(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】セラミックハニカム構造体及びハニカム成形用金型
(51)【国際特許分類】
B28B 3/26 20060101AFI20230822BHJP
B01J 35/04 20060101ALI20230822BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
B28B3/26 A
B01J35/04 301A
B01D39/20 D
(21)【出願番号】P 2020539536
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 JP2019033692
(87)【国際公開番号】W WO2020045492
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2018161194
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100080012
【氏名又は名称】高石 橘馬
(74)【代理人】
【識別番号】100168206
【氏名又は名称】高石 健二
(72)【発明者】
【氏名】小嶋 真矢
【審査官】大西 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-172223(JP,A)
【文献】特開平09-299731(JP,A)
【文献】特開2003-010616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00-5/12
B01J 35/04
B01D 39/20
B01D 46/00
F01N 3/02
F01N 3/28
C04B 38/00
C04B 41/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面格子状に配置された隔壁によって軸方向に形成された多数の流路と、その外周に設けられた外周壁とを有するセラミックハニカム構造体において、
軸方向に直交する断面で、
前記隔壁が交差する隔壁交差部に前記流路へ扇状に突出する扇状凸部を少なくとも1箇所有しており、
前記
少なくとも1箇の扇状凸部の
全ての円弧部分
を含む円を凸部接触円としたとき、
前記凸部接触円の半径が全ての隔壁交差部において一定であり、
前記
凸部接触円の中心点と前記隔壁交差部の中心点との距離を中心点間距離Sとしたとき、
前記セラミックハニカム構造体の外周部における中心点間距離Soと、前記セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scとが
Sc<Soを満たす
ことを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックハニカム構造体において、
前記セラミックハニカム構造体の外周部では、
前記
凸部接触円の中心点が、前記隔壁交差部の中心点に対して、前記セラミックハニカム構造体の外周壁側に位置していることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のセラミックハニカム構造体において、
前記セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scが20μm以下であり、
外周部における中心点間距離Soと前記中央部における中心点間距離Scとの差が5~150μmであることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体において、
前記セラミックハニカム構造体の前記中央部と前記外周部との中間を中間部としたとき、前記中間部における隔壁交差部の中心点間距離Shが、
Sc<Sh<Soを満たすことを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のセラミックハニカム構造体において、
前記
凸部接触円の半径が、前記セラミックハニカム構造体の隔壁の厚さの0.75~1.25倍であることを特徴とするセラミックハニカム構造体。
【請求項6】
坏土を供給するための供給孔と、前記供給孔が形成された穴形成面の反対面に形成された、前記供給孔に連通し、前記坏土をハニカム形状に成形するための格子状のスリットとを有するハニカム成形用金型において、
前記格子状のスリットが交差するスリット交差部における金型部材の4箇所の角部に、押出方向視で円弧状凹部を有し、
前記4箇所の円弧状凹部
の全ての円弧部分を含む円を凹部接触円としたとき、
前記凹部接触円の半径が全てのスリット交差部において一定であり、
前記
凹部接触円の中心点と前記スリット交差部の中心点との距離を金型中心点間距離Sdとしたとき、前記ハニカム成形用金型の金型中央部における金型中心点間距離Sdcと、前記ハニカム成形用金型の金型外縁部における金型中心点間距離Sdoとが、
Sdc<Sdoを満たすことを特徴とするハニカム成形用金型。
【請求項7】
請求項6に記載のハニカム成形用金型において、
前記金型外縁部では、
前記
凹部接触円の中心点が、前記スリット交差部の中心点に対して、前記ハニカム成形用金型の外縁側に位置していることを特徴とするハニカム成形用金型。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のハニカム成形用金型において、
前記金型中央部と前記金型外縁部との中間を金型中間部としたとき、前記金型中間部におけるスリット交差部の金型中心点間距離Sdhが、
Sdc<Sdh<Sdoを満たすことを特徴とするハニカム成形用金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックハニカム構造体及びハニカム成形体を成形するための金型に関するものである。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の排ガス浄化装置における触媒担体やフィルターとして、セラミックハニカム構造体が使用されている。
図15に示すように、セラミックハニカム構造体60は、外周壁61と、その内周側で多孔質構造の隔壁62により囲まれた多数の流路63を有している。このようなセラミックハニカム構造体は、可塑性を有するセラミック坏土を公知の金型を用いて押出成形することにより、外周部と隔壁とが一体に形成されたハニカム成形体を得たのち、これを切断、乾燥及び焼成し、外周縁部を加工により除去してなる外周面にコート材を塗布して外周壁を形成することにより得ることができる。
【0003】
特に大型車両・特殊車両のディーゼルエンジン用の触媒担体やフィルターには、例えば、外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体や、隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄壁のセラミックハニカム構造体が用いられ、このような大型及び薄壁のセラミックハニカム構造体は、使用時の機械的振動や衝撃による負荷がさらに大きくなるため、機械的強度をさらに向上させることが要求される。
【0004】
特開2016-172223号は、複数のセルを区画形成する隔壁と前記隔壁の交点に位置する交点部とを有するハニカム構造部を備え、前記複数のセルは、前記セルの延びる方向に直交する断面において、複数の角が凸状又は凹状に湾曲した多角形であり、少なくとも1つの角が凹状に湾曲した特定セルを含み、前記凹状に湾曲した角が、前記ハニカム構造部における全ての前記セルの角の1.5%以上存在するハニカム構造体を開示している。特開2016-172223号は、このような構造を有するハニカム構造体は、煤の燃焼操作によってもクラックが発生しにくく、またクラックが生じたとしてもクラックの進展が抑制され、かつ圧力損失の増大が抑制されると記載している。
【0005】
しかしながら、特開2016-172223号に記載の構造を、外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体や、隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄壁のセラミックハニカム構造体に適用した場合、特に外周部における強度が十分ではなく、さらなる強度の向上が望まれている。
【0006】
特開平9-299731号は、セラミック壁で仕切られてセラミック格子を形成しているハニカム柱状体であって、セラミック格子からなるセル形状が四角形であり、セラミック壁の交差部分近傍のセラミック壁の厚みがそれ以外のセラミック壁の厚みよりも厚く、セラミック壁の交差部分の断面形状が略円形を含む排ガスフィルタを開示している。特開平9-299731号は、また、セラミック壁の交差部分近傍のセラミック壁の厚みがそれ以外のセラミック壁の厚みよりも厚くする方法の一つとして、押出成形用金型のスリット交差部分をドリル式穴あけで加工することを開示している。特開平9-299731号は、このような構造を有することにより、排ガスフィルタ再生時の熱応力によるセラミック壁の交差部分近傍でのクラックの発生を防止できると記載している。
【0007】
しかしながら、特開平9-299731号に記載の構造を、外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体や、隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄壁のセラミックハニカム構造体に適用した場合、特に、ハンドリング等における外周壁側からの衝撃に対して強度が十分ではない場合があり、さらなる強度の向上が望まれている。
【0008】
特開2014-46601号は、多孔質のセラミックスで構成された隔壁で仕切られて構成された複数の流路を有するセラミックハニカム構造体であって、前記セラミックハニカム構造体における流路方向に垂直な断面において、前記流路の前記断面形状における隅部には隅R曲率半径が0.01 mm~0.8 mmの範囲とされた隅Rが設けられ、前記セラミックハニカム構造体全体の前記流路方向に垂直な断面において、中心を含む第1の領域、第1の領域の外側の第2の領域、第2の領域の外側で外周部を含む第3の領域の3つの領域において、各領域の各々における前記隅R曲率半径の平均値が、中心軸から外周部に向かうに従って大きくなるように設定されたセラミックハニカム構造体を開示している。特開2014-46601号は、このセラミックハニカム構造体は、第1の領域から第3の領域に対応するように隅Rを設けた金型を用いて押出成形して作製されるが、中心部から外周部に向かって押出成形時の抵抗が小さくなるよう調節されているため押出速度の不均一性が改善され、押出成形時に変形が生じ難くなるとともに、外周部の領域で隅R曲率半径が大きくなるためセラミックハニカム構造体の機械的強度が高くなると記載している。
【0009】
しかしながら、特開2014-46601号に記載されたような金型を外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体や、隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄壁のセラミックハニカム構造体に適用して押出成形した場合、セラミックハニカム構造体の機械的強度が十分ではない場合があり、さらなる強度の向上が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、例えば、外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型、及び/又は隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄壁であっても十分な機械的強度を有するセラミックハニカム構造体、及びそのようなセラミックハニカム構造体を製造するためのハニカム成形体用金型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、隔壁によって形成された多数の流路を有するセラミックハニカム構造体において、隔壁交差部の形状に着目することにより、セラミックハニカム構造体の外周部の強度が向上する構成を見出し、本発明に想到した。
【0012】
すなわち、本発明のセラミックハニカム構造体は、
断面格子状に配置された隔壁によって軸方向に形成された多数の流路と、その外周に設けられた外周壁とを有するセラミックハニカム構造体であって、
軸方向に直交する断面において、
前記隔壁が交差する隔壁交差部に前記流路へ扇状に突出する扇状凸部を少なくとも1箇所有しており、
前記扇状凸部の円弧部分に外接する外接円の半径が全ての隔壁交差部において一定であり、
前記外接円の中心点と前記隔壁交差部の中心点との距離を中心点間距離Sとしたとき、
前記セラミックハニカム構造体の外周部における中心点間距離Soと、
前記セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scとが、
Sc<Soを満たすことを特徴とする。
【0013】
前記セラミックハニカム構造体の外周部において、
前記外接円の中心点は、前記隔壁交差部の中心点に対して、前記セラミックハニカム構造体の外周壁側に位置しているのが好ましい。
【0014】
前記セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scが20μm以下であり、
外周部における中心点間距離Soと前記中央部における中心点間距離Scとの差が5~150μmであるのが好ましい。
【0015】
前記セラミックハニカム構造体の前記中央部と前記外周部との中間を中間部としたとき、前記中間部における隔壁交差部の中心点間距離Shは、
Sc<Sh<Soを満たすのが好ましい。
【0016】
前記外接円の半径は、前記セラミックハニカム構造体の隔壁の厚さの0.75~1.25倍であるのが好ましい。
【0017】
本発明のハニカム成形用金型は、坏土を供給するための供給孔と、前記供給孔が形成された穴形成面の反対面に形成された、前記供給孔に連通し、前記坏土をハニカム形状に成形するための格子状のスリットとを有し、
前記格子状のスリットが交差するスリット交差部における金型部材の4箇所の角部に、押出方向視で円弧状凹部を有し、
前記4箇所の円弧状凹部に内接する内接円の半径が全てのスリット交差部において一定であり、
前記内接円の中心点と前記スリット交差部の中心点との距離を金型中心点間距離Sdとしたとき、前記ハニカム成形用金型の金型中央部における金型中心点間距離Sdcと、前記ハニカム成形用金型の金型外縁部における金型中心点間距離Sdoとが、
Sdc<Sdoを満たすことを特徴とする。
【0018】
前記金型外縁部では、
前記内接円の中心点が、前記スリット交差部の中心点に対して、前記ハニカム成形用金型の外縁側に位置しているのが好ましい。
【0019】
前記ハニカム成形用金型において、
前記金型中央部と前記金型外縁部との中間を金型中間部としたとき、前記金型中間部におけるスリット交差部の金型中心点間距離Sdhが、
Sdc<Sdh<Sdoを満たすのが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、十分な機械的強度を有するセラミックハニカム構造体を提供することができるので、特に、外径が190 mm以上で長さが200 mm以上の大型のセラミックハニカム構造体や、隔壁の厚さが0.15 mm以下の薄い隔壁のセラミックハニカム構造体に好適である。また、十分な機械的強度を有するセラミックハニカム構造体を製造するためのハニカム成形体用金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】本発明のセラミックハニカム構造体の一例を模式的に示す正面図である。
【
図1b】本発明のセラミックハニカム構造体の一例を模式的に示す、軸方向に平行な断面図である。
【
図2】本発明のセラミックハニカム構造体の断面において、隔壁交差部に形成された扇状凸部を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明のセラミックハニカム構造体の断面において、扇状凸部の中心点と隔壁交差部の中心点との位置関係を説明するための模式図である。
【
図4】本発明のセラミックハニカム構造体の外周部を説明するための模式断面図である。
【
図5】本発明のセラミックハニカム構造体の一例を示す断面図である。
【
図6】
図5の中央部(A)、中間部(G)及び(H)、並びに外周部(B)~(F)の隔壁交差部を拡大して示す模式図である。
【
図7】
図5の中央部(A)及び外周部(B)~(F)の隔壁交差部において、扇状凸部の中心点と隔壁交差部の中心点との位置関係を示す模式図である。
【
図8a】本発明のハニカム成形用金型の一例を示すスリット側からの斜視図である。
【
図8b】本発明のハニカム成形用金型の一例を示す供給孔側からの斜視図である。
【
図9】本発明のハニカム成形用金型のスリットと供給孔との位置関係の一例を示す正面図である。
【
図10a】本発明のハニカム成形用金型のスリット側から見た正面図である。
【
図11】
図10aのA、B、D及びEの位置におけるスリット交差部を拡大して示す模式図である。
【
図12】
図10aのA、J、I、D及びEの位置におけるスリット交差部を示す顕微鏡写真である。
【
図13a】実施例
1で作製したセラミックハニカム構造体の断面において、中央部(A)の位置を示す模式図、及びその位置における
隔壁交差部の顕微鏡写真である。
【
図13b】実施例
1で作製したセラミックハニカム構造体の断面において、外周部(E)及び(F)(45°方向)及び中間部(I)(45°方向)の位置を示す模式図、及びそれらの位置における
隔壁交差部の顕微鏡写真である。
【
図13c】実施例
1で作製したセラミックハニカム構造体の断面において、外周部(B)及び(C)(90°方向)及び中間部(G)(90°方向)の位置を示す模式図、及びそれらの位置における
隔壁交差部の顕微鏡写真である。
【
図14】B軸圧縮強度の測定のための試料片を切り出す位置、及び試料片の形状を示す模式図である。
【
図15】従来技術でのセラミックハニカム構造体の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0023】
[1] セラミックハニカム構造体
本発明のセラミックハニカム構造体10は、
図1a及び
図1bに示すように、断面格子状の隔壁12によって形成された軸方向に延びる多数の流路13と、その外周に設けられた外周壁11とを有し、
図2に示すように、軸方向に直交する断面において、前記隔壁12が交差する隔壁交差部14に、前記流路13へ扇状に突出する扇状凸部15a,15b,15c,15dを有しており、前記扇状凸部15a,15b,15c,15dの円弧16a,16b,16c,16d部分に外接する外接円16の半径が全ての隔壁交差部14において一定であり、
図3に示すように、前記外接円16の中心点C
Rと前記隔壁交差部14の中心点C
Wとの距離を中心点間距離Sとしたとき、前記セラミックハニカム構造体10の外周部における中心点間距離Soと、前記セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scとが、Sc<Soを満たすことを特徴とする。
【0024】
ここで、セラミックハニカム構造体の外周部とは、
図4に示すように、軸方向に直交する断面において、ハニカム構造体の軸中心Oを原点として隔壁に沿った方向にx軸及びy軸を定義し、軸上又は軸に最も近い
流路であって、各軸と外周面との交点から原点に向かって最外周の不完全流路13-1を除いて2つめの流路13-2(全部で4つ)を選び、4つの流路13-2の内側(原点側)の隔壁の中心線と軸
(x軸及びy軸)との
4つの交点(x軸上に2箇所及びy軸上に2箇所)を求め、原点から各交点までの長さの平均値をr
とし、原点を中心とした半径rの円α
を描いたとき、円αの外側(外周側)の領域Zのことをいう。なお、前記隔壁と軸との交点の座標をa(x
1,0)、b(x
2,0)、c(0,y
1)及びd(0,y
2) [ただし、x
1>x
2及びy
1>y
2]としたとき、半径rはr=(x
1-x
2+y
1-y
2)/4で求めることができる。
【0025】
外周部における中心点間距離Soは、前記外周部に位置する4箇所の隔壁交差部を下記のようにして選択し、それぞれ選択した各隔壁交差部及びそれに隣接する2つの隔壁交差部の合計3つの隔壁交差部を有する4つのグループを作り、各グループにおいて中心点間距離Sの平均値Savを求め、それらを4つのグループについて平均した値で定義する。ここで外周部の4箇所の隔壁交差部は、ハニカム構造体の軸中心Oから隔壁に沿った(x軸またはy軸)方向(以下「90°方向」)に2箇所、及び隔壁の交点(流路の対角線)の方向(以下「45°方向」)に2箇所を選択する。また選択した隔壁交差部に隣接する2つの隔壁交差部は、例えば、隔壁に沿った方向(90°方向)の隔壁交差部を選択した場合は、隣接する隔壁交差部のうち軸中心Oの方向に直交する側に隣接する2つの隔壁交差部であり、隔壁の交点の方向(45°方向)の隔壁交差部を選択した場合は、隣接する隔壁交差部のうち軸中心Oに近い側の2つの隔壁交差部である。
【0026】
中央部における中心点間距離Scは、セラミックハニカム構造体の中心に最も近い隔壁交差部と、それに隣接する4つの隔壁交差部との合計5つの隔壁交差部における中心点間距離の平均値で定義する。
【0027】
ここで、前記外接円16の中心点C
Rは、一つの隔壁交差部14における扇状凸部15a,15b,15c,15dの円弧16a,16b,16c,16d部分から求めた中心であり、前記隔壁交差部14の中心点C
Wは、一つの隔壁交差部14で交差する2つの隔壁12の中心線の交点である。具体的には、
図3に示すように、隔壁交差部14を中心に4方向に伸びる各隔壁12a,12b,12c,12dにおいて、隔壁厚み方向の中点M1、中点M2、中点M3及び中点M4を求め、中点M1と中点M3、及び中点M2と中点M4を結び、その交点を隔壁交差部14の中心点C
W(X
W,Y
W)とする。ここで(X
W,Y
W)は中心点C
Wの座標を表す。なお中点M1、中点M2、中点M3及び中点M4は隔壁交差部14と、隣接する隔壁交差部との中間部分で求める。一方、一つの隔壁交差部14において、4箇所の扇状凸部15a,15b,15c,15dの円弧16a,16b,16c,16dの輪郭に外接するように形成される外接円16の中心を外接円16の中心点C
R(X
R,Y
R)とする。ここで(X
R,Y
R)は中心点C
Rの座標を表す。なお隔壁交差部14によっては、流路13へ突出する扇状凸部が3箇所(又は2箇所)しか明確に存在しない場合があるが、そのときは3箇所(又は2箇所)の扇状凸部の円弧から外接円16を描き、その中心を外接円16の中心点C
R(X
R,Y
R)とする。
【0028】
ここで、外接円16の半径が全ての隔壁交差部14において一定であるとは、製造により発生する変動の範囲内で一定であることを意味する。すなわち、セラミックハニカム構造体は前記扇状凸部の円弧部分に外接する外接円の半径が一定となるように設計して製造されるが、製造過程で隔壁及び扇状凸部にごく微小な変形が生じ、その結果、外接円の半径が位置によってある変動を有するものとなる。従って、本発明においては、外接円の半径がこの変動の範囲内に含まれる値であれば一定であると見なす。ここで外接円の半径の変動の範囲は±5%以内である。
【0029】
扇状凸部15a,15b,15c,15dの円弧16a,16b,16c,16dに外接する外接円16の半径を各隔壁交差部14において一定とすることにより、半径方向断面の中央部における扇状凸部15a,15b,15c,15dの合計面積と半径方向断面の外周部における扇状凸部15a,15b,15c,15dの合計面積とがほぼ同一となるので、押出成形時に、供給孔に連通する格子状のスリットを有する押出成形用金型への坏土の供給量が中央部と外周部とでほとんど異ならず、中央部と外周部との間で成形歪が発生せず、焼成時に割れの発生が抑制される。
【0030】
中心点間距離Sは中心点CWと中心点CRとの距離であり、S=[(XW-XR)2+(YW-YR)2]1/2で求められる。なお中心点CWの座標(XW,YW)及び中心点CRの座標(XR,YR)は、任意の点、例えば、セラミックハニカム構造体10の中心点を原点として設定すればよい。これらの中心点CW及び中心点CRは、セラミックハニカム構造体10の断面を、例えば、画像測定機(株式会社ミツトヨ製クイックビジョン)によって測定して求めることができる。
【0031】
本発明のセラミックハニカム構造体10の断面図を
図5に示し、その断面図において、中央部(A)及び外周部(B)~(F)における隔壁交差部14の拡大図をそれぞれ
図6(A)~
図6(F)に示す。また
図5の中央部(A)及び外周部(B)~(F)の位置における隔壁交差部14において、扇状凸部15a,15b,15c,15dの円弧16a,16b,16c,16dに外接する外接円16の中心点C
Rと隔壁交差部14の中心点C
Wとの中心点間距離S及びその方向をそれぞれ
図7(A)~
図7(F)に示す。
図7(A)に示すように、セラミックハニカム構造体10の中央部(A)においては、前記外接円16の中心点C
Rと前記隔壁交差部14の中心点C
Wとが一致するように設計するのが好ましい。
【0032】
しかし、セラミックハニカム構造体10の中央部(A)における外接円16の中心点CRと隔壁交差部14の中心点CWとの位置は、セラミックハニカム構造体10の製造条件等に依存し、実際には完全に一致するとは限らない。従って、中央部(A)における外接円16の中心点CRと隔壁交差部14の中心点CWとの中心点間距離SCは、セラミックハニカム構造体10の中心に最も近い隔壁交差部と、その隔壁交差部に隣接する4つの隔壁交差部との合計5つの隔壁交差部について測定し、それらの平均値で表す。
【0033】
本発明において、外周部における中心点間距離So(例えば、外周部(C)、(D)、(E)及び(F)の4箇所の平均)が、中央部(A)における中心点間距離Scよりも大きくなるように、すなわちSc<Soとなるように構成される。
【0034】
例えば、
図5に記載のハニカム構造体において、90°方向である外周部(C)及び外周部(D)、並びに45°方向である外周部(E)及び外周部(F)を選択して中心点間距離Soを求める方法について説明する。まず外周部(C)の隔壁交差部及びそれに隣接する2つの隔壁交差部((C2)及び(C3))の合計3つの隔壁交差部の中心点間距離Sを測定し、それらの平均値を求める。さらに外周部(D)、外周部(E)及び外周部(F)の隔壁交差部についても、同様にして、それぞれの箇所とそれに隣接する2つの隔壁交差部(それぞれ、(D2)及び(D3)、(E2)及び(E3)、並びに(F2)及び(F3))の合計3つの隔壁交差部における中心点間距離の平均値を求める。これらの4箇所(外周部(C)、(D)、(E)及び(F))の中心点間距離の平均値をさらに平均することにより、中心点間距離Soを求めることができる。
【0035】
外周部では、外接円16の中心点CRは、隔壁交差部14の中心点CWに対して、前記セラミックハニカム構造体10の外周壁11側に中心点間距離Soだけ離れて位置しているのが好ましい。ここで外周壁11側とは、隔壁交差部14から最も近い外周壁11の側、すなわちセラミックハニカム構造体の中心軸側とは反対の側のことである。
【0036】
すなわち、
図7(A)に示すように、中央部(A)においては扇状凸部15a,15b,15c,15dが4つの流路にほぼ均一に形成されているのに対して、
図7(C)に示すように、90°方向である外周部(C)においては、外周壁11側(図では左側)に形成される扇状凸部15a,15dの面積がセラミックハニカム構造体10の中心軸側(図では右側)に形成される扇状凸部15b,15cの面積よりも相対的に広く構成されているのが好ましい。
【0037】
同様に、
図7(B)に示すように、90°方向である外周部(B)においては、外周壁11側(図では右側)に形成される扇状凸部15b,15cの面積が中心側(図では左側)に形成される扇状凸部15a,15dの面積よりも相対的に広く構成されているのが好ましい。
【0038】
さらに、
図7(D)に示すように、90°方向である外周部(D)においては、外周壁11側(図では下側)に形成される扇状凸部15c,15dの面積が中心側(図では上側)に形成される扇状凸部15a,15bの面積よりも相対的に広く構成されているのが好ましい。
【0039】
また、
図7(E)に示すように、セラミックハニカム構造体の中心軸から45°方向である外周部(E)においては、外周壁11側(図では右下側)に形成される扇状凸部15cの面積が中心側(図では左上側)に形成される扇状凸部15aの面積よりも相対的に広く、隔壁交差部14の右上及び左下に形成される扇状凸部15b,15dの面積はそれらの中間の広さとなるよう構成されているのが好ましい。
【0040】
同様に、
図7(F)に示すように、セラミックハニカム構造体の中心軸から45°方向である外周部(F)においては、外周壁11側(図では左下側)に形成される扇状凸部15dの面積が中心側(図では右上側)に形成される扇状凸部15bの面積よりも相対的に広く、隔壁交差部14の左上及び右下に形成される扇状凸部15a,15cの面積はそれらの中間の広さとなるよう構成されているのが好ましい。
【0041】
このように、セラミックハニカム構造体の外周部における中心点間距離Soと、中央部における中心点間距離Scとが、Sc<Soを満たすとともに、外周部において外接円16の中心点CRが、隔壁交差部14の中心点CWに対して、セラミックハニカム構造体10の中心軸から外周壁11方向に、中心点間距離Soだけ離れて位置していることで、押出成形後のセラミックハニカム成形体やセラミックハニカム成形体を乾燥及び焼成してなるセラミックハニカム焼成体が、その外周部における隔壁交差部14に形成された異なる面積を有する扇状凸部15a,15b,15c,15dによって補強され、キレツが生じ難くなる。また、例えキレツが発生したとしてもセラミックハニカム構造体10内部にキレツが進展することがない。外周部における隔壁交差部14に形成された異なる面積を有する扇状凸部15a,15b,15c,15dのうちの面積の大きな扇状凸部が、補強に貢献していると考えられる。特に、外周面から衝撃を受けた場合であっても、外周壁11側に形成された相対的に広い面積を有する扇状凸部が隔壁交差部14をより良好に補強することができる。これにより、外周部における中心点間距離Soが、中央部における中心点間距離Scと同等であるセラミックハニカム構造体と比べて、外周部においてより優れた機械的強度を有するので好ましい。さらに、セラミックハニカム構造体の中央部における扇状凸部15a,15b,15c,15dの合計面積と外周部における扇状凸部15a,15b,15c,15dの合計面積とがほぼ同一であるので、中央部と外周部とで開口率がほぼ同一であり、外周部における中心点間距離Soが、中央部における中心点間距離Scと同等であるセラミックハニカム構造体と比べても圧力損失の上昇が無いので好ましい。
【0042】
本発明において、中央部(A)における中心点間距離Scは20μm以下であるのが好ましい。さらに、外接円16の中心点CRと隔壁交差部14の中心点CWとの中心点間距離Sは、セラミックハニカム構造体10の中心から隔壁交差部14までの距離に応じて大きくなるのが好ましい。このときセラミックハニカム構造体10の中央部における中心点間距離Scと外周部における中心点間距離Soとの差は5~150μmであるのが好ましい。このScとSoとの差は、好ましくは10~120μmであり、更に好ましくは10~100μmである。このような中心点間距離Sc及びScとSoとの差を有することにより、隔壁交差部がより良好に補強され、外周壁11側から衝撃を受けた場合でも、内部にキレツが進展し難くなる。
【0043】
中心点間距離S(μm)は、セラミックハニカム構造体10の軸中心からX(mm)離れた位置において、
S=F1×X+M1[ただし、F1 は0.05~0.4、M1は0~20の定数である。]
で表されるのがさらに好ましい。ここで、M1 は中央部における中心点間距離Scを表すので、中央部における中心点間距離Scと外周部における中心点間距離Soとの差は、次式:
So-Sc= F1×ΔX [ΔXは軸中心から外周部までの距離(mm)である。]
で表される。
【0044】
セラミックハニカム構造体の中央部と前記外周部との中間を中間部としたとき、前記中間部における隔壁交差部の中心点間距離Shが、Sc<Sh<Soを満たすのが好ましい。ここで、中間部とは、セラミックハニカム構造体の中央部から、前記中央部と外周部との距離のおよそ半分の距離に位置する部位である。また中心点間距離Shは、前記中間部に位置する4箇所の隔壁交差部を選択(90°方向に2箇所及び45°方向に2箇所)し、それぞれの隔壁交差部において、選択した隔壁交差部(例えば、
図5における(G)又は(H))及びそれに隣接する2つの隔壁交差部((G2)及び(G3)、又は(H2)及び(H3))の合計3つの隔壁交差部の中心点間距離Sの平均値を求め、それらを前記4箇所の隔壁交差部について平均した値である。
図5に示すセラミックハニカム構造体の中央部(A)、中間部(G)及び(H)(中央部と外周部との中点部)、並びに外周部(B)及び(C)における隔壁交差部14の扇状凸部15a,15b,15c,15dの形状を、それぞれ
図6(A)、
図6(G)、
図6(H)、
図6(B)及び
図6(C)に示す。
【0045】
例えば、セラミックハニカム構造体の中央部(A)、中間部(H)及び外周部(C)において、隔壁交差部14に形成される扇状凸部15a,15b,15c,15dのうち、外周部(C)に近い外周壁11側に形成される扇状凸部15a,15d(図では左側)の面積が、中央部(A)、中間部(H)、外周部(C)の順に相対的に広く形成されており、その反対側に形成される扇状凸部15b,15c(図では右側)の面積がこの順に相対的に狭く形成されている。
【0046】
同様に、セラミックハニカム構造体の中央部(A)、中間部(G)及び外周部(B)においても、外周部(B)に近い外周壁11側に形成される扇状凸部15b,15c(図では右側)の面積が、中央部(A)、中間部(G)、外周部(B)の順に相対的に広く形成され、その反対側に形成される扇状凸部15a,15d(図では左側)の面積がこの順に相対的に狭く形成されている。
【0047】
このような構成とすることで、外周部における中心点間距離Soが、中央部における中心点間距離Scと同等であるセラミックハニカム構造体と比べて外周部及び中間部において外周壁11に近い側の扇状凸部が補強され、キレツがより生じ難くなり、機械的強度がより良好となる。
【0048】
外接円16の半径は、セラミックハニカム構造体10の隔壁の厚さの0.75~1.25倍であるのが好ましく、0.8~1.1倍であるのがより好ましい。隔壁の厚さにもよるが、この外接円16の半径は、230~380μmであるのが好ましく、240~330μmであるのがより好ましい。
【0049】
本発明のセラミックハニカム構造体は、平均隔壁厚さが4~15 mil(0.102~0.381 mm)、平均セル密度が150~300 cpsi(23.3~46.5セル/cm2)であるのが好ましい。このような隔壁構造を有することで、大型及び/又は薄壁であっても十分な機械強度を有することができる。平均隔壁厚さが4mil未満の場合、隔壁の強度が低下し、一方、15 milを超える場合、使用開始時において低い圧力損失を維持することが難しくなる。平均セル密度が150 cpsi未満の場合、隔壁の強度が低下し、一方、300 cpsiを超える場合、低い圧力損失を維持することが難しくなる。
【0050】
本発明のセラミックハニカム構造体の隔壁の材質としては、セラミックハニカム構造体がディーゼルエンジンから排出される排気ガスを浄化するために用いられることから、耐熱性を有するセラミックス、すなわちアルミナ、ムライト、コーディエライト、炭化珪素、窒化珪素、ジルコニア、チタン酸アルミニウム、リチウムアルミニウムシリケート等を主結晶とするセラミックスであるのが好ましい。中でも耐熱衝撃性に優れる低熱膨張のコーディエライトを主結晶とするものが好ましい。
【0051】
[2] セラミックハニカム構造体の製造方法
本発明のセラミックハニカム構造体を製造する方法は、(a)セラミック原料を含む坏土を所定の成形体に押出成形し外周部と隔壁とが一体に形成された成形体を得る工程と、(b)前記成形体を乾燥及び焼成して焼成体を得る工程とを有し、
前記押出し成形工程において使用するハニカム成形用金型は、
坏土を供給するための供給孔と、前記供給孔が形成された穴形成面の反対面に形成された、前記供給孔に連通し、前記坏土をハニカム形状に成形するための格子状のスリットとを有し、
前記格子状のスリットが交差するスリット交差部における金型部材の4箇所の角部に、押出方向視で円弧状凹部を有し、
前記4箇所の円弧状凹部に内接する内接円の半径が全てのスリット交差部において一定であり、
前記内接円の中心点と前記スリット交差部の中心点との距離を金型中心点間距離Sdとしたとき、前記ハニカム成形用金型の金型中央部における金型中心点間距離Sdcと、前記ハニカム成形用金型の金型外縁部における金型中心点間距離Sdoとが、
Sdc<Sdoを満たす。
【0052】
なお、前記成形体を乾燥及び焼成して焼成体を得る工程(b)の後に、必要に応じて、(c)前記焼成体の外周部、又は外周縁部を加工により除去した外周面にコート材を塗布し、熱処理を行って外周壁を形成する工程を有しても良い。
【0053】
前記金型を用いてセラミック杯土を押出成形することによって得られるセラミックハニカム成形体は、断面格子状に配置された隔壁によって軸方向に形成された多数の流路を有し、軸方向に直交する断面において、前記隔壁が交差する隔壁交差部に、前記流路へ扇状に突出する扇状凸部を少なくとも1箇所有しており、前記扇状凸部の円弧部分に外接する外接円の半径が全ての隔壁交差部において一定であり、前記外接円の中心点と、前記隔壁交差部の中心点との距離を中心点間距離Sとしたとき、前記セラミックハニカム構造体の外周部における中心点間距離Soと、中央部における中心点間距離Scとが、Sc<Soを満たす。このセラミックハニカム成形体を乾燥及び焼成し、外周壁を形成することにより、本発明のセラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0054】
(1)セラミック原料
セラミック原料は、コーディエライト化原料となるように調製するのが好ましい。コーディエライト化原料は、主結晶がコーディエライト(主成分の化学組成が42~56質量%のSiO2、30~45質量%のAl2O3及び12~16質量%のMgO)となるように、シリカ源成分、アルミナ源成分及びマグネシア源成分を有する各原料粉末を配合したものである。コーディエライトを主結晶とするセラミックスに形成される細孔は、焼成過程においてセラミック原料の溶融によって生じるので、カオリン、シリカ、タルク、アルミナ等のセラミック原料の粒径及び粒度分布を調節することにより、コーディエライト質セラミックスが焼成された際に生じる細孔構造を制御することができる。
【0055】
(2)ハニカム成形用金型
成形用金型20は、
図8a及び
図8bに示すように、坏土を供給するための供給孔22と、前記供給孔22が形成された穴形成面の反対面に形成された、前記供給孔22に連通し、前記坏土をハニカム形状に成形するための格子状のスリット21とを有する。供給孔22より成形用金型20内に導入されたセラミック坏土は、スリット21でハニカム状に成形される。ここでスリット21に囲まれた金型部材26の四角形の断面形状が形成されるハニカム構造体の流路の断面形状に対応する。格子状に設けたスリット21の全ての交差部と供給孔22とが連通している場合や、スリット21の各交差部に対して一つおきの位置で千鳥状にスリット21と供給孔22とが連通している場合(
図9に示す場合)がある。
【0056】
本発明の成形用金型20を
図10a及び
図10bに示す。また
図10aに示す成形用金型20のA、B、D及びEの位置におけるスリット交差部の拡大図を
図11(A)、(B)、(D)及び(E)に示す。本発明の成形用金型20は、前記格子状のスリット21が交差するスリット交差部23における4箇所の金型部材26a,26b,26c,26dの角部に、押出方向視で円弧状凹部24a,24b,24c,24dを有し、前記4箇所の円弧状凹部24a,24b,24c,24dに内接する内接円24の半径が全てのスリット交差部において一定である。金型部材26のスリット21が形成された面の外周部には、ハニカム構造体の外径を規定し外周壁を形成するためのガイドリング29(
図10aに示すように、ハニカム構造体の外形が円形の場合はガイドリング29の内形状も円形である。)が配置されており、ガイドリング29の内形状が金型部材26の
外縁25となる。
【0057】
前記内接円24の中心点Caと前記スリット交差部23の中心点Csとの距離を金型中心点間距離Sdとしたとき、
前記ハニカム成形用金型20の中央部における金型中心点間距離Sdcと、
前記ハニカム成形用金型の外縁部における金型中心点間距離Sdoとが、
Sdc<Sdoを満たす。
【0058】
ここで、中央部における金型中心点間距離Sdcは、押出方向視で、ハニカム成形用金型の中心に最も近いスリット交差部と、それに隣接する4つのスリット交差部との合計5つのスリット交差部における金型中心点間距離の平均値で定義する。外縁部は、
図10aに示すように、押出方向視で、金型の中心Odを原点としてスリット21に沿った方向にx軸及びy軸を定義し、各軸と
外縁25との交点から原点に向かって、軸上又は軸に最も近い3つ目のスリット交差部21-3と4つ目のスリット交差部21-4との中間部と軸との交点(x軸上に2箇所及びy軸上に2箇所)を求め、原点から各交点までの長さの平均値をrdとしたとき、原点を中心とした半径rdの円βの外側(外縁側)の領域Zdのことをいう。外縁部おける金型中心点間距離Sdoは、前記外縁部に位置する4箇所のスリット交差部を選択し、それぞれ
選択した
各スリット交差部及びそれに隣接する2つのスリット交差部の合計3つのスリット交差部
からなる4つのグループを作り、各グループにおいて金型中心点間距離の平均値を求め、それらを前記
4つのグループについて平均した値で定義する。
【0059】
ここで、
図11(A)に示すように、ハニカム成形用金型20の中心(
図10aのAの位置)においては、前記内接円24の中心点Caと前記スリット交差部23の中心点Csとが一致するように設計するのが好ましい。しかし、このようにハニカム成形用金型20を設計した場合であっても、中心点Caと中心点Csとの位置は実際には完全に一致するとは限らない。従って、金型中央部(
図10aのAの位置)における金型中心点間距離Sdcは、金型中心に最も近いスリット交差部と、それに隣接する4つのスリット交差部との合計5つのスリット交差部について測定し、それらの平均値で表す。
【0060】
前記ハニカム成形用金型20の外縁部の位置(
図10aのB、D及びEの位置)においては、それぞれ
図11(B)、
図11(D)及び
図11(E)に示すように、前記内接円24の中心点Caの位置が前記スリット交差部23の中心点Csの位置に対して、前記
外縁25方向(ハニカム成形用金型20の中心から半径方向)に離間している。例えば、Eの位置における内接円24の中心点Caは、ハニカム成形用金型20の中心、つまりAの位置の交差部23の中心点Csと、Eの位置における交差部23の中心点Csとを通る直線上であり、かつ
外縁25方向に離間した位置にある。
【0061】
金型外縁部(
図10aのB、D、E及びFの位置)における中心点Caと中心点Csとの金型中心点間距離Sdoは、外縁部に位置する4箇所のスリット交差部を選択し、それぞれ
選択した
各スリット交差部及びそれに隣接する2つのスリット交差部の合計3つのスリット交差部
からなる4つのグループを作り、
各グループにおいて金型中心点間距離の平均値を求め、それらを前記
4つのグループについて平均した値である。このようにして1つのスリット交差部とそれに隣接する2つのスリット交差部との合計3つのスリット交差部の金型中心点間距離の平均値を、外縁部の4箇所のスリット交差部について求め、さらにこれらの値を平均することにより、金型中心点間距離Sdoを求める。ここで、外縁部の4箇所のスリット交差部は、ハニカム成形用金型20の中心からスリットに沿った方向(以下「90°方向」)に2箇所、及びスリットの対角線の方向(以下「45°方向」)に2箇所を選択する。
【0062】
例えば、
図10aに示す金型において、90°方向である外縁部B及び外縁部D、並びに45°方向である外縁部E及び外縁部Fを選択して金型中心点間距離Sdoを求める方法について説明する。まず外縁部の1つのスリット交差部(B)とそれに隣接する2つのスリット交差部(B2及びB3)との合計3つのスリット交差部の金型中心点間距離を測定し、それらの平均値を求める。さらに外縁部D、外縁部E及び外縁部Fのスリット交差部についても、同様にして、それぞれの箇所のスリット交差部(D、E及びF)とそれに隣接する2つのスリット交差部(それぞれ、D2及びD3、E2及びE3、並びにF2及びF3)との合計3つのスリット交差部における金型中心点間距離の平均値を求める。これらの4箇所(外縁部B、D、E及びF)の金型中心点間距離の平均値をさらに平均することにより、金型中心点間距離Sdoを求めることができる。
【0063】
前記金型中央部と前記金型外縁部との中間を金型中間部(
図10aのI及びJの位置)としたとき、前記金型中間部におけるスリット交差部の金型中心点間距離Sdhが、Sdc<Sdh<Sdoを満たすのが好ましい。この時、金型外縁部における金型中心点間距離Sdoは、金型中央部における金型中心点間距離Sdcの1.5~3倍であるのが好ましく、1.7~2.5倍であるのがより好ましい。金型中間部における金型中心点間距離Sdhは、前記金型中央部における金型中心点間距離Sdcの1.1~2.5倍であるのが好ましく、1.3~2.0倍であるのがより好ましい。
【0064】
ここで、金型中間部とは、金型の中央部から、前記中央部と金型外縁部との距離のおよそ半分の距離に位置する部位である。また、金型中間部におけるスリット交差部の金型中心点間距離Sdhは、外縁部の場合と同様、金型中間部の4箇所のスリット交差部を選択し、それぞれ選択した1つのスリット交差部とそれに隣接する2つのスリット交差部との合計3つのスリット交差部からなる4つのグループを作り、各グループにおいて金型中心点間距離の平均値を求め、それらを前記4つのグループについて平均した値である。
【0065】
中心点間距離Sd(μm)は、ハニカム成形用金型20の中心からX (mm)離れた位置において、
Sd=F2×X+M2[ただし、F2は0.05~0.5、M2は0~30の定数である。]
で表されるのがさらに好ましい。すなわち、ハニカム成形用金型20の中心からの距離に比例して外縁25方向に中心点間距離が大きくなるように構成されているのがさらに好ましい。
【0066】
前記内接円24の直径は、スリット21の幅よりも大きければ良いが、好ましくはスリット21の幅tの1.5~2.5倍であり、より好ましくは1.6~2.2倍である。
【0067】
このようなハニカム成形用金型20は、まず供給孔22を形成し、次に供給孔22が形成された穴形成面の反対面に孔240を形成した後、スリット21を形成することによって製造できる。このとき、この孔240の中心の位置が内接円24の中心点Caの位置となり、ハニカム成形用金型20のスリット交差部23における金型部材の4箇所の角部に、押出方向視で凹状に面取部が形成される。孔240の中心の位置(内接円24の中心点Caの位置)が、スリット交差部23の中心点Csの位置に対して、ハニカム成形用金型20の中心から外縁25へ向かって、前記中心点間距離Sdだけ外縁25側に離間するように孔及びスリット21を形成する。ここで、孔240は、例えば、精密なXYステージを有するボール盤を用いて、孔の位置を制御しながらドリルで穴開け加工を行うことで形成することができる。
【0068】
(3)コート材
必要に応じて焼成体の外周部、又は外周縁部を加工により除去した外周面に塗布される前記コート材は、セラミックス骨材粒子及び無機バインダーを主成分とするのが好ましい。前記コート材は、その骨材としてセラミックス骨材粒子を用い、その骨材を結合させる目的で無機バインダーを用いる。前記コート材がセラミックス骨材粒子及び無機バインダーを主成分とすることで、外周縁部を加工により除去したセラミックハニカム本体の外周面に、コート材を塗布し、熱処理した後において、外周壁と外周面とが好適に接合されるので、セラミックハニカム本体内部にキレツが生じ難く、耐熱衝撃性の良好なセラミックハニカム構造体を得ることができる。
【0069】
本発明のセラミックハニカム構造体は、排ガス浄化装置として使用されることから、前記コート材に用いられる前記セラミックス骨材粒子は、耐熱性に良好なコーディエライト、シリカ、アルミナ、ムライト、炭化珪素、窒化珪素、チタン酸アルミニウムから選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。中でも、コーディエライト及び/又はシリカを用いることにより、外周壁の熱膨張係数が低減されて、さらに優れた耐熱衝撃性が得られる。
【実施例】
【0070】
本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0071】
実施例1~3
押出成形用金型として、
図8a、
図8b、
図9、
図10a、
図10b及び
図11に示す金型20を準備した。金型20は、坏土を供給するための供給孔22と、前記供給孔22が形成された穴形成面の反対面に、前記供給孔22に連通し坏土をハニカム形状に成形するための格子状のスリット21を形成し、スリット21(幅300μm及びピッチ1.58 mm)のスリット交差部23に、直径540μmの円弧状凹部24a,24b,24c,24dを形成した。この金型20において、円弧状凹部24a,24b,24c,24dに内接する内接円24の中心点Caの位置が、スリット交差部23の中心点Csの位置に対して、ハニカム成形用金型20の中心から
外縁25(ハニカム成形用金型20の中心から半径方向)へ向かって、式:Sd(μm)=0.14×X+17[ただし、Xは金型中心からの半径方向の距離(mm)]で表される中心点間距離Sd(μm)だけ
外縁25側に離間するように製作した。
外縁25の内径は、実施例1及び2では277 mm、実施例3では239 mmとした。
【0072】
図12に、実施例1の金型のスリット交差部23の顕微鏡写真を示す。
図12(A)は金型の中央部(
図10aのAの位置)に位置するスリット交差部、
図12(E)は金型の外縁部(
図10aのEの位置)に位置するスリット交差部、
図12(I)は
図12(A)に示すスリット交差部と
図12(E)に示すスリット交差部との中間部(
図10aのIの位置)に位置するスリット交差部、
図12(D)は外縁部(
図10aのDの位置)に位置するスリット交差部、及び
図12(J)は
図12(A)に示すスリット交差部と
図12(D)に示すスリット交差部との中間部(
図10aのJの位置)に位置するスリット交差部を示す。
【0073】
実施例1の金型の中央部、外縁部及び中間部におけるスリット交差部の中心点間距離Sd(内接円24の中心点Caとスリット交差部23の中心点Csとの距離)を以下のようにして求めた。中央部(
図10aのAの位置)
では、軸中心に最も近い1つのスリット交差部及びそれに隣接する4つのスリット交差部(合計5つ)
について中心点間距離の平均値を求めた。外縁部
では、
図10aのB、D、E及びFの4箇所のスリット交差部
を選択し、それぞれ1つの
選択したスリット交差部
B、D、E、F及びそれに隣接する2つのスリット交差部(それぞれ、B2及びB3、D2及びD3、E2及びE3、並びにF2及びF3)の合計3つのスリット交差部
からなる4つのグループを作成し、各グループにおいて中心点間距離の平均値を求め、それらを
4つのグループについて平均して求めた。中間部
では、
図10aのI及びJ、並びに他の2箇所(図示せず)の合計4箇所のスリット交差部について、それぞれ1つのスリット交差部及びそれに隣接する2つのスリット交差部(I2及びI3、並びにJ2及びJ3)の合計3つのスリット交差部の平均値を求め、それらを4箇所のスリット交差部について平均して求めた。結果を表1に示す。
【0074】
実施例2及び実施例3の金型の中央部、外縁部及び中間部におけるスリット交差部の中心点間距離Sd(内接円24の中心点Caとスリット交差部23の中心点Csとの距離)を、実施例1と同様にして求めた。結果を表1に示す。
【0075】
表1
注(1):(A)、(D)、(E)、(I)及び(J)の符号は
図10aに記載した
スリット交差部の位置を表し、符号のないものは図示していないものである。
注(2):(各部位の中心点間距離Sdの平均値)-(金型中央部における中心点間距離Sd)
注(3):内接円の中心点C
aがスリット交差部の中心点C
Sよりも
外縁方向に位置する。
【0076】
【0077】
【0078】
次に、カオリン粉末、タルク粉末、シリカ粉末及びアルミナ粉末を混合し、50質量%のSiO2、36質量%のAl2O3及び14質量%のMgOを含むコーディエライト生成原料粉末とし、これにバインダーとしてメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、潤滑剤、造孔材としてバルーン型の発泡樹脂を添加し、乾式で十分混合した後、規定量の水を添加して、十分な混練を行って可塑化したセラミック杯土を作製した。
【0079】
得られたセラミック杯土を、前記金型を用いて押出成形し、所定長さに切断し、セラミックハニカム成形体を得た。この成形体を乾燥後、1410℃で焼成しコーディエライト質のセラミックハニカム焼成体を得た。このセラミックハニカム焼成体の外周部を加工により除去したセラミックハニカム本体の外周面に、非晶質シリカとコロイダルシリカと水とを含む外皮材をコーティングして乾燥させ、実施例1及び2では外径266.7 mm、全長304.8 mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチ1.58 mm、隔壁の気孔率が61%のコーディエライト質セラミックハニカム構造体、実施例3では外径228.6 mm、全長254 mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチ1.58 mm、隔壁の気孔率が61%のコーディエライト質セラミックハニカム構造体を作製した。
【0080】
図13a、
図13b及び
図13cに、実施例1のセラミックハニカム構造体の軸方向に直行する断面を光学顕微鏡で観察した結果を示す。
図13aは中央部の位置(A)の隔壁交差部を示し、
図13bは中心軸から隔壁交点の方向(45°方向)の中間部(位置(I):中心軸からの距離67 mm)及び外周部(位置(E)及び位置(F):中心軸からの距離133 mm)の隔壁交差部を示し、
図13cは中心軸から隔壁に沿った方向(90°方向)の中間部(位置(G):中心軸からの距離67 mm)及び外周部(位置(B)及び位置(C):中心軸からの距離133 mm)の隔壁交差部を示す。これらの結果から、実施例1のセラミックハニカム構造体は隔壁交差部に流路へ扇状に突出する扇状凸部を有していることがわかる。
【0081】
これらの隔壁交差部の光学顕微鏡写真から、画像測定機(株式会社ミツトヨ製クイックビジョン)で、扇状凸部の円弧部分に外接する外接円を求め、その半径、外接円の中心点CRと隔壁交差部の中心点CWとの中心点間距離S、その位置関係、及び外接円の半径/隔壁厚さを求めた。なお中心点間距離は、中央部においては中心部近傍の隔壁交差部と、それに隣接する4つの隔壁交差部との合計5つの隔壁交差部における中心点間距離の平均値で示し、外周部及び中間部においては90°方向に2箇所及び45°方向に2箇所の合計4箇所の隔壁交差部を選択し、それぞれ1つの選択した隔壁交差部と、それに隣接する2つの隔壁交差部((B2)及び(B3)、(C2)及び(C3)、(D2)及び(D3)、(E2)及び(E3)、(F2)及び(F3)、(H2)及び(H3)、並びに(G2)及び(G3))の合計3つの隔壁交差部からなる4つのグループを作成し、各グループにおいて中心点間距離Sの平均値を求め、それらを4つのグループにわたって平均した値で示した。結果を表2に示す。
【0082】
表2
注(1):(A)~(C)、(E)~(G)及び(I)の符号は
図13a~
図13c中に記載した
隔壁交差部の位置であり、符号のないものは図示していないものである。
注(2):(各部位の中心点間距離Sの平均値)-(中央部における中心点間距離S)
注(3):外接円の中心点C
Rが隔壁交差部の中心点C
Wよりも外周壁に近い側に位置する。
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
実施例1~3で作製したセラミックハニカム構造体についてB軸圧縮破壊強度の測定を行った。B軸圧縮破壊強度は、社団法人自動車技術会が定める規格M505-87「自動車排気ガス浄化触媒用セラミックモノリス担体の試験方法」に従い、セラミックハニカム構造体から採取した直径24.5 mm及び長さ24.5 mmの試験片17を用いて行った。なお、試料片17は、
図14に示すようにセラミックハニカム構造体のx軸又はy軸が圧縮荷重の負荷方向に沿うように、かつ外周部(但し、外周壁及び最外周の不完全流路を除く)が含まれるようにして採取した。B軸圧縮破壊強度の測定は、各セラミックハニカム構造体から3個ずつ採取した試料片17を用いて行い、それらの3つの平均値をB軸圧縮破壊強度とした。結果を表5に示す。
【0089】
比較例1
セラミック坏土を押出成形する金型として、スリット21(幅300μm及びピッチ1.58 mm)のスリット交差部23における金型部材26の4箇所の角部に、直径540μmの円弧状凹部24a,24b,24c,24dが形成されたハニカム成形用金型20を作製した。ただし、この金型は、円弧状凹部24a,24b,24c,24dに内接する内接円24の中心点Caと、スリット交差部23の中心点Csとの距離である金型中心点間距離Sdが、金型中央部では18μm、中間部では18μm、外縁部では17μmであった。比較例1で用いた金型の外縁25の直径は、277 mmとした。この金型構成を表3に示す。
【0090】
表3
注(1):(A)、(D)、(E)、(I)及び(J)の符号は
図10aに記載した
スリット交差部の位置である。
注(2):(各部位の中心点間距離Sdの平均値)-(金型中央部における中心点間距離Sd)
注(3):内接円の中心点C
aがスリット交差部の中心点C
Sよりも
外縁方向に位置する。
【0091】
この金型を用いた以外実施例1と同様にして、外径266.7 mm、全長304.8 mm、隔壁厚さ0.3 mm、セルピッチ1.58 mm、隔壁の気孔率が61%である比較例1のコーディエライト質セラミックハニカム構造体を作製した。比較例1のコーディエライト質セラミックハニカム構造体についても、実施例1と同様にして、中央部、外周部及び中間部の隔壁交差部について、扇状凸部の円弧部分に外接する外接円を求め、その半径、外接円の中心点CRと隔壁交差部の中心点CWとの中心点間距離S、及びその位置関係を求めた。結果を表4に示す。比較例1のコーディエライト質セラミックハニカム構造体の中央部、外周部及び中間部の隔壁交差部での中心点間距離Sは、セラミックハニカム構造体の中央部における中心点間距離Scと外周部における中心点間距離SoとがSc<Soを満たさなかった。また、実施例1と同様に測定した比較例1のセラミックハニカム構造体のB軸圧縮破壊強度を表5に示す。
【0092】
表4
注(1):(A)~(C)、(E)~(G)及び(I)の符号は
図13a~
図13c中に記載した
隔壁交差部の位置であり、符号のないものは図示していないものである。
注(2):(各部位の中心点間距離Sの平均値)-(中央部における中心点間距離S)
注(3):外接円の中心点C
Rが隔壁交差部の中心点C
Wよりも外周壁に近い側に位置する。
注(4):外接円の中心点C
Rが隔壁交差部の中心点C
Wよりも中心軸に近い側に位置する。
【0093】
【0094】
【0095】
以上の結果から明らかなように、本発明の実施例1~3のセラミックハニカム構造体は、隔壁が交差する隔壁交差部に、流路へ扇状に突出する扇状凸部を有しており、セラミックハニカム構造体の外周部における中心点間距離So(扇状凸部の中心点と隔壁交差部の中心点との距離)が、中央部における中心点間距離Scよりも大きく(Sc<So)、かつセラミックハニカム構造体の中央部と外周部との中間である中間部における中心点間距離Shが、中央部における中心点間距離Scよりも大きく、外周部における中心点間距離Soよりも小さかった(Sc<Sh<So)。このような隔壁構造を有することにより、実施例1~3で作製されたセラミックハニカム構造体は高い強度を有していた。一方比較例1のセラミックハニカム構造体は本発明に比べて強度が劣っていた。