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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】グロメットインナ及びグロメット
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20230823BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20230823BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20230823BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020059683
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021158880
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】森野 智
【審査官】遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-230352(JP,A)
【文献】特開2017-007463(JP,A)
【文献】特開2013-038899(JP,A)
【文献】特開2020-035680(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0070752(US,A1)
【文献】特開平06-309978(JP,A)
【文献】特開2011-062073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/22-3/40
H01B 17/58
F16L 5/02
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに設けた挿通孔を挿通する電線を保護するグロメットを、前記パネルに対して密着させるリップを備える筒状のグロメット本体とともに構成し、該グロメット本体の端部に装着されるとともに、前記挿通孔に固定されるグロメットインナであって、
前記挿通孔に挿通されるとともに、前記挿通孔に固定された状態において前記挿通孔への挿通方向から視てオーバル形状に形成された筒状のインナー本体と、
該インナー本体の前記挿通方向の一端側において、前記インナー本体の径方向の外側に向けて延伸するフランジ部とで構成され、
前記インナー本体の他端側端面に、前記挿通方向の他端側に向けて延伸する延伸片が設けられ、
前記延伸片は、前記グロメット本体よりも剛性が高く、且つ、前記インナー本体の前記挿通方向の長さよりも長く構成され、
前記延伸片の両端部分に、前記挿通方向に沿った内側溝部が設けられた
グロメットインナ。
【請求項2】
前記挿通方向と直交する幅方向における前記延伸片の長さが、前記インナー本体の前記幅方向に対応する長さに比べて短く構成された
請求項1に記載のグロメットインナ。
【請求項3】
前記延伸片は、
前記インナー本体の外周面よりも前記径方向の内側から延伸した
請求項1又は請求項2に記載のグロメットインナ。
【請求項4】
前記延伸片は、
前記径方向の内側の端面と前記インナー本体の内周面とが面一となるように構成された
請求項1乃至請求項3のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項5】
前記内側溝部は、前記インナー本体の内周面よりも径外側に設けられた
請求項1乃至請求項4のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項6】
前記挿通方向から視て、前記延伸片の前記径方向の外側端面における中央部分に前記挿通方向に沿った外側溝部が設けられた
請求項1乃至請求項5のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項7】
前記延伸片における前記挿通方向の一端に、前記挿通方向に沿った補強リブが前記インナー本体と前記延伸片とをまたぐように設けられた
請求項1乃至請求項6のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項8】
前記補強リブは、
前記インナー本体の外周面と面一となるように構成された
請求項7に記載のグロメットインナ。
【請求項9】
前記補強リブの前記挿通方向の他端は、前記挿通方向の他端側に向かうに伴い、前記径方向の内側に傾斜する
請求項7又は請求項8に記載のグロメットインナ。
【請求項10】
前記補強リブは、前記挿通方向と直交する幅方向における前記延伸片の両端部分に設けられ両端側補強リブで構成され、
該両端側補強リブは、前記延伸片の端面とが面一に構成された
請求項7乃至請求項9のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項11】
前記インナー本体の他端側端面のうち前記延伸片と対向する位置に、
前記挿通方向の他端側に向けて延伸するガイド片が、前記径方向に沿うとともに、前記径方向の外側の端面と前記インナー本体の外周面とが面一となるように構成され、
前記ガイド片は前記延伸片と比べて短い
請求項1乃至請求項10のうちのいずれかに記載のグロメットインナ。
【請求項12】
請求項1乃至請求項11のうちのいずれかに記載のグロメットインナと、
内部に電線を挿通させる筒状のグロメット本体とで構成され、
前記グロメットインナが、前記グロメット本体の端部に装着された
グロメット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、パネルに挿通される電線を保護するグロメットを構成するグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットに関する。
【背景技術】
【0002】
車両本体に設けられた電気機器と、車両本体に対して開閉自在に取り付けられているドアの内部に設けられた電気機器とは、ドアパネル及びボディパネル(以下、「パネル」とする。)により隔てて配置されており、それぞれのパネルに設けられた挿通孔を挿通させた電線を介して電気的に接続されている。
【0003】
この電線は、例えば特許文献1に開示されているような筒状のグロメットに挿通させることにより、挿通孔の周縁部と干渉して損傷することを防止できる。 詳述すると、特許文献1に開示されているグロメットは、パネルに対して取り付ける可撓性を有する樹脂製の取付部と、取付部に装着されるとともにパネルに設けた挿通孔に挿通させるグロメットインナとで構成されている。
【0004】
そして、取付部から挿通方向の前方に延出する電線固定部に電線をテープなどで固定した状態で電線固定部を挿通孔に挿通させ、取付部とグロメットインナとでパネルを挟み込むことで、挿通孔の周縁部と干渉して損傷することなく電線を挿通孔に挿通させることができる。
【0005】
しかしながら、電線がテープなどで固定された電線固定部は可撓性を有するため、電線の自重によって湾曲することがあった。このように電線固定部が湾曲した状態で、取付部及びグロメットインナをパネルに取り付けた場合、より具体的には、2枚のパネル孔に設けられたそれぞれの貫通孔にグロメットインナを挿通させる場合、電線固定部が挿通方向の前方側の挿通孔と干渉し、グロメットをパネルに正確に取り付けることができないおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-180019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑み、パネルに設けた挿通孔に電線を確実に挿通させることができるグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、パネルに設けた挿通孔を挿通する電線を保護するグロメットを、前記パネルに対して密着させるリップを備える筒状のグロメット本体とともに構成し、該グロメット本体の端部に装着されるとともに、前記挿通孔に固定されるグロメットインナであって、前記挿通孔に挿通されるとともに、前記挿通孔に固定された状態において前記挿通孔への挿通方向から視てオーバル形状に形成された筒状のインナー本体と、該インナー本体の前記挿通方向の一端側において、前記インナー本体の径方向の外側に向けて延伸するフランジ部とで構成され、前記インナー本体の他端側端面に、前記挿通方向の他端側に向けて延伸する延伸片が設けられ、前記延伸片は、前記グロメット本体よりも剛性が高く、且つ、前記インナー本体の前記挿通方向の長さよりも長く構成され、前記延伸片の両端部分に、前記挿通方向に沿った内側溝部が設けられたことを特徴とする。
【0009】
またこの発明は、上述のグロメットインナと、内部に電線を挿通させる筒状のグロメット本体とで構成され、前記グロメットインナが、前記グロメット本体の端部に装着されたグロメットであることを特徴とする。
【0010】
前記電線は、電気機器同士を電気的に接続する構成をさし、一本の導電体で構成された素線や、複数の導電体を束ねたワイヤーハーネス、絶縁電線を保護被覆で覆ったケーブルなどを含む。なお、前記電線は導電体を絶縁体で被覆した被覆電線であってもよいし、導体がむき出された裸電線であってもよい。
【0011】
前記オーバル形状は、長軸又は短軸に対して線対称である長円や楕円、真円、卵形、あるいは長軸又は短軸に対して非対称な長円などの他、角部分が円弧状に形成された多角形状を含む。
前記挿通方向は、前記挿通孔に前記グロメットインナを正確に固定できるように挿入する方向をさす。すなわち、前記挿通孔が設けられた前記パネルに対して直交する方向さす。
【0012】
前記径方向は、前記挿通方向から視てオーバル形状に形成された前記インナー本体における中央側(内側)から外側に向いた方向をさす。すなわち、上述の径方向の外側とは、挿通方向から視てオーバル形状の筒状に形成されている前記インナー本体の内側から外側に向いた方向をさし、径方向の内側とは、挿通方向から視てオーバル形状の筒状に形成されている前記インナー本体の外側から内側に向けた方向をさす。
【0013】
この発明により、パネルに設けた挿通孔に電線を確実に挿通させることができる。
詳述すると、グロメットインナの他端側端面から挿通方向の他端側に向けて延伸している延伸片は、グロメット本体よりも剛性が高く、且つ、インナー本体の前記挿通方向の長さよりも長く構成されているため、延伸片に電線を固定した際に、延伸片が湾曲することを防止できる。
【0014】
これにより、例えば2枚のパネルに対して電線を挿通させる場合であっても、インナー本体の前記挿通方向の長さよりも長く構成されている延伸片を用いてグロメットインナを挿通方向の奥側の挿通孔に延伸片を確実に挿通させることができる。このように挿通孔に延伸片を挿通させることで、グロメットを挿通方向に押し込む場合に、延伸片が挿通孔への案内の役割を果たし、インナー本体を挿通孔に挿通させることができる。したがって、パネルにグロメットを確実に取り付けることができる。
【0015】
なお、本発明により、電線を固定する延伸片が電線の自重により湾曲しないため、挿通孔を有する1枚のパネルに対しいインナー本体を挿通させる場合においても、容易に電線を挿通孔に挿通させることができる。したがって、パネルにグロメットを確実に取り付けることができる。
【0016】
また、前記延伸片の両端部分に、前記挿通方向に沿った内側溝部が設けられている。これにより、挿通方向から視て延伸片が凹凸形状で構成されるため、延伸片の剛性をより向上させることができる。したがって、電線を固定したとしても自重で湾曲することをより確実に防止でき、より確実に挿通孔にインナー本体を案内することができる。
【0017】
この発明の態様として、前記挿通方向と直交する幅方向における前記延伸片の長さが、前記インナー本体の前記幅方向に対応する長さに比べて短く構成されてもよい。
上述の前記挿通方向と直交する幅方向とは、例えば、インナー本体が挿通方向から視て長円状に構成されている場合には、インナー本体の長軸又は短軸に沿った方向をさす。すなわち、上述の前記挿通方向と直交する幅方向は、挿通方向から視てオーバル形状であるインナー本体の最長軸又は最短軸に沿った方向をさす。
【0018】
この発明によると、挿通孔にインナー本体を挿通させる場合に、延伸片が挿通孔と干渉することを抑制できるため、より確実にインナー本体を挿通孔に挿通させることができる。これにより、容易且つ確実に挿通孔に電線を挿通させることができ、パネルにグロメットをより確実に取り付けることができる。
【0019】
またこの発明の態様として、前記延伸片は、前記インナー本体の外周面よりも前記径方向の内側から延伸してもよい。
この発明により、挿通孔に延伸片を挿通させることでインナー本体を挿通孔に確実に案内することができる。また、挿通孔にインナー本体を挿通させる際に、前記延伸片が挿通孔と干渉することを確実に防止できるため、パネルに対するインナー本体の装着を確実に行うことができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記延伸片は、前記径方向の内側の端面と前記インナー本体の内周面とが面一となるように構成されてもよい。
この発明により、前記インナー本体の径内側を挿通させる電線がインナー本体と延伸片との間で角当たりすることがないため、電線の損傷を防止できる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記内側溝部は、前記インナー本体の内周面よりも径外側に設けられてもよい。
この発明によると、内側溝部はインナー本体の他端側端面で行き詰まりとなるように構成されている。すなわち、インナー本体に内側溝部が設けられていない。このため、インナー本体を挿通する電線の一部(例えば、径の細い枝線など)が内側溝部に嵌まり込むことを防止でき、電線に過度な負荷が生じて電線の損傷することを防止できる。
【0022】
またこの発明の態様として、前記挿通方向から視て、前記延伸片の前記径方向の外側端面における中央部分に前記挿通方向に沿った外側溝部が設けられてもよい。
この発明によると、挿通方向から視て延伸片が凹凸形状となるため、延伸片の剛性をより向上させることができる。これにより、電線を固定したとしても自重で湾曲することをより確実に防止でき、より確実に挿通孔にインナー本体を案内することができる。
【0023】
またこの発明の態様として、前記延伸片における前記挿通方向の一端に、前記挿通方向に沿った補強リブが前記インナー本体と前記延伸片とをまたぐように設けられてもよい。
この発明により、延伸片の基端側を補強することで、延伸片の剛性をより向上させることができるため、延伸片に電線を固定したとしても延伸片が電線の自重で湾曲することをより確実に防止できる。したがって、より確実に挿通孔にインナー本体を案内することができる。
【0024】
またこの発明の態様として、前記補強リブは、前記インナー本体の外周面と面一となるように構成されてもよい。
この発明により、延伸片によって挿通孔に案内されたインナー本体を、補強リブを介して挿通孔に案内することができる。これにより、より確実に挿通孔にインナー本体を挿通させることができる。
【0025】
またこの発明の態様として、前記補強リブの前記挿通方向の他端は、前記挿通方向の他端側に向かうに伴い、前記径方向の内側に傾斜してもよい。
この発明により、延伸片によって挿通孔に案内されたインナー本体を、補強リブを用いて挿通孔により確実に案内することができる。これにより、インナー本体を挿通孔に挿通させることができ、より確実にグロメットをパネルに固定することができる。
【0026】
またこの発明の態様として、前記補強リブは、前記挿通方向と直交する幅方向における前記延伸片の両端部分に設けられ両端側補強リブで構成され、該両端側補強リブは、前記延伸片の端面とが面一に構成されてもよい。
【0027】
この発明により、延伸片における幅方向の剛性を向上させることができるため、例えば電線をテープなどで延伸片に固定する際に、延伸片の幅方向に対して作用する負荷で延伸片が損傷することを防止できる。
【0028】
またこの発明の態様として、前記インナー本体の他端側端面のうち前記延伸片と対向する位置に、前記挿通方向の他端側に向けて延伸するガイド片が、前記径方向に沿うとともに、前記径方向の外側の端面と前記インナー本体の外周面とが面一となるように構成され、前記ガイド片は前記延伸片と比べて短くてもよい。
【0029】
この発明によると、グロメットに装着されたグロメットインナが、パネルに設けられた挿通孔に対して過度に傾いた状態で挿通された場合に、オーバル形状に形成されたインナー本体の他端に形成される他端側端面から挿通方向の他端側に延伸されたガイド片を挿通孔に干渉させることができ、傾いた状態でグロメットインナが挿通孔に挿通されることを防止できる。したがって、グロメットインナが装着されたグロメットに設けられたリップが径方向の内側に巻き込まれた状態で、グロメットがパネルに固定されることを防止できる
【0030】
換言すると、グロメットインナを装着したグロメットを、確実にグロメットインナが挿通孔に対して真っ直ぐに(パネルに対して直交する方向に沿って)挿通させて、パネルに固定できるため、グロメットに備えられたリップが径方向の内側に巻き込まれることを防止できる。このため、取付部をパネルに密着させることができ、グロメットとパネルとの間の止水性を確保することができる。
【0031】
また、ガイド片は、径方向に沿うように挿通方向の他端側に向けて延伸するとともに、径方向の外側の端面とインナー本体の外周面とが面一に形成されているため、挿通孔にグロメットインナを挿通させる際に、ガイド片と挿通孔との接触面積を低減させることができる。これにより、グロメットインナにかかる摩擦抵抗を低減させることができ、グロメットインナを挿通孔に容易に挿通させることができる。
【0032】
さらにまた、挿通方向に沿ってグロメットインナを挿通孔に挿入させることができるため、インナー本体の外周面と挿通孔の周縁部との間の遊びを減少させることができる。これにより、パネルに対してグロメットインナを確実に固定させることができる。
【発明の効果】
【0033】
この発明により、パネルに設けた挿通孔に電線を確実に挿通させることができるグロメットインナ及び、前記グロメットインナを装着したグロメットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】車体に取り付けたグロメットの概略斜視図。
図2】グロメットの概略斜視図。
図3】グロメットの概略分解斜視図。
図4】グロメット本体の説明図。
図5】グロメット本体の説明図。
図6】グロメットインナの概略斜視図。
図7】グロメットインナの平面図。
図8】グロメットインナの側面図。
図9】グロメットインナの断面図。
図10】グロメット本体にグロメットインナを装着させた状態の断面図。
図11】ボディパネルに固定された状態のグロメットの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
この発明の一実施態を以下図面とともに説明する。
図1は車両本体Bに固定させた状態でのグロメット1の概略斜視図を示し、図2はグロメット1の概略斜視図を示し、図3はグロメット1の分解斜視図を示す。図4及び図5はグロメット本体10の先端部分に設けられたボディ側取付部12の説明図を示す。
【0036】
図4及び図5について詳述すると、図4(a)はボディ側取付部12の正面図を示し、図4(b)はボディ側取付部12の平面図を示し、図5(a)は図4(a)におけるA-A矢視断面図を示し、図5(b)は図4(a)におけるB-B矢視断面図を示す。
なお、図2中における上方を上方側とし、下方を下方側とし、以下図3~11においても同様とする。
【0037】
図6はグロメットインナ20の概略斜視図を示し、図7はグロメットインナ20の平面図を示し、図8はグロメットインナ20の側面図を示し、図9図7におけるC-C矢視断面図を示す。
図10はボディ側取付部12にグロメットインナ20を装着させた状態の断面図を示し、図11はボディパネルBPに固定されたグロメット1の断面図を示す。なお、図10及び図11に示す断面図は、図9に対応する断面図である。
【0038】
グロメット1は、図1に示すように、車両本体Bの後部に開口(図示省略する、また、以下において「後部開口」とする)を形成する2枚のボディパネルBPと、ヒンジを介してボディパネルBPに取り付けられることで後部開口を開閉自在に塞ぐバックドアパネルDPとを有する自動車において、ボディパネルBPとバックドアパネルDPとを橋渡しするように取り付けられている。そして、ボディパネルBP、及びバックドアパネルDPにより隔てて配置される電気機器同士(図示省略)を接続するワイヤーハーネス(図示省略)が内部に挿通している。
【0039】
このように車両本体Bに対して組み付けるグロメット1は、図2及び図3に示すように、長尺状に構成された筒状のグロメット本体10と、グロメット本体10の端部に装着させるグロメットインナ20とで構成されている。
【0040】
グロメット本体10は、可撓性の樹脂で形成された中空状の筒状体であり、図2及び図3に示すように、長尺状の円筒で形成された円筒部11と、円筒部11の一端側に設けられたボディ側取付部12と、ボディ側取付部12の他端側から湾曲して延出している湾曲部13と、円筒部11の一端側において円筒部11と湾曲部13とを連結する第1蛇腹部14と、円筒部11の他端側に設けられたバックドア側取付部15と、円筒部11の他端側において円筒部11とバックドア側取付部15とを連結する第2蛇腹部16とで一体で構成されている。
【0041】
円筒部11は、断面中空状に形成された円柱体であり、パネルを介して隔てられた電気機器同士を電気的に接続するワイヤーハーネスを内部空間に挿通させることができる。なお、円筒部11の外周面には、等間隔を隔てて立設された補強部111が円筒部11の長手方向に沿って設けられている。
【0042】
ボディ側取付部12は、円筒部11の一端側において、湾曲部13及び第1蛇腹部14を介して円筒部11と連結している。このボディ側取付部12は、図4(a)及び図4(b)に示すように、中空状に形成された円筒状の取付部121と、取付部121の上端面に設けられたリップ122と内周側リップ123とで構成されている。
【0043】
ここで、取付部121を上下方向から視て、内外方向を径方向とし、径方向に沿って外側に向かう方向を径方向の外側、径方向に沿って外側から内側に向かう方向を径方向の内側とする。
【0044】
取付部121は、両端が開口された円筒状の柱体であり、平面視で長円状に形成されている。この取付部121の下方側は、中空状に形成された湾曲部13の一端側開口と連通している。なお、取付部121の上端側の開口は、下端側の開口よりも拡径に形成されている。
【0045】
このように構成された取付部121の上端面には、上方に向かうに伴い径方向の外側に広がるように延出するリップ122と、リップ122よりも径方向の内側から上方に立設する内周側リップ123が設けられている。この内周側リップ123の高さは、リップ122の高さよりも低くなるように形成されている(図5(a)参照)。
【0046】
また、取付部121における上下方向の中央部分には、取付部121を径方向の内側から径方向の外側に向けて窪ませた嵌合凹部124が設けられている。この嵌合凹部124の溝底は、取付部121の上端から立設するリップ122の基端と対応する位置に設けられている。
【0047】
また、嵌合凹部124には、溝底から径方向の内側に向けて延出する位置決め係止部125が2つ設けられている。この位置決め係止部125は、図5(b)に示すように、平面視矩形状に形成されており、長円状に形成されたボディ側取付部12における円弧部分と直線部分との連結部位に対応する位置に設けられている。
【0048】
湾曲部13は、図5(a)及び図5(b)に示すように、円筒部11の一端側に連結しているボディ側取付部12の上端面が上方を向くように、側面視で円弧状となるように湾曲した中空状の筒状体であり、上述のように一端側に上方から視て長円状に形成された開口が設けられている。
【0049】
円筒部11と第1蛇腹部14とを連結する湾曲部13は、蛇腹状に形成された中空状の筒状体であり、円筒部11に対してボディ側取付部12を自在に屈曲させることができる。
バックドア側取付部15は、円筒部11の長手方向に沿って延びる中空状の柱体であり、内部には図示しないグロメットインナが装着されている。このグロメットインナとバックドア側取付部15によりグロメット本体10の他端側をバックドアパネルDPに設けられた挿通孔Hにグロメット1の他端側を固定することができる。
【0050】
円筒部11とバックドア側取付部15とを連結する第2蛇腹部16は、第1蛇腹部14と同様に、蛇腹状に形成された中空状の筒状体であり、円筒部11に対してバックドア側取付部15を自在に屈曲させることができる。なお、第2蛇腹部16の内周面には、円筒部11の長手方向に沿って延出する固定部161が設けられている。
【0051】
ボディ側取付部12に装着可能なグロメットインナ20は、グロメット1を2枚のボディパネルBPに取り付けた場合に、それぞれのボディパネルBPの挿通孔Hに対して挿通される部位であり、グロメット本体10に比べて剛性の高い、硬化性樹脂で構成されている。
【0052】
このグロメットインナ20は、図6乃至図9に示すように、平面視略長円状に形成された円柱体のインナー本体21と、インナー本体21の下端から径方向の外側に延伸するフランジ部22とで構成されている。そして、インナー本体21の外周面には、第1係止部23及び第2係止部24が設けられているとともに、インナー本体21の上端面には、延伸部25とガイド部26が上方に向けて立設している。
【0053】
インナー本体21は、図6及び図7に示すように、平面視において長円状に構成された略円柱体であり、平面視で直線状に形成された長軸部211,211と、平面視で半円状に形成されるとともに、端部が長軸部211,211の両端を連結する円弧部212,212とで構成されている。
【0054】
インナー本体21は、図8に示すように、上方に向かうに伴い外周面が径方向の内側にわずかに傾いて構成されている。なお、インナー本体21は、ボディパネルBPに設けられた挿通孔H(図2参照)よりもわずかに縮径されている。
【0055】
ここで、グロメット本体10と対応するように、インナー本体21を上方から視て、長円の内外方向を径方向とし、径方向に沿って外側に向かう方向を径方向の外側、径方向に沿って外側から内側に向かう方向を径方向の内側とする。すなわち、この径方向は、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着させた状態において、取付部121における径方向と一致する。
【0056】
平面視において長円状に形成されたインナー本体21の長軸方向Lの両端部分、すなわち長円を形成する円弧部212,212の円頂には、インナー本体21の外周面を径方向の内側に窪ませた円弧側溝部27が上下方向に沿って形成されている。
【0057】
この円弧側溝部27は、図7及び図9に示すように、溝の側壁を構成する円弧側側壁部271,271と、円弧側側壁部271,271の径方向の内側端部とを連結して形成された溝底を構成する円弧状の円弧側溝底部272とで構成された溝である。そして、円弧側溝部27には、平面視における短軸方向Sの中央部分から径方向の外側に突出するように第1係止部23が設けられている。
【0058】
第1係止部23は、図9に示すように、円弧側溝底部272から径方向の外側に延伸している第1支持部231と、第1支持部231の径方向の外側と連結している第1弾性変形部232と、第1弾性変形部232から下方に向けて延出している第1係止爪部233とで一体に構成されている。
【0059】
第1支持部231は、円弧側側壁部271,271の間隔よりも幅狭に形成された板状体であり、円弧側溝底部272の上端(インナー本体21の上端)から径方向の外側に向けて突出している。なお、第1支持部231の突出量は、円弧側溝部27の深さの略3分の2の長さで構成されている。
【0060】
第1弾性変形部232は、図9に示すように、側面視において円弧状に形成されており、第1支持部231の先端(径方向の外側端部)から下方に向けて延伸されている。
第1係止爪部233は、外面が第1弾性変形部232の先端から下方に向かうに伴い径方向の外側に向けて広がるように形成されるとともに、内面が下方に向かうに伴い緩やかに径方向の外側に向けて広がっている。また、第1係止爪部233の下面は下方に向かうに伴い径方向の内側に向けて傾斜するように形成されている。
【0061】
換言すると、第1係止爪部233は、下方に向かうに伴い板厚が広くなるとともに、第1係止爪部233の外面が下方に向かうに伴い円弧側側壁部271から離間するようなテーパ状に形成されている。
【0062】
このように構成された第1係止部23は、第1支持部231が径方向の外側に突出しているとともに、第1支持部231の先端から第1弾性変形部232及び第1係止爪部233が下方側に延伸している。また、円弧側側壁部271との間には第1係止爪部233が径方向の内側に移動できる空間が形成されている。なお、第1係止爪部233の外面は、インナー本体21の外周面からわずかに突出するように構成されている(図8参照)。
【0063】
同様に、インナー本体21の短軸方向Sの中央部分、すなわち長円を形成する長軸部211の中央部分には、インナー本体21の外周面を径方向の内側に窪ませた直線側溝部28が形成されており、直線側溝部28には第2係止部24が設けられている。
【0064】
直線側溝部28は、図7に示すように、溝の側壁を構成する長軸側側壁部281,281と、長軸側側壁部281,281の径方向の内側端部とを連結して溝底を構成する溝底部(図示省略)とで構成された溝である。
直線側溝部28に設けられた第2係止部24は、第1係止部23と構成が同じであるため、説明を省略する。すなわち、第2係止部24は、第1支持部231に対応する第2支持部241と、第1弾性変形部232に対応する第2弾性変形部242と、第1係止爪部233に対応する及び第2係止爪部243とで構成されている。なお、第2係止部24は、第1係止爪部233に対応する第2係止爪部243がインナー本体21の外周面よりも径方向の外側にわずかに突出している。
【0065】
このように構成されたインナー本体21において、互いに対向する円弧部212,212には、図6乃至図9に示すように、延伸部25及びガイド部26が設けられている。すなわち、円弧部212,212のうち、図7における下方側には延伸部25が設けられ、上方側にはガイド部26が設けられている。
【0066】
延伸部25は、インナー本体21と同じ硬化性樹脂で構成され、図6に示すように、円弧部212から上方に延伸する延伸片251と、インナー本体21の長軸方向Lに沿って形成された2本の中央側補強リブ252と、インナー本体21の短軸方向Sに沿って形成された2本の端部側補強リブ253とで一体構成されている。
【0067】
延伸片251は、円弧部212の上端から上方に延出する、平面視において略半円状の板状体であり、平面視において延伸片251の板厚は、円弧部212の上端面の厚さの約半分で構成されている。なお、この延伸片251の板厚は一定である。
【0068】
また、延伸片251の内周面は円弧部212の内周面と面一となるように構成されてる。すなわち、延伸片251の外周面は、円弧部212との間で段差形状を形成するように、円弧部212の外周面よりも径方向の内側に設けられている。換言すると、延伸片251の短軸方向Sの幅の長さ(延伸片幅長L1)は、インナー本体21の短軸方向Sの幅の長さ(本体幅長L2)よりも短く構成されている。
【0069】
また、延伸片251は、図8に示すように、上下方向に沿った長さ(延伸長L3)が、インナー本体21の上下方向の長さ(本体高L4)よりも十分に長く構成されている。具体的には、延伸長L3は、本体高L4のおよそ3倍の長さを有する(図8参照)。
【0070】
また、延伸片251の短軸方向Sの両端部分には、径方向の外側に窪ませた内側溝部254が上下方向に沿って設けられている。この内側溝部254は、短軸方向Sの両端部分における延伸片251の内周面を平面視略半円状に窪ませて形成されており、上下方向に沿った長さが延伸長L3となっている。すなわち、内側溝部254は円弧部212まで連続して貫通しているわけではなく、有底の溝で構成されている。なお、内側溝部254の底(内側溝端部254a)は、円弧部212の上端面で構成されている。
【0071】
また、延伸片251の外周面のうち円弧部212の円頂部分と対応する位置には、径方向の内側に向けて窪ませた外側溝部255が上下方向に沿って設けられている。換言すると、延伸片251の径方向の外側端面における中央部分には上下方向に沿った外側溝部255が設けられている。
【0072】
この外側溝部255は、側壁が円弧側側壁部271,271と面一となるように構成されるとともに、溝底が円弧側溝底部272と面一となるように構成されている。すなわち、外側溝部255は円弧側溝部27と連続している。
【0073】
このように構成された延伸片251の長軸方向Lの端部及び、長軸部211と円弧部212との連結部分には、円弧部212の上端から延出する2つの中央側補強リブ252,252と、2つの端部側補強リブ253,253とが立設している。
【0074】
この中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253は、図8に示すように、延伸片251の径方向の外側において、円弧部212から上方に向けて立設されたリブである。すなわち、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253は、延伸片251の上下方向の下端側において、延伸片251の外周面と円弧部212の上端面とをまたぐように構成されている。
【0075】
なお、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253の高さは、インナー本体21の高さ(本体高L4)と略同じである。また、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253の径方向の外側端面が円弧部212の外周面と面一となるように構成されている。
【0076】
また、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253の径方向の外側端面は、図8に示すように、円弧部212の外周面の傾斜と同様の傾斜角で、上方に向かうに伴い径方向の内側に向けて傾斜するテーパ状で構成されている。また、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253の上端部分は、基端部分に比べて急なテーパ形状で構成されている
【0077】
このように構成された中央側補強リブ252,252は、円弧側溝部27に対応する位置において、円弧部212と延伸片251とを連結するように立設されている。具体的には、円弧側溝部27の短軸方向Sの両端に立設される。このように設けられた中央側補強リブ252,252の短軸方向Sの内側側面は、円弧側側壁部271と面一となるように構成されている。
【0078】
一方、端部側補強リブ253は、平面視において、延伸片251の両端と円弧部212の上端面とをまたぐように、短軸方向Sに沿って立設されている。具体的には、端部側補強リブ253,253は長軸部211と円弧部212との連結部位に立設されている。なお、端部側補強リブ253の長軸方向Lの内側側面は、延伸片251の両端面と面一となるように構成されている。
【0079】
延伸部25と対向する位置に設けられたガイド部26は、インナー本体21と同じ硬化性樹脂で構成され、インナー本体21の長軸方向Lに沿って形成された2本の長軸側ガイド片261、261と、インナー本体21の短軸方向Sに沿って形成された2本の短軸側ガイド片262,262と、長軸側ガイド片261同士及び、長軸側ガイド片261と短軸側ガイド片262とを連結する内側延伸部263とで一体構成されている。
【0080】
長軸側ガイド片261は、上下方向(挿通方向)から視て、長軸方向Lに沿って延伸する板状体であり、中央側補強リブ252と同じ形状に構成されている。すなわち、長軸側ガイド片261はインナー本体21の上端面から上方に向けて延伸している。なお、その高さはインナー本体21の高さ(本体高L4)と略同じである。
【0081】
同様に、短軸側ガイド片262は、長軸部211と円弧部212との連結部分に対応する場所から上方に向けて延伸する板状体であり、端部側補強リブ253と同じ形状に構成されている。
【0082】
内側延伸部263は、長軸側ガイド片261,261及び短軸側ガイド片262,262よりも径方向の内側から立設した板状体であり、平面視において半円状に構成されている。この内側延伸部263の高さは、インナー本体21の高さである本体高L4と同じである。すなわち、内側延伸部263は長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262と同じ高さを有する。
【0083】
インナー本体21の下端から径方向の外側に延伸しているフランジ部22は、径方向の外側に向けて延伸する被装着部221と、被装着部221を切り欠いて形成された切欠き部222と、円弧側溝部27に対応する位置に置いて上下方向に貫通する第1貫通孔223及び第2貫通孔224とで構成されている。
【0084】
被装着部221は、平面視で略長円状となるように形成された板状体であり、径方向に沿って突出する長さが嵌合凹部124の深さと略同じとなるように形成されているとともに、板厚が嵌合凹部124の幅と略同じとなるように形成されている。
【0085】
切欠き部222は、長円状に形成された被装着部221における円弧部分と連結する直線部分の端部を径方向の内側に向けて矩形状に切り欠いて形成されている。このように構成された222は、平面視におけるインナー本体21の中心を上下方向に沿って延出した軸を中心軸として点対称の位置に2つ設けられており、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着させた状態において、位置決め係止部125が係止するように形成されている。
【0086】
第1貫通孔223は、円弧側溝部27に対応する位置において上下方向に被装着部221を貫通するように形成されている。この第1貫通孔223における、インナー本体21の長軸方向Lに沿って形成される面は、平面視において円弧側側壁部271,271と面一となるように形成されている。
【0087】
第2貫通孔224は、直線側溝部28に対応する位置において上下方向に被装着部221を貫通するように設けられている。なお、この第2貫通孔224における、インナー本体21の短軸方向Sに沿って形成される面は、平面視において長軸側側壁部281,281と面一となるように形成されている。
【0088】
このように構成されたグロメットインナ20は、図10に示すように、フランジ部22をグロメット本体10の開口から挿通させて、第2貫通孔224に位置決め係止部125が係止するように、フランジ部22を嵌合凹部124に嵌合させる。これにより、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着させることができる。
【0089】
このとき、第2貫通孔224に位置決め係止部125が係止されているため、確実に位置決めができるとともに、グロメットインナ20が挿入方向に沿った軸を回転軸として回転移動することを防止できる。
【0090】
また、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着させた状態において、第1係止爪部233及び第2係止爪部243の外面の外側頂部は、取付部121に設けられたリップ122の上端よりも下方側に配置されるとともに、内周側リップ123の上端よりも上方側に配置されることとなる。
【0091】
次に、グロメットインナ20をボディ側取付部12に装着され、電線100がテープTで延伸片251に固定された状態のグロメット1をボディパネルBPに組み付ける方法について、図11に基づいて、簡単に説明する。
なお、図11に電線100はグロメット1の構成を明確にするため点線で示す。
【0092】
ここで、延伸片251は、硬化性樹脂であるとともに、上下方向の長さ(延伸長L3)がインナー本体21の高さ(本体高L4)よりも長いため電線100を固定した状態で湾曲することがない。このため、電線100を延伸片251にテープTで固定した状態で、延伸片251を上方に設けられたボディパネルBP(第1ボディパネルBP1)の挿通孔Hに対して上方(すなわち上下方向が挿通方向となる。)に挿通させることで、延伸片251と延伸片251に固定された電線100を第2ボディパネルBP2の挿通孔Hに挿通させることができる。
【0093】
ここで、図11に示すように、第1係止爪部233及び第2係止爪部243の外面の外側頂部と内周側リップ123の上端との間隔は、ボディパネルBPの板厚よりもわずかに狭くなっている。
【0094】
そのため、延伸片251が挿通孔Hに挿通した状態で、グロメット1をさらに上方に押し付けることで、図11(a)に示すように、第1係止爪部233及び第2係止爪部243の外面が挿通孔Hの周縁部に押されることとなる。
【0095】
これにより、第1弾性変形部232及び第1弾性変形部232に対応する第2弾性変形部242が弾性変形し、第1係止爪部233及び第2係止爪部243が径方向の内側に移動し、グロメットインナ20を挿通孔Hに挿通させることができる。
【0096】
次に、挿通孔Hに挿通させるようにグロメットインナ20をさらに上方に移動させることで、挿通孔Hの周縁部が第1係止爪部233及び第2係止爪部243の外面の外側頂部を越えるため、弾性変形している第1弾性変形部232及び第2弾性変形部242に作用していた外力がなくなり、復元力が作用することとなる。
【0097】
これにより、図10(b)に示すように、第1係止爪部233及び第2係止爪部243の底面と取付部121に設けられたリップ122及び内周側リップ123とでボディパネルBPを挟み込むこととなり、グロメット1をボディパネルBPに確実に固定することができる。
【0098】
また、リップ122は径方向の外側に向けて広がるようにボディパネルBPに押し付けられ、ボディパネルBPと密着することとなる。これにより、リップ122とボディパネルBPとの間の止水性を確保することができる。
【0099】
このように、ボディパネルBPに設けた挿通孔Hを挿通する電線100を保護するグロメット1を、ボディパネルBPに対して密着させるリップ122を備える筒状のグロメット本体10とともに構成するグロメットインナ20は、グロメット本体10の端部に装着されるとともに、挿通孔Hに固定される。このグロメットインナ20は、挿通孔Hに挿通されるとともに、挿通孔Hに固定された状態において挿通孔Hへの挿通方向から視てオーバル形状に形成された筒状のインナー本体21と、インナー本体21の挿通方向(上下方向)の一端側(下方側)において、インナー本体21の径方向の外側に向けて延伸するフランジ部22とで構成されている。そして、インナー本体21の他端側端面(上方側端面)には、挿通方向の他端側(上方側)に向けて延伸する延伸片251が、グロメット本体10よりも剛性が高く、且つ、インナー本体21の挿通方向の長さよりも長くなるように設けられている。
【0100】
これにより、ボディパネルBPに設けた挿通孔Hに電線100を確実に挿通させることができる。詳述すると、可撓性を有するグロメット本体10よりも剛性が高く、且つ、インナー本体21の挿通方向の長さよりも長く構成された延伸片251が、グロメットインナ20の他端側端面から挿通方向の前方側(上方側)に向けて延伸しているため、延伸片251に電線100を固定した際に、延伸片251が湾曲することを防止できる。
【0101】
これにより、図11に示すように、2枚のボディパネルBPに対して電線100を挿通させる場合であっても、インナー本体21の挿通方向の長さよりも長く構成されている延伸片251を用いてグロメットインナ20を挿通方向の奥側の挿通孔Hに延伸片251を案内することができる。したがって、挿通孔Hに電線100を確実に挿通させることができるとともに、ボディパネルBPにグロメット1を確実に取り付けることができる。
【0102】
また、挿通方向と直交する幅方向(短軸方向S)における延伸片251の長さが、インナー本体21の短軸方向Sに対応する長さに比べて短く構成されていることにより、挿通孔Hにインナー本体21を挿通させる場合に、延伸片251が挿通孔Hと干渉することを抑制できる。このため、より確実にインナー本体21を挿通孔Hに挿通させることができ、容易且つ確実に挿通孔Hに電線100を確実に挿通させることができる。したがって、ボディパネルBPにグロメット1をより確実に取り付けることができる。
【0103】
また、延伸片251は、インナー本体21の外周面よりも径方向の内側から延伸されていることにより、挿通孔Hに延伸片251を挿通させることでインナー本体21を挿通孔Hに確実に案内することができる。また、挿通孔Hにインナー本体21を挿通させる際に、延伸片251が挿通孔Hと干渉することを防止できるため、ボディパネルBPに対するインナー本体21の装着を確実に行うことができる。
【0104】
また、インナー本体21の外周面は、上方に向かうに伴い径方向の内側に傾斜するように構成されている。このため、インナー本体21の外周面と延伸片251の外周面とを面一とした場合、延伸片251の板厚が薄くなり、延伸片251の挿通方向の前方側(上方側)の剛性が低下する。これに対して、延伸片251は、インナー本体21の外周面よりも径方向の内側から延伸させることにより、延伸片251の板厚が一定とすることができる。
【0105】
さらにまた、延伸片251は、径方向の内側の端面とインナー本体21の内周面とが面一となるように構成されていることにより、インナー本体21の径内側を挿通させる電線100がインナー本体21と延伸片251との間で角当たりすることがないため、電線100の損傷を防止できる。
【0106】
また、延伸片251の両端部分に、挿通方向に沿った内側溝部254が設けられていることにより、延伸片251が挿通方向から視て凹凸形状で構成されるため、延伸片251の剛性をより向上させることができる。これにより、電線100を固定したとしても自重で湾曲することをより確実に防止でき、より確実に挿通孔Hにインナー本体21を案内することができる。
【0107】
また、内側溝部254は、インナー本体21の内周面よりも径外側に設けられていることにより、内側溝部254はインナー本体21の他端側端面(上方側端面)で行き詰まりとなるように構成されている。すなわち、インナー本体21に内側溝部254が設けられていない。このため、インナー本体21を挿通する電線100の一部(例えば、径の細い枝線など)が内側溝部254に嵌まり込むことを防止し、電線100に過度な負荷が生じて電線100の損傷することを防止できる。
【0108】
さらにまた、挿通方向から視て、延伸片251の径方向の外側端面における中央部分に挿通方向に沿った外側溝部255が設けられていることにより、延伸片251が挿通方向から視て凹凸形状で構成されるため、延伸片251の剛性をより向上させることができる。これにより、電線100を固定したとしても自重で湾曲することをより確実に防止でき、より確実に挿通孔Hにインナー本体21を案内することができる。
【0109】
また、延伸片251における挿通方向の一端に、挿通方向に沿った中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253がインナー本体21と延伸片251とをまたぐように設けられていることにより、延伸片251の基端側を補強することができ、延伸片251の剛性をより向上させることができる。このため、延伸片251に電線100を固定したとしても延伸片251が電線100の自重で湾曲することをより確実に防止できる。したがって、より確実に挿通孔Hにインナー本体21を案内することができる。
【0110】
また、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253は、インナー本体21の外周面と面一となるように構成されていることにより、延伸片251によって挿通孔Hに案内されたインナー本体21を、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253を介して挿通孔Hに案内することができる。これにより、より確実に挿通孔Hにインナー本体21を挿通させることができる。
【0111】
また、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253の挿通方向の他端は、挿通方向の他端側に向かうに伴い、径方向の内側に傾斜していることにより、延伸片251によって挿通孔Hに案内されたインナー本体21を、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253を用いて挿通孔Hにより確実に案内することができる。これにより、インナー本体21を挿通孔Hに挿通させることができ、より確実にグロメット1をボディパネルBPに固定することができる。
【0112】
さらにまた、挿通方向と直交する短軸方向Sにおける延伸片251の両端部分に設けられ端部側補強リブ253が設けられ、端部側補強リブ253は、延伸片251の端面とが面一に構成されていることにより、延伸片251における短軸方向Sの剛性を向上させることができる。このため、例えば電線100をテープTなどで延伸片251に固定する際に、延伸片251の短軸方向Sに対して作用する負荷で延伸片251が損傷することを防止できる。
【0113】
また、インナー本体21の他端側端面のうち延伸片251と対向する位置に、挿通方向の他端側に向けて延伸する長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262が、径方向に沿うとともに、径方向の外側の端面とインナー本体21の外周面とが面一となるように構成され、長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262は延伸片251と比べて短く構成されている。
【0114】
これにより、グロメット1に装着されたグロメットインナ20が、ボディパネルBPに設けられた挿通孔Hに対して過度に傾いた状態で挿通された場合に、オーバル形状に形成されたグロメットインナ20の他端に形成される他端側端面から挿通方向の他端側に延伸された長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262が挿通孔Hと干渉させることができ、傾いた状態でグロメットインナ20が挿通孔Hに挿通されることを防止できる。したがって、グロメットインナ20が装着されたグロメット1に設けられたリップ122が径方向の内側に巻き込まれた状態で、グロメット1がボディパネルBPに固定されることを防止できる
【0115】
換言すると、グロメットインナ20を装着したグロメット1を、確実にグロメットインナ20が挿通孔Hに対して真っ直ぐに(ボディパネルBPに対して直交する方向に沿って)挿通させて、ボディパネルBPに固定できるため、グロメット1に備えられたリップ122が径方向の内側に巻き込まれることを防止できる。このため、ボディパネルBPに密着させることができ、グロメット1とボディパネルBPとの間の止水性を確保することができる。
【0116】
また、長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262は、径方向に沿うように挿通方向の他端側に向けて延伸するとともに、径方向の外側の端面とインナー本体21の外周面とが面一に形成されているため、挿通孔Hにグロメットインナ20を挿通させる際に、長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262と挿通孔Hとの接触面積を低減させることができる。これにより、グロメットインナ20にかかる摩擦抵抗を低減させることができ、グロメットインナ20を挿通孔Hに容易に挿通させることができる。
【0117】
さらにまた、挿通方向に沿ってグロメットインナ20を挿通孔Hに挿入させることができるため、インナー本体21の外周面と挿通孔Hの周縁部との間の遊びを減少させることができる。これにより、ボディパネルBPに対してグロメットインナ20を確実に固定させることができる。
【0118】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、パネルは、ボディパネルBPに対応し、
挿通孔は、挿通孔Hに対応し、
電線は、電線100に対応し、
グロメットは、グロメット1に対応し、
リップは、リップ122に対応し、
グロメット本体は、グロメット本体10に対応し、
グロメットインナは、グロメットインナ20に対応し、
インナー本体は、インナー本体21に対応し、
フランジ部は、フランジ部22に対応し、
延伸片は、延伸片251に対応し、
内側溝部は、内側溝部254に対応し、
外側溝部は、外側溝部255に対応し、
補強リブは、中央側補強リブ252及び端部側補強リブ253に対応し、
両端側補強リブは、端部側補強リブ253に対応し、
ガイド片は、長軸側ガイド片261及び短軸側ガイド片262に対応するが、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0119】
例えば、本実施形態において、インナー本体21は上方から視て長円状に形成しているが、この形状に検定されず、例えば長軸方向L又は短軸方向Sに対して線対称である楕円、卵形、あるいは長軸方向L又は短軸方向Sに対して非対称な長円、角部分が円弧状に形成された多角形状としてもよい。
【0120】
また、電線100は、電気機器同士を電気的に接続する構成であれば特に限定はなく、一本の導電体で構成された素線や、複数の導電体を束ねたワイヤーハーネス、絶縁電線を保護被覆で覆ったケーブルなどを含む。
【0121】
また、本実施形態において、挿通方向と直交する幅方向とは、挿通方向から視て長円状に構成されているインナー本体21における短軸方向Sであるが、必ずしも短軸方向Sである必要はなく、長軸方向Lであってもよい。すなわち、挿通方向から視てオーバル形状であるインナー本体21の最長部分に対応する方向又は最短部分に対応する方向をさす。
【0122】
また、本実施形態において、延伸片251の長さはインナー本体21の高さに比べて略4倍としている。すなわち、延伸片251はインナー本体21の高さに対して十分な長さを有している。しかしながら、延伸片251の長さは、インナー本体21の高さよりも大きければその長さは限定されず、ボディパネルBPにボディ側取付部12を取り付けた際の挿入量に応じて適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0123】
1 グロメット
10 グロメット本体
100 電線
122 リップ
20 グロメットインナ
21 インナー本体
22 フランジ部
25 延伸部
254 内側溝部
255 外側溝部
252 中央側補強リブ
253 端部側補強リブ
261 長軸側ガイド片
262 短軸側ガイド片
BP ボディパネル
H 挿通孔
図1
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図11