(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-22
(45)【発行日】2023-08-30
(54)【発明の名称】回転コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 35/04 20060101AFI20230823BHJP
B62D 1/04 20060101ALI20230823BHJP
B60R 16/027 20060101ALI20230823BHJP
【FI】
H01R35/04 F
B62D1/04
B60R16/027 S
(21)【出願番号】P 2020553054
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 JP2019039169
(87)【国際公開番号】W WO2020080128
(87)【国際公開日】2020-04-23
【審査請求日】2022-05-18
(31)【優先権主張番号】P 2018195817
(32)【優先日】2018-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142871
【氏名又は名称】和田 哲昌
(74)【代理人】
【識別番号】100094743
【氏名又は名称】森 昌康
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】田尻 洋司
(72)【発明者】
【氏名】荒川 隼人
【審査官】鎌田 哲生
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-213958(JP,A)
【文献】特開2017-199594(JP,A)
【文献】特開2001-028286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 35/04
B62D 1/04
B60R 16/027
H02G 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定体と、
前記固定体との間に第1空間を構成するように前記固定体に対して回転軸周りに回転可能に前記固定体に組付けられた回転体と、
内部に第2空間を有し且つ前記固定体に連結されたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、前記第2空間を前記第1空間に接続する第1開口と、前記第1開口と仕切られた開口であり且つ前記第2空間を前記第1空間に接続する第2開口とを有し、
前記コネクタの前記第2空間内に設けられた第1電極に、第1ケーブルの一端が接続され、
前記コネクタの前記第2空間内に設けられた第2電極に、第2ケーブルの一端が接続され、
前記第1ケーブルは、前記第1開口を通過して、前記第1ケーブルの他端は前記回転体に接続されるように配置され、
前記第2ケーブルは、前記第2開口を通過して、前記第2ケーブルの他端は前記回転体に接続されるように配置され
、
前記コネクタは、前記第1開口及び前記第2開口を構成するように前記第2空間を仕切り且つ前記回転軸の軸方向に延伸する第1仕切り壁を備え、
前記第1仕切り壁は、前記第2空間において前記回転軸の周方向に沿って延伸し、
前記コネクタは、前記第1仕切り壁よりも前記第1空間から遠くに設けられ、前記第1ケーブルと前記第2ケーブルとを前記第2空間内において互いに遠ざけるように設けられる第2仕切り壁を更に備える
、
回転コネクタ装置。
【請求項2】
前記回転体が前記回転軸周りに制限回転角度以上回転すると前記第1開口の第1縁で折り曲げられるように配置された前記第1ケーブルと、
前記回転体が前記回転軸周りに制限回転角度以上回転すると前記第2開口の第2縁で折り曲げられるように配置された前記第2ケーブルと、を備え、
前記回転軸の周方向における前記第1縁の位置と、前記周方向における前記第2縁の位置は異なる
請求項
1に記載の回転コネクタ装置。
【請求項3】
前記第1ケーブルは、前記回転体が前記回転軸周りに制限回転角度以上回転すると前記第1開口の前記第1縁で折り曲げられた後に切断されるように配置されており、
前記第2ケーブルは、前記回転体が前記回転軸周りに制限回転角度以上回転すると前記第2開口の前記第2縁で折り曲げられた後に切断されるように配置される、
請求項
2に記載の回転コネクタ装置。
【請求項4】
前記回転軸の軸方向における前記第1開口の長さは、前記軸方向における前記第2開口の長さより小さい
請求項1~
3のいずれか1項に記載の回転コネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示される技術は、回転コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
固定体と回転体との間の収納空間にフラットケーブルが配置される回転コネクタ装置が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された回転コネクタ装置において複数のフラットケーブルが収納空間に配置された場合、回転コネクタ装置の過回転によって複数のフラットケーブルが切断されると、複数のフラットケーブルの短絡が生じる可能性がある。
【0005】
そこで、本願に開示される技術の課題は、過回転によってケーブルが切断されても複数のケーブルの短絡が抑制される回転コネクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1の特徴に係る回転コネクタ装置は、固定体と、固定体との間に第1空間を構成するように固定体に対して回転軸周りに回転可能に固定体に組付けられた回転体と、内部に第2空間を有し且つ固定体に連結されたコネクタと、を備える。コネクタは、第2空間を第1空間に接続する第1開口と、第1開口と仕切られた開口であり且つ第2空間を第1空間に接続する第2開口とを有する。コネクタの第2空間内に設けられた第1電極に、第1ケーブルの一端が接続される。コネクタの第2空間内に設けられた第2電極に、第2ケーブルの一端が接続される。第1ケーブルは、第1開口を通過して、第1ケーブルの他端は回転体に接続されるように配置される。第2ケーブルは、第2開口を通過して、第2ケーブルの他端は回転体に接続されるように配置される。
【0007】
この構成によれば、第1ケーブル及び第2ケーブルは、固定体と回転体の間の第1空間へ、異なる位置から挿入される。従って、仮に、回転コネクタ装置の過回転によって、第1ケーブル及び第2ケーブルの少なくとも一方が切断されたとしても、第1開口及び第2開口の近傍で、第1ケーブル及び第2ケーブルの短絡は抑制される。
また、コネクタは、第1開口及び第2開口を構成するように第2空間を仕切り且つ回転軸の軸方向に延伸する仕切り壁を備えてもよい。
【0008】
この構成では、軸方向に直交する方向において第1開口の位置と第2開口の位置が異なる。従って、仮に第1ケーブル及び第2ケーブルの少なくとも一方が切断されたとしても、仕切り壁は、軸方向に直交する方向において、第1ケーブル及び第2ケーブルが接触することを抑制し、短絡を抑制する。
【0009】
また、仕切り壁は、第2空間において回転軸の周方向に沿って延伸してもよい。
【0010】
この構成によれば、第1ケーブルが通過する第1開口と、第2ケーブルが通過する第2開口とが、第2空間において周方向において延伸している。従って、仕切り壁は、第2空間内の第1開口及び第2開口の近傍で第1ケーブル及び第2ケーブルが接触することをより確実に抑制し、短絡を抑制する。
【0011】
また、回転コネクタ装置は、回転体が回転軸周りに制限回転角度以上回転すると、第1開口の第1縁及び第2開口の第2縁でそれぞれ切断される第1ケーブル及び第2ケーブルを備え、回転軸の周方向における第1縁の位置と、周方向における第2縁の位置は異なってもよい。
【0012】
この構成では、仮に第1ケーブル及び第2ケーブルが切断されたとしても、異なる位置で切断されるので、第1ケーブルの切断面と、第2ケーブルの切断面は、周方向において異なる位置に位置する。従って、切断面同士が短絡することが抑制される。
【0013】
回転軸の軸方向における第1開口の長さは、軸方向における第2開口の長さより小さくてもよい。
【0014】
この構成では、仮に第2ケーブルが切断されたとしても、切断された第2ケーブルが第1開口に侵入しにくくなる。
【発明の効果】
【0015】
本願に開示される技術であれば、過回転によってケーブルが切断されても複数のケーブルの短絡が抑制された回転コネクタ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る回転コネクタ装置の斜視図である。
【
図3】
図3は、回転体から固定体を取り外し且つ固定体を第1固定体部と第2固定体部に分解した斜視図である。
【
図4】
図4は、複数のケーブルの配置を示すための第1固定体部の上面図である。
【
図5】
図5は、複数のケーブルの構成を示す図である。
【
図6】
図6は、仕切り壁を示すための第2固定体部の斜視図である。
【
図7】
図7は、第1開口を通過する第1ケーブルと、第2開口を通過する第2ケーブルとを示すための、第2固定体部の斜視図である。
【
図9】
図9は、
図8のIX-IX断面線で回転コネクタ装置を断面した断面図である。
【
図10】
図10は、過回転状態の回転コネクタ装置における第1ケーブル及び第2ケーブルを示すための、第2固定体部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を参照しながら説明する。図中において同じ符号は、対応するまたは同一の構成を示している。
【0018】
<回転コネクタ装置の概要>
図1は、実施形態に係る回転コネクタ装置100の斜視図である。
図2は、回転コネクタ装置100の下面図である。
図3は、回転体20から固定体10を取り外し且つ固定体10を第1固定体部12と第2固定体部14に分解した斜視図である。
図4は、複数のケーブルの配置を示すための第1固定体部12の上面図である。なお、
図4では、外周筒部140の内周面140bと内周筒部210の外周面210bとを点線で示している。
【0019】
図1~
図3に示すように、回転コネクタ装置100は、固定体10と回転体20とを備えている。回転体20は、回転軸AX周りに固定体10に対して回転可能に、固定体10に組付けられている。回転体20が固定体10に組付けられた状態において、固定体10と回転体20との間には、第1空間S1(
図4及び
図9を参照)が規定される。
【0020】
図4に示すように、第1ケーブル30及び第2ケーブル40は、それぞれ第1空間S1に配置される。第1ケーブル30の一端30a及び第2ケーブル40の一端40aは、それぞれ固定体10に接続される。第1ケーブル30の他端30b及び第2ケーブル40の他端40bは、それぞれ回転体20に接続される。
【0021】
回転コネクタ装置100は、例えば、本体と、本体に対して回転可能な操舵部とを備えた移動体(例えば自動車)に用いられる。具体的には、固定体10は、移動体の本体に取り付けられる。回転体20は、操舵部に取り付けられる。例えば、第1ケーブル30の一端30aは、移動体の本体に設けられた電源に電気的に接続される。第1ケーブル30の他端30bは、操舵部に設けられたヒータに電気的に接続される。第1ケーブル30を介して電源からヒータに電力が供給されると、ヒータは発熱し、操舵部を温める。
【0022】
第2ケーブル40の一端40aは、移動体の本体に設けられたコントローラ(例えばEngine Control Unit)に電気的に接続される。第2ケーブル40の他端40bは、操舵部に設けられたエアバッグに電気的に接続される。コントローラには、移動体に設けられた衝突センサも接続される。コントローラは、移動体の衝突を示す信号を衝突センサから受信すると、第2ケーブル40を介してエアバッグを開放させる信号をエアバッグへ送信する。
【0023】
ただし、回転コネクタ装置100は、移動体以外にも用いられてもよいし、第1ケーブル30及び第2ケーブル40が伝送する信号及び電力は、上述のものに限られない。また、3本以上のケーブルが固定体10と回転体20との間に接続されてもよい。
【0024】
<固定体の構成>
図1および
図3に示すように、固定体10は、第1固定体部12と第2固定体部14とを備えている。第2固定体部14は、第1固定体部12の上に配置された状態で、第1固定体部12と結合している。
【0025】
図3に示すように、第1固定体部12は、回転軸AXに実質的に平行な軸方向ADに回転コネクタ装置100を見たときに、リング形状を有する。第1固定体部12は、回転軸AXが第1固定体部12の中心を通過するように配置される。
【0026】
第2固定体部14は、外周筒部140と、内鍔部142とを備えている。外周筒部140は、外周筒部140の中空部140aが軸方向ADに延伸する筒形状を有している。外周筒部140は、軸方向ADにおいて第1固定体部12の外周12aから上方に延伸している。内鍔部142は、回転軸AXの径方向において、外周筒部140の内周面140bから延伸している。
【0027】
<回転体の構成>
回転体20は、環状部材200と、内周筒部210と、を備えている。環状部材200は、回転コネクタ装置100を軸方向ADに見たときに、リング形状を有する。環状部材200は、回転軸AXが環状部材200の中心を通過するように配置される。環状部材200は、軸方向ADにおいて下面の縁200aが内鍔部142に対向するように、配置される。内周筒部210は、内周筒部210の中空部210aが軸方向ADに延伸するように配置される。内周筒部210は、環状部材200の内周200bから軸方向ADに沿って下方に延びている。内周筒部210は、回転軸AXの径方向において、筒形状の外周筒部140の内側に配置される。これにより、第1ケーブル30及び第2ケーブル40が配置される第1空間S1は、第1固定体部12、外周筒部140、環状部材200、および内周筒部210によって構成されている。換言すれば、第1ケーブル30及び第2ケーブル40が配置される第1空間S1は、外周筒部140の中空部140aから内周筒部210の中空部210aを除いた空間に等しい。
【0028】
本実施形態では、内周筒部210が回転体20に設けられている。しかし、第1空間S1を規定するために、内周筒部210は、固定体10に設けられてもよい。また、本実施形態では、回転コネクタ装置100は、中空部210aを有する形状であったが、回転コネクタ装置100は、中空部210aを有さなくてもよい。
【0029】
<ケーブルの構成>
図5は、第1ケーブル30及び第2ケーブル40の構成を示す図である。第1ケーブル30は、可撓性を有する。第1ケーブル30は、平坦な形状を有する。第1ケーブル30は、導線32と、導線32を被覆する絶縁性の被覆材34とを有している。ただし、第1ケーブル30の一端30a及び他端30bにおいて、導線32は、被覆材34から露出している。
図4に示すように、第1ケーブル30は、第1空間S1において外周筒部140の内周面140bに沿って巻回され、反転部36で巻回方向が反転し、内周筒部210の外周面210bに沿って巻回されている。
【0030】
第2ケーブル40は、可撓性を有する。第2ケーブル40は、平坦な形状を有する。第2ケーブル40は、導線42と、導線42を被覆する絶縁性の被覆材44とを有している。ただし、第2ケーブル40の一端40a及び他端40bにおいて、導線42は、被覆材44から露出している。
図4に示すように、第2ケーブル40は、第1空間S1において外周筒部140の内周面140bに沿って巻回され、反転部46で巻回方向が反転し、内周筒部210の外周面210bに沿って巻回されている。
【0031】
図5に示すように、第1ケーブル30の幅W1は、第2ケーブル40の幅W2より小さい。ただし、ケーブルの幅とは、ケーブルの平坦な面に沿い且つケーブルが延びる延伸方向EDと実質的に直交する幅方向WDにおけるケーブルの長さである。
【0032】
なお、
図5に示す例では、2本の導線32が第1ケーブル30に設けられ、2本の導線42が第2ケーブル40に設けられたが、導線32の本数及び導線42の本数は、これらに限られない。
【0033】
<コネクタの構成>
図1に示すように、回転コネクタ装置100は、固定体10側のコネクタ50と、回転体20側のコネクタ60と、回転体20側のコネクタ62とを備える。
【0034】
図1及び
図2に示すように、コネクタ50は、内部に第2空間S2を有し且つ固定体10に連結している。コネクタ50は、カバー52と、複数の電極58(
図2を参照)と、を有する。カバー52は、
図3に示すように、第1カバー部54と第2カバー部56とを有する。第1カバー部54は、
図3に示すように、軸方向ADにおいて第1固定体部12の外周12aの一部から下方に延伸する筒形状を有している。第2カバー部56は、回転軸AXの径方向において第2固定体部14の外周筒部140から外側へ延伸している。第1固定体部12と第2固定体部14とが結合し、第1カバー部54と第2カバー部56とが結合することで、第2空間S2が構成される。第2空間S2は、軸方向ADにおいて下方で開放している。ただし、カバー52の形状は、これに限らない。例えば、カバー52は、回転軸AXの径方向において外周筒部140から外側へ延伸し且つ回転軸AXの径方向に内部空間を開放させる筒状を有してもよい。
【0035】
図2に示すように、複数の電極58は、第2空間S2においてカバー52に配置されている。すなわち、複数の電極58は、カバー52に覆われている。なお、複数の電極58は、それぞれ端子部を有し、端子部は、移動体の本体に設けられたコントローラに接続されたケーブルの端子と接続される。ただし、端子部は、電極58と電気的に接続されていればよく、端子部と電極58は別々に設けられてもよい。
【0036】
複数の電極58は、第1電極58aと、第2電極58bとを含んでいる。第1電極58aは、第2空間S2において、第1ケーブル30の一端30aで被覆材34から露出する導線32に接続される。第1電極58aと導線32は、圧着又ははんだを介した接合によって接続される。ただし、第1電極58aと導線32との接続は、他の方法で実現されてもよい。第1電極58aは、移動体に設けられた電源に電気的に接続される。第2電極58bは、第2空間S2において、第2ケーブル40の一端40aで被覆材44から露出する導線42に接続される。第2電極58bと導線42は、圧着又ははんだを介した接合によって接続される。ただし、第2電極58bと導線42との接続は、他の方法で実現されてもよい。第2電極58bは、移動体に設けられたコントローラに電気的に接続される。
【0037】
第1ケーブル30は、内周筒部210の開口を通過し、第1ケーブル30の他端30bは、コネクタ60に接続される。具体的には、第1ケーブル30の他端30bにおいて被覆材34から露出する導線32は、コネクタ60の第3電極60a(
図5及び
図8を参照)に接続される。第3電極60aは、操舵部のヒータに電気的に接続される。第2ケーブル40は、内周筒部210の開口を通過し、第2ケーブル40の他端40bは、コネクタ62に接続される。具体的には、第2ケーブル40の他端40bにおいて被覆材44から露出する導線42は、コネクタ62の第4電極62a(
図5及び
図8を参照)に接続される。第4電極62aは、操舵部に設けられるエアバッグに電気的に接続される。
【0038】
ただし、コネクタ60及びコネクタ62は、回転体20に接続されていればよく、本実施形態に示す形状に限らない。また、第1ケーブル30の他端30bと第2ケーブル40の他端40bとが接続されるコネクタは同一であってもよい。
【0039】
<ケーブルの配置>
次に、第2空間S2から第1空間S1に亘る第1ケーブル30及び第2ケーブル40の配置について、
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、仕切り壁70を示すための第2固定体部14の斜視図である。
図7は、第1開口OP1を通過する第1ケーブル30と、第2開口OP2を通過する第2ケーブル40とを示すための、第2固定体部14の斜視図である。
【0040】
図6に示すように、コネクタ50は、それぞれに第2空間S2を第1空間S1に接続する第1開口OP1及び第2開口OP2を有している。第1開口OP1及び第2開口OP2は、軸方向ADにおける内鍔部142の下方で第1空間S1に開口している。第1開口OP1及び第2開口OP2は、仕切り壁70によって、仕切られている。仕切り壁70は、第2空間S2においてコネクタ50に配置されている。仕切り壁70は、軸方向ADに沿って延伸している。
【0041】
より具体的には、第2カバー部56は、第1壁560と第2壁562とを備えている。第1壁560は、回転軸AXの径方向において外周筒部140から外側へ延伸している。第2壁562は、第1壁560と接続し且つ軸方向ADにおいて下方へ延伸している。仕切り壁70は、軸方向ADにおいて第1壁560の内面560aから下方へ延伸している。また、仕切り壁70は、第2空間S2において、回転軸AXに直交し且つ第2空間S2から第1空間S1へ向かう方向Dにおいて延伸している。本実施形態では、方向Dは、回転軸AXの周方向に沿っている。より厳密には、方向Dは、軸方向ADに沿って回転コネクタ装置100を見たときに、第2壁562と外周筒部140の接続位置562aにおける外周筒部140の接線方向である。
【0042】
コネクタ50は、さらに仕切り壁72を備えている。仕切り壁72は、第2空間S2内において回転軸AXに直交する方向において第1ケーブル30と第2ケーブル40とを遠ざけるために設けられる。仕切り壁72は、第2空間S2においてコネクタ50に配置されている。仕切り壁72は、軸方向ADにおいて第1壁560の内面560aから下方へ延伸している。仕切り壁72は、仕切り壁70よりも第1空間S1から遠くに設けられている。換言すれば、仕切り壁72は、仕切り壁70よりもコネクタ50の複数の電極58に近くに設けられている。
【0043】
仮に、第1ケーブル30及び第2ケーブル40の少なくとも一方が第1開口OP1及び第2開口OP2の近傍で切断されたとしても、仕切り壁72は、第2空間S2において、切断されて露出した導線32(42)が導線42(32)に接触することを抑制する。
【0044】
図7に示すように、第1ケーブル30は、外周経路R1に沿って配置される。外周経路R1は、第1開口OP1を介して第1空間S1から第2空間S2へ至る経路を含み、第2壁562と仕切り壁70との間と、第2壁562と仕切り壁72との間とを通過する。第2ケーブル40は、内周経路R2に沿って配置される。内周経路R2は、第2開口OP2を介して第1空間S1から第2空間S2へ至る経路を含み、仕切り壁70と外周筒部140との間と、仕切り壁72と外周筒部140との間とを通過する。内周経路R2は、回転軸AXの径方向において外周経路R1より内側に設けられる。これにより、第1ケーブル30と第2ケーブル40とは、異なる位置(開口の位置)で第2空間S2から第1空間S1に挿入される。
【0045】
本実施形態における仕切り壁70は、第1ケーブル30及び第2ケーブル40を、互いに異なる位置で第2空間S2から第1空間S1へ挿通する挿通構造700を実現する一例である。ただし、挿通構造700は、他の構成によって実現されてもよい。例えば、挿通構造700は、第1ケーブル30と第2ケーブル40との間に設けられる弾性部材(例えばゴム)で実現されてもよい。
【0046】
図8は、回転コネクタ装置100の上面図である。
図9は、
図8のIX-IX断面線で回転コネクタ装置100を断面した断面図である。
図9に示すように、軸方向ADにおける第1開口OP1の長さL1は、軸方向ADにおける第2開口OP2の長さL2より小さい。具体的には、長さL1は、軸方向ADにおいて、第1壁560から下方に突出した段差部560b(
図6も参照)から第1固定体部12までの長さである。長さL2は、軸方向ADにおいて、第1壁560から第1固定体部12までの長さである。
【0047】
長さL1は、第1ケーブル30の幅W1に基づいて設定される。長さL2は、第2ケーブル40の幅W2に基づいて設定される。例えば、長さL1は、長さL2の10%から90%の範囲である。しかし、長さL1と長さL2は、実質的に同じであってもよい。また、本実施形態では、長さL1は、第2ケーブル40の幅W2より小さい。これにより、仮に、大きい第2開口OP2を通過する第2ケーブル40が切断されたとしても、切断された第2ケーブル40が、小さい第1開口OP1に進入しにくくなる。ただし、長さL1は、第2ケーブル40の幅W2と実質的に同じでもよいし、第2ケーブル40の幅W2より大きくてもよい。
【0048】
図10は、過回転状態の回転コネクタ装置100における第1ケーブル30及び第2ケーブル40を示すための、第2固定体部14の平面図である。
【0049】
上述のとおり、第1ケーブル30及び第2ケーブル40が固定体10と回転体20との間に接続された状態で、回転体20は固定体10に対して回転軸AX周りに回転する。回転体20が固定体10に対して制限回転角度(例えば720°)以上で回転すると、回転コネクタ装置100が過回転状態となる。回転コネクタ装置100の過回転状態では、第1ケーブル30及び第2ケーブル40が過度な引っ張り荷重で引っ張られて切断されることがある。
【0050】
例えば、回転体20が固定体10に対して、
図10の紙面上で時計回りに制限回転角度以上回転すると、第1ケーブル30は、第1開口OP1の第1縁E1で折り曲げられる。一方、第2ケーブル40は、第2開口OP2の第2縁E2で折り曲げられる。ただし、第1縁E1は、仕切り壁70が延伸する方向Dにおける仕切り壁70の端部70a(
図6も参照)で構成される。第2縁E2は、回転軸AXの周方向における外周筒部140の端部140c(
図6も参照)で構成される。
【0051】
図10に示す状態において、回転体20が固定体10に対して
図10の紙面上で時計回りにさらに回転すると、第1ケーブル30が第1縁E1で切断されることがある。同様に、第2ケーブル40が第2縁E2で切断されることがある。すなわち、第1ケーブル30及び第2ケーブル40は、第1開口OP1及び第2開口OP2の近傍の異なる位置において切断されることがある。
【0052】
また、回転体20が固定体10に対して、
図10の紙面上で反時計回りに制限回転角度以上回転しても、第1ケーブル30及び第2ケーブル40は、仕切り壁70によって、第1開口OP1及び第2開口OP2の近傍の異なる位置で切断されることがある。
【0053】
<実施形態の構成と作用効果のまとめ>
コネクタ50は、第2空間S2を第1空間S1に接続する第1開口OP1と、第1開口OP1と仕切られた開口であり且つ第2空間S2を第1空間S1に接続する第2開口OP2とを有する。第1ケーブル30は、第1開口OP1を通過して、第1ケーブル30の他端30bは回転体20に接続されるように配置される。第2ケーブル40は、第2開口OP2を通過して、第2ケーブル40の他端40bは回転体20に接続されるように配置される。
【0054】
この構成によれば、第1ケーブル30及び第2ケーブル40は、固定体10と回転体20の間の第1空間S1へ、異なる位置から挿入される。従って、仮に、回転コネクタ装置100の過回転によって、第1ケーブル30が第1開口OP1の縁(例えば第1縁E1)で切断されても、第2開口OP2の近傍で、被覆材34から露出する導線32が第2ケーブル40の導線42と短絡することが抑制される。同様に、仮に第2ケーブル40が第2開口OP2の縁(例えば第2縁E2)で切断されても、第1開口OP1近傍で、被覆材44から露出する導線42が第1ケーブル30の導線32と短絡することが抑制される。また、第1ケーブル30及び第2ケーブル40の両方が切断されたとしても、切断によって露出する導線32及び導線42が互いに接触することが抑制される。従って、導線32と導線42の短絡によって、例えばエアバッグが意図せずに開放することが抑制される。
また、コネクタ50は、第1開口OP1及び第2開口OP2を構成するように第2空間S2を仕切り且つ回転軸AXの軸方向ADに延伸する仕切り壁70を備えている。
【0055】
この構成では、軸方向ADに直交する方向において第1開口OP1の位置と第2開口OP2の位置が異なる。従って、仮に第1ケーブル30及び第2ケーブル40の少なくとも一方が切断されたとしても、仕切り壁70は、軸方向ADに直交する方向において第1ケーブル30及び第2ケーブル40が接触することを抑制し、短絡を抑制する。ただし、第1開口OP1及び第2開口OP2は、軸方向ADにおいて上下に仕切られてもよい。すなわち、仕切り壁70は、回転軸AXと直交する方向に延伸する形状であってもよい。
【0056】
また、仕切り壁70は、第2空間S2において回転軸AXの周方向に沿って延伸している。
【0057】
この構成によれば、第1ケーブル30が通過する第1開口OP1と、第2ケーブル40が通過する第2開口OP2とが、第2空間S2において周方向において延伸している。従って、仕切り壁70は、第2空間S2内の第1開口OP1及び第2開口OP2の近傍で第1ケーブル30及び第2ケーブル40が接触することをより確実に抑制し、短絡を抑制する。
【0058】
また、回転コネクタ装置100は、回転体20が回転軸AX周りに制限回転角度以上回転すると、第1開口OP1の第1縁E1及び第2開口OP2の第2縁E2でそれぞれ切断される第1ケーブル30及び第2ケーブル40を備える。回転軸AXの周方向における第1縁E1の位置と、回転軸AXの周方向における第2縁E2の位置は異なっている。
【0059】
この構成では、仮に第1ケーブル30及び第2ケーブル40が切断されたとしても、互いに異なる位置で切断されるので、第1ケーブル30の切断面と、第2ケーブル40の切断面は、回転軸AXの周方向において異なる位置に位置する。従って、切断面同士が短絡することが抑制される。
【0060】
回転軸AXの軸方向ADにおける第1開口OP1の長さL1は、軸方向ADにおける第2開口OP2の長さL2より小さい。
【0061】
これにより、仮に第2ケーブル40が切断され、被覆材44から導線42が露出したとしても、露出した導線42が第1開口OP1に侵入しにくくなる。
【0062】
なお、本願においては、「備えている」およびその派生語は、構成要素の存在を説明する非制限用語であり、記載されていない他の構成要素の存在を排除しない。これは、「有している」、「含んでいる」およびそれらの派生語にも適用される。
【0063】
本願において、「第1」や「第2」などの序数は、単に構成を識別するための用語であって、他の意味(例えば特定の順序など)は有していない。例えば、「第1要素」があるからといって「第2要素」が存在していることを暗に意味しているわけではなく、また「第2要素」があるからといって「第1要素」が存在していることを暗に意味しているわけではない。
【0064】
また、本開示における「平行」「直交」および「一致」の表現は、厳密に解釈されるべきではなく、「実質的な平行」「実質的な直交」および「実質的な一致」の意味をそれぞれ含む。また、その他の配置に関する表現も、厳密に解釈されるものではない。
【0065】
また、本開示における「A及びBの少なくとも一方」の表現は、次の3つの場合のいずれも含むものとする。(i)Aだけを含む、(ii)Bだけを含む、(iii)A及びBの両方を含む。
【0066】
上記の開示内容から考えて、本発明の種々の変更や修正が可能であることは明らかである。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本願の具体的な開示内容とは別の方法で本発明が実施されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 :回転コネクタ装置
10 :固定体
20 :回転体
30 :第1ケーブル
40 :第2ケーブル
50 :コネクタ
58a :第1電極
58b :第2電極
700 :挿通構造
70 :仕切り壁
S1 :第1空間
S2 :第2空間
OP1 :第1開口
OP2 :第2開口