(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
C08J3/12 A CEY
(21)【出願番号】P 2022502157
(86)(22)【出願日】2020-10-07
(86)【国際出願番号】 KR2020013661
(87)【国際公開番号】W WO2021071246
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-01-12
(31)【優先権主張番号】10-2019-0123772
(32)【優先日】2019-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ソク・ソ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・キュ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ヒョン・キム
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-534482(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170501(WO,A1)
【文献】特表2015-526572(JP,A)
【文献】特表2010-504211(JP,A)
【文献】国際公開第2015/046992(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28:99/00
B01J20/00- 20/34
C08C19/00- 19/44
C08F 6/00-246/00;301/00
A61F13/49
A61F15/24
A61F15/60
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級して、ベース樹脂粉末を得る段階;
表面架橋液の存在下で、170℃以下の温度で前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階を含み、
前記表面架橋は、初期温度から第1温度に昇温させながら進行される第1表面架橋、および第1温度から第2温度に降温させながら進行される第2表面架橋を含み、
前記第1温度は前記初期温度より高く、前記第2温度は前記第1温度より低
く、
前記第2温度は、160℃以上、165℃未満である、
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記第1温度は、165℃以上、170℃以下である、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記第1および第2表面架橋は、それぞれ独立して、10~60分間進行される、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記表面架橋液は、非エポキシ系表面架橋剤を含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記表面架橋液は、多価アルコール化合物、ポリアミン化合物、オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物、環状ウレア化合物、多価金属塩、およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選択される1種以上を含む、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
表面架橋剤は、前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.5~10重量部で使用される、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記第2表面架橋の後、前記第2温度で定温進行される第3表面架橋をさらに含む、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2019年10月7日付韓国特許出願第10-2019-0123772号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百乃至1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名称で命名している。このような高吸水性樹脂は、生理用品として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料に広く使用されている。
【0004】
このような高吸水性樹脂を製造する方法としては、懸濁重合、水溶液重合、または気相重合による方法などが知られている。
【0005】
水溶液重合による方法としては、さらに、多数の軸を備えた練り機内で重合ゲルを破断、冷却しながら重合する熱重合方法、および高濃度水溶液にベルト上で紫外線などを照射して重合と乾燥を同時に行う光重合方法などが知られている。
【0006】
このような重合反応を経て得た含水ゲル状重合体は、一般的に乾燥工程を経て粉砕した後、粉末状の製品で市販される。
【0007】
高吸水性樹脂を利用した製品における透過率(permeability)は、吸収される液体の流動性を測定する尺度である。透過率は、架橋結合された樹脂の粒子サイズ分布、粒子形状および粒子間の開口部の連結性、膨潤されたゲルの表面改質などの特性により変わり得る。高吸水性樹脂組成物の透過率により膨潤された粒子を通過する液体の流動性が変わる。透過率が低ければ液体が高吸水性樹脂組成物を通じて容易に流動することができなくなる。
【0008】
高吸水性樹脂における透過率を増加させる一つの方法として、樹脂重合後に表面架橋反応を行う方法があり、この時、表面架橋剤と共にシリカ(silica)やクレー(clay)などを添加する方法が利用されてきた。
【0009】
しかし、前記シリカやクレーなどを添加することによって透過率は向上するが、これに比例して保水能または加圧吸水能の低下が現れ、移動時に外部の物理的衝撃により高吸水性樹脂と分離されやすいという問題点がある。特に、シリカ(silica)やクレー(clay)などを湿式または乾式混合する場合にケーキング防止特性などを得ることはできるが、加圧下で吸水性能が顕著に落ち、実際におむつなどに適用時に速い吸水性能を具現することが難いという短所がある。
【0010】
特に、シリカの場合に、乾式混合しなければ目標とするケーキング防止効果を確保することが難しく、少量の添加にも加圧下で吸水性能が過度に減少する副作用がある。また、乾式混合されたシリカは、ラインで製品移送中、高吸水性樹脂と分離されたシリカ粉塵が発生するという短所がある。
【0011】
また、最近はおむつや生理用ナプキンなどの衛生材の薄膜化に伴い、高吸水性樹脂にさらに高い吸水性能を達成することができながらも、人体に有害な物質を低減させるための方法が重要な課題として台頭している。
【0012】
したがって、製造過程で人体への有害の問題がある物質の使用を排除しながら、優れた吸水関連物性を実現することができ、優れたケーキング防止特性により高温多湿環境下でも優れた保管安定性を示す高吸水性材料の開発に対する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本明細書は、人体への有害性の議論があるエポキシ系の表面架橋剤を使用せず、非エポキシ架橋剤を使用しながらも、既存より相対的に低い温度で表面架橋を進行して、優れた吸水関連物性を維持すると共に、高吸水性樹脂粒子のアンチケーキングを実現することができる、高吸水性樹脂製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本明細書は、重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級して、ベース樹脂粉末を得る段階;表面架橋液の存在下で、170℃以下の温度で前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階を含み、前記表面架橋は、初期温度から第1温度に昇温させながら進行される第1表面架橋、および第1温度から第2温度に降温させながら進行される第2表面架橋を含み、前記第2温度は、前記第1温度より低い、高吸水性樹脂の製造方法を提供しようとする。
【0015】
前記初期温度は、ベース樹脂を表面架橋工程に投入して表面架橋反応を進行させる前の温度で、約0~約50℃、または約10~約30℃、または常温などの温度であり得る。
【0016】
この時、前記第1温度は、約165℃以上、約170℃以下であることが好ましい。
【0017】
そして、前記第2温度は、約160℃以上、約165℃未満であることが好ましい。
【0018】
そして、前記第1および第2表面架橋は、それぞれ独立して、約10~約60分、または約10~約40分、または約10分~約35分間進行され得る。
【0019】
本発明の一実施例によれば、前記表面架橋液は、非エポキシ系表面架橋剤を含むことができ、反対にエポキシ系の表面架橋剤は含まないことが好ましい。
【0020】
つまり、前記表面架橋液は、非エポキシ系表面架橋剤のみを含むことが好ましい。
【0021】
具体的に、前記表面架橋液は、多価アルコール化合物、ポリアミン化合物、オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物、環状ウレア化合物、多価金属塩、およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選択される1種以上を含むことができる。
【0022】
このような表面架橋液は、前記ベース樹脂粉末100重量部に対して約0.5~約10重量部、好ましくは約0.5~約5重量部、または約1~約3重量部で使用され得る。
【0023】
そして、本発明の一実施例によれば、前記第2表面架橋の後、前記第2温度で定温進行される第3表面架橋をさらに含むこともできる。
【0024】
前記第3表面架橋は、約10~約60分、または約10~約40分、または約10分~約20分間進行され得る。
【0025】
本発明において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素を説明することに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0026】
また、本明細書で使用される用語は、単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。
【0027】
単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0028】
本明細書で、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は、実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせを説明するためのものであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせまたは付加可能性を排除するものではない。
【0029】
また本発明において、各層または要素が各層または要素の「上に」形成されるものと言及される場合には、各層または要素が直接各層または要素の上に形成されることを意味したり、他の層または要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得ることを意味する。
【0030】
本発明は、多様な変更を加えることができ、多様な形態を有することができるところ、特定の実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定するものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むものと理解されなければならない。
【0031】
本明細書全体において、生理食塩水とは、生理食塩水(0.9wt% NaCl(s))を意味する。
【0032】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0033】
本発明の一側面によれば、重合開始剤および内部架橋剤の存在下で、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、含水ゲル重合体を形成する段階;前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕、および分級して、ベース樹脂粉末を得る段階;表面架橋液の存在下で、170℃以下の温度で前記ベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階を含み、前記表面架橋は、初期温度から第1温度に昇温させながら進行される第1表面架橋、および第1温度から第2温度に降温させながら進行される第2表面架橋を含み、前記第1温度は前記初期温度より高く、前記第2温度は前記第1温度より低い、高吸水性樹脂の製造方法が提供される。
【0034】
本発明の発明者らは、表面架橋工程を経る既存の高吸水性樹脂製造方法において、表面架橋剤の成分を特定物質に限定して、エポキシ系表面架橋剤の使用を排除し、互いに異なる温度で複数の表面架橋反応を進行し、特に、各表面架橋工程の進行温度を段階により漸次に低める場合、非エポキシ系表面架橋剤を使用するにも拘らず、高吸水性樹脂の優れた吸水関連諸般物性を維持すると共に、高吸水性樹脂のアンチケーキングを実現することができるという事実を発見して、本発明を完成することとなった。
【0035】
以下、一実施形態の高吸水性樹脂の製造方法を各段階別により具体的に説明する。
【0036】
参考として、本明細書で「重合体」、または「高分子」は、水溶性エチレン系不飽和単量体が重合された状態であることを意味し、全ての水分含有量範囲、全ての粒径範囲、全ての表面架橋状態または加工状態を包括することができる。前記重合体のうち、重合後乾燥前状態のものであって、含水率(水分含有量)が約40重量%以上の重合体を含水ゲル重合体と称すことができる。
【0037】
またベース樹脂とは、前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕した形態の粒子状樹脂、あるいは粉末であり、追加工程、例えば、表面架橋、微粉再造粒、再乾燥、再粉砕、再分級などを経ていないものを意味する。
【0038】
また「高吸水性樹脂」は、文脈により前記重合体自体を意味したり、前記ベース樹脂を意味したり、または前記重合体に対して追加の工程、例えば表面架橋、微粉再造粒、乾燥、粉砕、分級などを経て製品化に適した状態にしたものを全て包括するものとして使用することができ、好ましくは、表面架橋された重合体を意味するものとして使用することができる。
【0039】
一実施形態の製造方法では、まず、含水ゲル重合体を製造する。
【0040】
前記含水ゲル重合体は、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体混合物を重合して製造され得る。
【0041】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体を特別な制限なしに使用することができる。ここには陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体およびアミノ基含有不飽和単量体およびその第四級化物からなる群より選択されるいずれか一つ以上の単量体を使用することができる。
【0042】
具体的には(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその第四級化物からなる群より選択されたいずれか一つ以上を使用することができる。
【0043】
より好ましくは、アクリル酸またはその塩、例えば、アクリル酸またはそのナトリウム塩などのアルカリ金属塩を使用することができるが、このような単量体を使用してより優れた物性を有する高吸水性樹脂の製造が可能になる。前記アクリル酸のアルカリ金属塩を単量体として使用する場合、アクリル酸を苛性ソーダ(NaOH)などの塩基性化合物で中和させて使用することができる。
【0044】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は、前記高吸水性樹脂の原料物質および溶媒を含む単量体組成物に対して約20~約60重量%、好ましくは約40~約50重量%とすることができ、重合時間および反応条件などを考慮して適切な濃度とすることができる。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなれば高吸水性樹脂の収率が低く、経済性に問題が生じることがあり、反対に濃度が過度に高くなれば単量体の一部が析出されたり重合された含水ゲル重合体の粉砕時に粉砕効率が低く現れるなど工程上の問題が生じることがあり、高吸水性樹脂の物性が低下することがある。
【0045】
一実施形態の高吸水性樹脂製造方法において重合時に使用される重合開始剤は、高吸水性樹脂の製造に一般的に使用されるものであれば特に限定されない。
【0046】
具体的に、前記重合開始剤は、重合方法により熱重合開始剤またはUV照射による光重合開始剤を使用することができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。
【0047】
前記光重合開始剤は、紫外線などの光によりラジカルを形成することができる化合物であればその構成の限定なしに使用することができる。
【0048】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を使用することができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例としては、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を使用することができる。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalmの著書である「UV Coatings:Basics, Recent Developments and New Application(Elsevier, 2007年)」の115頁に開示されており、前述した例に限定されない。
【0049】
前記光重合開始剤は、前記単量体水溶液に対して0.01~1.0重量%の濃度で含まれ得る。このような光重合開始剤の濃度が過度に低い場合、重合速度が遅くなることがあり、光重合開始剤の濃度が過度に高ければ、高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0050】
また、前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を使用することができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などがある。より多様な熱重合開始剤については、Odianの著書である「Principle of Polymerization(Wiley,1981年)」の203頁に開示されており、前述した例に限定されない。
【0051】
前記熱重合開始剤は、前記単量体水溶液に対して0.001~0.5重量%の濃度で含まれ得る。このような熱重合開始剤の濃度が過度に低い場合、追加的な熱重合がほとんど起こらず、熱重合開始剤の追加による効果が微々になることがあり、熱重合開始剤の濃度が過度に高ければ、高吸水性樹脂の分子量が小さく、物性が不均一になることがある。
【0052】
一実施例によれば、前記単量体混合物は、高吸水性樹脂の原料物質として内部架橋剤をさらに含むことができる。 前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の水溶性置換基と反応できる官能基を1個以上有すると共に、エチレン性不飽和基を1個以上有する架橋剤;あるいは前記単量体の水溶性置換基および/または単量体の加水分解により形成された水溶性置換基と反応できる官能基を2個以上有する架橋剤を使用することができる。
【0053】
前記内部架橋剤の具体的な例としては、炭素数8~12のビスアクリルアミド、ビスメタクリルアミド、炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アクリレートまたは炭素数2~10のポリオールのポリ(メタ)アリルエーテルなどが挙げられ、より具体的に、N,N’-メチレンビス(メタ)アクリレート、エチレンオキシ(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシ(メタ)アクリレート、グリセリンジアクリレート、グリセリントリアクリレート、トリメチロールトリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリールシアヌレート、トリアリルイソシアネート、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコールおよびプロピレングリコールからなる群より選択された一つ以上を使用することができる。
【0054】
このような内部架橋剤は、前記単量体混合物に対して0.01~0.5重量%の濃度で含まれ、重合された高分子を架橋させることができる。
【0055】
発明の一実施形態による製造方法において、高吸水性樹脂の前記単量体混合物は、必要に応じて増粘剤(thickener)、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤をさらに含むことができる。
【0056】
前述した水溶性エチレン系不飽和単量体、光重合開始剤、熱重合開始剤、内部架橋剤および添加剤などの原料物質は、溶媒に溶解された単量体混合物溶液の形態で準備され得る。
【0057】
この時、使用できる前記溶媒は、前述した成分を溶解可能であればその構成の限定なしに使用することができ、例えば水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドなどから選択された1種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
前記溶媒は、単量体混合物の総含有量に対して前述した成分を除いた残量で含まれ得る。
【0059】
一方、このような単量体混合物を重合して含水ゲル重合体を形成する方法も通常使用される重合方法であれば、特に構成の限定がない。
【0060】
具体的に、重合方法は、重合エネルギー源により大きく熱重合および光重合に区分され、通常、熱重合を進行する場合、ニーダー(kneader)などの攪拌軸を有する反応器で行われ、光重合を進行する場合、移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で行われ得るが、前述した重合方法は一例であり、前述した重合方法に限定されない。
【0061】
一例として、前述のように攪拌軸を備えたニーダー(kneader)などの反応器に、熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合して得られた含水ゲル重合体は、反応器に備えられた攪拌軸の形態により、反応器排出口に排出される含水ゲル重合体は、数センチメートル~数ミリメートル形態であり得る。具体的に、得られる含水ゲル重合体の大きさは、注入される単量体混合物の濃度および注入速度などにより多様に示され得るが、通常、重量平均粒径が2~50mmである含水ゲル重合体が得られる。
【0062】
また、前述のように移動可能なコンベヤーベルトを備えた反応器で光重合を進行する場合、通常得られる含水ゲル重合体の形態は、ベルトの幅を有するシート状の含水ゲル重合体であり得る。この時、重合体シートの厚さは、注入される単量体組成物の濃度および注入速度により変わるが、通常約0.5~約5cmの厚さを有するシート状の重合体が得られるように単量体組成物を供給することが好ましい。シート状の重合体の厚さが過度に薄い程度に単量体組成物を供給する場合、生産効率が低いため好ましくなく、シート状の重合体厚さが5cmを超える場合には、過度に厚い厚さのため、重合反応が全体厚さにかけて均一に起こらないことがある。
【0063】
このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、40~80重量%であり得る。一方、本明細書全体で「含水率」は、含水ゲル重合体全体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル重合体の重量から乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱を通じて重合体の温度を上げて乾燥する過程で重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値と定義する。この時、乾燥条件は常温から180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式であり、総乾燥時間は温度上昇段階5分を含んで20分に設定して、含水率を測定する。
【0064】
発明の一実施形態によれば、前記で得た含水ゲル重合体に対して粗粉砕工程を選択的にさらに行うことができる。
【0065】
この時、粗粉砕工程に使用される粉砕機は、構成の限定はないが、具体的に、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、切れ破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパー(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器群より選択されるいずれか一つを含むことができるが、前述した例に限定されない。
【0066】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が約2~20mmになるように粉砕することができる。
【0067】
粒径を2mm未満に粗粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率により技術的に容易でなく、また粉砕された粒子間に互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径を20mm超過に粗粉砕する場合、後で行われる乾燥段階の効率増大効果が微々になることがある。
【0068】
選択的に、発明の一例による高吸水性樹脂の製造方法において前記含水ゲル重合体を製造した後には、このような含水ゲル重合体を乾燥および粉砕して微粉と正常粒子に分級することができる。
【0069】
前記乾燥工程は、粗粉砕されたり、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して行われる。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は、約150~約250℃であり得る。乾燥温度が150℃未満である場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する虞があり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体表面のみが乾燥されて、後で行われる粉砕工程で微粉が多量発生することもあり、最終形成される高吸水性樹脂の物性が低下する虞がある。したがって、好ましくは、前記乾燥は約150℃~約200℃の温度で、より好ましくは、約160℃~約180℃の温度で行われ得る。
【0070】
一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、約20~約90分間行うことができるが、これに限定されない。
【0071】
前記乾燥段階の乾燥方法も含水ゲル重合体の乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なしに選択されて使用することができる。具体的に、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行することができる。このような乾燥段階進行後の重合体の含水率は、約0.1~約10重量%であり得る。
【0072】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥された重合体に対する粉砕工程が行われる。
【0073】
粉砕段階後に得られる重合体粉末は、粒径が約150~約850μmであり得る。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、前述した例に限定されるのではない。
【0074】
このような粉砕段階以降の最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、一般的に粉砕後に得られる重合体粉末を粒径により分級する。好ましくは、粒径が150μm以下である粒子と、約150μm超過850μm以下である粒子とに分級する段階を経る。
【0075】
本明細書で特に異なって言及されない限り、「粒径あるいは粒子サイズ」は、標準ふるい分析法またはレーザ回折法(laser diffraction method) 、好ましくは標準ふるい分析法を通じて測定されたものであり得、「平均粒径あるいは重量平均粒径」は、レーザ回折法を通じて得た粒度分布曲線で重量百分率の50%になる粒径(D50)を意味し得る。
【0076】
また、本明細書では一定の粒子サイズ以下、つまり、約150μm以下の粒子サイズを有する微粉粒子をベース樹脂微粉、高吸水性重合体微粉、SAP微粉または微粉(fines、fine powder)と称し、粒径が150μm超過850μm以下である粒子を正常粒子と称する。
【0077】
前記微粉は、重合工程、乾燥工程または乾燥された重合体の粉砕段階の間に発生することができるが、最終製品に微粉が含まれる場合、取り扱いが難しく、ゲルブロッキング(gel blocking)現象を示すなど物性を低下させることがある。したがって、微粉が最終樹脂製品に含まれないように排除したり 微粉を正常粒子になるように再造粒することが好ましい。
【0078】
一例として、前記微粉を正常粒子になるように凝集させる再造粒過程を経ることができる。再造粒過程で一般的に凝集強度を高めるために微粉粒子を湿潤状態で凝集させる再造粒工程を進行する。この時、微粉の含水率が高いほど微粉の凝集強度が高くなるが、再造粒工程時に過度に大きい再造粒体の塊りができて工程運転時に問題が生じることがあり、含水率が低ければ再造粒工程は容易であるが、凝集強度が低いため、再造粒以降再び微粉に破砕される場合が多い(再微粉化)。また、このように得られた微粉再造粒体は、正常粒子より保水能(CRC)や加圧吸水能(AUP)のような物性が低下して高吸水性樹脂の品質の下落をもたらすこともある。
【0079】
したがって、一例の製造方法では、選択的に微粉に水および添加剤などを投入して再造粒して、微粉再造粒体を得ることができる。
【0080】
前記微粉再造粒体の製造段階では、剪断力を付加できる混合装置やミキサーを使用して、前記微粉および添加剤水溶液を約10~約2000rpm、約100~約1000rpmあるいは約500~約800rpmの速度で攪拌して混合することができる。
【0081】
そして、一例として、前記微粉再造粒体の製造段階の乾燥工程は、約120~約220℃で行われて共有結合を通じて凝集強度が向上した微粉再造粒体を形成することができ、適切な時間内に微粉再造粒体の含水率を約1~約2重量%に調節することができる。
【0082】
前記乾燥工程は、通常の乾燥機器を使用して行われ得るが、発明の一実施形態によると、熱風乾燥機、パドル型乾燥機または強制循環型乾燥機などを利用して行われ得る。また、前記乾燥工程時に乾燥のための昇温手段としては、その構成の限定がない。具体的に、熱媒体を供給したり、電気などの手段で直接加熱することができるが、本発明が前述した例に限定されるのではない。具体的に使用可能な熱源としては、スチーム、電気、紫外線、赤外線などがあり、加熱された熱流体などを使用することもできる。
【0083】
次に、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、前記段階で製造した微粉再造粒体を必要に応じて粉砕し、再造粒体微粉(以下、「再微粉」という)および再造粒体正常粒子に分級する段階を進行することができる。
【0084】
前記微粉再造粒体を製造する段階を通じて得られる前記微粉再造粒体は、高い凝集強度を有するため、粉砕された後に再び微粉に再破砕される比率、つまり、再微粉化される比率が低い。
【0085】
前記微粉再造粒体の粉砕は、微粉再造粒体の粒径が約150~約850μmになるように行うことができる。このような粒径に粉砕するために使用される粉砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを使用することができるが、前述した例に本発明が限定されるのではない。
【0086】
このような粉砕段階以降の最終製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、一般的に粉砕後に得られる重合体粉末を粒径により分級する。好ましくは、150μm以下の粒径を有する再微粉、および150μm超過850μm以下の粒径を有する再造粒体正常粒子に分級する段階を経る。
【0087】
そして、発明の一実施形態による高吸水性樹脂の製造方法では、表面架橋液の存在下で、170℃以下の温度で前記ベース樹脂粉末、または選択的に微粉再造粒体が含まれているベース樹脂粉末を表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階を含む。
【0088】
前記表面架橋は、粒子内部の架橋結合密度と関連して高吸水性樹脂粒子の表面付近の架橋結合密度を増加させる段階である。一般的に、表面架橋剤は、高吸水性樹脂粒子の表面に塗布される。したがって、この反応は高吸水性樹脂粒子の表面上で起こり、これは粒子内部には実質的に影響を与えずに粒子の表面上での架橋結合性を改善させる。したがって、表面架橋結合された高吸水性樹脂粒子は、内部よりは表面付近でより高い架橋結合度を有する。
【0089】
この時、前記表面架橋は、初期温度から第1温度に昇温させながら進行される第1表面架橋、および第1温度から第2温度に降温させながら進行される第2表面架橋を含み、前記第2温度は、前記第1温度より低く調節する。
【0090】
既存の表面架橋工程のように、温度を継続して高い温度で一定に維持しながら表面架橋反応を進行したり、温度を高めながら表面架橋反応を進行する場合に比べて、第1表面架橋反応は相対的に高い温度で進行し、第2表面架橋反応は温度を低めて進行する場合、非エポキシ系表面架橋剤を使用するにも拘らず、高吸水性樹脂の優れた吸水関連諸般物性を維持すると共に、高吸水性樹脂のアンチケーキングを実現することができる。
【0091】
この時、前記第1温度は、約165℃以上、約170℃以下であることが好ましい。
【0092】
そして、前記第2温度は、約160℃以上、約165℃未満であることが好ましい。
【0093】
前記温度範囲を逸脱して表面架橋温度が過度に高くなったり、適切な時間に降温が行われない場合、製造される高吸水性樹脂でCRC値が低下することがあり、温度範囲が過度に低くなる場合、有効吸水能が低下される問題点が発生することがある。
【0094】
そして、前記第1および第2表面架橋は、それぞれ独立して、約10~約60分間進行されることが好ましい。
【0095】
表面架橋時間が過度に短い場合、製造される高吸水性樹脂で表面架橋層が良好に形成されず、吸水諸般物性が低下される問題点が発生することがあり、表面架橋時間が過度に長くなる場合、製造される高吸水性樹脂でケーキング現象が発生することがある。
【0096】
本発明の一実施例によれば、前記表面架橋液は、非エポキシ系表面架橋剤を含むことができ、反対に最近人体への毒性に対して議論があるエポキシ系の表面架橋剤は含まないことが好ましい。
【0097】
この時、前記表面架橋剤としては、重合体が有する官能基と反応可能な化合物であり、分子内にエポキシ基を含まない、非エポキシ系表面架橋剤であれば、特にその構成の限定がない。
【0098】
好ましくは、生成される高吸水性樹脂の特性を向上させるために、前記表面架橋剤として多価アルコール化合物;ポリアミン化合物;オキサゾリン化合物類;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0099】
具体的に、多価アルコール化合物の例としては、モノ-、ジ-、トリ-、テトラ-またはポリエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、2,3,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、グリセロール、ポリグリセロール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、および1,2-シクロヘキサンジメタノールからなる群より選択される1種以上を使用することができる。
【0100】
そして、アルキレンカーボネート化合物としては、エチレンカーボネートなどを使用することができる。これらをそれぞれ単独で使用したりまたは互いに組み合わせて使用することもできる。一方、表面架橋工程の効率を上げるために、これら表面架橋剤の中で1種以上の多価アルコール化合物を含んで使用することが好ましく、より好ましくは、炭素数2~10の多価アルコール化合物類を使用することができる。
【0101】
前記添加される表面架橋液の含有量は、具体的に追加される表面架橋液の種類や反応条件により適切に選択され得るが、通常、重合体100重量部に対して、約0.5~約10重量部、好ましくは約0.5~約5重量部、より好ましくは、約1~約3重量部を使用することができる。
【0102】
表面架橋液の含有量が過度に少なければ、表面架橋反応がほとんど起こらず、表面架橋液の含有量が過度に多い場合、過度な表面架橋反応の進行により吸水能力および物性の低下現象が発生することがある。
【0103】
表面架橋液が添加された重合体粒子に対して加熱させることによって表面架橋結合反応および乾燥が同時に行われ得る。
【0104】
表面架橋反応のための温度調節手段は、特に限定されない。例えば、熱媒体あるいは熱源を直接反応系に供給することができ、供給される熱の量を調節して降温あるいは昇温することができる。
【0105】
この時、使用可能な熱媒体の種類としては、スチーム、熱風、熱油などの加熱された流体、あるいは、反対に冷たい空気や油などの冷却された流体などを使用することができるが、本発明がこれに限定されるのではなく、また供給される熱媒体の温度は、熱媒体の手段、昇温および降温速度、または昇温および降温目標温度などを考慮して適切に選択することができる。一方、直接供給される熱源としては、電気を通じた加熱、ガスを通じた加熱方法があるが、前述した例に本発明が限定されるのではない。
【0106】
そして、本発明の一実施例によれば、前記第2表面架橋の後、前記第2温度で定温進行される第3表面架橋をさらに含むこともできる。
【0107】
前記第3表面架橋は、約10~約60分、または約10~約40分、または約10分~約20分間進行され得る。
【0108】
このような第3表面架橋反応により、製造される高吸水性樹脂において、吸水関連諸般物性が向上することができ、またアンチケーキング効果をより優秀に実現することができる。
【0109】
また、前記表面架橋後、150μm以下の粒径を有する表面架橋微粉、および150μm超過850μm以下の粒径を有する表面架橋正常粒子に分級し、150μm以下の粒径を有する表面架橋微粉は微粉再造粒のための工程へ再投入し、表面架橋正常粒子は製品化して使用することができる。
【発明の効果】
【0110】
本発明の一側面による高吸水性樹脂製造方法は、人体への有害性の議論があるエポキシ系の表面架橋剤を使用せず、非エポキシ架橋剤を使用しながらも、既存より相対的に低い温度で表面架橋を進行して、高吸水性樹脂粒子の優れた吸水関連物性を維持すると共に、アンチケーキングを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0111】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用および効果をより詳細に説明する。ただし、このような実施例は、発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0112】
ベース樹脂の製造-実施例および比較例
アクリル酸100重量部、31.5%苛性ソーダ(NaOH)126.8重量部、水46重量部、下記の成分を混合してモノマー組成物を製造した。
【0113】
-内部架橋剤:ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA;Mw=400)0.2重量部(2000ppmw)
-重合開始剤:ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(光開始剤)0.008重量部(80ppmw)および過硫酸ナトリウム(光開始剤)0.12重量部(1200ppmw)
【0114】
前記組成物を連続移動するコンベヤーベルトからなる重合器の供給部に投入し、UV照射装置で紫外線を1.5分間照射して(約2mW/cm2)重合反応を進行し、生成物として含水ゲル重合体を得た。
【0115】
前記含水ゲル重合体を切断機を通じて切断した。次に、前記含水ゲル重合体に190℃の熱風乾燥機で40分間乾燥させ、乾燥された含水ゲル重合体を粉砕機で粉砕した。次に、ふるい(seive)を使用して粒度(平均粒径)が150μm~850μmである重合体を分級して、ベース樹脂微粉とベース樹脂正常粒子を得た。
【0116】
得られたベース樹脂のCRC値は約54g/gであった。
【0117】
表面架橋
実施例1
前記で製造されたベース樹脂に対して、標準ふるいを利用して、次のような粒度分布を有するベース樹脂を準備した。
【0118】
#20-#30:22wt%、#30-#50:64wt%、#50-#100:13wt%、#100:1wt%
【0119】
前記ベース樹脂100重量部に対して、水約5.4重量部、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート(1:1)約1.8重量部、プロピレングリコール約0.58重量部、アルミニウムスルフェート0.24重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0120】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0121】
これを反応器に投入して、約30分にわたって約168℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0122】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約163℃に降温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0123】
その後、反応系の温度を約163℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0124】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0125】
実施例2
前記で製造されたベース樹脂に対して、標準ふるいを利用して、次のような粒度分布を有するベース樹脂を準備した。
【0126】
#20-#30:22wt%、#30-#50:64wt%、#50-#100:13wt%、#100:1wt%
【0127】
前記ベース樹脂100重量部に対して、水約5.4重量部、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート(1:1)約1.8重量部、プロピレングリコール約0.58重量部、アルミニウムスルフェート0.24重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0128】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0129】
これを反応器に投入して、約30分にわたって約170℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0130】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約160℃に降温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0131】
その後、反応系の温度を約160℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0132】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0133】
比較例1
前記で得られたベース樹脂100重量部に対して、水約3.2重量部、メタノール約4.5重量部、エチレングリコール約0.132重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0134】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0135】
その後、これを反応器に投入して、約30分にわたって約163℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0136】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約183℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0137】
その後、反応系の温度を約185℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0138】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0139】
比較例2
前記で得られたベース樹脂100重量部に対して、水約5.4重量部、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート(ECPC)約1.8重量部、プロピレングリコール約0.58重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0140】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0141】
その後、これを反応器に投入して、約30分にわたって約163℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0142】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約183℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0143】
その後、反応系の温度を約185℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0144】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0145】
比較例3
前記で得られたベース樹脂100重量部に対して、水約3.2重量部、メタノール約4.5重量部、エチレングリコール約0.132重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0146】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0147】
その後、これを反応器に投入して、約30分にわたって約163℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0148】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約183℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0149】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約185℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0150】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂100重量部に対して、後添加の無機フィラー(Aerosil200、Evonik社)約0.05重量部を添加してこれをよく混合した。
【0151】
これを粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0152】
比較例4
前記で得られたベース樹脂100重量部に対して、水約3.2重量部、メタノール約4.5重量部、エチレングリコール約0.132重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0153】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0154】
その後、これを反応器に投入して、約30分にわたって約163℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0155】
その後、反応系の温度を約163℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0156】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約168℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0157】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0158】
比較例5
前記で製造されたベース樹脂に対して、標準ふるいを利用して、次のような粒度分布を有するベース樹脂を準備した。
【0159】
#20-#30:22wt%、#30-#50:64wt%、#50-#100:13wt%、#100:1wt%
【0160】
前記ベース樹脂100重量部に対して、水約5.4重量部、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート(1:1)約1.8重量部、プロピレングリコール約0.58重量部、アルミニウムスルフェート0.24重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0161】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0162】
これを反応器に投入して、約30分にわたって約165℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0163】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約150℃に降温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0164】
その後、反応系の温度を約150℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0165】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0166】
比較例6
前記で製造されたベース樹脂に対して、標準ふるいを利用して、次のような粒度分布を有するベース樹脂を準備した。
【0167】
#20-#30:22wt%、#30-#50:64wt%、#50-#100:13wt%、#100:1wt%
【0168】
前記ベース樹脂100重量部に対して、水約5.4重量部、エチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネート(1:1)約1.8重量部、プロピレングリコール約0.58重量部、アルミニウムスルフェート0.24重量部の比率で混合して、表面架橋液を準備した。
【0169】
前記ベース樹脂粉末100重量部に対して、前記表面架橋液を添加し、ミキサーを利用して約1000rpm条件で約30秒間攪拌しながらよく混合した。
【0170】
これを反応器に投入して、約30分にわたって約165℃に昇温させながら、表面架橋反応を進行した。(第1表面架橋)
【0171】
その後、反応系の温度を約15分にわたって約60℃に降温させながら、表面架橋反応を進行した。(第2表面架橋)
【0172】
その後、反応系の温度を約60℃に調節し、これを再び約15分間維持しながら、表面架橋反応を進行した。(第3表面架橋)
【0173】
表面架橋が完了した後に得られた高吸水性樹脂を粉砕機に入れて粉砕した後、ふるい(sieve)を利用して粒径が150~850μmの表面処理された高吸水性樹脂を得た。
【0174】
物性評価
前記で得られた表面処理された高吸水性樹脂に対して、下記方法により吸水関連諸般物性を測定した。
【0175】
CRC測定
各樹脂の無荷重下の吸水倍率による保水能をEDANA WSP 241.3により測定した。
【0176】
具体的に、実施例および比較例を通じて得たそれぞれの高吸水性樹脂において、#30-50のふるいで分級した樹脂を得た。このような樹脂W0(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を利用して250Gの条件下で前記封筒から3分間水気を除去し、封筒の質量W2(g)を測定した。また、樹脂を利用せずに同一の操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を利用して次のような式によりCRC(g/g)を算出した。
【0177】
[数式1]
CRC(g/g)={[W2(g)-W1(g)]/W0(g)}-1
【0178】
0.7AUP測定
各樹脂の0.7psi加圧下吸水能を、EDANA法WSP242.3により測定した。
【0179】
まず、加圧吸水能の測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級分を使用した。
【0180】
具体的に、内径25mmのプラスチックの円筒底にステンレス製の400mesh鉄網を装着させた。常温および湿度50%の条件下で鉄網上に吸水性樹脂W0(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psi(または0.3、0.9psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストンは、外径25mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下動きが妨害を受けないようにした。この時、前記装置の重量W3(g)を測定した。
【0181】
直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルターを置き、0.9重量%塩化ナトリウムから構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一のレベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後、測定装置を持ち上げ、その重量W4(g)を測定した。
【0182】
得られた各質量を利用して以下の式により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0183】
[数式2]
AUP(g/g)=[W4(g)-W3(g)]/W0(g)
【0184】
測定されたCRC値と0.7AUP値の算術平均値を求めて、有効吸水能と整理した。
【0185】
アンチケーキング特性測定(Anti-caking)
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂2g(W5)を直径9cmのペトリ皿に均一に塗布した後、温度40±3℃、湿度80±3%水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回テーピング(tapping)後、高吸水性樹脂が落ちる量(W6)を測定した。
【0186】
このように測定された重量を利用して次の式2によりケーキング防止効率を算出した。数値が高いほどケーキング防止効率に優れている。
【0187】
[数式3]
ケーキング防止効率(%)=[W6(g)/W5(g)]×100
【0188】
前記数式3で、W5(g)は高吸水性樹脂の初期重量(g)であり、W6(g)は直径10cmのフラスコ皿に均一に塗布した後、温度40±3℃、湿度80±3%水準を維持する恒温恒湿チャンバー内で10分間維持させた後、フィルターペーパーにフラスコ皿をひっくり返して3回テーピング(tapping)後、高吸水性樹脂が落ちる量(g)である。
【0189】
前記測定値を下記表1に整理した。
【0190】
【0191】
前記表1を参照すると、本発明の一実施例により製造された高吸水性樹脂は、既存より相対的に低い温度で表面架橋を進行したにも拘らず、CRC値と0.7AUP値の全てが優れるため、優れた有効吸水能を維持すると共に、アンチケーキング効率が非常に高いことを確認できる。