(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-21
(45)【発行日】2023-08-29
(54)【発明の名称】樹脂フィルムの繰出し方法
(51)【国際特許分類】
B65H 16/00 20060101AFI20230822BHJP
【FI】
B65H16/00
(21)【出願番号】P 2022123410
(22)【出願日】2022-08-02
(62)【分割の表示】P 2018033582の分割
【原出願日】2018-02-27
【審査請求日】2022-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉野 裕亮
(72)【発明者】
【氏名】藤木 新也
【審査官】大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-147657(JP,A)
【文献】実公昭39-30405(JP,Y1)
【文献】特開昭62-185659(JP,A)
【文献】特開2002-187657(JP,A)
【文献】特開2015-224086(JP,A)
【文献】特開昭49-63560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 16/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出す方法であって、
前記樹脂フィルムロールを設置する設置工程、および
前記樹脂フィルムロール内側の巻始め側から、引出し角度が3~25度となるように前記樹脂フィルムを引出す引出工程
を含
む、繰出し方法。
【請求項2】
前記設置工程において、樹脂フィルムロールを、ロール中心軸と水平方向とがなす角度のうち小さい方の角度が0~90度となるように設置する、請求項1に記載の繰出し方法。
【請求項3】
前記引出工程において、樹脂フィルムの繰出速度は1m/分以上である、請求項1または2に記載の繰出し方法。
【請求項4】
前記樹脂フィルムロールの直径は、100~1000mmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の繰出し方法。
【請求項5】
前記樹脂フィルムの厚みは、1~500μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の繰出し方法。
【請求項6】
前記樹脂フィルムの幅は、10~2000mmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の繰出し方法。
【請求項7】
前記設置工程において、樹脂フィルムロールを2以上設置する、請求項1~6のいずれか1項に記載の繰出し方法。
【請求項8】
引出した樹脂フィルムを支持する支持工程を更に含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の繰出し方法。
【請求項9】
前記支持工程において、1周以上ねじられた樹脂フィルムを通過させる、請求項8に記載の繰出し方法。
【請求項10】
ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出すための繰出し装置であって、
前記樹脂フィルムロールを設置するための設置手段、および
前記樹脂フィルムロールの巻始め側から、引出し角度が3~25度となるように前記樹脂フィルムを引出すための引出手段
を備
える、繰出し装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルムの繰出し方法および繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂フィルムがロール状に巻回された樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出す方法として、例えば樹脂フィルムロールの中心にシャフトを通すか、または樹脂フィルムロールが筒状の巻芯(コア)を有する場合には巻芯にシャフトを通し、樹脂フィルムロールの外側から樹脂フィルムを連続的に巻出す方法が知られている。
【0003】
特許文献1には、フィルム状物の粉砕装置において、縦置きしたフィルムロールからフィルムを巻出す方法が提案されている。
【0004】
特許文献2には、ロール製品の中央からシート材を取出すディスペンサが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭61-97051号公報
【文献】特表2001-519188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の樹脂フィルムロールの中心にシャフトを通すか、または巻芯を有する場合には巻芯にシャフトを通して樹脂フィルムロールを巻出す方法(以下、シャフト巻出し法ともいう)では、樹脂フィルムまたは巻芯とシャフトとの擦れによる発塵が問題となる。
【0007】
また、例えば樹脂フィルムロールのリサイクル処理等においては、樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを巻出さずに樹脂フィルムロールそのものを処理機に一括投入する方法が知られている。しかしながら、この場合、処理機への投入口を広くする必要があり、処理機へ異物が混入し易くなることが問題となる。
【0008】
特許文献1に記載の方法では、フィルムをフィルムロールの外側から巻出す際に、フィルムがフィルムロールのエッジに引っ掛かり、フィルムの破断が起こり易いといった問題がある。
【0009】
特許文献2に記載のディスペンサから取出されるのは枚葉のシート材であり、長尺のロール状樹脂フィルムから連続的に樹脂フィルムを繰出すことについては検討されていない。
【0010】
本発明は、樹脂フィルムの巻出しの際に発塵することなく、樹脂フィルムの破断が抑制され、処理機への異物混入が起こりにくい樹脂フィルムの繰出し方法を提供することを目的とする。本発明の別の目的は、厚みの薄い樹脂フィルムを破断させることなく樹脂フィルムロールから高速に繰出すことのできる繰出し方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下に示す樹脂フィルムの繰出し方法および繰出し装置を提供する。
[1] ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出す方法であって、
前記樹脂フィルムロールを設置する設置工程、および
前記樹脂フィルムを、樹脂フィルムロール内側の巻始め側から引出す引出工程
を含む、繰出し方法。
[2] 前記設置工程において、樹脂フィルムロールを、ロール中心軸と水平方向とがなす角度のうち小さい方の角度が0~90度となるように設置する、[1]に記載の繰出し方法。
[3] 前記引出工程において、引出し角度が0~30度となるように樹脂フィルムを引出す、[2]に記載の繰出し方法。
[4] 前記引出工程において、樹脂フィルムを引出す速度は1m/分以上である、[1]~[3]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[5] 前記樹脂フィルムロールの直径は、100~1000mmである、[1]~[4]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[6] 前記樹脂フィルムの厚みは、1~500μmである、[1]~[5]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[7] 前記樹脂フィルムの幅は、10~2000mmである、[1]~[6]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[8] 前記設置工程において、樹脂フィルムロールを2以上設置する、[1]~[7]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[9] 引出した樹脂フィルムを支持する支持工程を更に含む、[1]~[8]のいずれか1つに記載の繰出し方法。
[10] 前記支持工程において、1周以上ねじられた樹脂フィルムを通過させる、[9]に記載の繰出し方法。
[11] ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出すための繰出し装置であって、
前記樹脂フィルムロールを設置するための設置手段、および
前記樹脂フィルムを、樹脂フィルムロールの巻始め側から引出すための引出手段
を備える、繰出し装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発塵することなく、樹脂フィルムの破断を抑制し、処理機への異物混入を起こさずに樹脂フィルムを繰出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、樹脂フィルムの引出し角度を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一態様に係る繰出し装置を概略的に示す側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一態様に係る繰出し装置を概略的に示す上面図である。
【
図4】
図4は、ロール中心軸角度を説明するための概略図である。
【
図5】
図5は、樹脂フィルムの引出し角度の算出方法を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<繰出し方法>
本発明の一態様に係る繰出し方法は、ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出す方法であって、前記樹脂フィルムロールを設置する設置工程(以下、設置工程ともいう)、および前記樹脂フィルムを、樹脂フィルムロール内側の巻始め側から引出す引出工程(以下、引出工程ともいう)を含む。繰出すとは、樹脂フィルムを連続的にまたは断続的に樹脂フィルムロールから引出すことをいう。
【0015】
繰出し方法は、特別な装置、例えばシャフト巻出し法における巻出装置等を用いずに行うことができる。
【0016】
(樹脂フィルムロール)
樹脂フィルムロールは、長尺の樹脂フィルムがロール状に巻回されたものである。樹脂フィルムロールは、巻芯を有さない樹脂フィルムロールが好ましい。巻芯を有さない樹脂フィルムロールを用いる場合、樹脂フィルムロールの内側から樹脂フィルムを繰出し易くなる。
【0017】
巻芯を有さない樹脂フィルムロールは、公知の種々の方法により製造してよく、例えば長尺の樹脂フィルムをシャフトに巻取ってロール状とし、次にロール状に巻取られた樹脂フィルムをシャフトから取外す方法等により製造することができる。
【0018】
樹脂フィルムロールの外形は特に限定されず、巻取りに用いるシャフトの幅方向における断面形状に応じて形成される形状であってよい。シャフトの形状は特に制限されないが、例えば円形、三角形や四角形等の多角形、または十字形等であってよく、好ましくは円形である。
【0019】
樹脂フィルムをロール状に巻取る際の樹脂フィルムに掛かる張力は、例えば10~800N/mであってよく、好ましくは30~600N/mであり、より好ましくは50~400N/mである。樹脂フィルムをロール状に巻取る際の樹脂フィルムに掛かる張力が10~800N/mである場合、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなり、および樹脂フィルムが適度な力で巻取られるため樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出し易くなると共に樹脂フィルムロールがロール状を維持し易くなる傾向にある。
【0020】
樹脂フィルムをロール状に巻取る際の樹脂フィルムの巻取速度は、例えば1~150m/分であってよく、好ましくは10~120m/分であり、より好ましくは20~100m/分である。樹脂フィルムをロール状に巻取る際の樹脂フィルムの巻取速度が1~150m/分である場合、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなる傾向にある。
【0021】
樹脂フィルムロールの直径は特に限定されないが、例えば100~1000mmであってよく、好ましくは200~800mmである。樹脂フィルムロールの直径が100~1000mmである場合、樹脂フィルムロールの重さおよび地面との接地面積が適度なものとなるため、樹脂フィルムロールを設置工程においてロール中心軸が鉛直方向になるように縦に設置し易くなり、および引出工程において、後述する引出し角度が余りに大きくなるのを抑制し易い傾向にある。
【0022】
樹脂フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば1~500μmであってよく、好ましくは10~300μmである。樹脂フィルムの厚みが1~500μmである場合、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなり、樹脂フィルムの柔軟性が確保されるため繰出し易くなる傾向にある。
【0023】
樹脂フィルムロールは、30~50000mの長さが巻取られたものであってよく、好ましくは50~10000mの長さが巻取られたものであってよい。樹脂フィルムロールが、厚みが50μmである樹脂フィルムが30~50000mの長さで巻取られたものである場合、樹脂フィルムロールの重さおよび直径が適度なものとなり、樹脂フィルムロールが取扱い性に優れたものとなり易い傾向にある。
【0024】
樹脂フィルムの幅は特に限定されないが、例えば10~2000mmであってよく、好ましくは100~1000mmである。樹脂フィルムの幅が10~2000mmである場合、樹脂フィルムロール内側の巻始め側から樹脂フィルムを引出し易くなる傾向にある。
【0025】
樹脂フィルムを構成する樹脂としては特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等が挙げられる。「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂およびメタクリル系樹脂よりなる群から選ばれる少なくとも1種を表す。
【0026】
樹脂フィルムロールの重量は、例えば樹脂フィルムの幅が500mmである場合、1~1000kgであってよく、好ましくは10~100kgである。樹脂フィルムロールの重量が1~1000kgである場合、樹脂フィルムロールの取扱い性が良好なものとなると共に、樹脂フィルムを繰出す際に樹脂フィルムロールが動き難くなり、繰出しが安定して行える傾向にある。
【0027】
(設置工程)
樹脂フィルムロールは、樹脂フィルムを樹脂フィルムロール内側の巻始め側から繰出すことができる限り、特に制限されずに設置してよい。例えば、樹脂フィルムロールを水平またはほぼ水平な地面、台または棚等の上に縦置きまたは横置きしてもよく、あるいは斜めに設置した台または棚等の上に横置きまたは縦置きしてもよい。
【0028】
樹脂フィルムロールは、ロール中心軸と水平方向とがなす角度のうち小さい方の角度(以下、ロール中心軸角度ともいう)が例えば0~90度となるように設置してよく、好ましくは0~+90度または0~-90度となるように設置する。正の値のロール中心軸角度は、水平方向より上向きの角度を意味する。また、負の値のロール中心軸角度は、水平方向より下向きの角度を意味する。
【0029】
引出工程において樹脂フィルムを樹脂フィルムロール上方へ繰出す場合、樹脂フィルムロールは、ロール中心軸角度が0~+90度となるように設置することができる。樹脂フィルムを樹脂フィルムロール上方へ繰出す場合、樹脂フィルムロールは、ロール中心軸角度が好ましくは+30~+90度、より好ましくは+45~+90度、さらに好ましくは+60~+90度、特に好ましくは+80~+90度となるように設置する。ロール中心軸の角度は、後述する実施例に記載の測定方法に従って測定することができる。
【0030】
ロール中心軸は、樹脂フィルムロールを形成する際の樹脂フィルムロールの回転軸である。
図1に、樹脂フィルムロール10のロール中心軸11を示す。
【0031】
引出工程において樹脂フィルムを樹脂フィルムロール下方へ繰出す場合、樹脂フィルムロールは、ロール中心軸角度が0~-90度となるように設置することができる。樹脂フィルムを樹脂フィルムロール下方へ繰出す場合、樹脂フィルムロールは、ロール中心軸角度が好ましくは-30~-90度、より好ましくは-45~-90度、さらに好ましくは-60~-90度、特に好ましくは-80~-90度となるように設置する。
【0032】
ロール中心軸の水平方向に対する角度が90度または-90度に近いほど、樹脂フィルムが繰出され、樹脂フィルムロールにおいて樹脂フィルムが重なった部分の厚みが小さくなった場合でも、樹脂フィルムロールが潰れ難くなり、樹脂フィルムを安定的に繰出せる傾向にある。
【0033】
樹脂フィルムを樹脂フィルムロール上方へ繰出すかまたは樹脂フィルムロール下方へ繰出すかは、例えば樹脂フィルムを繰出した後に樹脂フィルムを処理するための任意の処理装置の投入口の高さに応じて決定してよい。例えば処理装置の投入口の高さが樹脂フィルムロールより高い位置にある場合、樹脂フィルムは、樹脂フィルムロール上方へ繰出すのが好ましい。
【0034】
樹脂フィルムロールは単独で設置することができる。あるいは樹脂フィルムの単位時間当たりの繰出し量を多くすることを目的として、樹脂フィルムロールを例えば2以上設置することができる。樹脂フィルムロールを2以上設置する場合、樹脂フィルムロールを、好ましくは2~60、より好ましくは5~50、さらに好ましくは10~40設置する。
【0035】
樹脂フィルムロールを2以上設置する場合、樹脂フィルムロールの配置パターンは特に制限されず、例えば正方格子状、斜方格子状、矩形格子状、スリット状、列状等に配置してよく、あるいはランダムに配置してもよい。樹脂フィルムロールを2以上設置する場合、2以上の樹脂フィルムロールは互いに接触させてもよいし、一定の間隔を設けて設置してもよい。
【0036】
樹脂フィルムロールを2以上設置する場合、最も離れた2つの樹脂フィルムロール間の間隔は、例えば10cm~10mであってよく、好ましくは50cm~2mである。2以上の樹脂フィルムロールを上記範囲内に設置する場合、後述する引出し角度を小さくし易い傾向にある。
【0037】
樹脂フィルムロールを設置する場所は、樹脂フィルムロールおよび繰出す樹脂フィルムが汚染されにくい場所であれば特に限定されず、例えば室内やクリーンルーム等であってよい。また、樹脂フィルムロールを設置する場所の温度および湿度が一定に保たれている場合、樹脂フィルムの伸びや滑りが一定のものとなり、樹脂フィルムを安定して繰出し易くなる傾向にある。樹脂フィルムロールを設置する場所の温度および湿度はそれぞれ、例えば20~30℃および45~75%に維持することができる。
【0038】
樹脂フィルムロール上方へと樹脂フィルムを繰出す場合、例えば水平な台を設けて、その上に樹脂フィルムロールを設置することができる。設ける台は、木、プラスチック、ステンレスやアルミニウム等の金属でできたものであってよい。このような台は複数設けてもよい。また、樹脂フィルムロールを積載したパレットを樹脂フィルムの繰出を行う場所に運び、パレット上に積載した樹脂フィルムロールから樹脂フィルムを繰出すこともできる。
【0039】
(引出工程)
引出工程において、樹脂フィルムを設置した樹脂フィルムロール内側の巻始め側から引出す。樹脂フィルムを引出す方法としては特に限定されないが、好ましくは樹脂フィルムを連続的にまたは断続的に引出す方法等が挙げられる。樹脂フィルムを連続的にまたは断続的に引出す方法としては、特に限定されず、例えばニップロール間に樹脂フィルムを挟み、ニップロールの回転により樹脂フィルムを引出す方法、樹脂フィルム端部を巻取ロールに巻付け、巻取ロールを回転させることにより樹脂フィルムを引出す方法等が挙げられる。
【0040】
樹脂フィルムを設置した樹脂フィルムロール内側の巻始め側から繰出すため、樹脂フィルムロールを回転させる必要がない。その結果、樹脂フィルムロールを回転させるためのシャフトが不要となり、樹脂フィルムとシャフトとの擦れによる発塵が抑制されることとなる。また、樹脂フィルムに対する張力を低くすることが可能となり、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなる傾向にある。
【0041】
樹脂フィルムは、引出し角度が0~30度となるようにして繰出すことが好ましい。引出し角度とは、樹脂フィルムロールのロール中心軸と樹脂フィルムの引出し方向とがなす角度をいう。
図1に示す通り、引出し角度14は、樹脂フィルムロール10の中心軸11と樹脂フィルム12の引出し方向13とがなす角度である。樹脂フィルムの引出し方向は、樹脂フィルムロールから引出された樹脂フィルムの進行方向をいう。引出し方向は、例えば、繰出し方法が支持工程を含む場合、引出された樹脂フィルムと樹脂フィルムロール内側のエッジ部との接触点から、樹脂フィルムと後述する支持工程における支持装置等との最初の接触点へ向かう方向であってよい。引出し角度は、後述する実施例における測定方法に従って測定することができる。
【0042】
引出し角度が0~30度である場合、樹脂フィルムが繰出される際に樹脂フィルムロール内側のエッジ部に引掛かりにくくなり、樹脂フィルムのエッジ部での破断が抑制され、樹脂フィルムが滑らかに、かつ高速に繰出される傾向にある。また、引出し角度が0~30度である場合、樹脂フィルムとエッジ部とが接触する際に生じる摩擦力が低下し、樹脂フィルムを繰出す速度を向上させ易くなる傾向にある。
【0043】
樹脂フィルムロールを2以上設置する場合、各樹脂フィルムロールは、引出し角度が0~30度となるように設置することが好ましい。
【0044】
好ましい実施態様では、樹脂フィルムの引出し角度は、より好ましくは0~20度であり、さらに好ましくは0~15度であり、特に好ましくは0~10度である。樹脂フィルムの引出し角度が0度に近づくほど、樹脂フィルムが樹脂フィルムロール内側のエッジ部に引掛かるのが抑制され易くなり、樹脂フィルムを繰出す速度を向上させ易くなる傾向にある。
【0045】
好ましい別の実施態様では、引出した樹脂フィルムを任意の処理装置へ搬送する場合、樹脂フィルムの引出し角度は、より好ましくは3~25度であり、さらに好ましくは5~20度であり、特に好ましくは7~15度である。樹脂フィルムの引出し角度が3~25度の範囲内である場合、樹脂フィルムを破断させることなく処理装置へ高速に搬送し易くなる傾向にある。
【0046】
樹脂フィルムを繰出す角度を0~30度とする方法としては、例えば後述する支持工程において、引出した樹脂フィルムを、樹脂フィルムロールを設置した位置より高い位置に設置したガイドにより支持する方法等が挙げられる。支持工程については後に詳しく説明する。
【0047】
本発明の一態様に係る繰出し方法によれば、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなるため、従来のシャフト繰出法に比べ処理能力、例えば樹脂フィルムの繰出速度等を向上させ易くなる傾向にある。樹脂フィルムの繰出速度は、例えば1m/分以上であってよく、好ましくは5m/分以上であり、より好ましくは10m/分以上である。一方、樹脂フィルムの繰出速度は、例えば100m/分以下であってよく、好ましくは60m/分以下、より好ましくは40m/分以下、さらに好ましくは30m/分以下である。樹脂フィルムの繰出速度が上記範囲内であれば、樹脂フィルムの破断が起こり難くなるとともに繰出能力が十分に得られ易くなる傾向にある。
【0048】
樹脂フィルムを繰出す際の樹脂フィルムに掛かる張力は、例えば1~500N/mであってよく、好ましくは50~200N/mである。樹脂フィルムを引出す際の樹脂フィルムに掛かる張力が1~500N/mである場合、樹脂フィルムの破断が抑制され易くなると共に樹脂フィルムの弛みを抑制し易くなる傾向にある。
【0049】
(支持工程)
繰出し方法は、引出工程によって引出された後の樹脂フィルムを支持する支持工程を更に含むことができる。繰出し方法が支持工程を含む場合、樹脂フィルムの引出し角度が安定し易くなる傾向にある。支持工程では、樹脂フィルムを支持するための支持装置を用いることができる。支持装置としては、樹脂フィルムを下から支えることができ、かつ樹脂フィルムの進行に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限されず、例えば樹脂フィルムを下から支える支持台や支持棒、またはフリーロール等の搬送装置であってよい。
【0050】
支持装置は、例えば、樹脂フィルムロールと、上述の樹脂フィルムを連続的または断続的に引出すのに用いるニップロールまたは巻取ロールとの間に設けることができる。
【0051】
樹脂フィルムを樹脂フィルムロール上方へ繰出す場合、支持装置は、樹脂フィルムロールを設置した位置より高い位置に設置することが好ましい。支持装置を、樹脂フィルムロールを設置した位置より高い位置に設置する場合、樹脂フィルムの引出し角度を小さくし易くなる傾向にある。
【0052】
<樹脂フィルムの繰出し装置>
図2は、本発明の一態様に係る樹脂フィルムの繰出し装置を模式的に示す。
図2に示す樹脂フィルムの繰出し装置20は、ロール状に巻回された樹脂フィルムからなる樹脂フィルムロール21から樹脂フィルム22を繰出すための繰出し装置であって、樹脂フィルムロール21を設置するための設置手段、および樹脂フィルム22を、樹脂フィルムロール21の巻始め側から引出すための引出手段を備える。
【0053】
樹脂フィルムロール21は、上述の樹脂フィルムの繰出し方法において例示した製造方法で製造されたものであってよく、直径、幅、重量、樹脂フィルム22の材質、厚み、長さ等についても上で例示したものを適用することができる。
【0054】
樹脂フィルムロール21は、設置手段により、樹脂フィルム22を樹脂フィルムロール21内側の巻始め側から繰出すことができるように設置される。設置手段としては、例えば、樹脂フィルムロール21を縦置き、横置きまたは斜めに設置できるような台または棚等であってよい。
【0055】
図2では、各樹脂フィルムロール21は、ロール中心軸24と水平方向とのなす角度が90度になるように設置されている。
図2に示す通り、樹脂フィルムロール21は、一定の間隔を設けて2以上を設置することができる。また、樹脂フィルムロール21は、間隔を空けずに密集させて2以上を設置してもよいし、単独で設置してもよい。樹脂フィルムロール21の設置数や配置パターン、最も離れた樹脂フィルムロール間の距離等は、上述の樹脂フィルムの繰出し方法において例示したものであってよい。
【0056】
図3は繰出し装置を概略的に示す上面図である。
図3に示す通り、樹脂フィルムロール21はそれぞれ一定の間隔を設けて格子状に設置することができる。
【0057】
図2では、設置手段は、樹脂フィルムロール21を設置する設置台23を備える。設置台23は、樹脂フィルムロール21を運搬するのに用いるパレットであってもよい。また、樹脂フィルムロール21を設置する場所は、樹脂フィルム22が汚染されないように屋内またはクリーンルーム内であってよく、温湿度が制御された場所であってもよい。
【0058】
引出手段においては、樹脂フィルム22は、ロール中心軸24と引出し方向25とがなす引出し角度26が0~30度となるように引出されることが好ましい。引出し角度26のより好ましい範囲、樹脂フィルム22の繰出速度および張力等は、上述の樹脂フィルムの繰出し方法において例示したものであってよい。
【0059】
引出手段としては、例えば樹脂フィルム22を樹脂フィルムロール21から連続的または断続的に引出す手段等が挙げられる。樹脂フィルム22を樹脂フィルムロール21から連続的または断続的に引出す手段の例としては、例えばニップロール、巻取ロール等が挙げられる。
【0060】
繰出し装置は、引出した樹脂フィルム22を支持するための支持手段を更に備えることができる。支持手段としては、上述の樹脂フィルムの繰出し方法において例示した樹脂フィルムを支持するための支持装置、例えば樹脂フィルムを下から支える支持台や支持棒、またはフリーロール等の搬送装置等であってよい。
【0061】
上述した樹脂フィルムの繰出し方法および装置は、例えば積層体の製造工程、樹脂フィルムの加工工程やリサイクル工程等において用いることができる。
【0062】
本発明の一態様に係る繰出し方法によれば、破断し易い樹脂フィルム、例えば引張強度が2.5×106N/m2~1.0×107N/m2である樹脂フィルムであっても、破断することなく高速に繰出すことができる。
【実施例】
【0063】
[ロール中心軸角度]
図4に示す通り、ロール中心軸角度101は、ロール中心軸11と水平面103とがなす角度のうち小さい方の角度である。ロール中心軸角度101は、90度と設置台のロール接地面102と水平面103とがなす角度104との差として求めた。
ロール中心軸角度=90度-設置台のロール接地面と水平面とがなす角度
角度104は、市販のアングルメーターを用いて測定した。
【0064】
[引出し角度]
引出し角度は、以下のように測定した。まず、
図5に示す引出方向13と水平面がなす角度111を下記式に従い求めた。
角度111=arctan(距離a112/距離b113)
角度111をロール中心軸角度101から引いた値を引出し角度14とした。
引出し角度14=ロール中心軸角度101-角度111
距離a112は、支持装置44から水平面103へ降ろした垂線に平行であり、距離b113は水平面103に平行である。
【0065】
[破断]
樹脂フィルムの破断の発生について以下の基準により評価した。
◎:破断が起こらない
○:破断が数回(1~5回)起こる
△:破断が繰返し(6~20回)起こる
×:破断が絶え間なく(21回以上)起こる
【0066】
[異物]
樹脂フィルムの繰出し装置での異物の発生、および処理器内部への異物の混入が起こるか評価を行った。
○:繰出し装置での異物の発生及び処理器内部への混入なし
×:繰出し装置での異物の発生又は処理器内部への混入あり
【0067】
実施例1
厚み40μmおよび幅500mmのトリアセチルセルロース(TAC)製樹脂フィルムを長さ500m巻回してロール状とした樹脂フィルムロール6本を、クリーンルーム内に設置したステンレス製の水平な台の上に樹脂フィルムロールを互いに接触させて、ロール中心軸角度が90度となるように設置した。各樹脂フィルムロールから引出した樹脂フィルムは、樹脂フィルムロール上に設置したガイドロール上を通過させた後、ガイドロールと同じ高さにあるニップロール間に挟み、ニップロールを回転させることにより繰出した。各樹脂フィルムロールのロール中心軸と樹脂フィルムの引出し方向とがなす引出し角度は全ての樹脂フィルムロールにおいて0度であった。各樹脂フィルムは破断することなく、30m/分の速度で繰出すことができ、約17分間で全ての樹脂フィルムロールから繰出すことができた。結果を表1に示す。
【0068】
実施例2
引出し角度を30度としたこと以外は、実施例1と同様にして樹脂フィルムを繰出した。各樹脂フィルムは破断することなく、25m/分の速度で繰出すことができ、約20分間で全ての樹脂フィルムロールから繰出すことができた。
【0069】
実施例3
引出し角度を60度としたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂フィルムを繰出した。樹脂フィルムは数回破断したため、その都度ニップロールへ挟み込み繰出しを継続した。全ての繰出しが完了するのに30分かかった。
【0070】
比較例1
樹脂フィルムをロールの外側から引出したこと以外は、実施例2と同様にして樹脂フィルムを繰出した。樹脂フィルムは破断を繰り返したため、その都度ニップロールへ挟み込み繰出しを継続した。90分で全ての樹脂フィルムロールを繰出すことができた。
【0071】
比較例2
樹脂フィルムをロールの外側から引出し、引出角度を60度としたこと以外は、実施例2と同様にして樹脂フィルムを繰出した。樹脂フィルムは絶えず破断し、繰出しができなかった。
【0072】
比較例3
厚み40μmおよび幅500mmのTAC製樹脂フィルムを長さ500m巻回してロール状とした樹脂フィルムロール1本を、ステンレス製シャフトを有する巻出装置に設置した。設置した樹脂フィルムロールは、ロール中心軸角度が0度であり、ロール中心にステンレス製シャフトを通して回転できるように設置した。樹脂フィルムロールから引出した樹脂フィルムは、実施例2と同様にして繰出した。樹脂フィルムの引出速度は25m/分であった。樹脂フィルムは破断することなく、20分間で全ての樹脂フィルムロールから繰出すことができた。また、樹脂フィルムロールとシャフトとの擦れにより発塵が観察された。
【0073】
比較例4
厚み40μmおよび幅500mmのTAC製樹脂フィルムを長さ500m巻回してロール状とした樹脂フィルムロール1本を、フィルムを繰出すことなく十分な間口を持った処理機へ一括投入した。処理後、フィルムおよび処理器内部には異物の付着が認められた。
【0074】
【符号の説明】
【0075】
10 樹脂フィルムロール、11 ロール中心軸、12 樹脂フィルム、13 引出し方向、14 引出し角度、20 繰出し装置、21 樹脂フィルムロール、22 樹脂フィルム、23 台、24 ロール中心軸、25 引出し方向、26 引出し角度、101 ロール中心軸角度、102 ロール接地面、103 水平面、104 水平面とロール接地面とがなす角度、111 引出方向と水平面とがなす角度、112 距離a、113 距離b、114 支持装置。