(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-18
(45)【発行日】2023-08-28
(54)【発明の名称】自己乳化型ポリイソシアネート組成物およびそれを用いた塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/28 20060101AFI20230821BHJP
C08G 18/79 20060101ALI20230821BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20230821BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20230821BHJP
【FI】
C08G18/28 080
C08G18/79 020
C09D175/04
C09D5/02
(21)【出願番号】P 2018155971
(22)【出願日】2018-08-23
【審査請求日】2021-07-14
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173762
【氏名又は名称】公益財団法人相模中央化学研究所
(72)【発明者】
【氏名】喜多 求
(72)【発明者】
【氏名】陳孫 詩蒙
(72)【発明者】
【氏名】井上 宗宣
(72)【発明者】
【氏名】長岡 正宏
(72)【発明者】
【氏名】足立 浩明
(72)【発明者】
【氏名】前田 秋生
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/042111(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0280836(US,A1)
【文献】特開2013-193986(JP,A)
【文献】特開2005-272592(JP,A)
【文献】特開2008-038112(JP,A)
【文献】特開昭63-139907(JP,A)
【文献】特開平09-071720(JP,A)
【文献】特開2019-147907(JP,A)
【文献】特開2018-119107(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C09D 5/00- 7/80
C09D 175/00-175/16
C09D 201/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされ、
アミン化合物(c)が、第三級モノアミン
であり、
第三級モノアミンに含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0であり、
該組成物におけるスルホ基の含有量が0.10~0.35mmol/gであることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化1】
(式中、R
1は直鎖状のアルキル基を表す。R
1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R
1に含まれる炭素数の合計は3である。)
【請求項2】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされ、
アミン化合物(c)が、第三級モノアミン
であり、
第三級モノアミンに含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0であり、
該組成物におけるスルホ基の含有量が0.10~0.35mmol/gであることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化2】
(式中、R
1は直鎖状のアルキル基を表す。R
1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R
1に含まれる炭素数の合計は4である。)
【請求項3】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされ、
アミン化合物(c)が、第三級モノアミン
であり、
第三級モノアミンに含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0であり、
該組成物におけるスルホ基の含有量が0.10~0.35mmol/gであることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化3】
(式中、R
1は直鎖状のアルキル基を表す。R
1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R
1に含まれる炭素数の合計は5である。)
【請求項4】
アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、
アニオン性化合物(a)が、下記式1で表わされ、
アミン化合物(c)が、第三級モノアミン
であり、
第三級モノアミンに含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0であり、
該組成物におけるスルホ基の含有量が0.10~0.35mmol/gであることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【化4】
(式中、R
1は直鎖状のアルキル基を表す。R
1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R
1に含まれる炭素数の合計は6である。)
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己乳化型ポリイソシアネート組成物、それから得られる塗料組成物及びその塗膜に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、接着剤や塗料等として使用される硬化性組成物としてポリイソシアネートが知られているが、イソシアヌレート構造を有する疎水性ポリイソシアネートをノニオン性親水基含有一官能アルコール化合物により変性させ、水に乳化、分散して使用されている。(例えば特許文献1参照)。このような組成物の場合、ポリイソシアネートを水性媒体に均一に組み込むために高速撹拌等による強い剪断力を必要とするといった問題点があった。また、高速撹拌等による強い剪断力をかけない場合、水性媒体にポリイソシアネートを分散する際に、ポリイソシアネートが水に分散する割合(以下、「水分散度」という)が低いといった問題点もある。そこで、ノニオン性親水基含有一官能アルコールに代え、アニオン性親水基含有アミンを用いてポリイソシアネートを変性させることで、水分散が容易な自己乳化型ポリイソシアネートが開示されている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、得られた自己乳化型ポリイソシアネートが高粘度で、高速撹拌等による強い剪断力をかけない場合、ポリイソシアネートの水分散度が十分でなかった。また、得られた塗料も分散安定性が不十分で水分散した自己乳化型ポリイソシアネート成分が沈降するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-291613号公報
【文献】特表2003-533566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、水性媒体に分散させる際、高速撹拌等による強い剪断力を必要とせず、塗料の水分散度、水分散安定性に優れる自己乳化型ポリイソシアネート組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、特定のアニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)、及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物により、前記課題を解決することを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち本発明は以下の[1]~[5]に示す実施形態を含むものである。
【0007】
[1]アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる自己乳化型ポリイソシアネート組成物であって、アニオン性化合物(a)が、下記式1で表され、該組成物におけるスルホ基の含有量が0.10~0.35mmol/gであることを特徴とする、自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0008】
【0009】
(式中、R1は直鎖状のアルキル基を表す。R1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R1に含まれる炭素数の合計は3以上6以下である。)
【0010】
[2]有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が10~35質量%であることを特徴とする上記[1]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0011】
[3]有機ポリイソシアネート(b)が、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネートを含有することを特徴とする上記[1]又は[2]に記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物。
【0012】
[4]上記[1]から[3]のいずれかに記載の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる塗料組成物。
【0013】
[5]上記[4]に記載の塗料組成物から得られる塗膜。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水分散度、水分散安定性に優れた自己乳化型ポリイソシアネート組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0016】
本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物は、アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)及びアミン化合物(c)から得られる。
【0017】
<アニオン性化合物(a)>
本発明において、アニオン性化合物(a)とは、下記式1で表され、有機ポリイソシアネート(b)に親水性を付与することができる自己乳化型ポリイソシアネート組成物製造用親水化剤である。
【0018】
【0019】
(式中、R1は直鎖状のアルキル基を表す。R1の基中の1つ以上の炭素原子は、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよく、R1に含まれる炭素数の合計は3以上6以下である。)
R1で表される炭素数の合計が3以上6以下である直鎖状のアルキル基としては、例えばプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基を例示することができる。
【0020】
R1で表される直鎖状のアルキル基中の1つ以上の炭素原子が、酸素原子が隣接しないように酸素原子で置換されていてもよい、炭素数の合計が3以上6以下である基としては、例えば2-メトキシエチル基、2-エトキシエチル基、2-プロポキシエチル基、3-メトキシプロピル基、3-エトキシプロピル基、3-プロポキシプロピル基、4-メトキシブチル基、4-エトキシブチル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2-エトキシエトキシ)エチル基等を例示することができる。
【0021】
アニオン性化合物(a)としては、例えば3-(プロピルアミノ)プロパンスルホン酸、3-(ブチルアミノ)プロパンスルホン酸、3-[(3-メトキシプロピル)アミノ]プロパンスルホン酸、3-[(3-エトキシプロピル)アミノ]プロパンスルホン酸、3-(へキシルアミノ)プロパンスルホン酸等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。自己乳化型ポリイソシアネート組成物におけるスルホ基の含有量は0.10~0.35mmol/gである。この範囲とすることで、水分散度の向上および水分散安定性に優れる塗料が得られる。
【0022】
式1で表される本発明で用いるアニオン性化合物(a)は、分子内のスルホ基の活性水素が分子内のアミンで中和されて、式1aで表される内部塩を形成しうるが、本発明のアニオン性化合物(a)は、式1aで表される内部塩を含むものである。本明細書においては、本発明のアニオン性化合物(a)を式1として表記する。
【0023】
【0024】
(式中、R1は前記と同じ意味を表す。)
アニオン性化合物(a)は、文献記載の方法(例えば米国特許出願公開20070010573号公報)を参考に調製することができる。
【0025】
<有機ポリイソシアネート(b)>
本発明に用いられる有機ポリイソシアネート(b)としては、例えば芳香族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、及び脂環族ポリイソシアネートから選択される有機ポリイソシアネートを挙げることができる。また、これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、ウレトジオン変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、ビウレット変性ポリイソシアネート、ウレトイミン変性ポリイソシアネート、アシルウレア変性ポリイソシアネート等を単独、又は二種以上で適宜併用することができる。また、耐候性を考慮した場合、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、及びこれらの変性ポリイソシアネートが好ましく、被覆膜の耐久性や基材に対する密着性の観点から脂肪族ポリイソシアネート、又は脂環族ポリイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。光沢性を考慮すると、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート、及びアロファネート変性ポリイソシアネートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
【0026】
<芳香族ポリイソシアネート>
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート/2,6-トリレンジイソシアネート混合物、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート/4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート混合物、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、2-ニトロジフェニル-4,4’-ジイソシアネート、2,2’-ジフェニルプロパン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、ナフチレン-1,4-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシジフェニル-4,4’-ジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
<芳香脂肪族ポリイソシアネート>
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、又はそれらの混合物;1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、又はそれらの混合物;ω,ω’-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン等が挙げられる。
【0028】
<脂肪族ポリイソシアネート>
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、2,2’-ジメチルペンタンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、1,3-ブタジエン-1,4-ジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート、1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート、1,8-ジイソシアネート-4-イソシアネートメチルオクタン、2,5,7-トリメチル-1,8-ジイソシアネート-5-イソシアネートメチルオクタン、ビス(イソシアネートエチル)カーボネート、ビス(イソシアネートエチル)エーテル、1,4-ブチレングリコールジプロピルエーテル-α,α’-ジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、2-イソシアネートエチル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート、2-イソシアネートプロピル-2,6-ジイソシアネートヘキサノエート等が挙げられる。
【0029】
<脂環族ポリイソシアネート>
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えばイソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアネート、2,2’-ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(4-イソシアネート-n-ブチリデン)ペンタエリスリトール、水素化された水添ダイマー酸ジイソシアネート、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-イソシアネートメチル-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-3-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-5-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2-イソシアネートメチル-2-(3-イソシアネートプロピル)-6-(2-イソシアネートエチル)-ビシクロ-〔2.2.1〕-ヘプタン、2,5-ビス(イソシアネートメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕-ヘプタン、水素化された水添ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素化された水添トリレンジイソシアネート、水素化された水添キシレンジイソシアネート、水素化された水添テトラメチルキシレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0030】
また、有機ポリイソシアネート(b)中のイソシアネート基の質量分率が10~35%であることが好ましく、15~24%であることが更に好ましい。
【0031】
<アミン化合物(c)>
本発明のアミン化合物(c)としては、第三級アミンを用いることが好ましい。
【0032】
第三級アミンとしては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、N-メチルピペリジン、N-エチルピペリジン、ジメチルエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の第三級モノアミン、1,3-ビス(ジメチルアミノ)プロパン、1,4-ビス(ジメチルアミノ)ブタンまたはN,N’-ジメチルピペラジン等の第三級ジアミンを挙げることができる。特にイソシアネートに対する反応性が低い点で、第三級モノアミンが好ましく、トリブチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリンがさらに好ましい。
【0033】
また、本発明におけるアミン化合物(c)は、アミン化合物(c)に含まれるアミノ基とアニオン性化合物(a)とのモル当量比が0.2~2.0となるように用いることが好ましく、0.5~1.5であることが更に好ましい。
【0034】
<自己乳化型ポリイソシアネート組成物の製造>
自己乳化型ポリイソシアネート組成物を製造するにあたり、前記アニオン性化合物(a)、有機ポリイソシアネート(b)、アミン化合物(c)の配合順序に特に制限はなく、通常のウレタン化反応の条件を適用することができる。
【0035】
<塗料組成物>
次に、本発明における塗料組成物について説明する。
【0036】
本発明の塗料組成物は、本発明の自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤とから得られる。
【0037】
本発明の塗料組成物の製造における主剤としては、常温液状で水に不溶、或いは親和性を有しない高分子化合物を好ましく使用できる。なお、水に対して溶解性或いはある程度の親和性を有する水溶性樹脂、又は水系エマルジョンを使用することも可能である。これらの高分子化合物は分子内にイソシアネート基と反応する水酸基、カルボキシル基又はアミノ基(以下、「求核基」という。)を含有するものが好ましく、特に一分子あたり2個以上の求核基を含有するものが好ましい。また、これらの高分子化合物が、イソシアネート基と反応しうる求核基を含有していない場合、又はわずかしか含有していない場合でも、最終的には自己乳化型ポリイソシアネート組成物が水と反応してポリウレア化合物となり、硬くて強靭な塗膜を得ることができる。また、イソシアネート基が被着材表面に存在する求核基と反応するため、被着剤との密着性も向上する。なお、常温にてイソシアネート基と反応しうる求核基を含有する高分子化合物を使用した場合は、高分子化合物中の求核基と自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基が反応し架橋構造を形成するため、耐候性、耐溶剤性等が更に向上する。なお、本発明における常温とは5℃~40℃である。
【0038】
このような主剤としては、例えば飽和或いは不飽和ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、飽和或いは不飽和の脂肪酸変性アルキッドポリオール、アミノアルキッドポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリエーテルポリオール、エポキシポリオール、含フッ素ポリオール、更には飽和或いは不飽和ポリエステル樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、脂肪酸変性アルキッド樹脂、アミノアルキッド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースアセテートブチラート樹脂、含フッ素樹脂等が挙げられる。
【0039】
また、水溶性樹脂、水系エマルジョンも主剤として好適に使用することができ、水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、水溶性エチレン-酢酸ビニル共重合体、水溶性アクリル樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性セルロース誘導体、水溶性ポリエステル、水溶性リグニン誘導体、水溶性フッ素樹脂、水溶性シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0040】
水系エマルジョンとしては、いわゆるラテックス、エマルジョンと表現されるもの全てを包含し、例えば、スチレンブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリルブタジエン共重合体ラテックス、メチルメタアクリレートブタジエン共重合体ラテックス、クロロプレンラテックス、ポリブタジエンラテックス等のゴム系ラテックス、ポリアクリル酸エステルラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテックス、ポリブタジエンラテックス、或いはこれらのラテックスをカルボキシル変性したもの、また、ポリ塩化ビニルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、シリコーンアクリルエマルジョン、酢酸ビニルアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン等が挙げられる。
【0041】
これらのうち、光沢、耐候性等の塗膜性能や接着強度の点で、アクリルポリオール、アクリル樹脂、水溶性アクリル樹脂、アクリルエマルジョン、ウレタンアクリルエマルジョン、ポリウレタンエマルジョンを特に好ましく用いることができる。
【0042】
これら主剤としての高分子化合物の数平均分子量は、好ましくは1000~100万であり、さらに好ましくは1万~10万である。
【0043】
<配合比>
本発明の塗料組成物の製造における自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤との配合比は、本発明の主剤として分子中に活性水素基を含有するものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基と、主剤中の活性水素基とのモル比は、9:1~1:9が好ましく、6:4~4:6が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0044】
また、主剤として分子中に活性水素基を含まない、もしくは、わずかしか含まないものを使用する場合、自己乳化型ポリイソシアネート組成物と主剤の質量比は、1:9~5:5が好ましく、1:9~3:7が更に好ましい。この範囲内とすることで、より優れた性能を持つ塗膜を得ることができる。
【0045】
<配合方法>
主剤と自己乳化型ポリイソシアネート組成物の配合方法は、主剤にそのまま添加する、一旦自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水分散させてから添加する、又はウレタン分野で常用の溶剤に溶解させてから添加する等の方法が挙げられる。本発明においては、自己乳化型ポリイソシアネート組成物を水に分散させてから、主剤と配合する方法が好ましい。
【0046】
<その他添加剤>
本発明における自己乳化型ポリイソシアネート組成物、または塗料組成物には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤や、紫外線吸収剤、顔料、染料、難燃剤、加水分解防止剤、潤滑剤、可塑剤、充填剤、貯蔵安定剤、造膜助剤といった添加剤を適宜配合することができる。
【0047】
<塗装方法>
本発明の塗料組成物は、従来行なわれている通常の塗装方法によって塗装することで塗膜を得ることができる。塗装にはエアレススプレー機、エアスプレー機、静電塗装機、浸漬、ロールコーター、ナイフコーター、ハケ等を用いることができる。
【実施例】
【0048】
以下、合成例により本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定して解釈されるものではない。
【0049】
[アニオン性化合物の製造]
<合成例1>
還流管を取り付けた200mLフラスコに1,3-プロパンスルトン(6.02g,49.1mmol)及びプロピルアミン(4.00mL,48.5mmol)を量り取り、テトラヒドロフラン(44mL)に溶解させた。反応溶液をアルゴン雰囲気下、11時間還流した後、揮発性成分を除去した。得られた固体をエタノールから再結晶し、析出した白色沈殿をろ取し、テトラヒドロフランで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることで、3-(プロピルアミノ)プロパンスルホン酸(A-1)を得た(4.55g,25.1mmol,51%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.48(br,2H),3.05(t,J=6.7Hz,2H),2.84(m,2H),2.62(m,2H),1.93(tt,J=6.5,6.7Hz,2H),1.57(tq,J=7.7,7.5Hz,2H),0.91(t,J=7.5Hz,3H)。
【0050】
<合成例2>
還流管を取り付けた200mLフラスコに1,3-プロパンスルトン(10.1g,82.7mmol)及び(3-メトキシプロピル)アミン(12.6mL,123mmol)を量り取り、テトラヒドロフラン(60mL)に溶解させた。反応溶液をアルゴン雰囲気下、2時間還流した後、揮発性成分を除去した。得られた固体をメタノールに溶解し、溶液を強酸性イオン交換樹脂(アンバーリスト15JWET,オルガノ社製)に流通させた後、溶液が中性になるまで弱塩基性イオン交換樹脂(アンバーリストA21,オルガノ社製)を加えた。弱塩基性イオン交換樹脂をろ別し、揮発性成分を除去することで3-[(3-メトキシプロピル)アミノ]プロパンスルホン酸(A-2)を得た(8.82g,41.7mmol,51%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.48(br,2H),3.38(t,J=6.0Hz,2H),3.24(s,3H),3.04(m,2H),2.93(m,2H),2.61(m,2H),1.92(m,2H),1.79(m,2H)。
【0051】
<合成例3>
還流管を取り付けた200mLフラスコに1,3-プロパンスルトン(6.72g,55.0mmol)及びヘキシルアミン(8.00mL,60.5mmol)を量り取り、テトラヒドロフラン(60mL)に溶解させた。反応溶液をアルゴン雰囲気下、2時間還流した。25℃まで冷ました後、析出した白色沈殿をろ取し、ジエチルエーテルで洗浄後、減圧下60℃で乾燥させることで、3-(へキシルアミノ)プロパンスルホン酸(A-4)を得た(6.73g,30.1mmol,55%)。1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm):8.47(br,2H),3.03(t,J=6.8Hz,2H),2.86(m,2H),2.62(m,2H),1.92(m,2H),1.54(m,2H),1.32-1.24(m,6H),0.87(t,J=7.0Hz,3H)。
【0052】
[自己乳化型ポリイソシアネートの製造]
<実施例1>
攪拌機、温度計、冷却器及び窒素ガス導入管の付いた容量:0.1Lの反応器に、有機ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体含有ポリイソシアネート、商品名:コロネートHXLV、イソシアネート含量23.2質量%、東ソー社製)を28.84g、合成例1で得られたA-1を0.68g、ジメチルシクロヘキシルアミンを0.48g仕込み、80℃で5時間撹拌し、自己乳化型ポリイソシアネートP-1を得た。P-1のスルホ基の含有量は0.125mmol/g、イソシアネート含量は21.8質量%であった。
【0053】
実施例1と同様の方法で自己乳化型ポリイソシアネートP-2~12を合成した。結果を表1、2に示す。
【0054】
【0055】
【0056】
・コロネートHXR(商品名):ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体含有ポリイソシアネート、イソシアネート含量21.8質量%、東ソー社製
・CAPS:シクロヘキシルアミノプロパンスルホン酸、東京化成工業社製
・ジメチルシクロヘキシルアミン:試薬特級、東京化成工業社製。
【0057】
<粘度評価>
自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~12)の粘度はB型粘度測定装置(TOKI SANGYO Co. LTD Viscometer TV-22)を用いて測定した。結果を表3~5に示す。
【0058】
<粒径評価>
各自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~12)と精製水とを、30mlのサンプル瓶に1:9の質量比で(合計量15mL程度となるように)量りとり、密閉後20秒間で60回往復上下に振とうした。得られた水分散液分散体の粒径を粒径測定装置(Otsuka Electronics ELSZ-200)で評価した。結果を表3~5に示す。粒径が250nm以下であれば、分散安定性もよく、塗膜の光沢も良好といえる。
【0059】
<水分散度評価>
各自己乳化型ポリイソシアネート組成物(P-1~12)と精製水とを、風袋を測定した30mLのサンプル瓶に1:9の質量比で(合計量15mL程度となるように)精秤し、密閉した後、20秒間で60往復、手で上下に振とうした。その後静置し、水に分散した自己乳化型ポリイソシアネートを水と共に除去し、水に分散せず残った自己乳化型ポリイソシアネート組成物の質量を測定した。これらの測定値を用い、下記数式により水分散度を求め評価した。
【0060】
【0061】
式中(A)は、水と振とうする前の自己乳化型ポリイソシアネート組成物の質量(g)を表わし、(B)は、水と振とうする前の自己乳化型ポリイソシアネート組成物の質量(g)から水に分散せず残った自己乳化型ポリイソシアネート組成物の質量を減じた値(g)を表わす。
【0062】
結果を表3~5に示す。水分散度が80%以上であれば良好と言える。
【0063】
【0064】
【0065】