(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】熱伝導性樹脂成形体とその製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 70/34 20060101AFI20230821BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20230821BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20230821BHJP
C08K 7/00 20060101ALI20230821BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20230821BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20230821BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
B29C70/34
C08J5/00 CFH
C08L83/04
C08K7/00
C08K3/38
C08K3/04
C08K3/22
(21)【出願番号】P 2020069948
(22)【出願日】2020-04-08
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019102255
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】冨永 雄一
(72)【発明者】
【氏名】杉本 慶喜
(72)【発明者】
【氏名】今井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】堀田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】菊池 節夫
(72)【発明者】
【氏名】岩井 亮
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-164590(JP,A)
【文献】特開2016-192474(JP,A)
【文献】特開2015-048358(JP,A)
【文献】特開2012-255055(JP,A)
【文献】特開2017-210383(JP,A)
【文献】特開2017-128476(JP,A)
【文献】特開2015-034269(JP,A)
【文献】特開2014-201687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と熱伝導性フィラーを含み、
前記
バインダー樹脂は付加硬化型シリコーンポリマーであり、
前記熱伝導性フィラーは、少なくとも異方形状熱伝導性フィラーを含み、
前記バインダー樹脂と熱伝導性フィラーを含む組成物は塊状物体の状態で圧縮されて成形体を構成しており、
前記成形体は
前記塊状物同士の境界が観察され、個々の
塊状物は圧縮されてつぶれ、前記異方形状熱伝導性フィラーがアトランダムな方向に向いており、
前記塊状物の平均直径は0.01mm以上5mm以下であり、
前記成形体は、厚み方向の熱伝導率が4.0W/m・K以上300W/m・K以下であり、かつ、面内方向(s)と厚み方向(t)の熱伝導率の比(s/t)が0.6以上1.5以下であることを特徴とする熱伝導性樹脂成形体。
【請求項2】
前記異方形状熱伝導性フィラーは、六方晶窒化ホウ素、黒鉛及びグラフェンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項3】
前記異方形状熱伝導性フィラーの形状は、板状、鱗片状、棒状、針状及び繊維状からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項4】
異方形状熱伝導性フィラーに加えて、さらに非異方形状熱伝導性フィラーを含み、
前記非異方形状熱伝導性フィラーは、カーボンブラック、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム及び炭化ケイ素からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項5】
前記非異方形状熱伝導性フィラーは、球状および粉砕状から選ばれる少なくとも一つである請求項
4に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項6】
前記熱伝導性樹脂成形体は、面内の任意の方向をs1方向および面内方向に沿い、かつs1方向に直交する方向をs2方向としたときに、熱拡散率の比(s1/s2)が0.8以上1.2以下である請求項1~
5のいずれか1項に記載の熱伝導性樹脂成形体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれかに記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法であって、
熱伝導性フィラーと
付加硬化型シリコーンポリマーを混合した樹脂ペースト組成物を作製する第一の工程と、
前記樹脂ペースト組成物に、さらに前記熱伝導性フィラーを添加し撹拌することにより熱伝導性樹脂組成物を作製する第二の工程と、
前記熱伝導性樹脂組成物を振動運動により球状に成形する第三の工程と、
圧縮成形する第四の工程を含み、
前記第一の工程及び前記第二の工程の両方の工程で、異方形状熱伝導性フィラーを添加することを特徴とする熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
【請求項8】
前記撹拌工程後、得られた熱伝導性樹脂組成物を機械的に粉砕する機械粉砕処理工程をさらに含む、請求項
7に記載の熱伝導性樹脂成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導の異方性を低減し、低比重である熱伝導性樹脂成形体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや自動車等に搭載される電子部品の高集積化や高密度化によって、電子部品からの単位面積当たりの発熱量が大きくなっている。これに伴い、従来の放熱材料に比べて、熱伝導率を向上して、より速やかに熱を放出できる高熱伝導性材料への需要が高まっている。また、絶縁性を求められる用途においては、高い使用温度環境でも安定して高い絶縁性が求められている。一方、これら部材に対しては、軽量化による省エネルギー化に対する要求も強いことから、高い熱伝導率を有する材料と、軽量性に優れた樹脂からなる複合材料が広く利用されている。複合材料のバインダーとなる樹脂は熱伝導率が低いので、高熱伝導性の材料と複合化することで放熱材料とし、各分野において実用化されている。放熱部材としての複合材料は、発熱体との密着性が重要となる。そのため、発熱体からの発熱に耐えうる耐熱性と、空気層を残存させず発熱体に密着できる柔軟性が求められる。このような用途には、耐熱性と柔軟性を兼ね備えた樹脂が使われることが一般的である。
【0003】
高熱伝導性を有する材料として、高熱伝導性セラミックスフィラーが充填材として使用されることが多い。汎用的には酸化アルミニウムが用いられ、その他窒化物やジルコニア系酸化物が用いられる場合もある。高熱伝導性フィラーの中には、板状や棒状のように、異方形状を持ったフィラーがある。異方形状のフィラーは、低濃度で効率的に複合組成物の熱伝導率を向上できる可能性があることから、熱伝導性フィラーとして重要である。異方性のフィラーの中でも、注目されるのが六方晶窒化ホウ素である。六方晶窒化ホウ素は、長軸方向と短軸方向で熱伝導性が異なり、長軸方向に特に高い熱伝導率を示す。長軸方向の熱伝導率は200W/m・Kであるのに対し、短軸(板厚)方向の熱伝導率は2W/m・Kである。したがって、長軸方向の高い熱伝導率を活用する技術が求められている。しかし、このような異方形状を有する熱伝導性フィラーを複合組成物として成形して用いる場合、成形時のバインダー樹脂の流動に沿って異方形状フィラーが配向してしまい、所望の方向に十分な熱伝導特性を得られないことがある。複合組成物の熱伝導率を向上させる技術に関し、複合組成物に含まれる異方形状熱伝導性フィラーを、複合組成物の厚み方向に配向させる技術が開示されている(例えば特許文献1~2) 。また、例えば特許文献3、4では、異方形状熱伝導性フィラーが一方向に配向した成形体を二次加工することにより、所望の方向に高い熱伝導率を得るという技術が開示されている。また、異方形状熱伝導性フィラーが様々な方向を向いた二次凝集状態の構造体とすることで、全体として等方的な凝集フィラーとすることも行われている(例えば特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-321554号公報
【文献】特開2013-159748号公報
【文献】特開2010-003981号公報
【文献】特開2010-132856号公報
【文献】特開2003-112915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1~2の方法では、電界あるいは磁界の印加により異方形状熱伝導性フィラーを配向させるため、特別な装置が必要となり高コスト化する、また汎用性に欠けるという問題がある。また、面内方向での熱伝導率には差があるため、温度が均一にならずホットスポットが生じやすい。また、特許文献3、4の方法では、工程数が増え、コスト増となる問題がある。さらに、特許文献5の方法では、凝集構造体中に微細な空隙が含まれており、フィラーとしての使用時にバインダー樹脂が空隙内部に充填されにくく、複合材料の熱伝導率が低下してしまうといった問題がある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するため、面内方向と厚み方向の熱伝導率が比較的高く、かつ熱伝導率方向性のバランスが良く、さらに低比重である、熱伝導性樹脂成形体とその製造方法、およびこの熱伝導性樹脂成形体の原料に好適な複合樹脂塊状物とその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱伝導性樹脂成形体は、バインダー樹脂と熱伝導性フィラーを含み、前記バインダー樹脂は付加硬化型シリコーンポリマーであり、前記熱伝導性フィラーは、少なくとも異方形状熱伝導性フィラーを含み、前記バインダー樹脂と熱伝導性フィラーを含む組成物は塊状物体の状態で圧縮されて成形体を構成しており、前記成形体は前記塊状物同士の境界が観察され、個々の塊状物は圧縮されてつぶれ、前記異方形状熱伝導性フィラーがアトランダムな方向に向いており、前記塊状物の平均直径は0.01mm以上5mm以下であり、前記成形体は、厚み方向の熱伝導率が4.0W/m・K以上300W/m・K以下であり、かつ、面内方向(s)と厚み方向(t)の熱伝導率の比(s/t)が0.6以上1.5以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明の熱伝導性樹脂成形体の製造方法は、前記の熱伝導性樹脂成形体の製造方法であって、熱伝導性フィラーと付加硬化型シリコーンポリマーを混合した樹脂ペースト組成物を作製する第一の工程と、前記樹脂ペースト組成物に、さらに前記熱伝導性フィラーを添加し撹拌することにより熱伝導性樹脂組成物を作製する第二の工程と、前記熱伝導性樹脂組成物を振動運動により球状に成形する第三の工程と、圧縮成形する第四の工程を含み、前記第一の工程及び前記第二の工程の両方の工程で、異方形状熱伝導性フィラーを添加することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、異方形状熱伝導性フィラーと非異方形状熱伝導性フィラーとバインダー樹脂を用いて、異方形状熱伝導性フィラーが様々な方向に配向した熱伝導性樹脂成形体とすることにより、面内方向と厚み方向の熱伝導率が比較的高くかつ熱伝導方向性のバランスが良く、低比重である熱伝導性樹脂成形体とその製造方法、およびこの熱伝導性樹脂成形体に好適な複合樹脂塊状物とその製造方法を提供できる。また、等方的な高熱伝導特性を有する複合樹脂成形体を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1A-Dは本発明の一実施態様の複合樹脂塊状物での製造工程を示す模式的説明図、
図1Eは同、熱伝導性樹脂成形体の模式的断面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施例で使用する非異方形状熱伝導性フィラーの写真である。
【
図3】
図3は本発明の一実施例で使用する異方形状熱伝導性フィラーの写真である。
【
図4】
図4は本発明の一実施例の複合樹脂塊状物の写真である。
【
図5】
図5は本発明の一実施例の熱伝導性樹脂成形体の断面写真である。
【
図6】
図6A-Bは本発明の一実施例で使用する熱伝導率の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは、面内方向と厚み方向の熱伝導率が比較的高くかつ熱伝導方向性のバランスが良く、低比重である熱伝導性樹脂成形体を得るために鋭意研究を重ねた結果、少なくとも異方形状熱伝導性フィラーを含む複合樹脂塊状物の製造方法として、熱伝導性フィラーとバインダー樹脂を混合した樹脂ペースト組成物を作製する第一の工程と、前記樹脂ペースト組成物に、さらに熱伝導性フィラーを添加し撹拌することにより熱伝導性樹脂組成物を作製する第二の工程と、前記熱伝導性樹脂組成物を振動運動により球状に成形する工程を含み、前記第一の工程及び前記第二の工程の少なくとも一方の工程で、異方形状熱伝導性フィラーを添加することで、前記異方形状熱伝導性フィラーが一方向に配向せずに集合した複合樹脂塊状物が得られることを見出した。また、この複合樹脂塊状物を用いて熱伝導性複合樹脂成形体を作製することにより、異方性が低く抑えられ、かつ高熱伝導性を有する複合樹脂成形体を得られることを見出し、この知見に基づいて、本発明をなすに至った。
【0013】
以下、異方形状熱伝導性フィラーを、熱伝導性フィラーとバインダー樹脂からなる複合樹脂塊状物中で一方向に配向させないための最良の形態について具体的に説明する。
【0014】
フィラーとは、巨視的に粉末状である粒子状の物質であって、バインダー樹脂と混合されて組成物を構成するものである。熱伝導性フィラーとは、フィラーのうち、熱伝導性に優れ、バインダー樹脂よりも高い熱伝導率を有するものをいう。異方形状とは、フィラーを微視的に見た際に、例えば、板状、鱗片状、棒状、針状、繊維状などのように、長軸方向と短軸方向の長さが異なるものをいう。板状、鱗片状の場合は、厚み方向を短軸方向という。
【0015】
本発明に用いられる異方形状熱伝導性フィラーの長軸の長さは0.1μm以上500μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上100μm以下である。0.1μm以上であれば、成形性が良好であり、フィラーを高充填することができる。500μm以下であると、球状複合樹脂組成物の粒子径の制御が容易となる。また、長軸と短軸の長さの比である縦横比は2.5以上3000以下であることが好ましい。3000以下であれば、フィラー同士の絡み合いを抑制でき、組成物を塊状に成形しやすくなる。
【0016】
本発明において用いられる、異方形状熱伝導性フィラーとして、異方形状を有し、バインダー樹脂よりも高い熱伝導率を持つものであれば特に限定されない。例えば、六方晶窒化ホウ素、黒鉛、グラフェン等が挙げられる。また、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
非異方形状とは、例えば球状、粉砕状及び塊状などのように、長軸方向と短軸方向の長さの比(縦横比ともいう)が2.5以下のものを指し、本発明では縦横比が2.5以下のものを非異方形状フィラーと定義する。
【0018】
本発明において用いられる非異方形状熱伝導性フィラーの粒子径(メジアン径)は1nm以上0.1mm未満であることが好ましい。また、前記異方形状熱伝導性フィラーの長軸方向の長さの100%以下の粒子径(メジアン径)であることが好ましい。前記非異方形状熱伝導性フィラーの粒子径(メジアン径)が前記異方形状熱伝導性フィラーの長軸方向の長さの100%以下の粒子径であると、異方形状熱伝導性フィラーの粒子間の間に非異方形状熱伝導性フィラーが侵入しやすくなるため、フィラーの含有量を増加させることができる。さらに、異なる粒子径(メジアン径)の非異方形状熱伝導性フィラーを混合してもよい。
【0019】
本発明において用いられる、非異方形状熱伝導性フィラーとして、非異方形状を有し、バインダー樹脂よりも高い熱伝導率を持つものであれば特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素が挙げられる。また、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0020】
非異方形状熱伝導性フィラーの形状は、かならずしも球形状である必要はなく、球状からずれていてもよいし、また、表面に凹凸を有していてもよい。楕円球、長円球、塊状球など様々な球を含む。
【0021】
バインダー樹脂としては、常温で液体であり、硬化処理後に常温で固体となる硬化性樹脂であれば、どのようなものでもよい。熱硬化性樹脂にはゴムも含む。熱硬化性樹脂にはエポキシ樹脂,フェノール樹脂,不飽和ポリエステル樹脂,メラミン樹脂等があるがここに挙げた限りではない。ゴムには、天然ゴム(ASTM略語NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2-ポリブタジエンゴム(1,2-BR)、スチレンーブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR),二トリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレンープロピレンゴム(EPM、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO,ECO)多硫化ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、ウレタンゴム(U)等があるがここに挙げた限りではない。この中でもシリコーン樹脂が好ましい。シリコーン樹脂は耐熱性が高く、柔らかさもあり、放熱シートとして良好な特性を有する。シリコーン樹脂は付加硬化型、過酸化物硬化型、縮合型など使用できる。熱硬化性シリコーン樹脂であれば、硬化後の形状が、ゴム状、ゲル状、レジン状などのいずれも使用できる。
【0022】
バインダー樹脂は、本発明の目的に反しない範囲で、難燃剤、安定化剤、可塑剤、界面活性剤、硬化遅延剤などを添加物として含んでもよい。
【0023】
異方形状と非異方形状の2つの熱伝導性フィラーとバインダー樹脂の混合割合は、フィラーの体積割合が30体積%から95体積%の範囲であることが好ましく、より好ましくは50体積%以上である。30体積%以上のフィラー含有量では、フィラーの接触が良好となり、熱伝導率の向上が期待できる。また、複合樹脂塊状物の成形性も向上する。また、95体積%以下のフィラー含有量では、複合樹脂組成物の粘度増加を抑制でき、成形体の空隙の発生を抑制できる。成形体内に空隙が存在すると、強度や熱伝導率などの特性が悪化する原因となる可能性があるため、好ましくない。
【0024】
複合樹脂塊状物は、塊状に成形されている。複合樹脂塊状物の平均直径は、球相当径として、0.01mm以上5mm以下であることが好ましい。0.01mm未満では、フィラーの粒子径が小さくなるため、界面熱抵抗の影響により、複合樹脂成形体の熱伝導率が向上しない場合がある。一方、5mmより大きいものは複合樹脂成形体の熱伝導特性の等方性を向上する効果が不十分となる傾向がある。本発明では顕微鏡で観察した100個の複合樹脂塊状物の直径の平均値を平均直径と定義する。
【0025】
複合樹脂塊状物の形状は、かならずしも球状に近い形状である必要はなく、球からずれていてもよいし、また、表面に凹凸を有していてもよいし、内部に空隙を含んでいてもよい。楕円球、長円球、塊状球など様々な球を含む。塊状複合シリコーン組成物の形状は、例えば光学顕微鏡、電子顕微鏡等から観察することができる。
【0026】
本発明の複合樹脂塊状物において、異方形状熱伝導性フィラーは、組成物内で一方向に配向していない。これにより、異方形状熱伝導性フィラーを用いながら、全体としては等方的な熱伝導率を有する複合樹脂塊状物とすることができる。複合樹脂塊状物の内部における異方形状熱伝導性フィラーの配置については、複合樹脂塊状物の断面を電子顕微鏡等で観察することで評価できる。また、異方形状熱伝導性フィラーは集合していることが好ましい。これにより熱伝導性を向上できる。
【0027】
非異方形状熱伝導性フィラーまたは異方形状熱伝導性フィラーまたはその両方とバインダー樹脂は、まず、公知の混合手段を用いて混合される。例えば、混練機または撹拌機により、液状のバインダー樹脂にフィラーを混合することができる。バインダー樹脂は、一般に、主剤、硬化剤、硬化促進剤等と呼ばれる複数の成分から構成されている。非異方形状熱伝導性フィラーまたは異方形状熱伝導性フィラーまたはその両方と混合するにあたっては、これらの混合の順序は問わない。まずバインダー樹脂を構成する主剤、硬化剤、硬化促進剤等を所定の割合で混合したのちにフィラーとの混合を行ってもよいし、あるいは、主剤とフィラーを混合した後に、硬化剤、硬化促進剤等を加えてさらに混合してもよい。
【0028】
複合樹脂ペースト組成物と非異方形状熱伝導性フィラーまたは異方形状熱伝導性フィラーまたはその両方とは、公知の混合手段を用いて混合される。例えば、混練機または撹拌機を使用してもよいし、攪拌棒で混合してもよい。
【0029】
複合樹脂組成物を塊状に成形する手段として、振とう機や回転容器を用いてもよいし、組成物を含む容器を手でゆるやかに回転運動させてもよい。微小な複合樹脂塊状物を作製するため、粉砕機等で粉砕してもよい。
【0030】
本発明の熱伝導性樹脂成形体の成形方法は特に限定されず、バインダー樹脂を用いた製品に通常用いられる公知の方法を用いることができる。複合樹脂塊状物を、射出成形、押出成形、プレス成形、真空プレス成形等の方法で所望の形状に成形することにより、成形体が得られる。いずれの成形方法も球状塊状物を圧縮することができる。得られた成形体においても異方形状熱伝導性フィラーがアトランダムな方向に向いている。
【0031】
アトランダムな方向とは、異方形状熱伝導性フィラーの方向が様々な方向に向いていることを意味している。
【0032】
前記熱伝導性複合樹脂成形体の成形方法において、前記複合樹脂塊状物にバインダー樹脂を噴霧器等で被覆してもよい。複合樹脂塊状物にバインダー樹脂を被覆することで、熱伝導性複合樹脂成形体の塊状物間の空隙を低減することができる。
【0033】
前記熱伝導性樹脂成形体は、厚み方向の熱伝導率が4.0W/m・K以上300W/m・K以下であるのが好ましい。これにより実用的には十分な熱伝導率となる。また本発明の熱伝導性樹脂成形体は、等方的な熱伝導特性を有している。等方性の程度は、直交する方向の熱伝導特性を測定し、その比として評価することができる。例えば、円板状の成形体であれば、面内方向と厚み方向の熱伝導率を評価し、それらの比として表される。熱伝導性樹脂成形体は、面内方向(s)と厚み方向(t)の熱伝導率の比(s/t)が0.6以上1.5以下であることが好ましい。
【0034】
熱伝導性樹脂成形体は、面内方向(s)と厚み方向(t)のみならず、面内方向であれば、任意の方向(s1,s2)に対しても熱伝導の方向性が低く、その熱伝導率の比(s1/s2)は0.8以上1.2以下であることが好ましい。なお、s1方向は、熱伝導性樹脂成形体の面内方向に沿った任意の方向である。s2方向は、面内方向に沿い、かつs1方向に直交する方向である。従って、s1方向及びs2方向は、厚み方向に直行する方向である。また、熱伝導率は、熱拡散率と比熱と密度の積であるため、同一の熱伝導性樹脂成形体の場合は熱拡散率の比と熱伝導率の比は同義である。したがって、熱拡散率の比(s1/s2)は0.8以上1.2以下であることが好ましい。
【0035】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。
図1A-Dは本発明の一実施態様の複合樹脂塊状物での製造工程を示す模式的説明図、
図1Eは同、熱伝導性樹脂成形体の模式的断面図である。
容器1にバインダー樹脂2を入れ、ここに非異方形状熱伝導性フィラー3を入れて混合し、樹脂ペースト組成物とする(
図1A)。次に、異方形状熱伝導性フィラー4を添加し撹拌する(
図1B)。得られた熱伝導性樹脂組成物はままこ状態になるが、これを振動運動により粒状の塊状に成形する(
図1C)。得られた複合樹脂塊状物5は、異方形状熱伝導性フィラー4の粒子がアトランダムな方向に向いており、間に非異方形状熱伝導性フィラー3が分散した状態である(
図1D)。複合樹脂塊状物5を圧縮すると熱伝導性樹脂シート6に成形できる(
図1E)。前記成形と同時またはその後にシート6を硬化する。この熱伝導性樹脂成形体シート6は複合樹脂塊状物5同士の境界7が観察される。個々の複合樹脂塊状物5は圧縮されてつぶれ、角ができる。また。シートを構成する複合樹脂塊状物5中の異方形状熱伝導性フィラー4はアトランダムな方向に向いている。このため、熱伝導性樹脂成形体シート6は、熱伝導の方向性が比較的低く、面内方向(s)と厚み方向(t)の熱伝導率の比(s/t)が0.6以上1.5以下であるのが好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、以下の実施例は本発明の一部の実施形態を示すものに過ぎないため、本発明をこれらの実施例に限定して解釈するべきではない。
<複合樹脂塊状物の平均直径と平均縦横比>
実体顕微鏡(5倍の対物レンズ)の写真で観察し、100個の平均直径とする。縦横比(D1/D2)は球状成形体の最大直径(D1)と、前記D1と直交する直径(D2)の比とし、100個の平均縦横比とする。
<熱伝導率>
熱伝導性シートの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置11は
図6Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ12を2個の熱伝導性シート試料13a,13bで挟み、センサ12に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ12の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ12は先端14が直径7mmであり、
図6Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極15と抵抗値用電極(温度測定用電極)16が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出した。面内方向の熱伝導率は、熱伝導性試料を8mm幅にカットした後に積層させて積層シートを作製し、90度回転させて8mm幅方向の熱伝導率を測定した。
【0037】
【0038】
<熱拡散率>
実施例7の熱伝導性シートの熱拡散率(s1、s2)は、ベテル製熱拡散率測定装置 TA35により測定した。
【0039】
(実施例1)
シリコーンポリマー(白金系触媒入り)(東レ・ダウコーニング製DOWSIL CY 52-276 A液)2.4gとシリコーンポリマー(架橋剤入り)(東レ・ダウコーニング製DOWSIL CY 52-276 B液)2.6gを自公転ミキサーで混合し、バインダー樹脂として用いた。バインダー樹脂5.0gに、
図3に示す異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素(Dandong Chemical Engineering Institute製HSLグレード、メジアン径30.0μm、板状)11.7gを徐々に添加し、攪拌棒で混合した。異方形状熱伝導性フィラーを徐々に添加することは、本発明の第1の工程と第2の工程を含む。攪拌棒で混合した組成物を手でゆるやかに振動し、回転運動させることにより、
図4に示す複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.728mm、平均縦横比は1.38であった。
得られた複合樹脂塊状物11.8gを直径60mmの金型に入れ、室温で圧力1tプレスしたまま、温度100℃に昇温し、30分間で加熱プレス成形し、
図5に示す熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは2.69mm、厚み方向(t)の熱伝導率は4.2W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は5.1W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.21であった。また、比重は1.49であった。
【0040】
(実施例2)
実施例1と同じバインダー樹脂に、
図2に示す非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(日鉄ケミカル&マテリアル製AZ35―125、メジアン径35.0μm)20.0gを混合し、異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素の量を10.0gに変えた以外は、実施例1と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.946mm、平均縦横比は1.26であった。
この球状成形体21.0gを実施例1と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは3.11mm、厚み方向(t)の熱伝導率は4.3W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は4.3W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.00であった。また、比重は2.22であった。
【0041】
(実施例3)
非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(日鉄ケミカル&マテリアル製AZ35―125、メジアン径35.0μm)を、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)に変え、異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素の量を12.0gに変えた以外は、実施例2と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.979mm、平均縦横比は1.46であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは3.23mm、厚み方向(t)の熱伝導率は5.9W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は6.9W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.17であった。また、比重は2.26であった。
【0042】
(実施例4)
非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(日鉄ケミカル&マテリアル製AZ35―125、メジアン径35.0μm)を非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)に変え、異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素の量を11.0gに変え、複合組成物をブレンダーで処理した以外は、実施例2と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.356mm、平均縦横比は1.27であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。熱伝導性樹脂成形体の厚みは2.97mm、厚み方向(t)の熱伝導率は6.2W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は6.8W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.10であった。また、比重は2.33であった。
【0043】
(実施例5)
非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)を非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(住友化学製AKP-30、メジアン径0.3μm)に変えた以外は、実施例4と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.567mm、平均縦横比は1.47であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは2.82mm、厚み方向(t)の熱伝導率は7.0W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は7.0W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.00であった。また、比重は2.36であった。
【0044】
(実施例6)
非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)20.0gを、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)6.7g、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(住友化学製AKP-30、メジアン径0.3μm)13.3gの混合物に変えた以外は、実施例4と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.882mm、平均縦横比は1.39であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは3.00mm、厚み方向(t)の熱伝導率は6.5W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は7.2W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.11であった。また、比重は2.36であった。
【0045】
(実施例7)
異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素を13.0gに変えた以外は、実施例6と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.429mm、平均縦横比は1.30であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは3.15mm、厚み方向(t)の熱伝導率は7.1W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は7.8W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.10であった。また、比重は2.33であった。また、面内方向s1およびs2の熱拡散率はs1方向が4.55×10-6(m2/s)であり、s2方向が4.53×10-6(m2/s)、熱拡散率の比(s1/s2)は1.00であった。
【0046】
(実施例8)
非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)20.0gを、非異方形状熱伝導性フィラーの窒化アルミニウム(東洋アルミ製R15、メジアン径15.5μm)6.7g、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(住友化学製AKP-30、メジアン径0.3μm)13.3gの混合物に変えた以外は、実施例4と同じようにして、複合樹脂塊状物を作製した。複合樹脂塊状物の平均直径は0.430mm、平均縦横比は1.30であった。この複合樹脂塊状物を実施例2と同様にプレス成形し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚みは3.23mm、厚み方向(t)の熱伝導率は4.5W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は4.6W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.05であった。また、比重は2.27であった。
【0047】
(比較例1)
実施例7と同じ種類・量のシリコーン、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム、異方形状熱伝導性フィラーの六方晶窒化ホウ素をメカニカルスターラーで混合し、等速ロールで幅150mm、厚み3.00mmに圧延し、100℃で加熱硬化し、熱伝導性樹脂成形体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚み方向(t)の熱伝導率は5.8W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は9.8W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.69であった。また、比重は2.29であった。
【0048】
(比較例2)
シリコーンポリマー(白金系触媒入り)(東レ・ダウコーニング製DOWSIL CY 52-276 A液)2.5g、シリコーンポリマー(架橋剤入り)(東レ・ダウコーニング製DOWSIL CY 52-276 B液)2.5g、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(昭和電工製AL47H-STD、メジアン径2.1μm)25.0g、非異方形状熱伝導性フィラーの酸化アルミニウム(日鉄ケミカル&マテリアル製AZ75-150、メジアン径75μm)47.5gをメカニカルスターラーで混合し、等速ロールで幅150mm、厚み3.00mmに圧延し、100℃で加熱硬化し、熱伝導性樹脂成型体を作製した。得られた熱伝導性樹脂成形体の厚み方向(t)の熱伝導率は4.5W/m・K、面内方向(s)の熱伝導率は4.6W/m・K、熱伝導率の比(s/t)は1.02であった。また、比重は3.22であった。
以上の結果をまとめて表1および表2に示す。
【0049】
【0050】
表1から明らかなとおり、実施例1~8は面内方向と厚み方向の熱伝導率が4.0W/m・K以上であり、熱伝導率の比(s/t)の比も0.6以上1.5以下であった。一方、比較例1は比重が低く、熱伝導率が高いものの熱伝導率の比が1.69であり、熱伝導率の異方性が高かった。比較例2は、熱伝導率が高く、熱伝導率の異方性が低いものの、比重が高かった。本発明の熱伝導性樹脂成型体は熱伝導率が比較的高くかつ熱伝導方向性のバランスが良く、低比重な熱伝導性樹脂成形体であることが確認できた。
【0051】
【0052】
表2から明らかなとおり、実施例7は面内の2方向(s1方向、s2方向)の熱拡散率の比(s1/s2)が1.00であり、熱拡散率のバランスが良い樹脂成型体であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の熱伝導性シートは、LED、家電などの電子部品、光通信機器を含む情報通信モジュール、車載用途などの発熱部と放熱部との間の放熱体として有用である。半導体を含む電子部品の放熱体としても有用である。
【符号の説明】
【0054】
1 容器
2 バインダー樹脂
3 非異方形状熱伝導性フィラー
4 異方形状熱伝導性フィラー
5 複合樹脂塊状物
6 熱伝導性樹脂成形体シート
7 境界
s 面内方向
t 厚み方向
11 熱伝導率測定装置
12 センサ
13a,13b 熱伝導性シート試料
14 センサの先端
15 印加電流用電極
16 抵抗値用電極(温度測定用電極)