(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】プログラム及びサーバ
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/08 20120101AFI20230823BHJP
【FI】
G06Q30/08
(21)【出願番号】P 2019135067
(22)【出願日】2019-07-23
【審査請求日】2022-04-08
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「適応的に再構成する通信ネットワーク」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132881
【氏名又は名称】国立大学法人東京農工大学
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】中山 悠
【審査官】山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】特許第6339305(JP,B1)
【文献】特開2011-008681(JP,A)
【文献】特開2008-097230(JP,A)
【文献】特開2003-067649(JP,A)
【文献】特開2002-041611(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0032461(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバのコンピュータを、
前記ホスト端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を許可する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報
と、前記ホスト端末に一時的に割り当てたSSIDとを
、出品情報として前記ホスト端末に関連付けて登録する登録部と、
前記クライアント端末からの要求に応じて前記出品情報を前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末から、購入希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、
前記出品情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、
登録された前記ホスト端末に一時的に割り当てた前記SSID及びパスワードを前記ホスト端末に送信し、前記取引が成立する場合に、無線通信のアクセスポイントとして機能する前記ホスト端末に接続するための認証情報
として前記パスワードを、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、
前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項2】
請求項1において、
前記登録部は、
前記ホスト端末から前記通信データ量及び/又は前記接続時間と売却希望価値とに関する情報を受け付け、受け付けた情報を前記出品情報として前記ホスト端末に関連付けて登録することを特徴とするプログラム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記入札処理部は、
前記クライアント端末及び前記ホスト端末の位置情報に基づいて、前記クライアント端
末と無線通信可能な範囲に位置する前記ホスト端末の前記出品情報を前記クライアント端末に送信することを特徴とするプログラム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記決済処理部は、
前記ホスト端末から受信した、前記クライアント端末との接続中の通信状況に関する情報に基づいて
取引成立価格を補正して、決済処理を行うことを特徴とするプログラム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記登録部は、
前記ホスト端末のインターネット接続の通信状況を評価し、評価結果を前記出品情報に登録することを特徴とするプログラム。
【請求項6】
クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバのコンピュータを、
前記クライアント端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を希望する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報を購入希望情報として前記クライアント端末に関連付けて登録する登録部と、
前記ホスト端末からの要求に応じて前記購入希望情報を前記ホスト端末に送信し、前記ホスト端末から、売却希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、
前記購入希望情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、
前記取引が成立する場合に、
前記ホスト端末に一時的に割り当てたSSID及びパスワードを前記ホスト端末に送信し、無線通信のアクセスポイントとして機能する前記ホスト端末に接続するための認証情報
として前記SSID及び前記パスワードを、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、
前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項7】
請求項6において、
前記登録部は、
前記クライアント端末から前記通信データ量及び/又は前記接続時間と購入希望価値とに関する情報を受け付け、受け付けた情報を前記購入希望情報として前記クライアント端末に関連付けて登録することを特徴とするプログラム。
【請求項8】
クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバであって、
前記ホスト端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を許可する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報
と、前記ホスト端末に一時的に割り当てたSSIDとを
、出品情報として前記ホスト端末に関連付けて登録する登録部と、
前記クライアント端末からの要求に応じて前記出品情報を前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末から、購入希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、
前記出品情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、
登録された前記ホスト端末に一時的に割り当てた前記SSID及びパスワードを前記ホスト端末に送信し、前記取引が成立する場合に、無線通信のアクセスポイントとして機能
する前記ホスト端末に接続するための認証情報
として前記パスワードを、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、
前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部とを含むことを特徴とするサーバ。
【請求項9】
クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバであって、
前記クライアント端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を希望する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報を購入希望情報として前記クライアント端末に関連付けて登録する登録部と、
前記ホスト端末からの要求に応じて前記購入希望情報を前記ホスト端末に送信し、前記ホスト端末から、売却希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、
前記購入希望情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、
前記取引が成立する場合に、
前記ホスト端末に一時的に割り当てたSSID及びパスワードを前記ホスト端末に送信し、無線通信のアクセスポイントとして機能する前記ホスト端末に接続するための認証情報
として前記SSID及び前記パスワードを、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、
前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部とを含むことを特徴とするサーバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム及びサーバに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モバイルトラフィックは爆発的な増大を続け、更にその時空間的な変動が顕著になっている。その要因として例えば、中心市街地から郊外にかけての昼夜間の人口動態変化や、イベント等によるホットスポット形成が挙げられる。従来のモバイルネットワークを用いてサービス品質を高めるにはエリアごとのピークレートに合わせた設備計画を行う必要があるが、上記の変動を考慮すると設備利用効率が低く、非効率であるという課題があった。その上、距離減衰の大きい高周波数帯の利用が進むことで、基地局からの電波到達距離が短いスモールセル化が進んでおり、上記の課題は今後更に甚大化することが予想される。
【0003】
また、モバイル通信データ量はユーザごとに異なった契約や利用のされ方をすることがある。例えば、あるユーザは通信キャリアとの契約データ量(1カ月当たり数GBなど)を使い切れずに余らせている一方で、別のユーザは契約データ量を使い切ってしまい、通信データ量を追加して購入している、などといったことがある。このような利用形態の違いにきめ細かく最適に対応可能な契約方法というものは、これまでにないものである。
【0004】
これらの課題に対し、ユーザ提供型モバイルネットワーク(モバイルUPN:mobile user-provided network)と呼ばれる手法がある(非特許文献1参照)。これは、スマートフォン等のユーザ端末同士でWi-Fi(登録商標、以下同様)テザリング等により接続を行い、モバイル通信を中継する方法である。すなわち、ホストと呼ばれるユーザ端末がWi-Fiアクセスポイント等のUPN機能を提供する。クライアントと呼ばれるユーザ端末は、ホストが提供するUPNに対してWi-Fiにより接続し、ホストのモバイル通信データ量を使用してインターネット接続を行う。モバイルUPNを適切に提供することによって、モバイルトラフィックの需要変動に応じて動的にネットワークを提供することが可能である。
【0005】
また、仮想通貨による通信データ量の売買という手法も提案されている(非特許文献2参照)。契約データ量を余らせたユーザから、通信キャリアが仮想通貨を用いて余剰データ量を買い上げ、契約データ量が足りないユーザが通信キャリアから仮想通貨を用いて追加データ量を購入する。このような仮想通貨による通信データ量の売買は、ユーザ間での通信データ量の再配分を可能にするための方法の一つである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】G. Iosifidis, L. Gao, J. Huang, and L. Tassiulas. "Incentive mechanisms for user-provided networks" IEEE Communications Magazine, 52(9):20--27, 2014.
【文献】DENT, "DENT Whitepaper", 2017. (https://www.dentwireless.com/whitepaper)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モバイルUPNについて、従来手法は基本的にネットワーク側からの制御を前提としており、各ユーザの自発的な制御による自律型UPNに関する取り組みはなかった。これは
、効率的な通信データ量の配分やエネルギー消費などを考慮したとき、ユーザの自律性に任せながら相互の協力を促し、各ユーザの利得を高めることが困難だったためである。
【0008】
また、これまでの仮想通貨による通信データ量の売買手法では、ユーザ同士の取引を通信キャリアが仲介する必要があった。すなわち、通信キャリアの協力を得られない国や地域では、当該手法を導入することがそもそもできない、という課題があった。
【0009】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、モバイルユーザ間での自由な通信データ量取引により自律型モバイルUPNを経済的に構成し、結果的に各ユーザの利得を高めるとともに、効率的なモバイルネットワーク利用を促す仕組みを実現することが可能なプログラム及びサーバを提供することになる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバのコンピュータを、前記ホスト端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を許可する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報を出品情報として前記ホスト端末に関連付けて登録する登録部と、前記クライアント端末からの要求に応じて前記出品情報を前記クライアント端末に送信し、前記クライアント端末から、購入希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、前記出品情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、前記取引が成立する場合に、無線通信のアクセスポイントとして機能する前記ホスト端末に接続するための認証情報を、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部として機能させることを特徴とするプログラムに関する。また本発明は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体であって、上記プログラムを記憶した情報記憶媒体に関する。また本発明は、上記各部を含むサーバに関する。
【0011】
本発明によれば、ホスト端末のユーザが、使用を許可する通信データ量や接続時間を、出品情報としてサーバを介してクライアント端末のユーザに提示し、これに対してクライアント端末のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。
【0012】
(2)また本発明に係るプログラム、情報記憶媒体及びサーバでは、前記登録部は、前記ホスト端末から前記通信データ量及び/又は前記接続時間と売却希望価値とに関する情報を受け付け、受け付けた情報を前記出品情報として前記ホスト端末に関連付けて登録してもよい。
【0013】
本発明によれば、ホスト端末のユーザが、使用を許可する通信データ量や接続時間及び売却希望価値を、出品情報としてサーバを介してクライアント端末のユーザに提示し、これに対してクライアント端末のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。
【0014】
(3)また本発明に係るプログラム、情報記憶媒体及びサーバでは、前記入札処理部は、前記クライアント端末及び前記ホスト端末の位置情報に基づいて、前記クライアント端末と無線通信可能な範囲に位置する前記ホスト端末の前記出品情報を前記クライアント端末に送信してもよい。
【0015】
本発明によれば、クライアント端末のユーザは、無線通信可能な位置にあるホスト端末の出品情報を得ることができる。
【0016】
(4)また本発明に係るプログラム、情報記憶媒体及びサーバでは、前記決済処理部は、前記ホスト端末から受信した、前記クライアント端末との接続中の通信状況に関する情報に基づいて、決済処理を行ってもよい。
【0017】
本発明によれば、接続中の通信状況に応じた決済処理を行うことができる。
【0018】
(5)また本発明に係るプログラム、情報記憶媒体及びサーバでは、前記登録部は、前記ホスト端末のインターネット接続の通信状況を評価し、評価結果を前記出品情報に登録してもよい。
【0019】
本発明によれば、ホスト端末を選ぶ際の判断材料をクライアント端末のユーザに提供することができる。
【0020】
(6)また本発明は、クライアント端末のユーザがホスト端末のユーザに対価を支払うことと引き換えに、前記クライアント端末が前記ホスト端末を介してインターネットに接続する取引を行うためのサーバのコンピュータを、前記クライアント端末から、前記ホスト端末を介したインターネット接続において使用を希望する通信データ量及び/又は接続時間に関する情報を受け付け、受け付けた情報を購入希望情報として前記クライアント端末に関連付けて登録する登録部と、前記ホスト端末からの要求に応じて前記購入希望情報を前記ホスト端末に送信し、前記ホスト端末から、売却希望価値に関する情報を入札情報として受け付ける入札処理部と、前記購入希望情報及び前記入札情報に基づいて、前記取引が成立するか否かを判定する判定部と、前記取引が成立する場合に、無線通信のアクセスポイントとして機能する前記ホスト端末に接続するための認証情報を、前記クライアント端末に送信する情報送信部と、前記ホスト端末と前記クライアント端末との接続終了後に決済処理を行う決済処理部として機能させることを特徴とするプログラムに関する。また本発明は、コンピュータ読み取り可能な情報記憶媒体であって、上記プログラムを記憶した情報記憶媒体に関する。また本発明は、上記各部を含むサーバに関する。
【0021】
本発明によれば、クライアント端末のユーザが、使用を希望する通信データ量や接続時間を、購入希望情報としてサーバを介してホスト端末のユーザに提示し、これに対してホスト端末のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。
【0022】
(7)また本発明に係るプログラム、情報記憶媒体及びサーバでは、前記登録部は、前記クライアント端末から前記通信データ量及び/又は前記接続時間と購入希望価値とに関する情報を受け付け、受け付けた情報を前記購入希望情報として前記クライアント端末に関連付けて登録してもよい。
【0023】
本発明によれば、クライアント端末のユーザが、使用を希望する通信データ量や接続時間及び購入希望価値を、購入希望情報としてサーバを介してホスト端末のユーザに提示し、これに対してホスト端末のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態に係るサーバを含む通信データ量取引システムの構成の一例を示す図。
【
図2】第1の実施形態に係るサーバの機能ブロック図の一例を示す図。
【
図3】第1の実施形態の動作シーケンスの一例を示す図。
【
図4】第1の実施形態に係るサーバの処理の一例を示すフローチャート。
【
図5】第2の実施形態の動作シーケンスの一例を示す図。
【
図6】第2の実施形態に係るサーバの処理の一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るサーバを含む通信データ量取引システムの構成の一例を示す図である。通信データ量取引システム1は、サーバ10と、ホスト端末20と、クライアント端末30とを含む。サーバ10は、クライアント端末30のユーザがホスト端末20のユーザに対価を支払うことと引き換えに、クライアント端末30がホスト端末20を介してインターネット40に接続する取引を行うためのサーバである。ホスト端末20とサーバ10、及びクライアント端末30とサーバ10は、インターネット40を介して通信可能に構成されている。ホスト端末20は、モバイル通信(3G、LTE(登録商標)、4G、5G等の移動体無線通信)により基地局50(モバイル基地局)との通信が可能であり、同様に、クライアント端末30は、モバイル通信により基地局60との通信が可能である。ホスト端末20及びクライアント端末30は、スマートフォン等のユーザ端末であり、ホスト端末20は、無線通信(Wi-Fi、Bluetooth(登録商標)等の近距離無線通信)のアクセスポイントとして機能し、クライアント端末30に対して無線通信のテザリングを提供する。ホスト端末20は、サーバ10に対して、通信データ量の出品登録を行う。クライアント端末30は、サーバ10との間で当該出品に対する入札処理(取引処理)を行い、取引が成立する場合に、ホスト端末20との無線通信によりホスト端末20及び基地局50を介してインターネット40に接続する(ホスト端末20が、クライアント端末30と基地局50との間の通信を中継する)。
【0027】
図2は、第1の実施形態に係るサーバ10の機能ブロック図の一例である。サーバ10は、処理部100、記憶部110、通信部120を含む。
【0028】
記憶部110は、処理部100の各部としてコンピュータを機能させるためのプログラムや各種データを記憶するとともに、処理部100のワーク領域として機能し、その機能はハードディスク、RAMなどにより実現できる。
【0029】
通信部120は、ユーザ端末(ホスト端末20、クライアント端末30)との間で通信を行うための各種制御を行うものであり、その機能は、各種プロセッサ又は通信用ASICなどのハードウェアや、プログラムなどにより実現できる。
【0030】
処理部100は、ユーザ端末のログイン/ログアウト処理、出品情報を登録する処理、入札処理、取引成立の判定処理、決済処理等を行う。処理部100の機能は各種プロセッサ(CPU、DSP等)、ASIC(ゲートアレイ等)などのハードウェアや、プログラムにより実現できる。処理部100は、登録部101、入札処理部102、判定部103、情報送信部104、決済処理部105を含む。
【0031】
登録部101は、ホスト端末20から、ホスト端末20を介したインターネット接続においてクライアント端末30に使用を許可する通信データ量及び/又は接続時間(使用時間)と売却希望価値とに関する情報を受け付け、受け付けた情報を出品情報として当該ホスト端末20に関連付けて記憶部110に登録(記憶)する。また、登録部101は、ホスト端末20のインターネット接続の通信状況を評価し、評価結果を出品情報に登録してもよい。
【0032】
入札処理部102は、クライアント端末30からの要求に応じて、ホスト端末20の出品情報を当該クライアント端末30に送信し、クライアント端末30から、購入希望価値に関する情報を入札情報として受け付け、記憶部110に登録(記憶)する。また、入札処理部102は、ホスト端末20及びクライアント端末30のそれぞれから取得した位置情報に基づいて、クライアント端末30と無線通信が可能な範囲に位置するホスト端末20の出品情報を当該クライアント端末30に送信してもよい。
【0033】
判定部103は、ホスト端末20の出品情報とクライアント端末30から受け付けた入札情報に基づいて、当該ホスト端末20と当該クライアント端末30間でモバイル通信データ量の取引が成立するか否かを判定する。
【0034】
情報送信部104は、前記取引が成立する場合に、成立した取引に係るクライアント端末30に対して、ホスト端末20(Wi-Fiのアクセスポイントとして機能するホスト端末20)に接続するための認証情報(当該アクセスポイントのパスワード)を送信する処理を行う。
【0035】
決済処理部105は、ホスト端末20とクライアント端末30の無線通信の接続終了後に決済処理を行う。また、決済処理部105は、ホスト端末20から受信した、クライアント端末30との接続中の通信状況に関する情報に基づいて、決済処理を行ってもよい。
【0036】
なお、上記の「売却希望価値」、「購入希望価値」等の「価値」は、「対価」として使用できるものであればどのようなものでもよく、法定通貨(貨幣)で表されるもの(価格)であってもよいし、企業通貨(電子マネーやポイント、ゲーム内通貨等)や地域通貨で表されるものであってもよいし、何らかのサービス等を利用する権利(イベントへの参加権、交通機関の利用権等)であってもよいし、特定のグループ内で価値を持つもの(オンラインゲームで使用されるゲームアイテム等)であってもよい。
【0037】
図3は、第1の実施形態の動作シーケンスの一例を示す図である。ホスト端末20のユーザ(以下、ホストと呼ぶ)は、ホスト端末20を用いてサーバ10にアクセス(ログイン)し、出品リクエストを行う。このとき、ホストは、出品データ量(クライアント端末30に使用を許可する通信データ量)、売却最低価格(売却最低価値の一例)、売却希望価格(売却希望価値の一例)、制限時間(入札を受け付ける期間)などを指定する。
【0038】
サーバ10は、ホスト端末20からの出品リクエストを受け付けて、当該出品リクエストに含まれる出品データ量、売却最低価格、売却希望価格、制限時間などを、当該ホスト端末20(ホストのユーザID、ホスト端末20のIPアドレス等)に関連付けて出品情報として登録する。また、サーバ10は、出品リクエストを行ったホスト端末20の位置情報(現在位置)を取得し、取得した位置情報を当該ホスト端末20に関連付けて登録する。ホスト端末20の位置情報は、ホスト端末20に備わる測位部(GPS受信機等)で測位された位置情報や、ホスト端末20が接続している基地局50の基地局情報に基づく位置情報である。更に、サーバ10は、出品リクエストを行ったホスト端末20のインターネット接続の通信状況を評価し、評価結果(サービスクラス)を当該ホスト端末20に関連付けて登録する。例えば、ホスト端末20からサーバ10へのアクセスにおける通信レートや遅延(RTT:Round Trip Time)を測定し、測定結果を評価結果としてもよいし、ホスト端末20においてインターネット接続テストを行った結果(通信レートや遅延)を評価結果としてもよい。この場合、通信レートが高いほど、及び、遅延が小さいほど、評価を高くする。また、ホスト端末20の近隣にある基地局の数や電波状況に基づいて、当該ホスト端末20の通信状況を評価したり評価結果を補正したりしてもよい。
【0039】
また、サーバ10は、登録されたホスト端末20に対して一時SSID及び一時パスワード(クライアント端末30との接続時に使用するSSID及びパスワード)を割り当て、割り当てた一時SSID及び一時パスワードを当該ホスト端末20に通知(送信)する。ホスト端末20は、サーバ10から受信した一時SSID及び一時パスワードを設定してWi-Fiテザリングを開始し、当該一時SSIDのブロードキャスト(報知)を開始する。
【0040】
クライアント端末30のユーザ(以下、クライアントと呼ぶ)は、クライアント端末30を用いて基地局60を介した通信によりサーバ10にアクセス(ログイン)し、出品情報リクエストを行う。サーバ10は、出品情報リクエストを行ったクライアント端末30の位置情報(現在位置)を取得し、登録された各ホスト端末20の位置情報を参照して、当該クライアント端末30から所定距離範囲内(無線通信可能な範囲)に位置する近隣のホスト端末20の出品情報のリストを、当該クライアント端末30に送信する。クライアント端末30に送信される出品情報のリストには、近隣のホスト端末20の一時SSID、出品データ量、売却最低価格、売却希望価格、通信状況の評価結果などが含まれる。近隣のホスト端末20の出品情報のリストを受信したクライアント端末30は、近隣のホスト端末20によりブロードキャストされている一時SSIDと出品情報のリストに含まれる一時SSIDとを照合し、近隣のホスト端末20のWi-Fiの電波受信強度に基づいて、各ホスト端末20に対する期待接続レートを算出するようにしてもよい。なお、クライアント端末30では、出品情報のリストについて、出品データ量、売却最低価格、売却希望価格、通信状況の評価結果等の情報を用いてホスト端末20のスクリーニングを行うことができる。
【0041】
クライアントは、近隣のホスト端末20のリストからいずれかのホスト端末20を選択し、購入希望価格(購入希望価値の一例)を指定して、入札を行う。なお、クライアント自身がホスト端末20と購入希望価格を指定して入札を行ってもよいし、クライアント端末30が、クライアントにより予め設定された条件(出品データ量や売却最低価格、売却希望価格、通信状況等に関する条件)を満たすホスト端末20の出品に対して自動的に入札を行うようにしてもよい。
【0042】
サーバ10は、クライアント端末30から送信された入札情報を受け付ける。この入札情報は、クライアントによって指定されたホスト端末20と購入希望価格を含む。サーバ10は、入札情報に含まれる購入希望価格と、入札情報で特定されるホスト端末20の出品情報に含まれる売却最低価格及び売却希望価格とに基づいて、取引の成立可否を判定する。購入希望価格が売却最低価格以上であることが取引成立の条件となる。購入希望価格が売却希望価格以上である場合には、その時点で取引が成立する。そうでない場合には、出品情報に含まれる制限時間が経過した時点において、購入希望価格が最も高いクライアントの入札について取引が成立する。ここで、購入希望価格(入札価格)をそのまま取引成立価格(クライアントの支払い価格)としてもよいし、N-thプライスオークションと呼ばれる手法により取引成立価格を決定してもよい。例えば、N=2である2ndプライスオークションでは、入札価格が最も高いクライアントの入札について取引が成立し当該クライアントが接続権を得るが、取引成立価格は、入札価格が2番目に高いクライアントの入札価格となる。なお、制限時間内に取引が成立しなかった場合には、ホスト端末20に取引の不成立が通知される。この通知を受信したホスト端末20は、一時SSIDのブロードキャストを終了する。
【0043】
取引が成立する場合、サーバ10は、当該取引に係るクライアント端末30に対して、取引成立通知とともに、当該取引に係るホスト端末20に接続するための一時パスワードを通知する。クライアント端末30は、サーバ10から受信した一時パスワードを設定してホスト端末20とのWi-Fi接続を開始(コネクションを確立)し、ホスト端末20
及び基地局50を介した通信によりインターネット40に接続する。
【0044】
ホスト端末20とクライアント端末30とのコネクションが継続している間、ホスト端末20は、実際の通信状況(通信データ量や通信レート)を測定する。また、ホスト端末20は、ホスト端末20にWi-Fi接続するデバイスの数なども測定しておき、不正な通信があった場合等には、アクセスポイント(Wi-Fiテザリング)機能を停止してコネクションを切断する。また、ホスト端末20は、通信データ量が出品データ量に達した(或いは、超過した)場合に、コネクションを切断する。
【0045】
ホスト端末20は、コネクションを切断すると(或いは、クライアント端末30によってコネクションが切断されると)、その旨の通知を、通信状況の測定結果とともにサーバ10に通知する。サーバ10は、ホスト端末20からコネクションを切断した旨の通知を受信すると、クライアント端末30に対して、一時パスワードをリセットする旨の指示を送信し、クライアント端末30は、一時パスワードの設定を消去する。
【0046】
次に、サーバ10は、ホスト端末20から受信した通信状況の測定結果に基づいて決済処理を行う。例えば、実際の通信データ量が、出品データ量よりも少ない場合や、実際の通信レートが、事前に評価(測定)した通信レートや事前に算出された期待接続レートを下回る場合に、取引成立価格を補正(下方修正)して決済処理を行うようにしてもよい。なお、クライアント端末30によりコネクションが切断されたために実際の通信データ量が出品データ量に達しなかった場合には、取引成立価格を補正しないようにしてもよい。なお、クライアントとホストが現金で購入可能なポイントを保有している場合、決済処理において、クライアントが保有するポイントを取引成立価格に相当する量だけ減少させ、ホストが保有するポイントを取引成立価格に相当する量だけ増加させる(取引成立価格に相当する量のポイントをクライアントからホストに移動する)ようにしてもよい。
【0047】
クライアントとホストはそれぞれ移動する可能性があり、例えば、最初にクライアント端末が接続したホスト端末Aが移動し遠ざかるとする。このとき、ホスト端末Aとクライアント端末間のWi-Fiの電波受信強度が低下するとともに、通信レートが低下していく。その一方で、同時刻にホスト端末Bがクライアント端末に対して近づいているものとすると、ホスト端末Bとクライアント端末間の電波受信強度は増大していく。このとき、電波受信強度がある閾値を超えるなど特定の条件を満たしたときに、クライアント端末はホスト端末Aとのコネクションを切断し、ホスト端末Bに対して接続を行う。これは一般的にハンドオーバと呼ばれるような処理である。この方法によってホスト及びクライアントが移動するような場合でも、良好な通信レートを維持することが可能となる。この場合、クライアントは、ホスト端末Bへの接続において再び入札を行ってもよいし、ホスト端末Aとの接続での取引成立価格がホスト端末Bの出品情報に含まれる売却最低価格を上回っている場合などには自動的に取引が成立したとみなしてスムーズなハンドオーバを行ってもよい。また、最初に接続するホスト端末の他に、バックアップとして、予め、他のホスト端末との接続の取引を成立させておくようにしてもよい。
【0048】
また、サーバ10は、クラウドサーバに実装してもよいし、ユーザ端末に近いエッジサーバに実装してもよい。サーバ10をエッジサーバに実装した場合には、サーバ10が存在する近隣エリアのモバイルユーザを取り扱い対象とし、サーバ10をクラウドサーバに実装した場合には、地域に関わりなくサーバ10にアクセスする全モバイルユーザを対象とする。本実施形態に係る通信データ量取引は、Wi-Fiテザリング等による近距離無線通信が可能な、距離的に近いユーザ間でのみ取引が発生するため、入札等において遠方のユーザの情報は不要となるため、サーバ10をエッジサーバに実装することによって、サーバにおける処理を簡易化させることができる。一方で、郊外などユーザの少ない地域では、エッジサーバを配置せずとも、クラウドサーバでまとめて処理を行うようにするこ
とで、安価にシステムを構築することができる。
【0049】
本実施形態によれば、ホスト端末20のユーザが、使用を許可する通信データ量と売却希望価格等を、出品情報としてサーバ10を介してクライアント端末30のユーザに提示し、これに対してクライアント端末30のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。
【0050】
例えば、ユーザAとユーザBが、それぞれ同じ通信データ量を通信キャリアとの契約データ量としてもっているとする。ユーザAは、契約データ量のうち約半分を使用済みであるが、残りの半分を未使用データ量として残している。それに対し、ユーザBは、契約データ量を全て使用済みであり、追加データ量の購入を検討していたとする。このとき、本実施形態に係る通信データ量取引を行うことで、ユーザAは、未使用データ量のうち任意の量を出品し売却することができ、単に余剰データ量として未使用のままにしておくより高い利得を得ることができる。また、ユーザBは、必要なだけの通信データ量を、自ら指定した範囲の価格で購入することができ、通信キャリアから大量の(例えば、1GB単位の)通信データ量を追加購入するよりも利得を高くできると考えられる。このように、本実施形態によって、ユーザ間の自発的な取引が促され、結果として各ユーザが高い利得を得ることが期待される。
【0051】
また、一般的にモバイル通信キャリアは各地域に複数存在し、それぞれが異なった戦略によって基地局等のネットワーク設備を配置しているため、モバイルアクセス環境は一様ではない。例えば、ある地域では、普段はキャリアAのユーザが多いため、キャリアAの基地局が3個あるのに対し、キャリアBの基地局は1個しか存在しないとする。この地域に対し、あるときキャリアBのユーザが多く流入した場合、キャリアBのトラフィックが急増し、ユーザ当たりの通信レートが低下する。このようにバースト的に発生するトラフィックに対処するために設備増強を行うのは、キャリアBにとって非効率でありコスト負担が大きいと考えられる。このとき、本実施形態に係る通信データ量取引によりキャリアBのユーザがキャリアAのユーザに接続することで、キャリアAの潤沢な設備を利用することが可能となる。また、大規模なネットワーク障害などに際しても、通信可能なキャリアへの迂回ルートの生成が可能である。このように、サーバを通じてキャリアを跨いだ適切なロードバランスを実現することができ、モバイル通信キャリアのコスト低減にも寄与することができる。同時に、モバイル通信キャリアの協力が必須ではないため、国や地域を問わずに導入可能であるメリットがある。
【0052】
上記例では、ホスト端末20から、使用を許可する通信データ量(出品データ量)を受け付けて出品情報として登録する場合について説明したが、通信データ量に代えて(或いは、加えて)、使用を許可する接続時間(出品接続時間)を受け付けて出品情報として登録するようにしてもよい。この場合、ホスト端末20は、取引が成立してクライアント端末30とのコネクションを確立してからの接続時間が出品接続時間に達した(或いは、超過した)場合に、コネクションを切断する。
【0053】
また、上記例では、ホスト端末20から売却最低価格や売却希望価格を受け付けて出品情報として登録する場合について説明したが、売却最低価格や売却希望価格を受け付けない(ホストが、売却最低価格や売却希望価格を指定しない)ようにしてもよい。この場合、入札情報に含まれる購入希望価格が、出品情報に含まれる通信データ量や接続時間に応じて定まる価格(通信データ量が大きいほど、接続時間が長いほど高くなる価格)以上であることを、取引成立の条件としてもよい。
【0054】
また、ホストが通信データ量を出品する際に、複数同時に出品できるようにしてもよい。すなわち、ホスト端末20の通信データ量(通信帯域)を仮想的に分割することで、1
つのホスト端末20に対して複数のクライアント端末30が同時に接続を行うことを可能としてもよい。この場合、ホスト端末20と各クライアント端末30間の通信レートが非分割時より低下することから、サーバ10が予め当該ホスト端末20の通信状況の評価結果を低下させておく。また、サーバ10がホスト端末20の出品情報をクライアント端末30に通知する際に、分割数も併せて通知するようにしてもよい。
【0055】
図4は、第1の実施形態に係るサーバ10の処理の一例を示すフローチャートである。まず、登録部101は、ホスト端末20から出品リクエストを受信したか否かを判断し(ステップS10)、出品リクエストを受信した場合(ステップS10のY)には、ホスト端末20から受信した出品リクエストに含まれる、通信データ量、売却最低価格、売却希望価格及び制限時間を、出品情報として当該ホスト端末20に関連付けて登録する(ステップS11)。次に、情報送信部104は、出品リクエストを送信したホスト端末20に対して、一時SSID及び一時パスワードを送信する(ステップS12)。
【0056】
次に、入札処理部102は、クライアント端末30から出品情報リクエストを受信したか否かを判断し(ステップS13)、出品情報リクエストを受信した場合(ステップS13のY)には、当該クライアント端末30の近隣のホスト端末20の出品情報(通信データ量、売却最低価格、売却希望価格及び一時SSID)のリストを、当該クライアント端末30に送信する(ステップS14)。
【0057】
次に、判定部103は、クライアント端末30から入札情報(クライアントにより指定されたホスト端末20、購入希望価格)を受信したか否かを判断し(ステップS15)、入札情報を受信した場合(ステップS15のY)には、受信した入札情報に含まれる購入希望価格と、受信した入札情報で特定されるホスト端末20の出品情報に含まれる売却最低価格及び売却希望価格とに基づいて、取引が成立するか否かを判定する(ステップS16)。取引が成立する(購入希望価格が売却希望価格以上である、購入希望価格が売却最低価格以上であり且つ制限時間内の入札のうち最高額である)場合(ステップS16のY)には、情報送信部104は、取引成立通知(一時パスワード)をクライアント端末30に送信する(ステップS17)。
【0058】
次に、決済処理部105は、ホスト端末20から、コネクションを切断した旨の通知を受信したか否かを判断し(ステップS18)、当該通知を受信した場合(ステップS18のY)には、当該ホスト端末20から受信した接続中の通信状況に関する情報に基づいて、必要に応じて取引成立価格を補正して、決済処理を実行する(ステップS19)。
【0059】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、クライアント端末30が、サーバ10に対して通信データ量の購入希望の登録を行い、ホスト端末20が、サーバ10との間で当該購入希望に対する入札処理を行う。
【0060】
図5は、第2の実施形態の動作シーケンスの一例を示す図である。クライアントは、クライアント端末30を用いて基地局60を介した通信によりサーバ10にアクセス(ログイン)し、購入希望リクエストを行う。このとき、クライアントは、購入希望データ量(使用を希望する通信データ量)、購入最大価格(購入最大価値の一例)、購入希望価格(購入希望価値の一例)、制限時間(入札を受け付ける期間)などを指定する。
【0061】
サーバ10は、クライアント端末30からの購入希望リクエストを受け付けて、当該購入希望リクエストに含まれる購入希望データ量、購入最大価格、購入希望価格、制限時間などを、当該クライアント端末30(クライアントのユーザID、クライアント端末30のIPアドレス等)に関連付けて購入希望情報として登録する。また、サーバ10は、購
入希望リクエストを行ったクライアント端末30の位置情報(現在位置)を取得し、取得した位置情報を当該クライアント端末30に関連付けて登録する。クライアント端末30の位置情報は、クライアント端末30に備わる測位部で測位された位置情報や、クライアント端末30が接続している基地局60の基地局情報に基づく位置情報である。
【0062】
ホストは、ホスト端末20を用いてサーバ10にアクセス(ログイン)し、購入希望情報リクエストを行う。サーバ10は、購入希望情報リクエストを行ったホスト端末20の位置情報(現在位置)を取得し、登録された各クライアント端末30の位置情報を参照して、当該ホスト端末20から所定距離範囲内(無線通信可能な範囲)に位置する近隣のクライアント端末30の購入希望情報のリストを、当該ホスト端末20に送信する。ホスト端末20に送信される購入希望情報のリストには、近隣のクライアント端末30の購入希望データ量、購入最大価格、購入希望価格などが含まれる。
【0063】
ホストは、近隣のクライアント端末30のリストからいずれかのクライアント端末30を選択し、売却希望価格(売却希望価値の一例)を指定して、入札を行う。なお、ホスト自身がクライアント端末30と売却希望価格を指定して入札を行ってもよいし、ホスト端末20が、ホストにより予め設定された条件(購入希望データ量や購入最大価格、購入希望価格等に関する条件)を満たすクライアント端末30の購入希望に対して自動的に入札を行うようにしてもよい。
【0064】
サーバ10は、ホスト端末20から送信された入札情報を受け付ける。この入札情報は、ホストによって指定されたクライアント端末30と売却希望価格を含む。サーバ10は、入札情報に含まれる売却希望価格と、入札情報で特定されるクライアント端末30の購入希望情報に含まれる購入最大価格及び購入希望価格とに基づいて、取引の成立可否を判定する。売却希望価格が購入最大価格以下であることが取引成立の条件となる。売却希望価格が購入希望価格以下である場合には、その時点で取引が成立する。そうでない場合には、購入希望情報に含まれる制限時間が経過した時点において、売却希望価格が最も低いホストの入札について取引が成立する。ここで、売却希望価格(入札価格)をそのまま取引成立価格(クライアントの支払い価格)としてもよいし、N-thプライスオークションと呼ばれる手法により取引成立価格を決定してもよい。例えば、N=2である2ndプライスオークションでは、入札価格が最も低いホストの入札について取引が成立するが、取引成立価格は、入札価格が2番目に低いホストの入札価格となる。なお、制限時間内に取引が成立しなかった場合には、クライアント端末30に取引の不成立が通知される。
【0065】
取引が成立する場合、サーバ10は、当該取引に係るホスト端末20に対して一時SSID及び一時パスワードを割り当て、当該取引に係るホスト端末20及びクライアント端末30に対して、取引成立通知とともに、当該一時SSID及び一時パスワードを通知する。ホスト端末20は、サーバ10から受信した一時SSID及び一時パスワードを設定してWi-Fiテザリングを開始し、クライアント端末30は、サーバ10から受信した一時SSID及び一時パスワードを設定してホスト端末20とのWi-Fi接続を開始(コネクションを確立)し、ホスト端末20及び基地局50を介した通信によりインターネット40に接続する。
【0066】
ホスト端末20とクライアント端末30とのコネクションが継続している間、ホスト端末20は、実際の通信状況(通信データ量や通信レート)を測定する。ホスト端末20は、通信データ量が出品データ量に達した(或いは、超過した)場合等に、コネクションを切断する。
【0067】
ホスト端末20は、コネクションを切断すると(或いは、クライアント端末30によってコネクションが切断されると)、その旨の通知を、通信状況の測定結果とともにサーバ
10に通知する。サーバ10は、ホスト端末20からコネクションを切断した旨の通知を受信すると、クライアント端末30に対して、一時パスワードをリセットする旨の指示を送信し、クライアント端末30は、一時パスワードの設定を消去する。
【0068】
次に、サーバ10は、ホスト端末20から受信した通信状況の測定結果に基づいて決済処理を行う。例えば、実際の通信データ量が、購入希望データ量よりも少ない場合に、取引成立価格を補正(下方修正)して決済処理を行うようにしてもよい。なお、クライアント端末30によりコネクションが切断されたために実際の通信データ量が購入希望データ量に達しなかった場合には、取引成立価格を補正しないようにしてもよい。
【0069】
第2の実施形態によれば、クライアント端末30のユーザが、使用を希望する通信データ量と購入希望価格等を、購入希望情報としてサーバ10を介してホスト端末20のユーザに提示し、これに対してホスト端末20のユーザが入札するという、ユーザ間での自由な通信データ量取引を行う仕組みを実現することができる。また、第2の実施形態によっても、第1の実施形態と同様に、ユーザ間の自発的な取引が促され、結果として各ユーザが高い利得を得ることが期待され、サーバを通じてキャリアを跨いだ適切なロードバランスを実現して、モバイル通信キャリアのコスト低減にも寄与することができ、また、国や地域を問わずに導入可能であるメリットがある。
【0070】
上記例では、クライアント端末30から、使用を希望する通信データ量(購入希望データ量)を受け付けて購入希望情報として登録する場合について説明したが、通信データ量に代えて(或いは、加えて)、使用を希望する接続時間(購入希望接続時間)を受け付けて購入希望情報として登録するようにしてもよい。この場合、ホスト端末20は、取引が成立してクライアント端末30とのコネクションを確立してからの接続時間が購入希望接続時間に達した(或いは、超過した)場合に、コネクションを切断する。
【0071】
また、上記例では、クライアント端末30から購入最大価格や購入希望価格を受け付けて購入希望情報として登録する場合について説明したが、購入最大価格や購入希望価格を受け付けない(クライアントが、購入最大価格や購入希望価格を指定しない)ようにしてもよい。この場合、入札情報に含まれる売却希望価格が、購入希望情報に含まれる通信データ量や接続時間に応じて定まる価格(通信データ量が大きいほど、接続時間が長いほど高くなる価格)以下であることを、取引成立の条件としてもよい。
【0072】
図6は、第2の実施形態に係るサーバ10の処理の一例を示すフローチャートである。まず、登録部101は、クライアント端末30から購入希望リクエストを受信したか否かを判断し(ステップS20)、購入希望リクエストを受信した場合(ステップS20のY)には、クライアント端末30から受信した購入希望リクエストに含まれる、通信データ量、購入最大価格、購入希望価格及び制限時間を、購入希望情報として当該クライアント端末30に関連付けて登録する(ステップS21)。
【0073】
次に、入札処理部102は、ホスト端末20から購入希望情報リクエストを受信したか否かを判断し(ステップS22)、購入希望情報リクエストを受信した場合(ステップS22のY)には、当該ホスト端末20の近隣のクライアント端末30の購入希望情報(通信データ量、購入最大価格及び購入希望価格)のリストを、当該ホスト端末20に送信する(ステップS23)。
【0074】
次に、判定部103は、ホスト端末20から入札情報(ホストにより指定されたクライアント端末30、売却希望価格)を受信したか否かを判断し(ステップS24)、入札情報を受信した場合(ステップS24のY)には、受信した入札情報に含まれる売却希望価格と、受信した入札情報で特定されるクライアント端末30の購入希望情報に含まれる購
入最大価格及び購入希望価格とに基づいて、取引が成立するか否かを判定する(ステップS25)。取引が成立する(売却希望価格が購入希望価格以下である、売却希望価格が購入最大価格以下であり且つ制限時間内の入札のうち最低額である)場合(ステップS25のY)には、情報送信部104は、取引成立通知(一時SSID及び一時パスワード)をホスト端末20及びクライアント端末30に送信する(ステップS26)。
【0075】
次に、決済処理部105は、ホスト端末20から、コネクションを切断した旨の通知を受信したか否かを判断し(ステップS27)、当該通知を受信した場合(ステップS27のY)には、当該ホスト端末20から受信した接続中の通信状況に関する情報に基づいて、必要に応じて取引成立価格を補正して、決済処理を実行する(ステップS28)。
【0076】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0077】
例えば、第1の実施形態の方式(ホストが出品登録を行い、この出品に対してクライアントが入札を行う方式)と、第2の実施形態の方式(クライアントが購入希望の登録を行い、この購入希望に対してホストが入札を行う方式)とを共存させてもよい。この場合、常に両方式を実施可能としてもよいし、例えばホストとクライアントの数の比率など市場の状況に応じて、自動的或いはユーザの意向に応じて各方式を切り替えられるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0078】
1…通信データ量取引システム、20…ホスト端末、30…クライアント端末、40…インターネット、50,60…基地局、100…処理部、101…登録部、102…入札処理部、103…判定部、104…情報送信部、105…決済処理部、110…記憶部、120…通信部