(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、及びガラス基板のエッチング方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/039 20060101AFI20230823BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20230823BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20230823BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G03F7/039 601
G03F7/004 501
G03F7/40 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2019158539
(22)【出願日】2019-08-30
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2019036725
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】植松 照博
【審査官】中山 千尋
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-029212(JP,A)
【文献】特開2015-101500(JP,A)
【文献】特開平11-286535(JP,A)
【文献】特開2005-070154(JP,A)
【文献】特開昭61-039041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/40
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生させる酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含むか、又は、
フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、前記フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、前記酸発生剤(B)と、前記フィラー(C)と、前記可塑剤(D)とを含み、
前記樹脂成分(A)が、フェノール性水酸基の少なくとも一部が前記酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂であり、
前記樹脂成分(A1)が、フェノール性水酸基の少なくとも一部が前記酸解離性溶解抑制基により保護されてい
るノボラック樹脂
若しくはポリヒドロキシスチレン樹脂
、又は、フェノール性水酸基の少なくとも一部が前記酸解離性溶解抑制基により保護されていないノボラック樹脂若しくはポリヒドロキシスチレン樹脂であり、
ガラス基板上にエッチングマスクを形成するために用いられる、感光性樹脂組成物
であって、
前記感光性樹脂組成物が、前記樹脂成分(A)と、前記酸発生剤(B)と、前記フィラー(C)と、前記可塑剤(D)とを含む場合に、前記樹脂成分(A)が、前記ノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂と、式(I)で表される化合物との反応物を含み、
前記感光性樹脂組成物が、前記樹脂成分(A1)と、前記保護剤(A2)と、前記酸発生剤(B)と、前記フィラー(C)と、前記可塑剤(D)とを含む場合に、前記保護剤(A2)が、式(I)で表される前記化合物を含み、
前記式(I)が下式:
H
2
C=CH-O-A
a1
-O-CH=CH
2
・・・(I)
で表され、
前記式(I)において、A
a1
が、置換基を有してもよく、主鎖にエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、又は下記式(II):
-(A
a2
)
na
-A
a3
-(A
a2
)
na
-・・・(II)
で表される基であり、
前記式(II)において、A
a2
が、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、A
a3
がシクロヘキシレン基であり、naが0又は1である、前記感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記可塑剤(D)が、ポリビニルアルキルエーテルを含む、請求項
1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
溶剤(S)を含み、前記溶剤(S)が、大気圧下での沸点が170℃以上である高沸点溶剤(S1)を含む、請求項1
又は2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の前記感光性樹脂組成物を、ガラス基板の少なくとも一方の主面に塗布して、前記ガラス基板の主面上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
前記塗布膜を、位置選択的に露光する露光工程と、
露光された前記塗布膜を、現像液により現像して、エッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程と、
前記エッチングマスクを備える前記ガラス基板に対してエッチング加工を施す、エッチング工程と、
エッチングマスクを除去する、除去工程と、
を含む、ガラス基板のエッチング方法。
【請求項5】
前記エッチング加工が、前記ガラス基板を厚さ方向に貫通する孔を形成する孔開け加工である、請求項
4に記載のガラス基板のエッチング方法。
【請求項6】
前記エッチングマスクを、前記ガラス基板の2つの主面の双方において形成し、
前記エッチング加工を、前記ガラス基板の2つの主面の双方に対して施す、請求項
4又は
5に記載のガラス基板のエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板上にエッチングマスクを形成するために用いられる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いてガラス基板上にエッチングマスクを形成することを含むガラス基板のエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル用ガラス基板を含むディスプレイ用ガラス基板や、パッケージデバイス用のガラス基板について、切断やホール形成等の加工が行われることが多い。従来、ガラス基板におけるこのような加工方法として、物理的方法が一般的であった。しかし、ガラス基板の物理的加工には、加工の際にガラス基板にクラックが入りやすかったり、ガラス基板の強度の低下による歩留まりの低下が生じたりする問題があった。
【0003】
そこで、近年、レジスト組成物をパターニングして得られる樹脂パターンをマスクとしてガラス基板をエッチング加工する化学的方法が提案されている(例えば特許文献1を参照)。このような化学的方法によれば、加工の際に物理的な負荷がかからないため、ガラス基板にクラックが入りにくい。
【0004】
このようなガラス基板のエッチング加工方法においては、ガラス基板のエッチングに用いるエッチャントに対する耐性が高く、ガラス基板への密着性に優れるエッチングマスクを形成しやすいこと等から、特許文献1に記載されるように、ラジカル重合性化合物やエポキシ化合物を含むネガ型の感光性組成物を露光により硬化させて、パターニングされたエッチングマスクを形成することが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エッチング加工されるガラス基板には、金属配線が設けられていることや、ポリイミド等の樹脂からなる樹脂層が設けられていることが多い。
また、特許文献1に記載されるように、ネガ型の感光性組成物を用いてパターニングされたエッチングマスクを形成する場合、ガラス基板からエッチングマスクを剥離させる際に、アルカリ性の剥離液が通常使用される。しかしながら、アルカリ性の剥離液を用いる場合、ガラス基板自体や、ガラス基板に付随する金属配線や樹脂材料にダメージが生じやすい。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであって、ガラス基板のエッチングに用いるエッチャントに対する十分な耐性を有し、有機溶剤系の剥離液によって剥離し得るエッチングマスクを形成できる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いてエッチングマスクを形成することを含むガラス基板のエッチング方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ガラス基板をエッチングする際のエッチングマスクの形成に、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生させる酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む感光性樹脂組成物か、フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む感光性樹脂組成物を用いることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の第1の態様は、
酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生させる酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含むか、又は、
フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含み、
樹脂成分(A)が、フェノール性水酸基の少なくとも一部が酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂であり、
樹脂成分(A1)が、フェノール性水酸基の少なくとも一部が酸解離性溶解抑制基により保護されていてもよいノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂であり、
ガラス基板上にエッチングマスクを形成するために用いられる、感光性樹脂組成物である。
【0010】
本発明の第2の態様は、
第1の態様にかかる感光性樹脂組成物を、ガラス基板の少なくとも一方の主面に塗布して、ガラス基板の主面上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
塗布膜を、位置選択的に露光する露光工程と、
露光された塗布膜を、現像液により現像して、エッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程と、
エッチングマスクを備えるガラス基板に対してエッチング加工を施す、エッチング工程と、
エッチングマスクを除去する、除去工程と、
を含む、ガラス基板のエッチング方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ガラス基板のエッチングに用いるエッチャントに対する十分な耐性を有し、有機溶剤系の剥離液によって剥離し得るエッチングマスクを形成できる感光性樹脂組成物と、当該感光性樹脂組成物を用いてエッチングマスクを形成することを含むガラス基板のエッチング方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
≪感光性樹脂組成物≫
感光性樹脂組成物は、ガラス基板上にエッチングマスクを形成するために用いられる組成物である。
感光性樹脂組成物は、酸解離性溶解抑制基を有し、酸の作用によりアルカリ可溶性が増大する樹脂成分(A)と、放射線の照射により酸を発生させる酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含むか、又は、
フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む。
以下、上記の樹脂成分(A)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む感光性樹脂組成物を、第1の感光性樹脂組成物と称する。
また、上記のフェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む感光性樹脂組成物を第2の感光性樹脂組成物と称する。
【0013】
<第1の感光性樹脂組成物>
前述の通り、第1の感光性樹脂組成物は、上記の樹脂成分(A)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む。以下、第1の感光性樹脂組成物の必須、又は任意の成分について説明する。
【0014】
[樹脂成分(A)]
樹脂成分(A)は、フェノール性水酸基の少なくとも一部が酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂である。
樹脂成分(A)として、芳香族骨格を有するノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂に由来する樹脂を用いることにより、第1の感光性樹脂組成物を用いて形成されるエッチングマスクは、フッ化水素酸水溶液等のエッチャントに対する耐性に優れる。
【0015】
エッチングマスクのエッチャントに対する優れた耐性と、有機溶剤によるエッチングマスクの剥離の容易さとを特に両立しやすいことから、樹脂成分(A)が、ノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂と、後述する式(I)で表されるジビニルエーテル化合物との反応物を含むのが好ましい。
ノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂と、後述する式(I)で表されるジビニルエーテル化合物との反応物においては、ノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂の分子が、フェノール性水酸基と式(I)で表されるジビニルエーテル化合物との反応によって、2価の酸解離性溶解抑制基で架橋されている。
【0016】
以下、酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂と、酸解離性溶解抑制基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂とについて説明する。
【0017】
(ノボラック樹脂)
酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂は、フェノール性水酸基の少なくとも一部が酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂である。酸解離性溶解抑制基により水酸基を保護されるノボラック樹脂は特に限定されず、周知のノボラック樹脂から適宜選択し得る。
例えば、酸解離性溶解抑制基により保護されたノボラック樹脂としては、下記式(a1)で表される、酸解離性溶解抑制基で保護されたフェノール性水酸基を有する構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0018】
【0019】
上記式(a1)中、R1aは、酸解離性溶解抑制基を示し、R2a、R3aは、それぞれ独立に水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表す。
【0020】
上記R1aで表される酸解離性溶解抑制基としては、下記式(a2)、(a3)で表される基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、若しくは環状のアルキル基、ビニルオキシエチル基、テトラヒドロピラニル基、テトラヒドロフラニル基、又はトリアルキルシリル基であることが好ましい。
【0021】
【0022】
上記式(a2)、(a3)中、R4a、R5aは、それぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基を表し、R6aは、炭素原子数1以上10以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、R7aは、炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基を表し、oは0又は1を表す。
【0023】
上記直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。また、上記環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0024】
ここで、上記式(a2)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert-ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基等が挙げられる。また、上記式(a3)で表される酸解離性溶解抑制基として、具体的には、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基等が挙げられる。また、上記トリアルキルシリル基としては、トリメチルシリル基、トリ-tert-ブチルジメチルシリル基等の各アルキル基の炭素原子数が1以上6以下の基が挙げられる。
【0025】
前述の通り、エッチングマスクのエッチャントに対する優れた耐性と、有機溶剤によるエッチングマスクの剥離の容易さとを特に両立しやすいことから、酸解離性溶解抑制基としては、式(I)で表されるジビニルエーテル化合物に由来する2価の酸解離性溶解抑制基であるのが好ましい。
【0026】
H2C=CH-O-Aa1-O-CH=CH2・・・(I)
式(I)において、Aa1が、置換基を有してもよく、主鎖にエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基、又は下記式(II):
-(Aa2)na-Aa3-(Aa2)na-・・・(II)
で表される基であり、
式(II)において、Aa2が、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基であり、Aa3がシクロヘキシレン基であり、naが0又は1である。
【0027】
式(I)で表されるジビニルエーテル化合物の両末端がノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基のうちの二つと反応すると、式(I)で表されるジビニルエーテル化合物に由来する2価の酸解離性溶解抑制基が生成する。
式(I)で表されるジビニルエーテル化合物に由来する2価の酸解離性溶解抑制基は、下記式(Ia):
-CH(CH3)-O-Aa1-O-CH(CH3)-・・・(Ia)
で表される基である。
また、式(I)で表されるジビニルエーテル化合物の一方の末端のみが、ノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基と反応する場合、下記式(Ib):
-CH(CH3)-O-Aa1-O-CH=CH2・・・(Ib)
で表される1価の酸解離性溶解抑制基が生成する。
式(Ia)、式(Ib)中のAa1は、式(I)中のAa1と同様である。
【0028】
式(I)におけるAa1が、置換基を有してもよく、主鎖にエーテル結合を含んでいてもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である場合、アルキレン基が有していてもよい置換基としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子や、メトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
【0029】
式(I)におけるAa1としてのアルキレン基は、その鎖中にエーテル結合(-O-)を含んでいてもよい。
Aa1が、主鎖にエーテル結合を含んでいてもよいアルキレン基である場合、その炭素原子数は1以上10以下であり、1以上8以下が好ましく、2以上6以下がより好ましい。
Aa1としての、主鎖にエーテル結合を含んでいてもよいアルキレン基の好適な具体例としては、-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH2-O-CH2CH2-、及び-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-が挙げられる。
【0030】
上記式(II)で表される2価の基もAa1として好ましい。式(II)中、Aa3はシクロヘキシレン基である。シクロヘキシレン基は、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、及びシクロヘキサン-1,2-ジイル基のいずれでもよく、シクロヘキサン-1,4-ジイル基が好ましい。
式(II)中、naは、独立に0又は1である。
式(II)中、Aa2は、置換基を有してもよい炭素原子数1以上10以下のアルキレン基である。Aa2としてのアルキレン基の炭素原子数は、1以上6以下が好ましく、1以上4以下がより好ましく、1又は2がさらに好ましい。Aa2としてのアルキレン基が有していてもよい置換基としては、塩素原子、臭素原子、フッ素原子等のハロゲン原子や、メトキシ基、及びエトキシ基等のアルコキシ基が挙げられる。
Aa2の好適な具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1,-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、及びブタン-1,4-ジイル基等が挙げられる。
【0031】
式(II)で表される2価の基の特に好ましい例としては、2つのnaがともに1であり、Aa3がシクロヘキサン-1,4-ジイル基であり、2つのAa2がともにメチレン基である基が挙げられる。
【0032】
ノボラック樹脂が有するフェノール性水酸基すべての数に対し、上記式(Ia)及び/又は式(Ib)で表される式(I)で表されるジビニルエーテル化合物に由来する酸解離性溶解抑制基で保護されている水酸基の数の割合(保護率)は、エッチングマスクの膜特性の点から、0.5%以上30%以下の範囲であることが好ましく、1%以上20%以下がより好ましく、2%以上10%以下がさらに好ましい。保護率は、例えばプロトンNMRにより確認することができる。
【0033】
[ポリヒドロキシスチレン樹脂]
酸解離性溶解抑制基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂は、フェノール性水酸基の少なくとも一部が酸解離性溶解抑制基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂である。酸解離性溶解抑制基により水酸基を保護されるポリヒドロキシスチレン樹脂は特に限定されず、周知のポリヒドロキシスチレン樹脂から適宜選択し得る。
例えば、酸解離性溶解抑制基により保護されたポリヒドロキシスチレン樹脂としては、下記式(a4)で表される、酸解離性溶解抑制基で保護されたフェノール性水酸基を有する構成単位を含む樹脂を使用することができる。
【0034】
【0035】
上記式(a4)中、R8aは、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表し、R9aは、酸解離性溶解抑制基を表す。
【0036】
上記炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、例えば炭素原子数1以上6以下の直鎖状、分岐状、又は環状のアルキル基である。直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられ、環状のアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0037】
上記R9aで表される酸解離性溶解抑制基としては、上記式(a2)、(a3)に例示した基と同様の酸解離性溶解抑制基を用いることができる。
【0038】
さらに、ポリヒドロキシスチレン樹脂は、物理的、化学的特性を適度にコントロールする目的で他の重合性化合物に由来する構成単位を含むことができる。このような重合性化合物としては、公知のラジカル重合性化合物や、アニオン重合性化合物が挙げられる。また、このような重合性化合物としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等のモノカルボン酸類;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のジカルボン酸類;2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシ基及びエステル結合を有するメタクリル酸誘導体類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アリールエステル類;マレイン酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のジカルボン酸ジエステル類;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、ヒドロキシスチレン、α-メチルヒドロキシスチレン、α-エチルヒドロキシスチレン等のビニル基含有芳香族化合物類;酢酸ビニル等のビニル基含有脂肪族化合物類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジオレフィン類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有重合性化合物類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等の塩素含有重合性化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド結合含有重合性化合物類;等を挙げることができる。
【0039】
[酸発生剤(B)]
酸発生剤(B)は、放射線の照射により酸を発生する化合物である。酸発生剤(B)は、光により直接又は間接的に酸を発生する化合物であれば特に限定されない。酸発生剤(B)としては、以下に説明する、第1~第5の酸発生剤が好ましい。以下、第1~第5の酸発生剤について説明する。
【0040】
(第1の酸発生剤)
第1の酸発生剤としては、下記式(b1)で表される化合物が挙げられる。
【0041】
【0042】
上記式(b1)中、X1bは、原子価gの硫黄原子又はヨウ素原子を表し、gは1又は2である。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。R1bは、X1bに結合している有機基であり、炭素原子数6以上30以下のアリール基、炭素原子数4以上30以下の複素環基、炭素原子数1以上30以下のアルキル基、炭素原子数2以上30以下のアルケニル基、又は炭素原子数2以上30以下のアルキニル基を表し、R1bは、アルキル、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アリールチオカルボニル、アシロキシ、アリールチオ、アルキルチオ、アリール、複素環、アリールオキシ、アルキルスルフィニル、アリールスルフィニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アルキレンオキシ、アミノ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。R1bの個数はg+h(g-1)+1であり、R1bはそれぞれ互いに同じであっても異なっていてもよい。また、2個以上のR1bが互いに直接、又は-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR2b-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、若しくはフェニレン基を介して結合し、X1bを含む環構造を形成してもよい。R2bは炭素原子数1以下5以上のアルキル基又は炭素原子数6以下10以上のアリール基である。
【0043】
X2bは下記式(b2)で表される構造である。
【0044】
【0045】
上記式(b2)中、X4bは炭素原子数1以上8以下のアルキレン基、炭素原子数6以上20以下のアリーレン基、又は炭素原子数8以上20以下の複素環化合物の2価の基を表し、X4bは炭素原子数1以上8以下のアルキル、炭素原子数1以上8以下のアルコキシ、炭素原子数6以上10以下のアリール、ヒドロキシ、シアノ、ニトロの各基、及びハロゲンからなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。X5bは-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-NR2b-、-CO-、-COO-、-CONH-、炭素原子数1以上3以下のアルキレン基、又はフェニレン基を表す。hは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。h+1個のX4b及びh個のX5bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。R2bは前述の定義と同じである。
【0046】
X3b-はオニウムの対イオンであり、下記式(b9)、下記式(b13)、下記式(b14)、下記式(b17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオン又は下記式(b18)で表されるボレートアニオンが挙げられ、エッチングマスクの膜特性の点から、下記式(b9)のアニオンが好ましい。
【0047】
【0048】
上記式(b9)において、R20bは、下記式(b10)、(b11)、及び(b12)で表される基である。
【0049】
【0050】
上記式(b10)中、xは1以上4以下の整数を表す。また、上記式(b11)中、R21bは、水素原子、水酸基、炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下の直鎖状若しくは分岐状のアルコキシ基を表し、yは1以上3以下の整数を表す。これらの中でも、安全性の観点からトリフルオロメタンスルホネート、パーフルオロブタンスルホネートが好ましい。
【0051】
【0052】
上記式(b13)、(b14)中、Xbは、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキレン基を表し、該アルキレン基の炭素原子数は2以上6以下であり、好ましくは3以上5以下、最も好ましくは炭素原子数3である。また、Yb、Zbは、それぞれ独立に少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐状のアルキル基を表し、該アルキル基の炭素原子数は1以上10以下であり、好ましくは1以上7以下、より好ましくは1以上3以下である。
【0053】
Xbのアルキレン基の炭素原子数、又はYb、Zbのアルキル基の炭素原子数が小さいほど有機溶剤への溶解性も良好であるため好ましい。
【0054】
また、Xbのアルキレン基又はYb、Zbのアルキル基において、フッ素原子で置換されている水素原子の数が多いほど、酸の強度が強くなるため好ましい。該アルキレン基又はアルキル基中のフッ素原子の割合、すなわちフッ素化率は、好ましくは70%以上100%以下、より好ましくは90%以上100%以下であり、最も好ましくは、全ての水素原子がフッ素原子で置換されたパーフルオロアルキレン基又はパーフルオロアルキル基である。
【0055】
【0056】
上記式(b17)中、R3bは水素原子の80%以上がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。jはその個数を示し、1以上5以下の整数である。j個のR3bはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0057】
【0058】
上記式(b18)中、R4b~R7bは、それぞれ独立にフッ素原子又はフェニル基を表し、該フェニル基の水素原子の一部又は全部は、フッ素原子及びトリフルオロメチル基からなる群より選ばれる少なくとも1種で置換されていてもよい。
【0059】
上記式(b1)で表される化合物中のオニウムイオンとしては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、ジフェニルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]4-ビフェニルスルホニウム、フェニル[4-(4-ビフェニルチオ)フェニル]3-ビフェニルスルホニウム、[4-(4-アセトフェニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、オクタデシルメチルフェナシルスルホニウム、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、又は4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、等が挙げられる。
【0060】
上記式(b17)で表されるフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンにおいて、R3bはフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、好ましい炭素原子数は1以上8以下、さらに好ましい炭素原子数は1以上4以下である。アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル等の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル等の分岐アルキル基;さらにシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基等が挙げられ、アルキル基の水素原子がフッ素原子に置換された割合は、通常、80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは100%である。フッ素原子の置換率が80%未満である場合には、上記式(b1)で表されるオニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩の酸強度が低下する。
【0061】
特に好ましいR3bは、炭素原子数が1以上4以下、且つフッ素原子の置換率が100%の直鎖状又は分岐状のパーフルオロアルキル基であり、具体例としては、CF3、CF3CF2、(CF3)2CF、CF3CF2CF2、CF3CF2CF2CF2、(CF3)2CFCF2、CF3CF2(CF3)CF、(CF3)3Cが挙げられる。R3bの個数jは、1以上5以下の整数であり、好ましくは2以上4以下、特に好ましくは2又は3である。
【0062】
好ましいフッ素化アルキルフルオロリン酸アニオンの具体例としては、[(CF3CF2)2PF4]-、[(CF3CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)2PF4]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CFCF2)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2CF2)2PF4]-、又は[(CF3CF2CF2)3PF3]-が挙げられ、これらのうち、[(CF3CF2)3PF3]-、[(CF3CF2CF2)3PF3]-、[((CF3)2CF)3PF3]-、[((CF3)2CF)2PF4]-、[((CF3)2CFCF2)3PF3]-、又は[((CF3)2CFCF2)2PF4]-が特に好ましい。
【0063】
上記式(b18)で表されるボレートアニオンの好ましい具体例としては、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-)、テトラキス[(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート([B(C6H4CF3)4]-)、ジフルオロビス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)2BF2]-)、トリフルオロ(ペンタフルオロフェニル)ボレート([(C6F5)BF3]-)、テトラキス(ジフルオロフェニル)ボレート([B(C6H3F2)4]-)等が挙げられる。これらの中でも、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート([B(C6F5)4]-)が特に好ましい。
【0064】
(第2の酸発生剤)
第2の酸発生剤としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-エチル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(5-プロピル-2-フリル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジエトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,5-ジプロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-エトキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3-メトキシ-5-プロポキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-[2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)エテニル]-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(5-メチル-2-フリル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,5-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4-メチレンジオキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、トリス(1,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)-1,3,5-トリアジン等のハロゲン含有トリアジン化合物、並びにトリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート等の下記式(b3)で表されるハロゲン含有トリアジン化合物が挙げられる。
【0065】
【0066】
上記式(b3)中、R9b、R10b、R11bは、それぞれ独立にハロゲン化アルキル基を表す。
【0067】
(第3の酸発生剤)
第3の酸発生剤としては、α-(p-トルエンスルホニルオキシイミノ)-フェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,4-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(ベンゼンスルホニルオキシイミノ)-2,6-ジクロロフェニルアセトニトリル、α-(2-クロロベンゼンスルホニルオキシイミノ)-4-メトキシフェニルアセトニトリル、α-(エチルスルホニルオキシイミノ)-1-シクロペンテニルアセトニトリル、並びにオキシムスルホネート基を含有する下記式(b4)で表される化合物が挙げられる。
【0068】
【0069】
上記式(b4)中、R12bは、1価、2価、又は3価の有機基を表し、R13bは、置換若しくは未置換の飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、又は芳香族基を表し、nは括弧内の構造の繰り返し単位数を表す。
【0070】
上記式(b4)中、芳香族基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等のアリール基や、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。これらは環上に適当な置換基、例えばハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ニトロ基等を1個以上有していてもよい。また、R13bは、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が特に好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられる。特に、R12bが芳香族基であり、R13bが炭素原子数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましい。
【0071】
上記式(b4)で表される酸発生剤としては、n=1のとき、R12bがフェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基のいずれかであって、R13bがメチル基の化合物、具体的にはα-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-フェニルアセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メチルフェニル)アセトニトリル、α-(メチルスルホニルオキシイミノ)-1-(p-メトキシフェニル)アセトニトリル、〔2-(プロピルスルホニルオキシイミノ)-2,3-ジヒドロキシチオフェン-3-イリデン〕(o-トリル)アセトニトリル等が挙げられる。n=2のとき、上記式(b4)で表される酸発生剤としては、具体的には下記式で表される酸発生剤が挙げられる。
【0072】
【0073】
(第4の酸発生剤)
第4の酸発生剤としては、ビス(p-トルエンスルホニル)ジアゾメタン、ビス(1,1-ジメチルエチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(2,4-ジメチルフェニルスルホニル)ジアゾメタン等のビススルホニルジアゾメタン類;p-トルエンスルホン酸2-ニトロベンジル、p-トルエンスルホン酸2,6-ジニトロベンジル、ニトロベンジルトシレート、ジニトロベンジルトシラート、ニトロベンジルスルホナート、ニトロベンジルカルボナート、ジニトロベンジルカルボナート等のニトロベンジル誘導体;ピロガロールトリメシラート、ピロガロールトリトシラート、ベンジルトシラート、ベンジルスルホナート、N-メチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-トリクロロメチルスルホニルオキシスクシンイミド、N-フェニルスルホニルオキシマレイミド、N-メチルスルホニルオキシフタルイミド等のスルホン酸エステル類;N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-1,8-ナフタルイミド、N-(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)-4-ブチル-1,8-ナフタルイミド等のトリフルオロメタンスルホン酸エステル類;ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファート、(4-メトキシフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート、(p-tert-ブチルフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート等のオニウム塩類;ベンゾイントシラート、α-メチルベンゾイントシラート等のベンゾイントシレート類;その他のジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、フェニルジアゾニウム塩、ベンジルカルボナート等が挙げられる。
【0074】
酸発生剤(B)は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、酸発生剤(B)の含有量は、感光性樹脂組成物の(A)成分を100質量部として、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、特に1質量部以上20質量部以下が好ましい。酸発生剤(B)の使用量を上記の範囲とすることにより、良好な感度を備え、均一な溶液であって、保存安定性に優れる感光性樹脂組成物を調製しやすい。
酸発生剤(B)を2種以上組み合わせる場合、エッチングマスクの膜特性の点から、第1の酸発生剤と、第2~4の酸発生剤から選択される1種以上とを組み合わせることが好ましく、第1の酸発生剤と、第2~4の酸発生剤から選択される1種とを組み合わせることがより好ましく、第1の酸発生剤と第3の酸発生剤とを組み合わせることが好ましい。
また、(B)成分中、第1の酸発生剤と他の酸発生剤(第2~4の酸発生剤から選択される1種以上)との配合量の比(質量比)は、(第1の酸発生剤):(他の酸発生剤)=99:1~1:99の範囲内であることが好ましく、5:95~50:50がより好ましく、10:90~40:60がさらに好ましく、10:90~30:70が最も好ましい。
【0075】
[フィラー(C)]
感光性樹脂組成物は、フィラー(C)を含有する。感光性樹脂組成物がフィラー(C)を含むことにより、感光性樹脂組成物を用いて硬度、機械的特性、耐熱性等に優れるエッチングマスクを形成しやすい。フィラー(C)は、無機フィラーであっても、有機フィラーであってもよく、無機フィラーが好ましい。
フッ化水素酸等のエッチャントに対する耐性が高い点で、フィラー(C)としては、例えば、マイカ、タルク、クレー、ベントナイト、モンモリロナイト、カオリナイト、ワラストナイト、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、等が挙げられる。
【0076】
感光性樹脂組成物におけるフィラー(C)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。感光性樹脂組成物におけるフィラー(C)の含有量は、形成されるエッチングマスクの膜厚や、エッチングによるガラスの掘り込み深さ等を勘案して適宜定められる。
例えば、感光性樹脂組成物におけるフィラー(C)の含有量は、樹脂成分(A)の質量と、酸発生剤(B)の質量との合計100質量部に対して、30質量部以上70質量部以下が好ましく、35質量部以上60質量部以下がより好ましい。
特に、エッチングによるガラス基板の掘り込み深さが300μm以上であるような場合には、フィラー(C)の含有量が上記の範囲内であるのが好ましい。
また、エッチングによるガラス基板の掘り込み深さが300μm未満であるような場合、感光性樹脂組成物におけるフィラー(C)の含有量は、樹脂成分(A)の質量と、酸発生剤(B)の質量との合計100質量部に対して、1質量部以上30質量部未満であってもよい。
【0077】
[可塑剤(D)]
感光性樹脂組成物は可塑剤(D)を含む。感光性樹脂組成物が可塑剤(D)を含むことにより、感光性樹脂組成物を用いて形成されるエッチングマスクにおけるクラックの発生を抑制できる。クラックのないエッチングマスクは、ガラス基板のエッチングに用いられるエッチャントに対して優れた耐性を有する。
【0078】
可塑剤(D)の具体例としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリヒドロキシスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリビニル安息香酸、ポリビニルアルキルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、及びこれらの共重合体等が挙げられる。これらの中では、エッチャントに対する耐性に優れるエッチングマスクを形成しやすいことから、ポリビニルアルキルエーテルが好ましい。
【0079】
ポリビニルアルキルエーテルのアルキル部分について、その炭素原子数は1以上5以下が好ましく、1又は2がより好ましい。つまり、ポリビニルアルキルエーテルとしては、ポリビニルメチルエーテル、及びポリビニルエチルエーテルがより好ましい。
【0080】
ポリビニルアルキルエーテルの質量平均分子量は、特に限定されない。ポリビニルアルキルエーテルの質量平均分子量は、10000以上200000以下が好ましく、50000以上100000以下がより好ましい。
【0081】
感光性樹脂組成物における可塑剤(D)の含有量は、可塑剤(D)を用いることによる所望する効果が得られる以上特に限定されない。感光性樹脂組成物における可塑剤(D)の含有量は、樹脂成分(A)100質量部に対して、10質量部以上100質量部以下が好ましく、20質量部以上80質量部以下がより好ましく、30質量部以上60質量部以下がさらに好ましい。
【0082】
[溶剤(S)]
感光性樹脂組成物は、通常、塗布性の調整の目的等で溶剤(S)を含有するのが好ましい。溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来よりポジ型の感光性樹脂組成物に使用されている溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0083】
溶剤(S)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、及び2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキシレングリコール等のグリコール類;グリセリン等のポリオール類;ベンジルアルコール、テルピネオール等のモノオール類;エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノアセテート、トリエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノアセテート、トリプロピレングリコールモノアセテート、及び1,3-ブチレングリコールモノアセテート等のグリコール類のモノアセテート;エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、トリエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、トリプロピレングリコールジアセテート、及び1,3-ブチレングリコールジアセテート等のグリコール類のジアセテート;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノメチルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノエチルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノプロピルエーテル、1,3-ブチレングリコールモノブチルエーテル、及び1,3-ブチレングリコールモノフェニルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(3-メトキシブチルアセテート)、1,3-ブチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、及び4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート等のグリコール類のモノエーテルアセテート;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジフェニルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジプロピルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジフェニルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジフェニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジフェニルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジプロピルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジフェニルエーテル、1,3-ブチレングリコールジメチルエーテル、1,3-ブチレングリコールジエチルエーテル、1,3-ブチレングリコールジプロピルエーテル、1,3-ブチレングリコールジブチルエーテル、及び1,3-ブチレングリコールジフェニルエーテル等のグリコール類のジエーテル;ジオキサン、及びジヘキシルエーテル等のエーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、マレイン酸ジエチル、シクロヘキサノールアセテート、ガンマブチロラクトン等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0084】
感光性樹脂組成物は、感光性樹脂組成物をガラス基板に塗布する際に、膜厚の均一な塗布膜を形成しやすい点から、感光性樹脂組成物は、大気圧下での沸点が170℃以上である高沸点溶剤(S1)を含むのが好ましい。
感光性樹脂組成物に含まれる各成分の溶解性が良好である点や、入手が容易である点等から、上記の溶剤(S)の具体例における高沸点溶剤(S1)の好ましい例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ベンジルアルコール、テルピネオール、プロピレングリコールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,3-ブチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(3-メトキシブチルアセテート)、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、及び4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジヘキシルエーテル酢酸ベンジル、安息香酸エチル、マレイン酸ジエチル、シクロヘキサノールアセテート、及びガンマブチロラクトン等が挙げられる。
【0085】
感光性樹脂組成物における、高沸点溶剤(S1)の含有量は、高沸点溶剤(S1)の使用による所望する効果が得られる限り特に限定されない。感光性樹脂組成物における高沸点溶剤(S1)の含有量は、塗布性の観点で、感光性樹脂組成物中の溶剤(S)の全質量を100質量部とした場合に1質量部以上50質量部未満が好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましい。
また、感光性樹脂組成物の全質量に対して、0.5質量%以上20質量%以下が好ましく、1質量%以上15質量%以下がより好ましく、2質量%以上10質量%以下が特に好ましい。
【0086】
感光性樹脂組成物における溶剤(S)の含有量は、所望の膜厚のエッチングマスクを形成できる限り特に限定されない。溶剤(S)は、例えば、感光性樹脂組成物の固形分濃度が、好ましくは40質量%以上70質量%以下、エッチング加工のマージン等製造工程の点では、より好ましくは50質量%以上65質量%以下であるような量で使用される。
後述する、ガラス基板の2つの主面の双方において、接触型の塗布装置を用いて、鉛直上方側から鉛直下方側に向けて感光性樹脂組成物を塗布する工程の場合には、感光性樹脂組成物の粘度を1000cp以上に調整することが好ましく、1400cp以上がより好ましく、2000cp以上がさらに好ましい。上限は特になく、感光性樹脂組成物に流動性があればよい。
【0087】
[その他の成分]
感光性樹脂組成物は、従来よりポジ型の感光性組成物に配合されている種々の成分を含んでいてもよい。
【0088】
例えば、感光性樹脂組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤を含有していてもよい。界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シリコーン系界面活性剤としては、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-088(シリコーン系消泡剤、ビックケミー社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0089】
また、感光性樹脂組成物は、現像液に対する溶解性の微調整を行うため、酸、又は酸無水物をさらに含有していてもよい。
【0090】
酸及び酸無水物の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、n-酪酸、イソ酪酸、n-吉草酸、イソ吉草酸、安息香酸、桂皮酸等のモノカルボン酸類;乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸、サリチル酸、m-ヒドロキシ安息香酸、p-ヒドロキシ安息香酸、2-ヒドロキシ桂皮酸、3-ヒドロキシ桂皮酸、4-ヒドロキシ桂皮酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、シリンギン酸等のヒドロキシモノカルボン酸類;シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、ヘキサヒドロフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、1,2,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸等の多価カルボン酸類;無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバニル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、エチレングリコールビス無水トリメリタート、グリセリントリス無水トリメリタート等の酸無水物;等を挙げることができる。
【0091】
以上説明した各成分を、所望する比率で均一に混合することにより、第1の感光性樹脂組成物が得られる。
【0092】
<第2の感光性樹脂組成物>
前述の通り、第2の感光性樹脂組成物は、フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)と、酸発生剤(B)と、フィラー(C)と、可塑剤(D)とを含む。
酸発生剤(B)、フィラー(C)、可塑剤(D)、及びその他の成分についてには第1の感光性樹脂組成物と同様である。
【0093】
以下、第2の感光性樹脂組成物について、フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)と、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える保護剤(A2)とについて説明する。
【0094】
[フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)]
フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)は、フェノール性水酸基の少なくとも一部が前記酸解離性溶解抑制基により保護されていてもよいノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂である。フェノール性水酸基を有する一方で、フェノール性水酸基の少なくとも一部が前記酸解離性溶解抑制基により保護されているノボラック樹脂又はポリヒドロキシスチレン樹脂については、第1の感光性樹脂組成物いついて説明した樹脂成分(A)と同様である。ノボラック樹脂及びポリヒドロキシスチレン樹脂としては、第1の感光性樹脂組成物について説明した樹脂成分(A)において、酸解離性溶解抑制基で保護されたフェノール性水酸基が脱保護された状態のノボラック樹脂及びポリヒドロキシスチレン樹脂を用いることができる。
【0095】
[保護剤(A2)]
保護剤(A2)は、フェノール性水酸基と反応することにより酸解離性溶解抑制基を与える化合物である。
保護剤(A2)としては、フェノール性水酸基との反応によって、第1の感光性樹脂組成物について説明した、メトキシエチル基、エトキシエチル基、n-プロポキシエチル基、イソプロポキシエチル基、n-ブトキシエチル基、イソブトキシエチル基、tert-ブトキシエチル基、シクロヘキシロキシエチル基、メトキシプロピル基、エトキシプロピル基、1-メトキシ-1-メチル-エチル基、1-エトキシ-1-メチルエチル基、tert-ブトキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニルメチル基、トリメチルシリル基、トリ-tert-ブチルジメチルシリル基等の酸解離性溶解抑制基を与える化合物であれば特に限定されない。
【0096】
エッチングマスクのエッチャントに対する優れた耐性と、有機溶剤によるエッチングマスクの剥離の容易さとを特に両立しやすいことから、保護剤としては、前述の式(I)で表されるジビニルエーテル化合物が好ましい。
【0097】
保護剤(A2)の使用量は、フェノール性水酸基を有する樹脂成分(A1)を100質量部として、エッチングマスクの膜特性の点から、0.5質量部以上30質量部以下の範囲であることが好ましく、1質量部以上20質量部以下がより好ましく、2質量部以上10質量部以下がさらに好ましい。
【0098】
以上説明した各成分を、所望する比率で均一に混合することにより、第2の感光性樹脂組成物が得られる。
【0099】
≪ガラス基板のエッチング方法≫
ガラス基板のエッチング方法は、
前述の感光性樹脂組成物を、ガラス基板の少なくとも一方の主面に塗布して、ガラス基板の主面上に塗布膜を形成する塗布膜形成工程と、
塗布膜を、位置選択的に露光する露光工程と、
露光された塗布膜を、現像液により現像して、エッチングマスクを形成するエッチングマスク形成工程と、
エッチングマスクを備えるガラス基板に対してエッチング加工を施す、エッチング工程と、
エッチングマスクを除去する、除去工程と、
を含む方法である。
【0100】
以下が、ガラス基板のエッチング方法に関する各工程を説明する。
【0101】
<塗布膜形成工程>
塗布膜形成工程では、エッチングの対象であるガラス基板の少なくとも一方の主面に、前述感光性樹脂組成物を塗布して、ガラス基板の主面上に塗布膜形成する。
ガラス基板の種類は、特に限定されず、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、強化ガラス、石英等が挙げられる。またガラス基板の形状の種類も特に問わない。ガラス基板の形状は凹凸形状であってもよく、貫通孔を有する形状であってもよい。
【0102】
エッチング加工によるガラス基板の掘り込み深さは、特に限定されない。ガラス基板の掘り込み深さは、ガラス基板の両方の主面からエッチング加工を行う場合、ガラス基板の両方の主面それぞれにおけるエッチングにより掘り込まれた深さの合計である。
本発明の感光性樹脂組成物を用いてエッチングマスクを形成することにより、エッチング加工によるガラス基板の掘り込み深さは、例えば、2000μm程度にまでも深くすることができる。掘り込み深さの加工範囲において下限側の値は適宜設定することができる。
上記の掘り込み深さを考慮すると、ガラス基板の厚さは10μm以上が好ましく、200μm以上3000μm以下がより好ましく、250μm以上2300μm以下がさらに好ましく、300μmm以上2000μm以下が特に好ましい。
【0103】
エッチングマスクの膜厚は、エッチング加工を問題なく行える限り特に限定されない。典型的には、エッチングマスクの膜厚は5μm以上200μm以下が好ましく、両面塗布の際に、5μm以上200μm以下とすることがより好ましい。また、エッチングマスクの膜厚は、ガラス基板のエッチング加工による掘り込み深さに対して、0.08倍以上0.25倍以下であるのが好ましく、0.1倍以上0.2倍以下がより好ましい。
【0104】
塗布膜形成工程では、例えば、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置やスピンナー、カーテンフローコーター、スリットコーター等の非接触型塗布装置を用いて、ガラス基板上に上述した感光性樹脂組成物を塗布して、塗布膜を形成することができる。形成された塗布膜は、必要に応じて加熱(プレベーク)されてもよい。
【0105】
プレベーク条件は、感光性樹脂組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
【0106】
例えば、厚さ200μm以上のガラス基板をエッチング加工により切断したり、厚さ200μm以上のガラス基板にエッチング加工により貫通孔を形成したりする場合、エッチング時間を短縮しエッチングマスクへのダメージを抑制できることから、ガラス基板の両方の主面にエッチャントを接触させてエッチングを行うのが好ましい。
ガラス基板の両方の主面にエッチャントを接触させてエッチングを行う場合、ガラス基板の両方の主面上にエッチングマスクが形成される。
【0107】
ガラス基板の両方の主面に感光性樹脂組成物を塗布する場合、膜厚の均一な塗布膜を効率よく形成できることから、ガラス基板の主面が鉛直方向又は略鉛直方向に対して垂直であるようにガラス基板が配置された状態で、ガラス基板の2つの主面の双方において、接触型の塗布装置を用いて、鉛直上方側から鉛直下方側に向けて感光性樹脂組成物を塗布するのが好ましい。
なお、ガラス基板の主面の面方向が水平方向又は略水平方向であるようにガラス基板が配置された状態で、ガラス基板の2つの主面の双方において、接触型の塗布装置による感光性樹脂組成物の塗布を行うこともできる。
【0108】
上記の両面塗布を行う場合、ガラス基板の位置を固定した状態で、接触型の塗布装置を移動させて塗布を行ってもよく、接触型の塗布装置の位置を固定した状態で、ガラス基板を移動させて塗布を行ってもよい。
【0109】
上記の両面塗布を行う場合、塗布装置としては、ロールコーター、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置を用いるのが好ましく、ロールコーターを用いるのがより好ましい。
【0110】
<露光工程>
露光工程では、ガラス基板上の塗布膜に対して、形成されるべきエッチングマスクの形状に応じて位置選択的に露光が行われる。
具体的には、塗布膜に対して、所定のパターンのマスクを介して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線が選択的に照射(露光)される。
【0111】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、感光性組成物の組成や感光性層の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm2以上10000mJ/cm2以下である。
【0112】
露光後は、公知の方法を用いて塗布膜を加熱することにより酸の拡散を促進させて、塗布膜中の露光された部分において、アルカリ現像液等の現像液に対する塗布膜の溶解性を変化させる。
【0113】
<エッチングマスク形成工程>
エッチングマスク形成工程では、露光された塗布膜を現像液により現像してエッチングマスクを形成する。
【0114】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0115】
現像時間は、感光性樹脂組成物の組成や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0116】
現像後は、必要に応じて、流水洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。このようにして、ガラス基板上に、所望する形状にパターン化されたエッチングマスクが形成される。
【0117】
<エッチング工程>
エッチング工程において、エッチングマスクを備えるガラス基板に対してエッチング加工を施す。
【0118】
エッチング加工は、ガラス基板を切断したりガラス基板を厚さ方向に貫通するホールを形成する加工であってもよく、ガラス基板に溝やトレンチを形成するような加工であってもよい。
【0119】
エッチング方法としては、エッチャントとガラス基板とを接触させることができる方法であれば特に限定されない。エッチング方法としては、ガラス基板にエッチング液を噴霧したり、エッチング液にガラス基板を浸漬したりするウェットエッチングが挙げられる。
エッチングは、ガラス基板の一方の主面のみにエッチャントを接触させて行われてもよく、ガラス基板の両方の主面にエッチャントを接触させて行われてもよい。
【0120】
ガラス基板の一方の主面のみにエッチャントを接触させる場合、エッチャントと接触させないガラス基板の主面を保護膜により被覆するのが好ましい。保護膜は、エッチャントに対する耐性があれば特に限定されない。
保護膜は、エッチャントに対す耐性を有する材料からなるシートをガラス基板に貼り付けて形成してもよく、前述の感光性樹脂組成物を塗布した後、塗布膜を加熱して形成してもよい。
【0121】
前述の通り、厚さ200μm以上のガラス基板をエッチング加工により切断したり、厚さ200μm以上のガラス基板にエッチング加工により貫通孔を形成したりする場合、エッチング時間を短縮しエッチングマスクへのダメージを抑制できることから、ガラス基板の両方の主面にエッチャントを接触させてエッチングを行うのが好ましい。
【0122】
エッチング液としては、フッ酸単独、フッ酸とフッ化アンモニウム、フッ酸と他の酸(塩酸、硫酸、リン酸、硝酸等)との混酸等が挙げられる。エッチング処理時間は、特に限定されないが、例えば10分間~10時間程度である。なお、エッチング液は、25℃以上60℃以下程度に加温されてもよい。また、エッチング処理液の濃度は、エッチングレートや処理時間を考慮して適宜調整すればよいが、例えば、フッ酸の濃度は1質量%以上20質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。他の酸の濃度は1質量%以上40質量%以下が好ましく、1質量%以上20質量%以下がより好ましい。
【0123】
<除去工程>
エッチング加工に次いで、除去工程において、ガラス基板からエッチングマスクが除去される。
【0124】
エッチングマスクの除去方法は、特に限定されないが、ガラス基板や、ガラス基板に付随する金属配線や樹脂材料にダメージを与え難いことから、エッチングマスクを有機溶剤に接触させる方法が好ましい。エッチングマスクを有機溶剤に接触させる方法は特に限定されない。例えば、有機溶剤をエッチングマスクに噴霧してもよく、エッチングマスクを備えるガラス基板を有機溶剤に浸漬させてもよい。
【0125】
有機溶剤としては、エッチングマスクを除去可能である限り特に限定されず、上記の溶剤(S)から適宜選択してもよい。有機溶剤としては、除去工程後のプロセスの点から、極性溶媒(特に、上記の溶剤(S)における、ケトン類又はグリコール類のモノエーテル類)であることが好ましい。除去工程のマージンの点から、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルホルムアニリド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、及びジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性有機溶剤等がより好適に挙げられる。これらの有機溶剤としては、2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
【0126】
エッチングマスクの剥離に使用される有機溶剤の温度は、特に限定されず、剥離性向上のために加熱してもよい。有機溶剤の温度は、例えば5℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上50℃以下がより好ましく、ガラス基板や、ガラス基板に付随する金属配線や樹脂材料への影響を考慮すると、20℃以上25℃以下がさらに好ましい。
【0127】
エッチングマスクと、有機溶剤との接触時間は、エッチングマスクの剥離を良好に行うことができる限り特に限定されない。接触時間は、例えば、1分以上60分以下が好ましく、1分以上15分以下がより好ましい。
【実施例】
【0128】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0129】
〔実施例1~4〕
下表に記載の比率で各成分を混合し感光性樹脂組成物を得た。表1に記載の各成分の使用量は、質量部である。表1中の下記成分は以下の通りである。また、各例の組成物の粘度について、実施例1~4はいずれも約1500cpであった。実施例5~7は約2000cpであった。
【0130】
【0131】
<樹脂成分(A)>
(A)-1:全フェノール性水酸基の7.5%が1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルに由来する酸解離性溶解抑制基で保護されたノボラック樹脂。(Mw:40000、保護前のノボラック樹脂について、m-クレゾール/p-クレゾール=6/4(モル比)。)
(A)-2:全フェノール性水酸基の15%が1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルに由来する酸解離性溶解抑制基で保護されたノボラック樹脂。(Mw:15000、保護前のノボラック樹脂について、m-クレゾール/p-クレゾール=6/4(モル比)。)
(A)-3:全フェノール性水酸基の6%が1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテルに由来する酸解離性溶解抑制基で保護されたノボラック樹脂。(Mw:25000、保護前のノボラック樹脂について、m-クレゾール/p-クレゾール=6/4(モル比)。)
【0132】
<保護剤(A2)>
(A2)-1:1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル
【0133】
<酸発生剤(B)>
(B)-1:トリフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホネート
(B)-2:下記式の化合物
【化14】
(B)-3:2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリ
アジン
(B)-4:下記式の化合物
【化15】
【0134】
<フィラー(C)>
(C)-1:硫酸バリウム粉末
<可塑剤(D)>
(D)-1:ポリビニルメチルエーテル(質量平均分子量100000)
【0135】
<溶剤(S)>
(S)-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
(S)-2:酢酸ブチル
(S)-3:メトキシブチルアセテート
【0136】
<その他の添加剤(O)>
(O)-1:トリ-n-デシルアミンと0.1質量部と界面活性剤(商品名:XR-104、大日本インキ化学工業社製)0.1質量部
(O)-2:シリコーン系消泡剤(商品名:BYK-088、ビックケミー社製)
【0137】
<評価1>
得られた実施例1~4の感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従い、ガラス基板上にエッチングマスクを形成した。
まず、ポリイミド膜と金属配線とを部分的に備える厚さ400μmのガラス基板上に、感光性樹脂組成物を塗布した。次いで、塗布膜を、90℃で3分間加熱した後、150℃で3分間加熱した。加熱後の塗布膜に対して、ポジ型のマスクを介して、露光量1200mJ/cm2にて露光を行った。露光後の塗布膜を、115℃で3分間加熱した。加熱後の塗布膜を、22℃の濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に7分間接触させて、現像を行った。現像された塗布膜を、120℃で60分間加熱して、厚さ70μmのエッチングマスクを形成した。
エッチングマスクを備えるガラス基板に対して、室温で、以下の条件でエッチングを行った。
・エッチング処理液(フッ酸水溶液10質量%と硝酸水溶液20質量%の1:1混酸溶液)
・エッチング時間:1時間
【0138】
エッチング後のガラス基板を、室温にてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合溶媒(NMP/DMSO(質量比)=40/60)に浸漬したところ、10分未満の時間でエッチングマスクが完全に溶解除去された。
エッチングマスクの除去後のガラス基板の表面を、顕微鏡により観察したが、ガラス基板上には、エッチングマスクの除去後の残渣は観察されなかった。また、ポリイミド膜の膜減りや、金属配線へのダメージも観察されなかった。
<評価2>
得られた実施例5~7の感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従い、ガラス基板上にエッチングマスクを形成した。
まず、ポリイミド膜と金属配線とを部分的に備える厚さ400μmのガラス基板上に、感光性樹脂組成物を70μm塗布し、90℃で3分間加熱し乾燥を行った。次いで、同じ感光性樹脂組成物を用いて、乾燥された塗布膜上に2回目の塗布と乾燥(90℃で3分間加熱)とを行い、140μm膜厚の塗布膜を得た。その後、塗布膜を150℃で3分間加熱した。乾燥(加熱)後の塗布膜に対して、ポジ型のマスクを介して、露光量1200mJ/cm2にて露光を行った。露光後の塗布膜を、115℃で3分間加熱した。加熱後の塗布膜を、22℃の濃度2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液に7分間接触させて、現像を行った。現像された塗布膜を、120℃で60分間加熱して、厚さ約140μmのエッチングマスクを形成した。
得られたエッチングマスクを超音波顕微鏡(C-SAM D9600)で確認したところピンホールやクラックのないエッチングマスクであった。
エッチングマスクを備えるガラス基板に対して、室温で、以下の条件でエッチングを行った。
・エッチング処理液(フッ酸水溶液10質量%と硝酸水溶液20質量%の1:1混酸溶液)
・エッチング時間:1時間
【0139】
エッチング後のガラス基板を、室温にてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合溶媒(NMP/DMSO(質量比)=40/60)に浸漬したところ、10分未満の時間でエッチングマスクが完全に溶解除去された。
エッチングマスクの除去後のガラス基板の表面を、顕微鏡により観察したが、ガラス基板上には、エッチングマスクの除去後の残渣は観察されなかった。また、ポリイミド膜の膜減りや、金属配線へのダメージも観察されなかった。
【0140】
〔比較例〕
<剥離性評価>
市販のネガ型感光性組成物を用いて、常方に従って、塗布、露光、及び現像を行い、ポリイミド膜と金属配線とを部分的に備える厚さ400μmガラス基板上に、厚さ70μmのエッチングマスクを形成した。実施例と同様のエッチング処理後、エッチングマスクを備えるガラス基板を、室温にてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合溶媒(NMP/DMSO(質量比)=40/60)に浸漬したところ、10分の浸漬では、エッチングマスクを除去できなかった。
また、エッチングマスクを備えるガラス基板を、50℃にて、モノエタノールアミン(MEA)とジメチルスルホキシド(DMSO)との混合溶媒(MEA/DMSO(質量比)=70/30)に30分浸漬したところ、エッチングマスクを除去できたものの、ガラス基板上に大量の除去後残渣が発生した。また、ポリイミド膜には膜減りが観察され、金属配線には腐食が見られた。