(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、ならびに、これを用いた膜シール材及び膜モジュール
(51)【国際特許分類】
B01D 63/00 20060101AFI20230822BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20230822BHJP
C09K 3/10 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/78 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/76 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/36 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/50 20060101ALI20230822BHJP
C08G 18/66 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B01D63/00 500
B01D63/02
C09K3/10 D
C08G18/10
C08G18/78 037
C08G18/76 057
C08G18/32 071
C08G18/36
C08G18/50 021
C08G18/66 067
(21)【出願番号】P 2019046709
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-02-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉田 孝治
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-026837(JP,A)
【文献】国際公開第2017/006650(WO,A1)
【文献】特開2011-121029(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146266(WO,A1)
【文献】特開2017-179332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、
ポリオール(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、
ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と、
活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有し、
前記ポリオール(B)は、
水酸基含有アミン系化合物(b1)と、
ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール(b2)と、を含み、
前記水酸基含有アミン系化合物(b1)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミンを含
み、
前記水酸基含有アミン系化合物(b1)由来のエチレンオキシドの含有量が、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、0.29mmol/g以上0.5mmol/g以下である、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項2】
アロファネート基の含有量が、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、0.1mmol/g以上0.7mmol/g以下である、請求項
1に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項3】
ジフェニルメタンジイソシアネートのモノマーの含有量が、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、25質量%で以下ある、請求項
1または2に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項4】
前記ポリオール(b2)の含有量が、前記ウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、1質量%以上45質量%以下である、請求項
1~3のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材。
【請求項6】
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、
請求項5に記載の膜シール材である、膜モジュール。
【請求項7】
前記膜が、複数本の中空糸膜であり、
前記膜シール材は、
前記本体部と、前記複数本の中空糸膜の少なくとも一部と、の間隙、および、
前記複数本の中空糸膜相互の間隙の少なくとも一部を封止する
請求項6に記載の膜モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物、ならびに、これを用いた膜シール材及び膜モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、中空糸膜の充填率が高い中空糸膜モジュールが開発されている。このため、膜と膜モジュールとの間隙を封止する膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物には、微小な間隙にも容易に浸透し得る優れた浸透性を発揮するべく、低粘度化が求められている。
また、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物にはジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)が広く用いられているが、中空糸膜の細孔を保持するための保持剤としてグリセリンが用いられている場合、MDIとグリセリンとの低分子反応物が生成する。この低分子反応物は、使用時において膜モジュール中に溶出するため、その生成が抑制されることが強く望まれている。
【0003】
特許文献1は、MDI及びヒマシ油の反応物から得られたイソシアネート基末端プレポリマー、ならびに、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートを含有するポリイソシアネート成分(主剤)と、ポリオール成分(硬化剤)と、を含む膜モジュールのシール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を開示している。さらに特許文献1は、かかるシール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物から得られるポリウレタン樹脂の溶出量が低減されることを開示している。
また特許文献2は、ポリオール成分中にひまし油系ポリオール、ポリオキシエチレンポリプロピレン脂肪族ポリアミン、ポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミンを特定の含有比で含有するポリウレタン樹脂形成性組成物を開示している。さらに特許文献2は、かかるポリウレタン樹脂形成性組成物は、作業性に好適な反応性、溶出物の低減、γ線に対する変色の抑制等を達成できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-213871号公報
【文献】国際公開第2017/6650号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1にかかる組成物は、主剤の粘度が高く、低粘度化が求められている。したがって、特許文献1にかかる組成物は、主剤と硬化剤との混合初期粘度が高いという問題を有しており、成形時の充填不良が生じることがある。
また特許文献2にかかる組成物は、脂肪族ポリアミンのオキシエチレン量が多くなると成型物が白濁するという問題がある。
そこで、本発明の一実施形態は、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出量が抑制され、かつ成型物の白濁が抑制された膜シール材の形成に資するとともに、良好な速硬化性を有し、低粘度で注型性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の提供に向けられている。
本発明の他の実施の形態は、上記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材、膜モジュールの提供に向けられている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の実施形態を含む。
(1) アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、
ポリオール(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、
ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と、
活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有し、
前記ポリオール(B)は、
水酸基含有アミン系化合物(b1)と、
ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール(b2)と、を含み、
前記水酸基含有アミン系化合物(b1)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミンを含む、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物。
(2)上記(1)に記載の膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材。
(3) 本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、上記(2)に記載の膜シール材である、膜モジュール。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出量が抑制され、かつ成型物の白濁が抑制された膜シール材の形成に資するとともに、良好な速硬化性を有し、低粘度で注型性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。また、本発明の他の実施形態によれば、該膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む膜シール材および膜モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を詳細に説明する。
【0010】
[膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物]
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、
アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、
ポリオール(B)と、を含む膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物であって、
前記アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、
ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と、
活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有し、
前記ポリオール(B)は、
水酸基含有アミン系化合物(b1)と、
ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール(b2)と、を含み、
前記水酸基含有アミン系化合物(b1)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミンを含む。
【0011】
〈アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)〉
アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)は、ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と、活性水素含有化合物(a2)と、の反応生成物を含有する。
【0012】
〈〈ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)〉〉
ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)としては、一般に入手できるいずれのジフェニルメタンジイソシアネート(以下、MDIともいう。)のモノマーも使用できる。MDIモノマーのアイソマーは通常2,2’-MDIが0質量%以上5質量%以下、2,4’-MDIが0質量%以上95質量%以下、4,4’-MDIが5質量%以上100質量%以下である。
MDI(a1)としては、より低粘度のアロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)を得るために、前述のMDIを用いることが好ましい。ただし、アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)のある程度の高粘度化も許容されるならば、MDI(a1)としてポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート(ポリメリックMDI)も使用できる。その場合のポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネートの含有量は、使用するイソシアネート成分中0質量%以上50質量%以下が好ましい。50質量%以下であると粘度が充分に低くなり、また、不溶解物の生成もより高度に抑制できる。
【0013】
〈〈活性水素含有化合物(a2)〉〉
活性水素含有化合物(a2)としては、活性水素を含有する化合物であれば特に制限はない。活性水素含有化合物(a2)としては、例えば、脂肪族モノアルコール、芳香族モノアルコール、脂環族モノアルコール、芳香脂肪族モノアルコール、ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のモノアルコール、ヒマシ油、ヒマシ油系ポリオール、低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール等のポリオール等が挙げられる。
【0014】
脂肪族モノアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1-及び2-プロパノール、1-及び2-ブタノール、1-ペンタノール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、4-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチルヘキサノール、3,5-ジメチル-1-ヘキサノール、2,2,4-トリメチル-1-ペンタノール、1-ノナノール、2,6-ジメチル-4-ヘプタノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、1-ドデカノール、1-トリデカノール、1-テトラデカノール、1-ペンタデカノール、1-ヘキサデカノール、1-ヘプタデカノール、1-オクタデカノール、1-ノナデカノール、1-エイコサノール、1-ヘキサコサノール、1-ヘプタトリコンタノール、1-オレイルアルコール、2-オクチルドデカノール等の脂肪族モノアルコール、及びこれらの混合物等が挙げられる。
脂肪族モノアルコールの数平均分子量は32以上1500以下が好ましく、100以上1000以下であることがより好ましい。分子量がこの範囲であると、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度にさらに優れる。
【0015】
芳香族モノアルコールとしては、例えば、フェノール、クレゾール等を挙げることができる。
【0016】
脂環族モノアルコールとしては、例えば、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等を挙げることができる。
【0017】
芳香脂肪族モノアルコールとしては、例えば、ベンジルアルコール等を挙げることができる。
【0018】
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば前記した脂肪族モノアルコールとポリオキシプロピレングリコールとの反応物が挙げられ、ポリオキシプロピレンメチルエーテル、ポリオキシプロピレンエチルエーテル、ポリオキシプロピレンブチルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-エチルヘキシルエーテル、ポリオキシプロピレンオレイルエーテル、ポリオキシプロピレン-2-オクチルドデカエーテル及びこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオキシプロピレングリコールモノアルキルエーテルの数平均分子量は90以上1500以下が好ましい。なお、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度にさらに優れるとの観点から、その数平均分子量は150以上1000以下であることがより好ましい。
【0019】
ヒマシ油系ポリオールとしては、ヒマシ油又はヒマシ油脂肪酸と、低分子ポリオール及びポリエーテルポリオールからなる群より選択される少なくとも1種のポリオールとの反応により得られる線状又は分岐状のヒマシ油系ポリオールが挙げられる。具体例としては、例えばヒマシ油脂肪酸のジグリセライド、及びモノグリセライド;ヒマシ油脂肪酸とトリメチロールアルカンとのモノ、ジ、及びトリエステル;ヒマシ油脂肪酸とポリプロピレングリコールとのモノ、ジ、及びトリエステル;等が挙げられる。
なお、ヒマシ油の主成分は、リシノール酸のトリグリセライドであり、ヒマシ油には水素添加ヒマシ油が含まれる。また、ヒマシ油脂肪酸の主成分はリシノール酸であり、ヒマシ油脂肪酸には、水素添加ヒマシ油脂肪酸が含まれる。
【0020】
また、前記トリメチロールアルカンとしては、例えばトリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、トリメチロールペンタン、トリメチロールヘキサン、トリメチロールヘプタン、トリメチロールオクタン、トリメチロールノナン及びトリメチロールデカン等を挙げることができる。
【0021】
ヒマシ油系ポリオールの数平均分子量は400以上3000以下であることが好ましく、500以上2500以下が更に好ましい。数平均分子量が400以上3000以下のヒマシ油系ポリオールを用いることにより、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性にさらに優れた硬化樹脂を形成することができる。
【0022】
ヒマシ油及びヒマシ油系ポリオールの平均水酸基価は20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下であることが好ましく、40mgKOH/g以上250mgKOH/g以下が更に好ましい。平均水酸基価が20mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のヒマシ油系ポリオールを用いることにより、膜シール材に要求される物性、特に機械的特性にさらに優れた硬化樹脂を形成することができる。さらに、膜シール材の生産性、ひいては、中空糸膜モジュールの生産性の向上も図ることができる。
【0023】
低分子ポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,2-、1,3-または1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、水添ビスフェノールA等の2価のポリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、スクロース等の3~8価のポリオール等が挙げられる。低分子ポリオールの数平均分子量は、50以上200以下であることが好ましい。
【0024】
ポリエーテル系ポリオールとしては、上記低分子ポリオールのアルキレンオキサイド(炭素数2~8個のアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等)付加物、およびアルキレンオキサイドの開環重合物等が挙げられ、具体的にはポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、またはエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの共重合物等が挙げられる。ポリエーテル系ポリオールの数平均分子量は、膜シール材製造時において成型加工性にさらに優れるとの観点から200以上7000以下が好ましく、500以上5000以下であることが更に好ましい。
【0025】
ポリエステル系ポリオールとしては、例えばポリカルボン酸とポリオールとの縮合重合により得られるポリエステル系ポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールに用いるポリカルボン酸としては、例えばアジピン酸、アゼライン酸、ドデカン二酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、2量化リノール酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の脂肪族飽和、不飽和ポリカルボン酸、及び芳香族ポリカルボン酸等を挙げることができる。
また、ポリエステル系ポリオールに用いるポリオールとしては、例えば上記した低分子ポリオール、ポリエーテル系ポリオール等を挙げることができる。
【0026】
ポリエステル系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。数平均分子量が200以上5000以下のポリエステル系ポリオールを用いることにより、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0027】
ポリラクトン系ポリオールとしては、例えばグリコール類やトリオール類の重合開始剤に、ε-カプロラクトン、α-メチル-ε-カプロラクトン、ε-メチル-ε-カプロラクトン、及びβ-メチル-δ-バレロラクトン等を、有機金属化合物、金属キレート化合物、脂肪酸金属アシル化合物等の触媒の存在下で、付加重合させて得られるポリオールが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールの数平均分子量は、200以上5000以下が好ましく、500以上3000以下が更に好ましい。数平均分子量が200以上5000以下のポリラクトン系ポリオールを用いることにより、膜シール材形成時の成形加工性に特に優れる。
【0028】
ポリオレフィン系ポリオールとしては、ポリブタジエン、又はブタジエンとスチレンもしくはアクリロニトリルとの共重合体の末端に水酸基を導入したポリブタジエン系ポリオールが挙げられる。その他、末端にカルボキシル基及び水酸基を有するポリエステルにアルキレンオキサイド、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等を付加反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールも挙げられる。
【0029】
これらのうち、活性水素含有化合物(a2)としては、硬化剤との相溶性を考慮し、炭素数10以上の脂肪族アルコールやヒマシ油またはヒマシ油系ポリオールが好ましい。
【0030】
<<アロファネート基含有プレポリマー(A)の製法>>
アロファネート基含有プレポリマー(A)は、例えばジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と活性水素含有化合物(a2)とをウレタン化反応させた後、触媒(a3)を所定量添加してアロファネート化し、触媒毒(a4)により反応を停止させることにより得られるものが好ましい。
【0031】
<<触媒(a3)>>
触媒(a3)としては、例えば、アセチルアセトン亜鉛や、亜鉛、鉛、錫、銅、コバルト等とカルボン酸との金属カルボン酸塩、及びこれらの混合物や、3級アミン、3級アミノアルコール、4級アンモニウム塩およびこれらの混合物等が挙げられる。
触媒(a3)の添加量は、ジフェニルメタンジイソシアネート(a1)と活性水素含有化合物(a2)の合計質量に対して、1ppm以上500ppm以下の範囲内であることが好ましく、5ppm以上300ppm以下の範囲内であることがより好ましい。1ppm以上では反応が迅速となり、500ppm以下であるとプレポリマーの着色がさらに良好に抑制されるため好ましい。
【0032】
<<触媒毒(a4)>>
触媒毒(a4)としては、酸性物質が好ましい。触媒毒(a4)としては、例えば無水塩化水素、硫酸、燐酸、モノアルキル硫酸エステル、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、モノ又はジアルキル燐酸エステル、塩化ベンゾイル、ルイス酸が挙げられる。触媒毒(a4)の添加量は、触媒(a3)のモル数に対し当量以上加えることが好ましく、触媒(a3)のモル数の1.0倍モル当量以上1.5倍モル当量以下を加えることが好ましい。
【0033】
<<アロファネート基の含有量>>
アロファネート基の含有量は、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、0.1mmol/g以上0.7mmol/g以下が好ましい。この範囲であると、ポリウレタン樹脂の成型加工性、接着強度にさらに優れる。
【0034】
<<MDIのモノマーの含有量>>
MDIのモノマーの含有量は、MDIとグリセリンとの低分子反応物をさらに低減するため、膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、25質量%以下であることが好ましい。
【0035】
<<反応温度>>
ウレタン化反応は、40℃以上80℃以下の温度範囲で、目標のNCO含量となるまで反応することが好ましい。40℃以上であるとモノマーMDIの結晶析出をより良好に抑制でき、80℃以下であると副反応物の生成をより抑制できる。
【0036】
アロファネート化反応は、90℃以上130℃以下の温度範囲で、目標のNCO含量となるまで反応することが好ましい。90℃以上では反応のより迅速となり、130℃以下であると副反応物の生成をより抑制できる。
【0037】
<ポリオール(B)>
ポリオール(B)は、水酸基含有アミン系化合物(b1)と、ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオール(b2)と、を含む。
【0038】
<<水酸基含有アミン系化合物(b1)>>
水酸基含有アミン系化合物(b1)は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミンを含む。
【0039】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン脂肪族ポリアミン以外の水酸基含有アミン系化合物(b1)としては、例えば、エチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物である、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシエチル]エチレンジアミン等;モノ、ジおよびトリエタノールアミン、N-メチル-N,N’-ジエタノールアミン等を挙げることができる。これらの中でもエチレンジアミン等のアミノ化合物のプロピレンオキサイドもしくはエチレンオキサイド付加物が好ましく、N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンがより好ましい。N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミンを使用することにより、成形時の加工性向上、溶出物の抑制等に対してより優れた効果を奏する。
【0040】
また、水酸基含有アミン系化合物(b1)の含有量は、ポリオール(B)中において、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることが特に好ましい。ポリオール(B)中の水酸基含有アミン系化合物(b1)の含有量が1質量%以上であると、水酸基含有アミン系化合物(b1)がより良好にその機能を発揮し、より一層の効果を奏する。ポリオール(B)中の水酸基含有アミン系化合物(b1)の割合が30質量%以下であると、反応性が高くなり過ぎることがより抑制され、作業性がさらに良好となって充填性が担保され、また、得られる膜シール材の硬度が高くなり過ぎることがさらに抑制される。
【0041】
水酸基含有アミン系化合物(b1)由来のエチレンオキシドの含有量は、前記膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、0.1mmol/g以上0.5mmol/g以下であることが好ましく、0.15mmol/g以上0.45mmol/g以下であることがより好ましい。エチレンオキシドの含有量が、0.1mmol/g以上であると、低分子反応物の溶出量がさらに抑制され、0.5mmol/g以下であると、成型物の白濁がさらに抑制される。
【0042】
<<ポリオール(b2)>>
ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群から選択される少なくとも1種のポリオール(b2)としては、特に制限はないが、前記活性水素含有化合物(a2)で挙げた、ひまし油及びひまし油系変性ポリオールから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
ポリオール(B)中、水酸基含有アミン系化合物(b1)の含有量Mb1と、ひまし油(b2-1)及びひまし油系ポリオール(b2-2)からなる群から選択される少なくとも1種のポリオール(b2)の含有量Mb2と、の質量比(Mb1/Mb2)は、10/90以上30/70以下であることが好ましく、13/87以上28/72以下であることがさらに好ましい。ポリオール(B)中の水酸基含有アミン系化合物(b1)の質量比がこの範囲内であると、反応性が好適なものとなり、得られる膜シール材の硬度がさらに良好になるとともに、反応性が高くなりすぎ初期増粘をさらに抑制できるため、充填性がさらに良好になる。
【0044】
また、ポリオール(b2)の含有量Mb2は、成型物外観、低溶出性の観点から前記ウレタン樹脂形成性組成物の総量に対して、1質量%以上45質量%以下であることが好ましく、5質量%以上40質量%以下であることが特に好ましい。
【0045】
<<活性水素含有化合物(b3)>>
ポリオール(B)中に、水酸基含有アミン系化合物(b1)および、ポリオール(b2)以外の活性水素含有化合物(以下、「活性水素含有化合物(b3)」という。)を含有してもよい。活性水素含有化合物(b3)としては、前記活性水素含有化合物(a2)で挙げた各種ポリオールを用いることができる。
【0046】
ポリオール(B)中、ポリオール(b2)の含有量Mb2と、活性水素含有化合物(b3)の含有量Mb3と、の質量比(Mb2)/(Mb3)は、50/50以上100/0以下であることが好ましく、100/0が特に好ましい。すなわち、ポリオール(B)は、水酸基含有アミン系化合物(b1)、およびポリオール(b2)のみからなることが特に好ましい。
【0047】
また、水酸基含有アミン系化合物(b1)を考慮した場合の質量比(Mb1)/{(Mb2)+(Mb3)}が、10/90以上30/70以下であることが好ましく、硬化性、充填性の観点から、13/87以上28/72以下であることが更に好ましい。
【0048】
ポリオール(B)の水酸基価は、50mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下が好ましく、ポリオール(B)の取り扱いが容易であるとの観点から、75mgKOH/g以上750mgKOH/g以下がより好ましい。ポリウレタン樹脂の優れた成型加工性、接着強度の観点から、ポリオール(B)の水酸基価は、100mgKOH/g以上500mgKOH/g以下であることが最も好ましい。
【0049】
ポリオール(B)の25℃における粘度は、100mPa・s以上6000mPa・s以下が好ましく、ポリオール(B)の取り扱いが容易であるとの観点から、200mPa・s以上4000mPa・s以下がより好ましい。ポリウレタン樹脂の優れた成型加工性の観点から、ポリオール(B)の25℃における粘度は、400mPa・s以上2000mPa・s以下であることが最も好ましい。
【0050】
<粘度>
膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)と、ポリオール(B)と、の混合を開始した時点から60秒経過後の粘度を混合粘度としたとき、400mPa・s以上2100mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以上1800mPa・s以下であることがより好ましい。
【0051】
本発明の一実施形態にかかる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物は、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出量が抑制され、かつ成型物の白濁が抑制された膜シール材の形成に資するとともに、良好な速硬化性を有し、かつ低粘度で注型性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物を提供することができる。
【0052】
<膜シール材>
本発明の一実施形態にかかる膜シール材は、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物の硬化物を含む。
膜シール材は、0℃以上100℃以下、好ましくは20℃以上80℃以下、更に好ましくは30℃以上60℃以下の温度条件下において、前記アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)を構成するイソシアネート成分と、前記ポリオール(B)を構成するポリオール成分とを反応・硬化させることにより好適に形成することができる。膜シール材は高温域にて成形することでゲル化時間の短縮が可能だが、成形収縮が起こり易いため、触媒を添加することで反応温度を下げ、成形収縮を抑えることもできる。
【0053】
<膜モジュール>
本発明の一実施形態にかかる膜モジュールは、
本体部と、
膜と、
前記本体部と、前記膜と、の間隙を封止する膜シール材と、を備え、
前記膜シール材が、上述した膜シール材である。
【0054】
次いで、本発明の一実施形態にかかる膜モジュールについて図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態にかかる膜モジュールの構成の一例を示す概念図である。
図1に示す膜モジュール(中空糸膜モジュール)100は、ハウジング(本体部)11を備え、その内部に複数の中空糸膜(膜)13が充填されている。例えば、透析器として用いられる中空糸膜モジュールの場合、数千~数万本の中空糸膜が充填されている。
【0055】
ハウジング11は円筒状の形状を有する。ハウジング11内部の両端(
図1中の左右両端)には膜シール材19がそれぞれ設けられている。膜シール材は、中空糸膜13同士の間隙、および、中空糸膜13とハウジング11の内壁との間の間隙を埋めて封止するとともに、複数本の中空糸膜13を結束する。
【0056】
また、ハウジング11の側面には第1の流体入口15および第1の流体出口17が設けられており、これらを介してハウジング11内には第1の流体(気体または液体)が流出入する。第1の流体入口15から流入した第1の流体は、ハウジング11内に充填された複数の中空糸膜13と接触しながらその間隙(中空糸膜外部)を通過し、第1の流体出口17から排出される。なお、中空糸膜13内部には膜シール材19が存在していないため、中空糸膜13内には不図示のキャップ部材に設けられた第2の流入口(一端側)および第2の流出口(他端側)を介して第2の流体(気体または液体)が流出入する。そして、中空糸膜13を介して第1の流体と第2の流体とが接触することで、一方の流体中から他方の流体中への(あるいはさらに他方の流体中から一方への流体中への)物質移動が生じる。例えば、中空糸膜型の透析器の場合、透析液と血液とが接触することで、血液中の老廃物や過剰な水分が透析液に移動する。
【0057】
なお、
図1に示す膜モジュール100は、複数の中空糸膜13を備え、それらの両端において膜シール材19が間隙を封止する構成であるが、本実施形態にかかる膜モジュールはかかる構成に何ら限定されるものではない。例えば、平膜、スパイラル膜等の種々の形状を有する、複数または単数の膜であってもよい。また、膜シール材は膜の両端に設けられた構成に限られるものではなく、膜の一部(中空糸状であれば一端)のみに設けられていてもよく、膜の端部すべて、例えば平膜の外縁部すべてに設けられていてもよい。さらに、膜シール材は、膜の端部以外の一部に設けられて封止する構成であってもよい。また、
図1に示す膜モジュール100のハウジング11は円筒状の形状を有するが、円筒状以外の任意の形状であってもよい。
【0058】
膜モジュール100は、複数の中空糸膜13の集束体の端部における中空糸膜13相互の隙間を、上述した膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物により封止し、当該組成物を硬化させて上述した膜シール材を形成する(当該膜シール材によって中空糸膜相互の間隙が封止される)。
【0059】
本発明の一実施形態にかかる膜モジュールは、抽出物の発生が良好に抑制されるため、医療用、水処理用モジュールとして好適に使用することができる。膜モジュールとして具体的には、血漿分離装置、人工肺、人工腎臓、人工肝臓、家庭用・工業用水処理装置が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの例によって何ら限定して解釈されるものではない。なお、以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」を意味する。なお、以下に示す実施例4は、本発明の範囲に属しない参考例としての試験例である。
【0061】
以下の成分を実施例及び比較例で使用した。
[アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)]
・a1-1;4,4’-MDI(東ソー社製 ミリオネートMT、
イソシアネート基含有量=33.6%)
・a1-2;2,4’-MDIおよび4,4’-MDIの混合物(東ソー社製
ミリオネートNM、イソシアネート基含有量=33.6%)
・a1-3;4,4’-MDIのカルボジイミド変性体(東ソー社製
ミリオネートMTL-C、イソシアネート基含有量=28.6%)
・a2-1;イソトリデカノール(KHネオケム社製、OHV=275mgKOH/g)
・a2-2;オレイルアルコール(新日本理化社製、リカビノール90B、OHV=
210mgKOH/g)
[ポリオール(B)]
・b1-1;エチレンジアミンのエチレンオキシド/プロピレンオキシド=4/6
質量比付加物(ADEKA社製 BM-34、水酸基価=820mgKOH/g、
粘度(25℃)=7500mPa・s、エチレンオキシド量=6.84mmol/g)
・b1-2;N,N,N’,N’-テトラキス[2-ヒドロキシプロピル]エチレンジアミン
(ADEKA社製 EDP-300、水酸基価=760mgKOH/g、
粘度(25℃)=50000mPa・s、エチレンオキシド量=0mmol/g)
・b2-1;ヒマシ油(伊藤製油社製URIC H-30、OHV=160mgKOH/g、
粘度(25℃)=690mPa・s)
[触媒]
触媒c;アセチルアセトン亜鉛(東京化成工業社製)
[触媒毒]
触媒毒d;塩化ベンゾイル(東京化成工業社製)
【0062】
なお、製造例、実施例および比較例において所定量とは、表1~表2に記載の各組成量をいう。
【0063】
[アロファネート基含有ポリイソシアネートプレポリマー(A)の製造例1]
1リットル容の四口フラスコにa1-1、a1-2を所定量加え、窒素気流下で攪拌しながら50℃に温調した。次いで、攪拌しながらa2-1を所定量加え、ウレタン化反応の発熱が収まった後に、90℃まで昇温した。内温が90℃で安定したところで、触媒cを所定量添加し90℃で4時間反応させ、触媒毒dを所定量加え反応を停止させ、プレポリマーA-1を得た。プレポリマーA-1は淡黄色透明液体で、25℃における粘度は3330mPa・sであった。その性状(NCO含有量、MDIのモノマー量、粘度)を表1に示す。なお、性状の測定方法については後述する。
【0064】
[プレポリマー(A)の製造例2、3]
a1およびa2を表1に示す組成に変更し、製造例1と同様の操作でプレポリマーA-2~A-5を合成した。その性状を表1に示す。
【0065】
【0066】
[ポリオール(B)の調製例]
ポリオール(b1-1)14質量部、ポリオール(b2-1)86質量部を混合し、ポリオール成分B-1を調製した。25℃における粘度は940mPa・s、水酸基価は252mgKOH/gであった。
ポリオール(b1-1)10質量部、ポリオール(b1-2)7質量部、ポリオール(b2-1)83質量部を混合し、ポリオール成分B-2を調製した。25℃における粘度は1030mPa・s、水酸基価は268mgKOH/gであった。
ポリオール(b1-1)9質量部、ポリオール(b1-2)9質量部、ポリオール(b2-1)82質量部を混合し、ポリオール成分B-3を調製した。25℃における粘度は1140mPa・s、水酸基価は273mgKOH/gであった。
ポリオール(b1-1)5質量部、ポリオール(b1-2)17質量部、ポリオール(b2-1)78質量部を混合し、ポリオール成分B-4を調製した。25℃における粘度は1240mPa・s、水酸基価は295mgKOH/gであった。
ポリオール(b1-2)24質量部、ポリオール(b2-1)76質量部を混合し、ポリオール成分B-5を調製した。25℃における粘度は1300mPa・s、水酸基価は304mgKOH/gであった。
【0067】
【0068】
[実施例1~6、比較例1~6]
表3及び表4に示す組成で、実施例1~6および比較例1~6のウレタン樹脂組成物を成形した。
表1~表4に記載の値は、下記の試験結果から算出した。
【0069】
[NCO含有量測定]
表1に示すプレポリマーA-1~A-5において、NCO含有量は、JIS K1603-1:2007に準じて行った。
【0070】
[MDIのモノマー含有量測定]
表1に示すプレポリマーA-1~A-5において、MDIのモノマーの含有量(質量%)は、GPC測定により、下記の条件および方法により求めた。
<測定条件>
測定装置:「HLC-8120(商品名)」(東ソー社製)
(2)カラム:充填剤として、TSKgel G3000HXL、TSKgel G2000HXL、TSKgel G1000HXL(いずれも商品名、東ソー社製)の3種をそれぞれ充填したカラムを直列に接続して、カラム温度40℃にて測定
検出器:RI(屈折率)計
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)(流量:1mL/min.、40℃)
検量線:以下のグレードのポリスチレン(TSK standard POLYSTYRENE)を用いて、検量線を得た。F-2(1.81×104)F-1(1.02×104)A-5000(5.97×103)A-2500(2.63×103)A-500(Mw=6.82×102、5.78×102、4.74××102、3.70×102、2.66×102)トルエン(Mw=92)
サンプル:サンプル0.05gのTHF10mL溶液
<測定方法>
始めにポリスチレンを標準物質として、屈折率差により検出して得られたチャートから、検量線を得た。次に各サンプルについて、同じ検量線に基づき屈折率差により検出して得られたチャートから、MDIのモノマーを示すピークトップ分子量(数平均分子量)230付近のピークの質量%を求めた。
【0071】
[低分子溶出試験用サンプルの作成]
(実施例1~6、比較例1~6)
主剤(A-1)~(A-5)、硬化剤(B-1)~(B-5)を表3に示す組み合わせで、液温45℃、イソシアネート基/活性水素基=1.00(モル比)、合計質量が30gとなるように主剤と硬化剤を配合した混合液を15秒撹拌した。更にグリセリン10gを添加(中空糸に含有するグリセリンを想定)して15秒間撹拌し、ポリウレタン樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物を1次キュア条件として温度50℃、時間10分間、2次キュア条件として温度45度、時間2日間、恒温槽内で静置した。
【0072】
[低分子溶出物抽出試験]
実施例1~6、比較例1~6において得られた樹脂硬化物の低分子溶出物値は、以下の方法により測定した。
先ず、各実施例及び比較例で得られた低分子溶出物値測定サンプルを扇形に裁断したものをそれぞれ20g秤量し、予め40℃に加温した100mlの精製水に浸漬し、40℃で2時間放置し、精製水中に低分子溶出物を抽出した。次いで、得られた抽出液をデカンテーションして50mlのメスフラスコに10ml入れ、精製水にて50mlに調整した液を試験液とし、UV吸光度測定(島津製作所社製 UV-1500)を行った。240~245nmにおける吸光度の最大値の10分の1の値を低分子溶出物値とした。低分子溶出物値は0.07未満が好ましく、0.065未満がより好ましい。
【0073】
[混合粘度・ポットライフ試験]
実施例1~6、比較例1~6において、樹脂硬化物を得る際の混合粘度・ポットライフは、以下の方法により求めた。
予め45℃に温度調整した主剤と硬化剤を、イソシアネート基/活性水素基=1.00(モル比)になる配合で合計50gとなるように計量、混合し、25℃雰囲気下で回転粘度計(B型、4号ローター)を用いて混合物の粘度を測定した。主剤と硬化剤の混合を開始した時点から60秒経過後の粘度を混合粘度とし、混合物の粘度が50000mPa・sに到達するまでの時間をポットライフ(秒)とした。混合粘度1800mPa・s以下、且つ、ポットライフ300秒以内であれば速硬化性良好と判断した。
【0074】
[硬度測定試験]
実施例1~6、比較例1~6において得られた樹脂硬化物の硬度は、以下の方法により測定した。
各実施例及び比較例で得られた測定サンプルについて、25℃の温度条件下で、測定瞬間及び測定瞬間から10秒後のJIS-D硬度をJIS-K7312に記載の方法に準拠した方法で測定した。
【0075】
[外観評価]
表3及び表4に示す組み合わせによる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物について、各々、10~20kPaで3分間減圧脱泡した後、ステンレス製金型(100mm×100mm×8mm)に流し込んだ。これを45℃で2日間静置キュアした後に脱型し、硬化物を得た。得られた硬化物について、外観を目視で評価し、濁りのないものをA、わずかでも濁りの認められるものをB、白濁したものをCとした。
【0076】
[白色度評価]
外観評価に使用した硬化物について、白色度を測定した。結果を表3及び表4に示す。なお、白色度の測定はJIS-P8123に準じて行った。白色度は7.0以下のものが好ましく、5.0以下のものがより好ましい。
【0077】
[硬度評価]
外観評価に使用した硬化物について、25℃におけるショアD硬度を測定した。結果を表3及び表4に示す。なお、硬度の測定はJIS K 7312:1996に準じて行った。
【0078】
【0079】
【0080】
※1 比較例6の低分子溶出物値は、反応性が早すぎるため評価ができなかった。
本発明の一実施形態によれば、MDIとグリセリンとの低分子反応物の溶出量が抑制され、かつ成型物の白濁が抑制された膜シール材の形成に資するとともに、良好な速硬化性を有し、低粘度で注型性に優れる膜シール材用ポリウレタン樹脂形成性組成物及び該組成物を用いた膜シール材、膜モジュールを提供することが可能となる。従って、本発明の一実施形態にかかる膜シール材は、医療用、家庭用、工業用分離装置を構成する膜シール材として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0081】
11 ハウジング
13 中空糸膜
15 第1の流体入口
17 第1の流体出口
19 膜シール材
100 膜モジュール(中空糸膜モジュール)