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  • 特許-ポリエステルフィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ポリエステルフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/36 20060101AFI20230822BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230822BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230822BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B27/00 L
B32B27/20 A
H05K9/00 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020503558
(86)(22)【出願日】2019-02-27
(86)【国際出願番号】 JP2019007506
(87)【国際公開番号】W WO2019168008
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2018033769
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 慧美
(72)【発明者】
【氏名】棟 泰人
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 泰史
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-181978(JP,A)
【文献】特開2011-140542(JP,A)
【文献】特開平08-169096(JP,A)
【文献】特開2014-024341(JP,A)
【文献】特開2001-293835(JP,A)
【文献】特開2015-066805(JP,A)
【文献】特開2014-210906(JP,A)
【文献】特開2017-035888(JP,A)
【文献】特開2017-71107(JP,A)
【文献】特開2015-185659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
H05K9/00
B29C53/00-53/84;57/00-59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層の片面に、平均粒径3.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Aを備え、基材層の他方の片面に、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有せず、平均粒径2.0μm未満の粒子を含有する粒子含有層Bを備えたポリエステルフィルム基材を有し、前記粒子含有層Aの表面に離型層を備えたポリエステルフィルムであって、
前記離型層は、離型剤及び架橋剤を含有し、前記離型層を形成する離型層形成組成物中に前記架橋剤が占める割合は、当該離型層形成組成物の不揮発成分中の40質量%以下であり、
当該離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.4μm~2.0μmである、電磁波シールド部材の表面賦形用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記平均粒径2.0μm未満の粒子は、金属化合物粒子である、請求項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項3】
ポリエステルフィルムの表面を対象物表面に当接してプレス圧着し、当該ポリエステルフィルムを剥離することで、当該対象物表面に、前記ポリエステルフィルムの表面状態を転写する用途に用いる、請求項1又は2に記載のポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ポリエステルフィルムは、透過濃度OD値が0.10以上であることを特徴とする請求項の何れか一項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記離型層側表面の光沢度が30%以下であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項6】
平均粒径3.0μm以上の前記粒子が有機粒子であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項7】
平均粒径3.0μm以上の前記粒子がシリカ粒子であることを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載のポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記離型層は、架橋剤由来の架橋構造を有することを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載のポリエステルフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マット調の外観を転写することができる、離形性能を備えたポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートに代表されるポリエステルフィルムは、機械的強度、寸法安定性、平坦性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等に優れた特性を有し、コストパフォーマンスに優れるため、各種用途に使用されている。
【0003】
ポリエステルフィルムの用途の一例として、電磁波シールド用途を挙げることができる。プラズマディスプレイ(PDP)などでは、電磁波シールドフィルムすなわち導電性フィルムを表示パネルの前面に装着することが行われており、この電磁波シールドフィルムとして、ポリエステルフィルムに網目状の金属の細線を設けた導電性フィルムが一般的に使用されている。
【0004】
この種の電磁波シールドフィルムとして、支持フィルム上に電磁波シールドフィルムを形成し、これを各種機器表面に高温プレス圧着して電磁波シールドフィルムを転写することが行われている。
このような転写型の電磁波シールドフィルムの支持フィルムとしては、従来は、平坦なポリエステルフィルムが一般的に用いられてきた。しかし、製品の外観を艶消し外観に仕上げるため、表面をマット調に仕上げたポリエステルフィルムを当該支持フィルムに使用して、このマット調表面を製品に転写することが提案されている。
【0005】
例えば特許文献1には、無機粒子および/または有機粒子を、ポリエステルA層全体を100質量%として0.1質量%以上10質量%以下含有するポリエステルA層を最外層に有する基材フィルムのA層にメラミン樹脂を主成分とする塗膜層が積層されてなり、該塗膜層が積層された面の光沢度が30以下である離型用二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
【0006】
特許文献2には、基材層と少なくとも一方の表面に粒子含有の艶消し層とを有する積層ポリエステルフィルムであって、該艶消し層表面の平均表面粗さ(Ra)が400~1000nm、10点平均粗さ(Rz)が4000~8000nmであり、該表面における光沢度(G60)が6~20であり、かつ、表面の突起のボイド破れ率が20%以下であることを特徴とする、二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
【0007】
特許文献3には、無機粒子および/または有機粒子を含有するポリエステルA層を少なくとも一方の最外層に有し、該最外層のポリエステルA層表面の平均表面粗さRaが0.38μm以上1.0μm以下であり、ポリエステルA層表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmが10μm以上80μm以下である、離型用二軸配向ポリエステルフィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-66805号公報
【文献】特開2016-97522号公報
【文献】特開2016-175229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、ポリエステルフィルムの表面を粗面化してマット調に形成することにより、当該ポリエステルフィルムの表面を対象物表面に当接してプレス圧着し、その後、当該ポリエステルフィルムを剥離することで、当該対象物表面に前記粗面化した表面状態を転写してマット調の外観に仕上げることができる。
【0010】
従来提案されているこの種の転写用ポリエステルフィルムは、当該ポリエステルフィルムの表面に離型フィルムを積層したり、離型剤を塗布したりして、別途離型層を形成する必要があったため、離型層を形成した際にポリエステルフィルム表面の粗面化状態が平滑化されて、対象物表面に期待するマット感を付与することができない場合があった。
また、離型性能を備えたポリエステルフィルムとしては、視認性言い換えれば識別性に優れていることが期待されることもあった。
【0011】
そこで本発明の第1の目的は、粗面化されたフィルム表面を有し、その表面状態を転写する用途に用いるポリエステルフィルムに関し、転写時のポリエステルフィルムの視認性言い換えれば識別性に優れ、しかも、離型層を形成しても、前記粗面化状態が平滑化されることなく、期待するマット感を対象物に付与することができる、新たなポリエステルフィルムを提供することにある。
本発明の第2の目的は、ポリエステルフィルム全体のカール(巻き癖)を防ぎつつ、ハンドリング性を高めて、さらには、ポリエステルフィルムを積層する製品との密着性を高めることができる、新たなポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記第1の目的を達成するため、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層を備えたポリエステルフィルム基材を有し、透過濃度OD値が0.25以上であることを特徴とする第1のポリエステルフィルムを提案する。
本発明はまた、同じく上記第1の目的を達成するため、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層を備えたポリエステルフィルム基材の前記粒子含有層表面に離型層を形成してなる構成を備え、透過濃度OD値が0.10以上であることを特徴とする第2のポリエステルフィルムを提案する。
【0013】
本発明は、上記第2の目的を達成するため、基材層の片面に、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Aを備え、基材層の他方の片面に、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Bを備えたポリエステルフィルム基材を有し、平均粒径2.0μm以上の粒子の含有量は、粒子含有層Aよりも粒子含有層Bの方が少ないことを特徴とする第3のポリエステルフィルムを提案する。
【発明の効果】
【0014】
本発明が提案する第1及び第2のポリエステルフィルムは、離型層を備えた状態で提供することができるから、離型層を形成した際にポリエステルフィルム表面の粗面化状態が平滑化されることがなく、期待するマット感を対象物に付与することができる。また、ポリエステルフィルムの透過濃度OD値が0.10以上又は0.25以上であるから、転写時のポリエステルフィルムの視認性言い換えれば識別性に優れたものである。
【0015】
本発明が提案する第3のポリエステルフィルムは、基材層の両面に粒子含有層A、Bを備えたポリエステルフィルム基材を有し、平均粒径2.0μm以上の粒子の含有量が、粒子含有層Aよりも粒子含有層Bの方が少ないことを特徴とするポリエステルフィルムは、基材層の両面に粒子含有層A、Bを備えているから、ポリエステルフィルム全体のカールを防ぐことができる。しかも、粒子含有層Aの表面側で対象物表面へのマット感の付与する一方、粒子含有層Bについては、粒子の含有量を粒子含有層Aよりも少なくすることで、表面加工適性を確保することができ、粒子含有層Bの表面に所望の層を積層し易くすることができるから、例えば積層する製品との密着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態の一例に係るポリエステルフィルムの構成例を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、実施の形態例に基づいて本発明を説明する。但し、本発明が次に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0018】
<<本ポリエステルフィルム1>>
本発明の実施形態の一例に係るポリエステルフィルム(「本ポリエステルフィルム1」と称する)は、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Aを備えたポリエステルフィルムである。
本ポリエステルフィルム1は、無延伸フィルム(シート)であっても延伸フィルムであってもよい。中でも、一軸方向又は二軸方向に延伸された延伸フィルムであるのが好ましい。その中でも、力学特性のバランスや平面性に優れる点で、二軸延伸フィルムであるのが好ましい。
本ポリエステルフィルム1は、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Aを備えたポリエステルフィルムのみからなるものであっても、該ポリエステルフィルムに他の層が積層してなるものであってもよい。
【0019】
<<本ポリエステルフィルム10>>
本発明の実施形態の別の一例に係るポリエステルフィルム(「本ポリエステルフィルム10」と称する)は、ポリエステルフィルム基材の片面側又は両面側に離型層を形成してなる構成を備えたポリエステルフィルムである。
【0020】
本ポリエステルフィルム10の積層構成としては、ポリエステルフィルム基材の片面側に離型層を形成し、他方の片面側はポリエステルフィルム基材の表面をそのままにした構成であってもよいし、当該他方の片面側に他の層を形成してなる構成であってもよい。また、ポリエステルフィルム基材の両面側に離型層を形成してなる構成であってもよい。
さらにまた、ポリエステルフィルム基材と離型層との間に他の層を設けてもよい。
但し、当該離型層は、少なくとも一方の最表面であることが好ましい。
【0021】
<ポリエステルフィルム基材>
ポリエステルフィルム基材は、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層Aを備えたものであるのが好ましい。すなわち、前記本ポリエステルフィルム1をポリエステルフィルム基材として使用するのが好ましい。よって、以下のポリエステルフィルム基材についての説明は、前記本ポリエステルフィルム1の説明でもある。
【0022】
ポリエステルフィルム基材の構成としては、粒子含有層Aのみからなるものであってもよいし、基材層の片面側又は両面側に粒子含有層Aを備えたものであってもよい。後者の具体例としては、例えば基材層の両面側に粒子含有層Aを備えたものであってもよいし、基材層の一面側に粒子含有層Aを備え、基材層の他面側には粒子含有層Aとは異なる粒子含有層Bを形成したものであってもよいし、基材層の一面側に粒子含有層Aを備え、基材層の他面側には層を形成しないものであってもよいし、また、基材層の一面側に粒子含有層Aを備え、基材層の他面側には粒子を含有しない層を形成したものであってもよい。
中でも、ポリエステルフィルム基材は、基材層の一面側に粒子含有層Aを備え、基材層の他面側には粒子含有層Aとは異なる粒子含有層Bを形成した構成が好ましいため、この構成については後で詳述する。
【0023】
ポリエステルフィルム基材は、透過濃度OD値が0.10以上であるのが好ましい。
透過濃度OD値が0.10以上であるということは、不透明さが大きい、言い換えれば白色度が大きいことを意味しており、より白色度が大きい。
かかる観点から、0.10~1.0であるのがより好ましく、中でも0.15以上或いは0.90以下、その中でも0.20以上或いは0.80以下、その中でも0.25以上であるのがさらに好ましい。
ポリエステルフィルム基材の透過濃度OD値が上記範囲であれば、視認性言い換えれば識別性が良好であるので、転写対象物に粗面を転写後に、本ポリエステルフィルム10を剥離することが容易となる。
【0024】
ポリエステルフィルム基材の透過濃度OD値を0.10以上にする方法としては、例えば、白色顔料を含有させたり、基材の主成分樹脂との屈折率差が大きな材料を含有させたり、微粒子を含有するフィルムを延伸してフィルム基材中にボイドを形成させたりするなど、公知の方法を採用可能である。
中でも、白色顔料、例えば金属化合物粒子を含有させて白色化を図る場合、例えば前記基材層、前記粒子含有層、及び、前記基材層の前記粒子含有層とは反対側に設けた層のうちの何れかの層又はこれらのうちの2層以上に、金属化合物粒子を含有させて白色化を図ることができる。この際、上記の白色顔料としては、後述する平均粒径2.0μm未満の粒子Yを例示することができる。
なお、ポリエステルフィルム基材の透過濃度OD値よりも、本ポリエステルフィルム10の透過濃度OD値の方が低くなることは当然である。
【0025】
(各層の主成分樹脂としてのポリエステル)
ポリエステルフィルム基材を構成する層、例えば上記の基材層、粒子含有層A、粒子含有層B、さらなる他の層は、ポリエステルを主成分樹脂とする層であるのが好ましい。
ここで、「主成分樹脂」とは、各層を構成する樹脂成分のうち最も含有割合の多い樹脂の意味である。
【0026】
上記ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものであればよい。
前記芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸などを挙げることができ、他方の脂肪族グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。
【0027】
また、上記ポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。かかる共重合ポリエステルのジカルボン酸成分として、例えばイソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸およびオキシカルボン酸等から選ばれる一種または二種以上を挙げることができ、他方のグリコール成分として、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等から選ばれる一種または二種以上を挙げることができる。効果的にマット感を付与するという観点から、含有される第三成分がイソフタル酸であることが好ましい。
共重合ポリエステルは、含有される第三成分は30モル%以下であるのが好ましく、中でも5モル%以上或いは30モル%以下、その中でも25モル%以下、その中でも特に7モル%以上或いは22モル%以下であるのがさらに好ましい。この範囲にあることにより、製膜安定性を維持しつつ、効果的にマット感を付与することができる。
【0028】
代表的なポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート(PEN)等を例示することができる。
【0029】
(基材層)
ポリエステルフィルム基材の基材層は、ポリエステルフィルム基材を構成する各層の中でも最も厚い層であり、上記ポリエステルを主成分樹脂としていれば、その組成は任意である。
【0030】
基材層は、粒子を含有する層を備えたものであってもよいし、粒子を含有する層のみからなるものであってもよい。但し、コストの観点から、後述する有機粒子、無機粒子などの粒子を含有しない層であるのが好ましい。
【0031】
基材層の厚さは、本ポリエステルフィルム10のカールを防止するという観点から、ポリエステルフィルム基材厚さの60~99%であるのが好ましく、中でも65%以上或いは99%以下、その中でも70%以上或いは99%以下であるのがさらに好ましい。この範囲にあることにより、基材層自体にコシが出るために本ポリエステルフィルム10のカールが発生しにくくなる。
【0032】
(粒子含有層A)
粒子含有層Aは、平均粒径2.0μm以上の粒子Xを含有する層であり、その表面には後述する離型層が設けられることが好ましい。
【0033】
粒子含有層Aが含有する粒子Xは平均粒径2.0μm以上であるのが好ましい。
粒子含有層Aが平均粒径2.0μm以上の粒子Xを含有することにより、粒子含有層Aの表面を粗面化することができ、マット調とすることができる。但し、粒子Xが大き過ぎると、フィルム製造時のポリエステル押出工程におけるフィルターの圧力上昇が大きくなり生産性が低下する可能性があり、また、粒子Xが粒子含有層Aから脱落するおそれがある。
よって、粒子Xの平均粒径は2.0μm以上であるのが好ましく、中でも10.0μm以下、その中でも3.0μm以上或いは9.0μm以下、その中でも4.0μm以上或いは8.0μm以下であるのがさらに好ましい。
【0034】
なお、粒子Xの平均粒径は、粒子が粉体の場合には、遠心沈降式粒度分布測定装置(例えば、株式会社島津製作所社製、SA-CP3型)を用いて粉体を測定した等価球形分布における積算体積分率50%の粒径(d50)を平均粒径とすることができる。フィルム又は層中の粒子の平均粒径については、10個以上の粒子Xを走査型電子顕微鏡(SEM)観察して粒子Xの直径を測定し、その平均値として求めることができる。その際、非球状粒子の場合は、最長径と最短径の平均値を各粒子Xの直径として測定することができる。後述する粒子Yについても同様である。
【0035】
粒子Xの形状は任意である。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれでもよい。但し、均一なマット面を得られるという観点から、球状であるのが好ましい。
粒子Xの硬度、比重、色等については特に制限はないし、種類の異なる2種類以上を併用してもよい。
【0036】
上記平均粒径2.0μm以上の粒子Xは、マット感付与可能な粒子であれば特に限定されるものではない。例えば無機粒子であっても、有機粒子であっても、架橋高分子粒子であってもよい。
無機粒子は、延伸した際にフィルムにボイドを形成することがあり、視認性向上のために白色顔料を添加する必要がないという観点から好ましく、有機粒子はボイドが生じにくいためにフィルムの強度が下がらないという観点で好ましい。
【0037】
無機粒子としては、例えばシリカ、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、リン酸リチウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデンなどを挙げることができる。
なお、上記シリカ粒子は、二酸化ケイ素(SiO)の他にも、例えば含水二酸化ケイ素などを含んでいてもよい。
【0038】
有機粒子としては、例えばアクリル樹脂、スチレン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等を挙げることができる。
中でも、メタクリル酸メチル又はスチレン又は両方を共重合成分とする樹脂からなる粒子は、特にPETフィルムとの相性が良いため、好ましい。
【0039】
架橋高分子粒子としては、例えばジビニルベンゼン、スチレン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸またはメタクリル酸のビニル系モノマーの単独または共重合体が挙げられる。その他ポリテトラフルオロエチレン、ベンゾグアナミン樹脂、熱硬化エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂などの架橋性高分子粒子を用いてもよい。
【0040】
粒子含有層Aにおける粒子Xの含有量は、粒子含有層Aの表面を好適に粗面化することができ、しかも、フィルム延伸時に破断等が生じないようにするなどの観点から、0.1~20質量%であるのが好ましく、その中でも1質量%以上或いは18質量%以下、その中でも2質量%以上或いは15質量%以下、その中でも3質量%以上或いは10質量%以下であるのがさらに好ましい。
また、粒子含有層Aは後述する粒子Yを含有してもよい。
【0041】
粒子含有層Aの厚さは、1.0~20μmであるのが好ましく、中でも2.0μm以上或いは20μm以下、その中でも3.0μm以上或いは20μm以下、その中でも特に4.0μm以上或いは15μm以下であるのがさらに好ましい。
粒子含有層Aの厚さを1.0μm以上とすることにより、効果的にマット感を付与することができる。また、粒子含有層Aの厚さが20μmを超えると、マット感の改善効果は低くなり、粒子Xに起因するフィルム表面の粗面化が低減するおそれがある。
【0042】
粒子含有層Aの厚さと粒子Xの平均粒径の関係は、フィルム表面の粗面化および粒子の脱落抑制の観点から、(粒子Xの平均粒径)/(粒子含有層Aの厚さ)が0.1以上、5.0以下が好ましく、0.3以上、4.0以下がより好ましく、0.5以上、3.0以下が特に好ましい。
【0043】
(粒子含有層B)
前述したように、基材層の一面側に粒子含有層Aを備え、基材層の他面側には、粒子含有層Aとは異なる粒子含有層Bを形成することができる。粒子含有層Bの表面には、後述する離型層が設けられている必要は無いが、離型層を設ける構成を排除するものではない。
【0044】
本ポリエステルフィルム10全体のカールを防ぐことができる点で、粒子含有層Bにおいても、平均粒径2.0μm以上の粒子Xを含有するのが好ましい。
但し、粒子含有層Bの面は、ハンドリング性を好適にする程度に粗面化できればよいから、粒子含有層Aの面ほど粗面化する必要はない。よって、平均粒径2.0μm以上の粒子Xの含有量は粒子含有層Aよりも少なくてよい。粒子含有層Aよりも粒子含有層Bの方が、平均粒径2.0μm以上の粒子Xの含有量が少ないことにより、ポリエステルフィルム10全体のカールを防ぐことができつつ、粒子含有層Aの表面側で対象物表面へマット感を付与する一方、粒子含有層Bの表面に所望の層を積層し易くすることができる。
具体的には、粒子含有層Bが含有する粒子Xの含有量(質量%)は、粒子含有層Aが含有する粒子Xの含有量(質量%)の0.1~100%とするのが好ましく、中でも1%以上或いは95%以下、その中でも5%以上或いは90%以下であるのがさらに好ましく、その中でも10%以上或いは80%以下、その中でも60%以下であるのがさらに好ましい。
【0045】
粒子含有層Bは、本ポリエステルフィルム10を白色化するために、平均粒径2.0μm未満の粒子Yを含有したものであってもよい。
この際、粒子含有層Bは、粒子Xを含有しないで粒子Yを含有してもよいし、粒子Xと共に粒子Yを含有してもよい。
粒子Xと共に粒子Yを含有する場合、粒子Xと粒子Yの含有質量比率は1:99~99:1であるのが好ましく、中でも10:90~90:10、その中でも15:85~85:15であるのがさらに好ましい。
【0046】
粒子Yの形状は任意である。例えば球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれでもよい。但し、凝集による粗大突起を引き起こしにくいという観点から、球状であるのが好ましい。
粒子Yの硬度、比重、色等については特に制限はないし、種類の異なる2種類以上を併用してもよい。
【0047】
粒子Yの平均粒径は、光散乱効果による白色不透明性を付与する観点から、0.05μm~0.50μmであるのが好ましく、中でも0.10μm以上或いは0.45μm以下、その中でも0.20μm以上或いは0.40μm以下、その中でも0.25μm以上であるのがさらに好ましい。
【0048】
粒子Yとしては、光散乱効果による白色不透明性を付与する観点から、金属化合物粒子であるのが好ましい。
金属化合物粒子としては、例えば酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等を挙げることができ、中でも酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属化合物粒子を挙げることができる。
なお、粒子含有層Bにおいて、粒子Xに相当する粒子と粒子Yに相当する粒子が同一の材質である場合は、原料としては異なる平均粒径を有する別個の粒子であるものの、混合(配合)すると、それらの中間に平均粒径を有する1種の粒子にほかならない。そのような場合は、混合後の平均粒径をもって粒子X又は粒子Yの何れかとして認識するものとする。
【0049】
粒子含有層Bの厚さは、本ポリエステルフィルム10のカールを防止する観点から、粒子含有層Aの厚さと同様の範囲であるのが好ましい。かかる観点から、粒子含有層Bの厚さも1.0~20μmであるのが好ましく、中でも2.0μm以上或いは18μm以下、その中でも3.0μm以上或いは17μm以下、その中でも特に4.0μm以上或いは15μm以下であるのがさらに好ましい。
【0050】
粒子含有層Aと粒子含有層Bの厚さの比は、本ポリエステルフィルム10のカールを防止する観点から、(粒子含有層Aの厚さ)/(粒子含有層Bの厚さ)が0.1以上、10以下が好ましく、中でも0.2以上、或いは5.0以下がより好ましく、その中でも0.5以上、或いは2.0以下が特に好ましい。
【0051】
(その他の成分)
ポリエステルフィルム基材を構成する各層には、必要に応じて従来公知の耐候剤、耐光剤、遮光剤、酸化防止剤、熱安定剤、潤滑剤、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料、顔料等を添加することができる。また用途によっては、紫外線吸収剤、特にベンゾオキサジノン系紫外線吸収剤等を含有させてもよい。
【0052】
<離型層>
本ポリエステルフィルム10は、ポリエステルフィルム基材の前記粒子含有層A表面に離型層を形成してなる構成を備えたものであることが好ましい。
【0053】
離型層は、架橋剤由来の架橋構造を有するのが好ましい。このような架橋構造を有していれば、優れた硬度を有することができるから、本ポリエステルフィルム10を対象物にプレス圧着した際に十分に耐えることができる。
【0054】
離型層の厚さは、離型性を有しつつ、ポリエステルフィルム基材表面の粗さを平滑化しない(低減させない)ようにする観点から、0.001~1μmであるのが好ましく、中でも0.002μm以上或いは0.5μm以下、その中でも0.005μm以上或いは0.2μm以下、その中でも0.008μm以上或いは0.15μm以下、その中でも0.01μm以上或いは0.1μm以下、その中でも特に0.01μm以上或いは0.08μm以下であるのがさらに好ましい。
離型層の厚さは、前記離型層を設ける表面の平均表面粗さ(Ra)の0.1~100%、中でも0.2%以上或いは50%以下、その中でも1.0%以上或いは25%以下であるのが好ましい。
【0055】
(離型層の形成)
離型層は、前記粒子含有層Aの表面、すなわち、粗面化された表面に、極めて薄い薄膜として設けるのが好ましいため、塗布延伸法(インラインコーティング)を採用して形成するのが好ましい。但し、この方法に限定するものではない。
【0056】
塗布延伸法としては、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前に、「離型層形成組成物」を粒子含有層Aの表面にコーティング処理するのが好ましい。このようにすれば、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0057】
離型層形成組成物からなる塗布液を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコート、ブレードコート、ロッドコート、バーコート、ナイフコート、スクイズコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファロールコート、グラビアコート、キスロールコート、キャストコート、スプレーコート、カーテンコート、カレンダコート、押出コート等従来公知の塗布方法を用いることができる。
【0058】
より具体的には、例えば、逐次二軸延伸においては、特に長手方向(縦方向)に延伸された一軸延伸フィルムに、離型層形成組成物からなる塗布液をコーティングした後に横方向に延伸してポリエステルフィルムを形成する方法が優れている。かかる方法によれば、ポリエステルフィルムの製膜と離型層の形成を同時に行うことができるため製造コスト上のメリットがあり、また、コーティング後に延伸を行うために、離型層の厚みを延伸倍率により変化させることもでき、オフラインコーティングに比べ、薄膜コーティングをより容易に行うことができる。
【0059】
また、延伸前にポリエステルフィルム上に離型層を設けることにより、離型層をポリエステルフィルムと共に延伸することができ、それにより離型層をポリエステルフィルムに強固に密着させることができる。さらに、二軸延伸ポリエステルフィルムの製造において、クリップ等によりフィルム端部を把持しつつ延伸することで、フィルムを縦および横方向に拘束することができ、熱固定工程において、しわ等が入らず平面性を維持したまま高温をかけることができる。
それゆえ、コーティング後に施される熱処理が他の方法では達成されない高温とすることができるために、離型層の造膜性が向上し、離型層とポリエステルフィルムをより強固に密着させることができ、さらには、強固な離型層とすることができる。
【0060】
また、離型層は、オフラインコーティングあるいはインラインコーティングによる形成に係わらず、必要に応じて熱処理と紫外線照射等の活性エネルギー線照射とを併用してもよい。離型層を形成する塗布液のポリエステルフィルムへの塗布性、接着性を改良するため、塗布前にポリエステルフィルムに化学処理やコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理、薬品処理、溶剤処理等の表面処理を施してもよい。
【0061】
上記離型層形成組成物すなわち塗布液としては、離型剤及びバインダーを含有する樹脂組成物を挙げることができる。
【0062】
上記離型層形成組成物に配合する「離型剤」としては、特に制限はなく、従来公知の離型剤を使用することが可能である。例えば長鎖アルキル基含有化合物、フッ素化合物、シリコーン化合物、ワックス等を挙げることができる。
中でも、光学用途に適用しても汚染の可能性が少ないという観点から長鎖アルキル基含有化合物、ワックスが好ましく、加熱しても剥離性が顕著に低下することがないという観点から、ワックスが好ましい。
【0063】
上記ワックスとしては、天然ワックス、合成ワックス、変性ワックスなどを挙げることができる。
天然ワックスとは、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、石油ワックスである。
植物系ワックスとしては、キャンデリラワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ロウ、ホホバ油等が挙げられる。
動物系ワックスとしては、みつろう、ラノリン、鯨ロウ等が挙げられる。鉱物系ワックスとしてはモンタンワックス、オゾケライト、セレシン等が挙げられる。
石油ワックスとしてはパラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等が挙げられる。
【0064】
合成ワックスとしては、例えば、合成炭化水素、変性ワックス、水素化ワックス、脂肪酸、酸アミド、アミン、イミド、エステル、ケトンやフィッシャー・トロプシュワックス(別名サゾールワックス)、ポリエチレンワックスなどを挙げることができる。このほかに比較的低分子量の高分子(具体的には数平均分子量500から20000の高分子)である以下のポリマー、すなわち、ポリプロピレン、エチレン・アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールのブロックまたはグラフト結合体等を挙げることができる。
【0065】
変性ワックスとしては、例えばモンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等を挙げることができる。ここでの誘導体とは、精製、酸化、エステル化、ケン化のいずれかの処理、またはそれらの組み合わせによって得られる化合物である。水素化ワックスとしては硬化ひまし油、および硬化ひまし油誘導体を挙げることができる。
【0066】
中でも、ブロッキング等の特性が安定するという観点において、離型層における離型剤としては合成ワックスが好ましく、その中でもポリエチレンワックスがより好ましく、酸化ポリエチレンワックスがさらに好ましい。
合成ワックスの数平均分子量は、ブロッキング等の特性の安定性、取扱い性の観点から、通常500~30000、好ましくは1000~15000、より好ましくは2000~8000である。
【0067】
また、離型層を形成する際、架橋などのために加熱することを考慮すると、上記ワックスの中でも、融点または軟化点が80℃以上、特に110℃以上のものが好ましい。ワックスの融点または軟化点の上限は限定されず、通常300℃以下である。
【0068】
離型層形成組成物中の離型剤の割合は、不揮発成分中の1~50質量%であるのが好ましく、中でも5質量%以上或いは40質量%以下、その中でも10質量%以上或いは30質量%以下であるのがさらに好ましい。
離型層形成組成物中の離型剤の割合が上記範囲であることにより、良好な離型性を維持しながら、塗膜強度を高めることができる。
【0069】
離型層の強度を上げるため、さらには濡れ性向上のため、離型層形成組成物には架橋剤を含有することが好ましい。離型層形成組成物に架橋剤を含有する場合、形成後の離型層は架橋剤に由来する架橋構造を有することになる。
また、離型層の強度を上げため、さらにはポリエステルフィルム基材と離型層の密着性向上のため、離型層形成組成物にはバインダーを含有することが好ましい。
【0070】
前記架橋剤としては、従来公知の材料を使用することができる。例えばオキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物、ヒドラジド化合物、アジリジン化合物等が挙げられる。それらの中でも、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、メラミン化合物、カルボジイミド系化合物、シランカップリング化合物が好ましい。より離型層の強度を強化するためには、メラミン化合物やオキサゾリン化合物が好ましく、基材のフィルムとの密着性を向上させるためには、オキサゾリン化合物、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド系化合物が好ましく、特にオキサゾリン化合物やイソシアネート系化合物が好ましい。
【0071】
バインダーの具体例としては、アクリル樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。これらの中でも、ポリエステルフィルム基材と離型層の密着性向上という観点において、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0072】
前記アクリル樹脂とは、アクリル系、メタアクリル系のモノマーを含む重合性モノマーからなる重合体である。これらは、単独重合体あるいは共重合体、さらにはアクリル系、メタアクリル系のモノマー以外の重合性モノマーとの共重合体、いずれでも差し支えない。また、それら重合体と他のポリマー(例えばポリエステル、ポリウレタン等)との共重合体も含まれる。例えば、ブロック共重合体、グラフト共重合体である。あるいは、ポリエステル溶液、またはポリエステル分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にポリウレタン溶液、ポリウレタン分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマーの混合物)も含まれる。同様にして他のポリマー溶液、または分散液中で重合性モノマーを重合して得られたポリマー(場合によってはポリマー混合物)も含まれる。また、基材との密着性をより向上させるために、ヒドロキシル基、アミノ基を含有することも可能である。
【0073】
上記重合性モノマーとしては、特に限定はしないが、特に代表的な化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸のような各種カルボキシル基含有モノマー類、およびそれらの塩;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、モノブチルヒドロキルフマレート、モノブチルヒドロキシイタコネートのような各種の水酸基含有モノマー類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートのような各種の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミドまたは(メタ)アクリロニトリル等のような種々の窒素含有化合物;スチレン、α-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエンのような各種スチレン誘導体、プロピオン酸ビニルのような各種のビニルエステル類;γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のような種々の珪素含有重合性モノマー類;燐含有ビニル系モノマー類;塩化ビニル、塩化ビリデンのような各種のハロゲン化ビニル類;ブタジエンのような各種共役ジエン類が挙げられる。
【0074】
前記アクリル樹脂がヒドロキシル基を含有する場合、アクリル樹脂の水酸基価は、好ましくは2~100mgKOH/g、より好ましくは5~50mgKOH/gである。水酸基価が上記範囲に入る場合は、塗布外観や透明性が良化する。
【0075】
前記ポリビニルアルコールとは、ポリビニルアルコール部位を有する化合物であり、例えば、ポリビニルアルコールに対し、部分的にアセタール化やブチラール化等された変成化合物も含め、従来公知のポリビニルアルコールを使用することができる。ポリビニルアルコールの重合度は特に限定されるものではないが、通常100以上、好ましくは300~40000の範囲である。重合度が100未満の場合、離型層の耐水性が低下する場合がある。また、ポリビニルアルコールのケン化度は特に限定されるものではないが、通常70モル%以上、好ましくは70~99.9モル%の範囲、より好ましくは80~97モル%、特に好ましくは86~95モル%であるポリ酢酸ビニルケン化物が実用上用いられる。
【0076】
前記ポリエステル樹脂とは、主な構成成分として、例えば、下記のような多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物からなるものが挙げられる。すなわち、多価カルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、フタル酸、4,4’-ジフェニルジカルボン酸、2,5-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸および、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-カリウムスルホテレフタル酸、5-ソジウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、グルタル酸、コハク酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびそれらのエステル形成性誘導体などを用いることができ、多価ヒドロキシ化合物としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-プロパンジオ-ル、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオ-ル、2-メチル-1,5-ペンタンジオ-ル、ネオペンチルグリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノ-ル、p-キシリレングリコ-ル、ビスフェノ-ルA-エチレングリコ-ル付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコ-ル、ポリプロピレングリコ-ル、ポリテトラメチレングリコ-ル、ポリテトラメチレンオキシドグリコ-ル、ジメチロ-ルプロピオン酸、グリセリン、トリメチロ-ルプロパン、ジメチロ-ルエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロ-ルプロピオン酸カリウムなどを用いることができる。これらの化合物の中から、それぞれ適宜1つ以上を選択し、常法の重縮合反応によりポリエステル樹脂を合成すればよい。
【0077】
前記ウレタン樹脂とは、ウレタン結合を分子内に有する高分子化合物のことである。通常ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作成される。ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類が挙げられ、これらの化合物は単独で用いても、複数種用いてもよい。
【0078】
前記ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3-ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6-ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3-メチル-1,5-ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0079】
前記ポリエステルポリオール類としては、多価カルボン酸(マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸等)またはそれらの酸無水物と多価アルコール(エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、1,8-オクタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、シクロヘキサンジオール、ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、ジメタノールベンゼン、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、アルキルジアルカノールアミン、ラクトンジオール等)の反応から得られるものが挙げられる。
【0080】
前記ポリエーテルポリオール類としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
【0081】
ウレタン樹脂を得るために使用されるポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’-テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
【0082】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0083】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1 ,8-オクタンジアミン、1 ,9-ノナンジアミン、1 ,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1 ,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0084】
本発明におけるウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の構造中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる離型層の耐水性、透明性に優れており好ましい。
【0085】
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。
【0086】
例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス-(2-ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。かかるポリウレタン樹脂は、塗布後の乾燥工程において中和剤が外れたカルボキシル基を、他の架橋剤による架橋反応点として用いることができる。これにより、塗布前の液の状態での安定性に優れる上、得られる離型層の耐久性、耐溶剤性、耐水性、耐ブロッキング性等をさらに改善することが可能となる。
【0087】
離型層形成組成物中にバインダーが占める割合は、不揮発成分中の20~70質量%であるのが好ましく、中でも30質量%以上或いは65質量%以下、その中でも40質量%以上或いは60質量%以下であるのがさらに好ましい。
架橋剤が占める割合は、不揮発成分中の10~70質量%であるのが好ましく、中でも15質量%以上或いは60質量%以下、その中でも20質量%以上或いは40質量%以下であるのがさらに好ましい。
【0088】
なお、離型層形成組成物からなる塗布液は、水を溶媒とする水性塗布液であっても有機溶剤を主成分とする塗布液であってもよいが、水性塗布液であることが好ましい。
水性塗布液には、少量の有機溶剤を含有していてもよい。
当該有機溶剤としては、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール類;エチルセロソルブ、t-ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;酢酸エチル等のエステル類;メチルエタノールアミン等のアミン類等を例示することができる。これらは単独、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。水性塗布液に、必要に応じてこれらの有機溶剤を適宜選択し、含有させることで、塗布液の安定性、塗布性を良好にすることができる。
【0089】
上記離型層形成組成物には、必要に応じて、ブロッキングや滑り性改良のために、粒子を含有させることも可能である。さらに、機能層に、消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤等を含有させることも可能である。
【0090】
<本ポリエステルフィルム10>
(厚み)
本ポリエステルフィルム10の厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではない。中でも、機械的強度、ハンドリング性および生産性などの点から、1μm~300μmであるのが好ましく、中でも5μm以上或いは125μm以下、その中でも8μm以上或いは100μm以下であることがさらに好ましい。
【0091】
(透過濃度OD値)
本ポリエステルフィルム10は、透過濃度OD値が0.10以上であるのが好ましい。
透過濃度OD値が0.10以上であるということは、不透明さが大きい、言い換えれば白色度が大きいことを意味している。
かかる観点から、本ポリエステルフィルム10の透過濃度OD値は、0.10~1.0であるのがより好ましく、中でも0.15以上或いは0.90以下、その中でも0.20以上或いは0.80以下、その中でも0.25以上、その中でも0.30以上、その中でも0.50以上であるのがさらに好ましい。
本ポリエステルフィルム10の透過濃度OD値が上記範囲であれば、視認性言い換えれば識別性が良好であるので、転写対象物に粗面を転写後に、本ポリエステルフィルム10を剥離することが容易となる。
【0092】
本ポリエステルフィルム10の透過濃度OD値を0.10以上にする方法としては、例えば、ポリエステルフィルム基材又はいずれかの層に白色顔料を含有させたり、ポリエステルフィルム基材の主成分樹脂との屈折率差が大きな材料を当該基材又は粒子含有層に含有させたり、微粒子を含有するフィルムを延伸してポリエステルフィルム基材中にボイドを形成させたりするなど、公知の方法を採用可能である。
中でも、白色顔料、例えば金属化合物粒子を含有させて白色化を図る場合、例えば前記基材層、前記粒子含有層、前記基材層の前記粒子含有層とは反対側に設けた層のうちの何れかの層若しくはこれらのうちの2層以上に金属化合物粒子を含有させて白色化を図ることができる。この際、上記の白色顔料としては、前述の平均粒径2.0μm未満の粒子Yを例示することができる。
【0093】
(フィルムの表面粗さ)
本ポリエステルフィルム10の平均表面粗さ(Ra)は0.05μm~2.0μmであるのが好ましい。
ここで、本ポリエステルフィルム10の平均表面粗さ(Ra)とは、ポリエステルフィルム基材の一方側に離型層を形成した場合はその表面を意味し、ポリエステルフィルム基材の両方の側にそれぞれ離型層を形成した場合はその両表面を意味する。
本ポリエステルフィルム10表面の平均表面粗さ(Ra)が上記範囲であれば、マット感を表現することができ、この表面を、対象物にプレス圧着して離型させることで、対象物表面に当該マット感を付与することができる。
かかる観点から、本ポリエステルフィルム10の平均表面粗さ(Ra)は0.05μm~2.0μmであるのが好ましく、中でも0.1μm以上或いは1.0μm以下、その中でも0.2μm以上或いは0.9μm以下であるのがさらに好ましい。
本ポリエステルフィルム10の平均表面粗さ(Ra)は、表面粗さ測定器を用いて求めることができ、例えば、株式会社小坂研究所社製の表面粗さ測定機(SE-3500)を用いて求めることができる。
【0094】
本ポリエステルフィルム10の平均表面粗さ(Ra)を0.1μm~2.0μmとするには、例えば、粒子含有層Aを設けてポリエステルフィルム基材の片方又は両方の表面の平均表面粗さ(Ra)を0.1μm~2.0μmとし、且つ、離型層の厚さを平均表面粗さ(Ra)に対して十分に薄く形成すればよい。但し、この方法に限定するものではない。
【0095】
なお、本ポリエステルフィルム10の一方側の表面をマット調とすれば、他方の表面は、ハンドリングに支障がない程度に粗面化していれば十分であり、マット調である必要はない。
よって、ポリエステルフィルム基材の粒子含有層A側、すなわち離型層側の表面の平均表面粗さ(Ra)1を0.1μm~2.0μmとし、反対側の本ポリエステルフィルム10の表面の平均表面粗さ(Ra)2を0.1μm未満とすることもできる。この際、上記(Ra)1に対する(Ra)2の比率は0.01~100%であるのが好ましく、中でも0.1%以上、その中でも1%以上、その中でも3%以上或いは90%以下であるのがさらに好ましい。
【0096】
(光沢度)
本ポリエステルフィルム10において、少なくとも離型層側表面の光沢度は30%以下であるのが好ましい。
フィルム表面の光沢度が30%以下であれば、高級感のあるマット調とすることができる。但し、その下限は0.1%程度である。
かかる観点から、本ポリエステルフィルム10において、少なくとも離型層側表面の光沢度は30%以下であるのが好ましく、中でも0.1%以上或いは30%以下、その中でも25%以下、その中でも20%以下であるのがさらに好ましい。
なお、本ポリエステルフィルム10の離型層側表面の光沢度は、光沢度計を用いて測定することができ、例えば、日本電色株式会社製グロスメ-タ-VG2000型を用いて、JIS Z8741の方法に準じて光沢度を測定することができる。
【0097】
本ポリエステルフィルム10において、少なくとも離型層側表面の光沢度を30%以下とするには、上述のように、ポリエステルフィルム基材の片方又は両方の表面の平均表面粗さ(Ra)を0.05μm~2.0μmとし、且つ、離型層の厚さを平均表面粗さ(Ra)に対して十分に薄くすることにより、そのように形成することができる。但し、この方法に限定するものではない。
【0098】
(離型層の剥離力)
本ポリエステルフィルム10において、離型層の剥離力は100~3500mN/cmであるのが好ましく、中でも500mN/cm以上或いは3000mN/cm以下、その中でも1000mN/cm以上或いは2500mN/cm以下であるのがさらに好ましい。かかる範囲とすることで、剥離作業が容易なものとなる。なお、当該剥離力の値は、後述する「加熱前の離型層の剥離力」に相当する。
加熱前の離型層の剥離力は、離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製ポリエステル粘着テープ「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置したものを株式会社島津製作所製「AGX-plus」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行うことで測定することができる。
【0099】
また、加熱後における離型層の剥離力は100~4500mN/cmであるのが好ましく、中でも500mN/cm以上或いは3900mN/cm以下、その中でも1000mN/cm以上或いは3500mN/cm以下であるのがさらに好ましい。かかる範囲とすることで、加熱後でも剥離を十分に行うことができる。
なお、加熱後における離型層の剥離力は、離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製ポリエステル粘着テープ「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着したものを100℃のオーブン内にて1時間加熱した後、室温にて1時間放置して測定することができる。剥離力は、株式会社島津製作所製「AGX-plus」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行うことで測定することができる。
【0100】
また、加熱前後での離型層の剥離力のコントロールのし易さを考慮すると、加熱前後の剥離力を比較し、加熱前後剥離力差=(加熱後剥離力-加熱前剥離力)の値は、好ましくは0~3000mN/cm、より好ましくは0~2000mN/cm、さらに好ましくは0~1500mN/cmである。
【0101】
<本ポリエステルフィルム1又は10の製造方法>
以下、本ポリエステルフィルム10の製造方法の一例について説明する。但し、本ポリエステルフィルム10の製造方法が、次に説明する方法に限定されるものではない。
【0102】
先ず、公知の手法により、乾燥又は未乾燥の各層毎、すなわち基材層、粒子含有層A、粒子含有層B及びさらなる他の層毎にそれぞれの原料を調製し、それぞれ各溶融押出装置に供給し、それぞれのポリマーの融点以上である温度に加熱し溶融する。次いで、各層の溶融ポリマーを、通常マルチマニホールドまたはフィードブロックを経てダイへ導き積層する。
次に、ダイから押出された溶融シートを、回転冷却ドラム上でガラス転移温度以下の温度になるように急冷固化し、実質的に非晶状態の未配向シートを得る。この場合、シートの平面性を向上させるため、シートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。
【0103】
次に、得られた未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70~150℃、好ましくは80~140℃であり、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に、通常70~170℃で、延伸倍率は通常2.5~7倍、好ましくは3.0~6倍で延伸する。引き続き180~270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る方法が挙げられる。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0104】
熱処理工程後は、熱処理の最高温度ゾーンおよび/または熱処理出口のクーリングゾーンにおいて、縦方向および/または横方向に2~20%弛緩する方法が好ましい。また、必要に応じて再縦延伸、再横延伸を付加することも可能である。
【0105】
上記製造方法において、離型層は、上述した塗布延伸法として、上記縦延伸と横延伸の間に、上記「離型層形成組成物」をコーティング処理するのが好ましい。このようにすれば、延伸と同時に塗布が可能になると共に離型層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造することができる。
【0106】
ポリエステルフィルム1に関して、上述したポリエステルフィルム10におけるフィルム厚みを、ポリエステルフィルム1におけるフィルム厚みと読み替え、上述したポリエステルフィルム10における透過濃度OD値を、上述したポリエステルフィルム1における透過濃度OD値と読み替え、上述したポリエステルフィルム10における平均表面粗さ(Ra)を、ポリエステルフィルム1における平均表面粗さ(Ra)と読み替える。
【0107】
本ポリエステルフィルム1および本ポリエステルフィルム10は、粗面化されたフィルム表面を有し、その表面状態を対象製品の表面へ転写することができるため、マット調の表面が必要な表面賦形用途に用いることができ、特に、電磁波シールド部材の表面賦形用フィルムとして好適に用いることができる。
【0108】
<語句の説明>
本明細書において「X~Y」(X,Yは任意の数字)と表現する場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含する。
また、「X以上」(Xは任意の数字)或いは「Y以下」(Yは任意の数字)と表現した場合、「Xより大きいことが好ましい」或いは「Y未満であることが好ましい」旨の意図も包含する。
【実施例
【0109】
以下、本発明を下記実施例及び比較例に基づいてさらに詳述する。
先ず、下記実施例及び比較例での各種物性の測定方法・評価方法について説明する。
なお、実施例および比較例中「部」とあるのは「質量部」を示す。また、本発明で用いた測定法は次のとおりである。
【0110】
(1)ポリエステルの極限粘度
ポリエステルに非相溶な粒子を除去したポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(質量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0111】
(2)粒子の平均粒径
株式会社島津製作所社製の遠心沈降式粒度分布測定装置、SA-CP3型を用いて沈降法によって粒子の大きさを測定した。測定により得られた粒子の等価球形分布における積算(体積基準)50%の値を用いて平均粒径とした。
【0112】
(3)平均表面粗さ(Ra)の測定方法
株式会社小坂研究所社製表面粗さ測定機(SE-3500)を用いて次のようにして求めた。すなわち、フィルム断面曲線からその平均線の方向に基準長さL(2.5mm)の部分を抜き取り、この抜き取り部分の平均線をx軸、縦倍率の方向をy軸として粗さ曲線 y=f(x)で表わしたとき、次の式で与えられた値を〔nm〕で表わす。算術平均粗さは、試料フィルム表面から10本の粗さ曲線を求め、これらの粗さ曲線から求めた抜き取り部分の算術平均粗さの平均値で表わした。なお、触針の先端半径は2μm、荷重は30mgとし、カットオフ値は0.08mmとした。
【0113】
Ra=(1/L)∫L0|f(x)|dx
【0114】
(4)ポリエステルフィルムの光沢度評価
日本電色(株)社製グロスメーターVG2000型を用いて、JIS Z8741の方法に準じて光沢度を測定した。入射角、反射角60度に於ける黒色標準板の反射率を基準に試料の反射率を求め光沢度とした。
【0115】
(5)離型層の膜厚
離型層の表面をRuOで染色し、エポキシ樹脂中に包埋した。その後、超薄切片法により作成した切片をRuOで染色し、離型層の断面を透過型電子顕微鏡(株式会社日立ハイテクノロジーズ製 H-7650、加速電圧100kV)を用いて測定した。
【0116】
(6)透過濃度OD値
JIS K5600-4に準じて、マクベス濃度計TD-904型を使用し、白色光による透過濃度を測定した。測定は5点行い、その平均値をOD値とした。この値が大きい程光線透過率が低いことを示す。
【0117】
(7)加熱前剥離力
離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製ポリエステル粘着テープ「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着し、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「AGX-plus」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行い、その時の剥離力を測定した。
【0118】
(8)加熱後剥離力
離型層表面に粘着テープ(日東電工株式会社製ポリエステル粘着テープ「No.31B」)を2kgゴムローラーにて1往復圧着した後、100℃のオーブン内にて1時間加熱した。その後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は、株式会社島津製作所製「AGX-plus」を使用し、引張速度300mm/分の条件下、180°剥離を行った。
【0119】
(9)離型層の耐熱性の評価
上記(7)および(8)で測定した剥離力を用いて、加熱剥離力差=(加熱後剥離力-加熱前剥離力)として、加熱剥離力差を計算した。
【0120】
(10)離型層の強度の評価
離型層表面を太平理化工業製ラビングテスターおよび専用フェルトを用いて10往復した後にフェルトを観察し、白粉が見られなかったものを○(very good)、わずかに見られたものを○△(good)、やや見られたものを△(usual)、全面に見られたものを×(poor)とした。
【0121】
(11)カール性の評価
フィルムロールの状態で、室温環境下に24時間保管したポリエステルフィルム(サンプル)を、150mm×150mmに切り出して測定サンプル片を得た。該測定サンプル片をガラス板上に置き、ガラス板からの四隅の浮き上がりを測定し、以下の基準でカール性を評価した。
◎(very good):四隅の浮き上がりの平均値が0mm以上6mm未満
○(good):四隅の浮き上がりの平均値が6mm以上10mm未満
△(usual):四隅の浮き上がりの平均値が10mm以上30mm未満
×(poor):四隅の浮き上がりの平均値が30mm以上
【0122】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
【0123】
<ポリエステル(A)>
ポリエチレンテレフタレートホモポリマー(極限粘度が0.65dl/g)
【0124】
<ポリエステル(B)>
平均粒径4.5μmのメタクリル酸アルキル-スチレン共重合体の架橋有機粒子を10質量%含有するポリエチレンテレフタレートホモポリマー
【0125】
<ポリエステル(C)>
ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が22モル%共重合された共重合ポリエチレンテレフタレート
【0126】
<ポリエステル(D)>
平均粒径4.0μmのシリカ粒子を15質量%含有するポリエチレンテレフタレートホモポリマー
【0127】
<ポリエステル(E)>
平均粒径1.5μmのシリカ粒子を15質量%含有するポリエチレンテレフタレートホモポリマー
【0128】
<ポリエステル(F)>
平均粒径0.3μmの酸化チタン粒子を50質量%含有するポリエチレンテレフタレートホモポリマー
【0129】
離型層の形成に用いた化合物は以下のとおりである。
【0130】
<ワックスエマルション(IA)>
攪拌機、温度計、温度コントローラーを備えた内容量1.5Lの乳化設備に融点140℃の酸化ポリエチレンワックス300g、イオン交換水650gとデカグリセリンモノオレエート界面活性剤を50g、48%水酸化カリウム水溶液10gを加え窒素で置換後、密封し150℃で1時間高速攪拌した後130℃に冷却し、高圧ホモジナイザーを400気圧下で通過させ40℃に冷却してワックスエマルション(IA)を得た。
【0131】
<ワックスエマルション(IB)>
ワックスエマルション(IA)の製造方法において、融点60℃のパラフィンワックスを使用すること以外はワックスエマルション(IA)の製造方法と同様の方法を用いてワックスエマルション(IB)を得た。
【0132】
<長鎖アルキル化合物(IC)>
4つ口フラスコにキシレン200部、オクタデシルイソシアネート600部を加え、攪拌下に加熱した。キシレンが還流し始めた時点から、平均重合度500、ケン化度88モル%のポリビニルアルコール100部を少量ずつ10分間隔で約2時間にわたって加えた。ポリビニルアルコールを加え終わってから、さらに2時間還流を行い、反応を終了した。反応混合物を約80℃まで冷却してから、メタノール中に加えたところ、反応生成物が白色沈殿として析出したので、この沈殿を濾別し、キシレン140部を加え、加熱して完全に溶解させた後、再びメタノールを加えて沈殿させるという操作を数回繰り返した後、沈殿をメタノールで洗浄し、乾燥粉砕して長鎖アルキル化合物(IC)を得た。
【0133】
<フッ素化合物(ID)>
ガラス製反応容器中に、パーフルオロアルキル基含有アクリレートであるCF(CF)nCHCHOCOCH=CH(n=5~11、nの平均=9)80.0g、アセトアセトキシエチルメタクリレート20.0g、ドデシルメルカプタン0.8g、脱酸素した純水354.7g、アセトン40.0g、C1633N(CHCl1.0gおよびC17O(CHCHO)H(n=8)3.0gを入れ、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩0.5gを加え、窒素雰囲気下で攪拌しつつ60℃で10時間共重合反応させて、フッ素化合物の共重合体エマルション(ID)を得た。
【0134】
<メラミン化合物(IIA)>
ヘキサメトキシメチロールメラミン
【0135】
<イソシアネート系化合物(IIB)>
ヘキサメチレンジイソシアネート1000部を60℃で攪拌し、触媒としてテトラメチルアンモニウム・カプリエート0.1部を加えた。4時間後、リン酸0.2部を添加して反応を停止させ、イソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物を得た。得られたイソシアヌレート型ポリイソシアネート組成物100部、数平均分子量400のメトキシポリエチレングリコール42.3部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート29.5部を仕込み、80℃で7時間保持した。その後反応液温度を60℃に保持し、イソブタノイル酢酸メチル35.8部、マロン酸ジエチル32.2部、ナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液0.88部を添加し、4時間保持した。n-ブタノール58.9部を添加し、反応液温度80℃で2時間保持し、その後、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート0.86部を添加してブロックポリイソシアネートとしてのイソシアネート系化合物(IIB)を得た。
【0136】
<ポリエステル樹脂(III)>
(酸成分)テレフタル酸/イソフタル酸/5-ソジウムスルホイソフタル酸//(ジオール成分)エチレングリコール/1,4-ブタンジオール/ジエチレングリコール=56/40/4//70/20/10(モル%)の割合で共重合したポリエステル樹脂の水分散体。
【0137】
[実施例1]
ポリエステル(B)、(C)をそれぞれ80%、20%の質量割合で混合した原料をA層(粒子含有層A)の原料とし、ポリエステル(A)を基材層の原料とし、ポリエステル(A)、(E)、(F)をそれぞれ70%、15%、15%の質量割合で混合した原料をB層(粒子含有層B)の原料とし、3台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、35℃に設定した冷却ロール上に、3種3層(A層/基材層/B層=5:40:5の吐出量)の層構成で共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.0倍延伸した後、この縦延伸フィルムのA層表面に、下記表1に示す塗布液1を塗布し、テンターに導き、横方向に95℃で4.1倍延伸し、235℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ50μm(A層/基材層/B層=5μm/40μm/5μm)のポリエステルフィルム基材のA層側に、乾燥後の膜厚が0.03μmの離型層を有し、離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.6μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
このポリエステルフィルム(サンプル)の特性を下記表2に示す。
【0138】
[実施例2~12]
塗布液の組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様に製造して、ポリエステルフィルム(サンプル)を得た。得られたポリエステルフィルム(サンプル)の特性を表2に示す。
いずれの実施例のポリエステルフィルム(サンプル)も、平均表面粗さ(Ra)及び光沢度が良好であり、加熱前後の剥離力差、離型層の強度も良好であった。
【0139】
[実施例13]
ポリエステル(A)、(B)、(C)、(F)をそれぞれ65%、10%、10%、15%の質量割合で混合した原料をB層(粒子含有層B)の原料とし、塗布液1の代わりに下記表1に示す塗布液5を塗布した以外は実施例1と同様に製造して、厚さ50μm(A層/基材層/B層=5μm/40μm/5μm)のポリエステルフィルム基材のA層側に、乾燥後の膜厚が0.03μmの離型層を有し、離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.6μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
このポリエステルフィルム(サンプル)の特性を下記表3に示す。
【0140】
[実施例14]
ポリエステル(A)、(D)をそれぞれ65%、35%の質量割合で混合した原料をA層(粒子含有層A)の原料とし、ポリエステル(A)を基材層の原料とし、ポリエステル(A)、(E)をそれぞれ85%、15%の割合で混合した混合原料をB層(粒子含有層B)の原料とし、3台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、3種3層(A層/基材層/B層=5:40:5の吐出量)の層構成で共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た以外は実施例1と同様に製造して、厚さ50μm(A層/基材層/B層=5μm/40μm/5μm)のポリエステルフィルム基材のA層側に、乾燥後の膜厚が0.03μmの離型層を有し、離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.4μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
このポリエステルフィルム(サンプル)の特性を下記表2に示す。
【0141】
[実施例15~25]
塗布液の組成を表1に示す組成に変更した以外は、実施例14と同様に製造して、ポリエステルフィルム(サンプル)を得た。得られたポリエステルフィルム(サンプル)の特性を表2に示す。
いずれの実施例のポリエステルフィルム(サンプル)も、平均表面粗さ(Ra)及び光沢度が良好であり、加熱前後の剥離力差、離型層の強度も良好であった。
【0142】
[比較例3]
ポリエステル(A)、(E)をそれぞれ65%、35%の質量割合で混合した原料をA層(粒子含有層A)の原料とし、ポリエステル(A)を基材層の原料とし、塗布液1の代わりに下記表1に示す塗布液5を塗布した以外は実施例14と同様に製造して、厚さ50μm(A層/基材層/B層=5μm/40μm/5μm)のポリエステルフィルム基材のA層側に、乾燥後の膜厚が0.03μmの離型層を有し、離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.2μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
このポリエステルフィルム(サンプル)の特性を下記表2および3に示す通り、光沢度が高く、視認性が悪いフィルムであった。
【0143】
[比較例4]
ポリエステル(A)、(B)をそれぞれ20%、80%の質量割合で混合した原料をA層(粒子含有層A)の原料とし、ポリエステル(A)、(B)(F)をそれぞれ90%、8%、2%の質量割合で混合した原料をB層(粒子含有層B)の原料とし、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種2層(A層/B層=5:45の吐出量)の層構成で共押出し、冷却固化させて未延伸シートを得た以外は実施例1と同様に製造して、厚さ50μm(A層/B層=5μm/45μm)のポリエステルフィルム基材のA層側に、乾燥後の膜厚が0.03μmの離型層を有し、離型層側表面の平均表面粗さ(Ra)が0.5μmのポリエステルフィルム(サンプル)を得た。
このポリエステルフィルム(サンプル)の特性を下記表3に示す通り、カール性が悪いフィルムであった。
【0144】
【表1】
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
上記表2は本発明の第1および第2のポリエステルフィルムを実証するものであり、上記表3は本発明の第3のポリエステルフィルムを実証するものである。
【0148】
上記実施例の結果並びに本発明者がこれまでに行ってきた試験結果から、ポリエステルフィルムの透過濃度OD値が0.10以上であれば、転写時のポリエステルフィルムの視認性に優れたものとすることができることが分かった。
また、基材層の片面側又は両面側に、平均粒径2.0μm以上の粒子を含有する粒子含有層を形成し、さらに当該粒子含有層表面に離型層を形成するようにすれば、ポリエステルフィルム表面を好適に粗面化することができ、期待するマット感を対象物に転写することができることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本ポリエステルフィルム10は、転写時の視認性言い換えれば識別性に優れ、かつ粗面化されたフィルム表面を有するため、離型層を形成しても、前記粗面化状態が平滑化されることなく、期待するマット感を対象物に付与することができるため、マット調表面を対象物に転写する用途、特に電磁波シールド部材の表面賦形用ポリエステルフィルムに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0150】
1:ポリエステルフィルム
11:ポリエステルフィルム基材
111:基材層
112:粒子含有層A
113:離型層
図1