(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】グロメット、電線取付構造体、及び電線固定方法
(51)【国際特許分類】
H02G 3/22 20060101AFI20230823BHJP
H01B 17/58 20060101ALI20230823BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
B60R16/02 622
(21)【出願番号】P 2020045894
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】尾張 純夫
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-080427(JP,A)
【文献】特開2016-182929(JP,A)
【文献】特開2014-117046(JP,A)
【文献】特開2000-188027(JP,A)
【文献】実開平03-078655(JP,U)
【文献】特開2011-223757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22
H01B 17/58
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が挿入される第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合されるパネル嵌合部と、
前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入される第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線を固定するための電線固定部と、
前記パネル嵌合部に接続されており、可撓性を有しており変形させることで前記電線固定部に接触可能である補強片と、
を備え
、
前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有し、
前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触することを特徴とするグロメット。
【請求項2】
電線が挿入される第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合されるパネル嵌合部と、
前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入される第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線を固定するための電線固定部と、
前記パネル嵌合部に接続されており、可撓性を有しており変形させることで前記電線固定部に接触可能である補強片と、
を備え、
前記パネル嵌合部の径方向のうち前記補強片が接続されない領域において、当該パネル嵌合部と前記電線固定部を接続する第1補強リブが形成されていることを特徴とするグロメット。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のグロメットであって、
前記パネル嵌合部は、前記第1挿入孔の軸方向の一側の端面であって、かつ、前記電線固定部が接続される側の端面である第1端面を有し、
前記第1端面に前記補強片が接続されることを特徴とするグロメット。
【請求項4】
請求項
3に記載のグロメットであって、
前記補強片は、前記第1端面の外側の縁部に接続されることを特徴とするグロメット。
【請求項5】
請求項
4に記載のグロメットであって、
前記パネル嵌合部は、厚肉部と薄肉部が周方向で繰り返される形状であり、
前記パネル嵌合部のうち前記補強片が接続される領域において、少なくとも1つの前記薄肉部が含まれていることを特徴とするグロメット。
【請求項6】
請求項
1に記載のグロメットであって、
前記第1接触部と前記第2接触部の間の部分の厚みが、前記第1接触部の厚みよりも大きいことを特徴とするグロメット。
【請求項7】
請求項
1又は6に記載のグロメットであって、
前記第2接触部は、前記第1接触部に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含むことを特徴とするグロメット。
【請求項8】
請求項
1に記載のグロメットであって、
前記第1接触部は、前記第2接触部に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含み、
前記第2接触部は、前記補強片の基端側に近づくに連れて厚みが小さくなる傾斜状の部分を含み、
前記第1接触部の傾斜角が前記第2接触部の傾斜角よりも小さいことを特徴とするグロメット。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記補強片は、先端側に近づくに連れて幅が小さくなる部分を含むことを特徴とするグロメット。
【請求項10】
請求項1から9までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記電線固定部の外表面のうち、前記補強片が接続可能な領域には、高低差がないフラットな部分が含まれることを特徴とするグロメット。
【請求項11】
請求項1から10までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記補強片の先端が鉤状であることを特徴とするグロメット。
【請求項12】
請求項1から11までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記パネル嵌合部の径方向のうち前記補強片が接続される領域において、当該パネル嵌合部と前記電線固定部を接続する第2補強リブが形成されており、
前記補強片を前記電線固定部に接触させた際に、前記補強片と前記第2補強リブが接触することを特徴とするグロメット。
【請求項13】
請求項1から
12までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記補強片の基端と先端を接続する仮想線が、前記第1挿入孔の軸方向に垂直であることを特徴とするグロメット。
【請求項14】
請求項1から
12までの何れか一項に記載のグロメットであって、
前記補強片の基端と先端を接続する仮想線が、前記第1挿入孔の軸方向に平行であることを特徴とするグロメット。
【請求項15】
電線と、
前記電線が挿入している第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合されるパネル嵌合部と、
前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入している第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線が第1テープで固定されている電線固定部と、
前記パネル嵌合部に接続されているとともに、前記電線固定部に第2テープで固定されている補強片と、
を備え
、
前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有し、
前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触することを特徴とする電線取付構造体。
【請求項16】
車体パネルに嵌合されるパネル嵌合部と、前記パネル嵌合部に接続されており電線を固定するための電線固定部と、前記パネル嵌合部に接続されており前記電線固定部に接触可能である補強片と、を備えるグロメットに電線を固定する電線固定方法において、
前記パネル嵌合部に形成された第1挿入孔と前記電線固定部に形成された第2挿入孔に前記電線を挿入する電線挿入工程と、
前記電線と前記電線固定部とを第1テープで固定する電線固定工程と、
前記補強片と前記電線固定部とを第2テープで固定する補強片固定工程と、
を含
み、
前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有し、
前記補強片固定工程を行うことで前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触することを特徴とする電線固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、車体パネルに電線を固定するためのグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両が備える車体パネルにパネル孔を形成して電線を挿入する場合において、グロメットを用いることがある。グロメットは、パネル孔に嵌合可能であって、かつ、電線を挿入可能である。グロメットを用いることで、パネル孔の縁部によって電線が損傷することを防止したり、あるいは、パネル孔を介した浸水を防止できる。このようなグロメットは、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1のグロメットは、弾性変形可能なゴム等で構成されている。このグロメットは、本体部と、本体部から一側に突出した筒部と、を備える。本体部及び筒部には、電線を挿入可能な貫通孔が形成されている。グロメットを車体パネルに取り付ける際には、グロメットの本体部の径方向のサイズが小さくなるように弾性変形させて、車体パネルのパネル孔に本体部の縁部を位置させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、グロメットを車体パネルに取り付ける際に、例えば筒部を軸方向に引っ張る場合、本体部(パネル嵌合部)が軸方向に大きく弾性変形することがある。そのため、取付作業を行うスペースが小さい場合は作業性が悪くなるため、改善が望まれていた。
【0006】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、パネル嵌合部が軸方向に変形しにくい構成のグロメットを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成のグロメットが提供される。即ち、グロメットは、パネル嵌合部と、電線固定部と、補強片と、を備える。前記パネル嵌合部には、電線が挿入される第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合される。前記電線固定部は、前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入される第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線を固定する。前記補強片は、前記パネル嵌合部に接続されており、可撓性を有しており変形させることで前記電線固定部に接触可能である。前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有する。前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触する。
【0009】
これにより、補強片を介してパネル嵌合部と電線固定部を連結することができるので、電線固定部に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部を軸方向に変形しにくくすることができる。また、補強片が電線固定部とパネル嵌合部の両方に接触するので、パネル嵌合部を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
本発明の第2の観点によれば、以下の構成のグロメットが提供される。即ち、グロメットは、パネル嵌合部と、電線固定部と、補強片と、を備える。前記パネル嵌合部には、電線が挿入される第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合される。前記電線固定部は、前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入される第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線を固定する。前記補強片は、前記パネル嵌合部に接続されており、可撓性を有しており変形させることで前記電線固定部に接触可能である。前記パネル嵌合部の径方向のうち前記補強片が接続されない領域において、当該パネル嵌合部と前記電線固定部を接続する第1補強リブが形成されている。
これにより、パネル嵌合部を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0010】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記パネル嵌合部は、前記第1挿入孔の軸方向の一側の端面であって、かつ、前記電線固定部が接続される側の端面である第1端面を有する。前記第1端面に前記補強片が接続される。
【0011】
これにより、パネル嵌合部と電線固定部をスムーズに接続できる。
【0012】
前記のグロメットにおいては、前記補強片は、前記第1端面の外側の縁部に接続されることが好ましい。
【0013】
これにより、パネル嵌合部が第1端面の全体にわたって軸方向に変形しにくくなる。
【0014】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記パネル嵌合部は、厚肉部と薄肉部が周方向で繰り返される形状である。前記パネル嵌合部のうち前記補強片が接続される領域において、少なくとも1つの前記薄肉部が含まれている。
【0015】
これにより、軸方向の力が補強片を介してパネル嵌合部に伝達した場合に、薄肉部がより変形し易くなるので、グロメットを取り付けるために必要な力を低減できる。
【0018】
前記のグロメットにおいては、前記第1接触部と前記第2接触部の間の部分の厚みが、前記第1接触部の厚みよりも大きいことが好ましい。
【0019】
これにより、電線固定部に接触できない部分の剛性を高くすることができる。
【0020】
前記のグロメットにおいては、前記第2接触部は、前記第1接触部に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含むことが好ましい。
【0021】
これにより、補強片の基端側の厚みが小さくなるので、補強片を変形させ易い。
【0022】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記第1接触部は、前記第2接触部に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含む。前記第2接触部は、前記補強片の基端側に近づくに連れて厚みが小さくなる傾斜状の部分を含む。前記第1接触部の傾斜角が前記第2接触部の傾斜角よりも小さい。
【0023】
これにより、電線固定部に接触できない部分の剛性を高くしつつ、補強片を変形させ易くすることができる。
【0024】
前記のグロメットにおいては、前記補強片は、先端側に近づくに連れて幅が小さくなる部分を含むことが好ましい。
【0025】
これにより、基端側が幅広であることでパネル嵌合部の変形を十分に抑制しつつ、先端側が幅狭であることで小径の電線固定部に固定し易くなる。
【0026】
前記のグロメットにおいては、前記電線固定部の外表面のうち、前記補強片が接続可能な領域には、高低差がないフラットな部分が含まれることが好ましい。
【0027】
これにより、補強片と電線固定部とを固定し易い。
【0028】
前記のグロメットにおいては、前記補強片の先端が鉤状であることが好ましい。
【0029】
これにより、例えばテープで補強片と電線固定部とを固定した場合に、テープが外れにくい。
【0032】
前記のグロメットにおいては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記パネル嵌合部の径方向のうち前記補強片が接続される領域において、当該パネル嵌合部と前記電線固定部を接続する第2補強リブが形成されている。前記補強片を前記電線固定部に接触させた際に、前記補強片と前記第2補強リブが接触する。
【0033】
これにより、補強片とパネル嵌合部との接触面積を大きくすることができるので、パネル嵌合部を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0034】
前記のグロメットにおいては、前記補強片の基端と先端を接続する仮想線が、前記第1挿入孔の軸方向に垂直であることが好ましい。
【0035】
これにより、電線固定部に電線を固定する作業が行い易くなる。
【0036】
前記のグロメットにおいては、前記補強片の基端と先端を接続する仮想線が、前記第1挿入孔の軸方向に平行であることが好ましい。
【0037】
これにより、補強片をあまり変形させることなく、補強片を電線固定部に接触させることができる。
【0038】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の電線取付構造体が提供される。即ち、電線取付構造体は、電線と、パネル嵌合部と、電線固定部と、補強片と、を備える。前記パネル嵌合部は、前記電線が挿入している第1挿入孔が形成されており、車体パネルに嵌合される。前記電線固定部は、前記パネル嵌合部に接続されており、前記電線が挿入している第2挿入孔が形成された筒状の部分であり、前記電線が第1テープで固定されている。前記補強片は、前記パネル嵌合部に接続されているとともに、前記電線固定部に第2テープで固定されている。前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有する。前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触する。
【0039】
この電線取付構造体は、補強片を介してパネル嵌合部と電線固定部が連結されているので、電線固定部に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部を軸方向に変形しにくくすることができる。また、補強片が電線固定部とパネル嵌合部の両方に接触するので、パネル嵌合部を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0040】
本発明の第4の観点によれば、以下の電線固定方法が提供される。即ち、電線固定方法では、グロメットに電線を固定する。前記グロメットは、車体パネルに嵌合されるパネル嵌合部と、前記パネル嵌合部に接続されており電線を固定するための電線固定部と、前記パネル嵌合部に接続されており前記電線固定部に接触可能である補強片と、を備える。電線固定方法は、電線挿入工程と、電線固定工程と、補強片固定工程と、を含む。前記電線挿入工程では、前記パネル嵌合部に形成された第1挿入孔と前記電線固定部に形成された第2挿入孔に前記電線を挿入する。前記電線固定工程では、前記電線と前記電線固定部とを第1テープで固定する。前記補強片固定工程では、前記補強片と前記電線固定部とを第2テープで固定する。前記補強片は、第1接触部と第2接触部を有する。前記補強片固定工程を行うことで前記補強片を変形させて前記第1接触部を前記電線固定部に接触させた状態において、前記第2接触部が前記パネル嵌合部に接触する。
【0041】
この方法で電線をグロメットに固定することで、補強片を介してパネル嵌合部と電線固定部が連結されるので、電線固定部に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部を軸方向に変形しにくくすることができる。また、補強片が電線固定部とパネル嵌合部の両方に接触するので、パネル嵌合部を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図4】補強片を第1テープに接触させた後のグロメットの縦断面図。
【
図6】グロメットを車体パネルに取り付けた状態における縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0043】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。初めに、
図1から
図6を参照して、第1実施形態のグロメット2の構成及び車体パネルへの取付方法等について説明する。
【0044】
図1に示すグロメット2は、
図6に示すように、電線1を車体パネル3に固定するための部材である。電線1は、1本の電線であっても良いし、複数本の電線が束ねられた構成であってもよい。例えば車両には、空間を仕切るように車体パネル3が配置される。車体パネル3は、例えばエンジンルームと車室を仕切る。車体パネル3には、電線1を挿入するためのパネル孔4が形成されている。電線1がグロメット2に固定された後に、グロメット2がパネル孔4に固定される。
【0045】
これにより、パネル孔4の縁部によって電線1が傷つかないように保護することができる。また、グロメット2が防水性を有する場合は、車体パネル3を介して水が浸入することを防止しつつ、電線1を通すことができる。
【0046】
以下、グロメット2の構造について詳細に説明する。以下の説明では、パネル孔4の軸方向、グロメット2が備える円筒形の部分等の軸方向等を単に「軸方向」と称する。そして、軸方向に垂直な方向を「径方向」と称する。また、グロメット2が有する円形の部材は、何れも同軸である。
【0047】
グロメット2は、ゴム又は軟性樹脂等の可撓性を有する弾性材料で構成されている。グロメット2は型を用いて一体的に製造される。従って、グロメット2の各部は互いに強固に接続されており、分離不能である。
図1に示すように、グロメット2は、パネル嵌合部10と、電線固定部20と、2つの補強片30と、を備える。
【0048】
パネル嵌合部10は、車体パネル3と嵌合する部分である。パネル嵌合部10は、円錐台形状の第1本体11と、円板状の第2本体12と、を備える。また、第1本体11と第2本体12の境界には、円環溝13(
図2を参照)が形成されている。車体パネル3のパネル孔4の縁部が円環溝13に入ることで、グロメット2が車体パネル3に固定される。従って、グロメット2を車体パネル3に固定した状態において、第1本体11が車体パネル3の一方側に位置し、第2本体12が車体パネル3の他方側に位置する。
【0049】
第1本体11には、厚肉部11a及び薄肉部11bが周方向に並べて形成されている。また、これにより、第1本体11が径方向に縮み易くなるので、グロメット2の取付けに必要な挿入力を小さくすることができる。
【0050】
第1本体11と第2本体12の内部には空間が形成されている。この空間は、電線1を挿入するための第1挿入孔14として機能する。第1挿入孔14は、第1本体11及び第2本体12にわたって形成されている。
【0051】
パネル嵌合部10の軸方向の端面を第1端面15及び第2端面16と称する。第1端面15は、第1本体11側であって、かつ、電線固定部20が形成される側の端面である。第1端面15には、円環状の溝15aが形成されている。第2端面16は、第2本体12側の端面である。第1端面15及び第2端面16は円形又は円環形である。第1端面15の直径は、第2端面16の直径よりも小さい。
【0052】
電線固定部20は、筒状の部分であり、パネル嵌合部10の第1本体11に接続されている。電線固定部20は、第1本体11を起点として、第2本体12から離れる方向に延びる構成である。以下では、電線固定部20のうち第1本体11側を基端とし、その反対側を先端と称する。電線固定部20の基端と先端とを接続する仮想線は軸方向に平行である。なお、本明細書において「平行」は、実質的に平行という意味であり、数度程度の誤差を含んでいてもよい。垂直についても同様である。
【0053】
電線固定部20は、円筒状の本体21と、本体21よりも大径の先端部22と、を備える。本体21の外表面は、凹凸形状のないフラットな面である。「フラット」とは、凹凸が含まれていない(即ち、高低差がない)という意味であり、平面に限られず曲面であってもよい。本体21及び先端部22には、電線1を挿入するための第2挿入孔23が形成されている。先端部22が形成されていることで、後述の第1テープ41を外れにくくすることができる。また、本体21及び先端部22には、先端を起点として基端に向かって軸方向に切り欠かれた切欠き24が形成されている。
【0054】
電線固定部20の基端は、第1端面15の溝15aに接続されている。溝15aが形成されている部分は、第1端面15の他の部分と比較して厚みが小さいので、変形し易い。従って、例えば電線1を介して電線固定部20に径方向の力が掛かった場合、電線固定部20の基端が折れ曲がり易いので、この力がパネル嵌合部10に伝わりにくい。
【0055】
補強片30は、細長状かつ板状の部分である。補強片30は、パネル嵌合部10に接続されている。具体的には、補強片30は、パネル嵌合部10の第1端面15の外側の縁部から径方向に延びるように位置している。言い換えれば、補強片30のうちパネル嵌合部10に接続される側を基端と称して、その反対側を先端と称した場合に、基端と先端を接続する仮想線と、径方向と、が平行である。
【0056】
本実施形態の補強片30は、厚さ及び幅が全体にわたって一定である。グロメット2は弾性材料で構成されており、かつ、補強片30は板状であるため、作業者が手を用いて補強片30を折り曲げることができる。これにより、補強片30を電線固定部20に接触させることができる。詳細は後述するが、補強片30は折り曲げられて電線固定部20に第2テープ42で固定される。これにより、パネル嵌合部10の剛性を高くして、パネル嵌合部10の変形を抑制できる。
【0057】
本明細書において「接触」とは、2つの部材が直接的に接触している状態だけでなく、2つの部材の間に薄い部材(例えばテープ)が介在している状態も含むものとする。また、「固定」についても、2つの部材が直接的に接触して固定されている状態だけでなく、2つの部材の間に別の部材が介在して固定されている状態も含むものとする。
【0058】
また、補強片30の先端には、鉤部33が形成されている。鉤部33は、板状の補強片30の先端を垂直に折り曲げた構成である。鉤部33が形成されていることで、先端部22と同様、後述の第2テープ42を外れにくくすることができる。鉤部33は、第2テープ42が引っ掛かって外れにくくなるのであれば、別の形状であってもよい。
【0059】
次に、主に
図2から
図6を参照して、グロメット2に電線1を固定して、グロメット2を車体パネル3に固定する作業の流れについて説明する。縦断面図とは、軸及び補強片30を通るように、軸方向に平行な平面で切った断面図である。また、グロメット2と、グロメット2に固定された電線1と、を合わせて電線取付構造体100と称することがある。
【0060】
初めに、
図3に示すように、パネル嵌合部10の第1挿入孔14及び第2本体12の第2挿入孔23に電線1を挿入する。次に、電線1と電線固定部20に第1テープ41を巻き付けることで、電線1を電線固定部20に固定する。なお、電線1を電線固定部20に固定する方法はテープに限られず、例えばクランプ部材を用いて電線1を電線固定部20に固定してもよい。上述したように、電線固定部20が先端部22を有することで、第1テープ41が先端部22に引っ掛かるため、第1テープ41が外れにくくなる。
【0061】
次に、
図4に示すように、補強片30の基端を折り曲げて、補強片30を電線固定部20(厳密には第1テープ41)に接触させる。補強片30のうち、変形させることで電線固定部20に接触可能な部分を第1接触部31と称する。本実施形態では、補強片30の長さの半分以上が第1接触部31である。また、電線固定部20は外表面がフラットな部分である本体21を有し、この部分は第1テープ41が巻かれた後においても実質的にフラットである。従って、電線固定部20(本体21)と補強片30との接触面積を大きくすることができる。
【0062】
次に、
図5に示すように、第1テープ41と補強片30に第2テープ42を巻き付けることで、補強片30を電線固定部20に固定する。なお、第2テープ42は、補強片30を電線固定部20に固定できればよい。従って、例えば、第2テープ42が、電線1と補強片30に巻き付けられてもよい。また、電線固定部20が露出している場合は、第2テープ42が、電線固定部20と補強片30に巻き付けられてもよい。上述したように、補強片30が鉤部33を有することで、第2テープ42が鉤部33に引っ掛かるため、第2テープ42が外れにくくなる。
【0063】
次に、
図6に示すように、電線1及びグロメット2(即ち、電線取付構造体100)を車体パネル3に取り付ける。具体的には、作業者は、電線固定部20及び補強片30を手で持ち、軸方向(
図6の上方向)に引っ張る。これにより、第1本体11が径方向に収縮してパネル孔4を通過し、円環溝13がパネル孔4の縁部に入り込む。以上により、電線取付構造体100が車体パネル3に固定される。
【0064】
ここで、従来のグロメットは、補強片に相当する部分が存在しない。この構成の従来のグロメットを車体パネルに固定する場合、作業者が電線固定部を軸方向に引っ張ることによって、パネル嵌合部が軸方向に大きく変形する。特に、電線固定部から力を受けることで第1端面の一部(径方向内側部分)が持ち上がるようにして、大きく変形する。そのため、例えば狭いスペースでグロメットを取り付ける作業が行いにくくなることがあった。
【0065】
これに対し、本実施形態のグロメット2は、第1端面15の縁部に接続される補強片30を有し、補強片30が電線固定部20に接触した状態で固定されている。この構成により、作業者が電線固定部20及び補強片30を軸方向に引っ張っても、パネル嵌合部10(特に第1端面15)が軸方向に変形しにくい。なぜなら、第1端面15の径方向内側部分は電線固定部20に接続され、第1端面15の径方向外側部分は補強片30に接続されている。従って、電線固定部20と補強片30の両方を軸方向に引っ張ることで、第1端面15は両方の端部から均等に力を受けるので、従来のグロメットのように径方向内側部分だけが持ち上がることがない。従って、パネル嵌合部10が軸方向に変形しにくい。
【0066】
次に、
図7から
図9を参照して、第2実施形態について説明する。なお、以後の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。第2実施形態は、補強片30の形状が第1実施形態とは異なる。以下、具体的に説明する。
【0067】
第1実施形態の補強片30は、幅が一定である。これに対し、第2実施形態の補強片30は、
図8に示すように、先端の幅が基端の幅よりも小さい。また、補強片30の幅は徐々に変化している。補強片30の先端の幅を小さくすることで、比較的小径の電線固定部20に接触させ易い。また、補強片30の基端の幅を大きくすることで、補強片30を介して第1本体11に伝達される力を大きくできるので、パネル嵌合部10の軸方向の変形を大きく抑制できる。
【0068】
また、
図8に示すように、補強片30が第1本体11に接続される領域には、少なくとも1つ(本実施形態では2つ)の薄肉部11bが含まれている。これにより、電線固定部20及び補強片30を軸方向に引っ張った場合において、第1本体11が径方向に収縮し易くなるため、グロメット2の取付けに必要な力を小さくすることができる。なぜなら、補強片30を軸方向に引っ張った場合、この力は補強片30を介して、第1本体11を径方向に収縮させる。そして、第1本体11のうち薄肉部11bが径方向の収縮に大きく寄与するため、この薄肉部11bに力が伝達される構成にすることで、第1本体11が径方向に収縮し易い。
【0069】
第1実施形態では、補強片30を電線固定部20に接触させた場合において、補強片30は第1端面15に全く又は殆ど接触しない。これに対し、第2実施形態の補強片30は、第1端面15に接触可能な第2接触部32を有する。つまり、第2実施形態では、補強片30の第1接触部31を電線固定部20に接触させた状態において、第2接触部32が第1端面15に接触する。この構成により、例えばグロメット2を車体パネル3に取り付けた後に、電線固定部20を第2本体12に近づける方向の力(
図9の下向きの力)が掛かった場合、第2接触部32と第1端面15が干渉するため、パネル嵌合部10が軸方向に縮みにくい。
【0070】
第1実施形態の補強片30は、厚みが一定である。これに対し、第2実施形態の補強片30は厚みが徐々に変化する。具体的には、第1接触部31は、基端側(第2接触部32側)に近づくに連れて厚みが徐々に大きくなる。また、第1接触部31と第2接触部32の間(電線固定部20にも第1端面15にも接触しない部分)において、厚みが最も大きくなる。これにより、他と接触しないために変形し易い部分について、剛性を高くすることができる。また、第2接触部32は、基端側に近づくに連れて厚みが徐々に小さくなる。これにより、補強片30を折曲げ易くなる。
【0071】
次に、
図10を参照して、第3実施形態について説明する。第1実施形態及び第2実施形態では、補強片30の基端と先端を接続する仮想線は、軸方向に平行である。これにより、電線固定部20に電線1を固定する作業が行い易い。これに対し、第3実施形態では、補強片30の基端と先端を接続する仮想線は、軸方向に垂直である。これにより、補強片30を折り曲げて電線固定部20に接触させる作業が行い易い。
【0072】
次に、
図11及び
図12を参照して、第4実施形態について説明する。
【0073】
第4実施形態は、2つの第1補強リブ51と、2つの第2補強リブ52と、を有する点において、第1実施形態とは異なる。第1補強リブ51及び第2補強リブ52は、第1端面15と、電線固定部20と、を接続する板状の部分である。第1補強リブ51及び第2補強リブ52は、三角形状である。具体的には、第1端面15に沿う辺と、本体21の外表面に沿う辺と、を有する直角三角形状である。ただし、第1補強リブ51及び第2補強リブ52は、三角形以外の形状であってもよい。
【0074】
第1補強リブ51は、第1端面15のうち補強片30が接続されていない第1領域に設けられている。言い換えれば、第1領域は、補強片30を軸位置まで仮に延長した場合に第1端面15と重ならない部分の領域である。第1補強リブ51が設けられることにより、パネル嵌合部10と電線固定部20が更に強固に連結されるので、パネル嵌合部10を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0075】
第2補強リブ52は、第1端面15のうち補強片30が接続されている第2領域に設けられている。言い換えれば、第2領域は、補強片30を軸位置まで仮に延長した場合に第1端面15と重なる部分の領域である。本実施形態では、2つの補強片30が設けられており、それらに対応する位置に、それぞれ2つの第2補強リブ52が設けられている。
図12に示すように、補強片30を折り曲げることで、補強片30を第2補強リブ52に接触させることができる。この構成により、パネル嵌合部10と電線固定部20の連結をより強固にできるので、パネル嵌合部10を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0076】
以上に説明したように、上記実施形態のグロメット2は、パネル嵌合部10と、電線固定部20と、補強片30と、を備える。パネル嵌合部10には、電線1が挿入する第1挿入孔14が形成されており、車体パネル3に嵌合される。電線固定部20は、パネル嵌合部10に接続されており、電線1が挿入する第2挿入孔23が形成された筒状の部分であり、電線1を固定するための部分である。補強片30は、パネル嵌合部10に接続されており、可撓性を有しており変形させることで電線固定部20に接触可能である。
【0077】
これにより、補強片30を介してパネル嵌合部10と電線固定部20を連結することができるので、電線固定部20に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部10を軸方向に変形しにくくすることができる。
【0078】
また、上記実施形態のグロメット2において、パネル嵌合部10は、第1挿入孔14の軸方向の一側の端面であって、かつ、電線固定部20が接続される側の端面である第1端面15を有する。第1端面15に補強片30が接続される。
【0079】
これにより、パネル嵌合部10と電線固定部20をスムーズに接続できる。
【0080】
また、上記実施形態のグロメット2において、補強片30は、第1端面15の外側の縁部に接続される。
【0081】
これにより、パネル嵌合部10が第1端面15の全体にわたって軸方向に変形しにくくなる。
【0082】
また、上記実施形態のグロメット2において、パネル嵌合部10は、厚肉部11aと薄肉部11bが周方向で繰り返される形状である。パネル嵌合部10のうち補強片30が接続される領域において、少なくとも1つの薄肉部11bが含まれている。
【0083】
これにより、軸方向の力が補強片30を介してパネル嵌合部10に伝達した場合に、薄肉部11bがより変形し易くなるので、グロメット2を取り付けるために必要な力を低減できる。
【0084】
また、第2実施形態のグロメット2において、補強片30は、第1接触部31と第2接触部32を有する。補強片30を変形させて第1接触部31を電線固定部20に接触させた状態において、第2接触部32がパネル嵌合部10に接触する。
【0085】
これにより、補強片30が電線固定部20とパネル嵌合部10の両方に接触するので、パネル嵌合部10を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0086】
また、第2実施形態のグロメット2において、第1接触部31と第2接触部32の間の部分の厚みが、第1接触部31の厚みよりも大きい。
【0087】
これにより、電線固定部20に接触できない部分の剛性を高くすることができる。
【0088】
また、第2実施形態のグロメット2において、第2接触部32は、第1接触部31に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含む。
【0089】
これにより、補強片30の基端側の厚みが小さくなるので、補強片30を変形させ易い。
【0090】
また、第2実施形態のグロメット2において、第1接触部31は、第2接触部32に近づくに連れて厚みが大きくなる傾斜状の部分を含む。第2接触部32は、補強片30の基端側に近づくに連れて厚みが小さくなる傾斜状の部分を含む。第1接触部31の傾斜角が第2接触部32の傾斜角よりも小さい。
【0091】
これにより、電線固定部20に接触できない部分の剛性を高くしつつ、補強片30を変形させ易くすることができる。
【0092】
また、第2実施形態のグロメット2において、補強片30は、先端側に近づくに連れて幅が小さくなる部分を含む。
【0093】
これにより、基端側が幅広であることでパネル嵌合部10の変形を十分に抑制しつつ、先端側が幅狭であることで小径の電線固定部20に固定し易くなる。
【0094】
また、上記実施形態のグロメット2において、電線固定部20の外表面のうち、補強片30が接続可能な領域には、高低差がないフラットな部分が含まれる。
【0095】
これにより、補強片30と電線固定部20とを固定し易い。
【0096】
また、上記実施形態のグロメット2において、補強片30の先端が鉤状である。
【0097】
これにより、第1テープ41で補強片30と電線固定部20とを固定した場合に、第1テープ41が外れにくい。
【0098】
また、第4実施形態のグロメット2において、パネル嵌合部10の径方向のうち補強片30が接続されない領域において、当該パネル嵌合部10と電線固定部20を接続する第1補強リブ51が形成されている。
【0099】
これにより、パネル嵌合部10を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0100】
また、第4実施形態のグロメット2において、パネル嵌合部10の径方向のうち補強片30が接続される領域において、当該パネル嵌合部10と電線固定部20を接続する第2補強リブ52が形成されている。補強片30を電線固定部20に接触させた際に、補強片30と第2補強リブ52が接触する。
【0101】
これにより、補強片30とパネル嵌合部10との接触面積を大きくすることができるので、パネル嵌合部10を軸方向に一層変形しにくくすることができる。
【0102】
また、第1、第2、及び第4実施形態のグロメット2において、補強片30の基端と先端を接続する仮想線が、第1挿入孔14の軸方向に垂直である。
【0103】
これにより、電線固定部20に電線1を固定する作業が行い易くなる。
【0104】
また、第3実施形態のグロメット2において、補強片30の基端と先端を接続する仮想線が、第1挿入孔14の軸方向に平行である。
【0105】
これにより、補強片30をあまり変形させることなく、補強片30を電線固定部20に接触させることができる。
【0106】
また、上記実施形態の電線取付構造体100は、電線1と、パネル嵌合部10と、電線固定部20と、補強片30と、を備える。パネル嵌合部10には、電線1が挿入している第1挿入孔14が形成されており、車体パネル3に嵌合される。電線固定部20は、パネル嵌合部10に接続されており、電線1が挿入している第2挿入孔23が形成された筒状の部分であり、電線1が第1テープ41で固定されている。補強片30は、パネル嵌合部10に接続されているとともに、電線固定部20に第2テープ42で固定されている。
【0107】
この電線取付構造体100は、補強片30を介してパネル嵌合部10と電線固定部20が連結されているので、電線固定部20に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部10を軸方向に変形しにくくすることができる。
【0108】
また、上記実施形態では、以下の電線固定方法が行われる。この電線固定方法は、電線固定方法は、電線挿入工程と、電線固定工程と、補強片固定工程と、を含む。電線挿入工程では、パネル嵌合部10に形成された第1挿入孔14と電線固定部20に形成された第2挿入孔23に電線1を挿入する。電線固定工程では、電線1と電線固定部20とを第1テープ41で固定する。補強片固定工程では、補強片30と電線固定部20とを第2テープ42で固定する。
【0109】
この方法で電線1をグロメット2に固定することで、補強片30を介してパネル嵌合部10と電線固定部20が連結されるので、電線固定部20に軸方向の力が掛かった場合に、パネル嵌合部10を軸方向に変形しにくくすることができる。
【0110】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0111】
上述した各実施形態の特徴は適宜組み合わせることができる。例えば、第2実施形態の補強片30の形状と、第3実施形態の補強片30の向きと、を組み合わせてもよい。また、第4実施形態の第1補強リブ51及び第2補強リブ52を、第2実施形態又は第3実施形態に適用してもよい。他の特徴についても同様である。
【0112】
パネル嵌合部10に2つの補強片30が接続される構成に代えて、1つ又は3つ以上の補強片30が接続される構成であってもよい。例えば、4つの補強片30がパネル嵌合部10に接続される構成にすることで、パネル嵌合部10の軸方向の変形をより一層抑えることができる。
【0113】
補強片30の基端と先端を接続する仮想線が軸方向及び径方向の何れに対しても交差する構成でもよい。
【0114】
上記実施形態の補強片30は、第1端面15の縁部に接続されているが、第1端面15の径方向の中途部に接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 電線
2 グロメット
10 パネル嵌合部
20 電線固定部
30 補強片
100 電線取付構造体