(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】波長変換部材、発光装置及び画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230823BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20230823BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20230823BHJP
C09K 11/64 20060101ALI20230823BHJP
C09K 11/66 20060101ALI20230823BHJP
C09K 11/67 20060101ALI20230823BHJP
C09K 11/74 20060101ALI20230823BHJP
H01L 33/48 20100101ALI20230823BHJP
H10K 50/844 20230101ALI20230823BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20230823BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/08 G
C09K11/08 J ZNM
C09K11/61
C09K11/64
C09K11/66
C09K11/67
C09K11/74
H01L33/48
H10K50/844
H10K59/38
(21)【出願番号】P 2021102683
(22)【出願日】2021-06-21
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】塩田 勇樹
(72)【発明者】
【氏名】山下 恵祥
(72)【発明者】
【氏名】細川 昌治
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 智一
(72)【発明者】
【氏名】山内 陽平
(72)【発明者】
【氏名】木島 直人
【審査官】内村 駿介
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-219748(JP,A)
【文献】特許第6441636(JP,B1)
【文献】特開2017-088876(JP,A)
【文献】特開2017-142486(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108461607(CN,A)
【文献】特開2021-040149(JP,A)
【文献】特開2020-167402(JP,A)
【文献】特開2020-107865(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H10K 50/844
H10K 59/38
C09K 11/08
C09K 11/61
C09K 11/64
C09K 11/67
C09K 11/66
C09K 11/74
H01L 33/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ化物蛍光体と、量子ドットと、界面活性剤と、樹脂と、を含む波長変換層を備え、
前記フッ化物蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有し、平均粒径が0.1μm以上10μm未満で、最大粒径が1μm以上18μm以下であり、前記最大粒径の前記平均粒径に対する比が1より大きいフッ化物粒子を含み、
前記量子ドットは、第1の結晶性ナノ粒子及び第2の結晶性ナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記第1の結晶性ナノ粒子は、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含むカチオンJと、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属Lと、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むアニオンXと、を含み、前記カチオンJのモル数を1とする場合に、金属Lのモル数が0.9以上1.1以下であり、アニオンXのモル数が2.7以上3.3以下である組成を有し、メジアン径が3nm以上15nm以下であり、波長450nmの光照射により波長510nm以上535nm以下に発光ピークを有する発光を示し、発光ピークの半値幅が10nm以上30nm以下であり、
前記第2の結晶性ナノ粒子は、カルコパイライト型の結晶構造を含み、発光ピークの半値幅が45nm以下である波長変換部材。
【請求項2】
前記フッ化物蛍光体は、前記フッ化物粒子の表面の少なくとも一部に、前記フッ化物粒子以外の無機物質が付着してなる請求項1に記載の波長変換部材。
【請求項3】
前記波長変換層は、前記フッ化物蛍光体の含有量に対する前記量子ドットの含有量の質量比率が、0.2%以上10%以下である請求項1又は2に記載の波長変換部材。
【請求項4】
前記波長変換層は、平均厚みが10μm以上100μm以下のシート状である請求項1から3のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項5】
温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が1g/m
2・day以下である2枚の基材に、前記波長変換層が挟持されてなる請求項1から4のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項6】
前記基材の外周部を包囲して前記波長変換層を封止する封止部をさらに備え、
前記封止部は、水蒸気透過率が1g/m
2・day以下である請求項5に記載の波長変換部材。
【請求項7】
前記波長変換層は、球状粒子をさらに含み、前記球状粒子は、メジアン径が10μm以上100μm以下であって、粒子径の変動係数(CV値)が6%以下である請求項1から6のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項8】
前記波長変換層は、ハニカム構造を有する多孔質膜の孔部に形成されてなる請求項1から7いずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項9】
前記波長変換層は、420nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光の照射により、CIE色度座標のx値が0.355以上0.595以下であり、y値が0.404以上0.639以下である光を放出する請求項1から8のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項10】
前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びGeの少なくとも一方を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下である請求項1から9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項11】
前記フッ化物粒子は、下記式(1)で表される組成を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の波長変換部材。
A
1
c[M
1
1-bMn
bF
d] (1)
(式(1)中、A
1は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M
1は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M
1
1-bMn
bF
d]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。)
【請求項12】
前記フッ化物粒子は、その組成に元素MとしてSi及びAlを含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、SiとAlとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であり、Alのモル数が0を超えて0.1以下である請求項1から9のいずれか1項に記載の波長変換部材。
【請求項13】
前記フッ化物粒子は、下記式(2)で表される組成を有する請求項1から9のいずれか1項又は請求項12に記載の波長変換部材。
A
2
f[M
2
1-eMn
eF
g] (2)
(式(2)中、A
2は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含む。M
2は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M
2
1-eMn
eF
g]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。)
【請求項14】
前記量子ドットは、下記式(3)で表される組成を有する結晶性ナノ粒子を含む請求項1から13のいずれか1項に記載の波長変換部材。
J
pL
qX
r (3)
(式(3)中、Jは、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。Lは、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含む。Xは、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含む。pは0.9から1.1の数を表し、qは0.9から1.1の数を表し、rは2.7から3.3の数を表す。)
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の波長変換部材と発光素子とを備える発光装置。
【請求項16】
請求項15に記載の発光装置を備え、CIE色度図上の色再現範囲の面積が、BT2020に規定される色再現範囲の面積の85%以上である表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換部材、発光装置及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発光素子と波長変換部材とを組み合わせた発光装置が、照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で利用されている。例えば、液晶表示装置のバックライト用途の発光装置に用いる波長変換部材が含む発光材料には、色純度が高いこと、すなわち発光ピークの半値幅が狭いことが求められる。例えば、発光ピークの半値幅の狭い赤色発光の蛍光体として、特許文献1には特定の組成を有するフッ化物蛍光体が開示されている。
【0003】
また、発光ピークの半値幅が狭い緑色の発光材料として、量子サイズ効果を発現するペロブスカイト型ナノ粒子(量子ドットとも呼ばれる)が知られている。量子サイズ効果とは、バルク粒子では連続とみなされる価電子帯と伝導帯のそれぞれのバンドが、粒径をナノサイズとしたときに離散的となり、粒径に応じてバンドギャップエネルギーが変化する現象を指す。例えば、特許文献2には、マトリックス、ペロブスカイト型ナノ粒子及び特定の添加剤を含む複合発光材料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-254933号公報
【文献】特表2018-522959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のフッ化物蛍光体を含むシート状の波長変換部材では、波長変換された発光色の発光面における均一性が不充分な場合があった。本開示の一態様は、シート状の波長変換部材における発光色の均一性に優れる波長変換部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第一態様は、フッ化物蛍光体と、量子ドットと、界面活性剤と、樹脂と、を含む波長変換層を備える波長変換部材である。フッ化物蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有し、平均粒径が0.1μm以上10μm未満で、最大粒径が1μm以上18μm以下であり、最大粒径の平均粒径に対する比が1より大きいフッ化物粒子を含む。量子ドットは、第1の結晶性ナノ粒子及び第2の結晶性ナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1の結晶性ナノ粒子は、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含むカチオンJと、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属Lと、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むアニオンXと、を含み、前記カチオンJのモル数を1とする場合に、金属Lのモル数が0.9以上1.1以下であり、アニオンXのモル数が2.7以上3.3以下である組成を有し、メジアン径が3nm以上15nm以下であり、波長450nmの光照射により波長510nm以上535nm以下に発光ピークを有する発光を示し、発光ピークの半値幅が10nm以上30nm以下である。第2の結晶性ナノ粒子は、カルコパイライト型の結晶構造を含み、発光ピークの半値幅が45nm以下である。
【0007】
第二態様は、第一態様の波長変換部材と発光素子とを備える発光装置である。第三態様は、第二態様の発光装置を備え、CIE色度図上の色再現範囲の面積が、BT2020に規定される色再現範囲の面積の85%以上である表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、シート状の波長変換部材における発光色の均一性に優れる波長変換部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】波長変換部材の一例を示す概略断面図である。
【
図2】液晶パネル及び発光装置の概略斜視図である。
【
図4】発光装置を含むバックライトユニットの概略分解斜視図である。
【
図5】フッ化物粒子の最大長の測定方法を説明する走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
【
図6】フッ化物粒子の最大長の測定方法を説明する拡大されたSEM画像である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、当該数値を任意に選択して組み合わせることが可能である。本明細書において、色名と色度座標との関係、光の波長範囲と単色光の色名との関係等は、JIS Z8110に従う。蛍光体及び発光素子の半値幅は、蛍光体及び発光素子の発光スペクトルにおいて、最大発光強度に対して発光強度が50%となる発光ピークの波長幅(半値全幅;FWHM)を意味する。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、波長変換部材、発光装置及び表示装置を例示するものであって、本発明は、以下に示す波長変換部材、発光装置及び表示装置に限定されない。
【0011】
波長変換部材
波長変換部材は、フッ化物蛍光体と、量子ドットと、界面活性剤と、樹脂と、を含む波長変換層を備える。フッ化物蛍光体は、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含み、前記アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であり、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であり、Fのモル数が5を超えて7未満である組成を有し、平均粒径が0.1μm以上10μm未満で、最大粒径が1μm以上18μm以下であり、最大粒径の平均粒径に対する比が1より大きいフッ化物粒子を含む。量子ドットは、第1の結晶性ナノ粒子及び第2の結晶性ナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第1の結晶性ナノ粒子は、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含むカチオンJと、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属Lと、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むアニオンXと、を含み、前記カチオンJのモル数を1とする場合に、金属Lのモル数が0.9以上1.1以下であり、アニオンXのモル数が2.7以上3.3以下である組成を有し、メジアン径が3nm以上15nm以下であり、波長450nmの光照射により波長510nm以上535nm以下に発光ピークを有する発光を示し、発光ピークの半値幅が10nm以上30nm以下である。第2の結晶性ナノ粒子は、カルコパイライト型の結晶構造を含み、発光ピークの半値幅が45nm以下である。
【0012】
波長変換層に含まれるフッ化物蛍光体の平均粒径が0.1μm以上10μm未満で、最大粒径が1μm以上18μm以下であり、最大粒径の平均粒径に対する比が1より大きいことで、シート状の波長変換部材の発光面における発光色の不均一性が抑制され、発光色が均一になる。これは例えば、波長変換層におけるフッ化物蛍光体の分布量の偏りが抑制されるためと考えることができる。
【0013】
フッ化物蛍光体が含むフッ化物粒子は、少なくともMnで賦活される蛍光性物質を含んでいればよく、Mnで賦活される蛍光性物質のみからなるものであってよい。Mnで賦活される蛍光性物質は、例えば主結晶相がK2SiF6結晶と同一の結晶構造であってよく、この結晶構造は粉末X線回折法により確認できる。フッ化物粒子の主結晶相がK2SiF6結晶と同一の結晶構造であることで、所望の発光ピーク波長が得られ、良好な輝度を達成することができる。フッ化物粒子は、主結晶相以外の結晶相の混入が抑制された単相であってよく、フッ化物蛍光体の特性に大きな影響がない限りにおいて、主結晶相以外の結晶相を含んでいてもよい。
【0014】
フッ化物蛍光体を構成するフッ化物粒子の平均粒径は、0.1μm以上10μm未満であってよく、好ましくは0.2μm以上、又は0.5μm以上であってよい。また、平均粒径は、好ましくは7μm以下、6μm以下、5μm以下、又は3μm以下であってよい。ここで、フッ化物粒子の平均粒径は、空気透過法であるFisher Sub Sieve Sizer法(FSSS法)によって得られるF.S.S.S.No.(Fisher Sub Sieve Sizer’s No.)を意味する。FSSS法による平均粒径は、例えば、Fisher Scientific社製 Fisher Sub-Sieve Sizer Model95を用いて測定される。なお、この方法により測定される平均粒径は、走査電子顕微鏡(SEM)画像から求められる平均粒径と良い相関があることが発明者らにより確認されている。ここでSEM画像から求められる平均粒径は、5kVの加速電圧にて、250倍乃至5000倍の倍率で、フッ化物粒子が1画像に約100個程度観察される複数のSEM画像を得た後に、各粒子の最小長と最大長を測定して両者を平均して粒径とし、粒子数1000個の粒径の算術平均を求めることで算出される。
【0015】
フッ化物粒子の平均粒径が10μm未満であれば、シート状の波長変換部材におけるフッ化物蛍光体の分布量の偏りを抑制することができ、分布量の偏りに起因する励起効率の変動が抑制されて発光色の色度変動が抑制される。また、波長変換部材が所望の発光特性を達成するのに要するフッ化物蛍光体の量を低減することができる。また、平均粒径が0.1μm以上であれば、シート状の波長変換部材を構成する樹脂に対するフッ化物蛍光体の分散性が向上し、フッ化物蛍光体をより均一に分布させることができる。これにより均一性の高いシート状の波長変換部材を容易に構成することができ、発光装置の光束がより向上する傾向がある。
【0016】
フッ化物粒子の最大粒径は、1μm以上18μm以下であってよく、好ましくは15μm以下、10μm以下、又は6μm以下であってよい。フッ化物粒子の最大粒径は、SEM画像において、以下のようにして測定される。5kVの加速電圧、250倍の倍率で、フッ化物蛍光体の粒子が約500個以上観察されるSEM画像を得る。この中から最大粒径を有すると推定される複数の粒子について、それぞれのさらに拡大されたSEM画像を得る。その時の倍率は、5000倍程度の倍率となる。予め校正されたSEM画像の縮尺から、これら複数の粒子における粒子の粒子長をそれぞれ測定する。測定される粒子の粒子長を比較して、最大の粒子長を有する粒子の粒子長をそのフッ化物粒子の最大粒径とする。なお、粒子の粒子長は、他の粒子から独立して存在すると観察される粒子において、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の内部を通過する線分のうち、最も長い線分の長さをその粒子の粒子長とする。ここで、「他の粒子から独立して存在すると観察される粒子」とは、その粒子が他の粒子と接着していないと判断される粒子を意味する。また、当該粒子が複数の1次粒子が凝集して形成される2次粒子の場合には、2次粒子としての粒子長を測定する。
【0017】
粒子の最大長の求め方を、図面を参照して説明する。
図5はフッ化物粒子の250倍のSEM画像の一例である。
図5のSEM画像の視野から、最大長を有すると推定される粒子として、白丸で示される粒子を選択する。選択された粒子のさらに拡大された画像をとして、5000倍のSEM画像を
図6に示す。
図6に示すように選択された粒子は複数の1次粒子からなる2次粒子となっている。
図6に示すように、この2次粒子の外周の二点を結ぶ最大長の線分としてフッ化物粒子の最大長が測定される。
【0018】
フッ化物粒子の最大粒径が18μm以下であると、シート状の波長変換部材を構成する樹脂に対するフッ化物蛍光体の分散性が向上する傾向がある。また、波長変換部材が含む他の蛍光性材料との混合状態がより均一になり、シート状の波長変換部材の面方向における色度変動、発光装置の照射面における色むら発生等が抑制される傾向がある。
【0019】
フッ化物粒子の最大粒径は、平均粒径よりも大きければよい。すなわち、最大粒径の平均粒径に対する比が1より大きければよく、好ましくは2以上、又は5以上であってよい。例えば、最大粒径の平均粒径に対する比が10以下であってよく、好ましくは8以下、7以下、又は6以下であってよい。
【0020】
フッ化物蛍光体の粒度分布は、例えば、輝度の向上の観点から、単一ピークの粒度分布を示してよい。フッ化物蛍光体の粒度分布は、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、体積基準の粒径分布において、小径側からの体積累積10%に対応する粒径をD10、体積累積90%に対応する粒径をD90とすると、D10に対するD90の比(D90/D10)が、10以下であってよい。
【0021】
フッ化物粒子はその組成に第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む元素Mと、アルカリ金属と、Mnと、Fと、を含んでいてよい。フッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Mnのモル数が0を超えて0.2未満であってよく、好ましくは0.01以上0.12以下であってよい。またフッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、元素Mのモル数が0.8を超えて1未満であってよく、好ましくは0.88以上0.99以下であってよい。フッ化物粒子の組成は、アルカリ金属のモル数を2とする場合に、Fのモル数が5を超えて7未満であってよく、好ましくは5.9以上6.1以下であってよい。フッ化物粒子の組成は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法によって測定することができる。
【0022】
フッ化物粒子の組成における元素Mは、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含む。第4族元素としては、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第13族元素としては、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、タリウム(Tl)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。第14族元素としては、炭素(C)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。元素Mは、少なくとも第14族元素の少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、より好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、元素Mは、少なくとも第13族元素の少なくとも1種と第14族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは少なくともAlとSi及びGeの少なくとも一方とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともAlとSiとを含んでいてよい。
【0023】
フッ化物粒子の組成におけるアルカリ金属は、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。またアルカリ金属は、少なくともカリウム(K)を含み、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するKのモル数の比は、例えば0.90以上であってよく、好ましくは0.95以上、又は0.97以上である。Kのモル数の比の上限は、例えば1又は0.995以下であってよい。フッ化物粒子の組成においては、アルカリ金属の一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。アルカリ金属の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるアルカリ金属の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0024】
フッ化物粒子の組成の一態様である第1組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはSi及びGeの少なくとも一方を含んでいてよく、さらに好ましくは少なくともSiを含んでいてよい。また、フッ化物粒子の第1組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとGeとMnの総モル数が0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。
【0025】
フッ化物粒子の第1組成は、下記式(1)で表される組成であってもよい。
A1
c[M1
1-bMnbFd] (1)
【0026】
式(1)中、A1は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでよい。M1は、少なくともSi及びGeの少なくとも一方を含み、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。bは0<b<0.2を満たし、cは[M1
1-bMnbFd]イオンの電荷の絶対値であり、dは5<d<7を満たす。
【0027】
式(1)におけるA1は、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。また、A1はその一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A1の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA1の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0028】
式(1)におけるbは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。cは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。dは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
【0029】
フッ化物粒子の組成の一態様である第2組成は、元素Mとして第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、好ましくは第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種と、第13族元素の少なくとも1種とを含んでいてよく、より好ましくは少なくともSi及びAlを含んでいてよい。また、フッ化物粒子の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、SiとAlとMnの総モル数が、0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下、又は0.97以上1.03以下であってよい。さらにフッ化物粒子の第2組成は、アルカリ金属のモル数2に対して、Alのモル数が0を超えて0.1以下であってよく、好ましくは0を超えて0.03以下、0.002以上0.02以下、又は0.003以上0.015以下であってよい。
【0030】
フッ化物粒子の第2組成は、下記式(2)で表される組成であってもよい。
A2
f[M2
1-eMneFg] (2)
【0031】
式(2)中、A2は、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。M2は、少なくともSi及びAlを含み、第4族元素、第13族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種の元素を更に含んでもよい。Mnは4価のMnイオンであってよい。eは0<e<0.2を満たし、fは[M2
1-eMneFg]イオンの電荷の絶対値であり、gは5<g<7を満たす。
【0032】
式(2)におけるにおけるA2は、少なくともKを含み、Li、Na、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種を更に含んでもよい。また、A2は、その一部がアンモニウムイオン(NH4
+)に置換されていてもよい。A2の一部がアンモニウムイオンに置換される場合、組成におけるA2の総モル数に対するアンモニウムイオンのモル数の比は、例えば0.10以下であってよく、好ましくは0.05以下、又は0.03以下である。アンモニウムイオンのモル数の比の下限は、例えば0を超えていてよく、好ましくは0.005以上であってよい。
【0033】
式(2)におけるeは、好ましくは0.005以上0.15以下、0.01以上0.12以下、又は0.015以上0.1以下である。fは、例えば1.8以上2.2以下であってよく、好ましくは1.9以上2.1以下、又は1.95以上2.05以下であってよい。gは好ましくは5.5以上6.5以下、5.9以上6.1以下、5.92以上6.05以下、又は5.95以上6.025以下であってよい。
【0034】
フッ化物蛍光体を構成するフッ化物粒子は、その表面の少なくとも一部に、フッ化物粒子以外の無機物質が付着していてもよい。フッ化物粒子の表面に無機物質を付着させることで、例えば、フッ化物蛍光体の樹脂への分散性が向上する傾向がある。またフッ化物蛍光体の耐湿性が向上する傾向がある。フッ化物粒子以外の無機物質としては、例えば、酸化物、金属塩、フッ化物、窒化物等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは酸化物及び金属塩からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。フッ化物粒子に付着する無機物質は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。無機物質として2種以上を組み合わせて用いる場合、無機物質の混合物がフッ化物粒子に付着していてもよいし、それぞれの無機物質を順次付着させて多層構成で付着していてもよい。
【0035】
酸化物は、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。すなわち、酸化物は、酸化ケイ素(例えば、SiOx、xは1以上2以下、好ましくは1.5以上2以下、又は約2であってよい)、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3)、酸化チタン(例えば、TiO2)、酸化ジルコニウム(例えば、ZrO2)、酸化スズ(例えば、SnO、SnO2など)及び酸化亜鉛(例えば、ZnO)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくとも酸化ケイ素を含んでいてよい。酸化物は1種のみからなっていてもよく、2種以上を含んでいてもよい。
【0036】
フッ化物蛍光体における酸化物の含有率は、フッ化物蛍光体に対して0.02質量%以上30質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上15質量%以下であってよい。フッ化物蛍光体における酸化物の含有率は、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析法により測定することができる。
【0037】
金属塩は、例えば希土類リン酸塩、アルカリ土類金属リン酸塩等を含んでいてよく、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。希土類リン酸塩は、ランタン(La)、セリウム(Ce)、ジスプロシウム(Dy)及びガドリニウム(Gd)からなる群から選択される少なくとも1種の希土類元素を含んでいてよく、好ましくは少なくともランタンを含んでいてよい。
【0038】
フッ化物蛍光体における金属塩の含有率は、金属元素の含有率として、例えば0.1質量%以上20質量%以下であってよく、好ましくは0.1質量%以上15質量%以下、又は0.2質量%以上10質量%以下であってよい。
【0039】
フッ化物粒子以外のフッ化物としては、例えば、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等の第2族元素を含むフッ化物、ヘキサフルオロケイ酸アルカリ金属塩等のフッ化ケイ素酸塩などを挙げることができる。
【0040】
フッ化物蛍光体におけるフッ化物粒子以外のフッ化物の含有率は、例えば0.1質量%以上15質量%以下であってよく、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、又は0.3質量%以上10質量%以下であってよい。
【0041】
フッ化物粒子の表面に付着する無機物質は、無機物質粒子として付着してフッ化物粒子の表面を覆っていてよい。また、無機物質はフッ化物粒子の表面を膜状に覆っていてもよく、無機物質膜としてフッ化物粒子の表面の少なくとも一部に配置されていてもよい。またフッ化物粒子の表面を覆う無機物質膜は、全く亀裂が存在しない状態に限定されることはなく、フッ化物粒子の表面を覆う無機物質膜の一部に亀裂が存在していてもよい。また、フッ化物粒子の表面を覆う無機物質膜は、その表面全体を完全に覆うことが好ましいものの、部分的に無機物質膜の一部が欠落してもよく、フッ化物粒子の表面の一部が露出していてもよい。フッ化物蛍光体におけるフッ化物粒子の無機物質による被覆率は、例えば、50%以上であってよく、好ましくは80%以上、又は90%以上であってよい。フッ化物粒子の無機物質による被覆率は、フッ化物粒子の表面積に対する無機物質によって覆われた領域の面積の比率として算出される。
【0042】
フッ化物蛍光体は、例えば、4価のマンガンイオンで賦活された蛍光体であり、可視光の短波長領域の光を吸収して赤色発光する。励起光は、主に青色領域の光であってよく、励起光のピーク波長は、例えば、380nm以上485nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける発光ピーク波長は、例えば、610nm以上650nm以下の波長範囲内であってよい。フッ化物蛍光体の発光スペクトルにおける半値幅は、例えば、10nm以下であってよい。
【0043】
波長変換層に含まれるフッ化物蛍光体は、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。波長変換層におけるフッ化物蛍光体の含有量は、波長変換部材が発する光の色度に応じて適宜調整すればよい。具体的には、例えば樹脂100質量部に対して、25質量部以上110質量部以下であってよく、好ましくは35質量部以上100質量部以下であってよい。
【0044】
フッ化物蛍光体の製造方法
フッ化物蛍光体を構成するフッ化物粒子は、例えば以下のようにして製造することができる。フッ化物粒子が第1組成を有する場合、例えば、4価のマンガンを含む第1錯イオン、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第2錯イオン、並びにフッ化水素を少なくとも含む溶液aと、少なくともカリウムを含むアルカリ金属及びフッ化水素を少なくとも含む溶液bとを混合する工程を含む製造方法で製造することができる。
【0045】
また、例えば、4価のマンガンを含む第1錯イオン及びフッ化水素を少なくとも含む第1溶液と、少なくともカリウムを含むアルカリ金属及びフッ化水素を少なくとも含む第2溶液と、第4族元素及び第14族元素からなる群から選択される少なくとも1種並びにフッ素イオンを含む第2錯イオンを少なくとも含む第3溶液とを混合する工程を含む製造方法で製造することもできる。第1組成を有するフッ化物粒子の製造方法については、例えば、特開2015-143318号公報、特開2015-188075号公報等を参照することができる。
【0046】
フッ化物粒子が第2組成を有する場合、例えば特開2010-254933号公報等に記載の製造方法で製造することができる。あるいは、第2組成を有するフッ化物粒子の製造方法として、例えば、特願2020-212532号明細書の記載を参照することができる。すなわち、第1組成を有するフッ化物粒子を準備することと、Alとアルカリ金属とFとを含むフッ化物粒子を準備することと、このフッ化物粒子及び第1組成を有するフッ化物粒子を含む混合物を不活性ガス雰囲気中で、600℃以上780℃以下の温度で熱処理することを含む製造方法で製造することができる。ここでAlとアルカリ金属とFとを含むフッ化物粒子の組成は、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が1以上3以下であり、Fのモル数の比が4以上6以下であってよい。あるいは、Alのモル数1に対して、アルカリ金属の総モル数の比が2以上3以下であり、Fのモル数の比が5以上6以下であってよい。
【0047】
フッ化物蛍光体の製造方法においては、フッ化物粒子の構成元素を溶解したフッ素含有の各反応液の濃度、滴下速度等の他の条件を制御することで、所望の平均粒径及び最大粒径を有するフッ化物粒子を析出させることができる。
【0048】
フッ化物蛍光体の製造方法は、フッ化物粒子の粒径を調整する調整工程を含んでいてもよい。調整工程は、例えばフッ化物粒子を粉砕して粉砕物を得ることを含んでいてよい。調整工程に供されるフッ化物粒子は、例えば平均粒径が5μm以上30μm以下であってよく、好ましくは7μm以上20μm以下であってよい。また、調整工程に供されるフッ化物粒子の最大粒径は、例えば10μm以上100μm以下であってよく、好ましくは15μm以上60μm以下であってよい。
【0049】
フッ化物粒子の粉砕方法は、ボールミル、ビーズミル、ジェットミル等の通常用いられる粉砕方法から適宜選択することができる。フッ化物粒子の粉砕方法は、湿式で行うことが好ましい。湿式で粉砕処理を行うことで、フッ化物蛍光体の輝度の低下を抑制しつつ、粒度分布を狭く調整することができる。湿式の粉砕処理は、例えば、液媒体中で粉砕メディアとともにフッ化物粒子をボールミル処理することで実施することができる。液媒体としては、例えば、水、過酸化水素水等の水系液媒体、エタノール等の有機溶剤等を挙げることができる。液媒体は、少なくとも水系液媒体を含んでいてよい。粉砕メディアとしては、例えば、アルミナボール、ジルコニアボール、ウレタンボール等を挙げることができる。
【0050】
粉砕処理における粉砕メディアの使用量は、粉砕メディアの使用量に対するフッ化物粒子の使用量が、例えば1質量%以上50質量%以下となる使用量であればよく、好ましくは5質量%以上30質量%以下となる使用量であってよい。
【0051】
ボールミルによる粉砕処理においては、例えば1時間以上72時間以下の時間を掛けて低速度で粉砕効率を抑制して粉砕することが好ましい。1時間以上の時間でゆっくりと弱い剪断力で粉砕することで、フッ化物粒子の微粉砕化が抑制され、フッ化物蛍光体の輝度の低下が抑制される。72時間以下とすることで生産性が向上する。ボールミルによる粉砕時間は、好ましくは2時間以上24時間以下であってよい。また、粉砕処理における温度は、例えば0℃以上80℃以下であってよく、好ましくは5℃以上50℃以下であってよい。
【0052】
フッ化物蛍光体の製造方法は、粉砕物の粒度分布を調整することをさらに含んでいてもよい。粉砕物の粒度分布を調整することで粒度分布がより狭いフッ化物粒子を得ることができる。粉砕物の粒度分布の調整は、例えば、液媒体による洗浄、分級によって行うことができる。
【0053】
フッ化物蛍光体の製造方法は、フッ化物粒子を、フッ素含有物質と接触させた状態で、400℃以上の熱処理温度で熱処理をして熱処理物を得る熱処理工程をさらに含んでいてよい。熱処理物は目的とするフッ化物粒子を含んでいる。
【0054】
フッ化物粒子を、フッ素含有物質と接触させた状態で熱処理することで、フッ化物蛍光体の結晶構造中でフッ素原子が不足している領域にフッ素原子が供給されて、結晶構造の欠陥がより低減されると考えられる。これにより輝度がより向上されると考えられる。またフッ化物蛍光体の耐久性がより向上すると考えられる。
【0055】
熱処理工程で用いられるフッ素含有物質は、常温で固体状態、液体状態又は気体状態のいずれであってもよい。固体状態又は液体状態のフッ素含有物質としては、例えば、NH4F等が挙げられる。また、気体状態のフッ素含有物質としては、例えば、F2、CHF3、CF4、NH4HF2、HF、SiF4、KrF4、XeF2、XeF4、NF3等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよく、好ましくはF2及びHFからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0056】
フッ素含有物質が、常温で固体状態又は液体状態のものである場合、フッ化物粒子とフッ素含有物質と混合することで、これらを接触させた状態とすることができる。フッ化物粒子は、例えば、フッ化物粒子とフッ素含有物質の合計量100質量%に対して、フッ素原子の質量換算で1質量%以上20質量%以下、好ましくは2質量%以上10質量%以下のフッ素含有物質と混合してよい。
【0057】
フッ化物粒子とフッ素含有物質を混合する際の温度は、例えば、室温(20℃±5℃)から熱処理温度よりも低い温度でもよく、熱処理温度であってもよい。具体的には、20℃以上400℃未満の温度でもよく、400℃以上の温度であってもよい。フッ化物粒子、と常温で固体状態又は液体状態のフッ素含有物質とを接触させる温度が20℃以上400℃未満の場合は、フッ化物粒子とフッ素含有物質とを接触させてから400℃以上の温度で熱処理を行なうことが好ましい。
【0058】
フッ素含有物質が気体である場合には、フッ素含有物質を含む雰囲気中にフッ化物粒子を配置して接触させてもよい。フッ素含有物質を含む雰囲気は、フッ素含有物質に加えて希ガス、窒素等の不活性ガスを含んでいてもよい。この場合、雰囲気中のフッ素含有物質の濃度は、例えば、3体積%以上35体積%以下であってよく、好ましくは5体積%以上又は10体積%以上であってよく、また好ましくは30体積%以下又は25体積%以下であってよい。
【0059】
熱処理は、フッ化物粒子とフッ素含有物質とを接触させた状態で、所定の熱処理温度を所定時間に亘って保持することで実施してよい。熱処理温度は、例えば400℃以上であってよく、好ましくは400℃より高い温度、425℃以上、450℃以上又は480℃以上であってよい。熱処理温度の上限は、例えば600℃未満であってよく、好ましくは580℃以下、550℃以下又は520℃以下であってよい。
【0060】
熱処理温度が前記下限値以上であると、フッ化物粒子に充分にフッ素原子が供給され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。また熱処理温度が前記上限値以下であると、得られるフッ化物蛍光体の分解がより効果的に抑制され、得られるフッ化物蛍光体の輝度がより向上する傾向がある。
【0061】
熱処理における熱処理時間、すなわち、所定の熱処理温度を保持する時間は、例えば、1時間以上40時間以下であってよく、好ましくは2時間以上又は3時間以上であってよく、また好ましくは30時間以下、10時間以下又は8時間以下であってよい。所定の熱処理温度での熱処理時間が前記範囲内であれば、フッ化物粒子に、十分にフッ素原子を供給することができる。これによりフッ化物粒子の結晶構造がより安定となり、輝度が高いフッ化物蛍光体が得られる傾向がある。
【0062】
熱処理工程における圧力は、大気圧(0.101MPa)であってもよく、大気圧を超えて5MPa以下でもよく、大気圧を超えて1MPa以下でもよい。
【0063】
フッ化物蛍光体の製造方法は、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部に無機物質を付着させる表面処理工程を含んでいてもよい。表面処理工程により、樹脂への分散性、耐湿性等がより向上したフッ化物蛍光体を得ることができる。表面処理工程は、付着させる無機物質に応じて、通常用いられる方法から適宜選択することができる。なお、表面処理工程に用いられるフッ化物粒子には、平均粒径及び最大粒径が所望の範囲に調整されたフッ化物粒子が用いられる。
【0064】
表面処理工程で付着させる無機物質が酸化物の場合、例えばフッ化物粒子と金属アルコキシドとを液媒体中で接触させることで、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部に金属アルコキシドに由来する酸化物を付着させることができる。金属アルコキシドは、例えば、Si、Al、Ti、Zr、Sn及びZnからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属アルコキシドであってよく、少なくともSi及びAlの少なくとも一方を含む金属アルコキシドであってよい。金属アルコキシドを構成するアルコキシドの脂肪族基は、炭素数が例えば1以上6以下であってよく、好ましくは1以上4以下、又は1以上3以下であってよい。フッ化物粒子に酸化物を付着させる方法については、例えば、いわゆるゾルゲル法を参照することができる。
【0065】
金属アルコシキドの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラエトキシスズ、ジメトキシ亜鉛、ジエトキシ亜鉛等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましく、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム及びトリイソプロポキシアルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。金属アルコキシドは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0066】
表面処理工程において用いられる金属アルコキシドの添加量は、フッ化物粒子の総質量に対して、例えば5質量%以上110質量%以下であってよく、好ましくは15質量%以上、又は25質量%以上であってよく、また好ましくは90質量%以下、又は75質量%以下であってよい。
【0067】
液媒体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;アセトニトリル等のニトリル系溶剤;ヘキサン等の炭化水素系溶剤などを挙げることができる。液媒体は、少なくとも水とアルコール系溶剤を含んでいてよい。液媒体がアルコール系溶剤を含む場合、液媒体におけるアルコール系溶剤の含有率は、例えば60質量%以上であってよく、好ましくは70質量%以上であってよい。また液媒体における水の含有率は、例えば4質量%以上40質量%以下であってよい。
【0068】
また、液媒体はpH調整剤を更に含んでいてもよい。pH調整剤としては、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ性物質、塩酸、硝酸、硫酸、酢酸等の酸性物質を用いることができる。液媒体がpH調整剤を含む場合、液媒体のpHは、例えば酸性条件では1以上6以下であってよく、好ましくは2以上5以下であってよい。アルカリ条件では8以上12以下であってよく、好ましくは8以上11以下であってよい。
【0069】
フッ化物粒子に対する液媒体の質量比率は、例えば100質量%以上1000質量%以下であってよく、好ましくは150質量%以上、又は180質量%以上であってよく、また好ましくは600質量%以下、又は300質量%以下であってよい。液媒体の質量比率が上記範囲内であると、より均一にフッ化物粒子を酸化物で覆うことができる傾向がある。
【0070】
フッ化物粒子と金属アルコシキドとの接触は、例えばフッ化物粒子を含む懸濁液に金属アルコキシドを添加することで行うことができる。このとき必要に応じて撹拌等をおこなってもよい。また、フッ化物粒子と金属アルコシキドとの接触温度は、例えば0℃以上70℃以下であってよく、好ましくは10℃以上40℃以下であってよい。接触時間は、例えば1時間以上12時間以下であってよい。なお、接触時間には金属アルコキシドの添加に要する時間も含まれる。
【0071】
表面処理工程で付着させる無機物質が金属塩の場合、フッ化物粒子と金属イオンと陰イオンとを液媒体中で接触させることで、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部に金属塩を付着させることができる。具体的には、金属塩が希土類リン酸塩の場合、フッ化物粒子と希土類イオンとリン酸イオンとを液媒体中で接触させる。これにより、表面に希土類リン酸塩が付着したフッ化物粒子が得られる。液媒体中で希土類リン酸塩をフッ化物粒子に付着させることで、希土類リン酸塩が、例えばフッ化物粒子表面により均一に付着すると考えられる。
【0072】
液媒体はリン酸イオンを含むことが好ましく、水及びリン酸イオンを含むことがより好ましい。液媒体がリン酸イオンを含む場合、準備したフッ化物粒子と液媒体とを混合し、更に希土類イオンを含む溶液と混合することで、フッ化物粒子を含む液媒体中でリン酸イオンと希土類イオンとを接触させることができる。液媒体がリン酸イオンを含む場合、液媒体中のリン酸イオン濃度は、例えば0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また例えば5質量%以下、好ましくは3質量%以下である。液媒体中のリン酸イオン濃度が上記下限値以上であると液媒体量が多くなり過ぎず、フッ化物粒子からの組成成分の溶出が抑制され、フッ化物蛍光体の特性が良好に維持される傾向がある。また上記上限値以下であるとフッ化物粒子への付着物の均一性が良好になる傾向がある。
【0073】
リン酸イオンには、オルトリン酸イオン、ポリリン酸(メタリン酸)イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオンが含まれる。ポリリン酸イオンには、ピロリン酸イオン、トリポリリン酸イオン等の直鎖構造のポリリン酸イオン、ヘキサメタリン酸等の環状ポリリン酸イオンが含まれる。
【0074】
液媒体がリン酸イオンを含む場合、液媒体にリン酸イオン源となる化合物を溶解して調製してもよく、リン酸イオン源を含む溶液と液媒体とを混合して調製してもよい。リン酸イオン源としては、例えばリン酸;メタリン酸;リン酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属リン酸塩;リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム等のアルカリ金属リン酸水素塩;リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のアルカリ金属リン酸二水素塩;ヘキサメタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸カリウム等のアルカリ金属ヘキサメタリン酸塩;ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩;リン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム塩等が挙げられる。
【0075】
液媒体は、還元剤を含むことが好ましく、水及び還元剤を含むことがより好ましく、水、リン酸イオン及び還元剤を含むことが更に好ましい。液媒体が還元剤を含むことでフッ化物粒子に含まれるマンガンに由来する二酸化マンガン等が析出することを効果的に抑制することができる。液媒体に含まれる還元剤は、フッ化物粒子から液媒体中へ溶出する例えば4価のマンガンイオンを還元可能であればよく、例えば過酸化水素、シュウ酸、塩酸ヒドロキシアミン等を挙げることができる。これらのうち、過酸化水素は、水に分解されるため、フッ化物に悪影響を与えない点で好ましい。
【0076】
液媒体が還元剤を含む場合、液媒体に還元剤となる化合物を溶解して調製してもよく、還元剤を含む溶液と液媒体とを混合して調製してもよい。液媒体中の還元剤の含有率は、特に制限されないが、上記理由で例えば0.1質量%以上であり、0.3質量%以上が好ましい。
【0077】
リン酸イオンと接触させる希土類イオンとなる希土類元素としては、Sc及びYに加えて、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb及びLuからなるランタノイドを挙げることができ、ランタノイドから選択される少なくとも1種が好ましく、La、Ce、Dy及びGdからなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0078】
液媒体中でのリン酸イオンと希土類イオンとの接触は、例えば、リン酸イオンを含む液媒体に希土類イオン源となる化合物を溶解して行ってもよく、リン酸イオンを含む液媒体と希土類イオンを含む溶液とを混合することで行ってもよい。希土類イオンを含む溶液は、例えば希土類イオン源となる化合物を水等の溶媒に溶解することで調製できる。希土類イオン源となる化合物は、例えば希土類元素を含む金属塩であり、金属塩を構成する陰イオンとしては、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン、塩化物イオン等を挙げることができる。
【0079】
液媒体中でのリン酸イオンと希土類イオンとの接触は、例えば、リン酸イオンを含み、好ましくは更に還元剤を含む液媒体及びフッ化物粒子を混合して蛍光体スラリーを得ることと、蛍光体スラリーと希土類イオンとを混合することとを含むことができる。
【0080】
リン酸イオンと希土類イオンとを接触させる液媒体における、希土類イオンの含有率は、例えば0.05質量%以上又は0.1質量%以上であり、また例えば3質量%以下又は2質量%以下である。また液媒体におけるフッ化物粒子量に対する希土類イオンの含有率は、例えば0.2質量%以上又は0.5質量%以上であり、また例えば30質量%以下又は20質量%以下である。希土類イオンの濃度が上記下限値以上であると、希土類リン酸塩のフッ化物粒子への付着率がより向上する傾向があり、希土類イオンの濃度が上記上限値以下であると、希土類リン酸塩をフッ化物粒子表面により均一に付着させることが容易になる傾向がある。
【0081】
希土類リン酸塩を形成するリン酸イオンと希土類イオンとの接触温度は、例えば10℃から50℃であり、20℃から35℃が好ましい。また接触時間は、例えば1分から1時間であり、3分から30分が好ましい。接触は液媒体を撹拌しながら行ってもよい。フッ化物粒子の表面に希土類リン酸塩を付着させる方法については、例えば、特開2017-186524号公報等を参照することができる。
【0082】
表面処理工程で付着させる無機物質がフッ化物の場合、フッ化物粒子と金属イオンとフッ化物イオンとを液媒体中で接触させることで、フッ化物粒子の表面の少なくとも一部にフッ化物を付着させることができる。
【0083】
付着させるフッ化物が、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム等の第2族元素を含むフッ化物の場合、フッ化物粒子と第2族金属イオンとフッ化物イオンとを液媒体中で接触させることで、表面に第2族元素を含むフッ化物が付着したフッ化物粒子を得ることができる。第2族元素を含むフッ化物の付着方法の詳細については、例えば、特開2015-044951号公報等を参照することができる。
【0084】
また、付着させるフッ化物が、フッ化ケイ素酸アルカリ金属塩の場合、フッ化物粒子とフッ化ケイ素酸イオンとアルカリ金属イオンとを液媒体中で接触させることで、表面にフッ化ケイ素酸アルカリ金属塩が付着したフッ化物粒子を得ることができる。フッ化ケイ素酸アルカリ金属塩の付着方法の詳細については、例えば、特開2015-28148号公報等を参照することができる。
【0085】
表面処理工程では、フッ化物粒子に2種以上の無機物質を付着させてもよい。例えば、フッ化物粒子に希土類リン酸塩を付着させることと、希土類リン酸塩を付着させたフッ化物粒子に酸化物を付着させることとを含んでいてもよい。
【0086】
フッ化物蛍光体の製造方法は、表面処理工程の後に得られるフッ化物蛍光体を固液分離により回収する工程、固液分離されたフッ化物蛍光体を乾燥処理する工程等をさらに含んでいてもよい。
【0087】
フッ化物蛍光体の製造方法は、表面処理工程で得られるフッ化物蛍光体をカップリング剤で処理するカップリング処理工程を含んでいてもよい。カップリング処理工程では、フッ化物蛍光体とカップリング剤とを接触させることでフッ化物蛍光体の表面にカップリング剤に由来する官能基を含む表面処理層を付与することができる。これにより例えば、フッ化物蛍光体の耐湿性が向上する。
【0088】
カップリング剤に由来する官能基としては、例えば、炭素数1から20の脂肪族基を有するシリル基等が挙げられ、好ましくは炭素数6から12の脂肪族基を有するシリル基であってよい。カップリング剤に由来する官能基は1種単独でも、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0089】
カップリング剤の具体例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルミニウムカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリエチルシラン等のアルキルトリアルコキシシラン;フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン等のアリールトリアルコキシラン等が挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。カップリング剤としては、比較的に容易に入手が可能という点で、シランカップリング剤が好ましい。
【0090】
カップリング処理工程に用いられるカップリング剤の量は、例えば、フッ化物蛍光体の質量に対して0.5質量%以上10質量%以下であってよく、好ましくは1質量%以上5質量%以下であってよい。フッ化物蛍光体とカップリング剤との接触温度は、例えば0℃以上70℃以下であってよく、好ましくは10℃以上40℃以下であってよい。フッ化物蛍光体とカップリング剤との接触時間は、例えば1分以上10時間以下であってよく、好ましくは10分以上1時間以下であってよい。
【0091】
量子ドット
量子ドットは、第1の結晶性ナノ粒子及び第2の結晶性ナノ粒子からなる群から選択される少なくとも1種を含む。量子ドットは、第1の結晶性ナノ粒子及び第2の結晶性ナノ粒子以外のその他の量子ドットをさらに含んでいてもよい。その他の量子ドットとしては、例えば、(Cd,Zn)(Se,S)等の半導体量子ドット、InP系半導体量子ドット等をあげることができる。
【0092】
第1の結晶性ナノ粒子は、メジアン径が、例えば3nm以上15nm以下であってよく、好ましくは4nm以上、又は5nm以上であってよく、また好ましくは13nm以下、又は11nm以下であってよい。
【0093】
第1の結晶性ナノ粒子のメジアン径は、第1の結晶性ナノ粒子の透過電子顕微鏡(TEM)像を用いて以下のようにして測定される。具体的には、ある粒子についてTEM像で観察される粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分であって、当該粒子の内部を通過する線分のうち、最も長い線分の長さをその粒子の粒径とする。
【0094】
ただし、粒子がロッド形状を有するものである場合には、短軸の長さを粒径とみなす。ここで、ロッド形状の粒子とは、TEM像において短軸と短軸に直交する長軸とを有し、短軸の長さに対する長軸の長さの比が1.2より大きいものを指す。ロッド形状の粒子は、TEM像で、例えば、長方形状を含む四角形状、楕円形状、又は多角形状等として観察される。ロッド形状の長軸に直交する面である断面の形状は、例えば、円、楕円、又は多角形であってよい。具体的にはロッド状の形状の粒子について、長軸の長さは、楕円形状の場合には、粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指し、長方形状又は多角形状の場合、外周を規定する辺の中で最も長い辺に平行であり、かつ粒子の外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さを指す。短軸の長さは、外周の任意の二点を結ぶ線分のうち、前記長軸の長さを規定する線分に直交し、かつ最も長さの長い線分の長さを指す。
【0095】
第1の結晶性ナノ粒子のメジアン径は、5万倍以上数百万倍以下のTEM像で観察される、すべての計測可能な粒子について粒径を測定して、体積基準の粒度分布を求める。粒子の体積は、測定される粒子の外径に基づいて球近似することにより算出できる。粒度分布における小径側からの体積累積50%に相当する粒径をメジアン径とする。ここで、計測可能な粒子は、TEM像において粒子全体が観察できるものである。したがって、TEM像において、その一部が撮像範囲に含まれておらず、切れているような粒子は計測可能なものではない。1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子数が100以上である場合には、そのTEM像を用いて平均粒径を求める。一方、1つのTEM像に含まれる計測可能な粒子の数が100未満の場合には、撮像場所を変更して、TEM像をさらに取得し、2以上のTEM像に含まれる100以上の計測可能な粒子について粒径を測定してメジアン径を求める。
【0096】
第1の結晶性ナノ粒子は、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含むカチオンJと、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属Lと、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含むアニオンXと、を含む。
【0097】
カチオンJにおけるアルカリ金属イオンは、リチウムイオン(Li+)、ナトリウムイオン(Na+)、カリウムイオン(K+)、ルビジウムイオン(Rb+)及びセシウムイオン(Cs+)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともセシウムイオンを含んでいてよい。カチオンJは、好ましくはアルカリ金属イオン、メチルアンモニウム及びホルムアミジニウム(以下、FAと略記することがある)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはセシウムイオン、メチルアンモニウム及びホルムアミジニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0098】
金属Lは、好ましくは少なくともスズ及び鉛の少なくとも一方を含んでいてよく、より好ましくは少なくとも鉛を含んでいてよい。アニオンXにおけるハロゲンイオンは、フッ素イオン(F-)、塩素イオン(Cl-)、臭素イオン(Br-)及びヨウ素イオン(I-)からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは塩素イオン、臭素イオン及びヨウ素イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。アニオンXは、好ましくは臭素イオン及びヨウ素イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくは臭素イオンを含んでいてよい。
【0099】
第1の結晶性ナノ粒子の組成は、カチオンJのモル数を1とする場合に、金属Lのモル数が0.9以上1.1以下であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下であってよい。また、カチオンJのモル数を1とする場合に、アニオンXのモル数が2.7以上3.3以下であってよく、好ましくは2.8以上3.2以下であってよい。第1の結晶性ナノ粒子の組成は、カチオンJのモル数に対して金属Lのモル数が1であり、アニオンXのモル数が3である化学量論的組成であってもよく、非化学量論的組成であってもよい。
【0100】
第1の結晶性ナノ粒子は、例えば下記式(3)で表される組成を有していてもよい。
JpLqXr (3)
【0101】
式(3)中、Jは、アルカリ金属イオン、アンモニウム、メチルアンモニウム、ホルムアミジニウム、グアニジウム、イミダゾリウム、ピリジニウム、ピロリジウム及びプロトン化チオ尿素からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくはアルカリ金属イオン、メチルアンモニウム及びホルムアミジニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくはセシウムイオンメチルアンモニウム及びホルムアミジニウムからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0102】
Lは、ゲルマニウム、スズ、鉛、アンチモン及びビスマスからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくは少なくともスズ及び鉛の少なくとも一方を含んでいてよく、より好ましくは少なくとも鉛を含んでいてよい。
【0103】
Xは、ハロゲンイオン、シアン化物イオン、チオシアネートイオン、イソチオシアネートイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、好ましくはハロゲンイオン及びスルフィドイオンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、より好ましくは塩素イオン、臭素イオン及びヨウ素イオンからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。
【0104】
pは0.9以上1.1以下の数であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下の数であってよい。qは0.9以上1.1以下の数であってよく、好ましくは0.95以上1.05以下の数であってよい。rは2.7以上3.3以下の数であってよく、好ましくは2.8以上3.2以下の数であってよい。
【0105】
第1の結晶性ナノ粒子は、ペロブスカイト構造を有していてよい。ペロブスカイト構造自体は公知であり、式JLX3で表される立方晶、擬立方晶、正方晶、又は斜方晶の結晶であってよい。Jは、配位数12のカチオンであり、Lは配位数6のカチオンであり、Xは、立方晶、擬立方晶、正方晶又は斜方晶の格子に位置するアニオンである。これらの構造において、選択されたカチオン又はアニオンは、元の結晶構造を維持しつつ他のイオンと置き換えられていてもよい。第1の結晶性ナノ粒子は、例えば波長450nmの光照射により波長510nm以上535nm以下、好ましくは520nm以上530nm以下に発光ピークを有する発光を示してよい。また第1の結晶性ナノ粒子の発光ピークの半値幅は10nm以上30nm以下、好ましくは15nm以上25nm以下であってよい。
【0106】
第1の結晶性ナノ粒子は、公知の製造方法で製造することができる。具体的には例えば、Nano Letter、2015年、15巻、第3692から3696頁、特表2018-530633号公報等を参照して製造することができる。
【0107】
第2の結晶性ナノ粒子は、カルコパイライト型の結晶構造を含み、発光ピークの半値幅が45nm以下である。カルコパイライト型の結晶構造を含む結晶性ナノ粒子としては、例えば正方晶の結晶構造を有する(Ag,Cu,Au)(In,Ga)(S,Se,Te)2の組成式で表される化合物を含む結晶性ナノ粒子が挙げられる。量子ドットとしてのカルコパイライト型の結晶構造を含む結晶性ナノ粒子については、具体的には、例えば特許6464215号公報、特開2019-085575号公報に開示されている化合物を参照することができる。
【0108】
カルコパイライト型の結晶構造を含む第2の結晶性ナノ粒子は、励起光源からの光によって発光する。第2の結晶性ナノ粒子は、発光ピーク波長が380nm以上500nm以下の範囲内である励起光源からの光によって励起され、例えば、510nmより大きく580nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有する光を発してよい。第2の結晶性ナノ粒子の発光ピーク波長は、510nm以上550nm以下の範囲内であってもよく、515nm以上545nm以下の範囲内であってもよい。第2の蛍光ナノ粒子は、発光スペクトルにおける半値幅が45nm以下であり、40nm以下、又は35nm以下であってもよい。半値幅が比較的広い発光スペクトルを有する光が出射される場合、光で照射した場合の物体の色の見え方(以下、「演色性」ともいう。)に優れる。
【0109】
第2の結晶性ナノ粒子のメジアン径は、例えば1nm以上20nm以下であってよく、好ましくは3nm以上10nm以下、又は4nm以上7nm以下であってよい。第2の結晶性ナノ粒子のメジアン径は、第1の結晶性ナノ粒子のメジアン径と同様にして測定される。
【0110】
波長変換層に含まれる量子ドットは、1種単独であってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。波長変換層における量子ドットの含有量は、波長変換部材が発する光の色度に応じて適宜調整すればよい。具体的には、例えば樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上0.4質量部以下であってよく、好ましくは0.15質量部以上0.35質量部以下であってよい。また、波長変換層におけるフッ化物蛍光体の含有量に対する量子ドットの含有量の質量比率は、0.2%以上10%以下であってよく、好ましくは0.25%以上8%以下であってよい。
【0111】
界面活性剤
波長変換層は、界面活性剤の少なくとも1種を含む。界面活性剤は、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から選択することができる。界面活性剤は1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2種以上の界面活性剤を用いる場合、例えば、両性界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを組み合わせて用いることができる。界面活性剤は、例えば、量子ドットの表面に付与されて用いられてよい。界面活性剤は、例えば量子ドットの表面修飾剤であってよい。
【0112】
一態様において、界面活性剤は炭素数4以上30以下のアルキル基又はアルキルエーテル基を有していてもよい。アルキル基又はアルキルエーテル基の炭素数は好ましくは、6以上24以下、より好ましくは8以上20以下であってよい。
【0113】
一態様において、界面活性剤は、炭素数2以上3以下のアルキレンオキシ単位からなるポリアルキレンオキシ基を有するエーテル化合物であってもよい。アルキレンオキシ単位の数は、例えば2以上20以下であってよい。界面活性剤は炭素数1以上5以下のアルキル基とエーテル結合していてもよい。
【0114】
非イオン性界面活性剤としては、ポリ(無水マレイン酸-ALT-1-オクタデセン)などのマレイン系ポリマー;N-アルキル-1,3-プロピレン-ジアミン、N-アルキルジプロピレン-トリアミン、N-アルキルトリプロピレン-テトラアミン、N-アルキルポリプロピレン-ポリアミン、ポリエチレンイミン等のアルキル(ポリ)アミン;ポリエステル;セチルパルミテート等のアルキル脂肪酸エステル;3から25個のエチレンオシ単位(EO)を有する脂肪族アルコールポリグリコールエーテル等のアルキルポリグリコールエーテル;オキソアルコールポリグリコールエーテル;混合アルキル/アリールポリグリコールエーテル;アルキルポリグルコシド(APG)、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール;N-オレオイル-γ-アミノ酪酸等のN-アシルアミドなどを挙げることができる。
【0115】
非イオン性界面活性剤としては、さらに、ポリエチレンオキシ/ポリプロピレンオキシ(EO/PO)付加物が挙げられる。EO/PO付加物には、脂肪族アルコールEO/PO付加物、オキソアルコールEO/PO付加物等のアルコールEO/PO付加物、EO/POブロックコポリマー、エチレンジアミンEO/POブロックコポリマー、脂肪族アルコールEO付加物及びEO/PO付加物、カルボン酸エステル、ソルビタンエステル等が含まれる。非イオン性界面活性剤としては、さらに、アルコキシシラン及びその加水分解物が挙げられる。
【0116】
非イオン性界面活性剤としては、さらに、トリオクチルホスフィン等のアルキルホスフィン、トリオクチルホスフィンオキシド等のアルキルホスフィンオキシド、炭素数が4から30のアルキルチオールが挙げられる。
【0117】
非イオン性界面活性剤としては、さらに、パルミチン酸、ラウリン酸、カプリン酸等の脂肪酸のアルキルエステルが挙げられる。好ましい非イオン性界面活性剤としては、例えばジオクチルアミン、オレイルアミン、オクタデシルアミン、ヘキサデシルアミン等のアルキルイミン又はアルキルアミンが挙げられる。
【0118】
カチオン性界面活性剤としては、オレイルアンモニウムブロミド等のアルキルアンモニウムハロゲン化物、セチルトリメチルアンモニウムブロミド等のアルキルトリメチルアンモニウムハロゲン化物、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド等のジアルキルジメチルアンモニウムハロゲン化物、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド等のトリアルキルメチルアンモニウムハロゲン化物、ジ第四級ポリジメチルシロキサン等が挙げられる。
【0119】
両性界面活性剤は、カチオン性部分とアニオン性部分と疎水性基とを有する。カチオン性部分としては、アミン塩、第四級アンモニウム基、スルホニウム塩、ホスホニウム塩が挙げられる。アニオン性部分としては、カルボキシレート、スルホネート、サルファイト、スルフェート、ホスフィネート、ホスホネート、ホスファイト、ホスフェート等を挙げることができる。両性界面活性剤として好ましくは、カチオン性部分として第四級アンモニウム基を含み、アニオン性部分としてカルボキシレート、スルホネート、ホスホネート等を含んでいてよい。
【0120】
両性界面活性剤としては、ベタイン、カプリル酸グリシネート、コカミドプロピルベタイン、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、3-(N,N-ジメチルアルキルアンモニオ)プロパンスルホネート、アルキルホスホアザニウム両性イオン等が挙げられる。両性界面活性剤の具体例としては、特表2019-526658号公報等を参照することができる。
【0121】
アニオン性界面活性剤としては、スルフェート、スルホネート、ホスフェート、カルボキシレート等が挙げられる。具体例としては、アルキルエーテルのリン酸エステル、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アルカリ塩、アルキルエーテル硫酸アルカリ塩、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等の脂肪酸を挙げることができる。
【0122】
一態様において、アニオン性界面活性剤は、ポリアルキレンオキシ酢酸の炭素数1から5のアルキルエーテルであってよい。アルキレンオキシ基は炭素数が2から3であってよく、アルキレンオキシ基の繰り返し数は0から5であってよい。アニオン性面活性剤は、好ましくは、メトキシジエチレンオキシ酢酸であってよい。
【0123】
波長変換層における界面活性剤の含有量は、例えば、樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上0.2質量部以下であってよく、好ましくは0.02質量部以上0.18質量部以下であってよい。また例えば、量子ドットの含有量に対して5質量%以上50質量%以下であってよく、好ましくは10質量%以上45質量%以下であってよい。
【0124】
樹脂
波長変換層は、少なくとも1種の樹脂を含む。波長変換層を構成する樹脂は、可視光を透過する透光性樹脂であればよい。また、樹脂は熱硬化性樹脂であっても、熱可塑性樹脂であってもよい。樹脂として具体的には、アクリル樹脂、カーボネート樹脂、スルホン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、エステル樹脂、シリコーン樹脂、スチレン樹脂、ビニル樹脂、環状オレフィン樹脂等のオレフィン系樹脂などが挙げられ、これらからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。樹脂として好ましくは、アクリル樹脂、シリコーン樹脂及びエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよい。波長変換層に含まれる樹脂は1種単独であってよく、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0125】
球状粒子
波長変換層は、球状粒子をさらに含んでいてもよい。球状粒子を含むことで、波長変換層の厚みがより均一になり、発光色の均一性がより向上する傾向がある。ここで球状粒子とは、真球度が5μm以下である粒子を意味する。真球度は、鋼球の表面に接する最小球面と鋼球表面の各点との半径方向の最大の値としてJIS B 1501で定義される。真球度が、2.5μm以下が好ましく、1.5μm以下が更に好ましく、1μm以下が最も好ましい。
【0126】
球状粒子のメジアン径は、例えば10μm以上100μm以下であってよく、好ましくは20μm以上60μm以下であってよい。球状粒子のメジアン径は、体積基準の粒度分布において、小径側からの体積累積50%に相当する粒径として測定される。
【0127】
球状粒子は、単一ピークの粒度分布を示してよい。球状粒子の粒度分布は、好ましくは分布幅の狭い単一ピークの粒度分布を示してよい。具体的には、球状粒子の粒度分布において、粒子径の標準偏差をメジアン径で除した値を100倍した値である変動係数(CV値;%)は、例えば6%以下であってよく、好ましくは3%以下、又は1%以下であってよい。
【0128】
球状粒子の材質としては、例えば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、ガラス、樹脂等を挙げることができ、これらからなる群から選択される少なくとも1種であってよい。球状粒子の材質として好ましくは、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素含有ガラス、アクリル樹脂、シリコーン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種であってよい。
【0129】
波長変換層における球状粒子の含有量は、例えば樹脂100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下であってよく、好ましくは0.5質量部以上、又は1質量部以上であってよく、また好ましくは15質量部以下、又は10質量部以下であってよい。
【0130】
波長変換部材は、光拡散材を波長変換層にさらに含んでいてもよい。光拡散材を含むことで、発光素子からの指向性を緩和させ、視野角を増大させることができる。光拡散材としては、例えば酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム等を挙げることができる。
【0131】
波長変換層は、厚み方向に直交する2つの主面と、厚み方向に平行で2つの主面の外縁を包囲する側面とを有するシート状に形成されていてよい。波長変換層の平均厚みは、例えば10μm以上100μm以下であってよく、好ましくは20μm以上、又は30μm以上であってよく、また好ましくは80μm以下、又は60μm以下であってよい。波長変換層の平均厚みは、波長変換層の主面に直交する断面において、16箇所の厚みを測定し、その算術平均として算出される。具体的には、波長変換部材が後述する基材を有する場合、波長変換部材の表面内の面積2平方センチメートルあたり1箇所について波長変換部材の厚みを測定し、波長変換部材の厚みから使用している基材の厚みを差し引いて、波長変換層の厚みが算出される。
【0132】
波長変換層の厚みの変動幅は、波長変換層の平均厚みに対して12%以下であってよく、好ましくは10%以下、又は8%以下であってよい。波長変換層の厚みの変動幅は、波長変換層の平均厚みの算出において測定される厚みの最大値から最小値を差し引いて平均厚みで除した値を100倍して算出される。
【0133】
波長変換部材は、波長変換層を支持する基材をさらに備えていてもよい。基材を備えることで、例えば、より耐久性に優れ、取扱性に優れる波長変換部材を構成することができる。基材は、厚み方向に直交し、互いに対向する2つの主面と、厚み方向に平行で、2つの主面の外縁を包囲する側面とを有するシート状の形状を有していてよい。基材の主面は、例えば波長変換層の主面と対向し、波長変換層の主面を被覆してよい。また、基材は、波長変換層の一方の主面上に配置されていてよく、波長変換層の2つの主面の両方の上に配置されて、基材が波長変換層を挟持していてもよい。
【0134】
基材の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ガラス等を挙げることができる。基材の厚みは、例えば20μm以上200μm以下であってよく、好ましくは25μm以上、又は30μm以上であってよく、また好ましくは150μm以下、又は120μm以下であってよい。基材は可視光の透過性を有する透光性基材であってよい。基材の光透過率は、例えば可視光領域において80%以上であればよく、好ましくは85%以上であってよい。
【0135】
基材は、その表面に酸化物層を有していてもよい。基材が酸化物層を有することで、酸素、水蒸気等の透過率がより低下して、より耐久性に優れる波長変換部材を構成することができる。酸化物としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。酸化物層の厚みは、例えば0.1μm以上5μm以下であってよく、好ましくは0.2μm以上2μm以下であってよい。酸化物層は、基材の一方の面に設けられていてよく、両面に設けられてもよい。
【0136】
基材は、水蒸気透過性が低いことが好ましい。これより、耐久性により優れる波長変換部材を構成することができる。基材の水蒸気透過率は、温度40℃、相対湿度90%において、例えば1g/m2・day以下であってよく、好ましくは0.5g/m2・day以下、又は0.1g/m2・day以下であってよい。
【0137】
波長変換部材は、2つの基材に挟持される波長変換層の外周部を包囲して、波長変換層を封止する封止部材をさらに備えていてもよい。封止部材は、例えば粘着層又は接着層を介して、波長変換層を封止していてもよい。これにより、耐久性により優れる波長変換部材を構成することができる。封止部材の材質としては、例えば、樹脂、ガラス、金属等を挙げることができる。封止部材の厚みは、例えば1μm以上200μm以下であってよく、好ましくは5μm以上100μm以下であってよい。
【0138】
封止部材は、水蒸気透過性が低いことが好ましい。封止部の水蒸気透過率は、温度40℃、相対湿度90%において、例えば10g/m2・day以下であってよく、好ましくは5g/m2・day以下、又は1g/m2・day以下であってよい。
【0139】
波長変換部材は、ハニカム構造を有する多孔質膜を備えていてもよく、多孔質膜の孔部に波長変換層が形成されていてもよい。これにより、耐久性により優れる波長変換部材を構成することができる。ハニカム構造を有する多孔質膜については、例えば、特開2002-347107号公報、特開2007-2241号公報等を参照することができる。
【0140】
波長変換部材が備えるハニカム構造を有する多孔質膜の材質としては、例えば、アクリル樹脂等を挙げることができる。また、ハニカム構造を有する多孔質膜の孔部の大きさは、例えば10μm以上1mm以下であってよく、好ましくは50μm以上500μm以下であってよい。
【0141】
波長変換部材は、例えば420nm以上480nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光の照射により、480nmを超えて650nm以下の波長範囲の光を放出することができる。波長変換部材から放出される光は、例えばCIE色度座標のx値が0.355以上0.595以下、好ましくは0.360以上0.590以下であり、y値が0.404以上0.639以下であってよく、好ましくは0.410以上0.630以下であってよい。
【0142】
波長変換部材の構成の一例について、図面を参照して説明する。
図1は、波長変換部材の一例を示す概略断面図である。波長変換部材100は、フッ化物蛍光体、量子ドット、界面活性剤及び樹脂を含む波長変換層11と、波長変換層11を挟持する2つの基材12、13とを備える。
図1では、波長変換層11及び基材12、13の外周部に封止部材14が配置され、波長変換層11を封止している。封止部材14は、封止基材141が粘着層142を介して基材12、13の外周部及び波長変換層11の端部を封止している。
【0143】
波長変換部材は、例えば以下のような製造方法によって製造することができる。波長変換部材の製造方法は、フッ化物蛍光体、量子ドット及び未硬化の樹脂原料を含み、流動性を有する樹脂組成物を準備することと、準備した樹脂組成物を基材の一方の面上に付与して樹脂組成物層を形成することと、形成した樹脂組成物層を硬化させて波長変換層を形成することと、を含んでいてよい。
【0144】
樹脂組成物が含む未硬化の樹脂原料としては、熱硬化性のシリコーン樹脂、光硬化性のアクリルモノマー、エポキシモノマー、ポリエステル樹脂原料等を挙げることができる。樹脂組成物に含まれるフッ化物蛍光体の含有量は、例えば樹脂原料100質量部に対して25質量部以上110質量部以下であってよく、好ましくは35質量部以上100質量部以下であってよい。
【0145】
基材への樹脂組成物の付与量は、例えば硬化後の波長変換層の厚みが10μm以上100μm以下、好ましくは20μm以上60μm以下となるように付与すればよい。付与方法には、コンマコーター、ダイコーター、バーコーター等の通常用いられる液体付与方法を適用することができる。基材上に形成される樹脂組成物層の上には基材がさらに積層されてもよい。これにより、より耐久性に優れる波長変換部材を得ることができる。
【0146】
基材上に形成される樹脂組成物層の硬化方法は、樹脂原料の種類に応じて適宜選択すればよい。例えば、樹脂原料が熱硬化性の場合は、例えば140℃以上160℃以下の温度で2時間以上2.5時間以下の熱処理を実施することで樹脂組成物層が硬化した波長変換層が形成される。また、樹脂原料が光硬化性の場合は、例えば350nm以上400nm以下の波長範囲の光を照射することで、樹脂組成物層が硬化した波長変換層が形成される。
【0147】
発光装置
発光装置は、上述した波長変換部材と発光素子とを備える。上述したフッ化物蛍光体を含む波長変換部材を備えることで、発光装置から出力される光の色むらを効果的に抑制することができる。
【0148】
発光素子は、可視光の短波長領域である380nm以上485nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光を発してよい。発光素子は、フッ化物蛍光体を励起する励起光源であってよい。発光素子は、380nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することが好ましく、410nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがより好ましく、430nm以上480nm以下の範囲内に発光ピーク波長を有することがさらに好ましい。励起光源としての発光素子には、半導体発光素子を用いることが好ましい。励起光源に半導体発光素子を用いることによって、高効率で入力に対する出力のリニアリティが高く、機械的衝撃にも強い安定した発光装置を得ることができる。半導体発光素子としては、例えば、窒化物系半導体を用いた半導体発光素子を用いることができる。発光素子の発光スペクトルにおける発光ピークの半値幅は、例えば、30nm以下であることが好ましい。
【0149】
発光装置は、例えば基板上に配置される発光素子と、発光素子からの光の一部を波長変換して外部に放出する波長変換部材を備える。発光装置から発せられる光は、発光素子からの光と波長変換部材で波長変換された光の混色となる。発光装置から放出される光は、例えばCIE色度座標のx値が0.24以上0.31以下、好ましくは0.26以上0.29以下であり、y値が0.22以上0.33以下、好ましくは0.24以上0.31以下であってよい 。
【0150】
発光装置の構成例について、図面を参照して説明する。
図2は、液晶パネル500及び発光装置600の概略斜視図である。また、
図3は、液晶パネル500及び発光装置600の概略側面図である。なお、
図2では、反射隔壁67の図示を省略している。この発光装置600は、液晶パネル500の背面に設けられている。すなわち、本実施形態における発光装置600は、直下型の発光装置である。
【0151】
発光装置600は、シャーシ61とLED基板62と複数の発光素子63と拡散板64と波長変換部材65と光学シート66と反射隔壁67とによって構成されている。シャーシ61は、LED基板62等を支持する。LED基板62は、例えば金属製の基板であって、複数の発光素子(青色LED)63を搭載する。LED基板62の表面には、発光素子63から発せられた光の利用効率を高めるために反射シートが貼り付けられている。発光素子63は、この発光装置600の光源であり、青色光を出射する。拡散板64は、発光素子63から数mmから数cmほど上方の位置に配置されている。拡散板64は、発光装置からの光(以下、バックライト光ともいう)が面的に均一な光となるよう、発光素子63から発せられた光を拡散させる。波長変換部材65は、拡散板64の上方に配置されている。波長変換部材65は、この発光装置600から出射されるバックライト光が白色光となるよう、発光素子63から発せられた光の波長を変換する。これを実現するために、波長変換部材65には、発光素子63から発せられた光によって励起されて黄色に発光する緑色に発光する量子ドット及び赤色に発光するフッ化物蛍光体が含有されている。光学シート66は、波長変換部材65の上方に配置されている。一般に、光学シート66は複数のシートによって構成されている。それら複数のシートはそれぞれ光を拡散させる機能、集光機能、光の利用効率を高める機能などを有している。
【0152】
一実施形態においては、複数の発光素子63によって1つのまとまりのあるLEDユニットが形成され、1つのエリアに対応していてもよい。反射隔壁67は、LEDユニットを取り囲むように設けられる。すなわち、各反射隔壁67は、LEDユニットを構成する複数の発光素子63を取り囲むように設けられる。反射隔壁67の表面は、反射材で形成されている。反射隔壁67の高さ及び角度は、各エリアに対応する発光素子63からの出射光が他のエリアに届かないように設計されている。
図3に示すように反射隔壁67の上端部は拡散板64に接している。すなわち、各エリアの反射隔壁67の内部の空間は閉じられた空間となっている。LEDユニットを取り囲むように反射隔壁67が設けられていることにより、各エリアの発光素子63からの出射光は他のエリアには届かない。これにより、全面点灯が行われた際の色度座標のx値及びy値が画面全体においてほぼ均一になる。
【0153】
発光装置の別の構成例について、
図4を参照して説明する。
図4は一実施形態に係る発光装置を含むバックライトユニットの概略分解斜視図である。発光装置を液晶表示装置用のバックライトユニットに適用した例について
図4を用いて説明する。
図4に示すように、バックライトユニット400は、光源を導光板の側方に配置したエッジライト型のバックライトユニットであって、筐体410、反射シート420、導光板430、発光装置440、光学シート群450及び前面枠460を備える。
【0154】
筐体410は、偏平な箱型であり、ステンレス等からなる鋼板をプレス加工して形成される。筐体410は底面に開口411を有し、筐体410の開口部周縁にはフランジ部412が形成されている。フランジ部412には、前面枠460を締結するためのネジ孔413が形成されている。
【0155】
反射シート420は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)からなるシートであり、発光装置からの白色光を反射させながら当該白色光を導光板430内に進行させる。
【0156】
導光板430は、例えばポリカーボネート(PC)やアクリルからなるシートであり、その光射出面(前面)の反対側の反射シート420側の主面(後面)に、導光板430に入射した光を拡散させて光射出面から射出させるための採光要素であるドットパターンが印刷されている。採光要素としては、導光板430の後面に印刷及び成形等によって形成された光散乱構造体等の光散乱要素及びプリズム形状、又は導光板430の内部に形成された光散乱要素等が用いられる。
【0157】
光学シート群450は、同じサイズ及び同じ平面形状(矩形状)の拡散シート451、プリズムシート452及び偏光シート453から構成される。拡散シート451は、例えばPETからなるフィルム及びPCからなるフィルム等である。プリズムシート452は、例えばポリエステルからなるシートであり、片面にアクリル樹脂で規則的なプリズムパターンが形成される。偏光シート453は、例えばポリエチレンナフタレートからなるフィルムが用いられる。
【0158】
前面枠460は、ネジ461を筐体410のネジ孔413に螺合させることで筐体410のフランジ部412に固定される。前面枠460は、筐体410とともに導光板430及び光学シート群450を狭持する。
【0159】
発光装置440は、発光素子と発光素子上に配置される波長変換部材とを備える発光装置である。本実施形態では、4つの発光装置が用いられ、それぞれヒートシンク470に設けられている。ヒートシンク470に設けられた発光装置440は、光放射面が導光板430の側面に対向するように配置される。
【0160】
ヒートシンク470は、発光装置440を保持し、例えばL字状のアルミニウムからなる引き抜き材(アングル材)で構成される。ヒートシンク470は、筐体410にネジ等で固定される。
【0161】
以上、本実施形態に係るバックライトユニット400は、発光素子と波長変換部材を備える発光装置を用いているので、色ムラや輝度ムラがなく、また、光取り出し効率が高いバックライトユニットを実現することができる。
【0162】
表示装置
表示装置は、本実施形態の発光装置を備え、CIE色度図上の色再現範囲の面積が、BT2020に規定される色再現範囲の面積の85%以上である。表示装置は発光装置に加えて液晶パネルを備えていてよい。発光装置は、
図2に示すように液晶パネルの背面に設けられていてもよいし、
図4に示すように液晶パネルの背面に配置されるバックライトユニットの側面に配置されていてもよい。
【0163】
表示装置は、CIE色度図上の色再現範囲の面積が、BT2020に規定される色再現範囲の面積の85%以上であってよく、好ましくは90%以上であってよい。BT2020は、標準ダイナミックレンジ(SDR)、広色域(WCG)を備えた超高精細テレビ(UHDTV)の様々な側面を定義する国際電気通信連合(ITU)のITU-R勧告である。
【実施例】
【0164】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0165】
フッ化物蛍光体の平均粒径は、Fisher Scientific社製 Fisher Sub-Sieve Sizer Model95を用い、FSSS法によって測定した。また、最大粒径は、5kVの加速電圧、250倍の倍率で、フッ化物蛍光体の粒子が約500個以上観察されるSEM画像から、最大粒径を有すると推定される複数の粒子を選択し、5000倍のSEM画像を用いて、それぞれの粒子の粒子長を測定し、測定された粒子長の最大値を最大粒径とした。
【0166】
量子ドットのメジアン径は、1,000,000倍のTEM像で観察されたすべての計測可能な粒子について粒径を測定して、体積基準の粒度分布を求め、粒度分布における小径側からの体積累積50%に相当する粒径として求めた。
【0167】
フッ化物蛍光体及び量子ドットの配合量は、得られる発光装置のCIE色度座標のx値が0.26以上0.29以下、y値が0.24以上0.31以下となるように調整した。
【0168】
発光装置としての色度は、発光素子を点灯した状態で、分光光度計を用いて測定した。また、波長変換部材の色度は、発光装置の発光スペクトルから発光素子のスペクトルを差し引くことで算出した。
【0169】
実施例1
K2[Si0.99Mn0.01F6]で表される組成を有し、平均粒径が5μm、最大粒径が14μmのフッ化物蛍光体(以下、KSFともいう)と、FAPbBr3で表される組成を有し、メジアン粒径が9nmであるペロブスカイト型量子ドット(以下、QDともいう)を準備した。量子ドットの発光ピーク波長は521nm、発光ピークの半値幅は22nmであった。ここで、組成におけるFAはホルムアミジニウムを意味し、量子ドットの表面は界面活性剤で表面修飾されている。基材として、厚みが120μmで、温度40℃、相対湿度90%における水蒸気透過率が、0.1g/m2・dayであるバリアフィルムを準備した。
【0170】
KSF9.2gとQD0.029gとアクリル樹脂原料液10gと光重合開始剤とを混合して組成物を調製した。組成物をバリアフィルムに塗布して塗布層を形成し、塗布層上にもう一枚の同一のバリアフィルムを重ね合わせた。その後、紫外線を照射してアクリル樹脂を重合硬化させることにより、KSFとQDが樹脂で封止されてなる厚さ85μmのシート状の波長変換層が2枚のバリアフィルムに挟まれたシート状の波長変換部材を得た。波長変換部材の合計厚みは325μmであった。
【0171】
得られた波長変換部材の下に発光素子(発光ピーク波長450nm)を配置し、波長変換部材上にプリズムシート及び偏光シートを配置して、発光装置を得た。
【0172】
この発光装置の発光素子を点灯したところ、CIE色度座標のx値が0.276、y値が0.274となった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.417、y値は0.557であった。
【0173】
実施例2
平均粒径が1μm、最大粒径が7μmのKSFを用い、KSFの配合量を7.5g、QDの配合量を0.027gに変更したこと以外は実施例1と同様にして波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0174】
得られた発光装置は、CIE色度座標のx値が0.281、y値が0.286であった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.412、y値は0.552であった。
【0175】
実施例3
K2[Si0.98Mn0.02F6]で表される組成を有し、平均粒径が1μm、最大粒径が5μmのKSFを用い、KSFの配合量を3.5g、QDの配合量を0.020gに変更したこと以外は実施例1と同様にして波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0176】
得られた発光装置は、CIE色度座標のx値が0.277、y値が0.252であった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.429、y値は0.539であった。
【0177】
比較例1
平均粒径が10μm、最大粒径が25μmのKSFを用い、KSFの配合量を10g、QDの配合量を0.031gに変更したこと以外は実施例1と同様にして波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0178】
得られた発光装置は、CIE色度座標のx値が0.276、y値が0.257であった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.430、y値は0.546であった。
【0179】
比較例2
組成物の調製において、メジアン径が50μm、粒子径の変動係数が1%である球状ジルコニア粒子を0.1g添加したこと以外は比較例1と同様にして波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて実施例1と同様にして発光装置を得た。
【0180】
得られた発光装置は、CIE色度座標のx値が0.276、y値が0.257であった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.430、y値は0.546であった。
【0181】
評価
上記で得られた発光装置について、発光面上の任意の20点のCIE色度座標のx値を測定し、その標準偏差(σx)を算出して、発光装置の発光面における色ムラを評価した。結果を表1に示す。
【0182】
【0183】
平均粒径が10μm未満のフッ化物蛍光体を用いることで、発光装置としての色ムラが抑制できる。また、同等の発光特性を得るために必要とされるフッ化物蛍光体の配合量を低減することができる。また、波長変換層に球状粒子を添加することで色ムラをより抑制することができる。
【0184】
実施例4
K2[Si0.98Mn0.02F6]で表される組成を有し、平均粒径が1μm、最大粒径が5μmのKSFを用い、KSFの配合量を3.0g、カルコパイライト型の結晶構造を含む量子ドットの配合量を0.050gに変更したこと以外は実施例1と同様にして波長変換部材を得た。得られた波長変換部材を用いて実施例1と同様にして発光装置を得た。量子ドットとしては、AgGa0.6In0.4S2の組成を有するシェルと、Ga2S3で表される組成を有するシェルを含むコアシェル型量子ドットを用いた。カルコパイライト型の結晶構造を含む量子ドットのメジアン径は約6nm、発光ピークの半値幅は29nmであった。
【0185】
得られた発光装置は、CIE色度座標のx値が0.236、y値が0.285であった。また、波長変換部材のCIE色度座標のx値は0.347、y値は0.625であった。
【産業上の利用可能性】
【0186】
本開示に係る発光装置は、照明、車載照明、ディスプレイ、液晶用バックライト等の幅広い分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0187】
63 発光素子
65、100 波長変換部材
400 バックライトユニット
440、600 発光装置
500 液晶パネル