(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20230822BHJP
C08L 79/08 20060101ALI20230822BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08L79/08 A
C08K5/544
(21)【出願番号】P 2020507803
(86)(22)【出願日】2019-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2019011253
(87)【国際公開番号】W WO2019181878
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2018051091
(32)【優先日】2018-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090918
【氏名又は名称】泉名 謙治
(72)【発明者】
【氏名】相馬 早紀
(72)【発明者】
【氏名】別府 功一朗
(72)【発明者】
【氏名】須賀 貴裕
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/156335(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/199052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08L 79/08
C08K 5/544
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(A)成分、(B)成分、及び有機溶媒を含有
することを特徴とする液晶配向剤。
(A)成分:下記式(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体。
【化1】
但し、式(2)中、R
5は単結合又は2価の有機基である。R
6は-(CH
2)
n-で表される構造であり、任意の-CH
2-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル及びアミドから選ばれる結合に置き換えられてもよい。R
7は単結合又は2価の有機基である。ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。nは2~20の整数であ
る。
(B)成分:下記式(1)で表され
、かつ、該式(1)において下記(B-3)乃至(B-9)からなる群から選ばれる少なくとも一種の化合物。
【化2】
但し、式(1)中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立して、下記(Q1-1)、(Q1-2)及び単結合から選ばれる一種であるが、式(1)中、Q
1及びQ
2の少なくとも1つは(Q1-1)及び(Q1-2)から選ばれる一種である。R
1は水素原子、又は一価の有機基である。
【化3】
q1とq2は、それぞれ独立に、0又は1である。
L
1及びL
2は水素原子である。但し、Q
1が(Q1-1)である場合は、L
1及びL
2は一緒になって単結合を形成していてもよい。
S
1及びS
2は、それぞれ独立に、下記式(S)で表される基である。
【化4】
(式(S)中、R
2は水素原子、又はアルキル基である。Lは炭素数2~20のアルキレンである。R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、又は炭素数2~4のアルキニル基である。wは1~3の自然数を表す。*は式(1)への結合を表す。)
(B-3):q1、q2が1であり、Q
1
が(Q1-1)であり、Q
2
が(Q1-1)であり、L
1
、L
2
が水素原子である化合物。
(B-4):q1、q2が1であり、Q
1
が(Q1-1)であり、Q
2
が単結合であり、L
1
、L
2
が水素原子である化合物。
(B-5):q1、q2が1であり、Q
1
が(Q1-1)であり、Q
2
が(Q1-1)であり、L
1
、L
2
が一緒になって単結合である化合物。
(B-6):q1、q2が1であり、Q
1
が単結合であり、Q
2
が(Q1-1)であり、L
1
、L
2
が水素原子である化合物。
(B-7):q1、q2が1であり、Q
1
が(Q1-1)であり、Q
2
が単結合であり、L
1
、L
2
が一緒になって単結合である化合物。
(B-8):q1、q2が0であり、Q
1
が(Q1-2)であり、L
1
、L
2
が水素原子である化合物。
(B-9):q1、q2が1であり、Q
1
が(Q1-2)であり、L
1
、L
2
が水素原子である化合物。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記式(3)で表される構造単位を含むポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド重合体から選ばれる少なくとも1種の重合体を含む請求項1に記載の液晶配向剤。
【化6】
(式(3)中、X
3はテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基である。Y
3は式(2)の構造を含むジアミンに由来する2価の有機基である。R
13は、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基である。)
【請求項3】
前記ポリイミド前駆体が、その有する全構造単位に対して、前記式(3)で表される構造単位を20~100モル%含む請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記(B)成分が、下記
式B-3-1~式B-9-1からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である請求項1~3のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化7】
【請求項5】
前記(A)成分を含む重合体を、液晶配向剤中、1~10質量%含有する請求項1~
4のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項6】
前記(B)成分を、前記(A)成分に対して、0.1~20質量%含有する請求項1~
5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項8】
請求項
7に記載の液晶配向膜を具備する横電界方式の液晶表示素子。
【請求項9】
IPS方式又はFFS方式である請求項
8に記載の横電界方式の液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、携帯電話、スマートフォン、テレビ等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示素子は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS方式等の横電界方式が知られている。基板の片側のみに電極を形成させ、基板と平行方向に電界を印加する横電界方式では、従来の上下基板に形成された電極に電圧を印加して液晶を駆動させる縦電界方式と比べ、広い視野角特性を有し、また高品位な表示が可能な液晶表示素子として知られている。
【0003】
横電界方式の液晶セルは視野角特性に優れているものの、基板内に形成される電極部分が少ないために、電圧保持率が低いと液晶に十分な電圧がかからず表示コントラストが低下する。また、液晶配向の安定性が小さいと、液晶を長時間駆動させた際に液晶が初期の状態に戻らなくなり、コントラスト低下や残像の原因となるため、液晶配向の安定性が重要である。更に、静電気が液晶セル内に蓄積されやすく、駆動によって生じる正負非対称電圧の印加によっても液晶セル内に電荷が蓄積され、これらの蓄積された電荷が液晶配向の乱れや残像として表示に影響を与え、液晶素子の表示品位を著しく低下させる。
【0004】
このような横電界方式の液晶表示素子に用いた際、電圧保持率に優れ、かつ電荷蓄積を低減した液晶配向剤として、特許文献1には、特定ジアミンと脂肪族テトラカルボン酸誘導体とを含有する液晶配向剤が開示されている。また、残像が消えるまでの時間を短くする方法としては、特許文献2のような体積抵抗率の低い配向膜や、特許文献3のような、体積抵抗率が液晶表示素子のバックライトによっても変化しにくい配向膜を使用する方法が提案されている。しかし、液晶表示素子の高性能化に伴い、液晶配向膜に要求される特性も厳しくなってきており、これらの従来の技術では全ての要求特性を十分に満足することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開(WO)2004/021076号パンフレット
【文献】国際公開(WO)2004/053583号パンフレット
【文献】国際公開(WO)2013/008822号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電圧保持率に優れ、蓄積電荷の緩和が早く、液晶配向性や透明性が良好な液晶配向膜を得ることができる、特に、IPS方式、FFS方式などの横電界方式の表示素子における特性に優れた液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の(A)成分、(B)成分、及び有機溶媒を含有することを特徴とする液晶配向剤を要旨とする。
(A)成分:下記式(2)の構造を有するポリイミド前駆体、該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体
【化1】
但し、式(2)中、R
5は単結合又は2価の有機基であり、R
6は-(CH
2)
n-で表される構造であり、nは2~20の整数であり、任意の-CH
2-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル及びアミドから選ばれる結合に置き換えられてもよく、R
7は単結合又は2価の有機基であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。
(B)成分:下記式(1)で表される化合物
【化2】
【0008】
但し、式(1)中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立して、下記(Q1-1)、(Q1-2)及び単結合から選ばれる一種であるが、式(1)中、Q
1及びQ
2の少なくとも1つは(Q1-1)及び(Q1-2)から選ばれる一種である。R
1は水素原子、又は一価の有機基である。
【化3】
q1とq2はそれぞれ独立に0又は1であり、
L
1及びL
2は水素原子である。但し、Q
1が(Q1-1)である場合は、L
1及びL
2は一緒になって単結合を形成していてもよい。
S
1及びS
2はそれぞれ独立に下記式(S)で表される基である。
【化4】
式中、R
2は水素原子、又はアルキル基を表し、Lは炭素数2~20のアルキレンを表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、又は炭素数2~4のアルキニル基であり、qは1~3の自然数を表す。*は式(1)への結合を表す。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液晶配向剤を用いることにより、電圧保持率に優れ、蓄積電荷の緩和が早く、液晶配向性や透明性が良好な液晶配向膜を得ることができる液晶配向膜、及び、特に、IPS方式、FFS方式などの横電界方式の表示素子における表示特性に優れた液晶表示素子が提供される。本願発明により何故に上記の課題を解決できるかは定かではないが、概ね次のように考えられる。本発明の液晶配向剤中に、上記(A)成分とともに含有される上記(B)成分である上記式(1)で表される化合物の構造は、共役構造を有することにより、例えば液晶配向膜中において、電荷の移動を促進させることができ、蓄積電荷の緩和を促進させることができると。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<(A)成分>
本発明の液晶配向剤に含まれる(A)成分は、下記式(2)で表される構造を有するポリイミド前駆体、及び該ポリイミド前駆体のイミド化重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(以下、特定重合体(A)ともいう)である。
【化5】
但し、式(2)における各記号の定義は、それぞれ、上記したとおりである。
R
5は単結合又は2価の有機基であり、R
6は-(CH
2)
n-で表される構造であり、nは2~20の整数であり、任意の-CH
2-はそれぞれ隣り合わない条件でエーテル、エステル及びアミドから選ばれる結合に置き換えられてもよく、R
7は単結合又は2価の有機基であり、ベンゼン環上の任意の水素原子は1価の有機基で置き換えられてもよい。
なお、R
5を構成する2価の有機基としては、フェニル基(以下、-Ph-と表記)、-Ph-(CH
2)
m-(mは1~10の整数)、-Ph-O-、-Ph-O-C(=O)-、-Ph-C(=O)-O-、-Ph-C=C-O-などが挙げられる。R
6は、なかでも、単結合又はフェニル基が好ましい。
また、R
7構成する2価の有機基としては、-(Ph)
k-(kは1~3の整数)、-Ph-(CH
2)
m-Ph-(mは1~10の整数)、-Ph-(CH
2)
l-Ph-(CH
2)
m-Ph-(l、mはそれぞれ独立に1~10の整数)、-Ph-O-Ph-、-Ph-O-C(=O)-Ph-、-Ph-C(=O)-O-Ph-、-Ph-C=C-O-Ph-などが挙げられる。R
7は、なかでも、フェニル基又は-Ph-(CH
2)
m-Ph-(mは1~10の整数)が好ましい。
式(2)におけるnは1~10の整数であるのが好ましい。また、ベンゼン環の水素原子の1価の有機基は、フッ素原子及びメチル基から選ばれる基が好ましい。
【0011】
式(2)で表される構造としては、具体的には以下のものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中におけるMeは、メチル基を表す。
【化6】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
本発明における特定重合体(A)としては、上記式(2)で表される構造を有するジアミンを用いて得られる重合体が好ましい。特定重合体(A)の具体例としては、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミドなどが挙げられる。液晶配向剤としての観点から、特定重合体(A)は、なかでも、下記式(3)で表される構造単位を含むポリイミド前駆体、及びそのイミド化物であるポリイミドから選ばれる少なくとも1種であるのが好ましい。
【化11】
【0017】
但し、式(3)中、X
3はテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基である。具体的には、下記式(X1-1)~(X1-45)で表される構造からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【化12】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
式(X1-1)において、R8、R9、R10、及びR11はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、アルキニル基、又はフェニル基である。液晶配向性の観点から、R8、R9、R10、及びR11は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、又はエチル基が好ましく、水素原子、又はメチル基がより好ましい。
【0024】
X3は、これらのなかでも、液晶配向性、信頼性の観点から、(X1-10)、(X1-11)、又は(X1-29)が好ましく、(X1-10)又は(X1-11)がより好ましい。
【0025】
式(3)において、Y3は式(2)の構造を含むジアミンに由来する2価の有機基であり、配向性の観点から式(2)においてR7が単結合又はベンゼン環であるジアミンに由来する2価の有機基であることが好ましい。R13は、水素原子、又は炭素数1~5のアルキル基であり、加熱によるイミド化のしやすさの観点から、水素原子、又はメチル基が特に好ましい。
【0026】
本発明における特定重合体(A)は、上記式(3)で表される構造単位及びそれをイミド化した構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位の比率を特定重合体(A)中の全構造単位に対して、20~100モル%含有するのが好ましく、液晶配向性と信頼性の両立の観点から、30~70モル%含有するのがより好ましく、50~70モル%含有するのがさらに好ましい。
【0027】
本発明における特定重合体(A)は、上記式(3)で表される構造単位に加えて、さらに、下記式(4)で表される構造単位、及び/又はそれをイミド化した構造単位を有していてもよい。
【化18】
但し、式(4)において、R
14は、前記式(3)のR
13の定義と同じである。X
4はテトラカルボン酸誘導体に由来する4価の有機基であり、その構造は特に限定されない。具体的例を挙げるならば、上記式(X1-1)~(X-45)の構造が挙げられる。
【0028】
上記式(4)において、Y
4はジアミンに由来する2価の有機基であり、その構造は特に限定されない。Y
4の具体例を挙げるならば、下記式(Y-1)~(Y-140)の構造が挙げられる。
【化19】
【0029】
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
上記特定重合体(A)が、ポリイミド前駆体をイミド化したポリイミドを含む場合、イミドした構造単位の比率(イミド化率ともいう。)は、液晶配向剤の特性に応じて任意に調整できる。電圧保持率の観点から、特定重合体(A)におけるイミド化率は高い方が好ましいが、過度に高い場合には溶解性の悪化が懸念されるので、イミド化率は、好ましくは40~95%であり、より好ましくは55~90%である。
【0045】
本発明に用いるポリイミド前駆体は、ジアミン成分とテトラカルボン酸誘導体との反応から得られるものであり、ポリアミック酸やポリアミック酸エステル等が挙げられる。
<ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸は、以下の方法により製造される。具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを、有機溶媒の存在下で、-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~12時間反応させることによって製造できる。
【0046】
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分との反応は、通常、有機溶媒中で行う。その際に用いる有機溶媒としては、生成したポリイミド前駆体が溶解するものであれば特に限定されない。下記に、反応に用いる有機溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。
また、ポリイミド前駆体の溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される有機溶媒を用いることができる。
【化35】
式[D-1]中、D
1は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、D
2は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、D
3は炭素数1~4のアルキル基を示す。
【0047】
これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解しない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
【0048】
反応系中におけるポリアミック酸ポリマーの濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0049】
上記のようにして得られたポリアミック酸は、反応溶液をよく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させて回収することができる。また、析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥することで、精製されたポリアミック酸の粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0050】
<ポリイミド前駆体(ポリアミック酸エステル)>
本発明に用いられるポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、以下に示す(1)、(2)又は(3)の製法で製造することができる。
【0051】
(1)ポリアミック酸から製造する場合
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸をエステル化することによって製造できる。具体的には、ポリアミック酸とエステル化剤を有機溶媒の存在下で、-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
【0052】
エステル化剤としては、精製によって容易に除去できるものが好ましい。例えば、N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジエチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジプロピルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジネオペンチルブチルアセタール、N,N-ジメチルホルムアミドジ-t-ブチルアセタール、1-メチル-3-p-トリルトリアゼン、1-エチル-3-p-トリルトリアゼン、1-プロピル-3-p-トリルトリアゼン、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジンー2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリドなどが挙げられる。エステル化剤の添加量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して、2~6モル当量が好ましい。
【0053】
有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン又はγ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド又は1,3-ジメチル-イミダゾリジノンが挙げられる。また、ポリイミド前駆体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は前記式[D-1]~式[D-3]で示される有機溶媒を用いることができる。
【0054】
これらの有機溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、ポリイミド前駆体を溶解させない溶媒であっても、生成したポリイミド前駆体が析出しない範囲で、前記溶媒に混合して使用してもよい。また、有機溶媒中の水分は重合反応を阻害し、さらには生成したポリイミド前駆体を加水分解させる原因となるので、有機溶媒は脱水乾燥させたものを用いることが好ましい。
上記の反応に用いる溶媒は、ポリマーの溶解性から、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。製造時の濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。
【0055】
(2)テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとの反応により製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンから製造することができる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドとジアミンとを、塩基と有機溶媒の存在下で、-20~150℃、好ましくは0~50℃において、30分~24時間、好ましくは1~4時間反応させることによって製造することができる。
【0056】
前記塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、4-ジメチルアミノピリジンなどが使用できるが、反応が穏和に進行するためにピリジンが好ましい。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドに対して、2~4倍モルであることが好ましい。
【0057】
前記有機溶媒としては、モノマー及びポリマーの溶解性から、N-メチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンが好ましく、これらは1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
製造時のポリマー濃度は、ポリマーの析出が起こりにくく、かつ高分子量体が得やすいという点から、1~30質量%が好ましく、5~20質量%がより好ましい。また、テトラカルボン酸ジエステルジクロリドの加水分解を防ぐため、ポリアミック酸エステルの製造に用いる有機溶媒は、できるだけ脱水されていることが好ましく、窒素雰囲気中で、外気の混入を防ぐのが好ましい。
【0058】
(3)テトラカルボン酸ジエステルとジアミンから製造する場合
ポリアミック酸エステルは、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンを重縮合することにより製造することができる。具体的には、テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを、縮合剤、塩基、及び有機溶媒の存在下で、0~150℃、好ましくは0~100℃において、30分~24時間、好ましくは3~15時間反応させることによって製造できる。
【0059】
前記縮合剤としては、トリフェニルホスファイト、ジシクロヘキシルカルボジイミド、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N’-カルボニルジイミダゾール、ジメトキシ-1,3,5-トリアジニルメチルモルホリニウム、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウム テトラフルオロボラート、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート、(2,3-ジヒドロ-2-チオキソ-3-ベンゾオキサゾリル)ホスホン酸ジフェニルなどが使用できる。縮合剤の添加量は、テトラカルボン酸ジエステルに対して2~3倍モルが好ましい。
【0060】
前記塩基としては、ピリジン、トリエチルアミンなどの3級アミンが使用できる。塩基の添加量は、除去が容易な量で、かつ高分子量体が得やすいという点から、ジアミン成分に対して2~4倍モルが好ましい。
また、上記反応において、ルイス酸を添加剤として加えることで、反応が効率的に進行する。ルイス酸としては、塩化リチウム、臭化リチウムなどのハロゲン化リチウムが好ましい。ルイス酸の添加量はジアミン成分に対して0~1.0倍モルが好ましい。
【0061】
上記3つのポリアミック酸エステルの製造方法の中でも、高分子量のポリアミック酸エステルが得られるため、上記(1)又は(2)の製法が特に好ましい。
上記のようにして得られるポリアミック酸エステルの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、ポリマーを析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリアミック酸エステルの粉末を得ることができる。貧溶媒は、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、ヘキサン、ブチルセロソルブ、アセトン、トルエン等が挙げられる。
【0062】
<ポリイミド>
本発明に用いられるポリイミド((A)成分におけるイミド化重合体)は、前記したポリアミック酸エステル又はポリアミック酸をイミド化することにより製造できる。
【0063】
ポリアミック酸からポリイミドを製造する場合、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物との反応で得られた前記ポリアミック酸の溶液に、触媒を添加して反応させる化学的イミド化が簡便である。当該化学的イミド化は、比較的低温でイミド化反応が進行し、イミド化の過程で重合体の分子量低下が起こりにくいので好ましい。
化学的イミド化は、イミド化させたいポリアミック酸を、有機溶媒中、塩基性触媒と酸無水物の存在下で、攪拌することにより行うことができる。有機溶媒としては、前述した重合反応時に用いる有機溶媒を使用することができる。塩基性触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン等を挙げることができる。中でも、ピリジンは、反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。また、酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等を挙げることができ、中でも、無水酢酸を用いると、反応終了後の精製が容易となるので好ましい。
【0064】
上記イミド化反応を行うときの温度は、-20~140℃、好ましくは0~100℃であり、反応時間は0.5~100時間、好ましくは1~80時間で行うことができる。塩基性触媒の量は、アミック酸の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量は、アミック酸の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。得られる重合体のイミド化率は、触媒量、温度、反応時間を調節することで制御することができる。
【0065】
ポリアミック酸エステル又はポリアミック酸のイミド化反応後の溶液には、添加した触媒等が残存しているので、以下に述べる手段により、得られたイミド化重合体を回収し、有機溶媒で再溶解して、本発明の液晶配向剤の(A)成分として用いることが好ましい。
上記のようにして得られるポリイミドの溶液は、よく撹拌させながら貧溶媒に注入することで、重合体を析出させることができる。析出を数回行い、貧溶媒で洗浄後、常温あるいは加熱乾燥して、精製されたポリイミドの粉末を得ることができる。
前記貧溶媒は、特に限定されないが、メタノール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エタノール、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。
【0066】
<(B)成分>
本発明の液晶配向剤に含有される(B)成分は下記式(1)で表される化合物である。
【化36】
但し、式(1)における各記号の定義は、それぞれ、上記したとおりである。
また、式(Q1-1)及び式(Q1-2)における一価の有機基は、炭素数1~3のアルキル基であるのが好ましく、特に、メチル基が好ましい。
L
1及びL
2は水素原子である。但し、Q
1が(Q1-1)である場合は、例えば、後記式B-5-1で表される化合物のように、L
1及びL
2は一緒になって単結合を形成していてもよい。
S
1及びS
2はそれぞれ独立に下記式(S)で表される基である。
【化37】
式中、R
2は水素原子、又は炭素数1~4のアルキル基を表し、Lは炭素数2~20のアルキレンを表し、R
3及びR
4は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基、炭素数2~4のアルケニル基、又は炭素数2~4のアルキニル基であり、qは1~3の自然数を表す。*は式(1)への結合を表す。
【0067】
R1の一価の有機基としては、より好ましくはメチル基、フェニル基又は熱分解性脱離基である。
【0068】
熱分解性脱離基とは、加熱により脱離して水素原子に置き換わる置換基のことである。このような熱分解性脱離基はアミノ基の保護基であり、熱により水素原子に置き換わる官能基であれば、その構造は特に限定されない。液晶配向剤の保存安定性の点からは、この保護基Dは室温において脱離しないことが好ましく、好ましくは80℃以上の熱で脱離する保護基であり、更に好ましくは100℃以上での熱で脱離する保護基である。Dは、脱離する温度の点から、tert-ブトキシカルボニル基、又は9-フルオレニルメトキシカルボニル基であることが特に好ましい。
【0069】
(B)成分で表される化合物の好ましい例としては、例えば、下記(B-1)乃至(B-9)の化合物が挙げられる。
(B-1):上記式(1)において、q1及びq2が0であり、Q1が(Q1-1)であり、L1及びL2が水素原子である化合物、
(B-2):上記式(1)において、q1及びq2が0であり、Q1が(Q1-1)であり、L1及びL2が一緒になって単結合である化合物、
(B-3):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が(Q1-1)であり、Q2が(Q1-1)であり、L1及びL2が水素原子である化合物、
(B-4):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が(Q1-1)であり、Q2が単結合であり、L1及びL2が水素原子である化合物、
(B-5):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が(Q1-1)であり、Q2が(Q1-1)であり、L1及びL2が一緒になって単結合である化合物、
(B-6):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が単結合であり、Q2が(Q1-1)であり、L1及びL2が水素原子である化合物、
(B-7):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が(Q1-1)であり、Q2が単結合であり、L1及びL2が一緒になって単結合である化合物、
(B-8):上記式(1)において、q1及びq2が0であり、Q1が(Q1-2)であり、L1及びL2が水素原子である化合物。
(B-9):上記式(1)において、q1及びq2が1であり、Q1が(Q1-2)であり、L1及びL2が水素原子である化合物。
【0070】
(B)成分で表される化合物の好ましい具体例としては、下記式B-1-1~式B-9-1で表される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【化38】
【0071】
本発明における(B)成分の化合物は、下記式(0)で表されるジアミンと、トリアルコキシシリルプロピルイソシアネートとを、公知の方法で反応させることで得られる。
【化39】
【0072】
式(0)におけるQ1、Q2、L1、L2、q1及びq2は、上記式(1)における定義と同じである。これら式(0)で表されるジアミンは、公知のものを用いてもよい。
【0073】
上記ジアミンとイソシアネートとの反応において、イソシアネート化合物の使用量は、アミノ基1基に対し、0.98~1.2当量倍を反応させるのが好ましく、より好ましくは、1.0~1.05当量倍である。
【0074】
反応溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定はない。例えば、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素類;四塩化炭素、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等のハロゲン系炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類;酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のカルボン酸エステル類;N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の含窒素非プロトン性極性溶媒;ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄非プロトン性極性溶媒;ピリジン、ピコリン等のピリジン類などが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても、これらのうちの2種以上を混合して用いてもよい。好ましくはトルエン、アセトニトリル、酢酸エチル、テトラヒドロフランであり、さらに好ましくはアセトニトリル、テトラヒドロフランである。
【0075】
溶媒の使用量(反応濃度)は特に限定されないが、溶媒を用いずに反応を実施してもよく、また溶媒を使用する場合にはイソシアネート化合物に対し、0.1~100質量倍の溶媒を用いても良い。好ましくは0.5~30質量倍であり、さらに好ましくは1~10質量倍である。
【0076】
反応温度は特に限定されないが、例えば-90℃~150℃、好ましくは-30℃~100℃、さらに好ましくは0℃~80℃である。反応時間は、通常、1分~200時間、好ましくは30分~100時間である。
【0077】
(B)成分は、多すぎると液晶配向性に影響を与え、少なすぎると本発明の効果が得られない。そのため、(B)成分の添加量は、(A)成分(100質量%)に対して、0.1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。
【0078】
<液晶配向剤>
本発明に用いられる液晶配向剤は、前記した(A)成分である特定重合体(A)及び(B)成分である式(1)で表される化合物が有機溶媒中に溶解された溶液の形態を有する。特定構造重合体(A)の分子量は、重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0079】
本発明の液晶配向剤の特定重合体(A)の濃度は、形成させようとする塗膜の厚みの設定によって適宜変更することができるが、均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点から1重量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは10重量%以下が好ましく、なかでも、1~5重量%であるのが好ましい。
本発明に用いられる液晶配向剤に含有される有機溶媒は、特定重合体(A)が均一に溶解する良溶媒あるのが好ましい。
有機溶媒としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、又は4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどを挙げることができる。
【0080】
有機溶媒は、なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。
さらに、本発明の重合体の溶媒への溶解性が高い場合は、前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることが好ましい。
本発明の液晶配向剤における良溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の20~99質量%であることが好ましい。なかでも、20~90質量%が好ましい。より好ましいのは、30~80質量%である。
段落0077などとの整合性から削除を提案します。
【0081】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向剤を塗布した際の液晶配向膜の塗膜性や表面平滑性を向上させる溶媒(貧溶媒ともいう。)を用いることができる。下記に、貧溶媒の具体例を挙げるが、これらの例に限定されるものではない。
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチルエチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチルエステル、乳酸エチルエステル、乳酸n-プロピルエステル、乳酸n-ブチルエステル、乳酸イソアミルエステル又は前記式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒などを挙げることができる。
【0082】
なかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、又はジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
これら貧溶媒は、液晶配向剤に含まれる溶媒全体の1~80質量%であることが好ましい。なかでも、10~80質量%が好ましい。より好ましいのは20~70質量%である。
【0083】
本発明の液晶配向剤には、上記の他、本発明に記載の重合体以外の重合体、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリイミド前駆体の加熱によるイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等を添加しても良い。
【0084】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥、焼成して得られる膜である。本発明の液晶配向剤を塗布する基板としては透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板、ポリカーボネート基板等のプラスチック基板等を用いることができ、液晶駆動のためのITO電極等が形成された基板を用いることがプロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では片側の基板のみにならばシリコンウエハー等の不透明な物でも使用でき、この場合の電極はアルミニウム等の光を反射する材料も使用できる。
【0085】
本発明の液晶配向剤の塗布方法としては、スピンコート法、印刷法、インクジェット法などが挙げられる。本発明の液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される有機溶媒を十分に除去するために50~120℃で1~10分間乾燥させ、その後150~300℃で5分~120分間焼成される。焼成後の塗膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nm、好ましくは10~200nmである。
【0086】
得られた液晶配向膜を配向処理する方法としては、ラビング法、光配向処理法などが挙げられる。
ラビング処理は既存のラビング装置を利用して行うことができる。この際のラビング布の材質としては、コットン、ナイロン、レーヨンなどが挙げられる。ラビング処理の条件としては一般に、回転速度300~2000rpm、送り速度5~100mm/s、押し込み量0.1~1.0mmという条件が用いられる。その後、純水やアルコールなどを用いて超音波洗浄によりラビングにより生じた残渣が除去される。
【0087】
光配向処理法の具体例としては、前記塗膜表面に、一定方向に偏向した放射線を照射し、場合によってはさらに150~250℃の温度で加熱処理を行い、液晶配向能を付与する方法が挙げられる。放射線としては、100~800nmの波長を有する紫外線及び可視光線を用いることができる。このうち、100~400nmの波長を有する紫外線が好ましく、200~400nmの波長を有するものが特に好ましい。また、液晶配向性を改善するために、塗膜基板を50~250℃で加熱しつつ、放射線を照射してもよい。前記放射線の照射量は、1~10,000mJ/cm2が好ましく、100~5,000mJ/cm2が特に好ましい。上記のようにして作製した液晶配向膜は、液晶分子を一定の方向に安定して配向させることができる。
偏光された紫外線の消光比が高いほど、より高い異方性が付与できるため、好ましい。具体的には、直線に偏光された紫外線の消光比は、10:1以上が好ましく、20:1以上がより好ましい。
【0088】
上記で、偏光された放射線を照射した膜は、次いで水及び有機溶媒から選ばれる少なくとも1種を含む溶媒で接触処理してもよい。
接触処理に使用する溶媒としては、光照射によって生成した分解物を溶解する溶媒であれば、特に限定されるものではない。具体例としては、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、及び酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
汎用性や安全性の点から、水、2-プロパンール、1-メトキシ-2-プロパノール及び乳酸エチルからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。水、2-プロパンール、及び水と2-プロパノールの混合溶媒が特に好ましい。
【0089】
本発明において、偏光された放射線を照射した膜と有機溶媒を含む溶液との接触処理は、浸漬処理、噴霧(スプレー)処理などの、膜と液とが好ましくは十分に接触するような処理で行なわれる。なかでも、有機溶媒を含む溶液中に膜を、好ましくは10秒~1時間、より好ましくは1~30分浸漬処理する方法が好ましい。接触処理は常温でも加温してもよいが、好ましくは10~80℃、より好ましくは20~50℃で実施される。また、必要に応じて超音波などの接触を高める手段を施すことができる。
上記接触処理の後に、使用した溶液中の有機溶媒を除去する目的で、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトンなどの低沸点溶媒によるすすぎ(リンス)や乾燥のいずれか、又は両方を行ってよい。
【0090】
さらに、上記で溶媒による接触処理をした膜は、溶媒の乾燥及び膜中の分子鎖の再配向を目的に150℃以上で加熱してもよい。
加熱の温度としては、150~300℃が好ましい。温度が高いほど、分子鎖の再配向が促進されるが、温度が高すぎると分子鎖の分解を伴う恐れがある。そのため、加熱温度としては、180~250℃がより好ましく、200~230℃が特に好ましい。
加熱する時間は、短すぎると分子鎖の再配向の効果が得られない可能性があり、長すぎると分子鎖が分解してしまう可能性があるため、10秒~30分が好ましく、1分~10分がより好ましい。
【0091】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、前記液晶配向膜の製造方法によって得られた液晶配向膜を具備することを特徴とする。
本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向剤から前記液晶配向膜の製造方法によって液晶配向膜付きの基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製し、それを使用して液晶表示素子としたものである。
【0092】
液晶セル作製方法の一例として、パッシブマトリクス構造の液晶表示素子を例にとり説明する。尚、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられたアクティブマトリクス構造の液晶表示素子であってもよい。
まず、透明なガラス製の基板を準備し、一方の基板の上にコモン電極を、他方の基板の上にセグメント電極を設ける。これらの電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされる。次いで、各基板の上に、コモン電極とセグメント電極を被覆するようにして絶縁膜を設ける。絶縁膜は、例えば、ゾル-ゲル法によって形成されたSiO2-TiO2からなる膜とすることができる。
次に、各基板の上に、本発明の液晶配向膜を形成する。次に、一方の基板に他方の基板を互いの配向膜面が対向するようにして重ね合わせ、周辺をシール材で接着する。シール材には、基板間隙を制御するために、通常、スペーサーを混入しておく。また、シール材を設けない面内部分にも、基板間隙制御用のスペーサーを散布しておくことが好ましい。シール材の一部には、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておく。
次に、シール材に設けた開口部を通じて、2枚の基板とシール材で包囲された空間内に液晶材料を注入する。その後、この開口部を接着剤で封止する。注入には、真空注入法を用いてもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法を用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付ける。以上の工程を経ることにより、本発明の液晶表示素子が得られる。
【0093】
本発明において、シール剤としては、例えば、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、ヒドロキシル基、アリル基、アセチル基などの反応性基を有する紫外線照射や加熱によって硬化する樹脂が用いられる。特に、エポキシ基と(メタ)アクリロイル基の両方の反応性基を有する硬化樹脂系が好ましい。
本発明のシール剤には接着性、耐湿性の向上を目的として無機充填剤を配合してもよい。使用しうる無機充填剤としては特に限定されない。具体的には、球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、シリコンカーバイド、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸リチウムアルミニウム、珪酸ジルコニウム、チタン酸バリウム、硝子繊維、炭素繊維、二硫化モリブデン、アスベスト等が挙げられる。 なかでも、球状シリカ、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化チタン、チタンブラック、窒化珪素、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、マイカ、タルク、クレー、アルミナ、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、又は珪酸アルミニウムが好ましい。無機充填剤は2種以上を混合して用いても良い。
【実施例】
【0094】
以下に、本発明について実施例等を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、化合物、溶媒の略号の意味は、以下のとおりである。ここで、Bocはターシャリーブチルオキシカルボニル基を表す。
【化40】
【0095】
【0096】
【0097】
<有機溶媒>
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 BCS:ブチルセロソルブ
GBL:γ-ブチロラクトン、 THF:テトラヒドロフラン
【0098】
(1H-NMRの測定)
装置:Varian NMR system 400NB(400MHz)(Varian社製)、及びJMTC-500/54/SS(500MHz)(JEOL社製)
測定溶媒:CDCl3(重水素化クロロホルム),DMSO-d6(重水素化ジメチルスルホキシド)
基準物質:TMS(テトラメチルシラン)(δ:0.0ppm,1H)及びCDCl3(δ:77.0ppm,13C)
【0099】
<添加剤S1の合成>
【化43】
テトラヒドロフラン(300g)中、4,4’-ジアミノ-N-メチルジフェニルアミン(10.0g、43.2mmol)を仕込み、氷冷下、3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(23.5g)をテトラヒドロフラン(50g)で希釈した溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、内容量を128gとした。60℃で加熱溶解後、アセトニトリル(300g)を加えて室温で撹拌することで結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、濾物を乾燥させることで、化合物[S1]を得た(収量:22.8g、収率:75%、灰色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.20(s, 2H), 7.25(d, 4H, J = 6.8 Hz), 6.81(d, 4H, J = 6.8 Hz), 6.06(t, 2H, J = 5.8 Hz), 3.75(q, 12H, J = 7.5 Hz), 3.14(s, 3H), 3.06-3.01(m, 4H), 1.48-1.44(m, 4H), 1.15(t, 18H, J = 7.5 Hz), 0.57-0.53(m, 4H).
【0100】
<添加剤S2の合成>
【化44】
テトラヒドロフラン(150g)中、[DA-4](10.0g、23.7mmol)を仕込み、氷冷下、3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(12.3g)をテトラヒドロフラン(50g)で希釈した溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で24時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、内容量を50gとした後、アセトニトリル(100g)を加えて室温で撹拌することで結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、濾物を乾燥させることで、化合物[S2]を得た(収量:16.9g、収率:78%、淡茶色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.11(s, 2H), 7.83(s, 2H), 7.50(d, 2H, J = 8.8 Hz), 7.17(d, 4H, J = 7.0 Hz), 7.15(d, 2H, J = 8.8 Hz), 6.72(d, 4H, J = 7.0 Hz), 6.03-6.00(m, 2H), 3.84(s, 3H), 3.75(q, 12H, J = 7.0 Hz), 3.25(s, 6H), 3.05-2.99(m, 4H), 1.48-1.43(m, 4H), 1.14(t, 18H, J = 7.0 Hz), 0.57-0.52(m, 4H).
【0101】
<添加剤S3の合成>
【化45】
テトラヒドロフラン(23g)中、[DA-5](1.50g、3.80mmol)を仕込み、氷冷下、3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(1.98g)をテトラヒドロフラン(7g)で希釈した溶液を5分かけて滴下した。滴下終了後、室温で18時間撹拌後、50℃で3時間撹拌した。中間体が残存していたため、3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(0.38g)を追加添加し、50℃で21時間撹拌した。その後、さらに3-トリエトキシシリルプロピルイソシアネート(0.09g)を追加添加し、50℃で6時間撹拌した。反応液を減圧濃縮し、内容量を10gとした後、アセトニトリル(15g)を加えて室温で撹拌することで結晶を析出させた。析出した結晶を濾過し、濾物を乾燥させることで、化合物[S3]を得た(収量:3.0g、収率:89%、薄紫色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.36(s, 2H), 7.41(d, 4H, J = 6.8 Hz), 7.36(d, 4H, J = 6.8 Hz), 7.02(d, 4H, J = 6.8 Hz), 6.81(d, 4H, J = 6.8 Hz), 6.13(t, 2H, J = 5.8 Hz), 3.76(q, 12H, J = 7.0 Hz), 3.22(s, 6H), 3.08-3.03(m, 4H), 1.50-1.46(m, 4H), 1.14(t, 18H, J = 7.0 Hz), 0.58-0.54(m, 4H).
【0102】
<添加剤S4の合成>
【化46】
アセトニトリル(30g)中、1,4-フェニレンジイソシアナート(1.98g、12.3mmol)を仕込み、室温にて、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(4.82g)をアセトニトリル(10g)で希釈した溶液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、室温で18時間撹拌した。この間、撹拌不良となったため、アセトニトリル(90g)を追加した。NMRにて反応完了を確認後、析出した結晶を濾過し、濾物を乾燥させることで、化合物[S4]を得た(収量:6.3g、収率:94%、白色結晶)。
1H-NMR(400MHz, DMSO-d6, δppm):8.16(s, 2H), 7.20(s, 4H), 6.04(t, 2H, J = 5.6 Hz), 3.69(q, 8H, J = 7.0 Hz), 3.05-2.99(m, 4H), 1.46-1.41(m, 4H), 1.13(t, 12H, J = 7.0 Hz), 0.55-0.50(m, 4H), 0.06(s, 6H).
【0103】
<粘度>
下記合成例における重合体溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0104】
(合成例1)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの200mLlの四つ口フラスコに、DA-1(4.03g,16.5mmol)、DA-2(3.59g、9.0mmol)、及びDA-3(2.51g、4.5mmol)を加えた後、NMP(74.0g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながらCA-1を(4.37g、19.5mmol)及びNMPを9.0gを加え、40℃条件下にて3時間攪拌した。その後、25℃条件下にてCA-2を(1.71g,8.7mmol)、及びNMPを9.0g加えた後、さらに12時間攪拌することでポリアミック酸溶液(粘度は480mPa・s)を得た。このポリアミック酸の分子量はMn=10,660であり、Mw=20,512であった。
【0105】
このポリアミック酸溶液を80.0g分取し、NMPを20.0g加えた後、無水酢酸を6.8g、及びピリジンを1.8g加え、50℃で3時間反応させた。この反応溶液を434.4gのメタノールに撹拌しながら投入し、析出した沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミドの粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は75%であった。得られたポリイミド粉末20.0gにNMP80.0gを加えて70℃にて20hr攪拌して溶解させることでポリイミド溶液(SPI-A1)を得た。
【0106】
[実施例1~3]及び[比較例1~2]
合成例1で得られたポリアミック酸溶液を、得られる液晶配向剤中の溶媒表1に示す組成になるように、攪拌しながら、溶媒及び添加剤S1、S2、又はS3を加え、更に室温で2時間撹拌することにより液晶配向剤を得た。
【0107】
【表1】
※1:液晶配向剤中の全重合体100重量部に対する各重合体の含有量(重量部)を示す。
※2:液晶配向剤中の全重合体100重量部に対する各添加剤の含有量(重量部)を示す。
※3:液晶配向剤100質量部に対する各溶媒の含有量(重量部)を示す。
【0108】
以下に、蓄積電荷の緩和特性、フリッカー特性、液晶配向性を評価するための液晶セルの作製方法を示す。
FFS方式の液晶表示素子の構成を備えた液晶セルを作製する。初めに、電極付きの基板を準備した。基板は、縦30mm、横35mm、厚さ0.7mmのガラス基板である。基板上には第1層目として対向電極を構成する、IZO電極が全面に形成されている。第1層目の対向電極の上には、第2層目として、CVD法により成膜されたSiN(窒化珪素)膜が形成されている。第2層目のSiN膜の膜厚は500nmであり、層間絶縁膜として機能する。第2層目のSiN膜の上には、第3層目として、IZO膜をパターニングして形成された櫛歯状の画素電極が配置され、第1画素及び第2画素の2つの画素を形成している。各画素のサイズは、縦10mm、横約5mmである。このとき、第1層目の対向電極と第3層目の画素電極とは、第2層目のSiN膜の作用により、電気的に絶縁されている。
【0109】
第3層目の画素電極は、中央部分が屈曲した、「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成された、櫛歯状の形状を有する。各電極要素の短手方向の幅は3μmであり、電極要素間の間隔は6μmである。各画素を形成する画素電極が、中央部分の屈曲した、「くの字」形状の電極要素を複数配列して構成されているため、各画素の形状は長方形状ではなく、電極要素と同様に中央部分で屈曲する、太字の、「くの字」に似た形状を備える。そして、各画素は、その中央の屈曲部分を境にして上下に分割され、屈曲部分の上側の第1領域と下側の第2領域を有する。
各画素の第1領域と第2領域とを比較すると、それらを構成する画素電極の電極要素の形成方向が異なるものとなっている。すなわち、後述する液晶配向膜のラビング方向を基準とした場合、画素の第1領域では、画素電極の電極要素が+10°の角度(時計回り)をなすように形成され、画素の第2領域では、画素電極の電極要素が-10°の角度(時計回り)をなすように形成されている。すなわち、各画素の第1領域と第2領域とでは、画素電極と対向電極との間の電圧印加によって誘起される液晶の、基板面内での回転動作(インプレーン・スイッチング)の方向が、互いに逆方向となるように構成されている。
【0110】
次に、実施例及び比較例で得られた液晶配向剤を、孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、準備された上記電極付き基板に、スピンコート塗布にて塗布した。80℃のホットプレート上で2分間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブンで20分間焼成を行い、膜厚60nmのポリイミド膜を得た。このポリイミド膜をレーヨン布でラビング(ローラー直径:120mm、ローラー回転数:500rpm、移動速度:30mm/sec、押し込み長:0.3mm、ラビング方向:3層目IZO櫛歯電極に対して10°傾いた方向)した後、純水中にて1分間超音波照射をして洗浄を行い、エアブローにて水滴を除去した。その後、80℃で15分間乾燥して、液晶配向膜付き基板を得た。また、対向基板として、裏面にITO電極が形成されている、高さ4μmの柱状スペーサーを有するガラス基板にも、上記と同様にしてポリイミド膜を形成し、上記と同様の手順で、配向処理が施された液晶配向膜付き基板を得た。これら2枚の液晶配向膜付き基板を1組とし、基板上に液晶注入口を残した形でシール剤を印刷し、もう1枚の基板を、液晶配向膜面が向き合い、ラビング方向が逆平行になるようにして張り合わせた。その後、シール剤を硬化させて、セルギャップが4μmの空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶MLC-3019(メルク社製)を注入し、注入口を封止して、FFS方式の液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、23℃で一晩放置してから液晶配向性の評価に使用した。
【0111】
<蓄積電荷の緩和特性>
上記液晶セルを、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、画素電極と対向電極とを短絡して同電位にした状態で、2枚の偏光板の下からLEDバックライトを照射しておき、2枚の偏光板の上で測定するLEDバックライト透過光の輝度が最小となるように、液晶セルの角度を調節した。
次に、この液晶セルに周波数30Hzの矩形波を印加しながら、23℃の温度下でのV-T特性(電圧-透過率特性)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を算出した。この交流電圧は電圧に対する輝度の変化が大きい領域に相当するため、蓄積電荷を輝度を介して評価するのに都合がよい。
次に、23℃の温度下において相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波を5分間印加した後、+1.0Vの直流電圧を重畳し30分間駆動させた。その後、直流電圧を切り、再び相対透過率が23%となる交流電圧で、なおかつ周波数30Hzの矩形波のみを15分間印加した。
蓄積した電荷の緩和が速いほど、直流電圧を重畳したときの液晶セルへの電荷蓄積も速いことから、蓄積電荷の緩和特性は、直流電圧を重畳した直後の相対透過率から2%以上低下するまでに要した時間で評価した。すなわち、相対透過率が30分以内に2%以上低下した場合に「良好」、30分経過しても相対低下率が2%以上低下しない場合に「不良」と定義して評価を行った。
【0112】
<液晶配向性の評価>
この液晶セルを用い、60℃の恒温環境下、周波数30Hzで9VPPの交流電圧を190時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間を短絡させた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
放置の後、液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整した。そして、第1画素の第2領域が最も暗くなる角度から第1領域が最も暗くなる角度まで液晶セルを回転させたときの回転角度を角度Δとして算出した。第2画素でも同様に、第2領域と第1領域とを比較し、同様の角度Δを算出した。そして、第1画素と第2画素の角度Δ値の平均値を液晶セルの角度Δとして算出した。この液晶セルの角度Δの値が0.2度未満の場合には「良好」、角度Δの値が0.2度以上の場合には「不良」と定義し評価した。
【0113】
<電圧保持率(VHR)の評価>
得られた液晶セルに60℃の温度下で1Vの電圧を60μs間印加し、50ms後の電圧を測定し、電圧がどのくらい保持できているかを電圧保持率として計算した。なお、電圧保持率の測定には、東陽テクニカ社製の電圧保持率測定装置VHR-1を使用した。
【0114】
<光学特性(透明性)の評価>
縦40mm、横40m、厚さ1.0mmの石英基板を準備した。次に、液晶配向剤を1.0μmのフィルターで濾過した後、上記石英基板にスピンコートした。次いで、80℃のホットプレート上で2分間乾燥後、230℃で20分間焼成し、各基板上に膜厚100nmのポリイミド膜を得た。
透明性の評価は、前記手法で得られた基板の透過率を測定することで行った。具体的には、測定装置にUV-3600(島津製作所社製)を用い、温度25℃、スキャン波長を300~800nmの条件で、透過率を測定した。その際、リファレンス(参照例)に何も塗布していない石英基板を用いて行った。評価は、400~800nmの波長の平均透過率を算出し、透過率が高いものほど、透明性に優れるとした。
【0115】
<評価結果>
上記実施例1~3、及び比較例1~2の各液晶配向剤を使用する液晶表示素子に関し、上記で実施した残像消去時間の評価、液晶配向の安定性評価、及び透明性の評価の結果を表2に示す。
【0116】
【表2】
※1:液晶配向剤中の全重合体100重量部に対する各重合体の含有量(重量部)を示す。
※2:液晶配向剤中の全重合体100重量部に対する各添加剤の含有量(重量部)を示す。
【0117】
表2に見られるように、実施例1~3の液晶配向剤を使用する液晶表示素子は、電圧保持率に優れ、蓄積電荷の緩和が早く、液晶配向性や透明性が良好であることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明の液晶配向剤は、TN方式、VA方式等の縦電界方式、特に、IPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示素に広く用いられる。
なお、2018年3月19日に出願された日本特許出願2018-51091号の明細書、特許請求の範囲、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。