(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】ワーク載置台
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
H01L21/68 U
(21)【出願番号】P 2019014917
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】桑原 孝好
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0063635(KR,A)
【文献】特開2006-285060(JP,A)
【文献】特開2012-138418(JP,A)
【文献】特開2008-062350(JP,A)
【文献】特開2008-108991(JP,A)
【文献】特開2018-092193(JP,A)
【文献】特開平08-222621(JP,A)
【文献】特開2009-249084(JP,A)
【文献】特開2009-224519(JP,A)
【文献】特開平07-058183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体がワークに付着し得る環境下において前記ワークがトレイに載置されたことを検知する在荷検知手段を備えたワーク載置台であって、
前記在荷検知手段は、
前記ワークを支持する支持部材と、
前記支持部材に接続された状態で前記支持部材と前記トレイとの間に介装され、前記ワークの自重に応じて弾性変形可能な接続部材と、
前記接続部材の弾性変形に追従して移動する被検知体と、
前記トレイを挟んで前記被検知体の反対側に埋設され、前記被検知体が所定距離まで接近したことを検知する近接センサと、
を備えた支持機構と、
前記近接センサが前記被検知体の接近を検知すると、前記ワークが前記トレイ及び支持部材に載置されていると判定する制御部と、
を備えていることを特徴とするワーク載置台。
【請求項2】
前記支持機構は、前記トレイの径方向に移動可能に設けられていることを特徴とする請求項
1記載のワーク載置台。
【請求項3】
前記接続部材は、基端が前記トレイに固定され、先端に前記支持部材が設けられた板バネであることを特徴とする請求項1
又は2記載のワーク載置台。
【請求項4】
前記支持部材の前記ワークに接触する支持面は、上方に向かって凸状に湾曲して形成されていることを特徴とする請求項1から
3の何れか1項記載のワーク載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを載置するワーク載置台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体ウェハ等のワークの製造装置では、機器間でワークを移送する際に、ワークをワーク載置台に仮置きする構成が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ロード・アンロード部3と研磨ヘッド42との間でウェハ10を移送する際に、ウェハ10を仮置きするウェーハ転置台431、432を備えたウェハ研磨装置1が開示されている。なお、符号は特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ワーク載置台には、ワークが載置されているか否かを判定する在荷センサが設けられている。このような在荷センサとしては、反射型又は透過型のものが一般的である。
【0006】
図5(a)、(b)に示すように、ワーク100の在荷検知を反射型の在荷センサで行う場合、トレイ101に一対のファイバーセンサ102、103を設け、一方のファイバーセンサ102から照射された光がワーク100で反射し、この反射光を他方のファイバーセンサ103で受光し、受光光量が所定閾値を超えたときに、ワーク100がトレイ101に載置されていることを検知する。
【0007】
一方、
図5(c)に示すように、ワーク100がトレイ101に載置されていない場合には、ファイバーセンサ103の受光光量が所定閾値を超えないため、ワーク100がトレイ101に載置されていないと判断する。
【0008】
また、
図6(a)、(b)に示すように、ワーク100の在荷検知を透過型の在荷センサで行う場合、トレイ104に設けられたファイバーセンサ105に向けて光を照射する照明106を配置し、照明106から照射された光がワークWで遮られ、受光光量が所定閾値を下回ったときに、ワーク100がトレイ104に載置されていることを検知する。
【0009】
一方、
図6(c)に示すように、ワーク100がトレイ104に載置されていない場合には、ファイバーセンサ105の受光光量が所定閾値を超えて、ワーク100がトレイ104に載置されていないと判断する。
【0010】
しかしながら、上述したような反射型の在荷センサを用いる場合には、ワーク100が梨地面を有していたりワーク100に水やスラリー等の薬液が付着する等してワーク100で反射した反射光が乱反射すると、反射光がファイバーセンサ103に戻らず、また、
図5(d)に示すように、ワーク100とファイバーセンサ102との間が水で満たされていると、光が界面で反射せずにワーク100を透過してしまい、ワーク100がトレイ101に載置されているにもかかわらず、ワークの在荷を検知できないという問題があった。
【0011】
また、透過型の在荷センサを用いる場合には、透過性を有するワーク100に対しては、照明106から照射された光がワーク100を透過してしまい、また、
図6(d)に示すように、ワーク100とファイバーセンサ105との間が水で満たされていると、透過光の光量が増えてしまうため、ワーク100がトレイ104に載置されているにもかかわらず、ワークの在荷を検知できないという問題があった。
【0012】
そこで、多種多様なワークの在荷検知に対応するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るワーク載置台は、液体がワークに付着し得る環境下において前記ワークがトレイに載置されたことを検知する在荷検知手段を備えたワーク載置台であって、前記在荷検知手段は、前記ワークを支持する支持部材と、前記支持部材に接続された状態で前記支持部材と前記トレイとの間に介装され、前記ワークの自重に応じて弾性変形可能な接続部材と、前記接続部材の弾性変形に追従して移動する被検知体と、前記トレイを挟んで前記被検知体の反対側に埋設され、前記被検知体が所定距離まで接近したことを検知する近接センサと、を備えた支持機構と、前記近接センサが前記被検知体の接近を検知すると、前記ワークが前記トレイ及び支持部材に載置されていると判定する制御部と、を備えている。
【0014】
この構成によれば、ワークが支持部材に載置されると、ワークの自重によって接続部材が下方に弾性変形することにより、近接センサが被検知体の接近を検知するため、ワークの種類やトレイの使用環境にかかわらず、ワークの自重に応じてワークの在荷検知を行うことができる。
【0016】
さらに、水や薬品が付着することに起因する近接センサの劣化や故障を抑制することができる。
【0017】
また、本発明に係るワーク載置台は、前記支持機構が、前記トレイの径方向に移動可能に設けられていることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、支持機構がワークの外径に応じてトレイの径方向に移動可能に構成することにより、異なる径のワークに対応することができる。
【0019】
また、本発明に係るワーク載置台は、前記接続部材が、基端が前記トレイに固定され、先端に前記支持部材が設けられた板バネであることが好ましい。
【0020】
この構成によれば、ワークの自重に応じた板バネの弾性変形量が簡便に調節可能なため、ワークの軽重に応じて被検知体の移動量を適切に設定することができる。
【0021】
また、本発明に係るワーク載置台は、前記支持部材の前記ワークに接触する支持面が、上方に向かって凸状に湾曲して形成されていることが好ましい。
【0022】
この構成によれば、支持部材がワークを省面積で接触するため、ワークの損傷を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、ワークが支持部材に載置されると、ワークの自重によって接続部材が下方に弾性変形することにより、近接センサが被検知体の接近を検知するため、ワークの種類やトレイの使用環境にかかわらず、ワークの自重に応じてワークの在荷検知を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るワーク載置台を模式的に示す平面図、縦断面図及び要部拡大断面図。
【
図2】ワークを載置した状態を示すワーク載置台の縦断面図及び要部拡大断面図。
【
図3】変形例に係るワーク載置台の要部拡大断面図。
【
図4】第2の実施形態に係るワーク載置台を示す平面図及び縦断面図。
【
図5】反射式在荷センサを用いた従来のワーク載置台を示す平面図及び縦断面図。
【
図6】透過式在荷センサを用いた従来のワーク載置台を示す平面図及び縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0026】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0027】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0028】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るワーク載置台1を模式的に示す斜視図である。ワーク載置台1は、半導体製造装置においてワークを移送する際に、ワークを仮置きするものであり、例えば、搬送ロボットと研磨装置との間に設けられるワーク転置台や、複数の搬送ロボットの間でワークを受け渡しする際に用いられるワーク受け台等である。
【0029】
ワーク載置台1は、トレイ2と、支持機構3と、を備えている。トレイ2は、被検知体33が近接センサ34に近接した際に検出可能な樹脂材料からなり、円板状に形成される。トレイ2の表面側には、ワークWの裏面周縁を受ける3つの受け部21が設けられている。
【0030】
支持機構3は、ワークWの自重でワークWの在荷検知を行うものである。支持機構3と3つの受け部21とは、平面から視て同心円状に互いに等間隔に離間して配置されている。支持機構3は、支持部材31と、接続部材32と、被検知体33と、近接センサ34と、を備えている。
【0031】
支持部材31は、接続部材32の先端に設けられており、ワークWの裏面周縁を支持する。支持部材31の支持面31aは、上方に向かって凸状に湾曲して形成されている。これにより、支持部材31は、ワークWと省面積で支持可能である。支持部材31は、樹脂製であり、特に発塵性の低く耐薬品性を示すものが好ましく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が考えられる。
【0032】
接続部材32は、基端側をトレイ2に接合されている。具体的には、トレイ2の外周に設けられた上下一対の把持部22に接続部材32の基端側が把持された状態で、把持部22及び接続部材32をボルト35で締結することにより、接続部材32がトレイ2に一体化されている。一対の把持部22には、クサビ状の空間Aが形成されている。
【0033】
接続部材32は、金属又は樹脂製であり、特に耐薬品性を示し膨潤し難いものが好ましく、例えば、PTFE、PEEK、PPS等が考えられる。接続部材32は、ワークWの重量に応じて適切に弾性変形するように構成されている。これにより、接続部材32は、支持部材31にワークWが載置されると、空間A内において把持部22に把持された部分を中心として下方に撓むように弾性変形する。
【0034】
例えば、数g程度のワークWであれば、接続部材32の厚みを0.2mm程度とすることが考えられる。接続部材32の追従性を確保するためには、一枚の接続部材32の厚みは0.2~0.4mm程度が好ましく、それ以上の厚みでは剛性が過度に増大し、ワークWの自重で変形しにくくなる。したがって、比較的重いワークWに応じて接続部材のバネ定数を変更する場合には、一枚の肉厚の接続部材32を適用するよりも、複数の薄い接続部材32を重ねるように構成するのが好ましい。
【0035】
被検知体33は、接続部材32を挟んで支持部材31の反対側に設けられている。また、被検知体33は、接続部材32の先端に固着されており、ワークWの自重に応じて接続部材32と一体で上下動可能に構成されている。被検知体33は、近接センサ34で検知可能な金属体である。被検知体33は、ステンレス等の錆びにくい金属が好ましい。また、金属イオンの溶出を抑制するために、被検知体33の表面をテフロンで被覆しても構わない。
【0036】
近接センサ34は、被検知体33の下方でトレイ2に埋設されている。具体的には、近接センサ34は、接続部材32がワークWの自重で下限まで弾性変形した際に被検知体33を検知可能な位置に設けられている。なお、近接センサ34の検知範囲は、回転式の調節トリマ等で任意に変更可能である。近接センサ34は、トレイ2の裏面側に埋設されており、水や薬品の付着に起因する近接センサ34の劣化や故障を抑制することができる。近接センサ34は、被検知体33の接近を検知すると、検知信号を制御部4に送る。
【0037】
ワーク載置台1の動作は、制御部4によって制御される。制御部4は、ワーク載置台1を構成する構成要素をそれぞれ制御するものである。制御部4は、例えばコンピュータであり、CPU、メモリ等により構成される。なお、制御部4の機能は、ソフトウェアを用いて制御することにより実現されても良く、ハードウェアを用いて動作するものにより実現されても良い。
【0038】
また、制御部4は、近接センサ34に接続されており、近接センサ34の検知信号(センサON)を受信すると、ワークWがワーク載置台1に載置されているとして在荷を検知する。
【0039】
これにより、ワーク載置台1は、ワークWが支持部材31に載置されると、ワークWの自重によって接続部材32が下方に弾性変形することにより、近接センサ34が被検知体33の接近を検知するため、ワークWの種類やトレイの使用環境にかかわらず、ワークWの自重に応じてワークWの在荷検知を行うことができる。
【0040】
次に、本実施形態の変形例に係るワーク載置台1について、
図3に基づいて説明する。本変形に係るワーク載置台1は、上述したワーク載置台1の構成と比較して、接続部材32がコイルバネ状に形成されている点で相違する。以下では、第1の実施形態に係るワーク載置台1と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0041】
本変形例に係るワーク載置台1では、支持部材31、被検知体33及び接続部材32がこの順で上から重ねるように設けられている。接続部材32の上端部は、被検知体33に接合され、接続部材32の下端部は、トレイ2に取り付けられている。
【0042】
ワークWが支持部材31に載置されると、ワークWの自重で接続部材32が縮み、近接センサ34が、被検知体33の接近を検知する。そして、制御部4が、近接センサ34の検知信号(センサON)を受信すると、ワークWがワーク載置台1に載置されているとして在荷を検知する。
【0043】
このような構成のワーク載置台1は、上述した板バネ状のものと比較して、コイルバネ状の接続部材32は弾性変形し難いため、重たいワークWに好適である。
【0044】
次に、本発明の第2の実施形態に係るワーク載置台1について、
図4に基づいて説明する。本実施形態に係るワーク載置台1は、上述した実施形態に係るワーク載置台1の構成と比較して、異なる外径のワークWに対応可能に構成されている点で相違する。以下では、第1の実施形態に係るワーク載置台1と共通する構成については、同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0045】
ワーク載置台1は、トレイ2の中央に脱着自在なアダプター36を備えている。アダプター36は、トレイ2より小径のリング状に形成されている。例えば、トレイ2が8インチのワークWに対応する場合、アダプター36は、6インチのワークWに対応する。アダプター36は、ワークWを支持する3つの受け部37を備えている。
【0046】
支持機構3は、トレイ2に対してトレイ2の径方向に移動可能に構成されている。具体的には、把持部22がトレイ2に対して径方向に摺動可能に構成され、近接センサ34が、把持部22の裏面側に埋設されている。これにより、把持部22がアダプター36まで摺動すれば、支持機構3は把持部22と一体となって径方向に移動可能である。したがって、アダプター36の脱着及び把持部22の摺動によって、異なる径のワークWに対応することができる。
【0047】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0048】
1 ・・・ワーク載置台
2 ・・・トレイ
21 ・・・受け部
22 ・・・把持部
3 ・・・支持機構
31 ・・・支持部材
31a ・・・支持面
32 ・・・接続部材
33 ・・・被検知体
34 ・・・近接センサ
35 ・・・ボルト
36 ・・・アダプター
37 ・・・受け部
4 ・・・制御部
A ・・・空間
W ・・・ワーク