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特許7333877駆動デバイス、光学系、及びリソグラフィ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-17
(45)【発行日】2023-08-25
(54)【発明の名称】駆動デバイス、光学系、及びリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 26/00 20060101AFI20230818BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20230818BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20230818BHJP
【FI】
G02B26/00
G03F7/20 501
B81B7/02
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022564002
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021060624
(87)【国際公開番号】W WO2021219500
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】102020205279.4
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503263355
【氏名又は名称】カール・ツァイス・エスエムティー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100202326
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 大佑
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル アリマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス マンガー
(72)【発明者】
【氏名】ラース ベルガー
(72)【発明者】
【氏名】ムハンマド アワド
【審査官】河村 麻梨子
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-501514(JP,A)
【文献】特表2018-528070(JP,A)
【文献】特表2012-514863(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0346772(US,A1)
【文献】特開2018-5037(JP,A)
【文献】特表2015-511320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0188656(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 26/00-26/08
G03F 7/20
B81B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系(300)の光学素子(310)を作動させる容量性アクチュエータ(200)を駆動する駆動デバイス(100)であって、
駆動された前記アクチュエータ(200)の特定の位置を設定するために該アクチュエータ(200)に駆動電圧(UDC)を印加する駆動ユニット(110)であり、該駆動ユニット(110)及び前記アクチュエータ(200)は第1ノード(K1)を介して結合される駆動ユニット(110)と、
前記第1ノード(K1)に時間依存AC電流信号(I(t))を供給して、前記駆動電圧(UDC)と前記AC電流信号(I(t))及び前記アクチュエータ(200)のインピーダンス(Z)の積に対応するAC電圧との重畳の結果として特定のAC電圧が前記アクチュエータ(200)で生じるようにするための、励磁信号(s(t))により制御され前記第1ノード(K1)に結合された電源(120)と、
前記アクチュエータ(200)の出力に接続されて該アクチュエータ(200)の出力信号(A)をフィルタリングする働きをするフィルタユニット(130)と、
該フィルタユニット(130)の出力に結合され、フィルタ後出力信号(r(t))に応じて前記アクチュエータ(200)のインピーダンス挙動(IV)を測定して前記電源(120)を駆動する前記励磁信号(s(t))を出力において出力するよう構成された測定ユニット(140)と
を備えた駆動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動デバイスにおいて、
前記電源(120)は、前記励磁信号(s(t))により制御される信号発生器(121)と、制御された該信号発生器(121)の出力信号(AS)により制御される、前記時間依存AC電流信号(I(t))を出力する電流又は電圧源(122)とを含む駆動デバイス。
【請求項3】
請求項2に記載の駆動デバイスにおいて、
前記測定ユニット(140)は、
前記信号発生器(121)の出力と前記フィルタユニット(130)の前記出力との間の、制御された前記電流又は電圧源(122)、前記第1ノード(K1)、前記アクチュエータ(200)、及び前記フィルタユニット(130)を含む区間の伝達関数(H)を求め、
求められた前記伝達関数(H)の逆数(I)を求め、且つ
計算された前記逆数(I)を用いて前記励磁信号(s(t))を生成する
よう構成される駆動デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載の駆動デバイスにおいて、
前記伝達関数(H)は、時間依存励磁電圧として具現された前記励磁信号(s(t))と、複素励磁応答電圧として具現された前記フィルタ後出力信号(r(t))との周波数依存信号伝達関数である駆動デバイス。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の駆動デバイスにおいて、
前記フィルタユニット(130)は、ハイパスフィルタ後出力信号(r(t))を供給するハイパスフィルタとして具現される駆動デバイス。
【請求項6】
請求項5に記載の駆動デバイスにおいて、
前記ハイパスフィルタ(130)の下流に接続されたピークトゥピーク検出器(150)と、該ピークトゥピーク検出器(150)の下流に接続された、少なくとも1つの狭帯域部分出力信号(r(t))を供給する出力段(160)とが設けられ、
前記測定ユニット(140)は、前記ハイパスフィルタ後出力信号(r(t))に基づき前記アクチュエータ(200)の前記インピーダンス挙動(IV)の広帯域測定を実行し且つ/又は前記少なくとも1つの狭帯域部分出力信号(r(t))に基づき前記アクチュエータ(200)の前記インピーダンス挙動(IV)の狭帯域測定を実行するよう構成される駆動デバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の駆動デバイスにおいて、
前記測定ユニット(140)は、前記アクチュエータ(200)で生じる前記特定のAC電圧が周波数にわたって一定の振幅を有するように前記アクチュエータ(200)の測定された前記インピーダンス挙動(IV)に応じて前記励磁信号(s(t))を生成するよう構成される駆動デバイス。
【請求項8】
請求項7に記載の駆動デバイスにおいて、
該駆動デバイス(100)は、前記励磁信号(s(t))を用いて、前記アクチュエータ(200)で生じる前記特定のAC電圧を前記周波数にわたって一定の振幅になるように開ループ又は閉ループ制御により制御するよう構成される駆動デバイス。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の駆動デバイスにおいて、
前記駆動ユニット(110)はDC電圧源を含み、入力抵抗(Rin)が前記DC電圧源(110)と前記第1ノード(K1)との間に接続される駆動デバイス。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の駆動デバイスにおいて、
前記電源(120)は制御可能な電圧又は電流源(122)を含み、結合容量(CIN)が前記電圧又は電流源(122)と前記第1ノード(K1)との間に接続される駆動デバイス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の駆動デバイスにおいて、
該駆動デバイス(100)は、前記光学系(300)の複数の容量性アクチュエータ(200、205)を駆動するよう構成され、前記光学系(300)の光学素子(310)が各アクチュエータ(200、205)に割り当てられる駆動デバイス。
【請求項12】
請求項11に記載の駆動デバイスにおいて、
前記各アクチュエータ(200、205)に、駆動された該アクチュエータ(200、205)の特定の位置を設定するために該アクチュエータ(200、205)に駆動電圧(UDC)を印加する少なくとも1つの各駆動ユニット(110、115)と、前記アクチュエータ(200、205)の前記出力に接続されて前記アクチュエータ(200、205)の出力信号をフィルタリングする働きをする各フィルタユニット(130、135)とが割り当てられ、前記測定ユニット(140)は、前記各フィルタユニット(130、135)の前記出力に結合され、各前記フィルタ後出力信号に応じて前記各アクチュエータ(200、205)の前記インピーダンス挙動(IV)を測定し且つ前記各アクチュエータ(200、205)に対する前記励磁信号(s(t))を出力において出力するよう構成される駆動デバイス。
【請求項13】
請求項12に記載の駆動デバイスにおいて、
各前記第1ノード(K1)は、各制御可能なスイッチ(S)により前記電源(120)に接続可能であり、前記測定ユニット(140)は、前記複数のアクチュエータ(200、205)のうち特定のアクチュエータ(200)の前記インピーダンス挙動(IV)を測定する目的で、前記特定のアクチュエータ(200)に割り当てられた前記駆動ユニット(110)及び前記特定のアクチュエータ(200)に割り当てられた前記スイッチ(S)を駆動するよう構成される駆動デバイス。
【請求項14】
複数の作動可能な光学素子(310)を備えた光学系(300)であって、前記複数の作動可能な光学素子(310)のそれぞれにアクチュエータ(200)が割り当てられ、各アクチュエータ(200)に、請求項1~13のいずれか1項に記載のアクチュエータ(200)を駆動する駆動デバイス(100)が割り当てられる光学系。
【請求項15】
リソグラフィ装置(600A、600B)であって、請求項14に記載の光学系(300)を備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系のアクチュエータを駆動する駆動デバイス、当該駆動デバイスを備えた光学系、及び当該光学系を備えたリソグラフィ装置に関する。
【0002】
優先権出願DE 10 2020 205 279.4号の内容の全体を参照により援用する。
【背景技術】
【0003】
例えばマイクロレンズ素子アレイ又はマイクロミラーアレイ等の作動可能な光学素子を有するマイクロリソグラフィ装置が知られている。マイクロリソグラフィは、例えば集積回路等の微細構造コンポーネントの製造に用いられる。マイクロリソグラフィプロセスは、照明系及び投影系を有するリソグラフィ装置を用いて実行される。この場合、照明系により照明されたマスク(レチクル)の像を、投影系により、感光層(フォトレジスト)で被覆されて投影系の像平面に配置された基板、例えばシリコンウェーハに投影することで、マスク構造を基板の感光コーティングに転写するようにする。基板上のマスクの結像は、作動可能な光学素子により改善することができる。例として、拡大され且つ/又はシャープでない結像をもたらす露光中の波面収差を補償することができる。
【0004】
光学素子によるこのような補正には、所望に応じた波面の補正を可能にする光学素子の各位置を決定するために波面の検出及び信号処理が必要である。最後のステップで、各光学素子の駆動信号を増幅して光学素子のアクチュエータにそれを出力する必要がある。
【0005】
例として、PMNアクチュエータ(PMN:マグネシウムニオブ酸鉛)をアクチュエータとして用いることができる。PMNアクチュエータは、サブマイクロメートル範囲又はサブナノメートル範囲の距離位置決めを可能にする。この場合、積層されたアクチュエータ素子を有するアクチュエータは、DC電圧の印加の結果として特定の線膨張を引き起こす力を受ける。DC電圧(DC:直流)により設定された位置は、DC電圧により駆動されたアクチュエータの基本的に生じる共振点における外部の電気機械的クロストークにより悪影響を受ける可能性がある。この電気機械的クロストークにより、正確な位置決めを安定して設定できなくなる。この場合、印加されるDC電圧が大きいほど機械共振は大きくなる。例えば温度ドリフトの結果として若しくは接着材料の機械的結合が変わる場合の接着ドリフトの結果として、又はヒステリシス又はエージングの結果として、上記共振点も長期的に変わり得る。インピーダンス計測がこの状況では有用となる。
【0006】
しかしながら、従来のインピーダンス計測デバイスは、費用がかかりすぎる場合が多く、さらにインライン使用不可である、すなわちリソグラフィ装置で定期的に用いることができない。さらに、ここで対象となるインピーダンス値範囲は数オーダにわたり、対象の範囲は全範囲の一部にすぎないので、過剰に高いインピーダンス値用に通常は設計される集積型インピーダンス計測ブリッジは、リソグラフィ装置におけるこの用途に適さないことが証明されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上を踏まえて、本発明の目的は、光学系のアクチュエータの駆動を改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1態様によれば、光学系の容量性アクチュエータを駆動する駆動デバイスが提案される。駆動デバイスは、
駆動されたアクチュエータの特定の位置を設定するためにアクチュエータに駆動電圧を印加する駆動ユニットであり、駆動ユニット及びアクチュエータは第1ノードを介して結合される駆動ユニットと、
第1ノードに時間依存AC電流信号を供給して、駆動電圧とAC電流信号及びアクチュエータのインピーダンスの積に対応するAC電圧との重畳の結果として特定のAC電圧がアクチュエータで生じるようにするための、励磁信号により制御され第1ノードに結合された電源と、
アクチュエータの出力に接続されてアクチュエータの出力信号をフィルタリングする働きをするフィルタユニットと、
フィルタユニットの出力に結合され、フィルタ後出力信号に応じてアクチュエータのインピーダンス挙動を測定して電源を駆動する駆動信号を出力において出力するよう構成された測定ユニットと
を備える。
【0009】
アクチュエータは、特にPMNアクチュエータ(PMN:マグネシウムニオブ酸鉛)又はPZTアクチュエータ(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)である。アクチュエータは、特に光学系の光学素子を作動させるよう構成される。かかる光学素子の例として、レンズ素子、ミラー、及びアダプティブミラーが挙げられる。
【0010】
本駆動デバイスは、アクチュエータのインピーダンス挙動のインライン可能な高速測定、特にリソグラフィ装置に搭載されたアクチュエータのインピーダンス計測を可能にする。
【0011】
アクチュエータの測定されたインピーダンス挙動に基づき、駆動信号及び第1ノードに供給される対応するAC電流信号により、適切な救済措置又は対策、特に能動的なインライン較正又はインラインダンピングを実施することもできる。
【0012】
一実施形態によれば、電源は、励磁信号により制御される信号発生器と、制御された信号発生器の出力信号により制御される、時間依存AC電流信号を出力する電流又は電圧源とを含む。
【0013】
さらに別の実施形態によれば、測定ユニットは、信号発生器の出力とフィルタユニットの出力との間の、制御された電流又は電圧源、第1ノード、アクチュエータ、及びフィルタユニットを含む区間の伝達関数を求め、求められた伝達関数の逆数を求め、且つ計算された逆数を用いて駆動信号を生成するよう構成される。
【0014】
逆数は、逆伝達関数と称することもできる。逆伝達関数の代替として、アクチュエータの共振点を最適に測定できるように、共振点を特に生じさせることができる伝達関数の他の何らかの変換を用いることも可能である。
【0015】
さらに別の実施形態によれば、伝達関数は、時間依存励磁電圧として具現された駆動信号と、複素励磁応答電圧として具現されたフィルタ後出力信号との周波数依存信号伝達関数である。
【0016】
さらに別の実施形態によれば、フィルタユニットは、ハイパスフィルタ後出力信号を供給するハイパスフィルタとして具現される。
【0017】
好ましくは、測定ユニットは、続いてハイパスフィルタ後出力信号に応じてアクチュエータのインピーダンス挙動を測定することができる。
【0018】
さらに別の実施形態によれば、ハイパスフィルタの下流に接続されたピークトゥピーク検出器と、ピークトゥピーク検出器の下流に接続された、少なくとも1つの狭帯域部分出力信号を供給する出力段とが設けられ、測定ユニットは、ハイパスフィルタ後出力信号に基づきアクチュエータのインピーダンス挙動の広帯域測定を実行し且つ/又は少なくとも1つの狭帯域部分出力信号に基づきアクチュエータのインピーダンス挙動の狭帯域測定を実行するよう構成される。
【0019】
特に逆フーリエ変換が、アクチュエータのインピーダンス挙動の広帯域測定で用いられる。この理由から、測定ユニットによるインピーダンス挙動の広帯域測定をIFTモードと称することもできる(IFT:逆フーリエ変換)。インピーダンス挙動の狭帯域測定では、狭い周波数帯域を非常に正確に検査又は走査することができる。この理由から、測定ユニットによるインピーダンス挙動の狭帯域測定を走査モードと称することもできる。
【0020】
さらに別の実施形態によれば、測定ユニットは、アクチュエータで生じる特定のAC電圧が周波数にわたって一定の振幅を有するようにアクチュエータの測定されたインピーダンス挙動に応じて駆動信号を生成するよう構成される。
【0021】
周波数にわたって一定の振幅を有する特定のAC電圧には、作動される光学素子の非常に正確な位置決めが可能であるという利点がある。
【0022】
さらに別の実施形態によれば、駆動デバイスは、駆動信号を用いて、アクチュエータで生じる特定のAC電圧を周波数にわたって一定の振幅になるように開ループ制御により制御するよう構成される。
【0023】
さらに別の実施形態によれば、駆動デバイスは、駆動信号を用いて、アクチュエータで生じる特定のAC電圧を周波数にわたって一定の振幅になるように閉ループ制御により制御するよう構成される。
【0024】
用途に応じて、特定のAC電圧は、開ループ又は閉ループ制御により周波数にわたって一定の振幅に制御され得る。適切な能動インラインダンピング措置が結果として可能となる。
【0025】
さらに別の実施形態によれば、駆動ユニットはDC電圧源を含む。さらに、入力抵抗がDC電圧源と第1ノードとの間に結合される。
【0026】
さらに別の実施形態によれば、電源は制御可能な電圧又は電流源を含む。さらに、結合容量が電圧又は電流源と第1ノードとの間に接続される。
【0027】
さらに別の実施形態によれば、駆動デバイスは、光学系の複数N個の容量性アクチュエータを駆動するよう構成される。この場合、光学系の光学素子が各アクチュエータに割り当てられる。例として、N=100である。
【0028】
さらに別の実施形態によれば、各アクチュエータには、駆動されたアクチュエータの特定の位置を設定するためにアクチュエータに駆動電圧を印加する各駆動ユニットと、アクチュエータの出力に接続されてアクチュエータの出力信号をフィルタリングする働きをする各フィルタユニットとが割り当てられる。この場合、測定ユニットは、各フィルタユニットの出力に結合され、各フィルタ後出力信号に応じて各アクチュエータのインピーダンス挙動を測定し且つ各アクチュエータに対する駆動信号を出力において出力するよう構成される。
【0029】
測定ユニットは、特に、例えば測定ユニットにより駆動され得る複数のスイッチにより、計測されるアクチュエータを選択することができる。特に、測定ユニットは、上記スイッチを駆動し、駆動ユニットを駆動し、励磁信号を計算し、且つフィルタユニットの出力をサンプリングするよう構成される。測定ユニットは、例えばSPU(信号処理ユニット)として具現される。
【0030】
この場合、励磁信号は、逆フーリエ変換により計算された励磁信号(IFT刺激)であることが好ましい。この場合、IFT刺激は、所定の励磁周波数プロファイルから計算されることが好ましく、例えば共振周波数付近で平坦になるよう意図的に選択された周波数応答により、適切に選択された励磁プロファイルでインピーダンス計測の感度を特に向上させることができる。
【0031】
さらに別の実施形態によれば、各第1ノードは、各制御可能なスイッチにより電源に接続可能である。この場合、測定ユニットは、複数のアクチュエータのうち特定のアクチュエータのインピーダンス挙動を測定する目的で、特定のアクチュエータに割り当てられた駆動ユニット及び特定のアクチュエータに割り当てられたスイッチを駆動するよう構成される。
【0032】
各ユニット、例えば測定ユニットは、ハードウェア技術的に且つ/又はソフトウェア技術的に、又はこれら2つの組み合わせとして実装することができる。ハードウェア技術的な実装の場合、各ユニットは、デバイスとして又はデバイスの一部として、例えばコンピュータとして又はマイクロプロセッサとして具現され得る。ソフトウェア技術的な実装の場合、各ユニット又はユニットの一部は、コンピュータプログラム製品として、関数として、ルーチンとして、独立したプロセスとして、プログラムコードの一部として且つ/又は実行可能オブジェクトとして具現され得る。
【0033】
第2態様によれば、複数の作動可能な光学素子を備えた光学系が提案される。上記複数の作動可能な光学素子のそれぞれにアクチュエータが割り当てられ、各アクチュエータに、第1態様又は第1態様の実施形態の1つによるアクチュエータを駆動する駆動デバイスが割り当てられる。
【0034】
光学系は、特に、相互に独立して作動可能な複数の光学素子を有するマイクロレンズアレイ及び/又はマイクロレンズ素子アレイを含む。
【0035】
実施形態において、アクチュエータ群を規定することができ、群中の全てのアクチュエータに同じ駆動デバイスが割り当てられる。
【0036】
第3態様によれば、第2態様による光学系を備えたリソグラフィ装置が提案される。
【0037】
リソグラフィ装置は、例えば照明系及び結像系を備える。照明系は、特に光源及びビーム整形光学ユニットを含む。結像系は、特にマスクを基板に結像する結像光学ユニットを含む。
【0038】
光学系は、照明系、ビーム整形光学ユニット、及び結像系でも用いることができる。好ましい実施形態において、光学系は、マイクロレンズ素子アレイ又はマイクロミラーアレイとして具現され、例えば結像系で波面補正する働きをする。
【0039】
リソグラフィ装置は、例えば、使用光が0.1nm~30nmの波長域であるEUVリソグラフィ装置、又は使用光が30nm~250nmの波長域であるDUVリソグラフィ装置である。
【0040】
好ましくは、リソグラフィ装置は、波面を検出するよう構成され且つ光学系により波面を補正する補正信号を出力するよう構成された計測系をさらに備える。補正信号は、特に駆動デバイスに対する入力信号として働き得る。
【0041】
この場合の「1つの」は、厳密に1つの要素に限定するものと必ずしも理解されるべきではない。むしろ、例えば2つ、3つ、又はそれ以上等の複数の要素を設けることもできる。ここで用いられるいかなる他の数字も、厳密に記載の要素数に限定するものと理解されるべきではない。むしろ、別途指示がない限り、数値の上下のずれが可能である。
【0042】
本発明のさらなる可能な実施態様は、例示的な実施形態に関して上述又は後述される特徴又は実施形態の明記されていない組合せも含む。この場合、当業者であれば、個々の態様を本発明の各基本形態に対する改良又は補足として加えることもあろう。
【0043】
本発明のさらに他の有利な構成及び態様は、従属請求項の主題であり以下に記載する本発明の例示的な実施形態の主題でもある。以下において、添付図面を参照して好ましい実施形態に基づき本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】光学系の容量性アクチュエータを駆動する駆動デバイスの第1実施形態の概略ブロック図を示す。
図2図1に示すアクチュエータの第一近似の等価回路図を示す。
図3図1に示すアクチュエータの制御電圧依存性の電気機械共振を説明する図を示す。
図4】光学系の容量性アクチュエータを駆動する駆動デバイスの第2実施形態の概略ブロック図を示す。
図5図4に示すアクチュエータのフィルタ後出力信号の計測電圧プロファイルを説明する図を示す。
図6図4に示す励磁信号を発生するための求められた伝達関数及びその逆数を説明する図を示す。
図7図4に示す励磁信号を発生するための適切な位相プロファイルを説明する図を示す。
図8A】適切な励磁信号の例示的な実施形態及び得られる応答信号のAC成分を説明する図を示す。
図8B】適切な励磁信号のさらに別の例示的な実施形態を説明する図を示す。
図9A】所定の駆動電圧に関する図4に示すアクチュエータの計測される理論上のインピーダンス挙動を説明する図を示す。
図9B】所定の駆動電圧に関する図4に示すアクチュエータの実験的に計測されたインピーダンス挙動を説明する図を示す。
図9C】所定の駆動電圧に関する図4に示すアクチュエータの実験的に計測されたインピーダンス挙動を説明する第2図を示す。
図10】光学系の実施形態の概略ブロック図を示す。
図11A】EUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
図11B】DUVリソグラフィ装置の実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
別途指示がない限り、同一の要素又は同一の機能を有する要素には図中で同じ参照符号を設けた。図示は必ずしも一定の縮尺ではないことにも留意されたい。
【0046】
図1は、光学系300の容量性アクチュエータ200を駆動する駆動デバイス100の第1実施形態の概略ブロック図を示す。光学系300の例は、図10図11A、及び図11Bに示す。
【0047】
アクチュエータ200は、例えばPMNアクチュエータ(PMN:マグネシウムニオブ酸鉛)又はPZTアクチュエータ(PZT:チタン酸ジルコン酸鉛)であり得る。アクチュエータ200は、光学素子310、例えばレンズ素子、ミラー、又はアダプティブミラー等を作動させるのに適している。
【0048】
図1に示す駆動デバイス100の第1実施形態は、図2及び図3並びにさらに他の図も参照して以下で説明される。この場合、図2は、図1に示すアクチュエータ200の、特に共振点の領域の等価回路図を示し、図3は、図1に示すアクチュエータ200の機械共振を説明する図を示す。
【0049】
図1の駆動デバイス100は、駆動されたアクチュエータ200の特定の位置を設定するためにアクチュエータ200に駆動電圧UDCを印加する駆動ユニット110を備える。駆動ユニット110及びアクチュエータ200は、第1ノードK1を介して結合される。図1の例では、駆動ユニット110はDC電圧源であり、駆動電圧UDCはDC電圧である。この場合、入力抵抗RINがDC電圧源110と第1ノードK1との間に接続される。
【0050】
図2の等価回路図によれば、アクチュエータ200は、Rs、Cs、及びLsを含むDC電圧非依存形のRLC直列回路とみなすことができ、R、C、及びLを含むさらに別のRLC直列回路が無効成分C及びLと並列に接続される。図2の等価回路図によれば、L及びLは、図2の簡易アクチュエータ等価回路図において無損失の理想的なインダクタンスであるものとする。
【0051】
以下において、図1(及び図4)の計測アーキテクチャ及び対応して選択された励磁信号s(t)(例えば図8A参照)により、インピーダンス計測及び計測速度のダイナミックレンジを特に広くすることができることを実証する。
【0052】
アクチュエータ200の計測されるインピーダンス挙動IV(図9参照)から、最初に共振点(図3参照)に対する駆動電圧UDCの影響を分離して考える。図2に示す直列抵抗Rの最初に仮想的に考慮すべき純抵抗影響の導入と、関連する共振の出現との結果として、同様に仮想的な電圧依存性の直列ダンピング抵抗Rを用いて図1に示す計測アーキテクチャを設計することができ、これを用いて、例えば図9に示すアクチュエータ200の適切なインピーダンス計測を実行することができる。
【0053】
図1の駆動デバイス100はさらに、第1ノードK1にAC電流信号I(t)を供給して、駆動電圧UDCとAC電流信号I(t)及びアクチュエータ200のインピーダンスZの積に対応するAC電圧との重畳の結果として特定のAC電圧がアクチュエータ200で生じるようにするための、励磁信号s(t)により制御され第1ノードK1に結合された電源120を有する。
【0054】
図1の電源120は、励磁信号s(t)により制御される信号発生器121と、制御された信号発生器121の出力信号ASにより制御される、時間依存AC電流信号I(t)を出力する電流又は電圧源122とを含む。第1ノードK1に結合するための結合容量CINが、電流又は電圧源122と第1ノードK1との間に接続される。
【0055】
図1の駆動デバイス100はさらに、アクチュエータ200の出力に接続されてアクチュエータ200の出力信号Aをフィルタリングする働きをするフィルタユニット130を有する。
【0056】
測定ユニット140が、フィルタユニット130の出力に結合され、フィルタ後出力信号r(t)に応じてアクチュエータ200のインピーダンス挙動IVを測定して電源120を駆動する励磁信号s(t)を出力において出力するよう構成される。
【0057】
特に、測定ユニット140は、信号発生器121の出力とフィルタユニット130の出力との間の区間の伝達関数H(図6参照)を求めるよう構成され、上記区間は、制御された電流又は電圧源122、結合容量CIN、第1ノードK1、アクチュエータ200、及びフィルタユニット130を含む。さらに、測定ユニット140は、求められた伝達関数Hの逆数I(図6参照)を求めるよう構成される。この場合、測定ユニット140は、計算された逆数Iを用いて励磁信号s(t)を生成するよう構成されることが好ましい。
【0058】
図4は、光学系300の容量性アクチュエータ200、205を駆動する駆動デバイス100の第2実施形態の概略ブロック図を示す。
【0059】
図4の駆動デバイス100は、光学系300の複数N個の容量性アクチュエータ200、205を駆動するのに適しており、光学系の光学素子310が複数Nの各アクチュエータ200、205に割り当てられる。
【0060】
図4において、参照符号200は、現在計測中のアクチュエータiを示し、参照符号205は、インピーダンス挙動に関して現在計測中ではないさらに他の(N-1)個のアクチュエータを示す。それぞれ計測されるアクチュエータ200は、スイッチSにより選択される。駆動ユニット110、フィルタユニット130、ピークトゥピーク検出器150、及び出力段160が、計測されるアクチュエータ200のために設けられる。
【0061】
(N-1)個のアクチュエータの群を示す参照符号205と同様に、参照符号115は、上記(N-1)個のアクチュエータの群205の駆動ユニット群を示す。それに対応して、参照符号135は、上記(N-1)個のアクチュエータのフィルタユニット群を示し、参照符号155は、上記(N-1)個のアクチュエータ205のピークトゥピーク検出器群を示し、参照符号165は、上記(N-1)個のアクチュエータの出力段群を示す。
【0062】
したがって、各アクチュエータ200、205には、駆動されたアクチュエータ200、205の特定の位置を設定するためにアクチュエータ200、205に駆動電圧UDCを印加する各駆動ユニット110、115と、アクチュエータ200、205の出力に接続されてアクチュエータ200、205の出力信号をフィルタリングする働きをする各フィルタユニット130、135とが割り当てられる。
【0063】
図4の測定ユニット140は、各フィルタユニット130、135の出力に結合される。
【0064】
既に上述したように、図4のスイッチSのスイッチ位置の場合、参照符号200を有するアクチュエータiのインピーダンス挙動IVは現在計測中である。
【0065】
図4の例では、フィルタユニット130は、ハイパスフィルタ後出力信号r(t)を供給するハイパスフィルタとして具現される。ピークトゥピーク検出器150と、ピークトゥピーク検出器150の下流に接続された、少なくとも1つの狭帯域部分出力信号r(t)を供給する出力段160とが、ハイパスフィルタ130の下流に接続される。この場合、測定ユニット140は、ハイパスフィルタ後出力信号r(t)に基づきアクチュエータ200のインピーダンス挙動IVの広帯域測定を実行し且つ/又は少なくとも1つの狭帯域部分出力信号r(t)に基づきアクチュエータ200のインピーダンス挙動IVの狭帯域測定を実行するよう構成される。この場合、測定ユニット140は、信号r(t)を得るためにハイパスフィルタ130の出力と、信号r(t)を得るために出力段160の出力とをサンプリングする。さらに、N-1個のアクチュエータ205に割り当てられたスイッチSは図示上の理由により図4には示さないが、測定ユニット140は、スイッチSを制御し、電源120に対する各励磁信号s(t)を計算する。
【0066】
測定ユニット140は、例えばSPU(信号処理ユニット)として具現される。要約すると、測定ユニット140は、スイッチS及び駆動電圧UDCを制御し、電源120に対する励磁信号s(t)を計算し、且つハイパスフィルタ130の出力及び出力段160の出力をサンプリングする。
【0067】
概して、図4の駆動デバイス100の場合、個々のアクチュエータ200、205のインピーダンス挙動IVの高速インライン計測のために、以下の措置が実施される。
【0068】
1.駆動電圧UDC及びAC電圧I(t)*Zを含む印加DC+AC電圧での専用インラインインピーダンス計測。Hz~100kHzのオーダの印加計測周波数がここではカバーされる。
【0069】
2.広帯域低雑音の制御可能な電流又は電圧源122が、電源120の一部として用いられる。
【0070】
3.アクチュエータインピーダンスで生じる電流又は電圧プロファイルの計測信号(振幅応答及び位相応答)が、出力130及び160でデカップリングされる。
【0071】
4.アクチュエータ200における圧力降下の計測は、信号r(t)により狭帯域で(例えば正弦波状の励磁信号による走査モードとも称する)又は信号r(t)により広帯域で(例えば逆フーリエ変換によるIFTモードとも称する)実行することができる。
【0072】
図2の等価回路図を参照すると、既に上述したように、アクチュエータ200がDC電圧非依存形のRLC直列回路(R、C、及びL)とみなされ(図2参照)、R、C、及びLを含むさらに別のRLC直列回路が無効成分C及びLと並列に接続されるので、直列抵抗R(=ゼロ電圧状態のRS,0)の最初に仮想的に考慮すべき純抵抗影響のインピーダンス変化と、関連する共振の出現との分離は、同様に仮想的な制御電圧依存性の直列ダンピング抵抗Rにより達成することができる。
【0073】
したがって、Rの変動は、第一近似ではDC電圧影響を模倣し、(UDCの上昇に伴い)抵抗Rが低下する場合に共振が増幅され、これに対して、(UDCの上昇に伴い)抵抗Rが低下する場合に共振の出現が小さくなる。この点で、図5は、図2に示すアクチュエータ200のフィルタ後出力信号r(t)の計測電圧プロファイルを説明する図を示す。
【0074】
以下のように同等に定式化することができる。実際のRの僅かな変動を伴うアクチュエータ200の駆動電圧UDCの上昇が、Rの僅かな低下を引き起こし、これによりさらにアクチュエータ200の共振が強く現れる。この点で、図5が示すのは、走査モードの計測電圧プロファイルのピーク値:選択された計測周波数で計測した共振(直列ダンピング抵抗Rの変動)の場合の共振(直列抵抗Rの変動)のないアクチュエータインピーダンスについての定常状態の振幅計測値である。
【0075】
結合容量CIN及び入力抵抗RINの適切な設計には以下のことが当てはまり得る。
IN>>C及びRIN>>R
【0076】
この点での一例として、(正弦波状の又はIFTにより計算された)励磁信号の十分な結合を確保するために、図4に示すような複数N個のアクチュエータについてCIN≧10*C及びRIN≧N*Rである。
【0077】
アクチュエータ共振の高速広帯域画像を、出力信号r(t)の高速フーリエ演算(FFT:高速フーリエ変換)により得ることができる。最大計測周波数は、MHzのオーダ、好ましくは約100kHz以下であり得る。この場合、励磁信号s(t)は、正弦波信号、又は好ましくは逆フーリエ変換により計算された励磁信号である。IFT刺激は、所定の励磁周波数プロファイルから計算されることが好ましい。この場合、例えば共振周波数(図3参照)付近で平坦になるよう意図的に選択された周波数応答により、適切に選択されたプロファイルイでンピーダンス計測の感度を特に向上させることができる。例えばアクチュエータインピーダンスに対して逆の励磁周波数プロファイルを有する励磁信号s(t)により、出力r(t)の平坦なプロファイルを達成することができる。
【0078】
上述のように、図4の測定ユニット140は、アクチュエータ200のインピーダンス挙動IVをインラインで迅速に、特にリアルタイムで測定することが可能である。これに基づき、駆動電圧UDCの結果として生じるアクチュエータ共振における電気機械的外乱(図3参照)に対する能動的なダンピング措置を実施することが可能である。
【0079】
この場合、測定ユニット140は、アクチュエータ200で生じるAC電圧が周波数にわたって一定の振幅を有するようにアクチュエータ200の測定されたインピーダンス挙動IVに応じて励磁信号s(t)を生成するよう特に構成される。この点で、図9Aは、所定の駆動電圧UDCに関する図4に示すアクチュエータ200の計測される理論上のインピーダンス挙動を説明する図を示す。詳細には、図9Aにおいて、曲線901はアクチュエータ200のインピーダンスを示し、曲線902はアクチュエータの実抵抗を示し、曲線903は、(基準容量に対する)容量を示す。
【0080】
したがって、対象の周波数範囲での全てのアクチュエータ共振の計測を高速化するために、図4に示すインピーダンス計測アーキテクチャを用いることができる。この場合、特に、対象の各アクチュエータ、個々では例えばアクチュエータ200に対する広帯域励磁信号s(t)が、励磁周波数プロファイルに基づく逆フーリエ変換により計算され、例えば信号発生器121に収容された十分に高速のデジタル・アナログ変換器に伝達される。
【0081】
出力信号r(t)の高速フーリエ変換により、対象の周波数範囲で駆動電圧UDCを印加されたアクチュエータ毎に、全ての共振点がリアルタイムで測定される。
【0082】
信号発生器121の出力とハイパスフィルタ130の出力との間の区間の初期伝達関数Hが、特に0Vの駆動電圧UDCで又はR=Rs,0について求められる。
【0083】
初期伝達関数Hの逆伝達関数又は逆数I(図6参照)が、続いて計算される。
【0084】
続いて、励磁信号s(t)を逆伝達関数Iの逆フーリエ変換及び適切な位相プロファイルΦ(f)から計算することができる。この点で、図7は、IFT励磁信号s(t)を計算するための適切な位相プロファイルΦ(f)の例示的な実施形態を示す。
【0085】
この点で、図8Aは、適切な励磁信号s(t)の実施形態及び得られる応答信号r(t)のAC成分I(t)*Z(jΩ)を説明する図を示す。
【0086】
さらに、図8Bは、適切な励磁信号s(t)のさらに別の例示的な実施形態を説明する図を示す。図8Bは、図8Aに比べて異なる励磁信号s(t)を示す。図8Bの励磁信号は、図8Aの励磁信号s(t)に比べて異なる位相関数に基づく。図8A図8Bとの比較から、図8Bの方が図8Aよりも経時的に分配されるエネルギーが多いことが分かる。図8Bの励磁信号s(t)は、疑似雑音信号とみなすこともでき、リソグラフィ装置の動作中に恒久的に用いることもできる。
【0087】
代替として、伝達関数Hに対する逆伝達関数Iの代わりに、アクチュエータ200の共振点を特に生じさせることができるHの他の何らかの変換を用いることも可能である。この場合、位相プロファイルΦ(f)は任意の所望のプロファイルを有し得る。励磁及び検出の両方のために、アクチュエータ200、205の群又は部分群で異なる周波数範囲を用いることも可能である。周波数分割多重化をこの目的で用いることができる。
【0088】
この点で、図9B及び図9Cは、図4に示すアクチュエータ200の実験的に計測されたインピーダンス挙動を説明する図を示す。図9Aに示すように、下降曲線901は、3オーダにわたって(この例示的な実施形態では10kΩから10Ωへ)下降する、計測される理論上のアクチュエータインピーダンスを表す。図9Aで拡大図を示す枠から分かるように、アクチュエータ200の3つの非常に小さな共振点が駆動電圧に対して見られる。
【0089】
この状況では、図4に示すアクチュエータ200のインピーダンス挙動を所定の駆動電圧に関する実験で計測した。
【0090】
図9B及び図9Cでは、アクチュエータ200の計測されたインピーダンス挙動は3つの共振点RS1、RS2、及びRS3を示す。第1共振点RS1及び第3共振点RS3は、全く同一の駆動電圧に対して生じ、この駆動電圧はアクチュエータDC電圧と称することもでき、例えば75ボルトである。f/fREF=3.1における第2共振点RS2は、例えば50ボルト、75ボルト、及び100ボルトの3つの異なる駆動電圧又はアクチュエータDC電圧に対して生じる。図9Bで拡大図を示す枠は、3つの異なるピークP1(100ボルトの駆動電圧に対する)、P2(75ボルトの駆動電圧に対する)、及びP3(50ボルトの駆動電圧に対する)が共振点RS2で区別可能であることを示す。図9Cで拡大図を示す枠でも同じことが示され、これは、第1共振点RS1において1つのピークが単一のアクチュエータDC電圧により生じ、第2共振点RS2において3つのピークP1、P2、及びP3が3つのアクチュエータDC電圧により生じることを強調している。
【0091】
概して、図9B及び図9Cに示す実験は、例えば50ミリ秒弱の長さのIFT励磁に関するインピーダンス値をいかに正確にマッピングできるかを示す。
【0092】
励磁信号s(t)の計算アルゴリズムの例を以下に示す。
【0093】
Stim(t):=s(t)は、ハイパスフィルタ130の出力電圧とし、また電源120の入力電圧とし、
out(jω)は、ハイパスフィルタ130の出力における複素励磁応答電圧とし、
(jω)は、ハイパスフィルタ130の出力信号に対するUStim(jω)の周波数依存信号伝達関数とし、
Actは、アクチュエータインピーダンスとし、
は、固定の選択された基準抵抗(例えば、10Ω又は50Ω)とし、
αは、一定の伝達係数とし、
Stim,oは、SPU140により設定された電圧振幅とする。
【0094】
s(t):=UStim(t)は、励磁信号とする。この例示的な実施形態では次式が当てはまる。
【0095】
【数1】
【0096】
これにより、図9Aに示すように、特に強調されるアクチュエータ200の共振点を除いて、周波数応答の略平坦なプロファイルが得られる。
【0097】
図10は、複数の作動可能な光学素子310を備えた光学系300の実施形態の概略ブロック図を示す。光学系300は、ここではマイクロミラーアレイとして具現され、光学素子310はマイクロミラーである。各マイクロミラー310は、割り当てられたアクチュエータ200により作動可能である。例として、割り当てられたアクチュエータ200により、各マイクロミラー310を2軸周りで傾斜させ且つ/又は1つ、2つ、又は3つの空間軸で変位させることができる。明確化のために、これらの素子の最上行にのみ参照符号を図示する。
【0098】
光学系300は、マイクロミラー310のそれぞれに対する入力信号Eを生成するよう構成された補正ユニット320を含む。例として、光学系300は、リソグラフィ装置600A、600B(図6A図6B参照)で光の波面を補正するよう構成され、補正ユニット320は、例えば、波面の計測形状及び波面の目標形状に応じて、マイクロミラー310のそれぞれの目標位置を決定して対応する入力信号Eを出力する。
【0099】
各入力信号Eは、各アクチュエータ200に割り当てられた駆動デバイス100に供給される。駆動デバイス100は、例えばフィルタ後の増幅変調信号fPWMで各アクチュエータ200を駆動する。駆動デバイス100は、特に図1図9を参照して説明されている。各マイクロミラー310の位置がこうして設定される。
【0100】
図11Aは、ビーム整形・照明系602及び投影系604を備えたEUVリソグラフィ装置600Aの概略図を示す。この場合、EUVは、「極紫外」を表し、0.1nm~30nmの使用光の波長を指す。ビーム整形・照明系602及び投影系604は、それぞれ真空ハウジング(図示せず)内に設けられ、各真空ハウジングは、排気デバイス(図示せず)を用いて真空引きされる。真空ハウジングは、機械室(図示せず)に囲まれ、機械室には光学素子を機械的に移動又は設定させる駆動デバイスが設けられる。さらに、電気コントローラ等をこの機械室内に設けることができる。
【0101】
EUVリソグラフィ装置600Aは、EUV光源606Aを備える。EUV領域(極紫外域)、すなわち例えば5nm~20nmの波長域の放射線608Aを発するプラズマ源(又はシンクロトロン)を、EUV光源606Aとして例えば設けることができる。ビーム整形・照明系602において、EUV放射線608Aが集束され、所望の作動波長がEUV放射線608Aから取り出される。EUV光源606Aが発生させたEUV放射線608Aは、空気中の透過率が比較的低いという理由から、ビーム整形・照明系602及び投影系604におけるビームガイド空間が真空引きされる。
【0102】
図11Aに示すビーム整形・照明系602は、5個のミラー610、612、614、616、618を有する。ビーム整形・照明系602を通過した後に、EUV放射線608Aはフォトマスク(レチクル)620へ誘導される。フォトマスク620は、同様に反射光学素子として具現され、系602、604の外部に配置され得る。さらに、EUV放射線608Aは、ミラー622によりフォトマスク620へ向けられ得る。フォトマスク620は、投影系604により縮小してウェーハ624等に結像される構造を有する。
【0103】
投影系604(投影レンズとも称する)は、フォトマスク620をウェーハ624に結像する5個のミラーM1~M5を有する。この場合、投影系604の個々のミラーM1~M5が、投影系604の光軸626に対して対称に配置され得る。EUVリソグラフィ装置600AのミラーM1~M6の数は図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるミラーM1~M5の数を増減することもできる。さらに、ミラーM1~M5は、ビーム整形用に前側が概して湾曲している。
【0104】
さらに、投影系604は、複数の作動可能な光学素子310、例えば図10を参照して説明したマイクロミラーアレイを有する光学系300を含む。光学系300は、特に動的結像収差を補正するよう構成される。光学系300を含む投影系604は、適応光学ユニットと称することもできる。リソグラフィ装置600Aの分解能をそれにより高めることができる。例として、投影光の波長の計測値に応じて、補正ユニット320が、特に各マイクロミラー310に対する個別信号を含み得る入力信号Eを生成する。入力信号Eは、各光学素子310用の駆動デバイス100によりフィルタ後の増幅変調信号fPWMに変換され、光学素子310を作動させる各アクチュエータ200に出力される。各アクチュエータ200は、それに対応して割り当てられたマイクロミラー310を作動させる。
【0105】
図11Bは、ビーム整形・照明系602及び投影系604を備えたDUVリソグラフィ装置600Bの概略図を示す。この場合、DUVは、「深紫外」を表し、30nm~250nmの使用光の波長を指す。図11Aを参照して既に説明したように、ビーム整形・照明系602及び投影系604は、真空ハウジング内に配置され且つ/又は対応する駆動デバイスを有する機械室に囲まれ得る。
【0106】
DUVリソグラフィ装置600Bは、DUV光源606Bを有する。例として、例えば193nmのDUV領域の放射線608Bを発するArFエキシマレーザを、DUV光源606Bとして設けることができる。
【0107】
図11Bに示すビーム整形・照明系602は、DUV放射線608Bをフォトマスク620へ誘導する。フォトマスク620は、透過光学素子として具現され、系602、604の外部に配置され得る。フォトマスク620は、投影系604により縮小してウェーハ624等に結像される構造を有する。
【0108】
投影系604は、フォトマスク620をウェーハ624に結像するための複数のレンズ素子628及び/又はミラー630を有する。この場合、投影系604の個々のレンズ素子628及び/又はミラー630が、投影系640の光軸626に対して対称に配置され得る。DUVリソグラフィ装置600Bのレンズ素子628及びミラー630の数は図示の数に制限されないことに留意されたい。設けられるレンズ素子628及び/又はミラー630の数を増減することもできる。さらに、ミラー630は、ビーム整形用に前側が概して湾曲している。
【0109】
さらに、投影系604は、特に図10を参照して説明したマイクロミラーアレイに従って構成され得る複数の作動可能な光学素子310、例えばマイクロレンズ素子アレイを有する、光学系300を含み、マイクロレンズ素子がマイクロミラーの代わりに用いられる。光学系300は、特に動的結像収差を補正するよう構成される。光学系300を含む投影系604は、適応光学ユニットと称することもできる。リソグラフィ装置600Bの分解能をそれにより高めることができる。結像性能を高めるために、この例では入力信号Eが外部から予め規定される。入力信号Eは、光学系300のマイクロレンズ素子310のそれぞれに対する個別信号を特に含む。駆動デバイス100が、各マイクロレンズ素子310に対する入力信号Eに含まれる信号をフィルタ後の増幅変調信号fPWMに変換して各アクチュエータ200に出力する。各アクチュエータ200は、それに対応して割り当てられたマイクロミラー310を作動させる。
【0110】
最終レンズ素子628とウェーハ624との間の空隙を、屈折率が1を超える液体媒体632で置き換えることができる。液体媒体632は、例えば高純度水であり得る。このような構成は、液浸リソグラフィとも称し、高いフォトリソグラフィ解像度を有する。媒体632は、浸液と称することもできる。
【0111】
本発明を例示的実施形態に基づいて説明したが、本発明は多様な方法で変更可能である。
【符号の説明】
【0112】
100 駆動デバイス
110 駆動ユニット
115 駆動ユニット群
120 電源
121 信号発生器
122 制御された電流又は電圧源
130 フィルタユニット
135 フィルタユニット群
140 測定ユニット
150 ピークトゥピーク検出器
155 ピークトゥピーク検出器群
160 出力段
165 出力段群
200 アクチュエータ
205 N-1個のアクチュエータの群
300 光学系
310 光学素子
320 補正ユニット
600A EUVリソグラフィ装置
600B DUVリソグラフィ装置
602 ビーム整形・照明系
604 投影系
606A EUV光源
606B DUV光源
608A EUV放射線
608B DUV放射線
610 ミラー
612 ミラー
614 ミラー
616 ミラー
618 ミラー
620 フォトマスク
622 ミラー
624 ウェーハ
626 光軸
628 レンズ素子
630 ミラー
632 媒体
901 曲線
902 曲線
903 曲線
A 出力信号
aPWM 増幅信号
AS 制御された信号発生器の出力信号
IN 結合容量
容量
容量
E 入力信号
f 周波数
fPWM フィルタ後信号
REF 基準周波数
H 伝達関数
I 伝達関数の逆数
I(t) AC電流信号
IV インピーダンス挙動
K1 第1ノード
K2 第2ノード
K3 第3ノード
インダクタンス
インダクタンス
M1 ミラー
M2 ミラー
M3 ミラー
M4 ミラー
M5 ミラー
P1 ピーク
P2 ピーク
P3 ピーク
r(t) フィルタ後出力信号
(t) ハイパスフィルタ後出力信号
(t) 狭帯域出力信号
IN 入力抵抗
抵抗
s,0 ゼロ電圧状態の抵抗
RS1 共振点
RS2 共振点
RS3 共振点
抵抗
S スイッチ
s(t) 駆動信号
DC 駆動電圧
DC,1 駆動電圧
DC,2 駆動電圧
DC,3 駆動電圧
Z アクチュエータのインピーダンス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図10
図11A
図11B