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特許7335819疎水特性及び防曇特性の両方を有するナノ構造の透明な物品並びにそれを作製する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】疎水特性及び防曇特性の両方を有するナノ構造の透明な物品並びにそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/118 20150101AFI20230823BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230823BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230823BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20230823BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20230823BHJP
   G02C 7/02 20060101ALI20230823BHJP
   G02C 11/08 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
G02B1/118
B82Y30/00
B82Y40/00
G02B1/18
G02C7/00
G02C7/02
G02C11/08
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019569922
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 IB2017000926
(87)【国際公開番号】W WO2018234841
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-06-04
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(73)【特許権者】
【識別番号】518182542
【氏名又は名称】エシロール アテルナジオナール
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】コゥデルク,サンドリン
(72)【発明者】
【氏名】トルテシア,グレゴリー
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】関根 洋之
【審判官】河原 正
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0036523(KR,A)
【文献】特表2014-502035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10-1/18
B82Y 30/00
B82Y 40/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ構造を備えたフェースを有する透明な物品であって、
前記ナノ構造は、ナノピラー又はナノキャビティを含み、前記ナノピラー又は前記ナノキャビティの上部部分は、疎水特性を有し、
前記ナノピラーの上部部分は、前記ナノピラーの上部、及び前記ナノピラーの上部下に延在する隣接するポーションのみ含み、前記隣接するポーションが、上部下に、1nmからh/5まで延在する環状ポーションであり、ここで、hは、nmで表した前記ピラーの高さであり、
前記ナノキャビティの上部部分は、前記ナノキャビティの上部、及び前記ナノキャビティの上部下に延在する隣接するポーションのみ含み、前記隣接するポーションが、上部下に、1nmからh/5まで延在する前記キャビティのリング様バンドであり、ここで、hは、nmで表した前記キャビティの深さであり、
前記ナノピラー又は前記ナノキャビティの残りの部分は、前記上部部分の下にあり、前記透明な物品の前記フェースに防曇特性を有し、前記ナノピラー又は前記ナノキャビティは、壁を有し、前記壁の少なくとも部分が、防特性を有する前記ナノ構造の前記残りの部分を構成する、物品。
【請求項2】
前記ナノ構造の前記残りの部分が親水特性を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記ナノ構造の前記残りの部分が疎水特性を有し、前記ナノピラー又は前記ナノキャビティが、疎水性壁を有し、前記壁の少なくとも部分が、前記ナノ構造の前記残りの部分を構成し、前記残りの部分の上部部分から底部にかけて増加する粗さを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
ナノ構造を備えたフェースを有する透明な物品であって、
前記ナノ構造は、ナノピラー又はナノキャビティを含み、前記ナノピラー又は前記ナノキャビティの上部部分は、疎水特性を有し、前記ナノ構造の残りの部分は、防曇特性を有し、
前記ナノピラー又は前記ナノキャビティが、疎水性壁を有し、前記壁の少なくとも部分が、前記ナノピラー又は前記ナノキャビティの前記残りの部分を構成し、前記残りの部分は、防曇特性を有し、且つ、前記残りの部分の上部部分から底部にかけて増加する粗さを有し、前記ナノピラー又はナノキャビティの前記残りの部分は、前記ナノピラー又はナノキャビティの前記上部部分の下にある、物品。
【請求項5】
前記ナノ構造の前記上部部分が、前記ナノ構造の上部、及び前記ナノ構造の上部下に延在する隣接するポーションを含む、請求項1~4のいずれかに記載の物品。
【請求項6】
前記ナノ構造が、ナノピラーを含み、前記隣接するポーションが、上部下に、1nmからh/5まで延在する環状ポーションであり、ここで、hは、nmで表した前記ピラーの高さである、請求項5に記載の物品。
【請求項7】
前記ナノ構造の前記上部部分が、超疎水特性を有する、請求項1~6のいずれかに記載の物品。
【請求項8】
光学物品である、請求項1~7のいずれか一項に記載の物品。
【請求項9】
眼用レンズである、請求項1~8のいずれか一項に記載の物品。
【請求項10】
a)疎水性若しくは超疎水性材料でコーティングされている表面を有する基材を提供するステップと;
b)疎水性表面を選択的にエッチングするステップを含む、疎水性上部部分と、防曇特性を有する残りの部分とを有するナノ構造を生じさせるステップと
を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の物品を作製する方法。
【請求項11】
a)疎水性若しくは超疎水性材料でコーティングされている表面を有する基材を提供するステップと;
b)疎水性表面を選択的にエッチングするステップを含む、疎水性上部部分と、防曇特性を有する残りの部分とを有するナノ構造を生じさせるステップと;
b1)前記基材の表面上にナノ粒子を分散させ、ナノ粒子の単層を含む中間構造を形成するステップと;
b2)前記基材をエッチングして、ナノピラーの疎水性若しくは超疎水性表面の上部上にナノ粒子を有する前記ナノピラーを含むナノ構造を形成させるステップと;
b3)前記ナノ構造を親水性材料でオーバーコーティングするステップと;
b4)前記ナノピラーの上部上の前記ナノ粒子を除去し、前記ナノピラーの疎水性若しくは超疎水性上部部分を曝露させるステップと
を含む、請求項1または2に記載の物品を作製する方法。
【請求項12】
a)疎水性若しくは超疎水性材料でコーティングされている表面を有する基材を提供するステップと;
b)疎水性表面を選択的にエッチングするステップを含む、疎水性上部部分と、防曇特性を有する残りの部分とを有するナノ構造を生じさせるステップと;
b1)疎水性若しくは超疎水性コーティング上にハードマスクを密着焼付けし、前記ハードマスクから前記表面上へとエッチングマスクとして作用する材料を移すステップと;
b2)前記基材をエッチングして、その上部上にエッチングマスク材料を有するナノテクスチャ付き構造を形成させるステップと;
b3)前記ナノ構造を親水性材料でオーバーコーティングするステップと;
b4)前記ナノ構造の上部上の前記エッチングマスク材料を除去し、前記ナノ構造の疎水性若しくは超疎水性上部部分を曝露させるステップと
を含む、請求項1または2に記載の物品を作製する方法。
【請求項13】
前記疎水性若しくは超疎水性材料が、親水性材料上に堆積された疎水性若しくは超疎水性コーティングであり、ステップb2)が、前記親水性材料を曝露させるまでエッチングすることを含み、ステップb3)が、省略される、請求項11又は12に記載の物品を作製する方法。
【請求項14】
a)ナノピラー又はナノキャビティを含む有機/無機樹脂又は複合樹脂でできている基材にナノ構造を提供するステップと;
b)前記ナノピラー又はナノキャビティの前記残りの部分の少なくともより低い部分の表面上に粗さを生じさせるステップと
を含む、請求項3又は4に記載の物品を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、透明な物品、例えば、光学物品、例えば、光学レンズ、特に、眼用レンズ又はサングラス用レンズ、並びにこのような透明な物品を作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
防曇特性を与えるための技術的解決法の大部分は、水滴が滑らかな膜へと広がるために透明な物品の表面が親水性であることを必要とし、一方、防雨特性は、疎水性若しくは超疎水性である撥水性表面を必要とするため、防曇特性及び防雨特性は拮抗的であると考えられる。
【0003】
雨滴は通常の防曇(親水性)表面に接着し、小滴は広がるが、これは光学的ひずみ及び視覚の障害をもたらすのに十分な時間がかかるため、このような表面は雨条件下では理想的な解決策ではない。
【0004】
他方、水が表面上で凝縮し得る条件下での疎水性若しくは超疎水性表面の使用は、小さな水滴の蓄積をもたらし、これは、光学的ひずみをもたらし、このようにはっきりとした視覚を妨げ得る。多くのこのような液滴が存在するとき、これは光散乱をもたらし、周知の「曇った」効果を誘発する。
【0005】
米国特許第8709588号明細書は、その表面上にシラノール基を含むコーティングを備えた基材を含み、このコーティング、防曇コーティング前駆コーティングを直接接触させる、光学物品、好ましくは、眼鏡レンズに関し、防曇コーティング前駆コーティングは、
ポリオキシアルキレン基、及び
少なくとも1個のケイ素原子を担持する少なくとも1個の加水分解性基
を有する少なくとも1種のオルガノシラン化合物のグラフトによって得られ、
5nm以下の厚さを有し、
10°超及び50°未満の水との静的接触角を有することを特徴とする。
【0006】
レンズは、界面活性剤を付着させることによって一時的に防曇性とすることができる。しかし、レンズは、疎水特性を有さない。
【0007】
国際公開第2015/082521号パンフレットは、疎水性材料及び親水性材料がその上に堆積された表面を有するレンズについて記載している。界面活性剤を付着させて、レンズに一時的な防曇特性を与える。
【0008】
このような解決策は、低い耐久性の防曇特性に苦労する。特に、雨の条件下で、界面活性剤は、表面から容易に「洗い落とされ」、防曇特性は失われる。
【0009】
(防雨特性を有する疎水性若しくは超疎水性表面である)テクスチャ付き表面について、界面活性剤が構造の内部を含めて全表面へと均一に付着させることを確実にすることが極度に困難であるため、上記の解決策は、それどころか(不可能ではないにせよ)より問題がある。
【0010】
防雨特性を有するナノピラーを含むナノ構造の表面は、特に、国際公開第2017/025128号パンフレットに開示されており、一方、ナノキャビティを含むナノ構造の表面は、特に、国際公開第2015/082948号パンフレットに開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このように、本発明の目的は、特に、防曇特性に影響を与えるのに、透明な物品の表面上へと界面活性剤を噴霧するか、且つ/又はこする必要を伴わずに、防曇特性及び防雨特性の両方を有する透明な物品、例えば、光学レンズを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的は、ナノ構造を備えたフェースを有する透明な物品を提供することによって本発明によって達成され、ここで、ナノ構造の上部部分は、疎水特性又は超疎水特性を有し、ナノ構造の残りの部分は、前記透明な物品の前記フェースに防曇特性を与える。
【0013】
ナノ構造は、ナノピラー及び/又はナノキャビティからなってもよく、ナノピラーの上部部分及び/又はナノキャビティの上部部分は、疎水特性又は超疎水特性を有する。
【0014】
一般に、ナノピラー又はナノキャビティの上部部分は、ナノピラー又はナノキャビティの上部、及びナノ構造の上部下に延在する隣接するポーションを含む。
【0015】
好ましい実施形態では、ナノ構造は、ナノピラーを含み、隣接するポーションは、上部の下の、1nmからh/5まで、より好ましくは、h/10まで延在する環状ポーションであり、ここで、hは、nmで表したナノピラーの高さである。
【0016】
別の好ましい実施形態では、ナノ構造は、ナノキャビティを含み、隣接するポーションは、上部に隣接し、且つ上部下に延在するキャビティ壁のリング様バンドである。典型的には、このバンドは、上部下に、1nmからh/5まで、より好ましくは、h/10まで延在し、ここで、hは、キャビティの深さである。
【0017】
典型的には、ナノピラー又はナノキャビティの残りの部分は、親水特性を有する。特に、ナノピラー及びナノキャビティは、壁を有し、前記壁の少なくとも部分は、ナノ構造の残りの部分を構成し、親水特性を有する。
【0018】
別の実施形態では、ナノピラー又はナノキャビティは、疎水性壁を有し、前記壁の少なくとも部分は、粗い壁を有し、粗さは前記壁の上部部分においてより低く、ナノ構造の残りの部分を構成する前記壁の下部部分においてより大きい。好ましくは、ナノピラー又はナノキャビティの壁の粗さは、上部部分から残りの部分のより低い部分へと増加する。粗さの増加は、連続的又は非連続的であり得る。
【0019】
異なる方法を、本発明による透明な物品を作製するために使用することができる。
【0020】
第1の方法は、
a)疎水性若しくは超疎水性材料でできている表面を有する基材を提供するステップと;
b)疎水性若しくは超疎水性表面を選択的にエッチングするステップを含む、疎水性若しくは超疎水性上部部分と、前記透明な物品の前記表面に防曇特性を与える残りの部分とを有するナノ構造を生じさせるステップと
を含む。
【0021】
前記第1の方法の第1の実施形態では、前記第1の方法のステップb)は、
b1)基材の表面上にナノ粒子を分散させ、ナノ粒子の単層、好ましくは、最密充填単層を含む中間構造を形成するステップと;
b2)基材をエッチングして、ナノピラーの疎水性若しくは超疎水性表面の上部上にナノ粒子を有するナノピラーを含むナノ構造を形成させるステップと;
b3)構造を親水性材料でオーバーコーティングするステップと;
b4)ナノピラーの上部上のナノ粒子を除去し、ナノピラーの疎水性若しくは超疎水性上部部分を曝露させるステップと
を含む。
【0022】
前記第1の方法の第2の実施形態では、ステップb)は、
b1)疎水性若しくは超疎水性材料でできている表面上にハードマスクを密着焼付けし、ハードマスクから表面上へとエッチングマスクとして作用する材料を移すステップと;
b2)基材をエッチングして、その上部上にエッチングマスク材料を有するナノテクスチャ付き構造を形成させるステップと;
b3)ナノ構造を親水性材料でオーバーコーティングするステップと;
b4)ナノ構造の上部上のエッチングマスク材料を除去し、ナノ構造の疎水性若しくは超疎水性上部部分を曝露させるステップと
を含む。
【0023】
前記第1の方法の好ましい実施形態では、疎水性若しくは超疎水性材料は、親水性材料上に堆積された疎水性若しくは超疎水性コーティングであり、ステップb2)は、親水性材料を曝露するまでエッチングすることを含み、ステップb3)は省略される。
【0024】
本発明による物品を作製する第2の方法は、
a)ナノピラー又はナノキャビティを含む疎水性若しくは超疎水性の有機/無機樹脂又は複合樹脂でできている基材にナノ構造を提供するステップと;
b)前記ナノピラー又はナノキャビティの残りの部分の少なくともより低い部分の表面上に粗さを生じさせるステップと
を含む。
【0025】
好ましくは、ナノピラー又はナノキャビティの表面の粗さは、ナノ構造の上部からベースへと増加する。
【0026】
例を、添付図面を参照してこれから記載する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明によるナノピラーを含むナノ構造の表面のスケッチである;
図2】本発明によるナノピラーの概略図である;
図3A-3C】粗さ勾配を有するナノピラーを含む本発明によるナノ構造の表面のスケッチである;
図4A-4E】ナノピラーを含む本発明によるナノ構造の表面を作製するための、第1の方法の第1の実施形態の異なるステップを例示するスケッチである;
図5A-5E】図4A~4Eにおいて例示される第1の方法の第2の実施形態の異なるステップを例示するスケッチである。
図6A-6C】粗さ勾配を有するナノピラーを含む本発明によるナノ構造の表面を作製するための第2の方法の異なるステップを例示するスケッチである。
図7】下部において増加する粗さを有するナノピラーの顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
定義:
疎水特性:材料表面は、水との静的接触角が90°超であるとき、疎水性であると考えられる。典型的には、通常の疎水性表面は、90°から120°までの範囲の水との静的接触角を有する。しかし、水との静的接触角は、130°以上、135°以上、140°以上であり得る。
【0029】
超疎水特性:材料表面は、水との静的接触角が150°以上であるとき、超疎水性であると考えられる。
【0030】
親水特性:材料表面は、水との静的接触角が90°未満、好ましくは、60°以下、好ましくは、30°以下であるとき、親水性であると考えられる。
【0031】
防曇特性:
防曇特性は、3つの方法によって評価し得る:「呼気試験」(視力測定を使用しない定性試験)、「熱蒸気試験」及び「冷蔵庫試験」。呼気試験及び冷蔵庫試験は、低い曇りストレスを生じさせると考えられる。熱蒸気試験は、高い曇りストレスを生じさせると考えられる。
【0032】
ナノ構造は、ナノ構造を担持する透明な物品が少なくとも呼気試験をパスする場合、防曇特性を与える。
【0033】
別の実施形態では、ナノ構造は、ナノ構造を担持する透明な物品が冷蔵庫試験をパスする場合、防曇特性を与える。
【0034】
別の実施形態では、ナノ構造は、これが熱蒸気試験をパスする場合、防曇特性を与える。
【0035】
呼気試験
この試験のために、試験者は、評価するレンズを試験者の口から約2cmの距離に配置する。試験者は、ガラスの曝露された表面上へと息を3秒間吹きつける。試験者は、凝縮ヘイズの存在又は不存在を視覚的に観察することができる。
はい。曇りの存在。
いいえ。曇りの不存在:このようなレンズは、呼気試験の終わりにおいて防曇特性を有すると考えられ、すなわち、これは、曇りからもたらされるヘイズ効果を阻害する。
【0036】
熱蒸気試験
試験の前に、ガラスを、温度制御された環境(20~25℃)において50%湿度下に24時間置く。
【0037】
試験のために、ガラスを、55℃の水を含む加熱した容器上に15秒間置く。直後に、5mの距離に位置している視力スケールを、試験を受けているガラスを通して観察する。観察者は、時間に応じて、下記の判断基準によって視力を評価する:
0.曇りなし、視覚的歪みなし(視力=10/10)
1.視力>6/10を可能とする曇り及び/又は視覚的歪み
2.視力<6/10を可能とする曇り及び/又は視覚的歪み
【0038】
別の実施形態では、熱蒸気試験において、0又は1のスコアが得られる場合、ナノ構造は、防曇特性を与える。実際面で、スコア0又は1を得るために、10/10の視覚を有し、且つナノ構造を担持する透明な物品を着用者の目の前に置いた着用者は、5メートルの距離に置かれたSnellen視力表の6/10ライン上の「E」文字の向きを識別することができるはずである。
【0039】
この試験は、通常の生活条件をシミュレートすることを可能とし、ここで、着用者は、茶/コーヒーのカップに又は沸騰水で充填された鍋に着用者の顔を傾ける。
【0040】
冷蔵庫試験
この試験のために、レンズを、乾燥剤(シリカゲル)を含有する密封した箱に入れる。箱を、冷蔵庫の中に4℃にて少なくとも24時間入れる。この期間の後で、箱を冷蔵庫から取り出し、ガラスを直ちに試験する。次いで、これらを45~50%湿度の雰囲気中に20~25℃にて入れる。4mの距離に位置している視力スケールを、ガラスを通して観察する。観察者は、時間に応じて、熱蒸気試験(スコア0、1又は2)と同じ判断基準によって視力を評価する。
【0041】
この試験は、通常の生活条件をシミュレートすることを可能とし、ここで、着用者は低温で乾燥した場所を出て、熱く湿気のある部屋に入る。
【0042】
水との静的接触角の決定:水の静的接触角(WSCA)測定は、液滴法を使用して行う。表面が水平であるとき、これは小滴及び表面の間の接触角に対応する。水を脱イオン化する。2μlの水滴を、32ゲージの針を使用して表面上に分注する。小滴の自動検出を実現し、且つ異なる関数:サークル、楕円体及びタンジェントによって小滴エンベロープの分析を行う「FAMAS」インターフェースソフトウェアと組み合わせて使用する、「KYOWA DM500」接触角メーターを使用してWSCA測定を行った。楕円体関数を、WSCA測定のために使用する。
【0043】
ナノ構造:本発明の状況において、表現「ナノ構造の表面」は、ナノサイズの構造でカバーされている表面に関する。前記ナノサイズの構造は、すなわち、1~1000nm(ナノメートル)の範囲、好ましくは、1~500nmの範囲、より好ましくは、1~250nm未満の範囲、さらに良好には、1~100nmの範囲のナノスケールで1つの寸法を有する。ナノサイズの構造は、ピラーのアレイ、キャビティ、又はピラー及びキャビティのミックスであり得る。好ましくは、アレイは、周期的アレイである。好ましい実施形態では、ナノサイズの構造は、ピラーのアレイである。
【0044】
例えば、ナノ構造の表面は、ピラーの表面分率(φ)、ピラーのピッチ(P)及びピラーのアスペクト比(H/2R)によって定義されるピラーのアレイを含み得、ここで、
・表面分率(φ)は、2%以上及び80%以下であり;
・ピッチ(P)は、250以下であり;
・アスペクト比(H/2R)は、2.4以下であり、ここで、Hは、ピラーの高さであり、Rは、ピラーの半径であり;
・ピラーのピッチ(P)、高さ(H)、半径(R)は、ナノメートル(nm)で表す。
【0045】
一実施形態によれば、ピッチ(P)は、ナノ構造の表面に亘って一定である。
【0046】
別の実施形態によれば、ピッチは、ナノ構造の表面に亘って変化する。次いで、ピラーのピッチ(P)は、さらに定義するようなピラーの平均ピッチであると理解しなければならない。
【0047】
一実施形態によれば、半径(R)は、ナノ構造の表面に亘って一定である。
【0048】
別の実施形態によれば、半径は、ナノ構造の表面に亘って変化する。次いで、ピラーの半径(R)は、さらに定義するようなピラーの平均半径であると理解しなければならない。
【0049】
一実施形態によれば、高さ(H)は、ナノ構造の表面に亘って一定である。
【0050】
別の実施形態によれば、高さは、ナノ構造の表面に亘って変化する。次いで、ピラーの高さ(H)は、さらに定義するようなピラーの平均高さであると理解しなければならない。
【0051】
表面分率(φ)は、前記リファレンス領域の表面で除したリファレンス領域上の入口開口部平面によって定義される、ピラー高さにおいて決定される総ピラー上側表面面積によって定義される。
【0052】
一実施形態によれば、表面分率(φ)は、ナノ構造の表面に亘って一定である。
【0053】
別の実施形態によれば、表面分率は、ナノ構造の表面に亘って変化する。次いで、ピラーの表面分率(φ)は、さらに定義するようなピラーの平均表面分率であると理解しなければならない。
【0054】
本発明の物品の異なる実施形態によると、それは、全ての技術的に価値ある実施形態によって合わせ得る。今後、ピッチ(P)、高さ(H)、半径(R)は、ナノメートル(nm)で表す。
・ピラーの上部表面は、平坦であるか、又は外向きに延在する;
・表面分率(φ)は、10%以上及び/又は75%以下、例えば、50%以下である;
・アスペクト比(H/2R)は、1.7以下、好ましくは、0.2~1.7である;一実施形態によれば、アスペクト比(H/2R)は、0.80以下、好ましくは、0.25超及び/又は0.70以下である;
・ピッチ(P)は、25以上である;
・ピッチ(P)は、100以上、例えば、150以上及び/又は230以下である;
・高さ(H)は、2以上及び/又は600以下、例えば、300以下である;
・半径(R)は、10以上及び/又は125以下、例えば、100以下である;
・ピラーのアレイは、周期的アレイであり、例えば、六角形アレイである。
【0055】
ピラーのアレイを含むナノ構造の表面はまた、下記の公開資料において開示されている:
-A. Tuteja, W. Choi, M.L. Ma, J.M. Mabry, S.A. Mazzella, G.C. Rutledge, G.H.McKinley and R.E. Cohen, Designing Superoleophobic Surfaces, Science, 2007, 318, 1618-1622, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massasuchetts / Air Force Research Laboratory, California, USA
-A. Ahuja, J.A. Taylor, V. Lifton, A.A. Sidorenko, T.R. Salamon, E.J. Lobaton, P. Kolodner and T.N. Krupenkin, Nanonails: A Simple Geometrical Approach to Electrically Tunable Superlyophobic Surfaces, Langmuir 2008, 24, 9-14, Bell Laboratories, Lucent Technologies, New Jersey, USA
-A. Tuteja, W. Choi, G.H.McKinley, R.E. Cohen and M.F. Rubner, Design Parameters for Superhydrophobicity and Superoleophobicity, MRS Bull., 2008, 33, 752-758, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, Massasuchetts / Air Force Research Laboratory, California, USA
【0056】
別の好ましい実施形態では、ナノ構造の表面は、ナノキャビティのアレイを含む。
【0057】
このようなアレイは、国際公開第2015/082948号パンフレットに開示されている。
【0058】
手短に言えば、前記ナノ構造の表面は、キャビティを画定する近接するセルのアレイを含み、セルのキャビティは、中間固体材料壁によって互いに分離しており、環境に開放されている。
【0059】
一実施形態では、キャビティは、平均高さ(H)及び平均半径(R)を有し、これは、条件を満たす:
R≧5nmであり、好ましくは、R≧10nmであり;
R≦250nmであり、好ましくは、R≦200nmであり、より良好には、R≦150nmであり、より好ましくは、R≦100nmであり;
H≦Rであり、好ましくは、H<3Rであり、好ましくは、H≦1.5Rであり、より好ましくは、H≦0.5Rである。
【0060】
ナノ構造の表面は、キャビティを画定する並列するセルのアレイを含み、セルのキャビティは、中間固体壁によって互いに分離しており、環境に開放されている。
【0061】
キャビティの上方視点の幾可学的形状、2つの連続したキャビティ構造の間の側壁形状、上部壁プロファイル、及び基材上の構造の空間的配置は変化し得る。異なる構造の表面は、全てのこれらのフィーチャの組合せに基づいて形成させることができる。
【0062】
キャビティ構造の上側の幾可学的形状は、規則的、不規則的又はランダムに形状化されてもよい。このような形状の例には、これらに限定されないが、正方形(4つの同一の壁によって範囲を定められている)、長方形(4つの壁によって範囲を定められており、それぞれの2つの対向する壁は同一である)、三角形(すなわち、3つの壁によって範囲を定められている)、六角形(すなわち、6つの壁によって範囲を定められている)、円形又は楕円形(すなわち、1つの壁によって範囲を定められている)、ランダムに形状化されたキャビティ、及びこれらの組合せが含まれる。
【0063】
パターンの配置は、同じ又は異なるサイズを有し、対称的、非対称的に配置されるか、又はランダムに位置している、様々なランダム又は周期的なキャビティ形状の組合せでよい。これはまた、対称的若しくはランダムな空間的構成を有するランダム及び周期的形状にされた交互のキャビティ構造でよいか、又はこれらの組合せで配置されていてもよい。対称的な空間的配置の例には、これらに限定されないが、正方形、六角形、八角形、及びねじれ形が含まれる。
【0064】
2つの隣接するキャビティの間の壁の幅は、その高さに沿って一定であり得るか、又はこれは変化し得る。このように、壁のプロファイルは、直線状(基材に対して垂直に配向されている)、傾斜状、湾曲状、凹状又は突出状でよい。例えば、形状は、円柱状、円錐状、ピラミッド形、プリズム状、曲線状、逆台形状、又は円柱状及び曲線的の組合せでよい。水平平面及び壁側の間に形成される角度は、βによって定義され、入口角と称される。βは、0°から110°まで変化することができる。キャビティの上部壁は、平坦、曲線的又はシャープでよい。
【0065】
ナノ構造がナノキャビティの代わりにピラーであるとき、βは同様に定義及び計算される。
【0066】
β角のポジショニングを示す図は、ナノキャビティについて国際公開第2015082948号パンフレット、及びナノピラーについて国際公開第2017025128号パンフレットにおいて見出すことができる。
【0067】
キャビティの下部は、平底でよいか、又は角度がない表面、例えば、丸底を有し得るか、又は90°未満か若しくはこれと等しいいくつかの角度で切り取り得る。
【0068】
キャビティの壁幅は、キャビティ入口開口部を画定する断面平面の壁上の最も高い位置における2つの隣接するキャビティの間の距離に対応する。
【0069】
平均幅(d)は、10μm×10μmの構造表面の領域において配置されている一式のキャビティパターンについての(上記に定義されているような)壁幅の平均値である。
【0070】
キャビティの高さは、キャビティの入口開口部を画定する断面平面におけるポイントと、キャビティ構造のベース平面上のその標準投影との間の最も大きな距離を指す。
【0071】
平均高さ(H)は、構造表面の10μm×10μmの領域において配置されている一式のキャビティパターンについての(上記に定義されているような)キャビティの高さの平均値である。
【0072】
キャビティの半径は、ベース平面上のキャビティ「入口」開口部の正投影の2つの対角線上のポイントの間のキャビティにおける最大距離の半分を指す。
【0073】
平均半径(R)は、構造表面の10μm×10μmの領域において配置されている一式のキャビティパターンについての(上記に定義されているような)キャビティの半径の平均値である。
【0074】
ベース平面は、キャビティの主軸に対して直角の平面であると定義され、キャビティの最も低いポイントを含む。
【0075】
キャビティのアレイを含むナノ構造の表面はまた、下記の文献において開示されている:
-M.C. Salvadori, M. Cattani,M.R.S. Oliveira F.S. Teixeira and I.G. Brown,“Design and fabrication of microcavity-array superhydrophobic surfaces”,J. Appl. Phys., 2010, 108,024908,University of Sao Paulo,Sao Paulo,BraziL;
-米国特許出願公開第2010/0112286号明細書(Bahadurら);
-国際特許出願(PCT)第2011/106196号パンフレット(Mazumderら);
-国際特許出願(PCT)第2011/094508号パンフレット(Hattonら)及び同第2011/094344号パンフレット(Hattonら);
-Article“Transparency and damage tolerance of patternable omniphobic lubricated surfaces based on inverse colloidal monolayers”.Nature ommunications,4:2167,DOI:10.1038/ncomms3176,published on 31 July 2013。
【0076】
ここで図1及び2を参照すると、本発明による透明な物品のナノピラー2のアレイを含むナノ構造の表面1の模式的に表された実施形態が存在する。
【0077】
各ナノピラーは、上部部分2a、及び上部部分2aの下の残りの部分2bを含む。
【0078】
好ましくは、上部部分2aは典型的には、ナノピラーの上部3、及び上部3に隣接し、且つ上部3の下に延在する短いポーション4を含む。
【0079】
上部部分2aの下のピラー2のポーションは、ピラーの残りの部分2bを構成する。
【0080】
好ましい実施形態では、上部部分2aは、1nmからh/5、好ましくは、1nmからh/10の範囲の高さを有する、上部3の下に延在する環ポーションを含み、hは、ピラーの総高さである。例えば、環ポーションの高さは、2~20nm、より好ましくは、1~10nmの範囲である。
【0081】
本発明の一実施形態によると、ピラーの上部部分2aは、疎水特性又は超疎水特性を有し、一方、ナノピラーの残りの部分2bは、親水特性を有する。
【0082】
疎水性若しくは超疎水性上部部分2aは、疎水性若しくは超疎水性材料でできている全ナノピラー構造からもたらし得、次いで、残りの部分2bは、親水性材料層でコーティングされている。
【0083】
他方、ナノピラーの疎水性若しくは超疎水性上部部分2aは、親水性材料でできているか、又は親水性材料でコーティングすることによって親水性とされている残りの部分2bの上部上に堆積されている疎水性若しくは超疎水性材料層によって形成される。
【0084】
図1に示すように、衝撃を与える雨滴4は、跳ね返り、一方、構造内で起こる水分凝縮は、構造が完全に充填するまで、滑らかな水膜をもたらす。構造が水分凝縮で完全に充填された後、巨視的に滑らかな水膜が維持され、これは表面に接着する。しかし、ナノ構造の高接触表面のおかげで、構造の親水性部分内の水の広がるスピードは、相当する滑らかな表面上より速く、このように、水膜の蒸発はまたより速く起こる。
【0085】
曇り及び雨の同時の条件下でさえ、このような表面は、その有益な特性を維持する。水で完全に充填されたナノ構造上へと衝撃を与える雨滴はこれ以上跳ね返らないが、これらは液膜上に広がる。これは、固体表面上で広がるより相当により少ない時間かかり、このように、光学的ひずみ及び視覚の障害を制限する。
【0086】
図3A~3Cは、本発明による透明な物品のナノピラーのアレイを含むナノ構造の表面の別の実施形態を例示する。
【0087】
示されるように、好ましくは、疎水性材料でできているナノピラー2は、その粗さが上部から下部へと増加する粗面を備えている。
【0088】
粗さが増加するにつれ、表面の疎水性は増加する。これは、ナノピラーの上部へ向かう凝縮された水の動きをもたらす(図3A)。さらに、小さな水滴の合体(図3B)は、水滴の自己推進式のジャンプをもたらし(図3C)、このように、表面からこれらが排除される。
【0089】
粗さは、SEM(走査型電子顕微鏡観察)像に基づいて、必要な場合、画像処理ソフトウェアを使用して、特性を決定することができる。好ましくは、最大粗さは、20nm未満、より好ましくは、10nm未満、それどころかより良好には、5nm未満である。
【0090】
粗さは、当業者には公知であるRa又はRqであり得る。
【0091】
粗さ比ファクターをまた、定義することができる。粗さ比ファクターは、ピラー又はキャビティの上部部分から構造の下部部分へと、rMinからrMaxへと増加する。粗さ比ファクターは、テクスチャ付き表面面積とその平坦な投影面積(又は断面積)の比として定義される。平坦な表面について、これは1と等しく、粗い表面について、これは1超である。rMinは、1からrMax未満の値まで変化することができる。rMaxは、10からrMin超の値まで変化することができる。
【0092】
図4A~4Eは、本発明によるナノピラーのアレイを含むナノ構造の透明な物品を作製するための、第1の方法の第1の実施形態の異なるステップを例示する。
【0093】
第1に、疎水性樹脂(例えば、フッ素化樹脂)でできているか、又は疎水性コーティング2(例えば、フッ素化樹脂)で表面コーティングされている基材1(図4A)が使用される。このように、この表面は、内因的に疎水性である。ナノ粒子の均一な単層、好ましくは、最密充填単層が、表面上に堆積されるように、例えば、100~200nm直径のナノ粒子3、例えば、SiOを、コロイド自己集合又は任意の他の適切な技術(ブロックコポリマーミセルナノリソグラフィーなど)によって表面上に分散させる(図4B)。ナノ粒子の直径は、所望のナノピラー直径に応じて選択され、また、樹脂のエッチングスピードに対するナノ粒子のエッチングスピードによって決まる。ナノ粒子の代わりに、金属ディウェッティング又は金属パターンはハードマスクとして作用することができる。
【0094】
次のステップ(図4C)において、乾燥エッチングプロセスは、例えば、指向性イオンエッチングプロセスを使用することによって行われる。樹脂についてのエッチング速度はナノ粒子のそれより非常に高いため、これは、疎水性ピラー上部上にナノ粒子を有する構造をもたらす。
【0095】
次のステップ(図4D)において、この構造は、親水性材料4で共形的にオーバーコーティングされる。このような材料は、例えば、蒸発シリカでよい。当初の表面が疎水性コーティングを有する親水性樹脂からなる場合、エッチングがピラー側壁上及び構造の下部における親水性樹脂を曝露させているため、このステップはスキップし得る。
【0096】
最後に、ナノ粒子3は、構造(図4E)から除去することができ、このように、ピラーの疎水性上部5を曝露させる。ナノ粒子は疎水性ピラー上部に強力に接着しないため、ナノ粒子を除去することは、表面を穏やかにこすることによって行うことができる。
【0097】
超音波処理は、別の可能性である。また、低粘着テープを使用することができる。
【0098】
任意選択で、例えば、その水溶解度によって水によって次いで除去することができるポリ酢酸ビニル(PVA)コーティングによって、ナノ粒子の接着を改善させる裏込め層を形成させるさらなるステップを、ナノ粒子の分散の後で導入することができる。
【0099】
図5A~5Eは、本発明によるナノピラーのアレイを含むナノ構造の透明な物品を作製するための、第1の方法の第2の実施形態を例示する。
【0100】
この第2の実施形態では、ナノ粒子の堆積のステップが、ハードマスクを疎水性表面上へと密着焼付けし(図5B)、次いで、エッチングマスクとして作用する材料6を移す(図5C)ことによって置き換えられることを除いて、方法ステップは従前に開示されているのと同じである。方法の他のステップは、変更されない。
【0101】
図6A~6Cは、本発明によって上部から下部へと増加する粗さを伴うナノピラーのアレイを含むナノ構造の透明な物品を作製するための、第2の方法の実施形態を例示する。
【0102】
第1に、ナノピラー2を含むナノ構造1を、当業者には公知の任意の1つのプロセス、例えば、ナノインプリント又は二光子重合を使用して、有機-無機又は複合樹脂基材において生じさせる。
【0103】
次いで、構造は、反応性イオンエッチング又は任意の他の公知のエッチングプロセスに曝露され、これは粗さ構造をもたらし得る(図6B)。
【0104】
ナノピラーの上部から下部へと増加する粗さを有するナノピラー構造は、このように得られる(図6C)。
【0105】
一例として、ナノピラー構造を、酸素の存在下で、150Wの出力で、典型的には、15秒間~1分間で、反応性イオンエッチング(RIE)を伴うOrmostamp(登録商標)樹脂基材のUVナノインプリントの使用によって製作した。
【0106】
Ormostamp(登録商標)樹脂は、有機-無機樹脂である。他の有機-無機樹脂、例えば、Microresist Technology GmbHからのOrmocer(登録商標)のファミリーの任意の樹脂(例えば、Ormocomp(登録商標))を使用することができる。
【0107】
反応性イオンエッチングプロセスは、有機-無機樹脂の有機部分を優先的にエッチングするか、又は複合樹脂の場合は、1つの成分を優先的にエッチングする。
【0108】
粗さ勾配の形成が、図7に示すように、電界放出走査型電子顕微鏡観察(FE-SEM)によって観察されてきた。
【0109】
別の実施形態によれば、本発明による粗さ勾配を有するナノ構造を含む表面を有するモールドを使用し、粗さ勾配を有するナノ構造は、製造工程の間にモールドからレンズ表面へと移される。
【0110】
粗さ勾配を有するナノ構造が、基材自体を構成する材料上に移されるか、又はインモールドコーティングプロセスを使用して移されるように、移行を実行することができ、ここで、微小構造を担持するコーティングがモールドからレンズへと移される。
【0111】
古典的なインプリントプロセスは、既に事前形成されたレンズ上で使用することができる。
【0112】
本発明において有用な疎水性及び超疎水性材料は、当技術分野において公知であり、典型的には、フルオロポリマー又はフルオロシランである。
【0113】
このようなフルオロポリマー又はフルオロシランには、これらに限定されないが、Teflon(登録商標)及び市販のフルオロシラン、例えば、Dow Corning2604、2624及び2634;Daikin Optool DSX(登録商標)、Shinetsu OPTRON(登録商標)、ヘプタデカフルオロシラン(例えば、GELESTが製造)、FLUOROSYL(登録商標)(例えば、CYTONIXが製造)などが含まれる。このようなコーティングは、液浸、蒸気コーティング、噴霧、ローラーによる付着、及び当技術分野において公知の他の適切な方法によって物品のナノ構造の表面へと付着させることができる。
【0114】
本発明のために推奨されるフルオロシランを含有する組成物は、米国特許第6,183,872号明細書に記載されている。これらは、下記の一般式によって表されるケイ素をベースとする基を担持する有機基を有し、且つ5.10~1.10の分子量を有するフルオロポリマーを含有し、
【化1】

式中、Rは、ペルフルオロアルキル基を表し;Zは、フルオロ又はトリフルオロメチル基を表し;a、b、c、及びeはそれぞれ、互いに独立に、0又は1と等しいか若しくはそれより多い整数を表し、ただし、a+b+c+d+eの合計は、1以上であり、且つa、b、c、d及びeとして示されるかっこの間の繰返し単位の順序は、示されたものに限定されず;Yは、H又は1~4個の炭素原子を含むアルキル基を表し;Xは、水素、臭素又はヨウ素の原子を表し;
R1は、ヒドロキシル基又は加水分解性基を表し;R2は、水素の原子又は一価炭化水素基を表し;mは、0、1又は2を表し;nは、1、2又は3を表し;pは、少なくとも1と等しい、好ましくは、少なくとも2と等しい整数を表す。
【0115】
特に好ましいのは、次式のペルフルオロポリエーテルであり、
【化2】

式中、Y、R1、m及びpは、上記に定義されている通りであり、aは、1~50の整数である。
【0116】
従前の式(1)によって示されるフルオロシランを含有する配合物は、名称OPTOOL DSX(登録商標)でダイキン工業によって市販されている。
【0117】
文献特開2005-187936号公報は、本発明に適したシランのフッ素化化合物、特に、次式によって示される化合物について記載しており、
【化3】

式中、
R’は、直鎖状二価ペルフルオロポリエーテル基であり、
R’は、C1~C4でのアルキル基又はフェニル基であり、
X’は、加水分解性基であり、
a’は、0~2の整数であり、
b’は、1~5の整数であり、
m’及びn’は、2又は3と等しい整数である。
【0118】
上記の式(2)によって示されるフルオロシラン化合物は、名称KY-130(登録商標)で信越化学工業株式会社によって市販されている。
【0119】
式(2)によって示されるフルオロシラン化合物、及びこれらを調製する方法はまた、欧州特許出願公開第1300433号明細書に記載されている。
図1
図2
図3A-3C】
図4A-4E】
図5A-5E】
図6A-6C】
図7