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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】撮像素子、及び、撮像装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 25/78 20230101AFI20230822BHJP
   H04N 25/77 20230101ALI20230822BHJP
   H04N 25/76 20230101ALI20230822BHJP
   H01L 27/146 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H04N25/78
H04N25/77
H04N25/76
H01L27/146 A
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2019180779
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021057832
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(72)【発明者】
【氏名】小倉 大輝
【審査官】鈴木 明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-078049(JP,A)
【文献】特開2018-152650(JP,A)
【文献】国際公開第2017/169478(WO,A1)
【文献】特開2015-033036(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/00-25/79
H01L 27/146
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光電変換により電荷を生成する第1の光電変換部と第2の光電変換部と、
前記第1の光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1の信号線と、
前記第2の光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2の信号線と、
前記第1の信号線と前記第2の信号線とに接続され、前記第1信号と前記第2信号とをアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換部と、
前記第1の信号線と前記第2の信号線とに電流を供給し、前記AD変換部で前記第1信号がデジタル信号に変換される間、前記第2信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第2の信号線に供給する、または電流を前記第2の信号線に供給しない供給部と、を備える撮像素子。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像素子において、
前記第2の信号線は、前記AD変換部で前記第1信号がデジタル信号に変換される間に前記第2信号が出力される撮像素子。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の撮像素子において、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第1信号がデジタル信号に変換される間のうち前記第2信号が出力される前は、前記第2信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第2の信号線に供給する、または電流を前記第2の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1の信号線は、前記第1信号を補正するための第3信号が出力され、
前記第2の信号線は、前記第2信号を補正するための第4信号が出力され、
前記AD変換部は、前記第3信号と前記第4信号とをアナログ信号からデジタル信号に変換する撮像素子。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像素子において、
前記第1の信号線は、前記AD変換部で前記第2信号がデジタル信号に変換される間に、前記第3信号が出力され、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第2信号がデジタル信号に変換される間、前記第3信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第1の信号線に供給する、または電流を前記第1の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の撮像素子において、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第2信号がデジタル信号に変換される間のうち前記第3信号が出力される前は、前記第3信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第1の信号線に供給する、または電流を前記第1の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項7】
請求項4から請求項6までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第2の信号線は、前記AD変換部で前記第3信号がデジタル信号に変換される間に、前記第4信号が出力され、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第3信号がデジタル信号に変換される間、前記第4信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第2の信号線に供給する、または電流を前記第2の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項8】
請求項4から請求項7までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第3信号がデジタル信号に変換される間のうち前記第4信号が出力される前は、前記第4信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第2の信号線に供給する、または電流を前記第2の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項9】
請求項4から請求項8までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1の信号線は、前記AD変換部で前記第4信号がデジタル信号に変換される間に、前記第1信号が出力され、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第4信号がデジタル信号に変換される間、前記第1信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第1の信号線に供給する、または電流を前記第1の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項10】
請求項4から請求項9までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記供給部は、前記AD変換部で前記第4信号がデジタル信号に変換される間のうち前記第1信号が出力される前は、前記第1信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第1の信号線に供給する、または電流を前記第1の信号線に供給しない撮像素子。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1の信号線と前記供給部とを接続又は切断可能な第1の接続部と、
前記第2の信号線と前記供給部とを接続又は切断可能な第2の接続部と、
を備え、
前記供給部が前記第1の信号線に電流を供給しないとき、前記第1の接続部は前記第1の信号線と前記供給部とを切断し、前記供給部が前記第2の信号線に電流を供給しないとき、前記第2の接続部は前記第2の信号線と前記供給部とを切断する撮像素子。
【請求項12】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記供給部が前記第1の信号線または前記第2の信号線に電流を供給しないとき、前記供給部を休止させる制御部を備える撮像素子。
【請求項13】
請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記第1の信号線と前記AD変換部とを接続又は切断可能な第3の接続部と、
前記第2の信号線と前記AD変換部とを接続又は切断可能な第4の接続部と、
を備え、
前記AD変換部が前記第1の信号線に出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するとき、前記第3の接続部は前記第1の信号線と前記AD変換部とを接続し、前記第4の接続部は前記第2の信号線と前記AD変換部とを切断し、
前記AD変換部が前記第2の信号線に出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換するとき、前記第3の接続部は前記第1の信号線と前記AD変換部とを切断し、前記第4の接続部は前記第2の信号線と前記AD変換部とを接続する撮像素子。
【請求項14】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
複数の前記第1の光電変換部は、第1領域において、第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に設けられ、
複数の前記第2の光電変換部は、前記第1領域と異なる第2領域において、前記第1方向及び前記第2方向に設けられ、
複数の前記第1信号がそれぞれ出力される複数の前記第1の信号線と、
複数の前記第2信号がそれぞれ出力される複数の前記第2の信号線と、を備える撮像素子。
【請求項15】
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
複数の前記第1の光電変換部は、第1領域において、第1方向及び前記第1方向とは異なる第2方向に設けられ、
複数の前記第2の光電変換部は、前記第1領域と異なる第2領域において、前記第1方向及び前記第2方向に設けられ、
前記第1の信号線は、複数の前記第1信号が出力され、
前記第2の信号線は、複数の前記第2信号が出力される撮像素子。
【請求項16】
請求項1から請求項15までのいずれか一項に記載の撮像素子において、
前記AD変換部は、前記第1信号または前記第2信号と、基準信号とを比較する比較部と、前記比較部から出力される信号に基づいてデジタル信号を記憶する記憶部とを有し、
前記第1の光電変換部及び前記第2の光電変換部が設けられる第1基板と、
前記第1基板に積層され、前記比較部及び前記記憶部のうち少なくとも1方が設けられる第2基板と、を備える撮像素子。
【請求項17】
請求項1から請求項16までのいずれか一項に記載の撮像素子と、
前記撮像素子から出力される信号に基づいて画像データを生成する生成部と、
を備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像素子、及び、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画素の1列に対して2本の垂直信号線と1つのカラム処理部が設けられた撮像素子が知られている(特許文献1)。従来から、消費電力の低減が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-12903号公報
【発明の概要】
【0004】
発明の第1の態様によると、撮像素子は、光電変換により電荷を生成する第1の光電変換部と第2の光電変換部と、前記第1の光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1の信号線と、前記第2の光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2の信号線と、前記第1の信号線と前記第2の信号線とに接続され、前記第1信号と前記第2信号とをアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換部と、前記第1の信号線と前記第2の信号線とに電流を供給し、前記AD変換部で前記第1信号がデジタル信号に変換される間、前記第2信号が出力されるときよりも小さい電流を前記第2の信号線に供給する、または電流を前記第2の信号線に供給しない供給部と、を備える。
発明の第2の態様によると、撮像装置は、第1の態様による撮像素子と、前記撮像素子から出力される信号に基づいて画像データを生成する生成部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示す図である。
図2】第1の実施の形態に係る撮像素子の構成例を示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。
図4】第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示す図である。
図6】変形例に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。
図7】変形例に係る撮像素子の一部の配置例を示す図である。
図8】変形例に係る撮像素子の動作例を示す図である。
図9】変形例に係る撮像素子の一部の配置例を示す図である。
図10】変形例に係る撮像素子の一部の配置例を示す図である。
図11】撮像素子の供給部の一部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る撮像装置の一例であるカメラ1の構成例を示す図である。カメラ1は、撮影光学系(結像光学系)2、撮像素子3、制御部4、メモリ5、表示部6、及び操作部7を備える。撮影光学系2は、焦点調節レンズ(フォーカスレンズ)を含む複数のレンズ及び開口絞りを有し、撮像素子3に被写体像を結像する。なお、撮影光学系2は、カメラ1から着脱可能にしてもよい。
【0007】
撮像素子3は、CMOSイメージセンサ、CCDイメージセンサ等の撮像素子である。撮像素子3は、撮影光学系2を通過した光束を受光し、撮影光学系2により形成される被写体像を撮像する。撮像素子3には、光電変換部を有する複数の画素が二次元状(行方向及び列方向)に配置される。光電変換素子は、フォトダイオード(PD)によって構成される。撮像素子3は、受光した光を光電変換して信号を生成し、生成した信号を制御部4に出力する。
【0008】
メモリ5は、メモリカード等の記録媒体である。メモリ5には、画像データ、制御プログラム等が記録される。メモリ5へのデータの書き込み、及びメモリ5からのデータの読み出しは、制御部4によって制御される。表示部6は、画像データに基づく画像、シャッター速度、絞り値等の撮影に関する情報、及びメニュー画面等を表示する。操作部7は、レリーズボタン、電源スイッチ、各種モードを切り替えるためのスイッチなどの各種設定スイッチ等を含み、それぞれの操作に基づく信号を制御部4へ出力する。
【0009】
制御部4は、CPU、FPGA、ASIC等のプロセッサ、及びROM、RAM等のメモリにより構成され、制御プログラムに基づきカメラ1の各部を制御する。制御部4は、撮像素子3を制御する信号を撮像素子3に供給して、撮像素子3の動作を制御する。制御部4は、静止画撮影を行う場合、動画撮影を行う場合、表示部6に被写体のスルー画像(ライブビュー画像)を表示する場合等に、撮像素子3に被写体像を撮像させて信号を出力させる。
【0010】
制御部4は、撮像素子3から出力される信号に各種の画像処理を行って画像データを生成する。制御部4は、画像データを生成する生成部4でもあり、撮像素子3から出力される信号に基づいて静止画像データ、動画像データを生成する。画像処理には、階調変換処理、色補間処理等の画像処理が含まれる。
【0011】
図2は、第1の実施の形態に係る撮像素子の構成例を示すブロック図である。撮像素子3は、画素10が複数設けられた第1基板111と、アナログ/デジタル変換部(AD変換部)40を含む処理部60が複数設けられた第2基板112とを積層して構成される。第1基板111及び第2基板112は、それぞれ半導体基板を用いて構成される。第1基板111に設けられた回路、及び第2基板112に設けられた回路は、バンプ、電極等により電気的に接続される。
【0012】
第1基板111は、二次元状に配置される複数の画素10を有する。画素10は、後述する光電変換信号及びダーク信号を第2基板112へ出力する。図2においては、行方向6画素×列方向12画素の72個の画素10を図示している。なお、撮像素子3に配置される画素の数及び配置は、図示した例に限られない。
【0013】
第1基板111は、複数の画素10がそれぞれ配置される複数の領域20を有する。図2に示す例では、第1基板111は、領領20(1,1)から領域20(4,2)までの8つの領域20を有する。これら8つの領域20は、それぞれ、第1基板111の画素10が配置される領域を、3画素×3画素の9画素を含む領域に分けたときの1つの領域を示している。領領20(1,1)~領域20(4,2)には、それぞれ3画素×3画素の9画素が設けられる。なお、各領域20は、部分的に重なっていてもよいし、重なっていなくてもよい。各領域20の画素の数は、2画素×2画素の4画素であってもよいし、4画素×4画素の16画素であってもよく、任意の数としてよい。なお、以下では、領域20を画素ブロック20と称する。
【0014】
各画素ブロック20は、縦方向、即ち列方向(垂直方向)に並んだ複数の画素10の列ごとに、信号線18(図2では信号線18a~信号線18c)とスイッチSW1(図2ではスイッチSW1a~スイッチSW1c)を有する。信号線18aは第1列目の画素列に接続され、信号線18bは第2列目の画素列に接続され、信号線18cは第3列目の画素列に接続される。
【0015】
スイッチSW1aは、信号線18aと信号線25とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW1aは、オン状態の場合に、信号線18aに出力された画素の信号を信号線25に出力する。スイッチSW1bは、信号線18bと信号線25とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW1bは、オン状態の場合に、信号線18bに出力された画素の信号を信号線25に出力する。スイッチSW1cは、信号線18cと信号線25とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW1cは、オン状態の場合に、信号線18cに出力された画素の信号を信号線25に出力する。スイッチSW1a~スイッチSW1cは、それぞれトランジスタにより構成される。
【0016】
図3は、第1の実施の形態に係る撮像素子の画素の構成例を示す図である。画素10は、光電変換部11と、転送部12と、リセット部13と、フローティングディフュージョン(FD)14と、増幅部15と、選択部16とを有する。光電変換部11は、フォトダイオードPDであり、入射した光を電荷に変換し、光電変換された電荷を蓄積する。
【0017】
転送部12は、信号TXにより制御されるトランジスタM1から構成され、光電変換部11で光電変換された電荷をFD14に転送する。トランジスタM1は、転送トランジスタである。FD14は、FD14に転送された電荷を蓄積(保持)する。
【0018】
増幅部15は、ゲート(端子)がFD14に接続されるトランジスタM3から構成され、FD14に蓄積された電荷による信号を増幅して出力する。増幅部15は、選択部16を介して信号線18に接続される。トランジスタM3は、増幅トランジスタである。増幅部15と選択部16とは、光電変換部11により生成された電荷に基づく信号を生成し出力する出力部を構成する。
【0019】
リセット部13は、信号RSTにより制御されるトランジスタM2から構成され、FD14に蓄積された電荷を排出し、FD14の電圧をリセットする。トランジスタM2は、リセットトランジスタである。選択部16は、信号SELにより制御されるトランジスタM4から構成され、増幅部15と信号線18とを電気的に接続又は切断する。選択部16のトランジスタM4は、オン状態の場合に、増幅部15からの信号を信号線18に出力する。トランジスタM4は、選択トランジスタである。
【0020】
画素10は、FD14の電圧をリセットしたときの信号(ダーク信号)と、転送部12により光電変換部11からFD14に転送された電荷に応じた信号(光電変換信号)とを、信号線18に順次出力する。ダーク信号は、光電変換信号に対する基準レベルを示すアナログ信号となり、光電変換信号の補正に用いられる。また、光電変換信号は、光電変換部11によって光電変換された電荷に基づいて生成されるアナログ信号である。画素10から順次出力されるダーク信号及び光電変換信号は、信号線18とスイッチSW1と信号線25とを介して、処理部60に入力される。
【0021】
図2において、第2基板112は、複数の画素ブロック20毎に設けられる処理部60と、読み出し制御部70とを有する。本実施の形態では、処理部60は、隣り合う2つの画素ブロック20毎に設けられる。図2においては、4つの処理部60を図示している。処理部60(1,1)は、画素ブロック20(1,1)及び画素ブロック20(2,1)に対して設けられる。処理部60(1,2)は、画素ブロック20(1,2)及び画素ブロック20(2,2)に対して設けられる。また、処理部60(2,1)は、画素ブロック20(3,1)及び画素ブロック20(4,1)に対して設けられ、処理部60(2,2)は、画素ブロック20(3,2)及び画素ブロック20(4,2)に対して設けられる。
【0022】
処理部60に接続される2つの画素ブロック20のうち一方の画素ブロック20の信号線25(信号線25aと称する)は、その一方の画素ブロック20と処理部60とを結ぶ信号線となり、他方の画素ブロック20の信号線25(信号線25bと称する)は、その他方の画素ブロック20と処理部60とを結ぶ信号線となる。信号線25a、25bは、バンプ、電極等を用いた信号線である。
【0023】
読み出し制御部70は、複数の画素10及び複数の処理部60に共通に設けられる。読み出し制御部70は、タイミングジェネレータを含む複数の回路により構成され、第2基板112に配置される。なお、読み出し制御部70は、第1基板111と第2基板112に分けて配置してもよいし、第1基板111に配置してもよい。また、読み出し制御部70を、第1基板112と第2基板113とは異なる基板に配置してもよい。
【0024】
読み出し制御部70は、カメラ1の制御部4によって制御され、上述した信号TX、信号RST、信号SELなどの信号を各画素10に供給して、各画素10の動作を制御する。読み出し制御部70は、画素10の各トランジスタのゲートに信号を供給して、トランジスタをオン状態(接続状態、導通状態、短絡状態)又はオフ状態(切断状態、非導通状態、開放状態、遮断状態)とする。
【0025】
読み出し制御部70は、スイッチSW1a~スイッチSW1c及び各画素10の選択部16をオンオフ制御することにより、信号線25と電気的に接続される画素10を選択(設定)する。これにより、読み出し制御部70は、画素ブロック20内の任意の画素10から信号(光電変換信号、ダーク信号)を信号線25に読み出すことができる。
【0026】
処理部60は、スイッチSW2aとスイッチSW2bとAD変換部50とを有し、2つの画素ブロック20毎に共通に設けられる。スイッチSW2aは、信号線25aとAD変換部50とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW2bは、信号線25bとAD変換部50とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW2a及びスイッチSW2bは、それぞれトランジスタにより構成され、読み出し制御部70によりオンオフ制御される。本実施の形態では、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各々のスイッチSW2aは、読み出し制御部70から出力される同一の信号によって制御される。また、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各々のスイッチSW2bは、読み出し制御部70から出力される同一の信号によって制御される。なお、図4を用いて後述するが、撮像素子3には、信号線25に電流を供給する供給部が設けられる。
【0027】
AD変換部50は、比較部40及び記憶部45を有する。比較部40は、コンパレータ回路を含んで構成される。比較部40の第1端子41には、スイッチSW2a又はスイッチSW2bからの画素の信号(光電変換信号、ダーク信号)が、直接又は不図示の増幅回路により増幅されて入力される。比較部40の第2端子42には、不図示の信号生成回路から時間経過とともに変化する基準信号であるランプ信号RAMPが入力される。比較部40は、画素の信号と基準信号とを比較し、比較結果である出力信号を出力端子43から出力する。
【0028】
記憶部45は、記憶されるデジタル信号のビット数に対応して複数のラッチ回路により構成される。各ラッチ回路の一方の入力端子には、比較部40による比較結果を示す出力信号が入力される。各ラッチ回路の他方の入力端子には、不図示のカウンタ回路からカウント値を示すクロック信号CLKが入力される。
【0029】
記憶部45は、比較部40の出力信号とカウンタ回路からのクロック信号とに基づいて、比較部40による比較開始から比較結果が反転するまでの経過時間に応じたカウント値をデジタル信号として記憶する。換言すると、記憶部45は、比較部40から出力される信号に基づき、画素10から出力された信号のレベルと基準信号のレベルとの大小関係が変化する(反転する)までの時間に応じたカウント値をデジタル信号として記憶する。
【0030】
画素10のダーク信号が比較部40に入力されると、比較部40は、ダーク信号と基準信号とを比較して、比較結果を記憶部45に出力する。記憶部45は、比較部40による比較結果とクロック信号とに基づいて、比較部40による比較開始時から比較結果の反転時までの経過時間に応じたカウント値をダーク信号に基づくデジタル信号として記憶する。また、画素10の光電変換信号が比較部40に入力されると、比較部40は、光電変換信号と基準信号とを比較して、比較結果を記憶部45に出力する。記憶部45は、比較部40による比較結果とクロック信号とに基づいて、比較部40による比較開始時から比較結果の反転時までの経過時間に応じたカウント値を光電変換信号に基づくデジタル信号として記憶する。このように、AD変換部50は、アナログ信号である光電変換信号を所定のビット数のデジタル信号に変換し、アナログ信号であるダーク信号を所定のビット数のデジタル信号に変換する。
【0031】
処理部60は、AD変換部50によりデジタル信号に変換された画素の信号を、不図示の信号処理部に出力する。信号処理部には、デジタル信号に変換された画素の信号(ダーク信号に基づくデジタル信号、光電変換信号に基づくデジタル信号)が入力される。信号処理部は、光電変換信号に基づくデジタル信号とダーク信号に基づくデジタル信号との減算によって光電変換信号を補正する相関二重サンプリング、コードを変換する処理等の信号処理を行う。処理部60は、信号処理後の各画素10の信号を、カメラ1の制御部4に出力する。
【0032】
図4は、第1の実施の形態に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。図4では、撮像素子3に設けられた複数の画素ブロック20のうちの2つの画素ブロック20(画素ブロック20a、画素ブロック20bと称する)と、1つの処理部60と、読み出し制御部70とを示している。処理部60は、スイッチSW3a及びスイッチSW3bと、供給部30と、上述したスイッチSW2a及びスイッチSW2bと、AD変換部50とを有する。
【0033】
撮像素子3では、画素ブロック20aの信号線25aに対してスイッチSW3aが設けられ、画素ブロック20bの信号線25bに対してスイッチSW3bが設けられる。スイッチSW3aは、信号線25aと供給部30とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW3bは、信号線25bと供給部30とを電気的に接続又は切断する。スイッチSW3a及びスイッチSW3bは、それぞれトランジスタにより構成され、読み出し制御部70によりオンオフ制御される。なお、本実施の形態では、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各々のスイッチSW3aは、読み出し制御部70から出力される同一の信号によって制御される。また、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各々のスイッチSW3bは、読み出し制御部70から出力される同一の信号によって制御される。
【0034】
供給部30は、電流源31a及び電流源31bを有し、信号線25aと信号線25bとに電流を供給する。電流源31aは、スイッチSW3a及び信号線25a及びスイッチSW1(図2図3参照)を介して、画素ブロック20aの各画素10に接続される。電流源31bは、スイッチSW3b及び信号線25b及びスイッチSW1を介して、画素ブロック20bの各画素10に接続される。電流源31a及び電流源31bは、それぞれ、各画素10から信号を読み出すための電流を生成する。電流源31aは、生成した電流を信号線25aと、画素ブロック20aの各画素10の選択部16及び増幅部15とに供給する。同様に、電流源31bは、生成した電流を信号線25bと、画素ブロック20bの各画素10の選択部16及び増幅部15とに供給する。
【0035】
読み出し制御部70は、スイッチSW2a及びスイッチSW2bを制御することにより、信号線25a又は信号線25bをAD変換部50に電気的に接続させる。スイッチSW2aがオン状態であり、スイッチSW2bがオフ状態である場合、信号線25aに出力された画素ブロック20aの画素10の信号は、AD変換部50に入力される。また、スイッチSW2aがオフ状態であり、スイッチSW2bがオン状態である場合には、信号線25bに出力された画素ブロック20bの画素10の信号は、AD変換部50に入力される。これにより、1つのAD変換部50によって、画素ブロック20aの各画素の信号のAD変換と、画素ブロック20bの各画素の信号のAD変換とを行うことが可能となる。本実施の形態に係る撮像素子3は、画素ブロック20毎にAD変換部50を設ける必要はなく、2つの画素ブロック20が1つのAD変換部50を共有する構成となる。このため、画素ブロック20毎にAD変換部を設ける場合と比較して、AD変換部の数が1/2になり、撮像素子3のAD変換部の消費電力を1/2にすることが可能となる。また、撮像素子の面積の増大、製造コストの増大を防ぐことができる。
【0036】
読み出し制御部70は、各画素10及びスイッチSW2a、SW2bを制御して、信号線25a、25bのうちの一方の信号線に出力された画素の信号のAD変換をAD変換部50に行わせると共に、他方の信号線への画素10からの信号の読み出しを行う。画素ブロック20aから信号線25a及びスイッチSW2aを介して入力された画素の信号のAD変換がAD変換部50において行われる場合、読み出し制御部70は、画素ブロック20bから信号線25bへの画素の信号の読み出しを行う。また、画素ブロック20bから信号線25b及びスイッチSW2bを介して入力された画素の信号のAD変換がAD変換部50において行われる場合、読み出し制御部70は、画素ブロック20aから信号線25aへの画素の信号の読み出しを行う。このように、撮像素子3では、2つの画素ブロック20のうちの一方の画素ブロック20から出力された画素の信号のAD変換部50によるAD変換と、他方の画素ブロック20からの信号の読み出しとが同時に(並列に)行われる。
【0037】
一般的に、信号線25の長さが短い場合、信号線25に接続される画素10の数が少ない場合等には、信号線25への画素の信号の読み出しに要する時間が、画素の信号のAD変換に要する時間と比較して、より短くなる。画素の信号の静定時間が、画素の信号に対するAD変換の時間よりも、より短くなるともいえる。このため、一方の画素ブロック20の画素の信号のAD変換が行われる間、他方の画素ブロック20の画素10に接続される信号線25に供給部30から常に電流を供給すると、余計にその信号線25に画素の信号を保持している時間が生じる。
【0038】
そこで、本実施の形態に係る撮像素子3は、AD変換部50で一方の画素ブロック20の画素の信号がデジタル信号に変換される期間の一部において、その他方の画素ブロック20に接続される信号線25に電流を供給しない処理を行う。なお、撮像素子3は、AD変換部50で一方の画素ブロック20の画素の信号がデジタル信号に変換される間に、他方の画素ブロック20から画素の信号を読み出すときに供給する電流よりも小さい電流を、その他方の画素ブロック20に接続される信号線25に供給するようにしてもよい。このとき、他方の画素ブロック20に接続される信号線25への電流の大きさ(電流値)は0であってもよく、上述した小さい電流は「0」も含む。
【0039】
読み出し制御部70は、一方の画素ブロック20の画素の信号のAD変換処理を開始してから所定時間の間は、他方の画素ブロック20に接続される信号線25への電流の供給を停止させる。撮像素子3は、一方の画素ブロック20の画素の信号のAD変換処理を開始してから所定時間の経過後に、他方の画素ブロック20に接続される信号線25への電流の供給を開始させる。このため、他方の画素ブロック20に接続される信号線25において、余計に画素の信号を保持している時間を減らすことができ、撮像素子3の消費電力を低減することができる。
【0040】
図5は、第1の実施の形態に係る撮像素子の動作例を示す図である。図5(a)~図5(c)は、それぞれ、画素ブロック20aに接続される信号線25a、画素ブロック20bに接続される信号線25b、AD変換部50の駆動状態を示している。なお、図5(a)~図5(c)は、画素ブロック20aと画素ブロック20bとから交互に画素の信号を読み出す場合について、同一の時間軸上に示している。
【0041】
図5に示す時刻t1においては、画素ブロック20aの画素10に供給される信号RSTがハイレベルになる。信号RSTがハイレベルになることで、画素ブロック20aの画素10のリセット部13のトランジスタM2がオンになる。これにより、画素ブロック20aの画素10のFD14の電荷が排出され、FD14の電圧がリセット電圧になる。また、スイッチSW3aはオン状態にされ、スイッチSW3bはオフ状態にされる。これにより、信号線25aには、スイッチSW3aを介して、供給部30の電流源31aから電流が供給される。
【0042】
また、時刻t1では、画素ブロック20aの画素10に供給される信号SELがハイレベルになる。信号SELがハイレベルになることで、画素ブロック20aの画素10のリセット電圧に基づくダーク信号が、増幅部15及び選択部16により信号線18及びスイッチSW1を介して信号線25aに出力される。即ち、画素ブロック20aの画素10のFD14の電荷を排出した後の信号(ダーク信号)が、信号線25aに出力される。
【0043】
時刻t2では、スイッチSW2aはオン状態にされ、スイッチSW2bはオフ状態にされる。スイッチSW2aがオン状態になることで、信号線25aを介して、画素ブロック20aの画素10のダーク信号がAD変換部50に入力される。また、時刻t2から時刻t4までの期間において、スイッチSW3aはオン状態のままであり、信号線25aには電流源31aから電流が供給される。これにより、信号線25aでは、画素ブロック20aの画素10のダーク信号が保持される。時刻t2から時刻t4までの期間において、AD変換部50は、画素ブロック20aから信号線25aを介して入力されるダーク信号をデジタル信号に変換する。
【0044】
時刻t3では、画素ブロック20bの画素10に供給される信号RSTがハイレベルになる。信号RSTがハイレベルになることで、画素ブロック20bの画素10のFD14の電荷が排出され、FD14の電圧がリセット電圧になる。また、時刻t3では、スイッチSW3bがオン状態にされる。スイッチSW3bがオン状態になることで、信号線25bには、スイッチSW3bを介して、供給部30の電流源31bから電流が供給される。
【0045】
また、時刻t3では、画素ブロック20bの画素10に供給される信号SELがハイレベルになる。信号SELがハイレベルになることで、画素ブロック20bの画素10のダーク信号が、増幅部15及び選択部16により信号線18及びスイッチSW1を介して信号線25bに出力される。
【0046】
時刻t4では、スイッチSW3aがオフ状態にされる。スイッチSW3aがオフ状態になることで、供給部30の電流源31aからの電流の供給が休止(停止)される。時刻t4から時刻t5までの期間では、スイッチSW3aがオフ状態のままであり、信号線25aは、供給部30の電流源31aから電流が供給されずに休止状態となる。
【0047】
また、時刻t4では、スイッチSW2aはオフ状態にされ、スイッチSW2bはオン状態にされる。スイッチSW2bがオン状態になることで、画素ブロック20bの画素10のダーク信号が、信号線25bを介してAD変換部50に入力される。時刻t4から時刻t6までの期間において、スイッチSW3bはオン状態のままであり、信号線25bには電流源31bから電流が供給される。これにより、信号線25bでは、画素ブロック20bの画素10のダーク信号が保持される。時刻t4から時刻t6までの期間において、AD変換部50は、画素ブロック20bから信号線25bを介して入力されるダーク信号をデジタル信号に変換する。
【0048】
時刻t5では、画素ブロック20aの画素10に供給される信号TXがハイレベルになることで、画素10の転送部12のトランジスタM1がオンになり、光電変換部11で光電変換された電荷が、FD14に転送される。また、時刻t5では、画素ブロック20aの画素10に供給される信号SELがハイレベルであるため、光電変換部11で生成された電荷に基づく光電変換信号が、増幅部15及び選択部16により信号線18及びスイッチSW1を介して信号線25aに出力される。
【0049】
時刻t6では、スイッチSW3bがオフ状態にされ、供給部30の電流源31bからの電流の供給が休止される。時刻t6から時刻t7までの期間では、スイッチSW3bがオフ状態のままであり、信号線25bは休止状態となる。
【0050】
また、時刻t6では、スイッチSW2aはオン状態にされ、スイッチSW2bはオフ状態にされる。スイッチSW2aがオン状態になることで、信号線25aを介して、画素ブロック20aの画素10の光電変換信号がAD変換部50に入力される。時刻t6から時刻t8までの期間において、スイッチSW3aはオン状態のままであり、信号線25aには電流源31aから電流が供給される。これにより、信号線25aでは、画素ブロック20aの画素10の光電変換信号が保持される。時刻t6から時刻t8までの期間において、AD変換部50は、画素ブロック20aから信号線25aを介して入力される光電変換信号をデジタル信号に変換する。
【0051】
時刻t7では、画素ブロック20bの画素10に供給される信号TXがハイレベルになることで、光電変換部11で光電変換された電荷が、FD14に転送される。また、時刻t7では、画素ブロック20bの画素10に供給される信号SELがハイレベルであるため、光電変換部11で生成された電荷に基づく光電変換信号が、増幅部15及び選択部16により信号線18及びスイッチSW1を介して信号線25bに出力される。
【0052】
時刻t8では、スイッチSW3aがオフ状態にされ、供給部30の電流源31aからの電流の供給が休止される。時刻t8から時刻t9までの期間では、スイッチSW3aがオフ状態のままであり、信号線25aは休止状態となる。
【0053】
また、時刻t8では、スイッチSW2aはオフ状態にされ、スイッチSW2bはオン状態にされる。スイッチSW2bがオン状態になることで、画素ブロック20bの画素10の光電変換信号が、信号線25bを介してAD変換部50に入力される。時刻t8から時刻t10までの期間において、スイッチSW3bはオン状態のままであり、信号線25bには電流源31bから電流が供給される。これにより、信号線25bでは、画素ブロック20bの画素10の光電変換信号が保持される。時刻t8から時刻t10までの期間において、AD変換部50は、画素ブロック20bから信号線25bを介して入力される光電変換信号をデジタル信号に変換する。
【0054】
このように、本実施の形態では、読み出し制御部70は、画素ブロック20aの画素の信号のAD変換処理を開始してから所定時間の間(図5では時刻t2~時刻t3、時刻t6~時刻t7)は、信号線25bへの電流の供給を停止させる。また、読み出し制御部70は、画素ブロック20bの画素の信号のAD変換処理を開始してから所定時間の間(図5では時刻t4~時刻t5、時刻t8~時刻t9)は、信号線25aへの電流の供給を停止させる。このため、信号線25bにおいて余計に画素の信号を保持している時間、及び信号線25aにおいて余計に画素の信号を保持している時間を短縮し、撮像素子3の消費電力を削減することができる。
【0055】
上述した実施の形態によれば、次の作用効果が得られる。
(1)光電変換により電荷を生成する第1の光電変換部と第2の光電変換部と、第1の光電変換部で生成された電荷に基づく第1信号が出力される第1の信号線と、第2の光電変換部で生成された電荷に基づく第2信号が出力される第2の信号線と、第1の信号線と第2の信号線とに接続され、第1信号と第2信号とをアナログ信号からデジタル信号に変換するAD変換部50と、第1の信号線と第2の信号線とに電流を供給し、AD変換部50で第1信号がデジタル信号に変換される間、第2信号が出力されるときよりも小さい電流を第2の信号線に供給する、または電流を第2の信号線に供給しない供給部30と、を備える。本実施の形態では、撮像素子3は、AD変換部50で一方の画素ブロック20の画素の信号がデジタル信号に変換される期間内に、他方の画素ブロック20に接続される信号線25への電流を供給しない処理を行う。このため、撮像素子3の消費電力を低減することができる。
【0056】
(2)供給部30は、AD変換部50で第1信号がデジタル信号に変換される間のうち第2信号が出力される前は、第2信号が出力されるときよりも小さい電流を第2の信号線に供給する、または電流を第2の信号線に供給しない。本実施の形態では、供給部30は、一方の画素ブロック20の画素の信号のAD変換処理を開始してから所定時間の間は、他方の画素ブロック20に接続される信号線25への電流の供給を停止する。このため、他方の画素ブロック20に接続される信号線25において余計に画素の信号を保持する時間を減らすことができ、撮像素子3の消費電力を低減することができる。
【0057】
次のような変形も本発明の範囲内であり、変形例の一つ、もしくは複数を上述の実施形態と組み合わせることも可能である。
【0058】
(変形例1)
図6は、変形例1に係る撮像素子の一部の構成例を示す図である。また、図7は、変形例1に係る撮像素子の一部の配置例を示す図である。本変形例では、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各々のスイッチSW2a(SW2a1~SW2a4)、スイッチSW2b(SW2b1~SW2b4)、スイッチSW3a(SW3a1~SW3a4)、スイッチSW3b(SW3b1~SW3b4)は、それぞれ互いに異なる信号によってオンオフ制御される。
【0059】
図7において、SW2a1~SW2a4、SW2b1~SW2b4、SW3a1~SW3a4、SW3b1~SW3b4は、それぞれ、読み出し制御部70からスイッチSW2a1~SW2a4、スイッチSW2b1~SW2b4、スイッチSW3a1~SW3a4、スイッチSW3b1~SW3b4に入力される制御信号を示している。これら制御信号が供給される各信号線は、図7に模式的に示すように個別に設けらて、各処理部60に接続される。これにより、読み出し制御部70は、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各スイッチを個別に(独立に)制御することができる。読み出し制御部70は、処理部60(1,1)~処理部60(2,2)の各スイッチをオンオフするタイミングを異ならせることが可能となる。
【0060】
図8は、変形例1に係る撮像素子の動作例を示す図である。図8では、ダーク信号をD信号と表記し、光電変換信号をS信号と表記している。図8に示すように供給部30による電流の供給を休止させる時間を処理部60毎にずらすことによって、撮像素子3の消費電力のピークを分散させることができ、画素の信号に混入するノイズを低減することが可能となる。
【0061】
図9及び図10は、それぞれ、変形例1に係る撮像素子の一部の別の配置例を示す図である。図9に示す例のように、読み出し制御部70を、処理部60毎に設けるようにしてもよい。例えば、処理部60(1,1)に対して設けられた読み出し制御部70は、処理部60(1,1)内のスイッチSW2a、スイッチSW2b、スイッチSW3a、及びスイッチSW3bを制御する。処理部60(1,2)に対して設けられた読み出し制御部70は、処理部60(1,2)内のスイッチSW2a、スイッチSW2b、スイッチSW3a、及びスイッチSW3bを制御する。また、図10に示す例のように、読み出し制御部70を、複数の処理部60毎に設けるようにしてもよい。なお、読み出し制御部70は、各処理部60のスイッチSW2a、スイッチSW2b、スイッチSW3a、及びスイッチSW3bをオンオフさせるタイミングを、処理部60毎に異なるように制御してもよいし、複数の処理部60毎に異なるように制御してもよい。
【0062】
(変形例2)
図11は、撮像素子の供給部の一部の構成例を示す図である。供給部30の電流源31(電流源31a及び電流源31bの各々)は、例えば図11(a)、(b)に示すように、1つのトランジスタにより構成されてもよい。なお、電流源31a及び電流源31bは、それぞれ、複数のランジスタのカスコード接続によって構成されてもよい。
【0063】
図11(a)に示す例では、読み出し制御部70は、上述した実施の形態のように、スイッチSW3をオフ状態とすることによって、電流源31と信号線25とを電気的に切断し、電流源31から信号線25への電流の供給を停止してもよい。なお、読み出し制御部70は、電流源31のトランジスタのゲートに供給される電圧を調整することにより、電流源31から信号線25に供給される電流の大きさを調整してもよい。図11(b)に示す例のように、読み出し制御部70は、電流源31のトランジスタのゲートに接続されるスイッチSW4をオフ状態とすることにより、電流源31から信号線25への電流の供給を停止してもよい。
【0064】
(変形例3)
上述した実施の形態では、撮像素子3が第1基板111と第2基板112とを積層して構成される例について説明した。しかし、第1基板111と第2基板112とは積層されていなくてもよい。
【0065】
(変形例4)
上述した実施の形態および変形例では、光電変換部としてフォトダイオードを用いる例について説明した。しかし、光電変換部として光電変換膜(有機光電膜)を用いるようにしてもよい。
【0066】
(変形例5)
上述の実施の形態及び変形例で説明した撮像素子及び撮像装置は、カメラ、スマートフォン、タブレット、PCに内蔵のカメラ、車載カメラ、無人航空機(ドローン、ラジコン機等)に搭載されるカメラ等に適用されてもよい。
【0067】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1…撮像装置、3…撮像素子、4…制御部、10…画素、11…光電変換部、30…供給部、50…AD変換部、60…処理部、70…読み出し制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11