(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】対撚りケーブル及び多心ケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 11/02 20060101AFI20230822BHJP
H01B 7/04 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
H01B11/02
H01B7/04
(21)【出願番号】P 2020007243
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黄 得天
(72)【発明者】
【氏名】小林 正則
(72)【発明者】
【氏名】塚本 佳典
(72)【発明者】
【氏名】森山 真至
(72)【発明者】
【氏名】荒井 才志
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-023340(JP,U)
【文献】実開昭61-013411(JP,U)
【文献】特開2013-235693(JP,A)
【文献】特開2011-258330(JP,A)
【文献】特開2019-102120(JP,A)
【文献】特開2014-127345(JP,A)
【文献】特開2002-363668(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 11/02
H01B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と該導体を被覆している絶縁体とを有する絶縁電線を撚り合わせた対撚りケーブルであって、
前記導体は、
外径が0.05mm以下の銅合金線からなる
100本以上の素線を集合撚りして構成され、その導体断面積が0.4mm
2以下であり
、
前記導体の撚りピッチが10mm以上12mm以下であり、前記導体の撚り方向が前記絶縁電線を撚り合わせる際の撚り方向と逆方向であり、
前記絶縁体が、フッ素樹脂からなる、
対撚りケーブル。
【請求項2】
前記絶縁電線を撚り合わせる際の撚りピッチが、前記絶縁電線の外径の20倍以上である、
請求項
1に記載の対撚りケーブル。
【請求項3】
前記絶縁体
の内面と前記導体を構成する前記素線との間に、前記素線の外径以下の大きさの隙間を有し、前記絶縁体に対して前記導体が前記絶縁電線の長手方向に移動可能
である、
請求項1
または2に記載の対撚りケーブル。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の対撚りケーブルを複数撚り合わせた集合体を備えた、
多心ケーブル。
【請求項5】
前記対撚りケーブルにおいて前記絶縁電線を撚り合わせる際の撚り方向と、前記集合体の撚り方向とが逆方向であ
り、前記集合体の撚りピッチが、前記対撚りケーブルの撚りピッチよりも大きく、前記対撚りケーブルの外径の25倍以上30倍以下である、
請求項
4に記載の多心ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対撚りケーブル及び多心ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の絶縁電線を撚り合わせた対撚りケーブルが知られている(例えば、特許文献1参照。)。対撚りケーブルとして、例えば、産業用ロボットの可動部や捻回部を介した配線として用いられるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、産業用ロボットの小型化が進んでおり、また複雑な工程を高速で行う人間協同型の産業用ロボットの開発が進んでいる。小型の産業用ロボットでは、大型の産業用ロボットと比較して捻回長が短く、かつ捻回角度が大きくなる傾向があり、このような厳しい捻回条件においても、断線しにくい耐捻回性の高い対撚りケーブルが要求されている。
【0005】
そこで、本発明は、耐捻回性を向上した対撚りケーブル及び多心ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、導体と該導体を被覆している絶縁体とを有する絶縁電線を撚り合わせた対撚りケーブルであって、前記導体は、銅合金線からなる素線を集合撚りして構成され、その導体断面積が0.4mm2以下であり、前記素線の外径が0.05mm以下である、対撚りケーブルを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、前記対撚りケーブルを複数撚り合わせた集合体と、前記集合体を被覆しているシースと、を備えた、多心ケーブルを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐捻回性を向上した対撚りケーブル及び多心ケーブルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る対撚りケーブルを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は側面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る多心ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【
図3】本発明の一変形例に係る多心ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施の形態]
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0011】
図1は、本実施の形態に係る対撚りケーブルを示す図であり、(a)は長手方向に垂直な断面を示す断面図、(b)は側面図である。
【0012】
図1(a),(b)に示すように、対撚りケーブル1は、導体21と導体21を被覆している絶縁体22とを有する一対の絶縁電線2を撚り合わせて構成されている。対撚りケーブル1は、例えば、小型の人間協同型の産業用ロボットにおける捻回部(あるいは可動部)を介した配線として用いられるものである。
【0013】
(導体21)
絶縁電線2の導体21は、複数の素線を集合撚りして構成されている。本実施の形態では、導体21の素線としては、錫入り銅合金線、錫とインジウムとを所定量含む銅合金線、あるいは銀を所定量含む銅合金線等の銅合金線が用いられる。なお、本実施の形態では、素線として、繰り返し捻回が加えられることにより疲労破断が生じやすい軟銅線を用いない。素線に用いる銅合金線としては、耐捻回性を高めるため、伸びが5%以上であり、引張強さが340MPa以上である銅合金線を用いるとよい。耐捻回性を高めるという観点から、素線の伸びはできるだけ大きいことが好ましく、10%以上であることがより好ましい。
【0014】
上述のように、対撚りケーブル1は、小型の産業用ロボットの配線として用いられるために、その外径が小さく、例えば1.1mm程度である。これに対応し、導体21としても、導体断面積が0.4mm2以下のものが用いられる。導体21の導体断面積が大きくなると、導体21を構成する素線の本数も増える傾向にある。素線の本数が増えると、繰り返し捻回によって集合撚りされた素線の一部に撚り乱れが発生してしまう可能性が高くなる。撚り乱れの発生によって、導体21の断線や絶縁体の損傷が発生することも考えられる。そのため、このような繰り返し捻回による撚り乱れの発生を抑制する観点から、導体21の導体断面積は、0.4mm2以下とすることが好ましい。なお、繰り返し捻回による撚り乱れの発生を抑制するために、導体21を複合撚りして構成することも考えられるが、集合撚りして構成される導体21の方が複合撚りして構成される導体21と比べて、コストを低くすることができる。また、導体21の導体断面積が小さすぎると捻回時に断線し易くなり、また伝送特性の悪化も懸念される。そのため、導体21の導体断面積は少なくとも0.1mm2以上、より好ましくは0.15mm2以上0.4mm2以下であることが好ましい。本実施の形態では、導体21の導体断面積を約0.2mm2とした。
【0015】
本発明者らは、捻回長が例えば120mmと短く、捻回角度が例えば±360°と大きい非常に厳しい捻回条件においても、耐捻回性を向上させるべく鋭意検討を行った。その結果、導体21により細い素線を用い、導体21に使用する素線の本数を増やすことで、上述の厳しい捻回条件においても耐捻回性を大きく向上できることを見出した。
【0016】
すなわち、本実施の形態では、より細い素線を多数集合撚りして導体21を構成することにより、耐捻回性を向上している。より具体的には、本実施の形態では、導体21に用いる素線として、外径が少なくとも0.05mm以下のものを用いる。従来、外径0.08mmの素線が産業用ロボットに使用されるケーブルに広く用いられているが、この場合と同じ導体断面積を維持するとなると、外径0.05mmの素線を用いた場合には使用する素線の本数は多くなる。例えば、導体断面積を約0.2mm2とする場合、外径0.08mmの素線を用いる場合には40本の素線が必要になるが、これに対して、外径0.05mmの素線を用いる場合には100本の素線が必要になる。また、例えば、導体断面積を約0.4mm2とする場合、外径0.08mmの素線を用いる場合には80本の素線が必要になるが、外径0.05mmの素線を用いる場合には200本の素線が必要になる。
【0017】
導体21に使用する素線の本数が少ないと十分な耐捻回性向上の効果が得られない可能性があるため、導体21は、素線を100本以上集合撚りして構成されることがより望ましい。
【0018】
(絶縁体22)
絶縁体22は、導体21の周囲を覆うように被覆されている。絶縁体22と導体21とが密着していると、捻回時に導体21(導体21を構成する素線)にかかる負荷が大きくなり耐捻回性が低下してしまうため、絶縁体22は、絶縁体22に対して導体21が絶縁電線2の長手方向に移動可能となるように設けられているとよい。より具体的には、絶縁体22は、所謂チューブ押出によって筒状に押出被覆されるとよい。絶縁体22をチューブ押出により形成することで、絶縁体22の内面と導体21を構成する素線との間には、微小な隙間(素線の外径以下の大きさの隙間)が形成される。
【0019】
また、配線時には複数の対撚りケーブル1が束ねて配線されることが多いため、捻回時に対撚りケーブル1の絶縁体22同士が擦れ合って摩耗が生じるおそれがある。そこで、本実施の形態では、絶縁体22として、耐摩耗性が高いフッ素樹脂を用いている。絶縁体22に用いるフッ素樹脂としては、例えば、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)等を用いることができる。なお、これに限らず、絶縁体22の摩耗の影響が少ない場合には、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンからなる絶縁体22を用いることも可能である。絶縁体22の厚さは、例えば、0.2mm以上0.3mm以下である。
【0020】
(対撚りケーブル1)
対撚りケーブル1は、一対の絶縁電線2を撚り合わせて構成されている。本実施の形態では、両絶縁電線2における導体21の撚り方向と、絶縁電線2を撚り合わせる際の撚り方向(以下、対撚りケーブル1の撚り方向という)とが逆方向とされる。例えば、導体21の撚り方向と対撚りケーブル1の撚り方向とを同方向とした場合、その撚り方向と同じ方向に捻回が加えられたときに、導体21が絞り切られるように断線が生じるおそれがある。本実施の形態のように、導体21の撚り方向と対撚りケーブル1の撚り方向とを逆方向とすることで、捻回時に導体21にかかる負荷を低減し、耐捻回性を向上することが可能になる。なお、導体21の撚り方向とは、導体21の一端から見たときに、他端側から一端側にかけて素線が回転している方向である。また、対撚りケーブル1の撚り方向とは、対撚りケーブル1の一端から見たときに、他端側から一端側にかけて絶縁電線2が回転している方向である。
【0021】
また、対撚りケーブル1では、絶縁電線2を撚り合わせる際の撚りピッチ(以下、対撚りケーブル1の撚りピッチという)Pが、導体21の撚りピッチよりも大きくされる。本実施の形態では、導体21の撚りピッチを10mm以上12mm以下とし、対撚りケーブル1の撚りピッチを22mm程度とした。なお、導体21の撚りピッチとは、任意の素線の周方向位置が同じとなる長手方向位置の導体21の長手方向に沿った間隔である。また、対撚りケーブル1の撚りピッチPとは、任意の絶縁電線2の周方向位置が同じとなる長手方向位置の対撚りケーブル1の長手方向に沿った間隔である。
【0022】
より具体的には、対撚りケーブル1の撚りピッチPは、絶縁電線2の外径の20倍以上とされことが好ましい。例えば、絶縁電線2の外径が1.1mmである場合、対撚りケーブル1の撚りピッチPは22mm以上とされことが好ましい。これにより、撚りピッチPが小さ過ぎて対撚りケーブル1を捻回したときに導体21が絞り切られるように断線してしまうことを抑制できる。なお、導体21の撚りピッチは、導体21の外径の17倍以上20倍以下であることが好ましい。これにより、捻回長が短く、捻回角度が大きい捻回条件で捻回させた場合であっても、導体21が断線しにくくなる。
【0023】
(多心ケーブル)
図2は、本実施の形態に係る多心ケーブルの長手方向に垂直な断面を示す断面図である。
図2に示すように、多心ケーブル10は、対撚りケーブル1を複数撚り合わせた集合体11と、集合体11の周囲に螺旋状に巻き付けられた押さえ巻きテープ12と、押さえ巻きテープ12の周囲を覆うように設けられたシールド層13と、シールド層13の周囲を被覆しているシース14と、を備えている。
【0024】
ここでは、3本(3対)の対撚りケーブル1を撚り合わせて集合体11を構成しているが、集合体11を構成する対撚りケーブル1の本数はこれに限定されない。対間のクロストークを抑制するため、各対撚りケーブル1の撚りピッチPは異なるように構成されることが望ましい。
【0025】
多心ケーブル10に捻回が加えられた際に断線が発生することを抑制するために、対撚りケーブル1の撚り方向と、集合体11の撚り方向とは逆方向とすることが望ましい。なお、集合体11の撚り方向とは、集合体11の一端から見たときに、他端側から一端側にかけて対撚りケーブル1が回転している方向である。
【0026】
また、捻回時に各対撚りケーブル1にかかる負荷を抑制するために、集合体11の撚りピッチは、対撚りケーブル1の撚りピッチPよりも大きくすることが望ましい。より具体的には、集合体11の撚りピッチは、対撚りケーブル1の外径(絶縁電線2の外径の2倍)の25倍以上30倍以下とすることが望ましい。なお、集合体11の撚りピッチとは、任意の対撚りケーブル1の周方向位置が同じとなる長手方向位置の集合体11の長手方向に沿った間隔である。
【0027】
押さえ巻きテープ12は、集合体11の形状を維持するためのものであり、例えば、紙や不織布、あるいは樹脂からなるテープ状の部材を用いることができる。
【0028】
シールド層13は、外部からのノイズを遮蔽するためのものであり、例えば、押さえ巻きテープ12の周囲に金属編組を編み合わせた編組シールドを設けたり、樹脂テープの一方の面に銅やアルミニウム等からなる金属層を設けた金属テープをらせん状に巻き付けたり、あるいは、編組シールドと金属テープとを併用して構成される。また、シールド層13として編組シールドを用いる場合、銅箔糸を編み合わせて編組シールドを構成してもよい。
【0029】
シース14は、集合体11やシールド層13を保護するためのものであり、例えばポリエチレン等の絶縁性の樹脂からなる。
図2では示していないが、各対撚りケーブル1それぞれを覆うように、内部シースやシールド層を設けてもよい。ただし、この場合、多心ケーブル10の外径が大きくなるため、多心ケーブル10を細径に維持するためには、本実施の形態のように、核対撚りケーブル1に個別に内部シースやシールド層を設けないことが望ましい。
【0030】
なお、本実施の形態では、集合体11の周囲に、押さえ巻きテープ12、シールド層13、及びシース14を設けた場合について説明したが、
図3に示のように、押さえ巻きテープ12、シールド層13、及びシース14を省略し、集合体11のみで多心ケーブル10を構成してもよい。すなわち、多心ケーブル10は、複数本の対撚りケーブル1が集合撚りされているだけの構造であってもよい。この場合、捻回や屈曲を行う部分の周囲を覆うように、保護部材(例えば、熱収縮チューブや樹脂テープなど)を設けることが望ましい。
【0031】
(捻回試験)
実施例として
図1の対撚りケーブル1を作製し、その耐捻回性を評価するために捻回試験を行った。実施例では、外径0.05mmの錫入り銅合金からなる素線を100本集合撚りして外径0.58mm(導体断面積0.20mm
2)の導体21を形成し、導体21の周囲にETFEをチューブ押出により押出被覆して絶縁体22を形成した一対の絶縁電線2を用い、一対の絶縁電線2を撚り合わせて対撚りケーブル1を構成した。また、導体21の撚り方向と対撚りケーブル1の撚り方向とを逆方向にした。
【0032】
捻回試験では、
図4に示すように、対撚りケーブル1の一端部を固定部31にて固定し、固定部31から所定の捻回長Lの位置に設けた捻回部32を所定の捻回角度で捻回することを繰り返し、初期の導体抵抗に対する導体抵抗の上昇率が20%を超えた時点で断線が生じたと判断した。500万回以上でも断線しない場合を合格、500万回未満で断線した場合を不合格とした。ここでは、小型の産業用ロボットへの適用を考慮して、捻回長Lを120mmとすると共に、捻回角度を±360度とし、+360度から-360度までの捻回を1サイクルとして60サイクル/minの捻回速度で捻回試験を行った。実施例の対撚りケーブル1の諸元及び捻回試験の結果を併せて表1に示す。
【0033】
なお、導体抵抗の測定は、捻回部32側に配置される対撚りケーブル1の先端を電気的に接続するように結線し、固定部31側に配置される対撚りケーブル1の先端に所定の電圧を一定で印加する。捻回試験を行う前の状態で測定した導体抵抗を初期の導体抵抗とした。また、固定部31側に配置される対撚りケーブル1の先端に所定の電圧を一定で印加した状態で捻回試験を行い、捻回試験中に測定した導体抵抗を用いて、初期の導体抵抗に対する導体抵抗の上昇率を算出した。
【0034】
また、外径0.08mmの素線を40本集合撚りして導体(導体断面積0.20mm2)を構成した以外は実施例の対撚りケーブル1と同じ構成の比較例の対撚りケーブルを作製し、同様に捻回試験を行った。比較例の対撚りケーブルの諸元及び捻回試験の結果を併せて表1に示す。
【0035】
【0036】
表1に示すように、比較例の対撚りケーブルでは130万回で断線が生じた(初期の導体抵抗に対する導体抵抗の上昇率が20%を超えた)。これに対して実施例の対撚りケーブル1では、500万回の捻回で断線が生じず、さらに500万回捻回した時点での導体抵抗の上昇率は1%以下と、比較例に対して耐捻回性が大幅に向上していることが確認された。
【0037】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明したように、本実施の形態に係る対撚りケーブル1では、導体21が、銅合金線からなる素線を集合撚りして構成され、その導体断面積が0.4mm2以下であり、素線の外径が0.05mm以下である。
【0038】
このように構成することで、捻回長が短く、かつ捻回角度が大きいといった厳しい捻回条件においても、断線しにくい耐捻回性の高い対撚りケーブル1を実現でき、小型の産業用ロボットの捻回部を介した配線に好適な対撚りケーブル1を実現できる。また、捻回長が比較的長く捻回角度が比較的小さい場合には、従来と比較してより寿命を長くすることが可能になる。さらに、細径の素線を多数集合撚りして導体21を構成しているため、対撚りケーブル1を曲げやすくなる。
【0039】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0040】
[1]導体(21)と該導体(21)を被覆している絶縁体(22)とを有する絶縁電線(2)を撚り合わせた対撚りケーブル(1)であって、前記導体(21)は、銅合金線からなる素線を集合撚りして構成され、その導体断面積が0.4mm2以下であり、前記素線の外径が0.05mm以下である、対撚りケーブル(1)。
【0041】
[2]前記導体(21)は、前記素線を100本以上集合撚りして構成されている、[1]に記載の対撚りケーブル(1)。
【0042】
[3]前記導体(21)の撚り方向と、前記絶縁電線(2)を撚り合わせる際の撚り方向とが逆方向である、[1]または[2]に記載の対撚りケーブル(1)。
【0043】
[4]前記絶縁電線(2)を撚り合わせる際の撚りピッチが、前記絶縁電線(2)の外径の20倍以上である、[1]乃至[3]の何れか1項に記載の対撚りケーブル(1)。
【0044】
[5]前記絶縁体(22)が、フッ素樹脂からなる、[1]乃至[4]の何れか1項に記載の対撚りケーブル(1)。
【0045】
[6]前記絶縁体(22)は、前記絶縁体(22)に対して前記導体(21)が前記絶縁電線(2)の長手方向に移動可能にとなるように設けられている、[1]乃至[5]の何れか1項に記載の対撚りケーブル(1)。
【0046】
[7]前記素線は、伸びが5%以上であり、引張強さが340MPa以上である、[1]乃至[6]の何れか1項に記載の対撚りケーブル(1)。
【0047】
[8][1]乃至[7]の何れか1項に記載の対撚りケーブル(1)を複数撚り合わせた集合体(11)を備えた、多心ケーブル(10)。
【0048】
[9]前記対撚りケーブル(1)において前記絶縁電線(2)を撚り合わせる際の撚り方向と、前記集合体(11)の撚り方向とが逆方向である、[8]に記載の多心ケーブル(10)。
【0049】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記に記載した実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0050】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態では、一例として外径0.05mmの素線を100本集合撚りして導体21を構成したが、素線の外径や本数はこれに限定されない。耐捻回性をさらに向上させる必要がある場合には、より細径の素線をより多い本数用いればよく、例えば、外径0.03mm以下の素線を280本以上集合撚りして導体21を構成することで、さらなる耐捻回性の向上が図れる。
【符号の説明】
【0051】
1…対撚りケーブル
2…絶縁電線
10…多心ケーブル
11…集合体
12…押さえ巻きテープ
13…シールド層
14…シース
21…導体
22…絶縁体