(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】異種ハロゲン化剤およびそれを用いたハロゲン化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 233/34 20060101AFI20230822BHJP
C07C 17/02 20060101ALI20230822BHJP
C07C 19/075 20060101ALI20230822BHJP
C07C 41/22 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/12 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/192 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/225 20060101ALI20230822BHJP
C07C 29/62 20060101ALI20230822BHJP
C07C 31/36 20060101ALI20230822BHJP
C07C 41/06 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/174 20060101ALI20230822BHJP
C07C 41/30 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/23 20060101ALI20230822BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
C07D233/34 CSP
C07C17/02
C07C19/075
C07C41/22
C07C43/12
C07C43/192
C07C43/225 A
C07C29/62
C07C31/36
C07C41/06
C07C43/174
C07C41/30
C07C43/23 E
C07C43/205 A
(21)【出願番号】P 2019205689
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】519135633
【氏名又は名称】公立大学法人大阪
(73)【特許権者】
【識別番号】301005614
【氏名又は名称】東ソー・ファインケム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182073
【氏名又は名称】萩 規男
(72)【発明者】
【氏名】松原 浩
(72)【発明者】
【氏名】湯畑 康太朗
(72)【発明者】
【氏名】高宮 裕樹
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162218(JP,A)
【文献】ACS Catal.,2018年,8,6362-6366
【文献】Tetrahedron,1990年,46,2503-2510
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 233/34
C07C 17/02
C07C 19/075
C07C 41/22
C07C 43/12
C07C 43/192
C07C 43/225
C07C 29/62
C07C 31/36
C07C 41/06
C07C 43/174
C07C 41/30
C07C 43/23
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体。
【請求項2】
前記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体が、
下記式(2)
【化2】
で表されるビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一臭化ヨウ素錯体である請求項1記載の含ハロゲン錯体。
【請求項3】
下記一般式(3):
R
1-CH=CH-R
2 (3)
(式(3)中、R
1及びR
2は、互いに同一でも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を示す。或いはR
1とR
2とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体と、を反応させることを特徴とする、
下記一般式(4)
【化3】
(式(4)中、R
1及びR
2は一般式(3)と同じであり、X
3及びX
4は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
3とX
4とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される
化合物の製造方法。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の含ハロゲン錯体を含む、異種ハロゲン化剤。
【請求項5】
下記一般式(5)
R
3-CH=CH-R
4 (5)
(式(5)中、R
3及びR
4は、互いに同一でも異なっていてもよく、R
3は置換もしくは無置換のアリール基または水素原子を示し、R
4は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を示し、R
3とR
4はともに水素原子であることはないかあるいはR
3とR
4とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体と、
一般式(6)
R
5-OH (6)
(式(6)中、R
5は、置換もしくは無置換のアルキル基または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。)で表されるアルコール性水酸基を有する化合物と、を反応させることを特徴とする、下記一般式(7)
【化4】
(式(7)中、R
3及びR
4は一般式(5)と同じであり、R
5は一般式(6)と同じであり、X
5は一般式(1)におけるX
1またはX
2と同じである。)で表されるアルコキシ基含有ハロゲン化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤に関する。詳しくは、異種ハロゲン化剤として用いられる含ハロゲン錯体、それを用いた異種ハロゲン化合物の製造方法および当該含ハロゲン錯体を含む異種ハロゲン化剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物のハロゲン化物は、医薬中間体や工業薬品等の合成中間体としてカップリング反応をはじめとする様々な反応に利用できる有用な化合物である。有機化合物のハロゲン化反応については、古くから多くの方法が知られており、現在もその研究開発は引き続き行われている。
【0003】
ハロゲン化剤として一般的に使用されるものには、ハロゲン化水素、ハロゲンの燐(リン)化合物、ハロゲンの硫黄化合物、ハロゲン単体等があるが、これらは腐食性や毒性が高く、取扱には特殊な装置や技術を必要とするものが多い(例えば非特許文献1参照)。
【0004】
また、異種ハロゲン化剤として使用されるものには、インターハロゲン化合物あるいはハロゲン間化合物がある。インターハロゲン化合物としてはBrCl(一塩化臭素)、ICl(一塩化ヨウ素)やIBr(一臭化ヨウ素)等が知られており、これらは異なるハロゲンを同時に有機化合物に導入できる利点がある。
【0005】
しかし、これらの化合物は腐食性が強く、空気、光、湿度等に対して不安定なものが多い。例えばBrClは化合物が不安定で腐食性が強く、工業的に製造が困難であるなどの課題があり、IClやIBrは湿った空気や光に不安定で、かつ腐食性が極めて強く取扱や保管に課題を有していた。(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】「臭素及びヨウ素化合物の有機合成」マナック(株)著、丸善出版、2017年1月30日発行
【文献】J.Am.Chem.Soc.,54, 1882-1887(1932)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らはこれら従来技術に鑑み、安全に工業的規模にて製造が可能であり、且つ、腐食性が低く、空気中にて安定で取扱いや保管が容易な含ハロゲン錯体およびこれを含む異種ハロゲン化剤を提供することを本発明の目的とする。さらに、この含ハロゲン錯体を含む異種ハロゲン化剤を用いた、異種ハロゲン化合物及びアルコキシ基含有ハロゲン化合物の製造方法を提供することも本発明の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される化合物が、安全に工業的規模にて製造可能であり、且つ、腐食性が低く、空気中においても非常に安定であり、取扱や保管が容易であることを見出した。
【0009】
さらにはこの化合物が、オレフィン化合物への異種ハロゲン化剤として優れていること、またその反応における使用が極めて安全、且つ容易に行えることを見いだし、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りの発明に係る。
【0011】
1.
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1及びX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表されるビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)とハロゲン化水素および異種ハロゲン化物との錯体である含ハロゲン錯体。
【0012】
2.
上記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体が、下記式(2)
【化2】
で表わされるビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一臭化ヨウ素錯体である含ハロゲン錯体。
【0013】
3.
下記一般式(3)
R
1-CH=CH-R
2 (3)
(式(3)中、R
1及びR
2は、互いに同一でも異なっていてもよく、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基または水素原子を示すか、R
1とR
2とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体と、を反応させることを特徴とする、
下記一般式(4)
【化3】
(式(4)中、R
1及びR
2は一般式(3)と同じであり、X
3及びX
4は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
3とX
4とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体の製造方法。
【0014】
4.
請求項1または請求項2に記載の含ハロゲン錯体を含む、異種ハロゲン化剤。
【0015】
5.
下記一般式(5)
R
3-CH=CH-R
4 (5)
(式(5)中、R
3及びR
4は、互いに同一でも異なっていてもよく、R
3は置換もしくは無置換のアリール基または水素原子を示し、R
4は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を示す。R
3とR
4はともに水素原子であることはない。或いはR
3とR
4とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
上記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体と、一般式(6)
R
5-OH (6)
(式(6)中、R
5は、置換もしくは無置換のアルキル基または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。)で表されるアルコール性水酸基を有する化合物と、を反応させることを特徴とする、下記一般式(7)
【化4】
(式(7)中、R
3及びR
4は一般式(5)と同じであり、R
5は一般式(6)と同じであり、X
5は一般式(1)におけるX
1またはX
2と同じである。)で表されるアルコキシ基含有ハロゲン化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、安全に工業的規模にて製造が可能で、且つ、腐食性が低く、空気中にて安定で取扱や保管が容易な異種ハロゲン化剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施例2において、実施例1で得たDIIBの固体を、薬包紙に存置させた図であり、中央にDIIBの固体粉末を示す。
【
図2】実施例2において、実施例1で得たDIIBの固体を、空気中、ガラス容器に入れた状態(ふたを開けた状態)を示す図である。
【
図3】実施例2において、実施例1で得たDIIBの固体を、空気中、ガラス容器に入れて蓋をして、空気中、室温にて3ヶ月間保管試験を行った後、薬包紙に存置させた図であり、中央にDIIBの固体粉末を示す。
【
図4】実施例2において、実施例1で得たDIIBの固体を、空気中、ガラス容器に入れて蓋をして、空気中、室温にて3ヶ月間保管試験を行った後の状態(ふたを開けた状態)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の含ハロゲン錯体は、下記一般式(1)
【化1】
【0020】
(式(1)中、X1及びX2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X1とX2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表されるビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)とハロゲン化水素および異種ハロゲン化物との錯体である化合物である。
【0021】
一般式(1)で表される含ハロゲン錯体として、好ましい具体例として以下の化合物を挙げることができるが、本発明はこれらの例示化合物に制限されるものではない。
【0022】
本発明の異種ハロゲン化剤に含まれる含ハロゲン錯体の例
本発明に係る一般式(1)で表される含ハロゲン錯体は、例えば、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・塩化水素・一塩化臭素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・塩化水素・一塩化ヨウ素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・塩化水素・一臭化ヨウ素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一臭化ヨウ素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一塩化ヨウ素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・ヨウ化水素・一臭化ヨウ素錯体、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・ヨウ化水素・一塩化ヨウ素錯体、等が挙げられる。
【0023】
これらの内でも、下記式(2)
【化2】
で表わされるビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一臭化ヨウ素錯体は、その化合物の安定性、取扱の容易さ、製造方法の容易さからより好ましく用いられる。
【0024】
上記の一般式(1)または式(2)で表されるこれらの含ハロゲン錯体の製造は、下記スキーム(8)に示すように、溶媒に1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(以降DMIと略す)を加えて、前記溶媒中に目的とするハロゲン単体(X
1
2およびX
2
2)を加えることによって、安全に、かつ容易に得ることができる。
【化3】
【0025】
上記スキーム(8)の反応を行なうにあたり、反応剤の加える順序等は適宜決めればよい。例えば反応容器にDMIと溶媒を仕込んだ後にハロゲン単体X1
2およびX2
2を加え、あるいはDMIと溶媒とハロゲン単体X1
2を仕込んだ後にハロゲン単体X2
2を加えるなど、ハロゲン単体の反応性、液体等の性状などを考慮して、適宜決めればよい。
【0026】
本発明において、ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)とハロゲン化水素および異種ハロゲン化物との錯体である含ハロゲン錯体の製造に利用できるハロゲン単体X1
2およびX2
2の例として、具体的には塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0027】
本発明の含ハロゲン錯体の製造において、製造に用いられるハロゲン単体X1の使用量は、溶媒DMIに対してモル比で0.2倍~1.0倍とするとよく、好ましくは0.3倍~0.8倍である。
【0028】
本発明の含ハロゲン錯体の製造において、製造に用いられるハロゲン単体X1とX2の使用量の比率(X1/X2)はモル比で1.0倍~3.0倍とするとよく、好ましくは1.5倍~2.5倍である。
【0029】
本発明の含ハロゲン錯体の製造において、反応温度は、-40℃~80℃とするとよく、好ましくは-20℃~60℃である。
【0030】
本発明により得られた含ハロゲン錯体は、粗精製物をそのまま異種ハロゲン化剤等に使用することもできるが、公知の抽出法、蒸留法あるいは再結晶法等により精製することができ、不純物として存在する原料溶媒、原料ハロゲン単体等の含量を低減化、あるいは実質的に不含とすることができる。
【0031】
このように本発明の異種ハロゲン化剤は、上記一般式(1)または式(2)で表される含ハロゲン錯体を含み、異種ハロゲン化剤としてハロゲン化反応等の種々の反応に用いるために含ハロゲン錯体が可溶の溶媒、粉末固体として保存する場合には脱酸素剤や乾燥剤、その他、目的物を得るための反応に支障を与えない範囲で添加剤等を用いることができる。
【0032】
次に本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法について説明する。
【0033】
例えば、上記した含ハロゲン錯体を用い、オレフィン化合物を異種ハロゲン化する場合、以下の処方を挙げることができる。
【0034】
すなわち、下記一般式(3)
R
1-CH=CH-R
2 (3)
(式(3)中、R
1及びR
2は同一でも異なっていてもよく、置換もしくは無置換の飽和アルキル基、置換もしくは無置換のアリール基または水素原子を示すかR
1とR
2とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
下記一般式(1)
【化1】
(式(1)中、X
1およびX
2は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
1とX
2とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体と、を反応させて、
下記一般式(4)
【化3】
(式(4)中、R
1及びR
2は一般式(3)と同じであり、X
3及びX
4は、互いに独立して塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子であり、X
3とX
4とは同じハロゲン原子となることはない。)で表される含ハロゲン錯体を製造できる。
【0035】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応に利用できるオレフィン化合物の例としては以下の化合物を挙げることができる。すなわち、エチレン、プロペン、1-ブテン、cis-2-ブテン、trans-2-ブテン、ブタジエン、1-ペンテン、cis-2-ペンテン、trans-2-ペンテン、イソプレン、2-メチル-2-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、cis-2-ヘキセン、trans-2-ヘキセン、cis-3-ヘキセン、trans-3-ヘキセン、2-エチル1-ブテン、2-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、cis-2-ヘプテン、trans-2-ヘプテン、cis-3-ヘプテン、trans-3-ヘプテン、trans-4-メチル-2-ヘキセン、cis-4-メチル-2-ヘキセン、1-オクテン、cis-2-オクテン、trans-2-オクテン、cis-3-オクテン、trans-3-オクテン、cis-4-オクテン、trans-4-オクテン、4-エチル-2-ヘキセン、1-ノネン、cis-2-ノネン、trans-2-ノネン、cis-3-ノネン、trans-3-ノネン、cis-4-ノネン、trans-4-ノネン、1-デセン、cis-2-デセン、trans-2-デセン、cis-3-デセン、trans-3-デセン、cis-4-デセン、trans-4-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のオレフィン化合物を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0036】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、含ハロゲン錯体の使用量はモノオレフィン化合物の場合とジオレフィン化合物の場合とで多少異なる。例えばモノオレフィン化合物の場合、モノオレフィン化合物に対してモル比で0.5倍~2.0倍とするとよく、好ましくは0.7倍~1.5倍である。ジオレフィン化合物の場合、ジオレフィン化合物に対してモル比で1.0倍~4.0倍とするとよく、好ましくは1.5倍~3.0倍である。
【0037】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応溶媒は、反応基質や反応試剤、または生成物と反応しない溶媒であれば特に制限は無いが、好ましくはアセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、グライム、ジグライム、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等である。
【0038】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応温度は、-20℃~100℃とするとよく、好ましくは0℃~80℃である。さらに、反応に際して、上記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体、及び反応生成物に悪影響を与えないものであれば、ハロゲン化水素捕捉剤、塩基、酸触媒等を添加しても構わない。
【0039】
本発明の反応により生成した異種ハロゲン化物は、公知の抽出法、蒸留法あるいは再結晶法等により反応混合物から容易に取り出すことができる。その際、未反応の上記一般式(1)で表される化合物が存在するときは、ハロゲン化水素が発生するので、重曹等で捕捉してもよい。
【0040】
一方、オレフィン化合物をハロゲン化及びアルコキシ化する場合には次の処方により生成物を得ることができる。
【0041】
すなわち、下記一般式(5)
R
3-CH=CH-R
4 (5)
(式(5)中、R
3及びR
4は、互いに同一でも異なっていてもよく、R
3は置換もしくは無置換のアリール基または水素原子を示し、R
4は置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基、または水素原子を示し、R
3とR
4はともに水素原子であることはないかあるいはR
3とR
4とが互いに結合して環状の化合物となっていても良い。)で表されるオレフィン化合物と、
上記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体と、一般式(6)
R
5-OH (6)
(式(6)中、R
5は、置換もしくは無置換のアルキル基または、置換もしくは無置換のアリール基を示す。)で表されるアルコール性水酸基を有する化合物と、を反応させることを特徴とする、下記一般式(7)
【化4】
(式(7)中、R
3及びR
4は一般式(5)と同じであり、R
5は一般式(6)と同じであり、X
5は一般式(1)におけるX
1またはX
2と同じである。)で表されるアルコキシ基含有ハロゲン化合物を製造できる。
【0042】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応に利用できるオレフィン化合物の例としては以下の化合物を挙げることができる。すなわち、スチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2-ヨードスチレン、2-ヨードスチレン、4-ヨードスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2-(トリフルオロメチル)スチレン、3-(トリフルオロメチル)スチレン、4-(トリフルオロメチル)スチレン、4-メトキシスチレン、4-アセトキシスチレン、4-シアノスチレン、4-tert-ブチルスチレン、3-t-ブトキシスチレン、4-t-ブトキシスチレン、4-イソブチルスチレン、3-ニトロスチレン、4-(tert-ブチルジメチルシロキシ)スチレン、4-トリメチルシリルスチレン、α-メチルスチレン、β-メチルスチレン、3,4-ジクロロスチレン、3,5-ジブロモスチレン、2,3-ジフルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,5-ジフルオロスチレン、2,6-ジフルオロスチレン、3,4-ジフルオロスチレン、3-ブロモ-2-フルオロスチレン、2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)スチレン、2-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)スチレン、3,5-ビス(トリフルオロメチル)スチレン、2,5-ジメチルスチレン、3,4-ジメトキシスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、4-フルオロ-β-ニトロスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、2,4-ジフルオロ-3-(トリフルオロメチル)スチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、4,4'-ジメチル-trans-スチルベン、cis-スチルベン、trans-スチルベン、4-メチルスチルベン、2-メチルスチルベン、4-シアノ-trans-スチルベン、trans-4-ブロモスチルベン、4,4'-ジブロモ-trans-スチルベン、4,4'-ジヨード-trans-スチルベン、4-アミノスチルベン、4-メトキシ-trans-スチルベン、4,4'-ジメトキシ-trans-スチルベン、3,3',4,5'-テトラヒドロキシ-trans-スチルベン、1,4-ジヒドロナフタレン、1,2-ジヒドロナフタレン、インデン等のオレフィン化合物を挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0043】
また本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応に利用できるアルコール性水酸基を有する化合物の例としては以下の化合物を挙げることができる。すなわち、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2-メチル-1-ブタノール、n-アミルアルコール、ネオアミルアルコール、イソアミルアルコール、n-ヘキシルアルコール、2-メチル-1-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、n-ヘプチルアルコール、n-オクチルアルコール、2-エチルヘキシルアルコール、n-ノニルアルコール、3,5,5-トリメチル-1-ヘキサノール、n-デシルアルコール、n-ウンデシルアルコール、n-ドデシルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、シンナミルアルコール、プロパギルアルコール等の第一級アルコール;およびイソプロピルアルコール、sec-ブチルアルコール、sec-アミルアルコール、sec-イソアミルアルコール、1-エチル-1-プロパノール、4-メチル-2-ペンタノール、1-メチルヘキシルアルコール、1-エチルペンチルアルコール、1-メチルヘプチルアルコール、シクロヘキシルアルコール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、4-メチルシクロヘキサノール、sec-フェネチルアルコール等の第二級アルコール;およびtert-ブチルアルコール、tert-アミルアルコール、1-メチルシクロヘキサノール、α-テルピネオール等の第三級アルコール等のアルコールが挙げられる。
【0044】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応溶媒は、反応基質や反応試剤、または生成物と反応しない溶媒であれば特に制限は無いが、好ましくはアセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、グライム、ジグライム、ジメチルホルムアミド、ベンゼン、トルエン、ヘキサン、ジエチルエーテル、トリフルオロエタノール、ヘキサフルオロイソプロパノール等である。
【0045】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、含ハロゲン錯体の使用量はモノオレフィン化合物の場合とジオレフィン化合物の場合とで多少異なる。例えばモノオレフィン化合物の場合、モノオレフィン化合物に対してモル比で0.5倍~2.0倍とするとよく、好ましくは0.7倍~1.5倍である。ジオレフィン化合物の場合、ジオレフィン化合物に対してモル比で1.0倍~4.0倍とするとよく、好ましくは1.5倍~3.0倍である。
【0046】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、アルコール性水酸基を有する化合物の使用量はモノオレフィン化合物の場合とジオレフィン化合物の場合とで多少異なる。例えばモノオレフィン化合物の場合、モノオレフィン化合物に対してモル比で1倍~100倍とするとよく、好ましくは5倍~80倍である。ジオレフィン化合物の場合、ジオレフィン化合物に対してモル比で2倍~200倍とするとよく、好ましくは10倍~160倍である。
【0047】
本発明の含ハロゲン錯体及びそれを含む異種ハロゲン化剤の利用方法において、反応温度は、-20℃~100℃とするとよく、好ましくは0℃~80℃である。さらに、反応に際して、上記一般式(1)で表される含ハロゲン錯体、及び反応生成物に悪影響を与えないものであれば、ハロゲン化水素捕捉剤、塩基、酸触媒等を添加しても構わない。
【0048】
反応により生成した異種ハロゲン化物は、公知の抽出法、蒸留法あるいは再結晶法等により反応混合物から容易に取り出すことができる。その際、未反応の一般式(1)で表される化合物が存在する時は、ハロゲン化水素が発生するので、重曹等で捕捉してもよい。
【実施例】
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0050】
なお分析に当たっては下記機器を使用した。
1H-NMR:日本電子(株)製、型式 JEOL-ECS-400 spectrometer
13C-NMR:日本電子(株)製、型式JEOL-ECS-400 spectrometer
元素分析:
炭素、水素、窒素:ヤナコ分析工業(株)製、型式MT-7
臭素、ヨウ素:(株)三菱化学アナリテック製 自動燃焼装置 AFQ-100及びダイオネクス(株)イオンクロマトグラフ ICS-1500を用い、実測値と計算値とを対比した。
融点:(株)ヤナコ 微量融点測定装置 MP-J3
以上により測定した。
【0051】
実施例1 ビス(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)・臭化水素・一臭化ヨウ素錯体(以下、DIIBと略す)の製造
1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(以下、DMIと略す)2.24g(19.6mmol)とヨウ素1.28g(5.06mmol)とジエチルエーテル20mlを100mlナスフラスコに入れ、氷冷で攪拌下、臭素1.59g(9.92mmol)を少量ずつ10分間で滴下した。滴下終了後、ジエチルエーテル10mlを加えて1時間氷冷にて攪拌を継続した。1時間後、さらにジエチルエーテルを加え、室温にて撹拌を継続した。反応終了後、グラスフィルターを用いて析出した固体を濾取し、ジエチルエーテルで洗浄後真空乾燥し、橙色固体4.53gを得た(
図1参照)。収率45%。
【0052】
得られた生成物を分析し、以下の結果を得た。
融点107-108℃。
1H-NMR(CDCl3、TMS)
δ 2.99(s、12H)、3.66(s、8H)、8.56(bs、1H)
13C-NMR(CDCl3)
δ 32.20、46.38、161.85
元素分析
実測値 C:23.12、H:4.08、N:10.76、Br:31.17、
I:23.28
計算値 C:23.28、H:4.10、N:10.86、Br:30.97、
I:24.59
以上の通り、1H-NMR、13C-NMR及び元素分析の結果から得られた固体が、DIIBであることを確認した。
【0053】
実施例2 DIIBの長期間の保管
実施例1で得られたDIIB結晶は、
図1に示すように橙色固体であった(ただし
図1は白黒画像である)。
図1においてDIIB結晶を存置する薬包紙の一辺はメジャー(ものさし)が示すように約10cmであり、以下、
図2~
図4も同じである。このDIIB結晶を、
図2に示すようにガラス製容器(ふたはポリプロピレン製)に入れた。
DIIBの固体は空気中で取り扱っても、刺激臭や白煙を生じるなど分解する兆候は認められず、また吸湿性もなく、取り扱いや保管が容易であることが確認された。
【0054】
DIIBをガラス容器に入れて蓋をして、空気中、室温にて3ヶ月間保管試験を行った。3ヶ月後、
図3に示すように、DIIBは変色や純度等の低下は確認されなかった(ただし
図3は白黒画像である)。また、
図4に示すように、保管容器のガラス瓶に腐食等は確認されなかった。
【0055】
実施例3 ヨードブロモドデカンの合成
DIIB 0.517g(1.05mmol)とクロロホルム2ml、ヘキサフルオロイソプロパノール(以下、HFIPと略す)を30mlナスフラスコに入れ、1-ドデセン0.168g(1.0mmol)をゆっくり加えて室温で1時間反応を行った。ジエチルエーテルで溶液を十分に薄めた後、炭酸水素ナトリウム水溶液を加えた。有機相を分離後、水相をジエチルエーテルで3回抽出した。得られた有機相を合わせて純水で洗浄後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、乾燥剤除去後溶媒を減圧留去し、褐色液体0.165gを得た。
【0056】
1H-NMR測定の結果、反応収率は98%、1-ブロモ-2-ヨードドデカンと2-ブロモ-1-ヨードドデカンが同量生成しているのを確認した。
【0057】
実施例4 ヨードブロモドデカンの合成
HFIPをトリフルオロエタノール(以下、TFEAと略す)に替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は98%、1-ブロモ-2-ヨードドデカンと2-ブロモ-1-ヨードドデカンが同量生成しているのを確認した。
【0058】
実施例5 ヨードブロモドデカンの合成
HFIPを加えなかったこと以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は50%、1-ブロモ-2-ヨードドデカンと2-ブロモ-1-ヨードドデカンが同量生成しているのを確認した。
【0059】
実施例6 ヨードブロモオクタンの合成
1-ドデセンを1-オクテンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は98%、1-ブロモ-2-ヨードオクタンと2-ブロモ-1-ヨードオクタンが同量生成しているのを確認した。
【0060】
実施例7 1-メトキシ-ヨードブロモデカンの合成
1-ドデセンを1-メトキシ-9-デセンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は98%、1-メトキシ-10-ブロモ-11-ヨードデカンと1-メトキシ-11-ブロモ-10-ヨードデカンが同量生成しているのを確認した。
【0061】
実施例8 1-フェノキシ-ヨードブロモデカンの合成
1-ドデセンを1-フェノキシ-9-デセンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は98%、1-フェノキシ-10-ブロモ-11-ヨードデカンと1-フェノキシ-11-ブロモ-10-ヨードデカンが同量生成しているのを確認した。
【0062】
実施例9 1-ヒドロキシ-ヨードブロモデカンの合成
1-ドデセンを1-ヒドロキシ-9-デセンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は90%、1-ヒドロキシ-9-ブロモ-10-ヨードデカンと1-ヒドロキシ-10-ブロモ-9-ヨードデカンが同量生成しているのを確認した。
【0063】
実施例10 4-ブロモ-5-ヨードオクタンの合成
1-ドデセンをtrans-4-オクテンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は69%、4-ブロモ-5-ヨードオクタンが生成しているのを確認した。
【0064】
実施例11 4-ブロモ-5-ヨードオクタンの合成
1-ドデセンをcis-4-オクテンに替えた以外は実施例3と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は80%、4-ブロモ-5-ヨードオクタンが生成しているのを確認した。
【0065】
実施例12 4-ブロモ-5-ヨードオクタンの合成
HFIPをTFEAに替えた以外は実施例11と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は81%、4-ブロモ-5-ヨードオクタンが生成しているのを確認した。
【0066】
実施例13 4-ブロモ-5-ヨードオクタンの合成
HFIPを加えなかったこと以外は実施例11と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、反応収率は47%、4-ブロモ-5-ヨードオクタンが生成しているのを確認した。
【0067】
実施例14 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンの合成
DIIB 0.594g(1.15mmol)とメタノール2ml(49mmol)、HFIP 1ml、4-メチルスチレン0.130g(1.09mmol)を30mlナスフラスコに入れ、室温で2時間反応を行った。ジエチルエーテルで溶液を十分に薄めた後、炭酸水素ナトリウム水溶液とチオ硫酸ナトリウム溶液を加えた。有機相を分離後、水相をジエチルエーテルで3回抽出した。得られた有機相を合わせて水で洗浄後、硫酸ナトリウムにて乾燥し、乾燥剤除去後溶媒を減圧留去し、褐色液体0.317gを得た。カラムクロマトグラフィーにより精製し、溶媒を減圧留去して無色液体0.260gを得た。
【0068】
1H-NMR測定の結果、収率91%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンであることを確認した。
【0069】
実施例15 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンの合成
HFIPをTFEAに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0070】
1H-NMR測定の結果、収率93%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-クロロベンゼンであることを確認した。
【0071】
実施例16 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-クロロベンゼンの合成
4-メチルスチレンを4-クロロスチレンに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0072】
1H-NMR測定の結果、収率90%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-クロロベンゼンであることを確認した。
【0073】
実施例17 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-ブロモベンゼンの合成
4-メチルスチレンを4-ブロモスチレンに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0074】
1H-NMR測定の結果、収率87%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-ブロモベンゼンであることを確認した。
【0075】
実施例18 1-(2-ヨード-1-メトキシ-1-メチルエチル)ベンゼンの合成
4-メチルスチレンをα-メチルスチレンに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0076】
1H-NMR測定の結果、収率70%で1-(2-ヨード-1-メトキ-1-メチルエチル)ベンゼンであることを確認した。
【0077】
実施例19 2-ヨード-1-メトキシインデンの合成
4-メチルスチレンをインデンに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0078】
1H-NMR測定の結果、収率63%で2-ヨード-1-メトキシインデンであることを確認した。
【0079】
実施例20 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メトキシベンゼンの合成
4-メチルスチレンを4-メトキシスチレンに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。1H-NMR測定の結果、収率85%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メトキシベンゼンであることを確認した。
【0080】
実施例21 1-(2-ヨード-1-エトキシエチル)-4-メトキシベンゼンの合成
メタノールをエタノールに替えた以外は実施例20と同様の方法にて反応を行った。
【0081】
1H-NMR測定の結果、収率82%で1-(2-ヨード-1-エトキシエチル)-4-メトキシベンゼンであることを確認した。
【0082】
実施例22 1-(2-ヨード-1-(1-メチルエトキシエチル)-4-メトキシベンゼンの合成
メタノールを2-プロパノールに替えた以外は実施例20と同様の方法にて反応を行った。
【0083】
1H-NMR測定の結果、収率48%で1-(2-ヨード-1-(1-メチルエトキシエチル)-4-メトキシベンゼンであることを確認した。
【0084】
実施例23 2-(2-ヨード-1-(4-メトキシフェニル)エトキシ)エタノールの合成
メタノールをエチレングリコールに替えた以外は実施例20と同様の方法にて反応を行った。
【0085】
1H-NMR測定の結果、収率62%で2-(2-ヨード-1-(4-メトキシフェニル)エトキシ)エタノールであることを確認した。
【0086】
実施例24 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンの合成
HFIPを加えなかったこと以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0087】
1H-NMR測定の結果、収率73%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンであることを確認した。
【0088】
比較例1 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンの合成
DIIBをヨウ素に替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0089】
1H-NMR測定の結果、収率52%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンであることを確認した。
【0090】
比較例2 1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンの合成
DIIBをN-ヨードスクシンイミドに替えた以外は実施例14と同様の方法にて反応を行った。
【0091】
1H-NMR測定の結果、収率66%で1-(2-ヨード-1-メトキシエチル)-4-メチルベンゼンであることを確認した。
【0092】
以上を表1としてまとめた。
【0093】
【0094】
表1によれば、実施例ではいずれも基質のハロゲン化が効率的、すなわち高い反応収率にて進行していることが分かる。
・HFIPを用いた実施例14またはTFEAを用いた実施例15と、HFIPまたはTFEAを用いていない実施例24とを比べると、溶媒としてHFIPまたはTFEAを用いることで反応収率に優れることが分かる。また実施例24と比較例1,2とから、ハロゲン化剤の違いにより反応収率に差があり、本発明に係るDIIB等の異種ハロゲン化剤によることが分かる。
・実施例3~13では、溶媒にHFIPまたはTFEAと、クロロホルムとを併用することで、本発明の異種ハロゲン化剤により、基質へ異なるハロゲンを同時付加する反応を収率良く行うことができることが分かる。
・実施例14~24では、メタノールやその他のアルコール類を加えることで、アルコキシ化とハロゲン化の両方を行うことができ、この場合アルコールは反応原料と溶媒との両方の役割を担っている。アルコール添加により片方をアルコキシ化することで、異種ハロゲン化剤中の一方のハロゲンのみ基質へ付加する反応へと導くことができる。
【0095】
実施例2から、本発明に係るDIIB等の異種ハロゲン化剤は安定であり、保存容器への腐食等もなく、異種ハロゲン化剤として優れた特質を長期にわたって維持できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明の異種ハロゲン化剤は、安全に工業的規模にて製造可能であり、且つ、腐食性が低く、空気中においても非常に安定で、取扱や保管が容易である。更にはオレフィン化合物への異種ハロゲン化剤として優れていること、またその反応における使用が極めて安全、且つ容易に実施することができるため、極めて有用である。