(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】液晶組成物および液晶調光素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20230822BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/14 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/16 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/18 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/20 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/32 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20230822BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20230822BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230822BHJP
G02F 1/1334 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C09K19/38
C09K19/12
C09K19/14
C09K19/16
C09K19/18
C09K19/20
C09K19/30
C09K19/32
C09K19/34
C09K19/54 Z
G02F1/13 500
G02F1/1334
(21)【出願番号】P 2020532374
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2019028594
(87)【国際公開番号】W WO2020022246
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2018141672
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩章
(72)【発明者】
【氏名】田辺 真裕美
(72)【発明者】
【氏名】田村 典央
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-219659(JP,A)
【文献】特開2009-184974(JP,A)
【文献】特開2009-286976(JP,A)
【文献】特開2009-186785(JP,A)
【文献】特開2010-163505(JP,A)
【文献】国際公開第2009/104468(WO,A1)
【文献】特開2010-248467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 19/00- 19/60
G02F 1/13- 1/141
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一成分として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として
、一般式(3)で表される化合物を含有する液晶組成物、を含有する重合性組成物。
【化1】
(式(1)において、R
14は炭素数5から12のアルキルであり、R
15は独立して水素またはメチルであり、nは独立して2から12の整数である。)
【化2】
(式(3)において、R
3
およびR
4
は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z
3
は、単結合、-CH
2
-CH
2
-、-CH=CH-、-C≡C-、またはカルボニルオキシであり;cは1、2、または3である。)
【請求項2】
重合性組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が1重量%から80重量%の範囲である、請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
第二成分である液晶組成物が、式(2)で表される化合物を含有する、請求項1または2に記載の重合性組成物。
【化3】
(式(2)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキルまたは、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり;環Bは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、1,1,7-トリフルオロインダン-2,5-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル、4,6-ジフルオジベンゾチオフェン-3,7-ジイル、または4,7-ジフルオロクロメン-3,8-ジイルであり;Z
17およびZ
18は独立して、単結合、-CH
2-CH
2-、-CH=CH-、-C≡C-、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり(なお、環AおよびCにオキシが結合していても、環Bにオキシが結合してもいずれも含まれる);aは、1、2、または3であり、bは0または1であり、そしてaとbとの和は3以下である。)
【請求項4】
式(2)で表される化合物が、式(2-1)から式(2-33)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、請求項3に記載の重合性組成物。
【化4】
【化5】
【化6】
(式(2-1)から式(2-33)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。)
【請求項5】
液晶組成物の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が、20重量%から90重量%の範囲である、請求項3に記載の重合性組成物。
【請求項6】
式(3)で表される化合物が、式(3-1)から式(3-22)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つである、請求項
1に記載の重合性組成物。
【化7】
【化8】
(式(3-1)から式(3-22)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。)
【請求項7】
液晶組成物の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が80重量%から10重量%の範囲である、請求項
1または
6に記載の重合性組成物。
【請求項8】
式(4)で表される化合物をさらに含む、請求項1から
7のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化9】
(式(4)において、M
4およびM
5は独立して、水素またはメチルであり;Z
5は炭素数20から86のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1から20のアルキル、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、または-N(R
5)-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、または-C≡C-で置き換えられてもよく、ここでR
5は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
【請求項9】
式(5)で表される化合物をさらに含む、請求項1から
8のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化10】
(式(5)において、M
6は水素またはメチルであり;Z
6は単結合または炭素数1から5のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;R
6は炭素数1から40のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、炭素環式の飽和脂肪族化合物、複素環式の飽和脂肪族化合物、炭素環式の不飽和脂肪族化合物、または複素環式の不飽和脂肪族化合物、から2つの水素を除くことによって生成した二価基で置き換えられてもよく、これらの二価基において、炭素数は5から35であり、少なくとも1つの水素は、炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
【請求項10】
式(5)で表される化合物が、R
6が炭素数1から40のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい、請求項
9に記載の重合性組成物。
【請求項11】
式(6)、式(7)、および式(8)で表される化合物の群から選択された化合物をさらに含む、請求項1から1
0のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化11】
(式(6)、式(7)、および式(8)において、環F、環G、環I、環J、環K、および環Lは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、1,4-シクロへキセニレン、ピリジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、ここで、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルコキシカルボニル、または炭素数1から5のアルカノイルで置き換えられてもよく;Z
7、Z
9、Z
11、Z
12、およびZ
16は独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり;Z
8、Z
10、Z
13、およびZ
15は独立して、単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-、-OCOO-、-CONH-、-NHCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH
3)-、-C(CH
3)=N-、-N=N-、または-C≡C-であり;Z
14は単結合、-O-または-COO-であり;Xは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ、または炭素数1から20のアルコキシカルボニルであり;eおよびgは1から4の整数であり;jおよびlは独立して、0から3の整数であり;jおよびlの和は1から4であり;d、f、h、i、k、およびmは独立して、0から20の整数であり;M
7からM
12は独立して、水素またはメチルである。)
【請求項12】
重合性組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物を含む重合性化合物の総量が1重量%から50重量%の範囲であり、液晶組成物の割合が50重量%から99重量%の範囲である、請求項1から1
1のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項13】
さらに添加物として光重合開始剤を含有する、請求項1から1
2のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項14】
請求項1から1
3のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いた、透明および散乱状態をスイッチングする液晶調光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶組成物に関する。詳しくは、重合性化合物と非重合性ネマチック液晶化合物とを組み合わせた、液晶調光素子用途の液晶組成物および液晶調光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶調光素子は、光散乱を利用した調光素子である。この液晶調光素子は窓ガラスや部屋の仕切りのような建築材料、車載部品などに使われる。これらの素子には、ガラス基板のような硬質基板に加えて、プラスチックフィルムのような軟質基板が使われる。これらの基板に挟持された液晶組成物では、印加する電圧を調節することによって、液晶分子の配列が変わる。この方法によって、液晶組成物を透過する光を制御することができるので、液晶調光素子は、ディスプレイ、光シャッター、調光窓(特許文献1)、スマートウィンドウ(特許文献2)などに幅広く使用されている。
【0003】
液晶調光素子の一例は、光散乱モードの高分子分散型の液晶調光素子である。液晶組成物は、液滴のように重合体中に分散している。この型の液晶調光素子は次の特徴を有している。
・素子の作製が容易である。
・広い面積に渡って膜厚制御が容易であるので、大きな画面の素子を作製することが可能である。
・偏光板を必要としないので、明るい表示が可能である。光散乱を利用するので視野角が広い。
【0004】
高分子分散型の液晶調光素子は、このような優れた性質を持っているので、調光ガラス、投射型ディスプレイ、大面積ディスプレイなどの用途が期待されている。
【0005】
別の一例は、ポリマーネットワーク型の液晶調光素子である。この型の液晶調光素子では、重合体の三次元ネットワーク中に液晶組成物が存在する。液晶組成物は三次元ネットワーク内で連続している点で、高分子分散型とは異なる。ポリマーネットワーク型の液晶調光素子も、高分子分散型の液晶調光素子と同様な特徴を有している。
【0006】
さらに、ポリマーネットワーク型と高分子分散型とが混在した液晶調光素子も存在する。
【0007】
液晶調光素子には適切な特性を有する液晶組成物が用いられる。液晶組成物の特性を向上させることによって、良好な特性を有する液晶調光素子を得ることができる。
【0008】
液晶組成物の特性と液晶調光素子の特性との関連を下記の表1にまとめる。
【0009】
【表1】
液晶組成物の特性を液晶調光素子の特性に基づいてさらに説明する。
【0010】
ネマチック相の温度範囲は、液晶調光素子が使用できる温度範囲に関連する。ネマチック相の好ましい上限温度は約90℃以上であり、そしてネマチック相の好ましい下限温度は約-20℃以下である。
【0011】
液晶組成物の粘度は、液晶調光素子の応答時間に関連する。光の透過率を制御するためには短い応答時間が好ましい。したがって、液晶組成物は粘度が低いことが好ましく、特に、低温で粘度が低いことが望ましい。
【0012】
液晶組成物の光学異方性は、液晶調光素子のヘイズ率に関連する。ヘイズ率は全透過光に対する拡散光の割合である。光を遮断するために、液晶調光素子のヘイズ率を、大きくすることが好ましい。このような大きなヘイズ率を達成するには、大きな光学異方性を有する液晶組成物が望ましい。
【0013】
液晶組成物における誘電率異方性は、液晶調光素子のしきい値電圧や消費電力に寄与する。液晶組成物の大きな誘電率異方性は、液晶調光素子における低いしきい値電圧や小さな消費電力に寄与する。
【0014】
液晶組成物の比抵抗は、液晶調光素子の電圧保持率に寄与する。比抵抗の大きい液晶組成物は、液晶調光素子の初期段階および長時間使用後の電圧保持率を大きくできる。
【0015】
液晶組成物の光や熱に対する安定性や耐候性は、液晶調光素子の寿命に関連する。この安定性や耐候性が良好であるとき、液晶調光素子の寿命を長くできる。
【0016】
液晶調光素子および液晶組成物には、以上のような特性が望まれている。
【0017】
液晶調光素子には、ノーマルモードとリバースモードがある。ノーマルモードでは電圧無印加時に不透明であり、電圧印加時に透明になる。リバースモードでは電圧無印加時に透明であり、電圧印加時に不透明になる。ノーマルモードを有する素子には正の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。リバースモードを有する素子には負の誘電率異方性を有する組成物が用いられる。ノーマルモードの素子が広く用いられている。一方では、素子が故障したときには透明になるリバースモードの素子が自動車の窓などの用途に検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特開平06-273725号公報
【文献】国際公開2011-96386号公報
【文献】特開昭63-278035号公報
【文献】特開平01-198725号公報
【文献】特開平07-104262号公報
【文献】特開平07-175045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の課題は、液晶調光素子作製時の不具合発生を防ぐことである。特に、リバースモード用の液晶調光素子および該素子に適した重合性組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
課題を解決する手段は、以下のとおりである。
[1] 第一成分として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として液晶組成物、を含有する重合性組成物。
【0021】
【化1】
(式(1)において、R
14は炭素数2から12のアルキルであり、R
15は独立して水素またはメチルであり、nは独立して2から12の整数である。)
[2] 重合性組成物の重量に基づいて、第一成分の割合が1重量%から80重量%の範囲である、[1]に記載の重合性組成物。
[3] 第二成分である液晶組成物が、一般式(2)で表される化合物を含有する、[1]または[2]に記載の重合性組成物。
【0022】
【化2】
(式(2)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり;環Bは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、1,1,7-トリフルオロインダン-2,5-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル、4,6-ジフルオジベンゾチオフェン-3,7-ジイル、または4,7-ジフルオロクロメン-3,8-ジイルであり;Z
17およびZ
18は独立して、単結合、-CH=CH-、-C≡C-、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり(なお、環AおよびCにオキシが結合していても、環Bにオキシが結合してもいずれも含まれる);aは、1、2、または3であり、bは0または1であり、そしてaとbとの和は3以下である。)
[4] 式(2)で表される化合物が、式(2-1)から式(2-33)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物である、[3]に記載の重合性組成物。
【0023】
【0024】
【0025】
【化5】
(式(2-1)から式(2-33)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、炭素数2から12のアルケニルオキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルである。
[5] 液晶組成物の重量に基づいて、式(2)で表される化合物の割合が、20重量%から90重量%の範囲である、[3]に記載の重合性組成物。
[6] 第二成分である液晶組成物が、一般式(3)で表される化合物をさらに含有する、[3]から[5]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0026】
【化6】
(式(3)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z
3は、単結合、-CH
2-CH
2-、-CH=CH-、-C≡C-、またはカルボニルオキシであり;cは1、2、または3である。)
[7] 式(3)で表される化合物が、式(3-1)から式(3-22)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つである、[6]に記載の重合性組成物。
【0027】
【0028】
【化8】
(式(3-1)から式(3-22)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルである。)
[8] 液晶組成物の重量に基づいて、式(3)で表される化合物の割合が80重量%から10重量%の範囲である、[6]または[7]に記載の重合性組成物。
[9] 式(4)で表される化合物をさらに含む、[1]から[8]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0029】
【化9】
(式(4)において、M
4およびM
5は独立して、水素またはメチルであり;Z
5は炭素数20から80のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1から20のアルキル、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、または-N(R
5)-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、または-C≡C-で置き換えられてもよく、ここでR
5は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
[10] 式(5)で表される化合物をさらに含む、[1]から[9]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0030】
【化10】
(式(5)において、M
6は水素またはメチルであり;Z
6は単結合または炭素数1から5のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;R
6は炭素数1から40のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、炭素環式の飽和脂肪族化合物、複素環式の飽和脂肪族化合物、炭素環式の不飽和脂肪族化合物、または複素環式の不飽和脂肪族化合物、から2つの水素を除くことによって生成した二価基で置き換えられてもよく、これらの二価基において、炭素数は5から35であり、少なくとも1つの水素は、炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
[11] 式(5)で表される化合物が、R
6が炭素数1から40のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい、[10]に記載の重合性組成物。
[12] 式(6)、式(7)、および式(8)で表される化合物の群から選択された化合物をさらに含む、[1]から[11]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0031】
【化11】
(式(6)、式(7)、および式(8)において、環F、環G、環I、環J、環K、および環Lは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、1,4-シクロへキセニレン、ピリジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、ここで、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルコキシカルボニル、または炭素数1から5のアルカノイルで置き換えられてもよく;Z
7、Z
9、Z
11、Z
12、およびZ
16は独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり;Z
8、Z
10、Z
13、およびZ
15は独立して、単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-、-OCOO-、-CONH-、-NHCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH
3)-、-C(CH
3)=N-、-N=N-、または-C≡C-であり;Z
14は単結合、-O-または-COO-であり;Xは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ、または炭素数1から20のアルコキシカルボニルであり;eおよびgは1から4の整数であり;jおよびlは独立して、0から3の整数であり;jおよびlの和は1から4であり;d、f、h、i、k、およびmは独立して、0から20の整数であり;M
7からM
12は独立して、水素またはメチルである。)
[13] 重合性組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物を含む重合性化合物総量が1重量%から50重量%の範囲であり、液晶組成物の割合が50重量%から99重量%の範囲である、[1]から[12]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
[14] さらに添加物として光重合開始剤を含有する、[1]から[13]のいずれか1項に記載の重合性組成物。
[15] [1]から[14]のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いた、透明および散乱状態をスイッチングする液晶調光素子。
【発明の効果】
【0032】
本発明の重合性組成物は、保管時に析出しないため、保存安定性が高く、液晶調光素子作製時における素子の不具合発生を防ぐことができる。また、本発明の重合性組成物によれば、駆動電圧が低くても作動する液晶調光素子を作製できる。電圧無印加時の本発明の重合性組成物は透明性が高く、かつ、電圧印加時の本発明の組成物は曇り度が高いため、リバースモード用の調光素子に適する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「液晶化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する非重合性化合物および液晶相を有しないが、ネマチック相の温度範囲、粘度、誘電率異方性のような特性を調節する目的で組成物に添加される非重合性化合物の総称である。この化合物は、例えば1,4-シクロヘキシレンや1,4-フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される化合物である。アルケニルを有する液晶化合物は、その意味では重合性ではない。
【0034】
「液晶組成物」は、複数の液晶化合物を混合することによって調製され、ネマチック相を有する。この液晶組成物に、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。液晶化合物の割合は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合は、添加物を含まない液晶組成物に基づいた重量百分率(重量%)で表される。すなわち、液晶化合物や添加物の割合は、液晶化合物の全重量に基づいて算出される。
【0035】
「重合性組成物」は、重合性化合物と液晶組成物との混合物である。重合性化合物には、重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物が必要に応じて添加される。重合性化合物や液晶組成物の割合は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない重合性組成物に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重合開始剤、重合禁止剤、極性化合物のような添加物の割合は、重合性化合物に基づいた重量百分率(重量%)で表される。「液晶複合体」は、組成物の重合によって生成した重合体と液晶組成物を含む。「液晶調光素子」は、液晶複合体を含み、調光に用いられる液晶パネルおよび液晶モジュールの総称である。
【0036】
「ネマチック相の上限温度」を「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「比抵抗が大きい」は、液晶組成物が初期段階において大きな比抵抗を有し、そして長時間使用したあと、大きな比抵抗を有することを意味する。「電圧保持率が大きい」は、素子が初期段階において室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有し、そして長時間使用したあと室温だけでなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を有することを意味する。液晶組成物や素子の特性が経時変化試験によって検討されることがある。「誘電率異方性を上げる」の表現は、誘電率異方性が正である液晶組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である液晶組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0037】
2-フルオロ-1,4-フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルのような、環から2つの水素を除くことによって生成した、左右非対称な二価基にも適用される。このルールは、カルボニルオキシ(-COO-または-OCO-)のような二価の結合基にも適用される。
【0038】
【化12】
液晶化合物のアルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。液晶化合物において、直鎖状アルキルは、分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置は、上限温度を上げるためにシスよりもトランスが好ましい。
【0039】
重合性組成物は、第一成分として式(1)で表される化合物から選択された少なくとも1つの化合物、第二成分として、液晶組成物を含有する。このような重合性組成物は、それを室温または低温で長時間保管した場合にも、成分の分離が無い。従って、重合性組成物を加熱して成分を均一化するなどの追加操作をすること無く、調光素子の作製に使用することができる。本発明の重合性組成物を使用することで、調光素子を製造する際のトラブルを少なくすることができる。
【0040】
第一に第一成分である式(1)で表される化合物に関して説明する。式(1)で表される化合物は、重合性化合物である。
【0041】
【化13】
式(1)において、R
14は炭素数2から12のアルキルであり、R
15は独立してH(水素)またはメチルであり、nは独立して2から12の整数である。
【0042】
重合性組成物を、室温または低温で長時間保管した場合、成分の分離を防ぐためには、R14として炭素数3から12のアルキルが好ましく、炭素数5から12のアルキルが特に好ましい。
【0043】
式(1)の化合物はメソゲンを有する。メソゲンとは、液晶性を発現するような剛直な部位である。そのため、式(1)の化合物を第二成分である液晶組成物に数%以上添加しても、液晶性が維持できる。液晶状態の重合性組成物は、配向層の作用によって同一方向に配向する。この配向は、重合後も維持される。従って、本発明の重合性組成物を用いて作製した調光素子は、高い透明性を有する。
【0044】
第二に、第二成分である、液晶組成物に関して説明する。液晶組成物は、液晶化合物の観点から、液晶組成物Aと液晶組成物Bに分類される。
【0045】
液晶組成物Aは、式(2)および式(3)から選択された液晶化合物のみからなる。式(2)および(3)の液晶化合物は、非重合性ネマチック液晶化合物であり、式(1)などの重合性化合物と組み合わせて使用することで、保管時に結晶の析出がない等の、保存安定性の高い液晶組成物を提供するができ、低い駆動電圧を持ち、電圧無印加時の高い透明性および電圧印加時の高い曇り度を持つ、リバースモード用の液晶調光素子用途の重合性組成物が提供される。液晶組成物Aは、添加物を含有してもよいが、その他の液晶化合物を含有しない。
【0046】
液晶組成物Bは、式(2)および式(3)から選択された液晶化合物の他に、さらにその他の液晶化合物を、必要に応じて添加物などとともに含有する。「その他の液晶化合物」は、式(2)および式(3)とは異なる液晶化合物である。このような化合物は、特性をさらに調整する目的で液晶組成物に混合される。液晶組成物Aは液晶組成物Bに比較して成分の数が少ない。コストを下げるためには、液晶組成物Aは液晶組成物Bよりも好ましい。一方、特性を調整するためには、液晶組成物Bは液晶組成物Aよりも好ましい。
【0047】
液晶化合物の特性を表2にまとめる。表2の記号において、Lは大きいまたは高い、Mは中程度の、Sは小さいまたは低い、を意味する。記号L、M、Sは、液晶化合物のあいだの定性的な比較に基づいた分類であり、記号0(ゼロ)は、極めて小さいことを意味する。液晶化合物の特性は、液晶組成物の特性に直接的に影響を及ぼす。
【0048】
【表2】
式(2)で表される液晶化合物について説明する。
【0049】
【化14】
式(2)において、R
1およびR
2は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、または炭素数2から12のアルケニルオキシ、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Aおよび環Cは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-シクロヘキセニレン、テトラヒドロピラン-2,5-ジイル、1,4-フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた1,4-フェニレン、ナフタレン-2,6-ジイル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたナフタレン-2,6-ジイル、クロマン-2,6-ジイル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられたクロマン-2,6-ジイルであり;環Bは、2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレン、2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレン、2,3-ジフルオロ-5-メチル-1,4-フェニレン、3,4,5-トリフルオロナフタレン-2,6-ジイル、7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイル、1,1,7-トリフルオロインダン-2,5-ジイル、4,6-ジフルオロジベンゾフラン-3,7-ジイル、4,6-ジフルオジベンゾチオフェン-3,7-ジイル、または4,7-ジフルオロクロメン-3,8-ジイルであり;Z
17およびZ
18は独立して、単結合、-CH
2-CH
2-、-CH=CH-、-C≡C-、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシであり(なお、環AおよびCにオキシが結合していても、環Bにオキシが結合してもいずれも含まれる);aは、1、2、または3であり、bは0または1であり、そしてaとbとの和は3以下である。
【0050】
なお、テトラヒドロピラン-2,5-ジイルは、
【0051】
【化15】
好ましいアルキルは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、またはオクチルである。さらに好ましいアルキルは、下限温度を下げるためにメチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチルである。
【0052】
好ましいアルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、またはヘプチルオキシである。さらに好ましいアルコキシは、下限温度を下げるためにメトキシまたはエトキシである。
【0053】
好ましいアルケニルは、ビニル、1-プロペニル、2-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、または5-ヘキセニルである。さらに好ましいアルケニルは、下限温度を下げるために、ビニル、1-プロペニル、3-ブテニル、または3-ペンテニルである。これらのアルケニルにおける-CH=CH-の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。下限温度を下げるためなどから1-プロペニル、1-ブテニル、1-ペンテニル、1-ヘキセニル、3-ペンテニル、3-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランスが好ましい。2-ブテニル、2-ペンテニル、2-ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシスが好ましい。
【0054】
好ましいアルケニルオキシは、ビニルオキシ、アリルオキシ、3-ブテニルオキシ、3-ペンテニルオキシ、または4-ペンテニルオキシである。さらに好ましいアルケニルオキシは、下限温度を下げるために、アリルオキシまたは3-ブテニルオキシである。
【0055】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルの好ましい例は、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシル、7-フルオロヘプチル、または8-フルオロオクチルである。さらに好ましい例は、誘電率異方性を上げるために2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、または5-フルオロペンチルである。
【0056】
少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、2,2-ジフルオロビニル、3,3-ジフルオロ-2-プロペニル、4,4-ジフルオロ-3-ブテニル、5,5-ジフルオロ-4-ペンテニル、または6,6-ジフルオロ-5-ヘキセニルである。さらに好ましい例は、下限温度を下げるために2,2-ジフルオロビニルまたは4,4-ジフルオロ-3-ブテニルである。
【0057】
式(2)において、好ましいR1またはR2は、光や熱に対する安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルであり、誘電率異方性を上げるために炭素数1から12のアルコキシである。
【0058】
好ましい環Aまたは環Cは、下限温度を下げるために、または上限温度を上げるために、1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4-フェニレンである。
【0059】
好ましい環Bは、下限温度を下げるために2,3-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり、光学異方性を下げるために2-クロロ-3-フルオロ-1,4-フェニレンであり、誘電率異方性を上げるために7,8-ジフルオロクロマン-2,6-ジイルである。
【0060】
Z17およびZ18は独立して、単結合、-CH2-CH2-、-CH=CH-(エチレン)、-C≡C-、カルボニルオキシ、またはメチレンオキシである。好ましいZ17またはZ18は下限温度を下げるために単結合またはエチレンであり、誘電率異方性を上げるためにメチレンオキシである。
【0061】
aは、1、2、または3であり;bは、0または1であり;aおよびbの和は3以下である。好ましいaは下限温度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。好ましいbは誘電率異方性を上げるために0であり、下限温度を下げるために1である。
【0062】
好ましい化合物(2)は、化合物(2-1)から化合物(2-33)である。
【0063】
【0064】
【0065】
【化18】
式(2-1)から式(2-33)において、R
1およびR
2は、式(2)と同様である。
【0066】
これらの化合物において、化合物(2)の少なくとも1つが、化合物(2-1)、化合物(2-2)、化合物(2-3)、化合物(2-4)、化合物(2-6)、化合物(2-7)、化合物(2-8)、または化合物(2-10)であることが好ましい。 第二成分の少なくとも2つが、化合物(2-1)および化合物(2-6)、化合物(2-1)および化合物(2-10)、化合物(2-3)および化合物(2-6)、化合物(2-3)および化合物(2-10)、化合物(2-4)および化合物(2-6)、または化合物(2-4)および化合物(2-10)の組み合わせであることが好ましい。
【0067】
式(3)で表される化合物は以下の通りである。
【0068】
【化19】
(式(3)において、R
3およびR
4は独立して、炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、炭素数2から12のアルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数2から12のアルケニルであり;環Dおよび環Eは独立して、1,4-シクロヘキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、または2,5-ジフルオロ-1,4-フェニレンであり;Z
3は、単結合、-CH
2-CH
2-、-CH=CH-、-C≡C-、またはカルボニルオキシ(なお、環Dにカルボニルが結合していても、環Eにカルボニルが結合してもいずれも含まれる);cは1、2、または3である。)
好ましいR
3またはR
4は、上限温度を上げるために、または下限温度を下げるために炭素数2から12のアルケニルであり、光や熱に対する安定性を上げるために炭素数1から12のアルキルである。
【0069】
好ましいアルキル、アルコキシ、アルケニル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキル、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルケニルの好ましい例は、前記式(2)で表される化合物と同様である。また、塩素で置き換えられたアルキルおよびアルケニルは、フッ素を塩素に置換したものが好ましい例となる。
【0070】
好ましい環Dまたは環Eは、上限温度を上げるために1,4-シクロヘキシレンであり、下限温度を下げるために1,4-フェニレンである。
【0071】
好ましいZ3は、光や熱に対する安定性を上げるために単結合である。
【0072】
好ましいcは、下限温度を下げるために1であり、上限温度を上げるために2または3である。
【0073】
好ましい化合物(3)は、化合物(3-1)から化合物(3-22)である。
【0074】
【0075】
【化21】
(式(3-1)から式(3-22)において、R
3およびR
4は、前記式(3)と同様である。
【0076】
これらの化合物において、第二成分の少なくとも1つが、化合物(3-1)、化合物(3-3)、化合物(3-5)、化合物(3-6)、化合物(3-8)、または化合物(3-9)であることが好ましい。第二成分の少なくとも2つが化合物(3-1)および化合物(3-5)、化合物(3-1)および化合物(3-6)、化合物(3-1)および化合物(3-8)、化合物(3-1)および化合物(3-9)、化合物(3-3)および化合物(3-5)、化合物(3-3)および化合物(3-6)、化合物(3-3)および化合物(3-8)、または化合物(3-3)および化合物(3-9)の組み合わせであることが好ましい。
【0077】
液晶組成物における第二成分の好ましい組み合わせは、式(2)の液晶化合物単独使用であるか、さらに、式(2)の液晶化合物と式(3)の液晶化合物を両方とも使用することである。
【0078】
重合性組成物の重量に基づいて、式(1)の化合物である第一成分の割合は、1重量%から80重量%の範囲であることが好ましく、調光素子の電圧印加時のヘイズ率を向上させるために、1重量%から50重量%の範囲であることがさらに好ましく、2重量%から20重量%の範囲であることが特に好ましい。 重合性組成物の重量に基づいて、液晶組成物は99重量%から20重量%の範囲であることが好ましく、調光素子の電圧印加時のヘイズ率を向上させるために、99重量%から50重量%の範囲であることがさらに好ましく、98重量%から80重量%の範囲であることが特に好ましい。
【0079】
式(2)の液晶化合物の割合は、液晶組成物の重量に基づいて、10重量%から100重量%の範囲にあり、素子の駆動電圧を低下させるために20重量%以上であり、上限温度を上げるために、または下限温度を下げるために90重量%以下であることが好ましい。さらに好ましい割合は30重量%から85重量%の範囲であり、特に好ましい割合は40重量%から80重量%の範囲である。 式(3)の液晶化合物の割合は、液晶組成物の重量に基づいて、0重量%から90重量%の範囲にあり、上限温度を上げるために、または下限温度を下げるために10重量%以上であり、素子の駆動電圧を低下させるために80重量%以下であることが好ましい。さらに好ましい割合は15重量%から70重量%の範囲であり、特に好ましい割合は20重量%から60重量%の範囲である。
【0080】
液晶組成物Bは、上記化合物(2)および(3)と共に、さらに他の液晶化合物を含む。他の液晶化合物としては、公知のものを特に制限なく使用できる。たとえば公知のディスコチック液晶などが挙げられる。重合性組成物中の、他の液晶化合物の含有量は、前記化合物(1)~(3)の総量を引いた差分に相当するが、好ましくは10重量%以下の範囲にある。
【0081】
本発明の重合性組成物には、式(1)の重合性化合物以外のその他の公知の重合性化合物を添加してもよい。このとき、素子のヘイズ率の増大および駆動電圧の低下のため、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)、化合物(7)、または化合物(8)を好適に使用できる。これらの重合性化合物は、複数を選択して併用してもよい。
【0082】
第三に、化合物(4)~(8)について説明する。
【0083】
化合物(4)は式(4)で表される。
【0084】
【化22】
(式(4)において、M
4およびM
5は独立して、水素またはメチルであり;Z
5は炭素数20から86のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1から20のアルキル、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-NH-、または-N(R
5)-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-CH
2-は、-CH=CH-、または-C≡C-で置き換えられてもよく、ここでR
5は、炭素数1から12のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
化合物(4)はジ(メタ)アクリレートであるが、Z
5の置換基によってはトリ(メタ)アクリレート、またはテトラ(メタ)アクリレートもある。Z
5はアルキレンなどで、重合体は網目構造を形成しやすい。Z
5の分子鎖が短いとき、重合体の架橋部位が近接するので、網目が小さくなる。Z
5の分子鎖が長いとき、重合体の架橋部位が離れ、分子運動の自由度が向上するので、駆動電圧が下がる。Z
5が分岐状であるとき、自由度がさらに向上するので、駆動電圧がさらに下がる。この効果を向上させるために、化合物(4)とは異なる重合性化合物を併用してもよい。化合物(4)が揮発性である場合は、そのオリゴマーを用いてもよい。化合物(4)において、重合性基が多い場合は、架橋によって液滴を囲む重合体が固くなるか、または網目が密になる。
【0085】
式(4)において、好ましいM4またはM5は、反応性を上げるために水素である。
【0086】
好ましいZ5は、低電圧駆動のために、炭素数2から60のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、炭素数1から20のアルキルで置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。
【0087】
さらに好ましいZ5は、低電圧駆動のために、少なくとも1つの水素がアルキルで置き換えられた分岐状アルキレンである。アルキレンの2つの水素がアルキルで置き換えられたとき、立体障害を防ぐことが好ましい。例えば、2つのアルキルを充分に離す、またはアルキルの一方には炭素数1から5のアルキルを用いる。少なくとも3つの水素がアルキルで置き換えられたときも同様である。
【0088】
化合物(4)の具体例を以下に示す。
【0089】
【化23】
式(4-1)において、nは1から10の整数であり、
式(4-2)において、mは2から20の整数であり、
式(4-3)において、R
7およびR
9は独立して、炭素数1から5のアルキルであり、R
8およびR
10は独立して、炭素数5から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、Z
7は炭素数10から30のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、 式(4-4)においてpは3から10の整数であり、Qは、水素またはメチルであり、 式(4-5)においてR
11はOH、(メタ)アクロイル、または式(4-5)のR
11以外の残基が-O-を介して結合した構造であり、R
12は水素(H)またはメチルである。
【0090】
化合物(4-3)の具体例を以下に示す。
【0091】
【化24】
式(4-3-1)および式(4-3-2)において、R
7およびR
9は、エチルであり、R
8およびR
10は独立して、-CH
2OCOC
9H
19、-CH
2OCOC
10H
21、-CH
2OC
8H
17、または-CH
2OC
11H
23である。
【0092】
化合物(5)は、式(5)で表される。
【0093】
【化25】
(式(5)において、M
6は水素またはメチルであり;Z
6は単結合または炭素数1から5のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく;R
6は炭素数1から40のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH
2-は、炭素環式の飽和脂肪族化合物、複素環式の飽和脂肪族化合物、炭素環式の不飽和脂肪族化合物、または複素環式の不飽和脂肪族化合物、から2つの水素を除くことによって生成した二価基で置き換えられてもよく、これらの二価基において、炭素数は5から35であり、少なくとも1つの水素は、炭素数1から12のアルキルで置き換えられてもよく、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。)
化合物(5)はアクリレート誘導体またはメタクリレート誘導体である。R
6が環状構造を有するとき、液晶組成物との親和性が向上する。R
6がアルキレンであるとき、重合体は網目構造を形成しやすい。この重合体では、アルキレンによって分子運動の自由度が向上するので、駆動電圧が下がる。この効果をさらに向上させるために、化合物(5)とは異なる重合性化合物を併用してもよい。化合物(5)が揮発性である場合は、そのオリゴマーを用いてもよい。
【0094】
式(5)において、好ましいM6は、反応性を上げるために水素である。
【0095】
好ましいZ6は、単結合または炭素数1から5のアルキレンであり、このアルキレンにおいて、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。
【0096】
好ましいR6は、炭素数1から40のアルキル(アルキルには、シクロアルキルを含む)であり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの水素は、フッ素で置き換えられてもよく、少なくとも1つの-CH2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよいが、より好ましくは、炭素数5から30のアルキルである。さらに好ましいR6は、炭素数5から30の分岐状アルキルである。 化合物(5)の具体例を以下に示す。
【0097】
【化26】
式(5-1)から式(5-5)において、R
11は、炭素数5から20のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよく、R
12およびR
13は独立して、炭素数3から10のアルキルであり、このアルキルにおいて、少なくとも1つの-CH
2-は、-O-、-CO-、-COO-、または-OCO-で置き換えられてもよい。
【0098】
化合物(6)、(7)および(8)はそれぞれ、式(6)、式(7)、および式(8)で表される化合物であり、重合性組成物はこれらの群から選択された化合物をさらに含んでもよい。
【0099】
【化27】
(式(6)、式(7)、および式(8)において、環F、環G、環I、環J、環K、および環Lは独立して、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、1,4-シクロへキセニレン、ピリジン-2,5-ジイル、1,3-ジオキサン-2,5-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはフルオレン-2,7-ジイルであり、ここで、少なくとも1つの水素はフッ素、塩素、シアノ、ヒドロキシ、ホルミル、トリフルオロアセチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、メチル、炭素数1から5のアルコキシ、炭素数1から5のアルコキシカルボニル、または炭素数1から5のアルカノイルで置き換えられてもよく;Z
7、Z
9、Z
11、Z
12、およびZ
16は独立して、単結合、-O-、-COO-、-OCO-、または-OCOO-であり;Z
8、Z
10、Z
13、およびZ
15は独立して、単結合、-OCH
2-、-CH
2O-、-COO-、-OCO-、-COS-、-SCO-、-OCOO-、-CONH-、-NHCO-、-CF
2O-、-OCF
2-、-CH
2CH
2-、-CF
2CF
2-、-CH=CHCOO-、-OCOCH=CH-、-CH
2CH
2COO-、-OCOCH
2CH
2-、-CH=CH-、-N=CH-、-CH=N-、-N=C(CH
3)-、-C(CH
3)=N-、-N=N-、または-C≡C-であり;Z
14は単結合、-O-または-COO-であり;Xは水素、フッ素、塩素、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、シアノ、炭素数1から20のアルキル、炭素数2から20のアルケニル、炭素数1から20のアルコキシ、または炭素数1から20のアルコキシカルボニルであり;eおよびgは1から4の整数であり;jおよびlは独立して、0から3の整数であり;jおよびlの和は1から4であり;d、f、h、i、k、およびmは独立して、0から20の整数であり;M
7からM
12は独立して、水素またはメチルである。)
化合物(6)、化合物(7)、および化合物(8)は、少なくとも1つのアクリロイルオキシ(-OCO-CH=CH
2)またはメタクリロイルオキシ(-OCO-(CH
3)C=CH
2)を有する。液晶化合物は、メソゲン(液晶性を発現するような剛直な部位)を有するが、これらの化合物もメソゲンを有する。そのため、これらの化合物は、液晶化合物とともに配向層の作用によって同一方向に配向する。この配向は、重合後も維持される。重合して得られた液晶複合体は、高い透明性を有する。その他の特性を向上させるために、化合物(6)、化合物(7)、および化合物(8)とは異なる重合性化合物を併用してもよい。
【0100】
式(6)、式(7)、および式(8)において、好ましい環は、1,4-シクロへキシレン、1,4-フェニレン、2-フルオロ-1,4-フェニレン、2-メチル-1,4-フェニレン、2-メトキシ-1,4-フェニレン、または2-トリフルオロメチル-1,4-フェニレンである。さらに好ましい環は、1,4-シクロへキシレンまたは1,4-フェニレンである。
【0101】
式(6)および式(7)において、好ましいZ8、Z10、Z13、またはZ15は、単結合、-OCH2-、-CH2O-、-COO-、-OCO-、-CH2CH2-、-CH2CH2COO-、または-OCOCH2CH2-である。
【0102】
化合物(6)の具体例を以下に示す。
【0103】
【0104】
【化29】
式(6-1)から式(6-24)において、M
7は水素またはメチルであり、dは1から20の整数である。組成物に対する相溶性を増すため、dは3から12の整数であることが好ましい。
【0105】
化合物(7)の具体例を以下に示す。
【0106】
【0107】
【0108】
【化32】
式(7-1)から式(7-31)において、M
8およびM
9は独立して、水素またはメチルであり、fおよびhは独立して、1から20の整数である。組成物に対する相溶性を増すため、fおよびhは3から12の整数であり、合成の容易さから、f=hである事が好ましい。
【0109】
化合物(8)の具体例を以下に示す。
【0110】
【0111】
【化34】
式(8-1)から式(8-10)において、M
10、M
11、およびM
12は独立して、水素またはメチルであり、i、k、およびmは独立して、1から20の整数である。組成物に対する相溶性を増すため、i、k、およびmは3から12の整数であり、合成上の容易さから、i=k=mであることが好ましい。
【0112】
本発明の効果を発現するためには、式(4)から式(8)で表される重合性化合物は、式(1)および式(4)~式(8)の重合性化合物の総量に対して、100重量%以下、好ましくは50重量%以下の範囲で含まれていることが好ましい。 重合性組成物の重量に基づいて、式(1)で表される化合物を含む重合性化合物の総量が1重量%から50重量%の範囲であり、液晶組成物の割合が50重量%から99重量%の範囲にあることが好ましい。さらに式(4)から式(8)の重合性化合物を含む場合も、上記総量に含まれる。 重合性化合物の総量のさらに好ましい割合は、重合性組成物の重量に基づいて、1重量%から40重量%の範囲である。特に好ましい割合は、2重量%から20重量%の範囲である。
【0113】
液晶組成物のさらに好ましい割合は、重合性組成物の重量に基づいて、60重量%から99重量%の範囲である。特に好ましい割合は、80重量%から98重量%の範囲である。
【0114】
第四に、垂直配向剤に関して記載する。
【0115】
本発明の重合性組成物は、主にリバースモード用の調光素子に好適に使用することができる。液晶組成物を垂直配向とするため、ポリイミドなどを材料とする垂直配向膜が製膜された基板が使用される。
【0116】
一方、液晶組成物を垂直配向とするため、重合性組成物に垂直配向剤を添加することも行われている。極性基をもつ有機化合物が、垂直配向剤として用いられる。ここで極性基とは、-OH、-COOH、-SH、-NH2、>NH、>N-のような、電気陰性度の高い原子とそれに結合した水素を示す。垂直配向剤を添加すると、垂直配向膜を省略できるため、調光素子作製のコスト低減に好適である。
【0117】
垂直配向剤としては、公知の垂直配向剤を使用することができる。このとき式(9)で表される(メタ)アクリル基を有する化合物を使用することが、素子特性の経時劣化を防ぐために好ましい。安定な垂直配向を発現させるために、垂直配向剤の量は、重合性組成物の重量に対して、10重量%以下、好ましくは1~5量%の範囲で含まれていることが望ましい。
【0118】
【化35】
式(9)において、R
5は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素または塩素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、環Mおよび環Lは独立して、1,4-シクロヘキシレンまたは1,4-フェニレンであり、Z
20は、単結合、エチレン、メチレンオキシ、またはカルボニルオキシであり、Z
21は単結合またはエチレンであり、エチレンの1つの水素は、(メタ)アクリルまたは2-ヒドロキシメチルアクリルを含む基で置き換えられてもよく、pは1、2、または3である。
【0119】
式(9)で表される化合物の具体例を示す。
【0120】
【化36】
式(9-1)から式(9-9)中、R
51は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、Z
211は単結合、炭素数1から6の直鎖状アルキレン、または-O(CH
2)
n-であり、nは2から6である。
【0121】
【化37】
式(9-10)から式(9-13)中、R
51は炭素数1から12のアルキル、炭素数1から12のアルコキシ、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルキル、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた炭素数1から12のアルコキシであり、Z
212はOH、(メタ)アクリルオキシ、または2-ヒドロキシメチルアクリルオキシである。
【0122】
第五に化合物の合成法を説明する。これらの化合物は既知の方法によって合成できる。合成法を例示する。たとえば、化合物(1)は、特表平2-503441号公報などに記載された方法で合成可能である。化合物(2)は、特開昭59-176221号公報などに記載された方法で合成可能である。酸化防止剤は市販されている。後述する式(11)のnが1である酸化防止剤の化合物は、たとえばアルドリッチ(Sigma-Aldrich Corporation)から入手できる。nが7である化合物(11)などは、米国特許3660505号明細書に記載された方法によって合成可能である。重合性化合物は市販されているか、または既知の方法で合成可能である。
【0123】
合成法を記載しなかった化合物は、オーガニック・シンセシス(Organic Syntheses, John Wiley & Sons, Inc.)、オーガニック・リアクションズ(Organic Reactions, John Wiley & Sons, Inc.)、コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、新実験化学講座(丸善)などの成書に記載された方法によって合成できる。重合性組成物は、このようにして得た化合物から公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。
【0124】
第六に添加物を説明する。添加物は、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。液晶分子のらせん構造を誘起してねじれ角を与える目的で光学活性化合物が重合性組成物に添加される。このような化合物の例は、化合物(10-1)から化合物(10-6)である。光学活性化合物の好ましい割合は、重合性組成物の重量に対して5重量%以下である。さらに好ましい割合は0.01重量%から2重量%の範囲である。
【0125】
【化38】
式(10-6)において、R
20は、H(水素)または炭素数1から10のアルキルである。
【0126】
大気中での加熱による比抵抗の低下を防止するために、または素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するために、酸化防止剤が重合性組成物に添加される。酸化防止剤の好ましい例は、nが1から9の整数である化合物(11)などである。
【0127】
【化39】
化合物(11)において、好ましいnは、1、3、5、7、または9である。さらに好ましいnは7である。nが7である化合物(11)は、揮発性が小さいので、素子を長時間使用したあと、室温だけではなく上限温度に近い温度でも大きな電圧保持率を維持するのに有効である。酸化防止剤の好ましい割合は、その効果を得るために、重合性組成物の重量に対して、50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないように600ppm以下である。さらに好ましい割合は、100ppmから300ppmの範囲である。
【0128】
紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などである。立体障害のあるアミンのような光安定剤もまた好ましい。これらの吸収剤や安定剤における好ましい割合は、その効果を得るために、重合性組成物の重量に対して、50ppm以上であり、上限温度を下げないように、または下限温度を上げないために10000ppm以下である。さらに好ましい割合は100ppmから10000ppmの範囲である。
【0129】
GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が重合性組成物に添加される。色素の好ましい割合は、重合性組成物の重量に対して、0.01重量%から10重量%の範囲である。泡立ちを防ぐために、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどの消泡剤が重合性組成物に添加される。消泡剤の好ましい割合は、その効果を得るために重合性組成物の重量に対して、1ppm以上であり、表示不良を防ぐために1000ppm以下である。さらに好ましい割合は、1ppmから500ppmの範囲である。
【0130】
重合性化合物は紫外線照射によって重合する。効率の観点から、光重合開始剤などの重合開始剤存在下で重合させることが好ましい。重合のための適切な条件や、開始剤の適切なタイプおよび量は、当業者には既知であり、文献に記載されている。例えば光重合開始剤であるIrgacure651(登録商標;BASF)、Irgacure184(登録商標;BASF)、またはDarocur1173(登録商標;BASF)がラジカル重合に対して適切である。
【0131】
重合性化合物の重合を防ぐため、重合性組成物を保管する際、重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4-t-ブチルカテコール、4-メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0132】
最後に、液晶複合体の構成を説明する。液晶複合体は重合性組成物中の重合性化合物の重合によって得られる。なお、重合される重合性化合物には、式(1)で表される重合性化合物以外に式(4)~(8)で表される重合性化合物も含まれる。生成した重合体は、液晶組成物と相分離を起こし、液晶複合体を与える。この液晶複合体は、電圧無印加時に透明であり、電圧印加時に不透明となるリバースモードの調光素子に適している。液晶組成物のneと重合体の屈折率との差を大きくすれば、液晶調光素子のHazeが大きくなる。液晶組成物のnoと重合体の屈折率との差を小さくすれば、液晶調光素子の透明性が改善する。液晶組成物のnoは、液晶組成物の種類にあまり依存しないため、neを大きくする、すなわち液晶組成物の光学異方性(Δn)を大きくすることにより、Hazeを大きくすることが好ましい。Δnは0.16以上が好ましく、0.18以上がより好ましい。
【0133】
重合性組成物から液晶複合体を調製する方法は、次のとおりである。まず、一対の基板の間に本発明の重合性組成物を挟持する。次に、熱または光によって重合性組成物中の重合性化合物を重合させる。具体的には、まず、少なくとも一方が透明電極を有する一対の透明基板の間に、重合性組成物を真空注入法または液晶滴下法によって狭持させる。このときの基板の温度は、液晶がネマチック相または等方状態をとる温度範囲であれば、特に制限は無い。しかしながら温度が150℃以上であると、重合性基が反応するなどにより、重合性組成物の品質が劣化するため、150℃以下であることが好ましい。またより短時間で目的の配向を得るためには、基板を、ネマチック相を示す上限温度より高い温度にすることが好ましい。次に、熱または紫外線を照射することによって重合性化合物を重合させて、液晶複合体が得られる。重合によって重合性組成物から重合体が相分離する。これによって基板の間に調光層が形成される。このとき工程の条件管理の観点から、紫外線を重合開始に用いることが好ましい。
【0134】
この調光層は、高分子分散型、ポリマーネットワーク型、両者の混在型に分類される。ネットワーク構造における網目は小さい方が好ましい。好ましい網目は、0.2から2μmであり、さらに好ましくは0.2から1μmであり、特に好ましくは0.3から0.7μmである。
【0135】
高分子分散型の調光素子では、重合体中で液晶組成物が液滴のように分散している。液滴の各々は独立しており、連続していない。一方、ポリマーネットワーク型の調光素子では、重合体は三次元の網目構造を有し、液晶組成物はこの網目に囲まれてはいるが、連続している。 これらの素子において、Hazeを増し、駆動電圧を下げるためには、液晶複合体に基づいた液晶組成物の割合は大きい方が好ましい。一方、素子の基板どうしの密着性を向上し機械的強度を増すためには、重合体の割合は大きい方が好ましい。応答速度を上げる目的においても、重合体の割合は大きい方が好ましい。
【0136】
液晶組成物の好ましい割合は、液晶複合体の重量に基づいて、50重量%から99重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、60重量%から99重量%の範囲である。特に好ましい割合は、80重量%から98重量%の範囲である。重合体の好ましい割合は、液晶複合体の重量に基づいて、1重量%から50重量%である。さらに好ましい割合は、1重量%から40重量%の範囲である。特に好ましい割合は、2重量%から20重量%の範囲である。
【0137】
基板の一例は、ガラス板、石英板、アクリル板のような変形しにくい材質である。他の例は、アクリルフィルム、ポリカーボネートフィルムのような可撓性の透明プラスチックフィルムである。用途に応じて基板の一方はシリコン樹脂などの不透明な材料でもよい。この基板は、その上に透明電極を有する。透明電極の上に配向膜などを有してもよい。透明電極の例は、酸化インジウムスズ(tin-doped indium oxide、ITO)や導電性ポリマーである。
【0138】
基板上の配向膜は、ポリイミドやポリビニルアルコールのような薄膜が適している。例えば、ポリイミド配向膜は、ポリイミド樹脂組成物を透明基板上に塗布し、180℃以上の温度で熱硬化させ、必要に応じて綿布やレーヨン布でラビング処理することによって得ることができる。
【0139】
一対の基板は、透明電極層が内側となるように対向させる。基板間の厚さを均一にするためにスペーサーを入れてもよい。スペーサーの例は、ガラス粒子、プラスチック粒子、アルミナ粒子、フォトスペーサーなどである。調光層の好ましい厚さは2~50μmであり、さらに好ましくは5~20μmである。一対の基板を張り合わせるには、汎用のシール材を用いることができる。シール材の例は、エポキシ系熱硬化性組成物である。
【0140】
重合性化合物の重合には、紫外線照射が好ましい。紫外線照射ランプの例は、メタルハライドランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、LEDランプなどである。光重合開始剤を用いるとき、紫外線の波長は、光重合開始剤の吸収波長領域であることが好ましい。液晶組成物の吸収波長領域は避ける。好ましい波長は330nm以上である。さらに好ましい波長は、350nm以上である。反応は室温付近で行ってもよいし、または加熱して行ってもよい。
【0141】
このような調光素子は、必要に応じて、素子の裏面に光吸収層、拡散反射板などを配置することができる。鏡面反射、拡散反射、再帰性反射、ホログラム反射等の機能を付加することもできる。
【0142】
本発明では電圧無印加時に透明であり、電圧印加時に不透明(光散乱状態)という特徴を使用して、スイッチング素子として使用することができる。
【0143】
このような素子は、調光フィルムや調光ガラスとしての機能を有する。素子がフィルム状である場合は、既存の窓へ張り付けるか、または、一対のガラス板で挟み、合わせガラスにすることができる。このような素子は、外壁に設置された窓や会議室と廊下との仕切りに使われる。すなわち、電子ブラインド、調光窓、スマートウィンドウなどの用途がある。さらに、光スイッチとしての機能を液晶シャッターなどに利用できる。
【実施例】
【0144】
実施例によって本発明の具体例をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、実施例の重合性組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。合成した重合性化合物は、NMR分析などによって同定した。重合性化合物、重合性組成物および調光素子の特性は、下記の方法によって測定した。
【0145】
<NMR分析>
測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX-500を用いた。1H-NMRの測定では、試料をCDCl3などの重水素化溶媒に溶解させ、測定は、室温で、500MHz、積算回数16回の条件で行った。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F-NMRの測定では、CFCl3を内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードを意味する。
【0146】
<DSC測定>
示差走査熱量計(Perkin Elmer社のDiamond DSC)を用い、測定した。転移温度は、相を示す表記の間に、摂氏温度を記載することで表記した。相を示す表記において、Cは結晶層、Nはネマチック相、Sはスメクチック相、Iは等方性液体である。相を示す表記において、括弧付の相の記載はモノトロピックの液晶相を示す。
【0147】
ガスクロマト分析:測定には島津製作所製のGC-14B型ガスクロマトグラフを用いた。キャリアーガスはヘリウム(2mL/分)である。試料気化室を280℃に、検出器(FID)を300℃に設定した。成分化合物の分離には、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm;固定液相はジメチルポリシロキサン;無極性)を用いた。このカラムは、200℃で2分間保持したあと、5℃/分の割合で280℃まで昇温した。試料はアセトン溶液(0.1重量%)に調製したあと、その1μLを試料気化室に注入した。記録計は島津製作所製のC-R5A型Chromatopac、またはその同等品である。得られたガスクロマトグラムは、成分化合物に対応するピークの保持時間およびピークの面積を示した。
【0148】
試料を希釈するための溶媒は、クロロホルム、ヘキサンなどを用いてもよい。成分化合物を分離するために、次のキャピラリカラムを用いてもよい。Agilent Technologies Inc.製のHP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、Restek Corporation製のRtx-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)、SGE International Pty. Ltd製のBP-1(長さ30m、内径0.32mm、膜厚0.25μm)。化合物ピークの重なりを防ぐ目的で島津製作所製のキャピラリカラムCBP1-M50-025(長さ50m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いてもよい。
【0149】
重合性組成物に含有される液晶化合物の割合は、次のような方法で算出してよい。液晶化合物の混合物をガスクロマトグラフィー(FID)で分析する。ガスクロマトグラムにおけるピークの面積比は液晶化合物の割合に相当する。上に記載したキャピラリカラムを用いたときは、各々の液晶化合物の補正係数を1とみなしてよい。したがって、液晶化合物の割合(重量%)は、ピークの面積比から算出することができる。
【0150】
測定試料:重合性組成物および調光素子の特性を測定するときは、重合性組成物をそのまま試料として用いた。化合物の特性を測定するときは、この化合物(15重量%)を母液晶(85重量%)に混合することによって測定用の試料を調製した。測定によって得られた値から外挿法によって化合物の特性値を算出した。(外挿値)={(試料の測定値)-0.85×(母液晶の測定値)}/0.15。この割合でスメクチック相(または結晶)が25℃で析出するときは、化合物と母液晶の割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更した。この外挿法によって化合物に関する上限温度、光学異方性、粘度、および誘電率異方性の値を求めた。
<露光条件>
本実施例において、特に言及のない限り、露光は、室温で、250Wの超高圧水銀ランプ(ウシオ電機社製、マルチライト-250)を用い、露光量1J/cm2で実施した。このとき光の強度は、17mW/cm2(365nm)であった。またLEDで露光した場合は、UV-LEDユニット(東芝ライテックス社製)365nmタイプを用い、露光量1J/cm2で実施した。このとき光の強度は、1.3mW/cm2(365nm)であった。
【0151】
<重合性化合物>
式(1)で表される重合性化合物として、以下の(1-1)および(1-2)を使用した。化合物は特開2009-184974号公報に記載された方法と同様に合成した。
【0152】
【化40】
1H-NMR;δ(ppm)8.15(m,4H),7.19(d,1H,d=8.50Hz),7.13(d,1H,d=2.70Hz),7.09(dd,1H,d=8.55,2.70),6.98(m,4H),6.42-6.10(m,6H),5.83(d,2H,d=9.40Hz),4.27(m,4H),4.10(m,4H),2.57(t,2H,d=7.60Hz),1.9-1.2(m,20H),0.84(t,3H,d=6.90Hz).
相転移温度(℃、DSCで測定);C 11.6 N 38.6 I
【0153】
【化41】
1H-NMR;δ(ppm)8.15(m,4H),7.19(d,1H,d=8.50Hz),7.13(d,1H,d=2.70Hz),7.09(dd,1H,d=8.55,2.70),6.98(m,4H),6.42-6.10(m,6H),5.82(d,2H,d=9.40Hz),4.19(m,4H),4.06(m,4H),2.57(t,2H,d=7.60Hz),1.9-1.2(m,16H),0.84(t,3H,d=6.90Hz).
相転移温度(℃、DSCで測定);C 34.1 N 43.2 I
<物性測定>
それぞれ下記の方法で物性を計測した。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(Japan Electronics and Information Technology Industries Association;JEITAという)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED-2521B)に記載された方法、またはこれを修飾した方法であった。
(1)ネマチック相の上限温度(NI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度でホットプレートを加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
(2)ネマチック相の下限温度(T
C;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、-10℃、-20℃、-30℃、および-40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が-20℃ではネマチック相のままであり、-30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、T
Cを<-20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
(3)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
(4)光学異方性(屈折率異方性;Δn;25℃で測定):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計によって行った。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率n//は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率n⊥は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性の値は、Δn=n//-n⊥、の式から計算した。
(5)誘電率異方性(Δε;25℃で測定):誘電率異方性の値は、Δε=ε//-ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε//およびε⊥)は次のように測定した。
【0154】
1)誘電率(ε//)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε//)を測定した。
【0155】
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を注入した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
(6)ヘイズ率(%):ヘイズ率の測定には、ヘイズメーターNDH5000(日本電色工業株式会社製)を使用した。
【0156】
<調光素子作製のためのセル>
測定には以下のセル2種類を使用した。VAセル;4cm×3cmにカットしたEagle(登録商標)XGガラスに、PIA-8540-01X(ポリアミック酸溶液、JNC製)を2000rpmでスピンコートした。80℃で1分加熱することで溶剤を除去し、230℃で15分間焼成し、ポリイミド配向膜を作製した。このとき得られたポリイミド配向膜の膜厚は105nmであった。ついでこの基板の配向膜面上に、直径3.5μmのスペーサーを散布し、シール材を塗布したスペーサーを散布していない基板と張り合わせた。このとき、配向膜面はセルの内側になるようにした。その後、170℃で1.5時間、シール材を加熱硬化し、VAセルを得た。
【0157】
配向膜なしセル;配向膜の作製を除き、VAセルと同様な方法作製した。
【0158】
液晶組成物の例を以下に示す。成分の液晶化合物は、表3の定義に基づいて記号によって表した。表3において、1,4-シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。記号化された化合物の後にあるかっこ内の番号は化合物が属する化学式を表す。(-)の記号はその他の液晶化合物を意味する。液晶化合物の割合(百分率)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、重合性組成物の特性値をまとめた。
【0159】
【表3】
[液晶組成物(M21)]
2-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-1) 3%
3-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-2) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-3) 5%
3-HH2B(2F,3F)-O2 (2-7) 9%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (2-8-1) 16%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (2-8-2) 16%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (2-16) 9%
3-HB(2F)B(2F,3F)-O2 (2-20) 7%
5-HB-O2 (3-2-1) 10%
3-HHB-1 (3-5-1) 8%
3-HHB-O1 (3-5-2) 6%
3-HBB-2 (3-6) 6%
NI=142.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.111;Δε=-5.7;η=64.9mPa・s.
[液晶組成物(M22)]
3-HB(2F,3F)-O2 (2-1-1) 7%
5-HB(2F,3F)-O2 (2-1-2) 7%
3-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-2) 5%
5-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-3) 5%
V-HHB(2F,3F)-O1 (2-6-4) 2%
V-HHB(2F,3F)-O2 (2-6-5) 8%
V-HHB(2F,3F)-O4 (2-6-6) 8%
3-HH2B(2F,3F)-O2 (2-7) 7%
2-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-1) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-2) 6%
3-HH-4 (3-1) 10%
3-HB-O2 (3-2-2) 10%
5-HB-O2 (3-2-1) 10%
3-HHB-1 (3-5-1) 3%
3-HHB-3 (3-5-3) 4%
3-HHB-O1 (3-5-2) 3%
3-HBB-2 (3-6) 2%
NI=102.0℃;Tc<-40℃;Δn=0.101;Δε=-3.3;η=25.8mPa・s.
[液晶組成物(M23)]
2-BB(2F,3F)-O2 (2-4-1) 8%
3-BB(2F,3F)-O2 (2-4-2) 13%
5-BB(2F,3F)-O2 (2-4-3) 12%
2-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-1) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-2) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-3) 4%
5-B(F)BB-2 (3-7-1) 14%
5-B(F)BB-3 (3-7-2) 14%
3-HBTB-2 (3-17-1) 8%
3-HBTB-3 (3-17-2) 8%
3-HBTB-4 (3-17-3) 8%
NI=100.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.219;Δε=-2.5;η=42.2mPa・s.
[液晶組成物(M24)]
2-BB(2F,3F)-O2 (2-4-1) 7%
3-BB(2F,3F)-O2 (2-4-2) 13%
5-BB(2F,3F)-O2 (2-4-3) 10%
2-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-1) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-2) 8%
4-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-3) 4%
5-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-4) 5%
3-dhBB(2F,3F)-O2 (2-17) 8%
1-BB-3 (3-3) 4%
3-HBB-2 (3-6) 8%
5-B(F)BB-2 (3-7-1) 13%
5-B(F)BB-3 (3-7-2) 13%
3-BB(2F,5F)B-3 (3-20) 4%
NI=93.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.203;Δε=-3.3;η=44.5mPa・s.
[液晶組成物(M25)]
3-H1OB(2F,3F)-O2 (2-3) 5%
3-BB(2F,3F)-O2 (2-4-2) 12%
5-BB(2F,3F)-O2 (2-4-3) 12%
2-HH1OB(2F,3F)-O2 (2-8-1) 4%
3-HH1OB(2F,3F)-O2 (2-8-1) 5%
2-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-1) 3%
3-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-2) 9%
4-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-3) 4%
5-HBB(2F,3F)-O2 (2-10-4) 9%
3-HDhB(2F,3F)-O2 (2-16) 7%
3-dhBB(2F,3F)-O2 (2-17) 10%
2-HH-3 (3-1) 10%
5-B(F)BB-2 (3-7) 10%
NI=89.0℃;Tc<-20℃;Δn=0.152;Δε=-5.7;η=41.8mPa・s.
実施例において使用するその他の重合性化合物(4-1-1)から(9-1-1)を以下に示す。
【0160】
【化42】
[実施例1]
液晶調光素子の作製
負の誘電率異方性を有する液晶組成物(M21)に、光重合開始剤としてIrgacure651を0.3重量%の割合で添加した。得られた液晶組成物94重量%と、6重量%の化合物(1-1)とを混合し、重合性組成物1を調製した。重合性組成物1をVAセルへ注入した。注入時の温度は100℃であった。このセルを室温で3分間静置し、その後露光することで、調光素子1を得た。電圧無印加時には透明であり、45Vの電圧印加時には不透明となり、最大のヘイズ率が得られた。電圧無印加時および45V印加時のヘイズ率を測定した結果、1.5および52.0%であった。
【0161】
この組成物1を25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
[実施例2~9]
光重合開始剤を添加した液晶組成物(M21)から(M25)のいずれかと、化合物(1-1)と、重合性化合物(4-1-1)、(4-2-1)、および(5-6)のいずれかとを混合し、重合性組成物2から9を調製した。これらの重合性組成物を使用し、実施例1と同様の手順で、調光素子2から9を作製した。ヘイズ率の測定結果を表に示す。ヘイズ率と電圧との関係は材料により差があるので、最大のヘイズ率とそれが得られる電圧とを記載した。また全ての重合性組成物で、光重合開始剤として、Irgacure651を液晶組成物に対して0.3重量%の割合で使用した。
【0162】
【表4】
これら重合性組成物2から9を、25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
【0163】
[実施例10~15]
光重合開始剤を添加した液晶組成物(M21)から液晶組成物(M25)のいずれかと、化合物(1-2)と、重合性化合物(5-6)とを混合し、重合性組成物10から15を調製した。これらの重合性組成物を使用し、実施例1と同様の手順で、調光素子10から15を作製した。ヘイズ率の測定結果を表に示す。ヘイズ率と電圧との関係は材料により差があるので、最大のヘイズ率とそれが得られる電圧とを記載した。また全ての重合性組成物で、光重合開始剤として、Irgacure651を液晶組成物に対して0.3重量%の割合で使用した。
【0164】
【表5】
これら重合性組成物10から15を、25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
[比較例1]
化合物(1-1)の代わりに、化合物(6-1-1)を用いて、実施例1と同様に、重合性組成物R1を調製した。さらに実施例1と同様にして、調光素子R1を得た。電圧無印加時には透明であり、60Vの電圧印加時には不透明となった。この素子の電圧無印加時および60V印加時のヘイズ率を測定した結果、2.0および51.1%であった。
【0165】
この重合性組成物R1を25℃で5時間保管したところ、沈殿が生じた。
[比較例2]
化合物(1-1)の代わりに、化合物(6-1-2)を用いて、実施例1と同様に、重合性組成物R2を調製した。さらに実施例1と同様にして、調光素子R2を得た。電圧無印加時には透明であり、60Vの電圧印加時には不透明となった。この素子の電圧無印加時および60V印加時のヘイズ率を測定した結果、6.0および36.9%であった。
【0166】
この組成物R2を25℃で5時間保管したところ、沈殿が生じた。
【0167】
[比較例3]
化合物(1-1)の代わりに、化合物(4-1-1)を用いて、実施例1と同様に、重合性組成物R3を調製した。さらに実施例1と同様にして、調光素子R3を得た。電圧無印加時には透明であり、60Vの電圧印加時には不透明となった。この素子の電圧無印加時および60V印加時のヘイズ率を測定した結果、3.5および48.7%であった。
【0168】
この組成物R3を25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
[実施例16]
負の誘電率異方性を有する液晶組成物(M21)に、光重合開始剤としてIrgacure651を0.3重量%の割合で添加した。合計を100重量%としたときに、91重量%の液晶組成物(M21)と、6重量%の化合物(1-1)と、3重量%の化合物(9-1-1)とを混合し、重合性組成物16を調製した。この重合性組成物16を配向膜なしセルへ注入した。注入時の温度は100℃であった。このセルを室温で3分間静置し、その後露光することで、調光素子16を得た。電圧無印加時および45V印加時のヘイズ率を測定した結果、1.4および48.8%であった。
この組成物16を25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
[実施例17~20]
合計を100重量%としたときに、91重量%の光重合開始剤を添加した液晶組成物(M22)から液晶組成物(M25)のいずれかと、6重量%の化合物(1-1)と、3重量%の化合物(9-1-1)とを混合し、重合性組成物17から20を調製した。さらにこれらの組成物を使用し、実施例16と同様の手順で調光素子17から20を作製した。ヘイズ率の測定結果を表に示す。ヘイズ率と電圧との関係は材料により差があるので、最大のヘイズ率とそれが得られる電圧とを記載した。また全ての重合性組成物で、光重合開始剤として、Irgacure651を液晶組成物に対して0.4重量%の割合で使用した。
【0169】
【表6】
これら重合性組成物17から20を、25℃で480時間保管したところ、沈殿などは生じず、均一な状態を保っていた。
【0170】
表4から表6の結果より、本発明の調光素子は、電圧無印加時のヘイズ率が低く、高い透明性を示すことが分かる。一方で、比較例2および3の調光素子は、電圧無印加時のヘイズ率が高い。また、本発明の重合性組成物を用いた調光素子は、電圧印加時に高いヘイズ率を発現し、リバースモードの調光素子に適した優れた特性を有することが分かる。さらに、実施例と比較例1および2との比較により、本発明組成物は、低温保管時にも沈殿が発生せず、取扱いに優れた特長を有することが分かる。
[実施例21~29]
実施例1から9と準じた方法で、調光素子21から29を作製した。ただし、超高圧水銀ランプの代わりにLEDを露光光源に使用し、かつ、液晶組成物に対するIrgacure651の量を0.4重量%に変更した。
【0171】
【産業上の利用可能性】
【0172】
本発明の重合性組成物を用いて作製した液晶調光素子は、電圧無印加時の高い透明性や電圧印加時の大きなヘイズ率特性を有する。さらに本発明の重合性組成物は、保管時に沈殿等の発生が無いため、素子作製時の不具合発生を防ぐことができる。このため、調光窓、スマートウィンドウなどの用途向け材料として、実用的に用いることができる。