B)-1」:ビスフェノールA型エポキシ(重量平均分子量900、1分子中の水酸基2個、エポキシ基2個)
「(B)-2」:ビスフェノールA型ノボラック型エポキシ(重量平均分子量900、1分子中の水酸基2個、エポキシ基2個)
「(B)-3」:ビスフェノールA型エポキシ(重量平均分子量370、1分子中の水酸基0個、エポキシ基2個)
「(C)-1」:プロピレン-α-オレフィン共重合体エラストマー(軟化点70℃)
【0060】
(接着強度の測定方法)
ナフィオン(登録商標)NRE-212(厚み0.002インチ)を被着体として、50mm×50mmのサイズに加工し、接着フィルムに被着体を重ねて被着体側から加熱圧着して試験片を作製した。前記被着体に対する、接着フィルムの接着強度を、引張速度300mm/分、幅15mm、180°剥離にて測定した。加熱圧着条件は、温度170℃において、圧力0.1MPaで10秒間、加熱及び加圧するものである。接着強度が5N/15mm以上の場合を「○」、3N/15mm以上5N/15mm未満の場合を「△」、3N/15mm未満の場合を「×」と評価した。
【0061】
(耐水性の評価方法)
接着強度の評価方法と同様に作製した試験片を、水温が90℃の水中に300時間浸漬し、接着強度を測定した。水浸漬後の接着強度が5N/15mm以上の場合を「○」、3N/15mm以上5N/15mm未満の場合を「△」、3N/15mm未満の場合を「×」と評価した。
【0062】
【表2】
【0063】
接着フィルムの評価結果を表2に示す。組成物1~5の接着用樹脂組成物を用いた接着フィルムによれば、水浸漬前だけではなく、水浸漬後も、十分な接着強度を備えている。組成物6~7の接着用樹脂組成物を用いた接着フィルムは、電解質膜に対して接着性を有しなかった。組成物8~9の接着用樹脂組成物を用いた接着フィルムは、水浸漬後に、電解質膜に対して接着性を有しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、電解質膜を有する被着体に対して、優れた接着力を有しており、単純な組成からなり、容易に製造可能な電解質膜接着用樹脂組成物、電解質膜接着用樹脂フィルム、及び電解質膜接着用樹脂フィルムの製造方法を提供できることから、産業上の利用価値が大である。
【符号の説明】
【0065】
10…単層の接着フィルム、10A…多層の接着フィルム、11…接着層、12…基材層、21…被着体。
図1
図2