(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】管路内の観察装置及び観察方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/954 20060101AFI20230821BHJP
F16L 55/30 20060101ALI20230821BHJP
F16L 55/38 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
G01N21/954 A
F16L55/30
F16L55/38
(21)【出願番号】P 2019177042
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】田中 良和
(72)【発明者】
【氏名】古川 重信
(72)【発明者】
【氏名】加藤 大久
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-244419(JP,A)
【文献】特開2015-031335(JP,A)
【文献】特開平04-230836(JP,A)
【文献】特開2019-074497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84-G01N 21/958
G01B 11/00-G01B 11/30
G01M 3/00-G01M 3/40
F16L 51/00-F16L 55/48
G02B 23/24-G02B 23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管路に設けられた弁を介して当該流体管路に連結可能な胴体と、
前記胴体内に収容可能な、
ワイヤレスカメラを収容するカメラカプセルと、
前記胴体内から外へ前記カメラカプセルを移動させるための押出し機構と、
前記カメラカプセル
の端部に連結された糸の送り及び巻き戻しを行うリールと
を備え
、
前記押出し機構は、前記カメラカプセルに当接する当接部に、前記カメラカプセルの端部を収容する窪みを有している、管路内の観察装置。
【請求項2】
前記胴体は、前記流体管路に連結された場合に、その内部が密閉される密閉構造を有している、請求項1に記載の管路内の観察装置。
【請求項3】
前記流体管路内を流体が流通している状態で前記リールから糸を送ることで、前記カメラカプセルを前記流体管路内で浮遊させるものである、請求項1又は2に記載の管路内の観察装置。
【請求項4】
前記カメラカプセルは、前記糸に連結される後部と、内部に前記
ワイヤレスカメラを固定する体部と、前記
ワイヤレスカメラのレンズに対向する前部と、前記体部の周囲に設けられた円盤状の羽根部とを備えている、請求項1から3のいずれか1項に記載の管路内の観察装置。
【請求項5】
前記胴体は、流体を流通させている流体管路に設けられた空気弁
を取り除いた後の管理弁上に連結されるものである、請求項1から4のいずれか1項に記載の管路内の観察装置。
【請求項6】
流体管路に設けられた弁を介して前記流体管路に連結されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法であって、
前記流体管路内に流体を流通させた状態で、前記流体管路内に前記カメラカプセルを導入して前記流体管路内を撮影する撮影工程
を包含する、管路内の観察方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路内の観察装置及び観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上下水道管や農業用パイプラインのように、地中に設置された流体管路の保全のために、管路内を撮影して破損状態等を観察する技術として、特許文献1及び2に記載された技術が知られている。特許文献1に記載された技術では、管路内を移動する移動体にカメラを搭載して管路内を撮影する。また、特許文献2に記載された技術では、カメラを内蔵したシェルに浮子を一体化させ、水道管内の水道水の流れに乗せて走行させ、水道管内を撮影する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-333285号公報(2004年11月25日公開)
【文献】特開2019-74497号公報(2019年5月16日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術では、移動体やカメラに接続されたコード類の長さに制限があり、広範囲の観察が困難である。また、特許文献1に記載された技術では、管路内の流体の流れを止めてから移動体を管路内に導入する必要があり、観察中は管路を使用できない上に、通常の使用時の状態で管路内を観察することができない。さらに、特許文献2に記載された技術は、例えば、畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインを観察するようには構成されていないため、管路内にカメラを導入することが困難であり、また、管路内を高圧に保ったまま観察することができない。さらに、このような小口径のパイプラインは、末端から人が内部に入ることは困難である。
【0005】
畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインは、非常に広範囲に敷設されており、その支線水路まで含めると膨大な長さとなる。このようなパイプラインでは、老朽化に伴って突発的な破損事故が生じやすい。特に、畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインでは破損事故がさらに生じやすい。
【0006】
パイプラインが破損すると、道路の陥没や周りの農地への土壌流出等が生じ、補修費用の負担が大きくなる。破損が生じたパイプラインは早急に復旧させる必要があるため、予防保全のための設備交換よりも、事後保全の復旧工事が優先されているのが現状である。しかしながら、今後も、パイプラインの老朽化に伴う破損事故が増加することが見込まれるため、事後保全から予防保全へと対策を切り替えることが急務であり、破損事故を未然に防ぐためのパイプラインの監視技術が求められている。
【0007】
本発明の一態様は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、高圧のパイプラインであっても、流体を流通させた状態で管路内を撮影可能な管路内の観察装置及び観察方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の態様を含む。
1) 流体管路に設けられた弁を介して当該流体管路に連結可能な胴体と、前記胴体内に収容可能な、カメラを収容するカメラカプセルと、前記胴体内から外へ前記カメラカプセルを移動させるための押出し機構と、前記カメラカプセルに連結された糸の送り及び巻き戻しを行うリールとを備えている、管路内の観察装置。
2) 前記胴体は、前記流体管路に連結された場合に、その内部が密閉される密閉構造を有している、1)に記載の管路内の観察装置。
3) 前記流体管路内を流体が流通している状態で前記リールから糸を送ることで、前記カメラカプセルを前記流体管路内で浮遊させるものである、1)又は2)に記載の管路内の観察装置。
4) 前記押出し機構は、前記カメラカプセルに当接する当接部に、前記カメラカプセルの少なくとも一部を収容する窪みを有している、1)から3)のいずれかに記載の管路内の観察装置。
5) 前記カメラカプセルは、前記糸に連結される後部と、内部に前記カメラを固定する体部と、前記カメラのレンズに対向する前部と、前記体部の周囲に設けられた円盤状の羽根部とを備えている、1)から4)のいずれかに記載の管路内の観察装置。
6) 前記胴体は、流体を流通させている流体管路に設けられた空気弁の管理弁上に連結されるものである、1)から5)のいずれかに記載の管路内の観察装置。
7) 流体管路に設けられた弁を介して前記流体管路に連結されている、1)から6)のいずれかに記載の管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法であって、前記流体管路内に流体を流通させた状態で、前記流体管路内に前記カメラカプセルを導入して前記流体管路内を撮影する撮影工程を包含する、管路内の観察方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、例えば、畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインであっても、流体を流通させた状態で管路内を撮影可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置の概略を示す模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置の設置状態を説明する図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法の一部を説明する図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法の他の一部を説明する図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置に設けられるカメラカプセルの一例を示す概略分解図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置に設けられるカメラカプセルの一例を示す分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態について、
図1~4を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置の概略を示す模式図であり、
図2は、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置の設置状態を説明する図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法の一部を説明する図であり、
図4は、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置を用いた管路内の観察方法の一部を説明する図である。
【0012】
図1~4に示すように、管路内の観察装置100は、流体管路101の弁に取り付けて使用される。観察装置100は、胴体20、棹(押出し機構)30、及びリール40を備えている。観察装置100を取り付ける弁として、本実施形態においては、空気弁102の管理弁103を例として説明する。流体管路101内は、
図1の矢印に示す方向に流体が流通している。観察装置100は、カメラカプセル10を流体管路101に導入するため、及び、カメラカプセル10を流体管路101から取り出すために用いられる。
【0013】
観察装置100により導入したカメラカプセル10内のカメラにより流体管路101内を撮影することで、流体管路101内を観察することができる。流体管路101に生じる破損は、その内部を観察することで容易に発見できるものも多い。観察装置100を用いれば、流体管路101内に流体を流通させた不断状態で、流体管路101の内部を観察できるので、流体管路101の通常の使用時の状態を観察することができる。また、観察装置100を用いれば、流体管路101内を高圧に維持した状態で、流体管路101の内部を観察できる。
【0014】
(流体管路)
観察装置100を設置して管路内を観察する流体管路101は、例えば、畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインである。観察装置100を設置する流体管路101の口径は、好ましくは600mm以下であり、より好ましくは500mm以下、さらに好ましくは300mm以下である。観察装置100は、口径600mm以下と小口径の流体管路101であっても弁を介して設置可能であり、管路内にカメラカプセル10を確実に導入することができる。
【0015】
観察装置100を設置する流体管路101内の圧力は、0.1MPa以上、0.6MPa以下であることが好ましく、0.4MPa以上、0.6MPa以下であることがより好ましく、0.4MPa以上、0.5MPa以下であることがさらに好ましい。なお、上水道管内の圧力は、通常、約0.3MPaであり、下水道管内は、満流で送水しないので、圧力はほとんどかからない。観察装置100は、管路内が0.1MPa以上、0.6MPa以下という高圧であっても設置可能であり、管路内にカメラカプセル10を確実に導入することができる。
【0016】
図2の外観
図1001に示すように、観察装置100を設置する流体管路101には、空気弁102が設けられている。空気弁102と流体管路101との間には管理弁103が設けられている。
図2の外観
図1001は、観察装置100を設置する前の流体管路101を示している。空気弁102は、流体管路101内に生じた空気を抜くため、また、流体管路101内に空気を入れるために設けられている。管理弁103は、空気弁102内への流体の流出入を制御するバルブである。
【0017】
空気弁102は、流体管路101における直線区間であって、他の区間よりも勾配の高い位置に設けられている。観察装置100設けられる流体管路101は、直線区間のみからなる管路であることが最も好ましいが、カーブの比較的緩い曲線区間を有する管路であってもよい。流体管路101が、地下1m~2mの深さに設置されている場合でも、空気弁102は、地下数十センチの深さに位置する。空気弁102は、マンホール内に設けられているため、観察装置100を設置するために地面を掘り起こすような作業は不要である。
【0018】
流体管路101が、数km~数千kmのように非常に長く延長して設置されている場合、例えば、200m~400m間隔で空気弁102が設けられている。したがって、観察装置100は、流体管路101に設けられた全ての空気弁102の管理弁103に設けられてもよいし、数個置きの管理弁103に設けられてもよい。
【0019】
観察装置100を流体管路101に設置する場合、まず、管理弁103を閉じてから空気弁102を取り外す。
図2の外観
図1002に示すように、観察装置100は、空気弁102を取り外した後の管理弁103上に設置される。管理弁103は、弁体が球状のボールバルブであることが好ましい。管理弁103が、例えば、バタフライバルブのように弁体が球状ではないバルブである場合には、ボールバルブに変更した後に管理弁103上に観察装置100を設置する。管理弁103の口径は、好ましくは75mm以上である。
【0020】
(胴体)
胴体20は、流体管路101に設けられた弁を介して流体管路101に連結可能なものである。胴体20は、その連結部21を介して、空気弁102を取り除いた後の管理弁103上に設置される。連結部21は、例えば、管理弁103にねじ止めされる。管理弁103は、流体管路101の延伸方向、すなわち流体の流通方向に交差する方向に突出している。胴体20は、管理弁103から突出するように設けられる。
【0021】
胴体20は、連結部21が開口した円筒形状であることが好ましい。すなわち、胴体20は、流体管路101に連結した場合に、流体管路101の弁の側の端部が開口している。胴体20の口径は、管理弁103の口径に応じて適宜設定されるが、75mm以上であることが好ましく、より好ましくは100mm以上、さらに好ましくは150mm以上である。胴体20は、例えば、ステンレススチール製であり得る。胴体20の長さは、例えば、1000mmである。
【0022】
胴体20の天端部22及び側面部23の少なくとも一方には、フランジ蓋が設けられている。天端部22には、胴体20内の空気を抜くための空気抜きバルブ24が設けられている。フランジ蓋は、胴体20内を視認可能なように透明であることが好ましく、例えば、アクリル樹脂製である。天端部22及び側面部23の少なくとも一方がフランジ蓋により開閉可能であることによって、胴体20に対するカメラカプセル10の出入が容易である。また、フランジ蓋が透明なアクリル樹脂製であり、胴体20内が視認できるようになっていることによって、カメラカプセル10が胴体20内に引っかかる等の不具合が生じていないかを確認することができる。
【0023】
胴体20は、流体管路101に連結された場合に、その内部が密閉される密閉構造を有していることが好ましい。胴体20内が密閉された状態とは、胴体20を連結した流体管路101内の流体を流出させない状態であり、且つ、流体管路101内の圧力を変化させない状態であることが意図される。胴体20は、流体管路101に連結された場合に密閉構造を有するように、連結部21と流体管路101との連結部分が、例えばパッキンによりシールされるようになっていることが好ましい。
【0024】
胴体20が連結された場合に流体管路101内の流体が流出したり、圧力が変化したりすると、流体管路101の通常の使用状態を観察することができない。胴体20は、流体管路101に連結された場合に、その内部が密閉される密閉構造を有しているので、流体管路101内の流体が流出したり、圧力が変化したりせず、流体管路101の通常の使用状態を観察することができる。すなわち、胴体20は、高圧で流体を流通させる流体管路101に設けられた空気弁の管理弁に連結されるものであってもよい。
【0025】
(棹)
棹30は、胴体20内から外、すなわち流体管路101内へとカメラカプセル10を押出す押出し機構である。なお、胴体20内から外へとカメラカプセル10を押出す機能を有するものであれば、棹30に替えて押出し機構として用いることができる。
【0026】
棹30は、胴体20内から流体管路101内までの間に位置し、流体管路101内を撮影するカメラを収容するカメラカプセル10に当接する当接部32と、当接部32から延伸しており、その少なくとも一部が胴体20外に位置する操作部31とを有している。棹30は、当接部32にカメラカプセル10を当接させた状態で操作部31を操作することで、胴体20内と流体管路101内との間でカメラカプセル10を移動させることが可能なように胴体20に取り付けられている。
【0027】
棹30は、その一端に操作部31を有している。操作部31は、胴体20の天端部22に設けられた穴から胴体20外に突き出している。棹30は、操作部31とは反対側の端部に押し込み端部である当接部32を有している。当接部32は、胴体20内から流体管路101内までの間に位置している。
【0028】
操作者が操作部31を把持し、天端部22に設けられた穴を介して棹30を胴体20内に押し込んだり引き出したりすることで、当接部32が胴体20内と流体管路101内との間で移動し得る。したがって、当接部32にカメラカプセル10を当接させた状態で操作部31を操作することで、胴体20内と流体管路101内との間でカメラカプセル10を移動させることができる。なお、天端部22に設けられた穴と棹30との間の隙間を、例えばシリコンにより埋めることで、棹30の動作を邪魔することなく胴体20内の密閉性を確保することが好ましい。
【0029】
カメラカプセル10を胴体20内に導入するだけでは、カメラカプセル10が流体管路101内に適切に導入されない場合がある。特に、流体管路101内が高圧である場合には、カメラカプセル10を流体管路101に向けて押し込む必要がある。観察装置100は、棹30を備えているので、胴体20内に導入したカメラカプセル10を流体管路101まで適切に押し込むことができる。
【0030】
操作部31を含む棹30は、例えば塩ビ樹脂製であり、一体に形成されていてもよい。当接部32は、糸41の断線防止のために摩擦係数の低い樹脂のテフロン(登録商標)製であることが好ましい。当接部32は管理弁103を介して流体管路101内に導入されるため、当接部32の径は管理弁103の口径よりも小さくなっている。また、当接部32は、カメラカプセル10に適切に当接するように、カメラカプセル10の径よりも大きいことが好ましい。当接部32には、後述するリール40の糸41を収容可能な貫通孔(ガイド)が設けられていてもよい。これにより、リール40からの糸の送り及び巻き戻しが好適に導かれ、また、当接部32により邪魔されない。
【0031】
当接部32は、カメラカプセル10の一部を収容する窪み33を有していることが好ましい。窪み33は、カメラカプセル10の端部を収容可能な形状及び大きさであればよく、例えば、半球形状である。
図4の状態1006に示すように、窪み33に端部が収容されたカメラカプセル10を流体管路101内に導入した後に、リール40により糸41を緩めると、糸41に連結されたカメラカプセル10の後部が窪み33を支点として回転する。これにより、
図4の状態1007に示すように、カメラカプセル10の長手方向が矢印に示す流体の流れ方向に沿うように、カメラカプセル10の向きが変わる。その結果、カメラカプセル10内のカメラによる撮影範囲Rが、流体管路101内のより広範囲となる。
【0032】
また、カメラカプセル10を回収する際には、カメラカプセル10の端部が窪み33に収容されるまでリール40により糸41を巻き取ると、糸41に連結されたカメラカプセル10の後部が窪み33を支点として回転する。これにより、カメラカプセル10の長手方向が胴体20の延伸方向に沿うようにカメラカプセル10の向きが変わる。その結果、胴体20内に引っかかることなくカメラカプセル10を回収することができる。
【0033】
(リール)
リール40は、カメラカプセル10に連結された糸41の送り及び巻き戻しを行う。リール40は、糸41にテンションをかけたり緩めたりと、糸41の弛緩を制御することで、流体管路101内におけるカメラカプセル10の位置を制御する。リール40は、胴体20の外表面に設けられている。棹30により流体管路101までカメラカプセル10を押し込んだ後、カメラカプセル10は流体管路101内の流れに従って流下するので、リール40を操作して糸41を送り出したり巻き戻したりして、糸41の弛緩を制御する。これにより、カメラカプセル10の流体管路101内での位置を制御することができる。
【0034】
観察装置100は、流体管路101内を流体が流通している状態でリール40から糸41を送ることで、カメラカプセル10を流体管路101内で浮遊させる。カメラカプセル10を流体管路101内で浮遊させた状態で糸41をさらに送り出せば、カメラカプセル10は流体の流れに乗って流体管路101内のさらに遠くまで流れていく。これにより、流体管路101の広範囲の撮影が可能となる。
【0035】
リール40から糸41を送り出し続けてカメラカプセル10が流体管路101内の観察区間を通過するまで流した後、糸41をゆっくり巻き戻してテンションをかけることで、カメラカプセル10の流体管路101内での姿勢を安定させる。これにより、カメラカプセル10内のカメラにより撮影する画像にブレが生じにくい。
【0036】
糸41は、棹30の当接部32に設けられた貫通孔を介して窪み33から引き出されていることが好ましい。これにより、リール40による糸41の送り及び巻き戻しが当接部32により邪魔されない。また、リール40による糸41の弛緩の制御により、窪み33を支点としてカメラカプセル10の向きを変えることができる。
【0037】
(観察方法)
本発明の一実施形態に係る観察装置100を用いた管路内の観察方法について、説明する。管路内の観察方法は、流体管路101に設けられた弁を介して流体管路101に連結されている、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置100を用いた管路内の観察方法であって、流体管路101内に流体を流通させた状態で、流体管路101内にカメラカプセル10を導入して流体管路101内を撮影する撮影工程を包含する。
【0038】
図3の状態1003に示すように、観察装置100を流体管路101に連結するとき、管理弁103は閉じているため、流体管路101内を流通する流体が管理弁103より上方には存在しない。状態1003において、側面部23のフランジ蓋を開き、糸41の先端にカメラカプセル10を取り付けたり、糸41に取り付けられたカメラカプセル10内にカメラを収容したりできる。
【0039】
次に、
図3の状態1004に示すように、側面部23のフランジ蓋を閉じて、管理弁103を開く。次に、観察装置100の上部に取り付けた空気抜きバルブ24から空気を抜くことにより、胴体20内の天端部22まで流体管路101内を流通する流体で満たされる。
【0040】
そして、
図3の状態1005に示すように、棹30によりカメラカプセル10を流体管路101内まで押し込む。さらに、
図4の状態1006及び状態1007に示すように、リール40から糸41を送ることで、流体管路101内を流通する流体の流れに乗せてカメラカプセル10を観察したい場所よりもさらに下流側まで浮遊させる。このように、流体管路101内においてカメラカプセル10を浮遊させた状態でリールを巻きあげると、カメラカプセル10は流体管路101の上流側からの流体力を、後述するカメラカプセル10の羽根部15で同心円状に受ける。これにより、カメラカプセル10に収容されたカメラのレンズを流体管路101の延伸方向に向けることが可能となる。この状態において、カメラカプセル10に収容されたカメラにより流体管路101内を撮影することで、流体管路101内の通常の使用時の状態を観察することができる。
【0041】
なお、糸41を所定の長さ毎に異なる色で着色しておけば、糸41を送り出した長さにより、流体管路101内におけるカメラカプセル10の位置を特定することができる。また、カメラが撮影した画像における流体管路101の継ぎ目を目印として、流体管路101内におけるカメラカプセル10の位置を特定してもよい。このように流体管路101内におけるカメラカプセル10の位置が特定できるので、カメラが撮影した画像において観察される欠陥部位を容易に特定することができる。
【0042】
本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置及び管路内の観察方法によれば、流体管路に設けられた弁を利用して観察装置を設置可能であり、また、観察装置及び観察装置と流体管路との間の高い密閉性を確保することができる。したがって、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置及び管路内の観察方法によれば、例えば、畑地に灌漑用水を送配するための小口径で高圧のパイプラインであっても、流体を流通させた状態で管路内を撮影可能である。
【0043】
(カメラカプセル)
観察装置100に設けられるカメラカプセル10の構成について、
図5及び6を参照して説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る観察装置に設けられるカメラカプセルの一例を示す概略分解図である。
図6は、本発明の一実施形態に係る管路内の観察装置に設けられるカメラカプセルの一例を示す分解図である。
図6は、説明の便宜上、羽根部15を除いた状態を示している。
図6において、状態1008は、カメラカプセル10の全体を分解した状態を示しており、状態1009は、カメラカプセル10の一部を組み立てた状態を示しており、状態1010は、カメラカプセル10の組立完成品を示している。
【0044】
カメラカプセル10は、流体管路101の弁を介して導入可能であり、流体管路101内で好適に浮遊可能な大きさであればよい。カメラカプセル10の最も径が大きい部分の径は、75mm以下であることが好ましい。また、カメラカプセル10の長さは、65mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましい。
【0045】
カメラカプセル10は、後部11、体部12、前部13、及び羽根部15を有している。カメラカプセル10において、後部11と体部12との間、並びに、体部12と前部13との間は、弾性部材14によりシールされている。また、羽根部15は、体部12と前部13との間に設けられている。後部11、体部12及び前部13は、その内部に空洞を有している。
【0046】
後部11は、糸41に連結される部材である。また、後部11は、当接部32に当接した状態でカメラカプセル10を回転して向きを変える起点となる箇所である。後部11には、糸41を連結するための穴が設けられている。後部11は、角のない円錐形であることが好ましい。後部が円錐形である場合、円錐形の頂点側に糸41が連結される。後部11は、例えば、キャップ11aとキャップナット11bとにより構成されていてもよい。後部11は、流体管路101の内壁に接触する可能性があるため、所定の弾性を有する材料により構成されていることが好ましい。後部11は、例えば、ポリプロピレン製であり得る。
【0047】
体部12は、その内部にカメラ16を固定する部材である。体部12は、その内部に、カメラ16を固定する固定部19を備えている。体部12についても、後部11と同様に、流体管路101の内壁に接触する可能性があるため、所定の弾性を有する材料により構成されていることが好ましい。体部12は、例えば、ポリプロピレン製であり得る。
【0048】
固定部19は、ライト18を収容できるようになっていることが好ましい。ライト18は、例えば、LEDライトである。カメラ16のレンズ側の端部には、ライト18からの光がレンズ内に直接侵入しないように、遮光性のレンズカバー17が設けられていることが好ましい。
【0049】
前部13は、カメラ16のレンズに対向する部材である。したがって、前部13は、透光性の高い材料により構成されていることが好ましい。前部13は、例えば、アクリル樹脂製であり得る。
【0050】
後部11、体部12及び前部13は、製造の容易性の観点から、それぞれ独立した部材であることが好ましい。後部11、体部12及び前部13は、例えば、三次元印刷装置を用いて製造することができる。カメラカプセル10は、流体を流通させた状態の流体管路101内に導入されるため、水密性が高い構造であることが好ましい。後部11と体部12との間、並びに、体部12と前部13との間には弾性部材14によりシールされており、例えば、その連結はねじ込み式である。カメラカプセル10は、高圧で流体を流通させる流体管路101内に導入されるため、耐圧構造を有していることが好ましい。後部11及び体部12を、例えば、ポリプロピレン製とすることで、カメラカプセル10の耐圧性を高めることができる。
【0051】
羽根部15は、体部12の周囲に設けられた円盤状又は襟巻状の部材である。羽根部15は、流体管路101内を浮遊するカメラカプセル10の姿勢を安定させるためのものである。羽根部15は、例えばゴムのような弾性部材により構成されている。羽根部15は、また、その円盤状又は襟巻状部分に流体を通過させる小口径の穴が複数設けられていることが好ましい。
【0052】
(カメラ)
カメラカプセル10内に収容されるカメラ16は、小型及びワイヤレスのデジタルカメラであることが好ましく、生活防水機能程度の防水機能を有する、いわゆるアクションカメラであることがより好ましい。また、カメラ16は、無線通信可能なものであってもよく、これによりカメラ16をカメラカプセル10に内蔵した状態でカメラの録画の開始や停止を行うことが可能である。
【0053】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、農業分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 カメラカプセル
20 胴体
30 棹(押出し機構)
33 窪み
40 リール
41 糸
100 観察装置(管路内の観察装置)
101 流体管路
102 空気弁
103 管理弁(弁)