(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】リソグラフィ装置用基板ホルダ及び基板ホルダの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20230822BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230822BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2021532448
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(86)【国際出願番号】 EP2019083027
(87)【国際公開番号】W WO2020135971
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-07-20
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ニキペロフ,アンドレイ
(72)【発明者】
【氏名】デ グロート,アントニウス,フランシスカス,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ネクリュドヴァ,マリヤ
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-056282(JP,A)
【文献】特開2005-142570(JP,A)
【文献】特表2015-507367(JP,A)
【文献】国際公開第2017/186486(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/021710(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/007498(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リソグラフィ装置用の基板ホルダを作製する方法であって、前記基板ホルダは本体表面を有する本体を備えており、前記方法は、
前記本体の少なくとも一部を、炭素を備える第1のコーティング材料の層によって被覆するステップと、
複数の離散的領域における前記第1のコーティング材料を異なる構造又は密度を有する第2のコーティング材料に選択的に変換するために、前記第1のコーティング材料の前記領域をレーザ照射で処理するステップと、
を含み、
前記第2のコーティング材料の炭素含有量は、90%を超えるsp3混成炭素である、方法。
【請求項2】
前記基板ホルダは更に、前記本体表面から突出する複数のバールであって各々が前記基板と係合するように構成された遠位端面を有するバールを備えており、
前記被覆するステップは、前記複数のバールの少なくとも前記遠位端面を前記第1のコーティング材料の層によって被覆し、
前記処理するステップは、前記遠位端面の少なくとも複数の離散的領域を前記レーザ照射で処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記方法は、前記バールのうち1つ以上が前記遠位端面で摩耗している既存の基板ホルダを修復する方法であって、前記被覆するステップ及び前記処理するステップは、前記摩耗したバールの前記遠位端面を被覆及び処理する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被覆するステップ及び前記処理するステップは、前記離散的領域を蓄積して前記基板ホルダの前記本体から突出するバールを形成するために繰り返し実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のコーティング材料は複数の穴を有するマスクであり、前記処理するステップは、前記穴内の領域を処理すると共に、前記穴内にバールを形成するために繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のコーティング材料の前記未処理のエリアを前記除去するステップを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第2のコーティング材料は前記第1のコーティング材料よりも硬い、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記処理するステップは前記離散的領域のうちの異なる領域には異なるレーザ照射を適用し、それによって、前記第2のコーティング材料の少なくとも1つの特性が前記領域間で異なる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記処理するステップは前記基板ホルダの外側領域の1つ以上のバールには前記基板ホルダの内側領域の1つ以上のバールと比較して異なるレーザ照射を適用し、それによって、前記外側領域の前記バールの前記第2のコーティング材料は、前記内側領域の前記バールの前記第2のコーティング材料よりも硬くなる及び/又は厚くなる及び/又は前記内側領域の前記バールの前記第2のコーティング材料とは異なる摩擦係数を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記離散的領域は前記本体表面から突出する複数のバールの遠位端面を含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記離散的領域は単一のバールの遠位端面上の離散的領域を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理するステップは前記第2のコーティング材料の複数の種結晶を作り出し、前記種結晶上に前記第2のコーティング材料を前記成長させるステップを更に含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
リソグラフィ装置用の、基板を支持するように構成された基板ホルダであって、前記基板ホルダは、
本体表面を有する本体と、
前記本体表面から突出する複数のバールであって、
各バールは、前記基板と係合するように構成された遠位端面を有し、
前記バールの前記遠位端面は、支持面に実質的に一致し、前記基板を支持するように構成されている、複数のバールと、
を備えており、
前記バールのうち少なくともいくつかの前記遠位端面は、炭素を備える第1のコーティングを有しており、前記炭素は、90%を超えるsp3混成炭素を含み、前記本体の前記バール間領域は、異なるコーティングを有するか又はコーティングを有さず、
前記第1のコーティングの前記炭素は、
炭素を備え、異なる構造又は密度を有する材料から
レーザ照射によって変換されている、基板ホルダ。
【請求項14】
前記バールのうち1つの前記遠位端面の前記第1のコーティングの少なくとも1つの特性は、前記バールのうち別の1つの前記第1のコーティングの前記特性とは異なる、請求項13に記載の基板ホルダ。
【請求項15】
前記バールのうち1つの前記遠位端面の前記第1のコーティングの少なくとも1つの特性はそのバールの前記遠位端面全体にわたって異なる、請求項13又は請求項14に記載の基板ホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は、2018年12月28日に提出された米国出願第62/786,300号の優先権を主張し、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィ装置用基板ホルダと、基板ホルダの製造方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進み続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス毎のトランジスタなどの機能素子の量は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則について行くべく、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用い得る。この放射の波長が、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置において、露光対象の基板(製品基板と称され得る)は基板ホルダ(ウェーハテーブルと称されることもある)上に保持される。基板ホルダは投影システムに対して移動可能であってもよい。基板ホルダは通常、剛性材料で作製されると共に支持対象の製品基板と平面で同様の寸法を有する固体を備えている。固体の基板対向表面には複数の突起(バールと称される)が設けられる。バールの遠位面は、平面に一致し、基板を支持する。バールはいくつかの利点を提供する。すなわち、基板ホルダ上又は基板上の汚染物質粒子は恐らくバールの間に落下するであろうから基板の変形を引き起こさないし、バールの端部が平面に一致するように機械加工することの方が固体の表面を平坦にすることよりも容易であるし、バールの特性は、例えば基板のクランプを制御するように調節することができる。
【0006】
[0006] しかしながら、基板ホルダのバールは、使用中に、例えば基板のロード及びアンロードの繰り返しによって、摩耗する。バールの不均一な摩耗は露光時の基板の非平坦に繋がり、これは、プロセスウィンドウの縮小、及び極端な場合には結像誤差を招き得る。製造仕様が非常に精密であるため、基板ホルダは製造に費用がかかり、したがって、基板ホルダの使用寿命は増大させるのが望ましい。
【0007】
[0007] 基板ホルダには、典型的にはSiC又はSiSiCである本体にダイヤモンドライクコーティング(DLC)を施したものもある。このDLCコーティングは、30~40%がsp3混成C原子から成り、残りは主にsp2混成C原子及びいくつかのH原子である。しかしながら、DLCコーティングされたバールの摩耗、酸化、及び不安定な摩擦は、基板ホルダの劣化に有意な問題を引き起こすと考えられている。これは、DLC中のsp2混成C原子の高含有量によるものと考えられている。
【0008】
[0008] したがって、基板ホルダ又は少なくとも基板ホルダのバールは、ダイヤモンド又は他の超硬材料などのコーティングによって被覆するのが望ましい。ところが、ダイヤモンドコーティングに利用可能な製造技術は、基板ホルダに関しては実用的でない。特に、ダイヤモンドコーティングは、典型的には強化CVDプロセスによって加熱基板(500~1200℃)に施される。これは組み立て済みの基板ホルダには非実用的である。なぜなら、絶縁された電極、SiC又はSiSiC本体、及び/又は形成されたダイヤモンドとセラミック本体との間に有意な熱応力を引き起こすからである。その結果、基板ホルダは反るおそれがあり及び/又は平坦性の要件を満たすためにかなりの研磨を必要とし得る。また、ダイヤモンドコーティングの成長を空間的に制御することは困難である。
【発明の概要】
【0009】
[0009] 本発明の目的は、バールの遠位端上により硬いコーティングを有する基板ホルダと、そのようなコーティングを作製することのできる基板ホルダの製造方法と、を提供することである。
【0010】
[0010] 本発明の更なる目的は、バールの特性又はバールの異なる部分の特性を調節するために選択的にコーティングされたバールを有する基板ホルダを提供することである。
【0011】
[0011] 本発明の一実施形態においては、リソグラフィ装置用の基板ホルダを作製する方法が提供され、その基板ホルダは本体表面を有する本体を備えており、方法は、本体の少なくとも一部を第1のコーティング材料の層によって被覆するステップと、複数の離散的領域における第1のコーティング材料を異なる構造又は密度を有する第2のコーティング材料に選択的に変換するために、第1のコーティング材料のこれらの領域をレーザ照射で処理するステップと、を含む。
【0012】
[0012] 本発明の実施形態が基板ホルダを「作製すること」を参照するとき、これは、基板ホルダの当初の作製と、基板ホルダを修正、修復、又は他の処理をしてその構造又は特性を変化させる特定のステップを含む任意の他のプロセスと、の両方を含む。
【0013】
[0013] 本発明の更なる一実施形態においては、リソグラフィ装置用の、基板を支持するように構成された基板ホルダが提供され、基板ホルダは、本体表面を有する本体と、本体表面から突出する複数のバールと、を備えており、各バールは、基板と係合するように構成された遠位端面を有し、バールの遠位端面は、支持面に実質的に一致し、基板を支持するように構成されており、バールのうち少なくともいくつかの遠位端面は、ダイヤモンド、立方晶BN、C3N4、金属ホウ化物、Si3N4、もしくはSiC、又はC,B,N,Siのうち少なくとも2つを備える材料の第1のコーティングを有しており、本体のバール間領域は、異なるコーティングを有するか又はコーティングを有さない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
[0014] 対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【0015】
【
図2A】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図2B】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図2C】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図3】本発明の一実施形態による基板ホルダを示す。
【
図4】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールの表面の処理を図示する。
【
図5A】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図5B】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図5C】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図6A】本発明の一実施形態による基板ホルダを修復するプロセスのステップを示す。
【
図6B】本発明の一実施形態による基板ホルダを修復するプロセスのステップを示す。
【
図6C】本発明の一実施形態による基板ホルダを修復するプロセスのステップを示す。
【
図6D】本発明の一実施形態による基板ホルダを修復するプロセスのステップを示す。
【
図7A】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図7B】本発明の一実施形態による基板ホルダのバールを図示する。
【
図8A】本発明の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図8B】本発明の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図8C】本発明の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図8D】本発明の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図8E】本発明の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図9A】本発明の別の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図9B】本発明の別の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図9C】本発明の別の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図9D】本発明の別の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【
図9E】本発明の別の一実施形態による基板ホルダを製造するプロセスのステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[0015] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が436nm、405nm、365nm、248nm、193nm、157nm、126nm又は13.5nmの波長)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。特に、基板ホルダ又は基板ホルダのバールのコーティングにおける材料の変換のために用いられる「放射」は、可視及び赤外を含む任意のタイプの電磁放射であってもよい。
【0017】
[0016] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0018】
[0017]
図1は、リソグラフィ装置を概略的に示す。リソグラフィ装置は、放射ビームB(例えば、EUV放射又はDUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板サポートWTを正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えば基板ホルダ)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0019】
[0018] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームBを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0020】
[0019] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0021】
[0020] リソグラフィ装置は、投影システムPSと基板Wとの間の液浸空間10を充填するように、基板Wの少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に組み込まれる米国特許6,952,253号に与えられている。
【0022】
[0021] リソグラフィ装置は、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。こうした「マルチステージ」機械において、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。
【0023】
[0022] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置は測定ステージを含むことができる(
図1には図示していない)。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニングデバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するよう配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。クリーニングデバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部をクリーニングするよう配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0024】
[0023] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。マスクMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに合焦させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の合焦し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0025】
[0024] 本明細書では、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は、3つの軸、すなわちx軸、y軸、及びz軸を有する。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸と直交する。x軸を中心とする回転は、Rx回転と呼ばれる。y軸を中心とする回転は、Ry回転と呼ばれる。z軸を中心とする回転は、Rz回転と呼ばれる。x軸及びy軸は水平面を定義するのに対して、z軸は垂直方向にある。デカルト座標系は本発明を限定しているのではなく、明確化のためにのみ用いられる。代わりに、円筒座標系などの別の座標系を用いて本発明を明確にすることもある。デカルト座標系の向きは、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように異なることがある。
【0026】
[0025] リソグラフィ装置においては、露光対象の基板の上面を、投影システムによって投影されるパターンの空中像のベストフォーカス面に高い精度で位置決めすることが必要である。これを達成するために、基板は基板ホルダ上に保持される。基板ホルダの基板を支持する表面には複数のバールが設けられており、バールの遠位端は公称支持平面内で同一平面上にある。バールは、多数あるが、支持平面と平行な断面積が小さく、したがってバールの遠位端の総断面積は基板の表面積の数パーセント、例えば5%未満である。バールは概して形状が円錐形であるが、そうでなくてもよい。基板ホルダと基板との間の空間内のガス圧力は、基板を基板ホルダにクランプする力を作り出すために、基板の上方の圧力と比べて低減されている。代替的には、静電気圧を用いて伝導基板をクランプすることのできるいくつかの電極が基板ホルダに設けられる。
【0027】
[0026] バールはいくつかの役目を果たす。例えば、基板ホルダ又は基板上に汚染物質粒子が存在する場合、それは恐らくバールの位置には位置せず、したがって基板を歪ませない。また、バールをその遠位端が平面に正確に一致するように製造することは、平坦性が非常に低い大きな領域を製造することよりも容易である。
【0028】
[0027] 基板ホルダのバールは、使用中に摩耗する。摩耗は一般に不均一であり、したがって、摩耗した基板ホルダによって保持される基板の表面に非平坦性を生じさせる。そのような摩耗が過度になると、基板ホルダを修復又は交換することが必要になる。基板ホルダの修復及び交換は、修復プロセス又は新たな基板ホルダの製造のコストに起因してのみならず、必要とされるリソグラフィ装置のダウンタイムにも起因して、費用がかかる。
【0029】
[0028] 本発明の実施形態は、パルスレーザ誘起相転移を用いてバール上のコーティング層の構造及び特性を変化させる。材料のパルス照射は(パルスが終了した後の)被照射材料の比較的迅速な冷却を可能にすることができ、これは望ましい高結晶型への固化を可能にし又は駆動する。
【0030】
[0029] 特定の実施形態においては、レーザ誘起相転移は、DLC→ダイヤモンド、又は黒鉛→DLC→ダイヤモンドとして近似することができる。1又は複数のレーザ誘起相転移の結果、コーティング層中のsp3混成Cの割合には、高温(例えば金属、液体)C(場合によっては~4000C)の焼入れ時のsp2混成Cを犠牲にして有意な増大がある。特定の実施形態においては、結果として得られるコーティング層は、90%を超えるsp3C、好適には95%を超えるsp3C、より好適には100%のsp3Cを有する。本明細書において、「ダイヤモンド」は、90%を超えるsp3混成C原子の含有量を有する任意の材料を指して用いられる。
【0031】
[0030] また、本説明では主にバール上にダイヤモンドコーティング層を作り出すために用いられる効果及びプロセスについて述べるが、超硬材料に基づく他のコーティングの方が、基板上の特定のコーティングに関しては、ダイヤモンドよりも更に良好な性能を呈し得る。例えば、本明細書に記載される実施形態の原理は、立方晶BN、C3N4、金属ホウ化物、Si3N4、及びSiCなどの他の超硬材料、又はC,B,N,Siのうち少なくとも2つを備える材料に、等しく適用可能である。特に、立方晶BNはダイヤモンドに匹敵する機械的特性を有するが、場合によっては化学的によりロバストであり得る。
【0032】
[0031] BNの場合、プロセスは、hBN又は高エネルギイオン注入によって生成された不規則BNからc-BNへの転移を引き起こすために用いられ得る。これらの配列における当初のコーティング層は、(h-BNとc-BN又は非晶質BNとの混合をもたらす見込みの強い)高エネルギイオン注入によって生成された高圧縮応力層であり得る。
【0033】
[0032] 改良されたコーティング層は、DLCにおけるsp3C含有量を増大させるという一般的な目的の他に、種々の目的のために及び基板ホルダの製造における種々のプロセスにおいて用いられ得る。
【0034】
[0033] 例えば、プロセスは、ダイヤモンドコーティングを有するバールを修復するため、及び/又は高sp3含有量のDLC(例えば、高エネルギ(例えば10-100eV)で注入された炭素に基づくta-Cコーティング)の結晶化度を変化させるために、強化CVD用のダイヤモンド膜成長のテンプレートを提供するべく用いられてもよい。
【0035】
[0034] Ta-C(四面体炭素)の深紫外(DUV)照射に関しては、照射の効果は、a)本体の下にある材料の格子との結晶性(及び低温)界面から始まる、過冷却Cのエピタキシャル結晶化、及び/又はb)影響を受ける層領域を高密度化する再結晶化を介した圧縮圧力の弛緩によって、のいずれかによって説明されるものと考えられる。
【0036】
[0035] 特定の実施形態においては、基板を比較的低温(したがって結晶性)に維持しつつ当初のコーティングのみを溶解するために、コーティングと本体との消衰係数の比kコーティング/k本体を向上させ好適には最大化する波長を用いるのが望ましい。
【0037】
[0036] 他の実施形態においては、入射フルエンスは(両方の層における消衰を考慮に入れて)本体温度がその融点を下回ったままである一方でコーティングの温度がその融点を上回るか又は少なくともそれに近づくように調整され得る。
【0038】
[0037] いくつかの実施形態においては、基板は、炭素を含む当初の(未処理の)コーティングの適用の前に、自然酸化物を除去してよく整合した格子を有する微結晶(例えばSiC)を露出するために、Hプラズマでスパッタリング又は処理もされるべきである。
【0039】
[0038] 炭素とBNとの相図(dP/dT<0)に基づくと、いくつかの実施形態においては、fsパルス照射が有益であると考えられる。なぜなら、(高フルエンス照射によって生成される)電子正孔プラズマが吸収された光子運動量によって圧縮され、その結果得られる、材料格子に伝達される圧力が、ほとんど瞬間的な溶解を駆動できるからである。
【0040】
[0039]
図2は、本発明の第1の実施形態による方法のステージを概略的に示す。
図2Aは、基板ホルダWTの本体201から上方に延伸する典型的な既存のバール210を示す。バール210は、遠位端面211にDLC(又はTa-C)コーティング220を有する。コーティング220は、バールの目の粗さWよりも小さい共形的な標準的厚さhを有している。
【0041】
[0040] 基板ホルダのバール210は次いでパルスレーザ照射(シングルパルス又はマルチパルスシーケンスであり得る)に曝される。好適には、使用されるレーザは、~0.1-1J/cm2の範囲内のフルエンスを有するDUV/エキシマレーザ又はIRレーザである。代替的には、レーザは、アブレーション閾値の~0.5-50%のフラッシュ毎フルエンス(fluence per flash)を有するfs/psレーザであってもよい。
【0042】
[0041] 照射は任意の雰囲気中で実行することが可能であるが、誘導加熱/冷却中の酸化のリスクを低減するために、好適には真空又は近真空で行われる。
【0043】
[0042] この照射はDLCコーティング220を少なくとも部分的にナノ/マイクロスケールダイヤモンド及び/又はダイヤモンドオニオン(フラーレンダイヤモンド(Fullerean diamond))に変換させる。
図2Bは、DLCコーティング220の部分221がダイヤモンドに変換された構成を示しており、バールの本体の材料は影響を受けていない。
図2Cは代替的な構成を示すもので、コーティングがダイヤモンド221に完全に変換され、バールの本体の層223も、例えば再結晶化によって及び/又はコーティング層220からの炭素で相互拡散されることによって、影響を受けている。
【0044】
[0043] DLCコーティング220のレーザ照射の使用は、DLCコーティング220の変換が高精度に空間的に制御され得ることを意味する。例えば、照射は、バール210の遠位端面211でのみ変換が行われるように制御され得る。また、空間的制御は、異なるバール又はバールの群が異なって処理され得ることを意味し、これは、所望の結果に応じて基板ホルダ全体でバール又はバールの群が異なって処理されることを可能にする。
【0045】
[0044] この方法における選択的照射の更なる又は代替的な効果は、特定のエリアにおいてのみダイヤモンドの形成を可能にする(と共に、特に、ダイヤモンドがバールの間ではなくバールの遠位端面に作製されることを保証できる)ということである。これにより、基板ホルダへの追加的な広域応力の導入を防止することができ、ひいては、更なる平坦化処理をしなければならなくなるであろう基板ホルダの反りを回避することができる。
【0046】
[0045] また、応力がかかる(ダイヤモンド)コーティング(stressed (diamond) coating)を単一のバールに限定することによって、そのコーティングの剥離/欠損及びひび割れに対するロバスト性を高めることができる。
【0047】
[0046] 本実施形態のプロセスは、基板ホルダの製造に関係して説明されているが、既存の基板ホルダの修復及び再生にも用いることができる。
【0048】
[0047] このプロセスの更なる潜在的な利点は、レーザ照明の特性(パルス周波数、パルス長、パルスエネルギ又は波長など)がバール単位で選択(及び変更)可能であるということである。これは、基板ホルダ全体にわたって個々のバール(又はバールの群)の特性が変更されることを可能にする。照明基準の適切な選択によって、バールの遠位端面の摩擦係数、接触箇所(バールとウェーハとの接触面積)等といった様々な特性を各バール(又はバールの群)について調節することができる。例えば、スリップによる摩耗を最も被る基板ホルダのエッジの付近のバールは、基板ホルダの中央のバールよりも硬くすることができる。バールは、代替的又は追加的には、ウェーハロードグリッド(WLG)を改良又は最適化するように調節されてもよい。WLGはオーバーレイの歪みであり、クランプの際のウェーハの非平坦性及びバールとウェーハとの間の有限摩擦係数に関係する。これは
図3に概略的に示されており、同図においてはエッジのバール210aが他のバール210とは異なって処理されている。
【0049】
[0048] バール間のレーザ照明の特性を選択及び変更するばかりでなく、各バール内の照明プロファイルも、例えば干渉及び/又は強度変化によって、変更することができる。
これにより、各バール上のコーティング内の結晶化パターン又は忠実性の調整を可能にすることができ、その結果、例えばバールのエッジに向かってダイヤモンド位相厚を減少/増加させることによって、コーティングの応力又は付着を改善又は最適化することができる。
図4は、これがどのように達成され得るのかを概略的に示す。
図4Aのグラフは、
図4Bに示されるバールの遠位端面のコーティング220の表面全体にわたって空間的にレーザ強度の変化を示す。
図4Cは、それによって生じる、DLCコーティング220内にダイヤモンド(又は高sp3含有量)微結晶224の(サイズ及び位置に関して)制御された分布を作り出す際の、コーティングに対する効果を示す。
【0050】
[0049]
図4にはコーティング220は平坦なものとして示されているが、実際の表面はそうではないであろう。もっとも、強度変化の使用によって、形成される微結晶の位置及びサイズは、遠位端面のラフネスとは切り離すことができる。合理的な開口数を有するDUV/可視レーザを用いれば、結晶化種の制御は、数ミクロンに至るまで可能である。
【0051】
[0050] 上記の実施形態の開発においては、レーザ照明後のダイヤモンドへの結晶化の可能性が、DLCコーティングの初期堆積よりも前に基板の表面処理を適用することによって、向上する。これは、界面を変化させるために、例えば本体の表面から酸化物を除去することによって、行われてもよい(バールの露出された遠位端面において、SiC及びSiSiC材料は、通常は最大で数十nmの自然酸化物の薄層に覆われている)。この処理は、H2プラズマ又は非堆積CxHyプラズマ又はスパッタリング貴ガスプラズマを使用し得る。
【0052】
[0051]
図5は、本発明の第2の実施形態による方法のステージを概略的に示す。この実施形態においては、基板ホルダのバール210は、まず、DLCの薄層220(すなわち仕上がったコーティングの所望の厚さよりも薄い厚さを有する層)によって被覆される。被覆後、バールはパルスレーザ照射に曝露される。好適には、これは~0.1-1J/cm2のフルエンスを有するDUV/エキシマレーザ又はアブレーション閾値の~0.5-50%のフラッシュ毎フルエンスを有するfs/psレーザである。これは、
図5Aに示されるように、バールの遠位端面に種ナノダイヤモンド225を作り出す。この種が生じた基板は、その後、
図5Bに示されるように、ダイヤモンド結晶を成長させて所望の厚さのコーティング226を作り出すために用いることができる。この成長ステップは、例えば中温強化CVD成長を用いていてもよく、既存のナノダイヤモンド種上での優先成長につながる。
【0053】
[0052] コーティング層220の照射特性及び/又は初期厚さ及び/又は組成を調整することによって、ダイヤモンドの表面濃度、平均サイズ、及びサイズ分布といったシード処理(seeding)の特性を制御することができる。そして、これにより、仕上がったダイヤモンドコーティングの制御が可能となり、上記した第1の実施形態と同様、摩擦係数、接触面積、及び摩耗速度などの巨視的特性を調節するように特性をバール間で又は全体的に調整又は調節することができる。
【0054】
[0053] ダイヤモンド種はバールの遠位端面の照射があるところにのみ作り出されるので、バール間に種を作り出すことを回避できる。つまり、後続のダイヤモンド成長ステップは普遍的なダイヤモンドコーティングを形成しない(又はそのようなコーティングの形成が低減又は遅延される)ので、普遍的なダイヤモンドコーティングが適用されるときに経験される基板ホルダの追加的な応力及びそれに関連する反りを回避することができる。
【0055】
[0054]
図6は、本発明の一実施形態による方法が基板ホルダ上のバールを修復するためにどのように用いられ得るのかを概略的に示す。上述したように、基板ホルダのバールのうちいくつか、典型的にはウェーハエッジにあるものは、他の物よりもずっと早く摩耗する。したがって、そのようなバール上の既存のダイヤモンドコーティングは、厚さ(及び高さ)を当初のレベルに戻すために、定期的に厚さを追加するのが有益である。追加/修復プロセスはバール単位で対象とすることができるので、プロセスは摩耗したバールのみを処理するように用いることができ、したがって、かなり多くの時間がかかり且つ高価な、コーティングを剥がして再コーティングすることにより基板ホルダ全体を再生する必要を、回避することができる。
【0056】
[0055]
図6Aは基板ホルダ200の一部を示しており、外側のバール210’が使用を通じて摩耗して、コーティング層227の厚さzが取り去られている。修復を行うためには、
図6Bに示されるように、まず、炭素の層228が、修復されるべきバール210’を含む少なくともいくつかのバール210上に、非晶質黒鉛として蒸着又はスパッタリングを介して堆積される。理想的には、黒鉛の層228は厚さがzに一致するか又はzを超えるべきである。このプロセスはSEM/TEM試料作製に類似しており、nm規模での厚さ制御が可能である。
【0057】
[0056] 表面コーティングが修復されるべき選択された1又は複数のバール210’は、次に(先の実施形態において概ね説明した手法で)レーザ照射に曝露され、1又は複数のバール210’上の黒鉛層がダイヤモンドに変換されて、
図6Cに示すようにダイヤモンドの追加層229を形成する。
【0058】
[0057] 基板ホルダはその後、(例えば水素ラジカル生成装置からの)原子状水素又は酸化性選択エッチング液(oxidizing selective etchant)に曝露され、これが残りの黒鉛228を、レーザに曝露されておらず未処理のままのエリアから除去する。代替的には、基板ホルダは、残りの黒鉛を除去するためにCMP(化学機械研磨)されてもよい。バールの(新旧両方の)ダイヤモンドコーティングは、ほとんど又は完全にこれに影響されないので、
図6Dに示されるように、バール210’は、基板ホルダの残りの部分又は他のバールに対して顕著な影響なく修復される。
【0059】
[0058] 本発明の更なる実施形態においては、他の方法によって既に高sp3DLCコーティングを適用された基板ホルダsを改良することができる。(本発明のもの以外の方法によって作製された)既存の基板ホルダsの高sp3含有量DLCコーティングは、良好な機械的特性を示し得るが、摩擦及び/又は接触箇所の点で劣ると考えられる。これは、コーティングが基板ホルダの目の粗い本体に共形的でありすぎるため、又はコーティングが結晶相と非晶質相との混合を含むためであろう。したがって、これらのコーティングは、先の実施形態におけるもののように既存のコーティングを選択的に照射してナノ又はマイクロダイヤモンドへと再結晶化するための方法を適用することによって、改良することができる。
【0060】
[0059] (約10~100eVでの注入を伴う)高エネルギイオン堆積を介して適用された他のTa-Cコーティングは、非常に高い圧縮応力を有する傾向があり、したがって壊れやすく脆いおそれがある。これを回避するために、そのようなコーティングは、ある程度の弛緩を可能にするために、sp2が豊富な位相を有する層構造において適用されることが多い。しかしながら、先の実施形態において説明したような選択的なレーザ照射は、そのような構造を弛緩させる代替的な手法を提供することができ、ひいては、そのような材料の特性にとって有害なsp2位相を導入する必要を回避することができる。
【0061】
[0060]
図7Aは、イオン注入によってバールの遠位端面に適用されたTa-Cコーティング230を有するバール210を示す。バールは次いでレーザ照射に曝される。これには2つの効果がある。第一に、再結晶化がコーティング内にマイクロダイヤモンド及びナノダイヤモンド231を形成させて耐摩耗性の向上及び/又は摩擦もしくは接触箇所の減少をもたらす。第二に、コーティング230の非結晶化部分が弛緩され得ると共にこれらのエリアにおける応力が低減されて、コーティング付着を向上させることができる。
【0062】
[0061] 上述の実施形態と同様、そのような再結晶化の一般的な利点に加えて、コーティング230のトポロジー及び/又は結晶化度を制御することが可能であると共に、異なるバール又はバールの群のパラメータを調整して、例えばそれらの摩擦係数又は接触箇所を調節することも可能である。
【0063】
[0062] 本発明の更なる実施形態においては、バール上のコーティング層の選択的レーザ照射は、ナノ波及びマイクロ構造などといったバール上の局所的な構造物を提供するために用いられ得る。これは、所望のバール-基板接触圧及び/又は摩擦係数を達成するための、バールの遠位端面に対するより多大な制御を可能にする。また、空洞を作り出すことで、基板の背面から到来する汚染を吸収するための自由空間が残される。
【0064】
[0063] 本発明の更なる実施形態においては、クリーニングプロセスが実施された後で表面を再生することによってバール表面を補正するために、レーザ誘起位相変換が用いられてもよい。クリーニングは、硬質コーティングの頂部を化学的に変化させ得る(例えばより安定的でない位相を導入する)又は機械的に変化させ得る(例えばナノクラック又は空隙を作り出す)。その後、レーザ照射がそのような変化を保存することができる。なぜなら、溶解及び再固化が欠陥を除去する傾向があるからである。DLC又はダイヤモンドコーティングの場合、クリーニングプロセスは、(例えばDUVレーザによってレーザ誘起され得る)酸化によりバールの遠位端面から材料を部分的に除去し、次に燃焼の前にダイヤモンド表面が変換してなるグラフェン/黒鉛の頂部にある灰及び埃を除去するべく研磨し、次に黒鉛をダイヤモンドに再び変換するために修復する(任意選択的にはその変換に先立って更なる黒鉛を追加するための中間ステップを有する)、というシーケンスであってもよい。代替的には、これは真空中でのデブリの熱剥離によるものであってもよく、その際、(下にある溶解していないダイヤモンドから)ダイヤモンドへの副次的な溶解/固化が埃を押し出し得る。
【0065】
[0064] 本発明の更なる実施形態においては、上記の実施形態との関連で説明されたものと類似のプロセスを用いて、DLC又は黒鉛によって被覆された平坦な基板ホルダ上にバール自体を作り出してもよい。
図8は1つのそのようなプロセスにおけるステップを示す。
【0066】
[0065] まず、
図8Aに示すように、黒鉛(又はa-DLC)層231が本体201上に形成される。これが、先に説明したようなレーザ照射を介して選択的且つ局所的にダイヤモンド(又はより高いsp3DLC)に変換され、バール210を形成する(
図8B)。プロセスは、黒鉛の更なる層を適用すること(
図8C)及びこれらの層を更に局所化された照射で処理してバールを成長させること(
図8D)によってバール210を成長させるべく、段階的に繰り返されてもよい。成長ステップの最後には、余分な黒鉛がH*曝露(又は酸化又は他の選択的エッチングプロセス)を介して除去されて、基板ホルダに複数のダイヤモンドバール210を残す(
図8E)。
【0067】
[0066] バールを成長させることに対するこうした段階的なアプローチは、先の層における応力のほとんどが後続の層が適用される前に再結晶化を介して除去されるので、事実上無応力である。照射が新しい層の全厚に影響するので、他のプロセスによって作製されるものよりも均一なバールを作り出すこともできる。
【0068】
[0067] レーザ特性を調整することによって、バール内(特に最終層)に特定のプロファイル又は結晶化度がもたらされ得る。また、レーザ特性及び/又は初期黒鉛層231の厚さを調整することによって、本体201との界面を、第1のレーザ処理ステップにおいて、レーザ誘起相互拡散の結果として強化することができる。
【0069】
[0068]
図9は代替的なプロセスにおけるステップを示し、Ta-C(又は、より好適でないが、DLC又は黒鉛)コーティングが、将来のバールの所望の位置に対応する穴233を備える犠牲マスク232を通じて、基板ホルダの本体201に適用される(
図9A)。穴233内に堆積されたコーティングは、バールの密度又は結晶化度、最終的な高さの一部を一度に変更するべく、定期的にレーザで処理される。犠牲マスクは、少なくとも所望のバール高さと同じ厚さである。犠牲マスクは、(ターゲットに入射するエネルギイオンに基づいた)Ta-Cの適用の際に副次的にスパッタリングされ得る異質な物質によって成長するバールが汚染されるのを回避するために、好適には炭素(黒鉛)系であるかもしくは炭素(黒鉛)によって被覆され、又はポリマ系である。
【0070】
[0069] (例えばTa-Cを適用するための方法として)基板バイアスによるレーザアブレーション及び/又は(例えばDLCを適用するための方法として)強化CVD/PVD又は(黒鉛を適用するための方法として)蒸着を用いることによって、バール210は穴233内で成長し、最終的な高さの一部が、再結晶化(
図9B及び9C及び9D)及びダイヤモンド形成を誘起するために、(先の実施形態で説明したように)バールのみに向けられた非常に局所的なレーザ照射で一度に且つ定期的に照射される。こうした段階的な成長は、応力を緩和すると共に、バール210上に成長する結晶を強化する。バールは、堆積/照射の反復プロセスにおいて成長する。マスクとバールとの間に機械的に弱い接合(mechanically weak transition)を提供して以降のマスク除去を容易にするために、照射される領域は穴233よりも小さくてもよい。
【0071】
[0070] 最終的なステップにおいては、残りの犠牲マスクが除去され、仕上がったバール間の付着を低減させ/弱めるために、任意選択的には選択的エッチング(H*又は酸化プラズマ)又は化学機械研磨を提供される。バール210は、選択性を更に向上させるように及び仕上がった基板ホルダに到達するように、エッチングの間、除去可能なパターン層によって保護されてもよい(
図9E)。
【0072】
[0071] 本発明の更なる実施形態においては、基板及びレチクルのクランプを生み出すために、上記の実施形態において説明したものと類似の方法を用いることができる。これらのコンポーネントに関しては、ガラスセラミックスが関与するので、プロセス温度の制御が更に重要となる。
【0073】
[0072] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板プロセスツールに適用することができる。更に基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0074】
[0073] 以上では光リソグラフィに関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は他の用途に使用できることを理解されたい。
【0075】
[0074] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。
【0076】
[0075] 上記の説明は例示的であり、限定的ではない。したがって、請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。