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特許7334834熱サイクルシステム用作動媒体および熱サイクルシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】熱サイクルシステム用作動媒体および熱サイクルシステム
(51)【国際特許分類】
   C09K 5/04 20060101AFI20230822BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C09K5/04 F
F25B1/00 396Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022127340
(22)【出願日】2022-08-09
(62)【分割の表示】P 2020047734の分割
【原出願日】2014-07-07
(65)【公開番号】P2022161957
(43)【公開日】2022-10-21
【審査請求日】2022-08-09
(31)【優先権主張番号】P 2013146298
(32)【優先日】2013-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014017030
(32)【優先日】2014-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 正人
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特許第5149456(JP,B1)
【文献】国際公開第2012/157764(WO,A1)
【文献】特表2011-502207(JP,A)
【文献】特開平8-41448(JP,A)
【文献】特表2007-536390(JP,A)
【文献】特表2010-531927(JP,A)
【文献】特開2010-121927(JP,A)
【文献】特表2012-505296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 5/04
F25B 1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量の割合が90~100質量%であり、トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が20~95質量%である熱サイクルシステム用作動媒体
【請求項2】
前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計の割合が95~100質量%である請求項1に記載の熱サイクルシステム用作動媒体
【請求項3】
トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が30~95質量%である、請求項1または2に記載の熱サイクルシステム用作動媒体
【請求項4】
前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンの割合が70モル%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用作動媒体
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の熱サイクルシステム用作動媒体を用いた、熱サイクルシステム。
【請求項6】
冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である請求項に記載の熱サイクルシステム。
【請求項7】
ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、製氷機または自動販売機である請求項に記載の熱サイクルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱サイクル用作動媒体およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書において、ハロゲン化炭化水素については、化合物名の後の括弧内にその化合物の略称を記すが、本明細書では必要に応じて化合物名に代えてその略称を用いる。
従来、冷凍機用冷媒、空調機器用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動媒体、潜熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却媒体等の熱サイクル用の作動媒体としては、クロロトリフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン等のクロロフルオロカーボン(CFC)、クロロジフルオロメタン等のヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)が用いられてきた。しかし、CFCおよびHCFCは、成層圏のオゾン層への影響が指摘され、現在、規制の対象となっている。
【0003】
このような経緯から、熱サイクル用作動媒体としては、CFCやHCFCに代えて、オゾン層への影響が少ない、ジフルオロメタン(HFC-32)、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC-125)等のヒドロフルオロカーボン(HFC)が用いられるようになった。例えば、R410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の擬似共沸混合冷媒)等は従来から広く使用されてきた冷媒である。しかし、HFCは、地球温暖化の原因となる可能性が指摘されている。
【0004】
R410Aは、冷凍能力の高さからいわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等に広く用いられてきた。しかし、地球温暖化係数(GWP)が2088と高く、そのため低GWP作動媒体の開発が求められている。この際、R410Aを単に置き換えて、これまで用いられてきた機器をそのまま使用し続けることを前提にした作動媒体の開発が求められている。
【0005】
そこで最近では、炭素-炭素二重結合を有しその結合が大気中のOHラジカルによって分解されやすいことから、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が少ない作動媒体である、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、すなわち炭素-炭素二重結合を有するHFCに期待が集まっている。本明細書においては、特に断りのない限り飽和のHFCをHFCといい、HFOとは区別して用いる。また、HFCを飽和のヒドロフルオロカーボンのように明記する場合もある。
【0006】
2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234yf)は地球温暖化係数(GWP)の低い作動媒体として知られている。しかしHFO-1234yfはその成績係数は高いものの、冷凍能力がR410Aに比較して低く、いわゆるパッケージエアコンやルームエアコンと言われる通常の空調機器等、これまでR410Aが用いられてきた機器において用いることができないという欠点がある。
【0007】
HFOを用いた作動媒体として、例えば、特許文献1には上記特性を有するとともに、優れたサイクル性能が得られるトリフルオロエチレン(HFO-1123)を用いた作動媒体に係る技術が開示されている。特許文献1においては、さらに、該作動媒体の不燃性、サイクル性能等を高める目的で、HFO-1123に、各種HFCを組み合わせて作動媒体とする試みもされている。
【0008】
熱サイクル用の作動媒体に用いるHFOとして、HFO-1234yfが有用であることが知られており、HFO-1234yfに係る技術の開発もなされている。例えば、特許文献2には、HFO-1234yfを特定の方法で製造する際に得られるHFO-1234yfを含む組成物が記載されている。特許文献2に記載の組成物には、多くの化合物が含まれ、その中にHFO-1234yfとHFO-1123を含む組成物が含まれる。しかし、HFO-1123はHFO-1234yfの副生物として他の多くの化合物とともに記載されているのみであり、両者を特定の割合で混合した組成物を作動媒体として用いることや、該組成物が成績係数・冷凍能力に優れることは開示されていない。
【0009】
これまでに、R410Aの代替候補として、能力、効率および温度勾配とのバランスを総合的に勘案して実用に供せられる作動媒体を得る観点から、HFO-1234yfとHFO-1123とを組合せるという知見や示唆は文献等により示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2012/157764号
【文献】特表2012-505296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者らは、HFO-1123の臨界温度が59.2℃であることを確認した。この知見から、従来使用されてきたR410Aの代替に用いるには、HFO-1123はその臨界温度が低く代替範囲が限定されることがわかった。さらに、特許文献1に記載の各種HFCを組み合わせた場合においても、必ずしも充分な成績係数・冷凍能力を達成できない場合があった。本発明は、臨界温度のみならず、R410A代替に用いるために充分なサイクル性能を同時に実現する熱サイクル用の作動媒体、およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供を目的とする。
同時に本発明は、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られる熱サイクル用の作動媒体、およびこれを含む熱サイクルシステム用組成物、並びに該組成物を用いた熱サイクルシステムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような状況下、本発明者らは、HFO-1123にあえて冷凍能力の低いHFO-1234yfを特定の割合で組み合わせることで、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[12]に記載の構成を有する熱サイクル用作動媒体、熱サイクルシステム用組成物および熱サイクルシステムを提供する。
[1]トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,
3-テトラフルオロプロペンの合計量の割合が70~100質量%であり、トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が35~95質量%であり、
前記作動媒体は、飽和のヒドロフルオロカーボンおよび炭素-炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボン(ただし、トリフルオロエチレンおよび2,3,3,3-テトラフルオロプロペンを除く)から選ばれる少なくとも1種を、前記作動媒体全量に対して0~30質量%含むことを特徴とする熱サイクル用作動媒体と、
二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)からなる群の少なくとも1種と、
を含む熱サイクルシステム用組成物。
【0013】
[2]前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計の割合が80~100質量%である[1]記載の熱サイクルシステム用組成物。
[3]トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が40~95質量%である、[1]または[2]に記載の熱サイクルシステム用組成物。
【0014】
[4]前記作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンの割合が70モル%以下である[1]~[3]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。
[5]前記炭素-炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンが、1,2-ジフルオロエチレン、2-フルオロプロペン、1,1,2-トリフルオロプロペン、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、および3,3,3-トリフルオロプロペンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。
[6]前記炭素-炭素二重結合を有するヒドロフルオロカーボンが、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペンである、[1]~[5]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。
【0015】
[7]前記飽和のヒドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1-トリフルオロエタン、1,1,2,2-テトラフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびペンタフルオロエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[6]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。
[8]前記飽和のヒドロフルオロカーボンが、ジフルオロメタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタンおよびペンタフルオロエタンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]~[7]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物。
[9]前記飽和のヒドロフルオロカーボンがジフルオロメタンであって、トリフルオロエチレンと2,3,3,3-テトラフルオロプロペンとジフルオロメタンの合計量に対するトリフルオロエチレンの割合が30~80質量%、2,3,3,3-テトラフルオロプロペンの割合が40質量%以下、かつジフルオロメタンの割合が30質量%以下であり、作動媒体全量に対するトリフルオロエチレンの割合が70モル%以下である[8]に記載の熱サイクルシステム用組成物。
【0016】
[10]前記[1]~[9]のいずれかに記載の熱サイクルシステム用組成物を用いた、熱サイクルシステム。
[11]冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置または二次冷却機である[10]に記載の熱サイクルシステム。
[12]ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置、内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、製氷機または自動販売機である[10]に記載の熱サイクルシステム。
【発明の効果】
【0017】
本発明の熱サイクル用作動媒体およびそれを含む熱サイクルシステム用組成物は、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分な熱サイクル性能を有する。
本発明の熱サイクルシステムは、本発明の熱サイクルシステム用組成物を用いることで、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分な熱サイクル性能を有する。
さらに、本発明の熱サイクル用作動媒体によれば、上記の条件を満たすと同時に、従来使用されてきたR410Aが置き換え可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】HFO-1123とHFO-1234yfとその他の成分とからなる混合物における組成(質量%)の三角座標図において、本発明の熱サイクル用作動媒体の組成範囲を示す図である。
図2】本発明の熱サイクルシステムの一例である冷凍サイクルシステムを示した概略構成図である。
図3】HFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32とからなる混合物における組成(質量%)の三角座標図において、本発明の熱サイクル用作動媒体の一実施態様の組成範囲を示す図である。
図4図2の冷凍サイクルシステムにおける作動媒体の状態変化を圧力-エンタルピ線図上に記載したサイクル図である。
図5】HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体における組成と温度勾配との関係を示すグラフである。
図6】HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体における組成と成績係数(対R410A)との関係を示すグラフである。
図7】HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体における組成と冷凍能力(対R410A)との関係を示すグラフである。
図8】HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体における組成と臨界温度との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
<作動媒体>
本発明の作動媒体は、HFO-1123とHFO-1234yfを含む熱サイクル用作動媒体であって、前記作動媒体全量に対するHFO-1123とHFO-1234yfの合計量の割合が70~100質量%であり、HFO-1123とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合が35~95質量%である熱サイクル用の作動媒体である。
熱サイクルとしては、凝縮器や蒸発器等の熱交換器による熱サイクルが特に制限なく用いられる。
【0020】
本発明の上記組成範囲を組成範囲(S)として以下に説明する。
本発明の熱サイクル用作動媒体の組成範囲(S)を図1の三角座標図に示す。本発明の熱サイクル用作動媒体は、HFO-1123とHFO-1234yfと、必要に応じてその他の成分を含有する混合媒体である。図1は三辺のそれぞれをHFO-1123、HFO-1234yf、その他の成分の組成(質量%)として示す三角座標図であり、三角形の底辺の一部を含む太実線で囲まれた台形の領域が本発明の作動媒体の組成範囲(S)で
ある。なお、図1において、「1123/1234」は、HFO-1123とHFO-1234yfの質量比を、「1123+1234」は、作動媒体全量に対するHFO-1123とHFO-1234yfの合計質量%をそれぞれ示す。以下、必要に応じて図1を参照しながら、本発明の作動媒体の組成について説明する。
【0021】
ここで、HFO-1234yfの地球温暖化係数(100年)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第4次評価報告書(2007年)による値で4であり、HFO-1123の地球温暖化係数(100年)は、IPCC第4次評価報告書に準じて測定された値として、0.3である。本明細書においてGWPは、特に断りのない限りIPCC第4次評価報告書の100年の値である。また、混合物におけるGWPは、組成質量による加重平均として示す。例えば、HFO-1123とHFO-1234yfの質量比1:1の混合物におけるGWPは、(0.3+4)/2=2.15と算出できる。
【0022】
本発明の作動媒体は、GWPの極めて低いHFO-1123とHFO-1234yfを合計で70質量%以上含有することで、得られる作動媒体のGWPの値が低い。図1の三角座標図では、その他の成分のGWPが、例えば、後述の飽和HFCのように、HFO-1123およびHFO-1234yfよりも高い場合には、底辺に近づくほどGWPが低い組成となる。また、その場合に、本発明の作動媒体においてGWPが最小となる組成は、図1に示す台形(組成範囲(S))の左下の角で示される組成、すなわち、作動媒体がHFO-1123とHFO-1234yfのみで構成され、HFO-1123の95質量%に対してHFO-1234yfが5質量%の組成である。
【0023】
作動媒体におけるHFO-1123とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合は35~95質量%であり、40~95質量%が好ましく、50~90質量%がより好ましく、50~85質量%がさらに好ましく、60~85質量%がもっとも好ましい。なお、図1の三角座標図では、組成範囲(S)を示す台形の左側の辺が1123/1234=95/5質量%の境界線を示す。右側の辺が1123/1234=35/65質量%の境界線を示す。上辺は1123+1234=70質量%、下辺(底辺)は1123+1234=100質量%の線である。
【0024】
作動媒体におけるHFO-1123とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合が35質量%以上の範囲では、温度勾配が小さく好ましい。40質量%以上の範囲では、温度勾配がさらに小さくなり、R410Aに代替させる実用上さらに好ましい。また、作動媒体におけるHFO-1123とHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合が35~95質量%の範囲であれば、温度勾配のみならず、成績係数、冷凍能力および臨界温度の観点からも従来のR410Aに代替し得る冷凍サイクル性能を発現できる。このような本発明の作動媒体を熱サイクルに用いれば、実用上充分な冷凍能力および成績係数が得られる。
【0025】
本発明の作動媒体100質量%中のHFO-1123とHFO-1234yfの合計の含有量は、70~100質量%である。HFO-1123とHFO-1234yfの合計の含有量が上記範囲内であれば、熱サイクルに用いた際に一定の能力を維持しながら効率をより高めることで良好なサイクル性能が得られる。作動媒体100質量%中のHFO-1123とHFO-1234yfの合計の含有量は、80~100質量%が好ましく、90~100質量%がより好ましく、95~100質量%がさらに好ましい。
【0026】
上記のとおり本発明の作動媒体におけるHFO-1123とHFO-1234yfは、ともにHFOであり地球温暖化への影響が少ない化合物である。また、HFO-1123は作動媒体としての能力に優れるが、成績係数の点で他のHFOに比べて充分でない場合がある。さらに、HFO-1123単体で使用をした場合、臨界温度の観点からは、従来
R410Aが使用されていた目的である用途には充分な冷凍サイクル性能が期待できない場合がある。
【0027】
また、HFO-1123は、単独で用いた場合に高温または高圧下で着火源があると、自己分解することが知られている。そこで、HFO-1123を、他の成分、例えばフッ化ビニリデン等と混合し、HFO-1123の含有量を抑えた混合物とすることで自己分解反応を抑える試みが報告されている(Combusion, Explosion, and Shock Waves, Vol. 42, No 2, pp. 140-143, 2006)。
【0028】
しかしながら、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で、HFO-1123の冷凍サイクル性能を維持しながら安全に使用できる組成は知られていない。そこで、本発明者らは、HFO-1123の自己分解性については、HFO-1123を含む組成物において、組成物全量に対するHFO-1123の含有量を70モル%以下とすれば、作動媒体として使用する場合の温度や圧力条件下で自己分解を抑制できることを以下のとおり確認した。
【0029】
<HFO-1123の自己分解性の評価>
自己分解性の評価は、高圧ガス保安法における個別通達においてハロゲンを含むガスを混合したガスにおける燃焼範囲を測定する設備として推奨されているA法に準拠した設備を用い実施した。
【0030】
具体的には、外部より所定の温度に制御された内容積650cmの球形耐圧容器内にHFO-1123とHFO-1234yf、HFO-1123とHFC-32、またはHFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32とを種々の割合で混合した混合媒体を所定圧力まで封入した後、内部に設置された白金線を溶断することにより約30Jのエネルギーを印加した。印加後に発生する耐圧容器内の温度と圧力変化を測定することにより自己分解反応の有無を確認した。圧力上昇並びに温度上昇が認められた場合に自己分解反応ありと判断した。結果をHFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体については表1に、HFO-1123とHFC-32の混合媒体については表2に、HFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32の混合媒体については表3に示す。なお表1、2、3中の圧力はゲージ圧である。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
本発明の作動媒体においては、自己分解性を有する組成であっても使用条件によっては取り扱いを十分に注意することで熱サイクルシステムに使用することが可能である。しかしながら、本発明の作動媒体の上記組成範囲(S)から、このようにして確認された自己分解性を有する組成領域を除く、すなわち、本発明の作動媒体の上記組成範囲(S)と、作動媒体全量に対するHFO-1123の含有量が70モル%以下の領域が重なる組成範囲を選択することで、高い冷凍サイクル性能を有するとともに、安全性の高い作動媒体の組成範囲とすることができる。
【0035】
HFO-1234yfは作動媒体としての冷凍能力および成績係数がバランスよく揃ったHFOである。HFO-1234yfの臨界温度(94.7℃)はHFO-1123に比べて高いものの、単独で用いた場合その能力がR410Aに比べ不充分である。
【0036】
本発明の作動媒体におけるHFO-1123とHFO-1234yfとは共沸しない。一般に、非共沸混合媒体を作動媒体とした際に、熱交換器、例えば、蒸発器における蒸発の、または凝縮器における凝縮の、開始温度と終了温度が異なる性質、すなわち温度勾配を有する。よって、本発明の作動媒体は、HFO-1123とHFO-1234yfを主として含有する、すなわち、作動媒体全量に対してHFO-1123とHFO-1234yfを合計量で70質量%以上含有するので、温度勾配を有する。
【0037】
本発明の作動媒体が温度勾配を有する場合の熱サイクルシステムにおける影響について、図2に示す熱サイクルシステムに用いた場合を例に以下に説明する。図2は、本発明の熱サイクルシステムの一例である冷凍サイクルシステムを示した概略構成図である。
【0038】
冷凍サイクルシステム10は、作動媒体(蒸気)を圧縮する圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体の蒸気を冷却し液体とする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体(液体)を膨張させる膨張弁13と、膨張弁13から排出された液状の作動媒体を加熱して蒸気とする蒸発器14とを備える。
【0039】
冷凍サイクルシステム10において、作動媒体は、蒸発時、蒸発器14の入口から出口に向かい温度が上昇し、反対に凝縮時、凝縮器12の入口から出口に向かい温度が低下する。冷凍サイクルシステム10においては、蒸発器14および凝縮器12において、作動媒体と対向して流れる水や空気等の熱源流体との間で熱交換を行うことにより構成されている。熱源流体は、冷凍サイクルシステム10において、蒸発器14では「E→E’」で示され、凝縮器12では「F→F’」で示される。
【0040】
ここで、単一冷媒体を用いた場合には温度勾配がないため、蒸発器14の出口温度と入口温度との温度差がほぼ一定であるが、非共沸混合媒体を用いた場合は、温度差が一定とならない。例えば、蒸発器14で0℃で蒸発させようとした場合、入口温度が0℃よりも低い温度となり、蒸発器14において着霜する問題が生じる。特に、温度勾配が大きいほど、入口温度が低くなり、着霜の可能性が大きくなる。
【0041】
また、冷凍サイクルシステム10に温度勾配が大きい非共沸混合媒体を用いた場合、気
液両相の組成が大きく異なることから、システム10内を循環する非共沸混合媒体が漏えいした場合に、その前後でシステム10内を循環する非共沸混合媒体の組成が大きく変化する原因になる。
【0042】
また、例えば、上記冷凍サイクルシステム10に示されるとおり、通常、熱サイクルシステムにおいては、蒸発器14および凝縮器12等の熱交換器を流れる作動媒体と水や空気等の熱源流体とは常に対向流にすることにより熱交換効率の向上をはかる工夫がされている。ここで、起動時を別とし、一般に長期稼働する安定運転状態においては熱源流体の温度差が小さいことから、温度勾配の大きい非共沸混合媒体の場合、エネルギー効率のよい熱サイクルシステムを得ることが困難である。このため、適切な温度勾配を有する非共沸混合媒体が望まれる。
【0043】
本発明の作動媒体における、HFO-1123およびHFO-1234yfの組み合わせの組成範囲および含有量の範囲は、作動媒体として実用的に使用されうる温度勾配を示す範囲である。
作動媒体における温度勾配は、9.5℃以下が好ましく、9℃以下がより好ましく、8.4℃以下がさらに好ましく、7.2℃以下がもっとも好ましい。
【0044】
[任意成分]
本発明の作動媒体は、本発明の効果を損なわない範囲でHFO-1123およびHFO-1234yf以外に、通常作動媒体として用いられる化合物を任意に含有してもよい。本発明の作動媒体が任意の化合物(任意成分という)を含有する場合においても、作動媒体の温度勾配は「0」とはならず相当の温度勾配を有する。本発明の作動媒体の温度勾配は、HFO-1123とHFO-1234yf、および必要に応じて含有する任意成分との混合割合により異なる。
【0045】
任意成分としては、HFC、HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFO(炭素-炭素二重結合を有するHFC)が好ましい。
【0046】
(HFC)
任意成分のHFCとしては、例えば、HFO-1123およびHFO-1234yfと組み合わせて熱サイクルに用いた際に、温度勾配を下げる、能力を向上させるまたは効率をより高める作用を有するHFCが用いられる。本発明の作動媒体がこのようなHFCを含むと、より良好なサイクル性能が得られる。
【0047】
なお、HFCは、HFO-1123およびHFO-1234yfに比べてGWPが高いことが知られている。したがって、上記作動媒体としてのサイクル性能の向上に加えて、GWPを許容の範囲にとどめる観点から任意成分として用いるHFCを選択する。
【0048】
オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さいHFCとして具体的には炭素数1~5のHFCが好ましい。HFCは、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、環状であってもよい。
【0049】
HFCとしては、ジフルオロメタン(HFC-32)、ジフルオロエタン、トリフルオロエタン、テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン(HFC-125)、ペンタフルオロプロパン、ヘキサフルオロプロパン、ヘプタフルオロプロパン、ペンタフルオロブタン、ヘプタフルオロシクロペンタン等が挙げられる。
【0050】
なかでも、HFCとしては、オゾン層への影響が少なく、かつ冷凍サイクル特性が優れる点から、HFC-32、1,1-ジフルオロエタン(HFC-152a)、1,1,1
-トリフルオロエタン(HFC-143a)、1,1,2,2-テトラフルオロエタン(HFC-134)、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(HFC-134a)、およびHFC-125が好ましく、HFC-32、HFC-134a、およびHFC-125がより好ましい。
HFCは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
なお、上記好ましいHFCのGWPは、HFC-32については675であり、HFC-134aについては1430であり、HFC-125については3500である。得られる作動媒体のGWPを低く抑える観点から、任意成分のHFCとしては、HFC-32が最も好ましい。
【0052】
本発明の作動媒体において、HFO-1123およびHFO-1234yfとHFC-32を組合せる場合には、上記本発明の作動媒体の組成範囲(S)内であって、かつ、HFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32の合計量に対するHFO-1123の割合を30~80質量%、HFO-1234yfの割合を40質量%以下、およびHFC-32の割合を30質量%以下とすることが好ましい。この組成範囲を組成範囲(P)として以下に説明する。
【0053】
本発明の熱サイクル用作動媒体がHFO-1123、HFO-1234yfおよびHFC-32からなる場合の上記組成範囲(P)を図3の三角座標図に示す。すなわち、図3は三辺のそれぞれをHFO-1123、HFO-1234yf、HFC-32の組成(質量%)として示す三角座標図であり、三角形の底辺よりわずかに内側に一辺を有する太実線で囲まれた5角形の領域が本発明の好ましい作動媒体の組成範囲(P)である。
【0054】
図3における組成範囲(P)を示す5角形の各辺(P1)~(P5)はそれぞれ以下の範囲の境界線を示す。ただし、以下の各式において各化合物の略称は、作動媒体全量、すなわち、HFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32の合計量に対する当該化合物の割合(質量%)を示す。
(P1)70質量%≦HFO-1123+HFO-1234yf、および、HFC-32≦30質量%
(P2)HFO-1123/HFO-1234yf≦95/5質量%
(P3)HFO-1123≦80質量%
(P4)0質量%<HFC-32
(P5)HFO-1234yf≦40質量%
【0055】
なお、上記のとおりHFO-1123、HFO-1234yfおよびHFC-32のGWPはそれぞれ、0.3、4および675である。組成範囲(P)においてもっともGWPが高いのは、5角形の右上の角の組成、すなわち、HFO-1123:HFO-1234yf:HFC-32が30質量%:40質量%:30質量%の組成であり、その組成におけるGWPは、(0.3×30+4×40+675×30)/100=204.19と算出できる。このような組成範囲(P)を有する作動媒体は、HFO-1123、HFO-1234yfおよびHFC-32がそれぞれ有する特性がバランスよく発揮され、かつそれぞれが有する欠点が抑制された作動媒体である。すなわち、組成範囲(P)を有する作動媒体は、GWPが低く抑えられ、熱サイクルに用いた際に、温度勾配が小さく、一定の能力と効率を有することで良好なサイクル性能が得られる作動媒体である。
【0056】
また、上記と同様にして、このような組成範囲(P)から上記で確認された自己分解性を有する組成領域を除く、すなわち、組成範囲(P)と作動媒体全量に対するHFO-1123の含有量が70モル%以下の領域が重なる組成範囲を選択することで、高い冷凍サイクル性能を有するとともに、安全性の高い作動媒体の組成範囲とすることができる。
【0057】
本発明の作動媒体を、HFO-1123、HFO-1234yfおよびHFC-32の3つの化合物で構成する場合、より好ましい組成として、組成範囲(P)の範囲内で、HFO-1123とHFO-1234yfとHFC-32の合計量に対して、HFO-1123を30~70質量%、HFO-1234yfを4~40質量%、およびHFC-32を0超~30質量%の割合で含有し、かつ、作動媒体全量に対するHFO-1123の含有量が70モル%以下である組成が挙げられる。相対成績係数の観点からはHFC-32の含有量は5質量%以上が好ましく、8質量%以上がより好ましい。
【0058】
(HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFO)
任意成分のHFOとしては、1,2-ジフルオロエチレン(HFO-1132)、2-フルオロプロペン(HFO-1261yf)、1,1,2-トリフルオロプロペン(HFO-1243yc)、トランス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(E))、シス-1,2,3,3,3-ペンタフルオロプロペン(HFO-1225ye(Z))、トランス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(E))、シス-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HFO-1234ze(Z))、3,3,3-トリフルオロプロペン(HFO-1243zf)等が挙げられる。
【0059】
なかでも、任意成分のHFOとしては、高い臨界温度を有し、安全性、成績係数が優れる点から、HFO-1234ze(E)、HFO-1234ze(Z)が好ましく、HFO-1234ze(E)がより好ましい。
これらのHFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
本発明の作動媒体が、任意成分のHFCおよび/または、HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFOを含む場合、該作動媒体100質量%中のHFCおよび、HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFOの合計の含有量は、30質量%以下であり、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。作動媒体におけるHFCおよび、HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFOの合計の含有量は、用いるHFC、HFO-1123およびHFO-1234yf以外のHFOの種類に応じて、HFO-1123およびHFO-1234yfと組み合わせて熱サイクルに用いた際に、温度勾配を下げる、能力を向上させるまたは効率をより高める観点、さらには地球温暖化係数を勘案して、上記範囲内で適宜調整される。
【0061】
(その他の任意成分)
本発明の作動媒体は、上記任意成分以外に、二酸化炭素、炭化水素、クロロフルオロオレフィン(CFO)、ヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)等をその他の任意成分として含有してもよい。その他の任意成分としては、オゾン層への影響が少なく、かつ地球温暖化への影響が小さい成分が好ましい。
【0062】
炭化水素としては、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン等が挙げられる。
炭化水素は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
本発明の作動媒体が炭化水素を含有する場合、その含有量は作動媒体の100質量%に対して30質量%以下であり、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、3~8質量%がさらに好ましい。炭化水素が下限値以上であれば、作動媒体への鉱物系潤滑油の溶解性がより良好になる。
【0064】
CFOとしては、クロロフルオロプロペン、クロロフルオロエチレン等が挙げられる。本発明の作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、CFOとしては、1,1-ジクロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(CFO-1214ya)、1,3-ジクロロ-1,2,3,3-テトラフルオロプロペン(CFO-1214yb)、1,2-ジクロロ-1,2-ジフルオロエチレン(CFO-1112)が好ましい。
CFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
本発明の作動媒体がCFOを含有する場合、その含有量は作動媒体の100質量%に対して30質量%以下であり、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。CFOの含有量が下限値以上であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。CFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。
【0066】
HCFOとしては、ヒドロクロロフルオロプロペン、ヒドロクロロフルオロエチレン等が挙げられる。本発明の作動媒体のサイクル性能を大きく低下させることなく作動媒体の燃焼性を抑えやすい点から、HCFOとしては、1-クロロ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン(HCFO-1224yd)、1-クロロ-1,2-ジフルオロエチレン(HCFO-1122)が好ましい。
HCFOは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
本発明の作動媒体がHCFOを含む場合、本発明の作動媒体100質量%中のHCFOの含有量は、30質量%以下であり、1~20質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましく、2~8質量%がさらに好ましい。HCFOの含有量が下限値以上であれば、作動媒体の燃焼性を抑制しやすい。HCFOの含有量が上限値以下であれば、良好なサイクル性能が得られやすい。
【0068】
本発明の作動媒体が上記のような任意成分およびその他の任意成分を含有する場合、その合計含有量は、作動媒体100質量%に対して30質量%以下である。
【0069】
以上説明した本発明の作動媒体は、ともに地球温暖化への影響が少ないHFOであって、作動媒体としての能力に優れるHFO-1123と、作動媒体としての能力および効率がバランスよく揃ったHFO-1234yfを、両者を混合した際の混合媒体における温度勾配の観点を加味して、それぞれを単独で使用する場合に比べてサイクル性能が向上する割合となるように組み合わせて得られる作動媒体であり、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能を有するものである。
【0070】
[熱サイクルシステムへの適用]
(熱サイクルシステム用組成物)
本発明の作動媒体は、熱サイクルシステムへの適用に際して、通常、潤滑油と混合して本発明の熱サイクルシステム用組成物として使用することができる。本発明の作動媒体と潤滑油を含む本発明の熱サイクルシステム用組成物は、これら以外にさらに、安定剤、漏れ検出物質等の公知の添加剤を含有してもよい。
【0071】
(潤滑油)
潤滑油としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステム用組成物に用いられる公知の潤滑油が特に制限なく採用できる。潤滑油として具体的には、含酸素系合成油(エステル系潤滑油、エーテル系潤滑油等)、フッ素系潤滑油、鉱物系潤滑油、炭化水素系合成油等が挙げられる。
【0072】
エステル系潤滑油としては、二塩基酸エステル油、ポリオールエステル油、コンプレックスエステル油、ポリオール炭酸エステル油等が挙げられる。
【0073】
二塩基酸エステル油としては、炭素数5~10の二塩基酸(グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等)と、直鎖または分枝アルキル基を有する炭素数1~15の一価アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール等)とのエステルが好ましい。具体的には、グルタル酸ジトリデシル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソデシル、アジピン酸ジトリデシル、セバシン酸ジ(3-エチルヘキシル)等が挙げられる。
【0074】
ポリオールエステル油としては、ジオール(エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,5-ペンタジオール、ネオペンチルグリコール、1,7-ヘプタンジオール、1,12-ドデカンジオール等)または水酸基を3~20個有するポリオール(トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトール、グリセリン、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物等)と、炭素数6~20の脂肪酸(ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、エイコサン酸、オレイン酸等の直鎖または分枝の脂肪酸、もしくはα炭素原子が4級であるいわゆるネオ酸等)とのエステルが好ましい。
なお、これらのポリオールエステル油は、遊離の水酸基を有していてもよい。
【0075】
ポリオールエステル油としては、ヒンダードアルコール(ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスルトール等)のエステル(トリメチロールプロパントリペラルゴネート、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールテトラペラルゴネート等)が好ましい。
【0076】
コンプレックスエステル油とは、脂肪酸および二塩基酸と、一価アルコールおよびポリオールとのエステルである。脂肪酸、二塩基酸、一価アルコール、ポリオールとしては、上述と同様のものを用いることができる。
【0077】
ポリオール炭酸エステル油とは、炭酸とポリオールとのエステルである。
ポリオールとしては、上述と同様のジオールや上述と同様のポリオールが挙げられる。また、ポリオール炭酸エステル油としては、環状アルキレンカーボネートの開環重合体であってもよい。
【0078】
エーテル系潤滑油としては、ポリビニルエーテル油やポリオキシアルキレン油が挙げられる。
【0079】
ポリビニルエーテル油としては、アルキルビニルエーテルなどのビニルエーテルモノマーを重合して得られたものや、ビニルエーテルモノマーとオレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとを共重合して得られた共重合体がある。
ビニルエーテルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーとしては、エチレン、プロピレン、各種ブテン、各種ペンテン、各種ヘキセン、各種ヘプテン、各種オクテン、ジイソブチレン、トリイソブチレン、スチレン、α-メチルスチレン、各種アルキル置換スチレン等が挙げられる。オレフィン性二重結合を有する炭化水素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0081】
ポリビニルエーテル共重合体は、ブロックまたはランダム共重合体のいずれであってもよい。ポリビニルエーテル油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
ポリオキシアルキレン油としては、ポリオキシアルキレンモノオール、ポリオキシアルキレンポリオール、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールのアルキルエーテル化物、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールのエステル化物等が挙げられる。
【0083】
ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールは、水酸化アルカリなどの触媒の存在下、水や水酸基含有化合物などの開始剤に炭素数2~4のアルキレンオキシド(エチレンオキシド、プロピレンオキシド等)を開環付加重合させる方法等により得られたものが挙げられる。また、ポリアルキレン鎖中のオキシアルキレン単位は、1分子中において同一であってもよく、2種以上のオキシアルキレン単位が含まれていてもよい。1分子中に少なくともオキシプロピレン単位が含まれることが好ましい。
【0084】
反応に用いる開始剤としては、水、メタノールやブタノール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタエリスリトール、グリセロール等の多価アルコールが挙げられる。
【0085】
ポリオキシアルキレン油としては、ポリオキシアルキレンモノオールやポリオキシアルキレンポリオールの、アルキルエーテル化物やエステル化物が好ましい。また、ポリオキシアルキレンポリオールとしては、ポリオキシアルキレングリコールが好ましい。特に、ポリグリコール油と呼ばれる、ポリオキシアルキレングリコールの末端水酸基がメチル基等のアルキル基でキャップされた、ポリオキシアルキレングリコールのアルキルエーテル化物が好ましい。
【0086】
フッ素系潤滑油としては、合成油(後述する鉱物油、ポリα-オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等。)の水素原子をフッ素原子に置換した化合物、ペルフルオロポリエーテル油、フッ素化シリコーン油等が挙げられる。
【0087】
鉱物系潤滑油としては、原油を常圧蒸留または減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、精製処理(溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、白土処理等)を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱物油、ナフテン系鉱物油等が挙げられる。
【0088】
炭化水素系合成油としては、ポリα-オレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン等が挙げられる。
【0089】
潤滑油は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
潤滑油としては、作動媒体との相溶性の点から、ポリオールエステル油、ポリビニルエーテル油およびポリグリコール油から選ばれる1種以上が好ましい。
【0090】
潤滑油の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、10~100質量部が好ましく、20~50質量部がより好ましい。
【0091】
(安定剤)
安定剤は、熱および酸化に対する作動媒体の安定性を向上させる成分である。安定剤としては、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の安定剤、例えば、耐酸化性向上剤、耐熱性向上剤、金属不活性剤等が特に制限なく採用できる。
【0092】
耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤としては、N,N’-ジフェニルフェニレンジアミン、p-オクチルジフェニルアミン、p,p’-ジオクチルジフェニルアミン、N-フェニル-1-ナフチルアミン、N-フェニル-2-ナフチルアミン、N-(p-ドデシル)フェニル-2-ナフチルアミン、ジ-1-ナフチルアミン、ジ-2-ナフチルアミン、N-アルキルフェノチアジン、6-(t-ブチル)フェノール、2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4-メチル-2,6-ジ-(t-ブチル)フェノール、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)等が挙げられる。耐酸化性向上剤および耐熱性向上剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0093】
金属不活性剤としては、イミダゾール、ベンズイミダゾール、2-メルカプトベンズチアゾール、2,5-ジメチルカプトチアジアゾール、サリシリジン-プロピレンジアミン、ピラゾール、ベンゾトリアゾール、トルトリアゾール、2-メチルベンズアミダゾール、3,5-イメチルピラゾール、メチレンビス-ベンゾトリアゾール、有機酸またはそれらのエステル、第1級、第2級または第3級の脂肪族アミン、有機酸または無機酸のアミン塩、複素環式窒素含有化合物、アルキル酸ホスフェートのアミン塩またはそれらの誘導体等が挙げられる。
【0094】
安定剤の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましい。
【0095】
(漏れ検出物質)
漏れ検出物質としては、紫外線蛍光染料、臭気ガスや臭いマスキング剤等が挙げられる。
紫外線蛍光染料としては、米国特許第4249412号明細書、特表平10-502737号公報、特表2007-511645号公報、特表2008-500437号公報、特表2008-531836号公報に記載されたもの等、従来、ハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の紫外線蛍光染料が挙げられる。
【0096】
臭いマスキング剤としては、特表2008-500437号公報、特表2008-531836号公報に記載されたもの等、従来からハロゲン化炭化水素からなる作動媒体とともに、熱サイクルシステムに用いられる公知の香料が挙げられる。
【0097】
漏れ検出物質を用いる場合には、作動媒体への漏れ検出物質の溶解性を向上させる可溶化剤を用いてもよい。
【0098】
可溶化剤としては、特表2007-511645号公報、特表2008-500437号公報、特表2008-531836号公報に記載されたもの等が挙げられる。
【0099】
漏れ検出物質の添加量は、本発明の効果を著しく低下させない範囲であればよく、作動媒体100質量部に対して、2質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましい。
【0100】
<熱サイクルシステム>
本発明の熱サイクルシステムは、本発明の作動媒体を用いたシステムである。本発明の作動媒体を熱サイクルシステムに適用するにあたっては、通常、上記熱サイクルシステム用組成物に作動媒体を含有させるかたちで適用する。本発明の熱サイクルシステムは、凝縮器で得られる温熱を利用するヒートポンプシステムであってもよく、蒸発器で得られる冷熱を利用する冷凍サイクルシステムであってもよい。
【0101】
本発明の熱サイクルシステムとして、具体的には、冷凍・冷蔵機器、空調機器、発電システム、熱輸送装置および二次冷却機等が挙げられる。なかでも、本発明の熱サイクルシステムは、より高温の作動環境でも安定して熱サイクル性能を発揮できるため、屋外等に設置されることが多い空調機器として用いられることが好ましい。また、本発明の熱サイクルシステムは、冷凍・冷蔵機器として用いられることも好ましい。
【0102】
空調機器として、具体的には、ルームエアコン、パッケージエアコン(店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン等)、ガスエンジンヒートポンプ、列車空調装置、自動車用空調装置等が挙げられる。
【0103】
冷凍・冷蔵機器として、具体的には、ショーケース(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース等)、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等が挙げられる。
【0104】
発電システムとしては、ランキンサイクルシステムによる発電システムが好ましい。
発電システムとして、具体的には、蒸発器において地熱エネルギー、太陽熱、50~200℃程度の中~高温度域廃熱等により作動媒体を加熱し、高温高圧状態の蒸気となった作動媒体を膨張機にて断熱膨張させ、該断熱膨張によって発生する仕事によって発電機を駆動させ、発電を行うシステムが例示される。
【0105】
また、本発明の熱サイクルシステムは、熱輸送装置であってもよい。熱輸送装置としては、潜熱輸送装置が好ましい。
【0106】
潜熱輸送装置としては、装置内に封入された作動媒体の蒸発、沸騰、凝縮等の現象を利用して潜熱輸送を行うヒートパイプおよび二相密閉型熱サイフォン装置が挙げられる。ヒートパイプは、半導体素子や電子機器の発熱部の冷却装置等、比較的小型の冷却装置に適用される。二相密閉型熱サイフォンは、ウィッグを必要とせず構造が簡単であることから、ガス-ガス型熱交換器、道路の融雪促進および凍結防止等に広く利用される。
【0107】
以下、本発明の実施形態の熱サイクルシステムの一例として、冷凍サイクルシステムについて、上記で大枠を説明した図2に概略構成図が示される冷凍サイクルシステム10を例として説明する。冷凍サイクルシステムとは、蒸発器で得られる冷熱を利用するシステムである。
【0108】
図2に示す冷凍サイクルシステム10は、作動媒体蒸気Aを圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする圧縮機11と、圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする凝縮器12と、凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする膨張弁13と、膨張弁13から排出された作動媒体Dを加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする蒸発器14と、蒸発器14に負荷流体Eを供給するポンプ15と、凝縮器12に流体Fを供給するポンプ16とを具備して概略構成されるシステムである。
【0109】
冷凍サイクルシステム10においては、以下の(i)~(iv)のサイクルが繰り返される。
(i)蒸発器14から排出された作動媒体蒸気Aを圧縮機11にて圧縮して高温高圧の作動媒体蒸気Bとする(以下、「AB過程」という。)。
(ii)圧縮機11から排出された作動媒体蒸気Bを凝縮器12にて流体Fによって冷却し、液化して低温高圧の作動媒体Cとする。この際、流体Fは加熱されて流体F’となり、凝縮器12から排出される(以下、「BC過程」という。)。
【0110】
(iii)凝縮器12から排出された作動媒体Cを膨張弁13にて膨張させて低温低圧の作動媒体Dとする(以下、「CD過程」という。)。
(iv)膨張弁13から排出された作動媒体Dを蒸発器14にて負荷流体Eによって加熱して高温低圧の作動媒体蒸気Aとする。この際、負荷流体Eは冷却されて負荷流体E’となり、蒸発器14から排出される(以下、「DA過程」という。)。
【0111】
冷凍サイクルシステム10は、断熱・等エントロピ変化、等エンタルピ変化および等圧変化からなるサイクルシステムである。作動媒体の状態変化を、図4に示される圧力-エンタルピ線(曲線)図上に記載すると、A、B、C、Dを頂点とする台形として表すことができる。
【0112】
AB過程は、圧縮機11で断熱圧縮を行い、高温低圧の作動媒体蒸気Aを高温高圧の作動媒体蒸気Bとする過程であり、図4においてAB線で示される。
【0113】
BC過程は、凝縮器12で等圧冷却を行い、高温高圧の作動媒体蒸気Bを低温高圧の作動媒体Cとする過程であり、図4においてBC線で示される。この際の圧力が凝縮圧である。圧力-エンタルピ線とBC線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tが凝縮温度であり、低エンタルピ側の交点Tが凝縮沸点温度である。ここで、HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体のような非共沸混合媒体の温度勾配はTとTの差として示される。
【0114】
CD過程は、膨張弁13で等エンタルピ膨張を行い、低温高圧の作動媒体Cを低温低圧の作動媒体Dとする過程であり、図4においてCD線で示される。なお、低温高圧の作動媒体Cにおける温度をTで示せば、T-Tが(i)~(iv)のサイクルにおける作動媒体の過冷却度(以下、必要に応じて「SC」で示す。)となる。
【0115】
DA過程は、蒸発器14で等圧加熱を行い、低温低圧の作動媒体Dを高温低圧の作動媒体蒸気Aに戻す過程であり、図4においてDA線で示される。この際の圧力が蒸発圧である。圧力-エンタルピ線とDA線の交点のうち高エンタルピ側の交点Tは蒸発温度である。作動媒体蒸気Aの温度をTで示せば、T-Tが(i)~(iv)のサイクルにおける作動媒体の過熱度(以下、必要に応じて「SH」で示す。)となる。なお、Tは作動媒体Dの温度を示す。
【0116】
ここで、作動媒体のサイクル性能は、例えば、作動媒体の冷凍能力(以下、必要に応じて「Q」で示す。)と成績係数(以下、必要に応じて「COP」で示す。)で評価できる。作動媒体のQとCOPは、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態における各エンタルピ、h、h、h、hを用いると、下式(1)、(2)からそれぞれ求められる。
【0117】
Q=h-h …(1)
COP=Q/圧縮仕事=(h-h)/(h-h) …(2)
【0118】
なお、COPは冷凍サイクルシステムにおける効率を意味しており、COPの値が高いほど少ない入力、例えば圧縮機を運転するために必要とされる電力量、により大きな出力、例えば、Qを得ることができることを表している。
【0119】
一方、Qは負荷流体を冷凍する能力を意味しており、Qが高いほど同一のシステムにおいて、多くの仕事ができることを意味している。言い換えると、大きなQを有する場合は、少量の作動媒体で目的とする性能が得られることを表しており、システムの小型化が可能となる。
【0120】
本発明の作動媒体を用いた本発明の熱サイクルシステムによれば、例えば、図2に示される冷凍サイクルシステム10において、従来から空調機器等で一般的に使用されているR410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の混合媒体)を用いた場合に比べて、地球温暖化係数を格段に低く抑えながら、QとCOPをともに高いレベル、すなわち、R410Aと同等またはそれ以上のレベルに設定することが可能である。
【0121】
なお、熱サイクルシステムの稼働に際しては、水分の混入や、酸素等の不凝縮性気体の混入による不具合の発生を避けるために、これらの混入を抑制する手段を設けることが好ましい。
【0122】
熱サイクルシステム内に水分が混入すると、特に低温で使用される際に問題が生じる場合がある。例えば、キャピラリーチューブ内での氷結、作動媒体や潤滑油の加水分解、サイクル内で発生した酸成分による材料劣化、コンタミナンツの発生等の問題が発生する。特に、潤滑油がポリグリコール油、ポリオールエステル油等である場合は、吸湿性が極めて高く、また、加水分解反応を生じやすく、潤滑油としての特性が低下し、圧縮機の長期信頼性を損なう大きな原因となる。したがって、潤滑油の加水分解を抑えるためには、熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する必要がある。
【0123】
熱サイクルシステム内の水分濃度を制御する方法としては、乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト等)等の水分除去手段を用いる方法が挙げられる。乾燥剤は、液状の作動媒体と接触させることが、脱水効率の点で好ましい。例えば、凝縮器12の出口、または蒸発器14の入口に乾燥剤を配置して、作動媒体と接触させることが好ましい。
【0124】
乾燥剤としては、乾燥剤と作動媒体との化学反応性、乾燥剤の吸湿能力の点から、ゼオライト系乾燥剤が好ましい。
【0125】
ゼオライト系乾燥剤としては、従来の鉱物系潤滑油に比べて吸湿量の高い潤滑油を用いる場合には、吸湿能力に優れる点から、下式(3)で表される化合物を主成分とするゼオライト系乾燥剤が好ましい。
【0126】
2/nO・Al・xSiO・yHO …(3)
ただし、Mは、Na、K等の1族の元素またはCa等の2族の元素であり、nは、Mの原子価であり、x、yは、結晶構造にて定まる値である。Mを変化させることにより細孔径を調整できる。
【0127】
乾燥剤の選定においては、細孔径および破壊強度が重要である。
作動媒体の分子径よりも大きい細孔径を有する乾燥剤を用いた場合、作動媒体が乾燥剤中に吸着され、その結果、作動媒体と乾燥剤との化学反応が生じ、不凝縮性気体の生成、乾燥剤の強度の低下、吸着能力の低下等の好ましくない現象を生じることとなる。
【0128】
したがって、乾燥剤としては、細孔径の小さいゼオライト系乾燥剤を用いることが好ましい。特に、細孔径が3.5オングストローム以下である、ナトリウム・カリウムA型の合成ゼオライトが好ましい。作動媒体の分子径よりも小さい細孔径を有するナトリウム・
カリウムA型合成ゼオライトを適用することによって、作動媒体を吸着することなく、熱サイクルシステム内の水分のみを選択的に吸着除去できる。言い換えると、作動媒体の乾燥剤への吸着が起こりにくいことから、熱分解が起こりにくくなり、その結果、熱サイクルプシステムを構成する材料の劣化やコンタミナンツの発生を抑制できる。
【0129】
ゼオライト系乾燥剤の大きさは、小さすぎると熱サイクルシステムの弁や配管細部への詰まりの原因となり、大きすぎると乾燥能力が低下するため、約0.5~5mmが好ましい。形状としては、粒状または円筒状が好ましい。
【0130】
ゼオライト系乾燥剤は、粉末状のゼオライトを結合剤(ベントナイト等。)で固めることにより任意の形状とすることができる。ゼオライト系乾燥剤を主体とするかぎり、他の乾燥剤(シリカゲル、活性アルミナ等。)を併用してもよい。
作動媒体に対するゼオライト系乾燥剤の使用割合は、特に限定されない。
【0131】
さらに、熱サイクルシステム内に不凝縮性気体が混入すると、凝縮器や蒸発器における熱伝達の不良、作動圧力の上昇という悪影響をおよぼすため、極力混入を抑制する必要がある。特に、不凝縮性気体の一つである酸素は、作動媒体や潤滑油と反応し、分解を促進する。
【0132】
不凝縮性気体濃度は、作動媒体の気相部において、作動媒体に対する容積割合で1.5体積%以下が好ましく、0.5体積%以下が特に好ましい。
【0133】
以上説明した本発明の熱サイクルシステムにあっては、本発明の作動媒体を用いることで、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られる。
【実施例
【0134】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。例1~8、例14~51が実施例であり、例9~13、例52~55が比較例である。例56は、以下の各実施例、比較例において、相対評価に用いたR410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の混合媒体)の例であり、参考例である。
【0135】
[例1~13]
例1~13において、HFO-1123およびHFO-1234yfを表5に示す割合で混合した作動媒体を作製し、以下の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。
【0136】
[温度勾配、冷凍サイクル性能の測定]
温度勾配、冷凍サイクル性能(冷凍能力および成績係数)の測定は、図2に示す冷凍サイクルシステム10に作動媒体を適用して、図4に示す熱サイクル、すなわちAB過程で圧縮機11による断熱圧縮、BC過程で凝縮器12による等圧冷却、CD過程で膨張弁13による等エンタルピ膨張、DA過程で蒸発器14による等圧加熱を実施した場合について行った。
【0137】
測定条件は、蒸発器14における作動媒体の平均蒸発温度を0℃、凝縮器12における作動媒体の平均凝縮温度を40℃、凝縮器12における作動媒体の過冷却度(SC)を5℃、蒸発器14における作動媒体の過熱度(SH)を5℃として実施した。また、機器効率による損失、および配管、熱交換器における圧力損失はないものとした。
【0138】
冷凍能力および成績係数は、作動媒体のA(蒸発後、高温低圧)、B(圧縮後、高温高圧)、C(凝縮後、低温高圧)、D(膨張後、低温低圧)の各状態のエンタルピhを用い
て、上記式(1)、(2)から求めた。
【0139】
サイクル性能の算出に必要となる熱力学性質は、対応状態原理に基づく一般化状態方程式(Soave-Redlich-Kwong式)、および熱力学諸関係式に基づき算出した。特性値が入手できない場合は、原子団寄与法に基づく推算手法を用い算出を行った。
【0140】
冷凍能力および成績係数は、後述の例56で上記と同様に測定されたR410Aの冷凍能力および成績係数をそれぞれ、1.000とした場合の相対比として求めた。また、作動媒体のGWPを、表4に示す個々の化合物のGWPをもとに、組成質量による加重平均として求めた。すなわち、作動媒体を構成する各化合物の質量%とGWPの積を合計した値を100で除すことで該作動媒体のGWPを求めた。
【0141】
【表4】
【0142】
温度勾配とともに、冷凍能力(対R410A)および成績係数(対R410A)の結果、およびGWPの計算結果を表5に示す。
【0143】
また、図5図7に、例1~13で得られたHFO-1123およびHFO-1234yfの混合媒体における組成と温度勾配、成績係数(対R410A)および冷凍能力(対R410A)との関係をそれぞれ表すグラフを示す。なお、図5図7の横軸が示す「HFO-1123[質量%]」は、作動媒体全量(100質量%)に対するHFO-1123の質量%を示す。
【0144】
【表5】
【0145】
表5および図5図7に示される結果より、組成が本発明の範囲内である例1~例8の作動媒体は、組成が本発明の範囲外である例9~例13の作動媒体がR410Aに相対する冷凍能力または成績係数のいずれかが低いレベルにあるのに比べ、R410Aに相対する成績係数および冷凍能力がともに良好であり、温度勾配も所定の値以下であることがわかる。
【0146】
作動媒体の冷凍能力は、装置自体の大きさを決定する要因である。仮にHFO-1123をHFO-1123より冷凍能力の低い化合物、例えば、HFO-1234yfと組合せた場合には、組合せ後の混合物(作動媒体)はHFO-1123単独組成の作動媒体より冷凍能力が低くなる。このため、このような混合物をR410Aに代替させるためにはその冷凍能力の低さを補うために、装置自体の大型化と用いるエネルギーの増加が必要であり好ましくない。
【0147】
すなわち、HFO-1123とHFO-1123より冷凍能力の低い化合物とを組合せることが、本発明の課題を解決する手段としては適当とは通常は考えにくい。特に、従来用いられてきたR410Aを用いる装置において機器の置き換えをすることなく作動媒体のみを置き換えることが求められている現状では、装置の大型化が好ましくないためである。
【0148】
しかしながら、本発明の作動媒体においては、HFO-1123をHFO-1123より冷凍能力の低い化合物であるHFO-1234yfとあえて組合せて、以下の成績係数とのバランスを取りながら冷凍能力を実用上使用できる程度の値以上とした。
【0149】
成績係数については、HFO-1123単独では充分なレベルとは言えないが、HFO-1123にHFO-1234yfを組合せた本発明の作動媒体の上記組成範囲においては良好である。成績係数は作動媒体の効率を示し、機器の効率を考える上で非常に重要であり、作動媒体特有の値である。かかる範囲内での成績係数の安定化は、従来の機器を変更することなくその作動媒体のみを置き換えるという本発明の目的にかなうものである。
【0150】
温度勾配の観点からは、HFO-1123とHFO-1234yfの組合せにおいて、HFO-1123が上記本発明の範囲内であれば温度勾配を抑えられる。温度勾配は、高
すぎるとR410Aに代替させるにあたり制約となる。すなわち、本発明の作動媒体はR410Aと同じ臨界温度範囲に抑えることができる。
よって、例1~例8の作動媒体によれば、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られるといえる。
【0151】
[例14~39]
例14~例39において、HFO-1123およびHFO-1234yfと、HFC-134a、HFC-125またはHFC-32をそれぞれ表6、表7、表8に示す割合で混合した作動媒体を作製した。なお、表6~8には、1123/(1123+1234yf)[wt%]として、HFO-1123およびHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合を質量%で示した。
【0152】
また、得られた作動媒体について、上記と同様の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。冷凍能力および成績係数については、後述の例56で上記と同様に測定されたR410Aの冷凍能力および成績係数をそれぞれ、1.000とした場合の相対比として求めた。温度勾配とともに、冷凍能力(対R410A)および成績係数(対R410A)の結果、およびGWPの計算結果を表6~8に示す。
【0153】
【表6】
【0154】
【表7】
【0155】
【表8】
【0156】
表6~8に示される結果より、組成が本発明の範囲内である例14~例33の作動媒体は、R410Aに相対する成績係数および冷凍能力がともに良好であり、温度勾配も所定の値以下であることがわかる。
【0157】
なお、例14~例39の作動媒体は、HFO-1123およびHFO-1234yfに比べてGWPの高い、HFC-134a、HFC-125またはHFC-32を含有するが、その含有量は作動媒体の全量に対して30質量%以下であり、作動媒体としてのGWPも実使用できる範囲内である。
よって、例14~例39の作動媒体によれば、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られるといえる。
【0158】
[例40~52]
例40~52において、HFO-1123およびHFO-1234yfと、HFO-1234ze(E)を表9に示す割合で混合した作動媒体を作製した。また、例52として、HFO-1234ze(E)のみからなる作動媒体を準備した。なお、表9には、1123/(1123+1234yf)[wt%]として、HFO-1123およびHFO-1234yfの合計量に対するHFO-1123の割合を質量%で示した。
【0159】
また、得られた作動媒体について、上記と同様の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。冷凍能力および成績係数については、後述の例56で上記と同様に測定されたR410Aの冷凍能力および成績係数をそれぞれ、1.000とした場合の相対比として求めた。温度勾配とともに、冷凍能力(対R410A)および成績係数(対R410A)の結果、およびGWPの計算結果を表9に示す。
【0160】
【表9】
【0161】
表9に示される結果より、組成が本発明の範囲内である例40~例51の作動媒体は、R410Aに相対する成績係数および冷凍能力がともに良好であり、温度勾配も所定の値以下であることがわかる。
【0162】
なお、例40~例51の作動媒体は、HFO-1123およびHFO-1234yfに比べて、例52に示すように冷凍能力が大幅に劣っているHFO-1234ze(E)を含有するが、その含有量は作動媒体の全量に対して30質量%以下であり、作動媒体としての冷凍サイクル性能も実使用できる範囲内である。
よって、例40~例51の作動媒体によれば、地球温暖化への影響を抑えつつ、実用上充分なサイクル性能が得られるといえる。
【0163】
[例53~55]
例53~55は、HFO-1234yfの代わりにHFO-1234ze(E)をHFO-1123と組合せて表10に示す割合で混合した作動媒体の例であり、比較例の作動媒体である。
【0164】
これらの作動媒体について、上記と同様の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。冷凍能力および成績係数については、後述の例54で上記と同様に測定されたR410Aの冷凍能力および成績係数をそれぞれ、1.000とした場合の相対比として求めた。温度勾配とともに、冷凍能力(対R410A)および成績係数(対R410A)の結果、およびGWPの計算結果を表10に示す。
【0165】
【表10】
【0166】
表10に示すように、HFO-1123とHFO-1234ze(E)を含む例53~55の作動媒体は、温度勾配が大きく、地球温暖化への影響を抑えることができるものの、実用上充分なサイクル性能が得られるはといえない。
【0167】
[例56]
例56として、上記例1~55の相対比較の対象となる、R410A(HFC-32とHFC-125の質量比1:1の混合媒体)について、上記と同様の方法で、温度勾配および冷凍サイクル性能(冷凍能力Qおよび成績係数COP)を測定した。冷凍能力および成績係数は表11のとおり1.000である。温度勾配およびGWPの計算結果を表11に示す。
【0168】
【表11】
【0169】
R410Aは、従来から使用されている作動媒体であることから、本実施例においてはサイクル性能はこれを基準として、同等のレベルに達していれば、実用上充分なサイクル性能であると評価した。なお、R410AはHFCのみから構成され、GWPが高い。
【0170】
上記結果から本発明の実施例である例1~8、例14~51は、GWPが低く、かつ、R410Aを基準として、サイクル性能は実用上充分なレベルであることがわかる。また、例1~3、14~16、19~21、25~28、30~39については、HFO-1123の含有量が70モル%以下であり、自己分解性を有しない作動媒体であって、安全性確保の手間を要しない操作性のよい作動媒体である。
【0171】
[臨界温度の推定]
HFO-1123、HFO-1234yf、および表12に組成を示すこれらの混合媒体について、臨界温度を気液界面の消滅位置および臨界蛋白光による着色を直接肉眼にて観察する方法により推定した。結果を表12および図8に示す。なお、図8の横軸が示す「HFO-1123[wt%]」は、混合媒体全量(100質量%)に対するHFO-1123の質量%を示す。
【0172】
【表12】
【0173】
図8に示すように、HFO-1123にHFO-1234yfを組合せることで、HFO-1123単体に比べ臨界温度が上昇する。すなわち、HFO-1123とHFO-1234yfの混合媒体は、HFO-1123単体の臨界温度59.2℃に比べて、より高い臨界温度を実現することが可能になる。図8からHFO-1234yfとHFO-1123の合計量に対するHFO-1234yfの割合が5質量%以上であればR410Aに代替させるのに十分な臨界温度が得られることがわかる。よって、HFO-1123とHFO-1234yfを組合せることにより、R410Aに代替させるにあたり適用範囲の広い作動媒体を提供できるといえる。
【0174】
HFO-1234yfはHFO-1123より冷凍能力が低い。しかし、混合割合を上記範囲内にすることで、HFO-1234yfを混合することによる能力の低下を公知の技術によって補完し得る範囲に留めることを明らかにして本発明者らは発明を完成した。これは、前述のように機器の置き換えをすることなくR410A作動媒体のみを置き換えることが求められている現状に適している。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の作動媒体は、冷凍・冷蔵機器(内蔵型ショーケース、別置型ショーケース、業務用冷凍・冷蔵庫、自動販売機、製氷機等)用冷媒、空調機器(ルームエアコン、店舗用パッケージエアコン、ビル用パッケージエアコン、設備用パッケージエアコン、ガスエンジンヒートポンプ、列車用空調装置、自動車用空調装置等)用冷媒、発電システム(廃熱回収発電等)用作動流体、熱輸送装置(ヒートパイプ等)用作動媒体、二次冷却機用媒体として有用である。
なお、2013年7月12日に出願された日本特許出願2013-146298号および2014年1月31日に出願された日本特許出願2014-017030号の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0176】
10…冷凍サイクルシステム、11…圧縮機、12…凝縮器、13…膨張弁、14…蒸発器、15,16…ポンプ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8