(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】ガス分析装置及びガス分析方法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/00 20060101AFI20230823BHJP
【FI】
G01N31/00 V
G01N31/00 D
(21)【出願番号】P 2019147134
(22)【出願日】2019-08-09
【審査請求日】2022-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2018153721
(32)【優先日】2018-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(72)【発明者】
【氏名】落合 亮太
(72)【発明者】
【氏名】吉村 友志
(72)【発明者】
【氏名】ラクダン マカミール コラレス
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-217985(JP,A)
【文献】特開2014-085111(JP,A)
【文献】特開2006-184114(JP,A)
【文献】特開2009-174920(JP,A)
【文献】特開平09-318578(JP,A)
【文献】特開平05-223782(JP,A)
【文献】特表平08-512409(JP,A)
【文献】特開昭53-132397(JP,A)
【文献】特開昭51-029186(JP,A)
【文献】特開昭51-075004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプルガスが流れる第1流路と、
前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、
前記サンプルガスが流れる第2流路と、
前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、
前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計と、
前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する算出部とを備える、ガス分析装置。
【請求項2】
前記第2分析計は、エタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正される、請求項1記載のガス分析装置。
【請求項3】
前記算出部は、前記第1分析計の全炭化水素濃度と、第2分析計のメタン・エタン合計濃度と、炭素数3以上の特定有機物が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する、請求項1又は2記載のガス分析装置。
【請求項4】
前記算出部は、以下の式により、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する、請求項1乃至3の何れか一項に記載のガス分析装置。
【数4】
x
NMNEHC:前記サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
x
THC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
x
THC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
PF
C3H8[NMNEC-FID]:炭素数3以上の特定有機物(ここではプロパンC
3H
8)が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率
【請求項5】
前記第2流路には、前記ノンメタン・ノンエタンカッタの温度を200~250℃に加熱する加熱部が設けられている、請求項1乃至4の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項6】
前記第1流路に設けられた第1流量調整機構と、
前記第2流路に設けられた第2流量調整機構とを更に備え、
前記第1流量調整機構及び前記第2流量調整機構により、前記第1分析計と前記第2分析計との応答タイミングを一致させている、請求項1乃至5の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項7】
前記サンプルガスが流れる第3流路と、
前記第3流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタと、
前記第3流路において前記ノンメタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン濃度を計測する第3分析計とを更に備えている、請求項1乃至6の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第3分析計のメタン濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する、請求項7記載のガス分析装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度と前記第3分析計のメタン濃度とを用いて、前記サンプルガス中のエタン濃度を算出する、請求項7又は8記載のガス分析装置。
【請求項10】
前記第3流路には、前記ノンメタンカッタの温度を300℃以上に加熱する加熱部が設けられている、請求項7乃至9の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項11】
前記サンプルガスが流れる第3流路と、
前記第3流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタと、
前記第3流路において前記ノンメタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン濃度を計測する第3分析計と、
前記第1流路に設けられた第1流量調整機構と、
前記第2流路に設けられた第2流量調整機構と、
前記第3流路に設けられた第3流量調整機構を更に備え、
前記第1流量調整機構、前記第2流量調整機構及び前記第3流量調整機構により、前記第1分析計と前記第2分析計と前記第3分析計との応答タイミングを一致させている、請求項1乃至5の何れか一項に記載のガス分析装置。
【請求項12】
サンプルガスが流れる流路と、
前記流路に設けられ、前記サンプルガス中の所定の炭化水素成分を除去する炭化水素選択触媒と、
前記流路において前記炭化水素選択触媒の下流に設けられ、前記サンプルガス中の炭化水素成分の濃度を計測する分析計と、
前記炭化水素選択触媒の温度を切り替える温度切替機構とを備え、
前記温度切替機構によって、前記炭化水素選択触媒を200~250℃に加熱して、前記炭化水素選択触媒を前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタとし、前記炭化水素選択触媒を300℃以上に加熱して、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタとする、ガス分析装置。
【請求項13】
サンプルガスが流れる第1流路に、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計を設け、
前記サンプルガスが流れる第2流路に、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタを設け、
前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計を設け、
前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する、ガス分析方法。
【請求項14】
サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計と、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する算出部とを備える、ガス分析装置の校正方法であって、
前記第2分析計を、エタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正する、ガス分析装置の校正方法。
【請求項15】
前記第1分析計は、プロパンを用いて校正する、請求項14記載のガス分析装置の校正方法。
【請求項16】
サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計とを備えるガス分析装置を用いたガス分析方法であって、
前記第1分析計をプロパンを用いて校正した場合の以下の式(A)と、
式(A):x
THC[THC-FID]=x
CH4×RF
CH4[THC-FID]+x
C2H6×RF
C2H6[THC-FID]+x
NMNEHC
x
THC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
x
CH4:サンプルガス中のメタン濃度
RF
CH4[THC-FID]:前記第1分析計におけるメタンの応答係数
x
C2H6:サンプルガス中のエタン濃度
RF
C2H6[THC-FID]:前記第1分析計におけるエタンの応答係数
x
NMNEHC:サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
前記第2分析計をエタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正した場合の以下の式(B)と、
式(B):x
THC[NMNEC-FID]=x
CH4×RF
CH4[NMNEC-FID]×PF
CH4[NMNEC-FID]+x
C2H6+x
NMNEHC×RF
C3H8[NMNEC-FID]×PF
C3H8[NMNEC-FID]
x
THC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
RF
CH4[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタンの応答係数
PF
CH4[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタンの透過率
RF
C3H8[NMNEC-FID]:前記第2分析計のプロパンの応答係数
PF
C3H8[NMNEC-FID]:前記第2分析計のプロパンの透過率
を用いて、以下の式(1)を導出し、
【数5】
x
NMNEHC:前記サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
x
THC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
x
THC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
PF
C3H8[NMNEC-FID]:炭素数3以上の特定有機物(ここではプロパンC
3H
8)が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率
上記式(1)を用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する、ガス分析方法。
【請求項17】
前記式(A)において、エタンの応答係数RF
C2H6[THC-FID]を1.0とみなして、以下の式(A’)を導出し、
式(A’):x
THC[THC-FID]=x
CH4×RF
CH4[THC-FID]+x
C2H6+x
NMNEHC
前記式(B)において、PF
CH4[NMNEC-FID]を1.0とみなすとともに、エタン校正している前記第2分析計のプロパンの応答係数を1.0とみなして、以下の式(B’)を導出し、
式(B’):x
THC[NMNEC-FID]=x
CH4×RF
CH4[NMNEC-FID]+x
C2H6+x
NMNEHC×PF
C3H8[NMNEC-FID]
前記第1分析計及び前記第2分析計の構成が同じ場合に、RF
CH4[THC-FID]とRF
CH4[NMNEC-FID]とが同じであることから、以下の式(C)を導出し、
式(C):x
THC[THC-FID]=x
THC[NMNEC-FID]-x
NMNEHC×PF
C3H8[NMNEC-FID]+x
NMNEHC
この式(C)から、前記式(1)を導出する、請求項16記載のガス分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分析装置及びガス分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、排ガスに含まれるTHC(Total Hydro- Carbon )からメタン(CH4)を除いた非メタン炭化水素(NMHC:Non-Methane Hydro-Carbon)の濃度を求めるものが考えられている。
【0003】
このガス分析装置では、水素炎イオン化法(FID:Flame Ionization Detector)を用いた検出器を用いて構成されており、排ガス中のTHC濃度を検出器により計測するとともに、排ガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタ(NMC:Non-Methane Cutter)を通過した排ガスに含まれるCH4濃度を検出器により計測する。そして、ガス分析装置は、それら検出器により得られた濃度の差分からメタン以外の炭化水素成分(NMHC)の濃度を算出する。
【0004】
ここで、NMCの役割は、メタン以外の炭化水素成分を触媒効果により酸化させ除去することであり、その性能は、メタンを透過させる比率、及び、メタンの次に酸化しにくいエタンを透過させる比率で評価される。前者はメタン透過効率と呼ばれ、高ければ高いほど良く、後者はエタン透過効率と呼ばれ、低ければ低いほど良いとされる。メタン透過効率は85%以上、エタン透過効率は2%以下が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、近年では、天然ガス可採量の増加に伴い、天然ガス車両の市場が大きくなっている。そのため天然ガス車両の計測要求も高まっている。天然ガスの成分は主にメタン、エタンであり、天然ガス車両の排ガス中にもこれらの成分が多く含まれている。しかし、メタン、エタンは光化学スモッグなどの大気汚染への寄与度は低く、規制対象から除くべく、メタン、エタン以外の炭化水素(NMNEHC:Non-Methane Non-Ethane Hydro-Carbon)濃度を測定することが求められている。そして、NMNEHCの濃度を計測する手法としてGC-FIDを用いることが考えられている。
【0007】
しかしながら、GC-FIDを用いてNMNEHCの濃度を計測する場合には、充填剤を詰めたカラムにサンプルガスを流して、通過時間の違いにより各成分を分離する必要があり、バッチ測定であることから連続測定することができない。
【0008】
そこで本発明は上記問題点を解決すべくなされたものであり、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分(NMNEHC)の濃度を連続測定できるようにすることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明に係るガス分析装置は、サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計と、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する算出部とを備えることを特徴とする。
【0010】
このようなものであれば、メタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタを用いて第2分析計によりサンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を連続計測することができるので、第1分析計により連続計測されるTHC濃度と併せて、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することができる。その結果、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分(NMNEHC)の濃度を連続測定できるようになる。
【0011】
具体的に算出部は、前記第1分析計の全炭化水素濃度と、第2分析計のメタン・エタン合計濃度と、炭素数3以上の特定有機物が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することが考えられる。
【0012】
詳細に算出部は、以下の式により、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することが考えられる。
【0013】
【数1】
x
NMNEHC:前記サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
x
THC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
x
THC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
PF
C3H8[NMNEC-FID]:炭素数3以上の特定有機物(ここではプロパンC
3H
8)が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率
【0014】
上記の式は、前記第2分析計がエタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正されることを前提としている。
【0015】
本発明のガス分析装置は、前記サンプルガスが流れる第3流路と、前記第3流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタと、前記第3流路において前記ノンメタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン濃度を計測する第3分析計とを更に備えていることが望ましい。
【0016】
この構成において、前記算出部は、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第3分析計のメタン濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分(NMHC)の濃度を算出することが望ましい。
【0017】
また、前記算出部は、前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度と前記第3分析計のメタン濃度とを用いて、前記サンプルガス中のエタン濃度を算出することが望ましい。
【0018】
ノンメタン・ノンエタンカッタにより、メタン及びエタン以外の炭化水素成分を効率良く除去するとともに、メタン及びエタンを選択的に通過させるためには、前記第2流路には、前記ノンメタン・ノンエタンカッタの温度を200~250℃に加熱する加熱部が設けられていることが望ましい。
【0019】
ノンメタンカッタにより、メタン以外の炭化水素成分を効率良く除去するとともに、メタンを選択的に通過させるためには、前記第3流路には、前記メタンカッタの温度を300℃以上に加熱する加熱部が設けられていることが望ましい。
【0020】
第2流路にノンメタン・ノンエタンカッタを設けることによって、第1分析計と第2分析計との応答タイミングが異なってしまい、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を精度良く分析することが難しくなってしまう。
この問題を好適に解決するためには、本発明のガス分析装置は、前記第1流路に設けられた第1流量調整機構と、前記第2流路に設けられた第2流量調整機構とを更に備えており、前記第1流量調整機構及び前記第2流量調整機構により、前記第1分析計と前記第2分析計との応答タイミングを一致させていることが望ましい。
【0021】
同様に、第3流路にノンメタンカッタを設けることによって、第1分析計と第2分析計と第3分析計との応答タイミングが異なってしまい、各成分の濃度を精度良く分析することが難しくなってしまう。
本発明のガス分析装置は、前記第3流路に設けられた第3流量調整機構を更に備えており、前記第1流量調整機構、前記第2流量調整機構及び前記第3流量調整機構により、前記第1分析計と前記第2分析計と前記第3分析計との応答タイミングを一致させていることが望ましい。
【0022】
また、本発明に係るガス分析装置は、サンプルガスが流れる流路と、前記流路に設けられ、前記サンプルガス中の所定の炭化水素成分を除去する炭化水素選択触媒と、前記流路において前記炭化水素選択触媒の下流に設けられ、前記サンプルガス中の炭化水素成分の濃度を計測する分析計と、前記炭化水素選択触媒の温度を切り替える温度切替機構とを備え、前記温度切替機構によって、前記炭化水素選択触媒を200~250℃に加熱して、前記炭化水素選択触媒を前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタとし、前記炭化水素選択触媒を300℃以上に加熱して、前記サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタとすることを特徴とする。
このガス分析装置であれば、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分(NMNEHC)の濃度を測定できるだけでなく、サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分(NMHC)の濃度を測定できるようになる。また、ノンメタン・ノンエタンカッタとノンメタンカッタとを共通の炭化水素選択触媒を用いて構成することができ、流路構成を簡単にすることができる。
【0023】
また、本発明に係るガス分析方法は、サンプルガスが流れる第1流路に、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計を設け、前記サンプルガスが流れる第2流路に、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタを設け、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計を設け、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することを特徴とする。
【0024】
さらに、本発明に係るガス分析装置の校正方法は、サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計と、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する算出部とを備える、ガス分析装置の校正方法であって、前記第2分析計を、エタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正することを特徴とする。また、第1分析計は、プロパンを用いて校正することが望ましい。
【0025】
その上、本発明に係るガス分析方法は、サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計とを備えるガス分析装置を用いたガス分析方法であって、
前記第1分析計をプロパンを用いて校正した場合の以下の式(A)と、
式(A):xTHC[THC-FID]=xCH4×RFCH4[THC-FID]+xC2H6×RFC2H6[THC-FID]+xNMNEHC
xTHC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
xCH4:サンプルガス中のメタン濃度
RFCH4[THC-FID]:前記第1分析計におけるメタンの応答係数
xC2H6:サンプルガス中のエタン濃度
RFC2H6[THC-FID]:前記第1分析計におけるエタンの応答係数
xNMNEHC:サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
前記第2分析計をエタンを用いて前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過させて校正した場合の以下の式(B)と、
式(B):xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×RFCH4[NMNEC-FID]×PFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6+xNMNEHC×RFC3H8[NMNEC-FID]×PFC3H8[NMNEC-FID]
xTHC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
RFCH4[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタンの応答係数
PFCH4[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタンの透過率
RFC3H8[NMNEC-FID]:前記第2分析計のプロパンの応答係数
PFC3H8[NMNEC-FID]:前記第2分析計のプロパンの透過率
を用いて、以下の式(1)を導出し、
【0026】
【数2】
x
NMNEHC:前記サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度
x
THC[THC-FID]:前記第1分析計の全炭化水素濃度
x
THC[NMNEC-FID]:前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度
PF
C3H8[NMNEC-FID]:炭素数3以上の特定有機物(ここではプロパンC
3H
8)が前記ノンメタン・ノンエタンカッタを通過する割合である特定有機物透過率
上記式(1)を用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することを特徴とする。
また、前記式(A)において、エタンの応答係数RF
C2H6[THC-FID]を1.0とみなして、以下の式(A’)を導出し、
式(A’):x
THC[THC-FID]=x
CH4×RF
CH4[THC-FID]+x
C2H6+x
NMNEHC
前記式(B)において、PF
CH4[NMNEC-FID]を1.0とみなすとともに、エタン校正している前記第2分析計のプロパンの応答係数を1.0とみなして、以下の式(B’)を導出し、
式(B’):x
THC[NMNEC-FID]=x
CH4×RF
CH4[NMNEC-FID]+x
C2H6+x
NMNEHC×PF
C3H8[NMNEC-FID]
前記第1分析計及び前記第2分析計の構成が同じ場合に、RF
CH4[THC-FID]とRF
CH4[NMNEC-FID]とが同じであることから、以下の式(C)を導出し、
式(C):x
THC[THC-FID]=x
THC[NMNEC-FID]-x
NMNEHC×PF
C3H8[NMNEC-FID]+x
NMNEHC
この式(C)から、前記式(1)を導出することが望ましい。
【発明の効果】
【0027】
以上に述べた本発明によれば、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を連続測定できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本実施形態のガス分析装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】同実施形態のNMNECの温度と炭化水素の透過率との関係を示すグラフである。
【
図3】変形実施形態のガス分析装置の構成を模式的に示す図である。
【
図4】変形実施形態のガス分析装置の構成を模式的に示す図である。
【
図5】変形実施形態のガス分析装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の一実施形態に係るガス分析装置について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
<装置構成>
本実施形態のガス分析装置100は、例えば内燃機関から排出される排ガスに含まれる炭化水素を分析するものである。
【0031】
具体的にこのガス分析装置100は、
図1に示すように、サンプルガスである排ガスが流れる第1流路L1と、当該第1流路L1に設けられ、排ガス中の全炭化水素濃度(THC濃度)を計測する第1分析計2と、第1流路L1とは別に設けられ、排ガスが流れる第2流路L2と、当該第2流路L2に設けられ、排ガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分(NMNEHC)を除去するノンメタン・ノンエタンカッタ(NMNEC)3と、第2流路L2においてNMNEC3の下流に設けられ、排ガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計4とを備えている。
【0032】
本実施形態の第1流路L1及び第2流路L2は、排ガスが導入される導入ポートP1を有するメイン流路MLの所定の分岐点BPから分岐している。
【0033】
第1流路L1及び第2流路L2にはそれぞれ、第1分析計2と第2分析計4との応答タイミングを一致させるために、第1流量調整機構5及び第2流量調整機構6が設けられている。
【0034】
第1流量調整機構5は、第1流路L1において第1分析計2の上流側に設けられた例えばキャピラリにより構成されており、第2流量調整機構6は、第2流路L2において第2分析計4の上流側に設けられた例えばキャピラリにより構成されている。
【0035】
第2流路L2に設けられたNMNEC3は、酸化触媒であって、二酸化マンガンを用いることもできるし、酸化触媒となるその他の金属であっても良い。また、NMNEC3は、200~250℃に加熱されている。具体的には、第2流路L2にNMNEC3を前記温度に加熱するための加熱部7が設けられている。この温度に加熱することによって、
図2に示すように、NMNEC3によりメタン及びエタン以外の炭化水素成分(
図2ではプロパンC
3H
8)を効率良く燃焼させて除去し、メタン及びエタンを効率良く(例えば80%以上)通過させることができる。
【0036】
第1分析計2及び第2分析計4は、水素炎イオン化(FID)法により排ガス中の炭化水素を検出するFID検出器である。このFID検出器には、燃料ガス(例えばH
2、又は、H
2/Heの混合ガス)と助燃用空気とが供給される。
図1において、符号8は、第1分析計2及び第2分析計4に燃料ガスを供給する燃料ガス供給ラインであり、符号9は、第1分析計2及び第2分析計4に助燃用空気を供給する助燃用空気供給ラインである。その他、符号10は、第1分析計2及び第2分析計4を校正するための校正ガスを供給する校正ガス供給ラインである。また、ガス分析装置100は、加熱ブロックB1~B3により各分析計2、4及び各流路が所定温度に加熱されている。
【0037】
そして、ガス分析装置100は、第1分析計2及び第2分析計4により得られた各濃度から、排ガス中のNMNEHCの濃度を算出する算出部11を備えている。
【0038】
算出部11は、第1分析計2の全炭化水素濃度と第2分析計4のメタン・エタン合計濃度とを用いて、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出するものである。
【0039】
具体的に算出部11は、第1分析計2のTHC濃度xTHC[THC-FID]と、第2分析計4のメタン・エタン合計濃度xTHC[NMNEC-FID]と、炭素数3以上の特定有機物(ここではプロパンC3H8)がNMNEC3を通過する割合である特定有機物透過率PFC3H8[NMNEC-FID]とを用いて、以下の式により、NMNEHC濃度を算出する。
【0040】
【0041】
以下に、上記数1の導出について説明する。
【0042】
第1分析計2により得られるTHC濃度xTHC[THC-FID]は、第1分析計2におけるメタンの応答係数RFCH4[THC-FID]、第1分析計2におけるエタンの応答係数RFC2H6[THC-FID]、サンプルガス中のメタン濃度xCH4、サンプルガス中のエタン濃度xC2H6、サンプルガス中のメタン・エタン以外の炭化水素成分の濃度xNMNEHCを用いて、以下の式となる。
【0043】
xTHC[THC-FID]=xCH4×RFCH4[THC-FID]+xC2H6×RFC2H6[THC-FID]+xNMNEHC (2)
【0044】
上記の式(2)は、第1分析計2(THC-FID)がプロパンC3H8の標準ガスを用いて校正されることを前提としている。したがって、RFCH4[THC-FID]及びRFC2H6[THC-FID]は、プロパン校正している第1分析計2のメタン及びエタンの応答係数である。なお、応答係数は、校正ガスに対する、対象成分の感度差(比率)である。さらに、エタンの応答係数は1.0とみなすことができることから、式(2)は、以下の式とみなすことができる。
【0045】
xTHC[THC-FID]=xCH4×RFCH4[THC-FID]+xC2H6+xNMNEHC (3)
【0046】
第2分析計4(NMNEC-FID)により得られる濃度は、校正方法に応じて、その濃度演算式が異なる。
【0047】
(A)プロパンを用いてNMNECをバイパスして校正した場合
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×RFCH4[NMNEC-FID]×PFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6×RFC2H6[NMNEC-FID]×PFC2H6[NMNEC-FID]+xNMNEHC×PFC3H8[NMNEC-FID] (4)
【0048】
(B)メタンを用いてNMNECを通過させて校正した場合
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4+xC2H6×RFC2H6[NMNEC-FID]×PFC2H6[NMNEC-FID]+xNMNEHC×RFC3H8[NMNEC-FID]×PFC3H8[NMNEC-FID] (5)
【0049】
(C)メタンを用いてNMNECをバイパスして校正した場合
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×PFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6×RFC2H6[NMNEC-FID]×PFC2H6[NMNEC-FID]+xNMNEHC×RFC3H8[NMNEC-FID]×PFC3H8[NMNEC-FID] (6)
【0050】
(D)エタンを用いてNMNECを通過させて校正した場合
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×RFCH4[NMNEC-FID]×PFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6+xNMNEHC×RFC3H8[NMNEC-FID]×PFC3H8[NMNEC-FID] (7)
【0051】
(E)エタンを用いてNMNECをバイパスして校正した場合
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×RFCH4[NMNEC-FID]×PFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6×PFC2H6[NMNEC-FID]+xNMNEHC×RFC3H8[NMNEC-FID]×PFC3H8[NMNEC-FID] (8)
【0052】
xTHC[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDの計測値
RFCH4[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのメタンの応答係数
PFCH4[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのメタンの透過率
RFC2H6[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのエタンの応答係数
PFC2H6[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのエタンの透過率
RFC3H8[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのプロパンの応答係数
PFC3H8[NMNEC-FID]:NMNEC-FIDのプロパンの透過率
【0053】
上記の式(2)~(8)において、メタン濃度及びエタン濃度は測定することができないので、濃度演算式を簡略化するためにそれらを消去する必要がある。そこで、式(3)及び式(7)に着目して、PFCH4[NMNEC-FID]及びRFC3H8[NMNEC-FID]が除去できれば、これら2つの式を組み合わせることができる。なお、式(4)、式(5)、式(6)、式(8)を用いた場合には、メタン濃度及びエタン濃度を消去することができないので、NMNEHCの濃度を算出することができない。
【0054】
ここで、NMNEC3は200~250℃に加熱されていることから、PFCH4[NMNEC-FID]は1.0程度であると想定でき、PFCH4[NMNEC-FID]を式(7)から除くことができる。
【0055】
また、エタン校正している第2分析計4のプロパンの応答係数は1.0とみなすことができるため、式(7)から除くことができる。
【0056】
その結果、以下の式を得ることができる。
xTHC[NMNEC-FID]=xCH4×RFCH4[NMNEC-FID]+xC2H6+xNMNEHC×PFC3H8[NMNEC-FID] (9)
【0057】
また、第1分析計2及び第2分析計4の構成が同じであるので、RFCH4[THC-FID]とRFCH4[NMNEC-FID]とは同じとみなすことができる。
【0058】
従って、式(3)及び式(9)から以下の式を得ることができる。
xTHC[THC-FID]=xTHC[NMNEC-FID]-xNMNEHC×PFC3H8[NMNEC-FID]+xNMNEHC (10)
【0059】
この式(10)をxNMNEHCについてまとめると、上記の式(1)を導出することができる。上記の通り、式(1)を導出する上で、各炭化水素成分の透過率PF及び応答係数RFを考慮している。
この式(1)から、PFC3H8[NMNEC-FID]のみを調べることによって、第1分析計2(THC-FID)により得られた濃度xTHC[THC-FID]と、第2分析計4(NMNEC-FID)により得られた濃度xTHC[NMNEC-FID]とからNMNEHCの濃度を求めることができることが分かる。
【0060】
<本実施形態の効果>
本実施形態のガス分析装置100によれば、メタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するNMNEC3を用いて第2分析計4によりサンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を連続計測することができるので、第1分析計2により連続計測されるTHC濃度と併せて、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することができる。その結果、サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分(NMNEHC)の濃度を連続測定できるようになる。
【0061】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0062】
図3に示すように、ガス分析装置100が、サンプルガスが流れるとともに、サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタ(NMC)12が設けられた第3流路L3と、第3流路L3に設けられ、サンプルガス中のメタン濃度を計測する第3分析計13とを更に備えていても良い。このとき、第3流路L3には、NMC12の温度を300℃以上に加熱する加熱部14が設けられている。
【0063】
そして、算出部11は、第1分析計2の全炭化水素濃度と第3分析計13のメタン濃度とを用いて、サンプルガス中のメタン以外の炭化水素成分の濃度を算出することができる。また、算出部11は、第2分析計4のメタン・エタン合計濃度と第3分析計13のメタン濃度とを用いて、サンプルガス中のエタン濃度を算出することもできる。
【0064】
さらに、第3流路L3には、第1分析計2及び第2分析計4と第3分析計13との応答タイミングを一致させるために、第3流量調整機構15が設けられている。第3流量調整機構15は、第3流路L3において第3分析計13の上流側に設けられた例えばキャピラリにより構成されている。
【0065】
加えて、ガス分析装置100は、
図4に示すように、第3流路L3におけるNMC12の下流側及び第2流路L2におけるNMNEC3の下流側を合流させて共通の分析計4にサンプルガスを導入するようにしても良い。この場合、サンプルガスが流れる流路を第2流路L2と第3流路L3とを切り替える例えば開閉弁V1、V2からなる流路切替機構16を設ける。第2流路L2に切り替えることによって、分析計4がメタン・エタン合計濃度を測定することになり、第3流路L3に切り替えることによって、分析計4がメタン濃度を測定することになる。この構成であれば、分析計の台数を削減することができ、ガス分析装置のコスト低減等を可能にすることができる。
【0066】
前記実施形態のガス分析装置の構成に限られず、本発明のガス分析装置は、サンプルガスが流れる第1流路と、前記第1流路に設けられ、前記サンプルガス中の全炭化水素濃度を計測する第1分析計と、前記サンプルガスが流れる第2流路と、前記第2流路に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタと、前記第2流路において前記ノンメタン・ノンエタンカッタの下流に設けられ、前記サンプルガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する第2分析計と、前記第1分析計の全炭化水素濃度と前記第2分析計のメタン・エタン合計濃度とを用いて、前記サンプルガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する算出部とを備えていれば良い。
【0067】
その上、ガス分析装置100は、
図5に示すように、サンプルガスである排ガスが流れる第1流路L1と、当該第1流路L1に設けられ、排ガス中の全炭化水素濃度(THC濃度)を計測する第1分析計2と、第1流路L1とは別に設けられ、排ガスが流れる第2流路L2と、当該第2流路L2に設けられ、排ガス中の所定の炭化水素成分を除去する炭化水素選択触媒17と、第2流路L2において炭化水素選択触媒17の下流に設けられ、排ガス中の炭化水素成分の濃度を計測する分析計18と炭化水素選択触媒17の温度を切り替える温度切替機構19とを備えてもよい。分析計18は、水素炎イオン化(FID)法により排ガス中の炭化水素を検出するFID検出器である。炭化水素選択触媒17は、温度に応じて除去する炭化水素成分を選択できる触媒であり、温度に応じて例えばノンメタンカッタ又はノンメタン・ノンエタンカッタとなる。なお、炭化水素選択触媒17は、メタン又はメタン及びエタンを選択的に除去するだけでなく、その他の炭化水素を選択的に除去できるものであってもよい。温度切替機構19は、前記実施形態と同様に、設定温度が変更可能な加熱部により構成されている。
【0068】
そして、温度切替機構19によって、炭化水素選択触媒17を200~250℃に加熱して、炭化水素選択触媒17を排ガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタン・ノンエタンカッタとする。これにより、分析計18は、排ガス中のメタン及びエタンのメタン・エタン合計濃度を計測する。ここで、ガス分析装置100の算出部は、第1分析計2のTHC濃度と分析計18のメタン・エタン合計濃度とから、排ガス中のメタン及びエタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する。
【0069】
また、温度切替機構19によって、炭化水素選択触媒17を300℃以上に加熱して、排ガス中のメタン以外の炭化水素成分を除去するノンメタンカッタとする。これにより、分析計18は、排ガス中のメタンの濃度を計測する。ここで、ガス分析装置100の算出部は、第1分析計2のTHC濃度と分析計18のメタン濃度とから、排ガス中のメタン以外の炭化水素成分の濃度を算出する。
【0070】
なお、温度切替機構19による温度の切替は、ユーザにより手動で設定できるように構成してもよいし、例えば所定の測定シーケンス等によって自動で設定できるように構成しても良い。また、上述した説明では、分析計2,4,18をFID検出器であるとしたが、炭化水素成分を測定できるものであれば如何なる分析器を用いてもよい。
【0071】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【符号の説明】
【0072】
100・・・ガス分析装置
L1 ・・・第1流路
2 ・・・第1分析計
L2 ・・・第2流路
3 ・・・ノンメタン・ノンエタンカッタ(NMNEC)
4 ・・・第2分析計
5 ・・・第1流量調整機構
6 ・・・第2流量調整機構
7 ・・・加熱部
11 ・・・算出部
L3 ・・・第3流路
12 ・・・ノンメタンカッタ(NMC)
13 ・・・第3分析計
14 ・・・加熱部
15 ・・・第3流量調整機構
17 ・・・炭化水素選択触媒
18 ・・・分析計
19 ・・・温度切替機構